便器装置
【課題】大便時には汚物のボール面への付着を防止すると共に小便時の跳ね返り水を低減する便器装置を提供する。
【解決手段】便器1のゼット口16からボール内へ洗浄水を供給するゼット給水手段(30、16)と、リム口18からボール内へ洗浄水を供給するリム給水手段(30、18)と、使用者の着座を検出する着座検出手段とを有する便器装置において、ボール内へ洗浄水を供給し洗浄した直後はボール内の水位が、トラップ部14より溢流を開始する溢流水位L1より低く、封水の効果を得る最低の水位である最低封水水位L2よりも高い第1の水位になるようにゼット給水手段(30、16)による給水を制御し、着座検出手段が検出後にボール内の水位が第1の水位より高く溢流水位L1より低い第2の水位になるようにリム給水手段(30、18)による給水を制御する制御部60を有する。
【解決手段】便器1のゼット口16からボール内へ洗浄水を供給するゼット給水手段(30、16)と、リム口18からボール内へ洗浄水を供給するリム給水手段(30、18)と、使用者の着座を検出する着座検出手段とを有する便器装置において、ボール内へ洗浄水を供給し洗浄した直後はボール内の水位が、トラップ部14より溢流を開始する溢流水位L1より低く、封水の効果を得る最低の水位である最低封水水位L2よりも高い第1の水位になるようにゼット給水手段(30、16)による給水を制御し、着座検出手段が検出後にボール内の水位が第1の水位より高く溢流水位L1より低い第2の水位になるようにリム給水手段(30、18)による給水を制御する制御部60を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器装置に係り、特に、便器装置の溜水制御に関する。溜水は、封水又はリフィル水とも呼ばれ、下水又は配水管からの臭気が便器内に流入することを防止するために供給される水である。
【背景技術】
【0002】
溜水部が大きい大便器は、汚物がボール面へ付着しにくいという利点があるが、小便時に水が跳ね易いという問題がある。特に、着座して小便をする場合、男性は溢流面よりも上側に着水し易いが、女性は小便が下方に、即ち、溜水に直接落下するために跳ね返り水がかかり易い。但し、男性も立位状態で小便をすれば跳ね返り水が便器の上面に跳ねるという問題もある。
【0003】
特許文献1は、洗浄機構の非駆動時に溜水水位を下げることを提案している。特許文献2は、溜水水位が低下したボールに排尿させ、排尿前後の水位差を測定することにより使用者の尿量を算出し、その後、溢流水位まで洗浄水を供給して便器洗浄を行う便器装置を開示している。
【特許文献1】特開2002−256614号公報(要約)
【特許文献2】特表2004−113630号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、小便時の水跳ねを解消するために、便器面の溜水面を低下させる排水ポンプなどの手段を必要とするため、装置構成が複雑になる。特許文献2は、もともと課題が尿量測定という点で異なり、また、汚物の付着防止の構成もない。
【0005】
本発明は、大便時には汚物のボール面への付着を防止すると共に小便時の跳ね返り水を低減する便器装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての便器装置は、便器と、前記便器のゼット口からボール内へ洗浄水を供給するゼット給水手段と、前記便器のリム口からボール内へ洗浄水を供給するリム給水手段と、前記便器への使用者の着座を検出する着座検出手段と、を有する便器装置において、前記便器のボール内へ洗浄水を供給し洗浄した直後は前記便器の前記ボール内の水位が、前記便器のトラップ部より溢流を開始する溢流水位より低く、封水の効果を得る最低の水位である最低封水水位よりも高い第1の水位になるように前記ゼット給水手段による給水を制御し、前記着座検出手段が使用者の着座を検出後に前記便器のボール内の水位が前記第1の水位より高く前記溢流水位より低い第2の水位になるように前記リム給水手段による給水を制御する制御部を有することを特徴とする。かかる便器装置によれば、起立状態で小便をする場合や着座直後に小便をする場合の溜水水位を低くして跳ね返り又は跳ね返り高さを低くし、着座検出手段が着座を検出した後で溜水水位を高くして大便時の汚物の付着を防止することができる。また、リム供給手段が給水することによってボールに汚物が付着しにくくなる。
【0007】
前記着座検出手段が使用者の着座を検出した時間を計時する計時手段と、前記着座検出手段が使用者の着座を検出した後で前記計時手段が計測した時間が設定時間になるまで前記リム給水手段の給水を遅延するために前記設定時間を設定する遅延時間設定手段と、を更に有してもよい。これにより、小便後に大便を連続して行う場合、小便時には溜水水位を低くして跳ね返り又は跳ね返り高さを低くし、設定時間後に大便をする前に溜水水位を高くして汚物の付着を防止することができる。
【0008】
前記設定時間を変更可能な遅延時間変更手段を更に有してもよい。これにより、小便器が別に設置してあるオフィスの男性用トイレの大便器では遅延をゼロにしたり、人毎に個別的な設定を行ったりすることができる。
【0009】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大便時には汚物のボール面への付着を防止すると共に小便時の跳ね返り水を低減する便器装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例の便器装置について説明する。
【実施例1】
【0012】
図1(a)及び図1(b)は、本発明の実施例1の便器装置100の概略部分透過側面図及び側面図である。図2は、便器装置100のブロック図である。便器装置100は、便器1と便器1を洗浄する洗浄部を有し、ゼット口への給水(係る給水を以下「ゼット給水」と呼ぶ場合もある。)をポンプにより行う。
【0013】
便器1は、水洗大便器であり、内側に汚物を受けるボール12を有する陶器製の本体2と、本体2の上に配置された便座4と、便座4を覆うように配置された蓋7と、本体2の後方上部に配置された図示しない局部洗浄装置と、を有する。便座4の内部又は本体側には、後述する図3に示すように、便器1への使用者の着座を検出する着座検出手段として機能する着座センサ5が設けられる。着座センサ5は、例えば、便座4の便座ヒータの静電容量の変化を測定するセンサや圧力センサを使用することができる。2aは水受けトレイである。また、便器装置100は、使用者のトイレの入出を検出する人体センサ6を更に有する。人体センサ6は、赤外線センサ、トイレのライトの点灯を検出するセンサ、便器装置100のいずれかのスイッチを検出するセンサ、蓋7の開口を検出するセンサなどを利用することができる。
【0014】
洗浄部は、リム洗浄(又はボール洗浄)と、便器洗浄と、溜水供給とを行う。リム洗浄では、ボール12の上縁近傍にあるリム口18からリム13に沿って絞り17を介して旋回状に吐水してボール12を洗浄する。便器洗浄では、ボール12の下部にあるゼット口16から吐水し、サイホン現象を利用してボール12の汚物と溜水を排水管Dから排水する。溜水供給は、下水からの臭気が便器内に流入することを防止する溜水をボール12に供給する。
【0015】
洗浄部は、給水系と、リム洗浄/溜水供給系(リム給水手段)と、便器洗浄/溜水供給系(ゼット給水手段)と、制御系とを有する。洗浄部の幾つかの構成要素は、図1に示す本体2の後方に設けられた機能部10に設けられている。機能部10はサイドパネル10aにより覆われている。
【0016】
給水系は、洗浄水を供給する水道管に直結され、便器洗浄/溜水供給系への給水とリム洗浄/溜水供給系への給水を行い、バルブユニット30を有する。バルブユニット30は、給水金具20、手洗器用の分岐金具21を介して入水口22から流入した水をフレキホース24を介して受け取る。給水金具20は、止水栓20aとストレーナ20bを有する。入水口22には局部洗浄用の分岐金具23が接続され、フレキホース24を介して局部洗浄装置へ給水する。
【0017】
定流量弁31は、流入した水を、例えば、16リットル/分の所定の流量以下に制限する。定流量弁31を通過した洗浄水は給水電磁弁33に流入する。
【0018】
給水電磁弁33は、後述する図3に示す給水電磁弁駆動部32によって開閉駆動され、流路切替弁35に至る流路を開閉する。給水電磁弁33を通過した水の流路は流路切替弁35により切り替えられる。
【0019】
流路切替弁35は、後述する図3に示す流路切替弁駆動部34によって駆動され、便器洗浄/溜水供給系への給水の場合にはタンク給水路35aに流路を選択し、リム洗浄/溜水供給系への給水の場合にはリム給水路35bに流路を選択する。
【0020】
リム洗浄/溜水供給系は、水道の給水圧力により便器1のリム口18からボール内へ洗浄水を供給してリム洗浄を行うと共に同一の経路を使用して便器のリム口18から溜水を供給する。リム洗浄/溜水供給系は、後述するポンプユニット50を介した水の経路(洗浄水管路44b)とは別の、ポンプユニット50を介さない経路(リム給水路35b)を使用する。リム洗浄/溜水供給系は、リム口18、バルブユニット30を有する。リム口18は、ボール12のリム13に形成され、リム13に沿って洗浄水を吐出する。バキュームブレーカ36は、ボール12の上端面よりも上方にリム給水路35bに配置され、洗浄水のリム口18からの逆流を防止する。また、バキュームブレーカ36は、後述するタンク40の溢れ縁よりも上方に配置され、バキュームブレーカ36からの蒸気はダクトより外に排出される。
【0021】
便器洗浄/溜水供給系は、ポンプユニット50によりサイホン現象を発生させて便器洗浄を行うと共に同一の流路を使用して便器1のゼット口16から溜水を供給する。便器洗浄/溜水供給系は、排水トラップ管路14と、ゼット口16と、バルブユニット30と、タンク40と、ポンプユニット50と、ゼット接続ユニット38と、フラッパー弁45と、水抜栓46とを有する。
【0022】
排水トラップ管路14は、ボール12の底部から斜め上方に延びた後で下降するS字形状を有し、サイホン現象が発生するトラップ部である。図2の排水トラップ管路14の下側の輪郭の頂上部における水位L1が溢流水位である。また、図2の排水トラップ管路14の上側の輪郭のボール12との境界の水位が封水効果を実現するための最低封水水位(「喫水水位」と呼ばれる場合もある)である。
【0023】
ゼット口16は、サイホン現象を発生させるのに必要な水の噴出しと溜水の供給を行う。ゼット口16は、ボール12の底部に形成され、排水トラップ管路14の入口に向けて吐水する。ゼット口16の大きさは、従来の約10mmの円形形状から10mm×20mmの角型と大きくなっており、大容量の水を供給することができる。
【0024】
タンク40は、サイホン現象の発生に必要な水を貯える。本実施形態のタンク40は、3リットル以下(約2.5リットル乃至3リットル)の内容積を有する。
【0025】
タンク給水路35aの先端はタンク40の溢れ縁の上方に開口され、タンク40からタンク給水路35aへの逆流を防止する。タンク40の内部には、上端フロートスイッチ41a及び下端フロートスイッチ41bが配置され、タンク40内の水位を検出する。上端フロートスイッチ41aは、タンク40内の水位が所定の貯水水位に達するとオンに切り替わり、後述する制御部60はこれを検知して給水電磁弁33を閉じる。下端フロートスイッチ41bは、タンク40内の水位が所定の水位まで低下するとオンに切り替わり、制御部60はこれを検知してポンプユニット50を停止する。
【0026】
タンク40の上部には、その上端の開口部を覆うように蓋体42aが取り付けられており、蓋体42aの外周とタンク40上部の内壁面の間は水密的に接合されている。蓋体42aには、円形の穴が設けられ、この穴を取り囲むように、筒体42bが上方に向けて延びるように取り付けられている。筒体42bの上端が、タンク40の溢れ縁となっている。タンク40の壁面は、蓋体42aよりも上方まで延び、タンク40の溢れ縁から溢れた洗浄水は、筒体42bの外側を流下し、蓋体42aの上に溜まる(吐水空間)。
【0027】
ポンプユニット50は、タンク40に貯水された水を加圧してゼット口16から吐き出す。ポンプユニット50は、図3に示すように、ポンプモータ駆動部51と、直流モータであるポンプモータ52を内蔵した直流ポンプである。後述するように、ポンプユニット50は、便器洗浄時と溜水供給時で回転数を変更して流量を変更する。本実施例では、後述するように、75リットル/分から20リットル/分に変更する。ポンプには直流ポンプと交流ポンプがあるが、直流ポンプは回転数制御が容易である。ポンプユニット50は、タンク40の下部から延びる洗浄水管路44aにより接続され、タンク40の満水位置(オーバーフローライン)OFLよりも下に配置されている。この結果、タンク40の満水時にもポンプユニット50に水が供給される。
【0028】
洗浄水管路44aの途中には、逆止弁であるフラッパー弁45及び水抜栓46が設けられている。これらは一体として構成され、ポンプユニット50よりも下方の、タンク40の下端部付近の高さに配置されている。水抜栓46を開放することにより、保守時等にタンク40内及びポンプユニット50内の水を排出することができる。フラッパー弁45は、タンク40内の水位がポンプユニット50の高さよりも低くなった場合に、洗浄水がポンプユニット50からタンク40に逆流し、ポンプユニット50から水が抜けることを防止する。
【0029】
ポンプユニット50の流出口は、洗浄水管路44bを介して、ボール12底部のゼット口16に接続されている。洗浄水管路44bの途中は、上方に向けて凸型に形成されており、この凸型部分の最も高い部分である洗浄水管路頂部は、タンク40からゼット口16に至る水の流路で最も高い部位である。この洗浄水管路頂部の高さは、タンク40の満水位置OFLよりも高く、ボール12の溢れ縁よりも低い。
【0030】
ゼット接続ユニット38は、フラッパー弁39を含み、タンク40の水位が満水位置OFLを超えると、オーバーフロー流路38aからの洗浄水を洗浄水管路44bに接続する。
【0031】
洗浄部は、便器洗浄において、ゼット口16から勢い良く水を噴出して強制的にサイホン現象を起こさせるサイホンゼット式を採用する。
【0032】
従来のサイホンゼット式は、サイホン切れ時の空気を巻き込む際のゴボッという騒音が発生する。特に、サイホン切れ後に浮揚している汚物を高速(約8.7m/s)で押し流すブロー流をゼット口16から噴出する形式の便器においては、そのブロー流を噴出している際の騒音が発生する。また、従来の水道直圧ゼット式は、水道の給水圧力にバラツキがあるために流量制御の精度が悪かった。このため、サイホン現象の発生時に無駄水があり、節水効果が十分ではなかった。更に、従来のサイホンゼット式はサイホン現象の発生までに時間がかかっていた。
【0033】
これに対して、洗浄部は、ポンプユニット50を利用して水をゼット口16から噴出する。ポンプユニット50の回転数を通じて流量制御を行うことによって最小限の水量でサイホン現象を発生することができ、無駄水を防止して節水効果を向上することができる。水道の給水圧力はバラツキがあり流量制御が困難である。定流量弁を設けても定流量弁はバネによる機械的制御なので測定精度にバラツキがあり、精度が悪い。一方、流量センサを設けて流量測定をして流量制御をすれば精度は上がるがコストアップを招く。
【0034】
また、洗浄部は、ポンプユニット50を利用して低速(約3.7m/s)で大容量の水を供給する。浮揚している汚物を押し込む速度が低速となるのでその際の騒音が低減する。また、上述したようにゼット口16の径を大きくして大容量のポンプユニット50を利用して供給することによってサイホン現象を起こすための排水トラップ管路14を素早く満水にしてサイホン現象を直ちに発生することができる。これに加えて、サイホン現象の発生中に排水トラップ管路14の内面を覆うほどの大容量の水を連続して供給することによって、サイホン切れの時に吸い込む空気の量を抑えてサイホン切れ時の騒音を抑えている。
【0035】
洗浄部は、タンク40の容量を約3リットル以下に抑えることによってタンクレス式と同等の小型化を実現している。便器1の洗浄には5.5リットルの水が必要であり、サイホン現象を起こす最小限の水量は3リットルである。また、リム洗浄で使用する2.5リットルの水は水圧が低くても洗浄効果を維持することができる。このため、リム洗浄/溜水供給系の経路であるリム給水路35bを、ポンプユニット50を使用する経路である洗浄水管路44bとは分離してリム洗浄にはタンク40の水を使用しないことにした。この結果、タンク40はリム洗浄用の水を貯める必要がなくなる。更に、洗浄部は、便器洗浄と溜水供給の間にポンプユニット50を停止してタンク40への給水を行っている。これによってタンク40が便器洗浄用の洗浄水と溜水を併せた量を収納せずに、便器洗浄用の洗浄水のみを収納する容量を持てば足りることとした。この結果、タンク40の容量を、サイホン現象に必要な3リットルの容量とすることができる。タンク40の容量を小さく押さえることによって便器装置100の小型化を実現することができる。なお、タンク40が貯めるべき水量を3リットル未満(例えば、2.5リットル)として更なる便器装置100の小型化を実現し、便器洗浄時にタンク40への給水を同時に行うことによって便器洗浄用の3リットルを確保してもよい。
【0036】
制御系は、図3に示すように、制御部60と、電源部61と、操作部62と、メモリ63と、タイマ64と、遅延時間設定部(遅延時間設定手段)65と、遅延時間変更部(遅延時間変更手段)66と、を有する。制御部60は、制御系の構成要素に加えて、着座センサ5、人体センサ6、給水電磁弁駆動部32、流路切替弁駆動部34、上端フロートスイッチ41a、下端フロートスイッチ41b、ポンプモータ駆動部51、に電気的に接続されている。
【0037】
制御部60は、操作部62及びメモリ63に格納された情報に基づいて各部の動作を制御するCPUから構成される。電源部61は、制御部60の電源をオンオフし、使用者によって切り替えられる。制御部60は、着座センサ5の検出結果に基づいてゼット給水手段の動作とリム給水手段の動作を制御する。
【0038】
より詳細には、後述するように、制御部60は、便器1の洗浄直後はボール内の水位が第1の水位になるようにゼット給水手段による給水を制御する。ここで、「第1の水位」は、便器1のトラップ部より溢流を開始する溢流水位L1より低く排水管Dからの臭気が浸入しないという封水効果を発揮する最低の水位である最低封水水位L2よりも高い水位である。また、制御部60は、着座センサ5が使用者の着座を検出後に(直後でもよいし一定時間後でもよい)ボール内の水位が第1の水位より高く溢流水位L1より低い第2の水位になるようにリム給水手段による給水を制御する。かかる便器装置100によれば、起立状態で小便をする場合や着座直後に小便をする場合の溜水水位を低くして跳ね返り又は跳ね返り高さを低くし、着座センサ5が着座を検出した後で溜水水位を高くして大便時の汚物の付着を防止することができる。また、リム供給手段が給水することによってボールに汚物が付着しにくくなる。
【0039】
操作部62は、大洗浄スイッチ、小洗浄スイッチ、局部スイッチを含む。大洗浄スイッチと小洗浄スイッチは、それぞれ、大便時と小便時の便器洗浄に使用されるスイッチである。局部スイッチは局部(お尻洗浄及び/又はビデ洗浄)に使用されるスイッチである。大洗浄スイッチに対応するポンプユニット50の回転数は小洗浄スイッチに対応するポンプユニット50の回転数よりも高く設定される。
【0040】
メモリ63は、後述する洗浄動作を制御する情報や洗浄方法をソフトウェアとして格納する。また、メモリ63は、タイマ64のための遅延時間(設定時間)Tを保持する。遅延時間(設定時間)Tは、着座センサ5が使用者の着座を検出した後でタイマ64が計測した時間が遅延時間(設定時間)になるまでリム給水手段の給水を遅延するために使用される。
【0041】
タイマ64は、着座センサ5が使用者の着座を検出した時間を計時する計時手段として機能する。具体的には、タイマ64は、着座センサ5が使用者の着座を検出すると同時に計時を開始し、着座センサ5が使用者の離座を検出するとリセットされる。
【0042】
遅延時間設定部65は、着座センサ5が使用者の着座を検出した後でタイマ64が計測した時間が設定時間になるまでリム給水手段の給水を遅延するための、メモリ63が保持すべきデフォルト設定時間を初期設定する。遅延時間設定部65は、入力部(テンキーや数値を増減する矢印キー)と設定時間を表示するディスプレイとを有するが、タッチパネルでもよい。タイマ64と遅延時間設定部65によって、小便後に大便を連続して行う場合、小便時には溜水水位を低くして跳ね返り又は跳ね返り高さを低くし、設定時間後に大便をする前に溜水水位を高くして汚物の付着を防止することができる。
【0043】
遅延時間変更部66は、遅延時間設定部65が設定した設定時間又はデフォルト設定時間を変更可能に構成されている。これにより、小便器が別に設置してあるオフィスの男性用トイレの大便器では遅延をゼロにしたり、人毎に個別的な設定を行ったりすることができる。遅延時間変更部66は、入力部(テンキーや数値を増減する矢印キー)と設定時間を表示するディスプレイとを有するが、タッチパネルでもよく、本実施例では遅延時間設定部65と一体に構成される。本実施例の遅延時間変更部66は、女性用設定、男性用設定、個別設定が選択可能である。女性用設定が選択された場合、遅延時間は女性用設定時間である30秒となり、男性用設定が選択された場合、遅延時間は男性用設定時間である5秒となる。また、個別設定が選択された場合、使用者が遅延時間を任意に設定することができる。例えば、大便時に最初に小便をしてから一定時間して大便をする者もいるが、これが略同時や逆の者もいる。更に、幼稚園の子供用トイレや老人ホームのお年寄り用トイレでは必ずしも上述の30秒や5秒とならない場合もある。
【0044】
以下、図4を参照して、本実施例の溜水制御について説明する。図4は、ポンプユニット50を利用して第1の水位を確保する実施例における、リム洗浄、便器洗浄及び溜水供給動作のフローチャートである。
【0045】
まず、制御部60は、使用者による操作部62の便器洗浄スイッチの操作を受け付けて洗浄動作を開始する(ステップ1000)。これに応答して、制御部60は、給水電磁弁駆動部32を制御して給水電磁弁33を開弁すると共に流路切替弁駆動部34を制御して流路切替弁35をリム側に切り替える(ステップ1002)。これにより、リム洗浄が行われる。
【0046】
具体的には、水道水が給水金具20、分岐金具21、入水口22、フレキホース24から定流量弁31に流入する。定流量弁31は、水道の給水圧力が高い場合には水の流量を制限し、給水圧力が低い場合には流量制御をせずにそのまま通過させる。その後、水は、給水電磁弁33、流路切替弁35を通過し、バキュームブレーカ36、リム給水路35bを通ってリム口18から吐出される。リム口18から吐出された水は、ボール12内のリム13を旋回しながら下降してボール12の内壁面を洗浄する。リム洗浄は5秒間継続する(ステップ1004)。
【0047】
リム洗浄はポンプユニット50を介さないリム給水路35bを介して行われる。ボール12のリム13の洗浄は水圧が弱くても足りるのでタンク40内の水をポンプユニット50により加圧して吐出する必要がない。タンク40の水が減らないのでその後にタンク40への給水を行う必要もなく、便器洗浄とその後の溜水供給に直ちに移行することができる。また、エア混入なしの整流吐水で低圧損の洗浄であり、リム洗浄は静音を実現している。
【0048】
リム洗浄が終了すると、制御部60は、給水電磁弁駆動部32を制御して給水電磁弁33の開口状態を維持し、流路切替弁駆動部34を制御して流路切替弁35をタンク側に切り替える。そして、制御部60は、流量8リットル/分でタンク40への給水を開始すると共に、ポンプモータ駆動部51を制御してポンプモータ52を制御して便器洗浄を行う(ステップ1006)。
【0049】
具体的には、タンク40内に貯水されていた水は、フラッパー弁45、水抜栓46を通ってポンプユニット50に流入し、加圧される。ポンプユニット50が加圧した水は、洗浄水管路44bを通ってゼット口16から吐出される。
【0050】
ゼット口16から吐出された洗浄水は排水トラップ管路14内に流入し、排水トラップ管路14を満水にしてサイホン現象を引き起こす。これにより、ボール12内の溜水及び汚物は、排水トラップ管路14に吸引され、排水管Dから排出される。
【0051】
便器洗浄においては、制御部は75リットル/分の大容量の水がゼット口16から低速で吐出されるようにポンプユニット50を高速回転(約3300rpm)に制御する。この結果、サイホン現象を素早く発生させて溜水及び汚物を素早く排出することができる。また、サイホン現象が素早く発生するので無駄水も少なくなる。
【0052】
便器洗浄は2.9秒間継続される(ステップ1008)。この2.9秒の後半でポンプユニット50の回転数を減少させてもよい。この後半では、サイホン切れの際の空気の吸い込み量を抑えるために水を供給する期間である。便器洗浄においては、低速で大容量の水を供給しているので、サイホン切れの際の騒音と浮揚する汚物を押し込む際の騒音が低減して静音を実現している。ポンプユニット50が慣性により数回転回ることの押し出し水によって排水トラップ管路14の入口が水没することによって、排水管Dからの臭気逆流がないように封止している。
【0053】
制御部60は、2.9秒経過後にポンプモータ駆動部51を制御してポンプモータ52を停止して便器洗浄を終了する(ステップ1010)。但し、制御部60は、タンクへの給水は維持する。制御部60は、便器洗浄の開始と共にタンク40への給水を行っており、溜水を早期に供給することができる。タンク40への給水は更に5秒間、合計7.9秒間継続する(ステップ1012)。これにより、タンク40には溜水に必要な水が貯まる。
【0054】
次に、制御部60は、タンク40への給水を維持したまま、ポンプモータ駆動部51を制御してポンプモータ52を駆動して溜水供給を開始する(ステップ1014)。このように、本実施例では、便器洗浄開始と同時にタンク40への給水を行い、その給水された水を溜水として使用する。タンク40は便器洗浄に必要な水を貯める容量があれば足り、溜水を併せて貯水する必要がないため、便器装置100は小型になる。また、ポンプユニット50により溜水の流量制御を精度良く行うことができるため、無駄水の発生を防止して節水を実現することができる。本実施例は、サイホン現象の発生に使用されるポンプユニット50を溜水制御にも使用して多機能化しているため、流量センサなどの新たな部材を設ける必要がない。このため、便器装置100を小型にすることができる。
【0055】
溜水供給においては、制御部は20リットル/分の低容量の水がゼット口16から吐出されるようにポンプユニット50を低速回転(約1000rpm)に制御する。このように、ポンプユニット50は便器洗浄時よりも溜水供給時の流量(回転数)が低い。これにより、溜水供給時にサイホン現象が発生することを防止し、溜水量制御の精度を高めることができる。便器洗浄は2秒間継続される(ステップ1016)。但し、制御部60は、タンク40への給水は維持する。
【0056】
次に、制御部60は、ポンプモータ駆動部51を制御してポンプモータ52を停止して溜水供給を停止する(ステップ1018)。このように、制御部60は流路切替弁35やポンプユニット50を含むゼット給水手段の給水を制御し、便器1の洗浄直後はボール12内の水位は第1の水位になるようにする。「第1の水位」は、便器1のトラップ部より溢流を開始する溢流水位L1より低く、排水管Dからの臭気が浸入しない最低水位である最低封水水位L2よりも高い水位である。
【0057】
タンク40への給水は上端フロートスイッチ41aが満水を検出するまで(通常、更に20秒間)継続する(ステップ1020)。これにより、タンク40は満水となる。
【0058】
次に、制御部60は、給水電磁弁駆動部32を制御して給水電磁弁33を閉弁して給水を停止し(ステップ1022)、待機状態となる(ステップ1024)。
【0059】
なお、ステップ1012において、5秒は2秒であってもよい。これにより、給水動作によってタンク40が満水になる前に溜水の供給を開始することになる。この結果、溜水供給とタンク40への給水を同時に行うことによって便器1に溜水がない時間を短くすることができる。このように、タンク40への給水後のみならず給水中にポンプユニット50を駆動して溜水を供給してもよい。
【0060】
以下、図5及び図6を参照して、本実施例の別の溜水制御について説明する。図5は、リム給水によって第1の水位を確保する実施例のフローチャートであり、図6はそのタイミングチャートである。
【0061】
まず、制御部60は、人体センサ6が使用者を検出したかどうかを判断し(ステップ1102)、人体センサ6が人体を検出するまでステップ1102を継続する。ノイズによる誤検知を防止するため、1秒程度連続した検出時間が経過した後に制御部60は使用者が存在すると判断する。制御部60は、人体センサ6が人体を検出したと判断すると(ステップ1102)、流路切替弁駆動部34を介して流路切替弁35をリム開側へ駆動する(ステップ1104)。また、制御部60は、給水電磁弁駆動部32を介して給水電磁弁33を開く(ステップ1106)。図6のA部はこの状態を示している。リム給水は、ボール12の乾燥面に付着した汚物を溜水面へ落とす目的であるため、1〜2秒程度の短時間でよく、図5では1秒に設定している。また、後述するゼット洗浄によるボール内へのゼット給水と同時にリム給水も行うことが可能であるため、前リム給水を省略してもよい。
【0062】
制御部60は、前リム時間としての1秒が経過したかどうかを判断し(ステップ1108)、1秒経過するまでステップ1108を継続する。制御部60は、リム給水時間(前リム)が経過したと判断すると(ステップ1108)、ポンプモータ駆動部51を介してポンプモータ52を駆動し(ステップ1110)、タンク40内の水を便器1へゼット口16から給水する。これにより、上述のサイホン現象を起こして汚物を排出する。
【0063】
ゼット口16から給水される水はタンク40内に貯水された水であるため、給水圧を利用したリム給水とゼット給水をほぼ同時に行うことができる。これにより、ボール12内に付着した汚物を便器1下部へ洗い落としながら汚物の排水管Dへの押し出しが同時にできる。ゼット給水時間は、サイホンを発生するために必要な給水水量以上あればよいので本実施例は4.5秒に設定している。図6のB部はこの状態を示している。
【0064】
制御部60は、ゼット給水時間としての4.5秒が経過したかどうかを判断し(ステップ1112)、ゼット給水時間が経過するまでステップ1112を継続する。制御部60は、ゼット給水時間が経過したと判断すると(ステップ1112)、ポンプユニット50を停止する(ステップ1114)。給水電磁弁33は開状態のままなので、リム給水だけが継続して行われている(後リム)。その後、後リム動作により、溜水を形成する。後リム給水時間は、溜水が第1の水位になるまでの予め決められた時間であり、本実施例は4.3秒に設定している。図6のC部はこの状態を示している。
【0065】
制御部60は、後リム給水時間としての4.3秒が経過したかどうかを判断し(ステップ1116)、後リム給水時間が経過するまでステップ1116を継続する。制御部60は、後リム給水時間が経過したと判断すると(ステップ1116)、流路切替弁駆動部34を介して流路切替弁35をタンク40への給水のためにタンク側へ移動させる(ステップ1118)。図6のD部はこの状態を示している。
【0066】
次に、制御部60は、タンク40が満水になったかどうかを上端フロートスイッチ41aを介して判断し(ステップ1120)、タンク40が満水になるまでステップ1120を継続する。制御部60は、タンク40が満水になったと判断すると(ステップ1120)、流路切替弁駆動部34を介して流路切替弁35を待機位置に移動する(ステップ1122)。また、制御部60は、給水電磁弁駆動部32を介して給水電磁弁33を閉弁する(ステップ1124)。一連の洗浄動作が完了した後には、ボール12内は第一の水位になっている。図6のE部はこの状態を示している。
【0067】
次に、図7及び図8を参照して、本実施例の溜水上昇動作について説明する。ここで、図7は、本実施例の溜水上昇動作を説明するためのフローチャートであり、図8はそのタイミングチャートである。
【0068】
図8のA部に示すようにボール12内は第1の水位に維持されている。制御部60は、着座センサ5が使用者の着座を検出したかどうかを判断し(ステップ1202)、着座センサ5が使用者の着座を検出するまでステップ1202を継続する。着座センサ5が使用者の着座を検出すると(ステップ1202)、タイマ64が着座時間の計時を開始する(ステップ1204)。タイマの着座開始からの遅延時間(設定時間)Tは人が着座して小便を終える時間を想定して予め決定されており、例えば、15秒から30秒程度である。この後に、第1の水位から第2の水位に移行することによって座位による小用時の跳ね返りを回避することができる。但し、後述するように、設定時間Tを略ゼロにしてもよい。
【0069】
制御部60は、着座時間が設定時間Tよりも大きくなったかどうかを判断し(ステップ1206)、着座時間が設定時間Tよりも大きくなるまでステップ1206を継続する。制御部60は、着座時間が設定時間Tよりも大きくなったと判断すると(ステップ1206)、流路切替弁駆動部34を介して流路切替弁35をリム開側へ駆動する(ステップ1208)。ここでは、図8のB部に示すように、所定時間かけてリム開位置へ移動させ徐々に給水することにより、リム給水路35b内での空気と水の衝突音を軽減している。また、制御部60は、給水電磁弁駆動部32を介して給水電磁弁33を開く(ステップ1210)。次に、制御部60は、第1の水位から第2の水位に必要な前リム時間である3秒が経過したかどうかを判断し(ステップ1212)、前リム時間が経過するまでステップ1212を継続する。制御部60は、前リム時間が経過したと判断すると(ステップ1212)、給水電磁弁駆動部32を介して給水電磁弁33を閉める(ステップ1214)。また、制御部60は、流路切替弁駆動部34を介して流路切替弁35を待機位置に駆動する(ステップ1216)。図8のC部に示す、このときの流路切替弁35の移動時間は、既に給水電磁弁33を閉じているために任意でよい。図8のD部に示すように、第2の水位を溢流水位にすれば、性能上最大となる溜水面積を確保できるので便器面への汚物付着を最大限防止することができる。
【0070】
なお、立位により小便が行われた時は、着座時間の計時は行われず第1の水位のままであるので、この場合に小用時の跳ね返りを回避することができる。
【0071】
また、遅延時間をゼロにして着座直後にリムより給水開始してもよい。この場合、ボール面を濡らしているので大便がされても付着しにくく便器1の汚れ防止に効果ある。代替的に、給水量を少なくして第2の水位になる時間を長くすることも可能である。そうすることにより、水位上昇を徐々にすることにより小用の跳ね返りをより長い期間防止することができる。
【0072】
遅延時間をゼロにして給水量を少なくして第二の水位になる時間を長くしてもよい。給水開始してから第二の水位になるまでは遅延時間(例えば、15秒から30秒程度)程度に時間をかけて完了すればいい。第2の水位になる時間が早すぎると小用時の跳ね返りが大きくなる。
【0073】
図9は、遅延時間の設定及び変更動作を説明するためのフローチャートである。まず、制御部60は、遅延時間変更部66による設定切替操作があるかどうかを判断する(ステップ1302)。制御部60は、遅延時間変更部66による設定変更がないと判断すれば遅延時間Tをデフォルト設定値である15秒に設定する(ステップ1304)。次に、制御部60は、遅延時間変更部66による設定変更があると判断すれば(ステップ1302)、女性用設定が選択されたかどうか判断する(ステップ1306)。制御部60は、女性用設定が選択されたと判断すれば遅延時間Tをデフォルト値から女性用設定値(例えば、30秒)に変更する(ステップ1308)。制御部60は、女性用設定が選択されていないと判断すれば(ステップ1306)、男性用設定が選択されたかどうか判断する(ステップ1310)。制御部60は、男性用設定が選択されたと判断すれば遅延時間Tをデフォルト値から男性用設定値(例えば、5秒)に変更する(ステップ1312)。制御部60は、男性用設定が選択されていないと判断すれば(ステップ1310)、遅延時間Tをデフォルト値から個別設定値に設定する(ステップ1314)。
【実施例2】
【0074】
図10は、本発明の実施例2の便器装置100Aのブロック図である。便器装置100は、便器1と便器1を洗浄する洗浄部を有し、ゼット給水を水道直圧により行う。従って、便器装置100Aにはタンク40がない。図10において、図2と同一の部材については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0075】
流路切替弁35Aは、図11に示す流路切替弁駆動部34によって駆動され、便器洗浄/溜水供給系への給水の場合にはゼット給水路35cに流路を選択し、リム洗浄/溜水供給系への給水の場合にはリム給水路35bに流路を選択する。
【0076】
リム洗浄/溜水供給系の構成は図2と同様である。便器洗浄/溜水供給系は、水道直圧によりサイホン現象を発生させて便器洗浄を行うと共に同一の流路を使用して便器1のゼット口16から溜水を供給する。便器洗浄/溜水供給系は、バルブユニット30と、ゼット口16と、を有する。図11は、便器装置100Aの制御系のブロック図であり、図3と同一部材には同一の参照符号を付している。
【0077】
以下、図12及び図13を参照して、本実施例の溜水制御について説明する。図12は、リム給水によって第1の水位を確保する実施例のフローチャートであり、図13はそのタイミングチャートである。
【0078】
まず、制御部60は、洗浄スイッチが押されたかどうかを判断し(ステップ1402)、押されるまでステップ1402を継続する。制御部60は、操作部62の(大又は小)洗浄スイッチが押されたと判断すると(ステップ1402)、流路切替弁駆動部34を介して流路切替弁35Aをリム開側へ駆動する(ステップ1404)。また、制御部60は、給水電磁弁駆動部32を介して給水電磁弁33を開く(ステップ1406)。図13のA部はこの状態を示している。なお、着座センサ5による使用者の離座の検出をトリガとしてもよい。リム給水(前リム)は、ボール12の乾燥面に付着した汚物を溜水面へ落とすため、本実施例では6秒に設定している。図13のB部はこの状態を示している。
【0079】
制御部60は、前リム時間としての6秒が経過したかどうかを判断し(ステップ1408)、6秒経過するまでステップ1408を継続する。制御部60は、リム給水時間(前リム)が経過したと判断すると(ステップ1408)、流路切替弁駆動部34を介して流路切替弁35Aをゼット給水路開側へ駆動する(ステップ1410)。これにより、便器1へゼット口16から給水し、サイホン現象を起こして汚物を排出する。このとき、リム給水は行われず、実施例1と異なり、流路切替弁35Aが移動している過程を除き、リム給水とゼット給水を同時に行うことができない。制御部60は、ゼット給水時間としての6秒が経過したかどうかを判断し(ステップ1412)、ゼット給水時間が経過するまでステップ1412を継続する。ゼット時間は、そのゼット給水流量が水道圧に依存してしまうため、低水圧現場に設定された場合の洗浄不良を考慮して本実施例は比較的長い時間である6秒に設定している。図13のC部はこの状態を示している。
【0080】
制御部60は、ゼット給水時間が経過したと判断すると(ステップ1412)、流路切替弁駆動部34を介して流路切替弁35Aをリム開位置へ移動させる(ステップ1414)。これにより、後リム給水を実施する。後リム給水時間は、実施例1と同様、第1の水位になるまでの予め定められた時間であり、例えば4.3秒である。図13のD部はこの状態を示している。
【0081】
制御部60は、後リム給水時間としての4.3秒が経過したかどうかを判断し(ステップ1416)、後リム給水時間が経過するまでステップ1416を継続する。制御部60は、後リム給水時間が経過したと判断すると(ステップ1416)、給水電磁弁駆動部32を介して給水電磁弁33を閉弁する(ステップ1418)。一連の洗浄動作が完了した後には、ボール12内は第1の水位になっている。図13のE部はこの状態を示している。
【0082】
本実施例では、前回の洗浄終了後に次回の入室に備えて溜水水位を低下させているが、溜水低下動作の起動条件として人体センサ6、図示しないリモコン操作、蓋7の開動作をトリガにしてもよい。
【0083】
次に、図14及び図15を参照して、本実施例の溜水上昇動作について説明する。ここで、図14は、本実施例の溜水上昇動作を説明するためのフローチャートであり、図15はそのタイミングチャートである。
【0084】
図15のA部に示すようにボール12内は第1の水位に維持されている。制御部60は、着座センサ5が使用者の着座を検出したかどうかを判断し(ステップ1502)、着座センサ5が使用者の着座を検出するまでステップ1502を継続する。着座センサ5が使用者の着座を検出すると(ステップ1502)、タイマ64が着座時間の計時を開始する(ステップ1504)。タイマの着座開始からの遅延時間(設定時間)Tは人が着座して小便を終える時間を想定して予め決定されており、例えば、15秒から30秒程度である。この後に、第1の水位から第2の水位に移行することによって座位による小用時の跳ね返りを回避することができる。但し、上述したように、設定時間Tを略ゼロにしてもよい。
【0085】
制御部60は、着座時間が設定時間Tよりも大きくなったかどうかを判断し(ステップ1506)、着座時間が設定時間Tよりも大きくなるまでステップ1206を継続する。制御部60は、着座時間が設定時間Tよりも大きくなったと判断すると(ステップ1506)、給水電磁弁駆動部32を介して給水電磁弁33を開く(ステップ1508)。本実施例では、流路切替弁35Aは既にリム開位置へあるため、流路切替弁35Aの移動時間は発生しない。即ち、実施例1の流路切替弁35のように、流路切替弁35Aを徐々に開弁して水位を徐々に上昇させることは困難である。図15のB部はかかる状態を示す。
【0086】
次に、制御部60は、第1の水位から第2の水位に必要な前リム時間である3秒が経過したかどうかを判断し(ステップ1510)、前リム時間が経過するまでステップ1510を継続する。制御部60は、前リム時間が経過したと判断すると(ステップ1510)、給水電磁弁駆動部32を介して給水電磁弁33を閉める(ステップ1512)。図15のC部はかかる状態を示す。図15のD部に示すように、第2の水位を溢流水位にすれば、性能上最大となる溜水面積を確保できるので便器面への汚物付着を最大限防止することができる。
【0087】
なお、立位により小便が行われた時は、着座時間の計時は行われず第1の水位のままであるので、この場合に小用時の跳ね返りを回避することができる。
【0088】
また、遅延時間をゼロにして着座直後にリムより給水開始してもよい。この場合、ボール面を濡らしているので大便がされても付着しにくく便器1の汚れ防止に効果ある。代替的に、給水量を少なくして第二の水位になる時間を長くすることも可能である。そうすることにより、水位上昇を徐々にすることにより小用の跳ね返りをより長い期間防止することができる。
【0089】
遅延時間をゼロにして給水量を少なくして第二の水位になる時間を長くしてもよい。給水開始してから第二の水位になるまでは遅延時間(例えば15秒から30秒程度)程度に時間をかけて完了すればいい。第2の水位になる時間が早すぎると小用時の跳ね返りが大きくなる。
【0090】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内で様々な変形及び変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1(a)及び図1(b)は、本発明の実施例1の便器装置の部分透過側面図及び側面図である。
【図2】本発明の実施例1の便器装置のブロック図である。
【図3】図1に示す便器装置の制御系のブロック図である。
【図4】図1に示す便器装置のリム洗浄、便器洗浄及び溜水供給の動作を説明するフローチャートである。
【図5】図1に示す便器装置の別のリム洗浄、便器洗浄及び溜水供給の動作を説明するフローチャートである。
【図6】図5に示すフローチャートに対応するタイミングチャートである。
【図7】実施例1の溜水上昇動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】図7に示すフローチャートに対応するタイミングチャートである。
【図9】実施例1の遅延時間の設定及び変更動作を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の実施例2の便器装置のブロック図である。
【図11】図10に示す便器装置の制御系のブロック図である。
【図12】図10に示す便器装置のリム洗浄、便器洗浄及び溜水供給の動作を説明するフローチャートである。
【図13】図12に示すフローチャートに対応するタイミングチャートである。
【図14】実施例2の溜水上昇動作を説明するためのフローチャートである。
【図15】図14に示すフローチャートに対応するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0092】
1 便器
5 着座センサ(着座検出手段)
12 ボール
16 ゼット口
18 リム口
50 ポンプユニット
34 流路切替弁駆動部
35 流路切替弁
60 制御部
62 操作部
63 メモリ
64 タイマ(計時手段)
65 遅延時間設定部(遅延時間設定手段)
66 遅延時間変更部(遅延時間変更手段)
100、100A 便器装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器装置に係り、特に、便器装置の溜水制御に関する。溜水は、封水又はリフィル水とも呼ばれ、下水又は配水管からの臭気が便器内に流入することを防止するために供給される水である。
【背景技術】
【0002】
溜水部が大きい大便器は、汚物がボール面へ付着しにくいという利点があるが、小便時に水が跳ね易いという問題がある。特に、着座して小便をする場合、男性は溢流面よりも上側に着水し易いが、女性は小便が下方に、即ち、溜水に直接落下するために跳ね返り水がかかり易い。但し、男性も立位状態で小便をすれば跳ね返り水が便器の上面に跳ねるという問題もある。
【0003】
特許文献1は、洗浄機構の非駆動時に溜水水位を下げることを提案している。特許文献2は、溜水水位が低下したボールに排尿させ、排尿前後の水位差を測定することにより使用者の尿量を算出し、その後、溢流水位まで洗浄水を供給して便器洗浄を行う便器装置を開示している。
【特許文献1】特開2002−256614号公報(要約)
【特許文献2】特表2004−113630号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、小便時の水跳ねを解消するために、便器面の溜水面を低下させる排水ポンプなどの手段を必要とするため、装置構成が複雑になる。特許文献2は、もともと課題が尿量測定という点で異なり、また、汚物の付着防止の構成もない。
【0005】
本発明は、大便時には汚物のボール面への付着を防止すると共に小便時の跳ね返り水を低減する便器装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての便器装置は、便器と、前記便器のゼット口からボール内へ洗浄水を供給するゼット給水手段と、前記便器のリム口からボール内へ洗浄水を供給するリム給水手段と、前記便器への使用者の着座を検出する着座検出手段と、を有する便器装置において、前記便器のボール内へ洗浄水を供給し洗浄した直後は前記便器の前記ボール内の水位が、前記便器のトラップ部より溢流を開始する溢流水位より低く、封水の効果を得る最低の水位である最低封水水位よりも高い第1の水位になるように前記ゼット給水手段による給水を制御し、前記着座検出手段が使用者の着座を検出後に前記便器のボール内の水位が前記第1の水位より高く前記溢流水位より低い第2の水位になるように前記リム給水手段による給水を制御する制御部を有することを特徴とする。かかる便器装置によれば、起立状態で小便をする場合や着座直後に小便をする場合の溜水水位を低くして跳ね返り又は跳ね返り高さを低くし、着座検出手段が着座を検出した後で溜水水位を高くして大便時の汚物の付着を防止することができる。また、リム供給手段が給水することによってボールに汚物が付着しにくくなる。
【0007】
前記着座検出手段が使用者の着座を検出した時間を計時する計時手段と、前記着座検出手段が使用者の着座を検出した後で前記計時手段が計測した時間が設定時間になるまで前記リム給水手段の給水を遅延するために前記設定時間を設定する遅延時間設定手段と、を更に有してもよい。これにより、小便後に大便を連続して行う場合、小便時には溜水水位を低くして跳ね返り又は跳ね返り高さを低くし、設定時間後に大便をする前に溜水水位を高くして汚物の付着を防止することができる。
【0008】
前記設定時間を変更可能な遅延時間変更手段を更に有してもよい。これにより、小便器が別に設置してあるオフィスの男性用トイレの大便器では遅延をゼロにしたり、人毎に個別的な設定を行ったりすることができる。
【0009】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大便時には汚物のボール面への付着を防止すると共に小便時の跳ね返り水を低減する便器装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例の便器装置について説明する。
【実施例1】
【0012】
図1(a)及び図1(b)は、本発明の実施例1の便器装置100の概略部分透過側面図及び側面図である。図2は、便器装置100のブロック図である。便器装置100は、便器1と便器1を洗浄する洗浄部を有し、ゼット口への給水(係る給水を以下「ゼット給水」と呼ぶ場合もある。)をポンプにより行う。
【0013】
便器1は、水洗大便器であり、内側に汚物を受けるボール12を有する陶器製の本体2と、本体2の上に配置された便座4と、便座4を覆うように配置された蓋7と、本体2の後方上部に配置された図示しない局部洗浄装置と、を有する。便座4の内部又は本体側には、後述する図3に示すように、便器1への使用者の着座を検出する着座検出手段として機能する着座センサ5が設けられる。着座センサ5は、例えば、便座4の便座ヒータの静電容量の変化を測定するセンサや圧力センサを使用することができる。2aは水受けトレイである。また、便器装置100は、使用者のトイレの入出を検出する人体センサ6を更に有する。人体センサ6は、赤外線センサ、トイレのライトの点灯を検出するセンサ、便器装置100のいずれかのスイッチを検出するセンサ、蓋7の開口を検出するセンサなどを利用することができる。
【0014】
洗浄部は、リム洗浄(又はボール洗浄)と、便器洗浄と、溜水供給とを行う。リム洗浄では、ボール12の上縁近傍にあるリム口18からリム13に沿って絞り17を介して旋回状に吐水してボール12を洗浄する。便器洗浄では、ボール12の下部にあるゼット口16から吐水し、サイホン現象を利用してボール12の汚物と溜水を排水管Dから排水する。溜水供給は、下水からの臭気が便器内に流入することを防止する溜水をボール12に供給する。
【0015】
洗浄部は、給水系と、リム洗浄/溜水供給系(リム給水手段)と、便器洗浄/溜水供給系(ゼット給水手段)と、制御系とを有する。洗浄部の幾つかの構成要素は、図1に示す本体2の後方に設けられた機能部10に設けられている。機能部10はサイドパネル10aにより覆われている。
【0016】
給水系は、洗浄水を供給する水道管に直結され、便器洗浄/溜水供給系への給水とリム洗浄/溜水供給系への給水を行い、バルブユニット30を有する。バルブユニット30は、給水金具20、手洗器用の分岐金具21を介して入水口22から流入した水をフレキホース24を介して受け取る。給水金具20は、止水栓20aとストレーナ20bを有する。入水口22には局部洗浄用の分岐金具23が接続され、フレキホース24を介して局部洗浄装置へ給水する。
【0017】
定流量弁31は、流入した水を、例えば、16リットル/分の所定の流量以下に制限する。定流量弁31を通過した洗浄水は給水電磁弁33に流入する。
【0018】
給水電磁弁33は、後述する図3に示す給水電磁弁駆動部32によって開閉駆動され、流路切替弁35に至る流路を開閉する。給水電磁弁33を通過した水の流路は流路切替弁35により切り替えられる。
【0019】
流路切替弁35は、後述する図3に示す流路切替弁駆動部34によって駆動され、便器洗浄/溜水供給系への給水の場合にはタンク給水路35aに流路を選択し、リム洗浄/溜水供給系への給水の場合にはリム給水路35bに流路を選択する。
【0020】
リム洗浄/溜水供給系は、水道の給水圧力により便器1のリム口18からボール内へ洗浄水を供給してリム洗浄を行うと共に同一の経路を使用して便器のリム口18から溜水を供給する。リム洗浄/溜水供給系は、後述するポンプユニット50を介した水の経路(洗浄水管路44b)とは別の、ポンプユニット50を介さない経路(リム給水路35b)を使用する。リム洗浄/溜水供給系は、リム口18、バルブユニット30を有する。リム口18は、ボール12のリム13に形成され、リム13に沿って洗浄水を吐出する。バキュームブレーカ36は、ボール12の上端面よりも上方にリム給水路35bに配置され、洗浄水のリム口18からの逆流を防止する。また、バキュームブレーカ36は、後述するタンク40の溢れ縁よりも上方に配置され、バキュームブレーカ36からの蒸気はダクトより外に排出される。
【0021】
便器洗浄/溜水供給系は、ポンプユニット50によりサイホン現象を発生させて便器洗浄を行うと共に同一の流路を使用して便器1のゼット口16から溜水を供給する。便器洗浄/溜水供給系は、排水トラップ管路14と、ゼット口16と、バルブユニット30と、タンク40と、ポンプユニット50と、ゼット接続ユニット38と、フラッパー弁45と、水抜栓46とを有する。
【0022】
排水トラップ管路14は、ボール12の底部から斜め上方に延びた後で下降するS字形状を有し、サイホン現象が発生するトラップ部である。図2の排水トラップ管路14の下側の輪郭の頂上部における水位L1が溢流水位である。また、図2の排水トラップ管路14の上側の輪郭のボール12との境界の水位が封水効果を実現するための最低封水水位(「喫水水位」と呼ばれる場合もある)である。
【0023】
ゼット口16は、サイホン現象を発生させるのに必要な水の噴出しと溜水の供給を行う。ゼット口16は、ボール12の底部に形成され、排水トラップ管路14の入口に向けて吐水する。ゼット口16の大きさは、従来の約10mmの円形形状から10mm×20mmの角型と大きくなっており、大容量の水を供給することができる。
【0024】
タンク40は、サイホン現象の発生に必要な水を貯える。本実施形態のタンク40は、3リットル以下(約2.5リットル乃至3リットル)の内容積を有する。
【0025】
タンク給水路35aの先端はタンク40の溢れ縁の上方に開口され、タンク40からタンク給水路35aへの逆流を防止する。タンク40の内部には、上端フロートスイッチ41a及び下端フロートスイッチ41bが配置され、タンク40内の水位を検出する。上端フロートスイッチ41aは、タンク40内の水位が所定の貯水水位に達するとオンに切り替わり、後述する制御部60はこれを検知して給水電磁弁33を閉じる。下端フロートスイッチ41bは、タンク40内の水位が所定の水位まで低下するとオンに切り替わり、制御部60はこれを検知してポンプユニット50を停止する。
【0026】
タンク40の上部には、その上端の開口部を覆うように蓋体42aが取り付けられており、蓋体42aの外周とタンク40上部の内壁面の間は水密的に接合されている。蓋体42aには、円形の穴が設けられ、この穴を取り囲むように、筒体42bが上方に向けて延びるように取り付けられている。筒体42bの上端が、タンク40の溢れ縁となっている。タンク40の壁面は、蓋体42aよりも上方まで延び、タンク40の溢れ縁から溢れた洗浄水は、筒体42bの外側を流下し、蓋体42aの上に溜まる(吐水空間)。
【0027】
ポンプユニット50は、タンク40に貯水された水を加圧してゼット口16から吐き出す。ポンプユニット50は、図3に示すように、ポンプモータ駆動部51と、直流モータであるポンプモータ52を内蔵した直流ポンプである。後述するように、ポンプユニット50は、便器洗浄時と溜水供給時で回転数を変更して流量を変更する。本実施例では、後述するように、75リットル/分から20リットル/分に変更する。ポンプには直流ポンプと交流ポンプがあるが、直流ポンプは回転数制御が容易である。ポンプユニット50は、タンク40の下部から延びる洗浄水管路44aにより接続され、タンク40の満水位置(オーバーフローライン)OFLよりも下に配置されている。この結果、タンク40の満水時にもポンプユニット50に水が供給される。
【0028】
洗浄水管路44aの途中には、逆止弁であるフラッパー弁45及び水抜栓46が設けられている。これらは一体として構成され、ポンプユニット50よりも下方の、タンク40の下端部付近の高さに配置されている。水抜栓46を開放することにより、保守時等にタンク40内及びポンプユニット50内の水を排出することができる。フラッパー弁45は、タンク40内の水位がポンプユニット50の高さよりも低くなった場合に、洗浄水がポンプユニット50からタンク40に逆流し、ポンプユニット50から水が抜けることを防止する。
【0029】
ポンプユニット50の流出口は、洗浄水管路44bを介して、ボール12底部のゼット口16に接続されている。洗浄水管路44bの途中は、上方に向けて凸型に形成されており、この凸型部分の最も高い部分である洗浄水管路頂部は、タンク40からゼット口16に至る水の流路で最も高い部位である。この洗浄水管路頂部の高さは、タンク40の満水位置OFLよりも高く、ボール12の溢れ縁よりも低い。
【0030】
ゼット接続ユニット38は、フラッパー弁39を含み、タンク40の水位が満水位置OFLを超えると、オーバーフロー流路38aからの洗浄水を洗浄水管路44bに接続する。
【0031】
洗浄部は、便器洗浄において、ゼット口16から勢い良く水を噴出して強制的にサイホン現象を起こさせるサイホンゼット式を採用する。
【0032】
従来のサイホンゼット式は、サイホン切れ時の空気を巻き込む際のゴボッという騒音が発生する。特に、サイホン切れ後に浮揚している汚物を高速(約8.7m/s)で押し流すブロー流をゼット口16から噴出する形式の便器においては、そのブロー流を噴出している際の騒音が発生する。また、従来の水道直圧ゼット式は、水道の給水圧力にバラツキがあるために流量制御の精度が悪かった。このため、サイホン現象の発生時に無駄水があり、節水効果が十分ではなかった。更に、従来のサイホンゼット式はサイホン現象の発生までに時間がかかっていた。
【0033】
これに対して、洗浄部は、ポンプユニット50を利用して水をゼット口16から噴出する。ポンプユニット50の回転数を通じて流量制御を行うことによって最小限の水量でサイホン現象を発生することができ、無駄水を防止して節水効果を向上することができる。水道の給水圧力はバラツキがあり流量制御が困難である。定流量弁を設けても定流量弁はバネによる機械的制御なので測定精度にバラツキがあり、精度が悪い。一方、流量センサを設けて流量測定をして流量制御をすれば精度は上がるがコストアップを招く。
【0034】
また、洗浄部は、ポンプユニット50を利用して低速(約3.7m/s)で大容量の水を供給する。浮揚している汚物を押し込む速度が低速となるのでその際の騒音が低減する。また、上述したようにゼット口16の径を大きくして大容量のポンプユニット50を利用して供給することによってサイホン現象を起こすための排水トラップ管路14を素早く満水にしてサイホン現象を直ちに発生することができる。これに加えて、サイホン現象の発生中に排水トラップ管路14の内面を覆うほどの大容量の水を連続して供給することによって、サイホン切れの時に吸い込む空気の量を抑えてサイホン切れ時の騒音を抑えている。
【0035】
洗浄部は、タンク40の容量を約3リットル以下に抑えることによってタンクレス式と同等の小型化を実現している。便器1の洗浄には5.5リットルの水が必要であり、サイホン現象を起こす最小限の水量は3リットルである。また、リム洗浄で使用する2.5リットルの水は水圧が低くても洗浄効果を維持することができる。このため、リム洗浄/溜水供給系の経路であるリム給水路35bを、ポンプユニット50を使用する経路である洗浄水管路44bとは分離してリム洗浄にはタンク40の水を使用しないことにした。この結果、タンク40はリム洗浄用の水を貯める必要がなくなる。更に、洗浄部は、便器洗浄と溜水供給の間にポンプユニット50を停止してタンク40への給水を行っている。これによってタンク40が便器洗浄用の洗浄水と溜水を併せた量を収納せずに、便器洗浄用の洗浄水のみを収納する容量を持てば足りることとした。この結果、タンク40の容量を、サイホン現象に必要な3リットルの容量とすることができる。タンク40の容量を小さく押さえることによって便器装置100の小型化を実現することができる。なお、タンク40が貯めるべき水量を3リットル未満(例えば、2.5リットル)として更なる便器装置100の小型化を実現し、便器洗浄時にタンク40への給水を同時に行うことによって便器洗浄用の3リットルを確保してもよい。
【0036】
制御系は、図3に示すように、制御部60と、電源部61と、操作部62と、メモリ63と、タイマ64と、遅延時間設定部(遅延時間設定手段)65と、遅延時間変更部(遅延時間変更手段)66と、を有する。制御部60は、制御系の構成要素に加えて、着座センサ5、人体センサ6、給水電磁弁駆動部32、流路切替弁駆動部34、上端フロートスイッチ41a、下端フロートスイッチ41b、ポンプモータ駆動部51、に電気的に接続されている。
【0037】
制御部60は、操作部62及びメモリ63に格納された情報に基づいて各部の動作を制御するCPUから構成される。電源部61は、制御部60の電源をオンオフし、使用者によって切り替えられる。制御部60は、着座センサ5の検出結果に基づいてゼット給水手段の動作とリム給水手段の動作を制御する。
【0038】
より詳細には、後述するように、制御部60は、便器1の洗浄直後はボール内の水位が第1の水位になるようにゼット給水手段による給水を制御する。ここで、「第1の水位」は、便器1のトラップ部より溢流を開始する溢流水位L1より低く排水管Dからの臭気が浸入しないという封水効果を発揮する最低の水位である最低封水水位L2よりも高い水位である。また、制御部60は、着座センサ5が使用者の着座を検出後に(直後でもよいし一定時間後でもよい)ボール内の水位が第1の水位より高く溢流水位L1より低い第2の水位になるようにリム給水手段による給水を制御する。かかる便器装置100によれば、起立状態で小便をする場合や着座直後に小便をする場合の溜水水位を低くして跳ね返り又は跳ね返り高さを低くし、着座センサ5が着座を検出した後で溜水水位を高くして大便時の汚物の付着を防止することができる。また、リム供給手段が給水することによってボールに汚物が付着しにくくなる。
【0039】
操作部62は、大洗浄スイッチ、小洗浄スイッチ、局部スイッチを含む。大洗浄スイッチと小洗浄スイッチは、それぞれ、大便時と小便時の便器洗浄に使用されるスイッチである。局部スイッチは局部(お尻洗浄及び/又はビデ洗浄)に使用されるスイッチである。大洗浄スイッチに対応するポンプユニット50の回転数は小洗浄スイッチに対応するポンプユニット50の回転数よりも高く設定される。
【0040】
メモリ63は、後述する洗浄動作を制御する情報や洗浄方法をソフトウェアとして格納する。また、メモリ63は、タイマ64のための遅延時間(設定時間)Tを保持する。遅延時間(設定時間)Tは、着座センサ5が使用者の着座を検出した後でタイマ64が計測した時間が遅延時間(設定時間)になるまでリム給水手段の給水を遅延するために使用される。
【0041】
タイマ64は、着座センサ5が使用者の着座を検出した時間を計時する計時手段として機能する。具体的には、タイマ64は、着座センサ5が使用者の着座を検出すると同時に計時を開始し、着座センサ5が使用者の離座を検出するとリセットされる。
【0042】
遅延時間設定部65は、着座センサ5が使用者の着座を検出した後でタイマ64が計測した時間が設定時間になるまでリム給水手段の給水を遅延するための、メモリ63が保持すべきデフォルト設定時間を初期設定する。遅延時間設定部65は、入力部(テンキーや数値を増減する矢印キー)と設定時間を表示するディスプレイとを有するが、タッチパネルでもよい。タイマ64と遅延時間設定部65によって、小便後に大便を連続して行う場合、小便時には溜水水位を低くして跳ね返り又は跳ね返り高さを低くし、設定時間後に大便をする前に溜水水位を高くして汚物の付着を防止することができる。
【0043】
遅延時間変更部66は、遅延時間設定部65が設定した設定時間又はデフォルト設定時間を変更可能に構成されている。これにより、小便器が別に設置してあるオフィスの男性用トイレの大便器では遅延をゼロにしたり、人毎に個別的な設定を行ったりすることができる。遅延時間変更部66は、入力部(テンキーや数値を増減する矢印キー)と設定時間を表示するディスプレイとを有するが、タッチパネルでもよく、本実施例では遅延時間設定部65と一体に構成される。本実施例の遅延時間変更部66は、女性用設定、男性用設定、個別設定が選択可能である。女性用設定が選択された場合、遅延時間は女性用設定時間である30秒となり、男性用設定が選択された場合、遅延時間は男性用設定時間である5秒となる。また、個別設定が選択された場合、使用者が遅延時間を任意に設定することができる。例えば、大便時に最初に小便をしてから一定時間して大便をする者もいるが、これが略同時や逆の者もいる。更に、幼稚園の子供用トイレや老人ホームのお年寄り用トイレでは必ずしも上述の30秒や5秒とならない場合もある。
【0044】
以下、図4を参照して、本実施例の溜水制御について説明する。図4は、ポンプユニット50を利用して第1の水位を確保する実施例における、リム洗浄、便器洗浄及び溜水供給動作のフローチャートである。
【0045】
まず、制御部60は、使用者による操作部62の便器洗浄スイッチの操作を受け付けて洗浄動作を開始する(ステップ1000)。これに応答して、制御部60は、給水電磁弁駆動部32を制御して給水電磁弁33を開弁すると共に流路切替弁駆動部34を制御して流路切替弁35をリム側に切り替える(ステップ1002)。これにより、リム洗浄が行われる。
【0046】
具体的には、水道水が給水金具20、分岐金具21、入水口22、フレキホース24から定流量弁31に流入する。定流量弁31は、水道の給水圧力が高い場合には水の流量を制限し、給水圧力が低い場合には流量制御をせずにそのまま通過させる。その後、水は、給水電磁弁33、流路切替弁35を通過し、バキュームブレーカ36、リム給水路35bを通ってリム口18から吐出される。リム口18から吐出された水は、ボール12内のリム13を旋回しながら下降してボール12の内壁面を洗浄する。リム洗浄は5秒間継続する(ステップ1004)。
【0047】
リム洗浄はポンプユニット50を介さないリム給水路35bを介して行われる。ボール12のリム13の洗浄は水圧が弱くても足りるのでタンク40内の水をポンプユニット50により加圧して吐出する必要がない。タンク40の水が減らないのでその後にタンク40への給水を行う必要もなく、便器洗浄とその後の溜水供給に直ちに移行することができる。また、エア混入なしの整流吐水で低圧損の洗浄であり、リム洗浄は静音を実現している。
【0048】
リム洗浄が終了すると、制御部60は、給水電磁弁駆動部32を制御して給水電磁弁33の開口状態を維持し、流路切替弁駆動部34を制御して流路切替弁35をタンク側に切り替える。そして、制御部60は、流量8リットル/分でタンク40への給水を開始すると共に、ポンプモータ駆動部51を制御してポンプモータ52を制御して便器洗浄を行う(ステップ1006)。
【0049】
具体的には、タンク40内に貯水されていた水は、フラッパー弁45、水抜栓46を通ってポンプユニット50に流入し、加圧される。ポンプユニット50が加圧した水は、洗浄水管路44bを通ってゼット口16から吐出される。
【0050】
ゼット口16から吐出された洗浄水は排水トラップ管路14内に流入し、排水トラップ管路14を満水にしてサイホン現象を引き起こす。これにより、ボール12内の溜水及び汚物は、排水トラップ管路14に吸引され、排水管Dから排出される。
【0051】
便器洗浄においては、制御部は75リットル/分の大容量の水がゼット口16から低速で吐出されるようにポンプユニット50を高速回転(約3300rpm)に制御する。この結果、サイホン現象を素早く発生させて溜水及び汚物を素早く排出することができる。また、サイホン現象が素早く発生するので無駄水も少なくなる。
【0052】
便器洗浄は2.9秒間継続される(ステップ1008)。この2.9秒の後半でポンプユニット50の回転数を減少させてもよい。この後半では、サイホン切れの際の空気の吸い込み量を抑えるために水を供給する期間である。便器洗浄においては、低速で大容量の水を供給しているので、サイホン切れの際の騒音と浮揚する汚物を押し込む際の騒音が低減して静音を実現している。ポンプユニット50が慣性により数回転回ることの押し出し水によって排水トラップ管路14の入口が水没することによって、排水管Dからの臭気逆流がないように封止している。
【0053】
制御部60は、2.9秒経過後にポンプモータ駆動部51を制御してポンプモータ52を停止して便器洗浄を終了する(ステップ1010)。但し、制御部60は、タンクへの給水は維持する。制御部60は、便器洗浄の開始と共にタンク40への給水を行っており、溜水を早期に供給することができる。タンク40への給水は更に5秒間、合計7.9秒間継続する(ステップ1012)。これにより、タンク40には溜水に必要な水が貯まる。
【0054】
次に、制御部60は、タンク40への給水を維持したまま、ポンプモータ駆動部51を制御してポンプモータ52を駆動して溜水供給を開始する(ステップ1014)。このように、本実施例では、便器洗浄開始と同時にタンク40への給水を行い、その給水された水を溜水として使用する。タンク40は便器洗浄に必要な水を貯める容量があれば足り、溜水を併せて貯水する必要がないため、便器装置100は小型になる。また、ポンプユニット50により溜水の流量制御を精度良く行うことができるため、無駄水の発生を防止して節水を実現することができる。本実施例は、サイホン現象の発生に使用されるポンプユニット50を溜水制御にも使用して多機能化しているため、流量センサなどの新たな部材を設ける必要がない。このため、便器装置100を小型にすることができる。
【0055】
溜水供給においては、制御部は20リットル/分の低容量の水がゼット口16から吐出されるようにポンプユニット50を低速回転(約1000rpm)に制御する。このように、ポンプユニット50は便器洗浄時よりも溜水供給時の流量(回転数)が低い。これにより、溜水供給時にサイホン現象が発生することを防止し、溜水量制御の精度を高めることができる。便器洗浄は2秒間継続される(ステップ1016)。但し、制御部60は、タンク40への給水は維持する。
【0056】
次に、制御部60は、ポンプモータ駆動部51を制御してポンプモータ52を停止して溜水供給を停止する(ステップ1018)。このように、制御部60は流路切替弁35やポンプユニット50を含むゼット給水手段の給水を制御し、便器1の洗浄直後はボール12内の水位は第1の水位になるようにする。「第1の水位」は、便器1のトラップ部より溢流を開始する溢流水位L1より低く、排水管Dからの臭気が浸入しない最低水位である最低封水水位L2よりも高い水位である。
【0057】
タンク40への給水は上端フロートスイッチ41aが満水を検出するまで(通常、更に20秒間)継続する(ステップ1020)。これにより、タンク40は満水となる。
【0058】
次に、制御部60は、給水電磁弁駆動部32を制御して給水電磁弁33を閉弁して給水を停止し(ステップ1022)、待機状態となる(ステップ1024)。
【0059】
なお、ステップ1012において、5秒は2秒であってもよい。これにより、給水動作によってタンク40が満水になる前に溜水の供給を開始することになる。この結果、溜水供給とタンク40への給水を同時に行うことによって便器1に溜水がない時間を短くすることができる。このように、タンク40への給水後のみならず給水中にポンプユニット50を駆動して溜水を供給してもよい。
【0060】
以下、図5及び図6を参照して、本実施例の別の溜水制御について説明する。図5は、リム給水によって第1の水位を確保する実施例のフローチャートであり、図6はそのタイミングチャートである。
【0061】
まず、制御部60は、人体センサ6が使用者を検出したかどうかを判断し(ステップ1102)、人体センサ6が人体を検出するまでステップ1102を継続する。ノイズによる誤検知を防止するため、1秒程度連続した検出時間が経過した後に制御部60は使用者が存在すると判断する。制御部60は、人体センサ6が人体を検出したと判断すると(ステップ1102)、流路切替弁駆動部34を介して流路切替弁35をリム開側へ駆動する(ステップ1104)。また、制御部60は、給水電磁弁駆動部32を介して給水電磁弁33を開く(ステップ1106)。図6のA部はこの状態を示している。リム給水は、ボール12の乾燥面に付着した汚物を溜水面へ落とす目的であるため、1〜2秒程度の短時間でよく、図5では1秒に設定している。また、後述するゼット洗浄によるボール内へのゼット給水と同時にリム給水も行うことが可能であるため、前リム給水を省略してもよい。
【0062】
制御部60は、前リム時間としての1秒が経過したかどうかを判断し(ステップ1108)、1秒経過するまでステップ1108を継続する。制御部60は、リム給水時間(前リム)が経過したと判断すると(ステップ1108)、ポンプモータ駆動部51を介してポンプモータ52を駆動し(ステップ1110)、タンク40内の水を便器1へゼット口16から給水する。これにより、上述のサイホン現象を起こして汚物を排出する。
【0063】
ゼット口16から給水される水はタンク40内に貯水された水であるため、給水圧を利用したリム給水とゼット給水をほぼ同時に行うことができる。これにより、ボール12内に付着した汚物を便器1下部へ洗い落としながら汚物の排水管Dへの押し出しが同時にできる。ゼット給水時間は、サイホンを発生するために必要な給水水量以上あればよいので本実施例は4.5秒に設定している。図6のB部はこの状態を示している。
【0064】
制御部60は、ゼット給水時間としての4.5秒が経過したかどうかを判断し(ステップ1112)、ゼット給水時間が経過するまでステップ1112を継続する。制御部60は、ゼット給水時間が経過したと判断すると(ステップ1112)、ポンプユニット50を停止する(ステップ1114)。給水電磁弁33は開状態のままなので、リム給水だけが継続して行われている(後リム)。その後、後リム動作により、溜水を形成する。後リム給水時間は、溜水が第1の水位になるまでの予め決められた時間であり、本実施例は4.3秒に設定している。図6のC部はこの状態を示している。
【0065】
制御部60は、後リム給水時間としての4.3秒が経過したかどうかを判断し(ステップ1116)、後リム給水時間が経過するまでステップ1116を継続する。制御部60は、後リム給水時間が経過したと判断すると(ステップ1116)、流路切替弁駆動部34を介して流路切替弁35をタンク40への給水のためにタンク側へ移動させる(ステップ1118)。図6のD部はこの状態を示している。
【0066】
次に、制御部60は、タンク40が満水になったかどうかを上端フロートスイッチ41aを介して判断し(ステップ1120)、タンク40が満水になるまでステップ1120を継続する。制御部60は、タンク40が満水になったと判断すると(ステップ1120)、流路切替弁駆動部34を介して流路切替弁35を待機位置に移動する(ステップ1122)。また、制御部60は、給水電磁弁駆動部32を介して給水電磁弁33を閉弁する(ステップ1124)。一連の洗浄動作が完了した後には、ボール12内は第一の水位になっている。図6のE部はこの状態を示している。
【0067】
次に、図7及び図8を参照して、本実施例の溜水上昇動作について説明する。ここで、図7は、本実施例の溜水上昇動作を説明するためのフローチャートであり、図8はそのタイミングチャートである。
【0068】
図8のA部に示すようにボール12内は第1の水位に維持されている。制御部60は、着座センサ5が使用者の着座を検出したかどうかを判断し(ステップ1202)、着座センサ5が使用者の着座を検出するまでステップ1202を継続する。着座センサ5が使用者の着座を検出すると(ステップ1202)、タイマ64が着座時間の計時を開始する(ステップ1204)。タイマの着座開始からの遅延時間(設定時間)Tは人が着座して小便を終える時間を想定して予め決定されており、例えば、15秒から30秒程度である。この後に、第1の水位から第2の水位に移行することによって座位による小用時の跳ね返りを回避することができる。但し、後述するように、設定時間Tを略ゼロにしてもよい。
【0069】
制御部60は、着座時間が設定時間Tよりも大きくなったかどうかを判断し(ステップ1206)、着座時間が設定時間Tよりも大きくなるまでステップ1206を継続する。制御部60は、着座時間が設定時間Tよりも大きくなったと判断すると(ステップ1206)、流路切替弁駆動部34を介して流路切替弁35をリム開側へ駆動する(ステップ1208)。ここでは、図8のB部に示すように、所定時間かけてリム開位置へ移動させ徐々に給水することにより、リム給水路35b内での空気と水の衝突音を軽減している。また、制御部60は、給水電磁弁駆動部32を介して給水電磁弁33を開く(ステップ1210)。次に、制御部60は、第1の水位から第2の水位に必要な前リム時間である3秒が経過したかどうかを判断し(ステップ1212)、前リム時間が経過するまでステップ1212を継続する。制御部60は、前リム時間が経過したと判断すると(ステップ1212)、給水電磁弁駆動部32を介して給水電磁弁33を閉める(ステップ1214)。また、制御部60は、流路切替弁駆動部34を介して流路切替弁35を待機位置に駆動する(ステップ1216)。図8のC部に示す、このときの流路切替弁35の移動時間は、既に給水電磁弁33を閉じているために任意でよい。図8のD部に示すように、第2の水位を溢流水位にすれば、性能上最大となる溜水面積を確保できるので便器面への汚物付着を最大限防止することができる。
【0070】
なお、立位により小便が行われた時は、着座時間の計時は行われず第1の水位のままであるので、この場合に小用時の跳ね返りを回避することができる。
【0071】
また、遅延時間をゼロにして着座直後にリムより給水開始してもよい。この場合、ボール面を濡らしているので大便がされても付着しにくく便器1の汚れ防止に効果ある。代替的に、給水量を少なくして第2の水位になる時間を長くすることも可能である。そうすることにより、水位上昇を徐々にすることにより小用の跳ね返りをより長い期間防止することができる。
【0072】
遅延時間をゼロにして給水量を少なくして第二の水位になる時間を長くしてもよい。給水開始してから第二の水位になるまでは遅延時間(例えば、15秒から30秒程度)程度に時間をかけて完了すればいい。第2の水位になる時間が早すぎると小用時の跳ね返りが大きくなる。
【0073】
図9は、遅延時間の設定及び変更動作を説明するためのフローチャートである。まず、制御部60は、遅延時間変更部66による設定切替操作があるかどうかを判断する(ステップ1302)。制御部60は、遅延時間変更部66による設定変更がないと判断すれば遅延時間Tをデフォルト設定値である15秒に設定する(ステップ1304)。次に、制御部60は、遅延時間変更部66による設定変更があると判断すれば(ステップ1302)、女性用設定が選択されたかどうか判断する(ステップ1306)。制御部60は、女性用設定が選択されたと判断すれば遅延時間Tをデフォルト値から女性用設定値(例えば、30秒)に変更する(ステップ1308)。制御部60は、女性用設定が選択されていないと判断すれば(ステップ1306)、男性用設定が選択されたかどうか判断する(ステップ1310)。制御部60は、男性用設定が選択されたと判断すれば遅延時間Tをデフォルト値から男性用設定値(例えば、5秒)に変更する(ステップ1312)。制御部60は、男性用設定が選択されていないと判断すれば(ステップ1310)、遅延時間Tをデフォルト値から個別設定値に設定する(ステップ1314)。
【実施例2】
【0074】
図10は、本発明の実施例2の便器装置100Aのブロック図である。便器装置100は、便器1と便器1を洗浄する洗浄部を有し、ゼット給水を水道直圧により行う。従って、便器装置100Aにはタンク40がない。図10において、図2と同一の部材については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0075】
流路切替弁35Aは、図11に示す流路切替弁駆動部34によって駆動され、便器洗浄/溜水供給系への給水の場合にはゼット給水路35cに流路を選択し、リム洗浄/溜水供給系への給水の場合にはリム給水路35bに流路を選択する。
【0076】
リム洗浄/溜水供給系の構成は図2と同様である。便器洗浄/溜水供給系は、水道直圧によりサイホン現象を発生させて便器洗浄を行うと共に同一の流路を使用して便器1のゼット口16から溜水を供給する。便器洗浄/溜水供給系は、バルブユニット30と、ゼット口16と、を有する。図11は、便器装置100Aの制御系のブロック図であり、図3と同一部材には同一の参照符号を付している。
【0077】
以下、図12及び図13を参照して、本実施例の溜水制御について説明する。図12は、リム給水によって第1の水位を確保する実施例のフローチャートであり、図13はそのタイミングチャートである。
【0078】
まず、制御部60は、洗浄スイッチが押されたかどうかを判断し(ステップ1402)、押されるまでステップ1402を継続する。制御部60は、操作部62の(大又は小)洗浄スイッチが押されたと判断すると(ステップ1402)、流路切替弁駆動部34を介して流路切替弁35Aをリム開側へ駆動する(ステップ1404)。また、制御部60は、給水電磁弁駆動部32を介して給水電磁弁33を開く(ステップ1406)。図13のA部はこの状態を示している。なお、着座センサ5による使用者の離座の検出をトリガとしてもよい。リム給水(前リム)は、ボール12の乾燥面に付着した汚物を溜水面へ落とすため、本実施例では6秒に設定している。図13のB部はこの状態を示している。
【0079】
制御部60は、前リム時間としての6秒が経過したかどうかを判断し(ステップ1408)、6秒経過するまでステップ1408を継続する。制御部60は、リム給水時間(前リム)が経過したと判断すると(ステップ1408)、流路切替弁駆動部34を介して流路切替弁35Aをゼット給水路開側へ駆動する(ステップ1410)。これにより、便器1へゼット口16から給水し、サイホン現象を起こして汚物を排出する。このとき、リム給水は行われず、実施例1と異なり、流路切替弁35Aが移動している過程を除き、リム給水とゼット給水を同時に行うことができない。制御部60は、ゼット給水時間としての6秒が経過したかどうかを判断し(ステップ1412)、ゼット給水時間が経過するまでステップ1412を継続する。ゼット時間は、そのゼット給水流量が水道圧に依存してしまうため、低水圧現場に設定された場合の洗浄不良を考慮して本実施例は比較的長い時間である6秒に設定している。図13のC部はこの状態を示している。
【0080】
制御部60は、ゼット給水時間が経過したと判断すると(ステップ1412)、流路切替弁駆動部34を介して流路切替弁35Aをリム開位置へ移動させる(ステップ1414)。これにより、後リム給水を実施する。後リム給水時間は、実施例1と同様、第1の水位になるまでの予め定められた時間であり、例えば4.3秒である。図13のD部はこの状態を示している。
【0081】
制御部60は、後リム給水時間としての4.3秒が経過したかどうかを判断し(ステップ1416)、後リム給水時間が経過するまでステップ1416を継続する。制御部60は、後リム給水時間が経過したと判断すると(ステップ1416)、給水電磁弁駆動部32を介して給水電磁弁33を閉弁する(ステップ1418)。一連の洗浄動作が完了した後には、ボール12内は第1の水位になっている。図13のE部はこの状態を示している。
【0082】
本実施例では、前回の洗浄終了後に次回の入室に備えて溜水水位を低下させているが、溜水低下動作の起動条件として人体センサ6、図示しないリモコン操作、蓋7の開動作をトリガにしてもよい。
【0083】
次に、図14及び図15を参照して、本実施例の溜水上昇動作について説明する。ここで、図14は、本実施例の溜水上昇動作を説明するためのフローチャートであり、図15はそのタイミングチャートである。
【0084】
図15のA部に示すようにボール12内は第1の水位に維持されている。制御部60は、着座センサ5が使用者の着座を検出したかどうかを判断し(ステップ1502)、着座センサ5が使用者の着座を検出するまでステップ1502を継続する。着座センサ5が使用者の着座を検出すると(ステップ1502)、タイマ64が着座時間の計時を開始する(ステップ1504)。タイマの着座開始からの遅延時間(設定時間)Tは人が着座して小便を終える時間を想定して予め決定されており、例えば、15秒から30秒程度である。この後に、第1の水位から第2の水位に移行することによって座位による小用時の跳ね返りを回避することができる。但し、上述したように、設定時間Tを略ゼロにしてもよい。
【0085】
制御部60は、着座時間が設定時間Tよりも大きくなったかどうかを判断し(ステップ1506)、着座時間が設定時間Tよりも大きくなるまでステップ1206を継続する。制御部60は、着座時間が設定時間Tよりも大きくなったと判断すると(ステップ1506)、給水電磁弁駆動部32を介して給水電磁弁33を開く(ステップ1508)。本実施例では、流路切替弁35Aは既にリム開位置へあるため、流路切替弁35Aの移動時間は発生しない。即ち、実施例1の流路切替弁35のように、流路切替弁35Aを徐々に開弁して水位を徐々に上昇させることは困難である。図15のB部はかかる状態を示す。
【0086】
次に、制御部60は、第1の水位から第2の水位に必要な前リム時間である3秒が経過したかどうかを判断し(ステップ1510)、前リム時間が経過するまでステップ1510を継続する。制御部60は、前リム時間が経過したと判断すると(ステップ1510)、給水電磁弁駆動部32を介して給水電磁弁33を閉める(ステップ1512)。図15のC部はかかる状態を示す。図15のD部に示すように、第2の水位を溢流水位にすれば、性能上最大となる溜水面積を確保できるので便器面への汚物付着を最大限防止することができる。
【0087】
なお、立位により小便が行われた時は、着座時間の計時は行われず第1の水位のままであるので、この場合に小用時の跳ね返りを回避することができる。
【0088】
また、遅延時間をゼロにして着座直後にリムより給水開始してもよい。この場合、ボール面を濡らしているので大便がされても付着しにくく便器1の汚れ防止に効果ある。代替的に、給水量を少なくして第二の水位になる時間を長くすることも可能である。そうすることにより、水位上昇を徐々にすることにより小用の跳ね返りをより長い期間防止することができる。
【0089】
遅延時間をゼロにして給水量を少なくして第二の水位になる時間を長くしてもよい。給水開始してから第二の水位になるまでは遅延時間(例えば15秒から30秒程度)程度に時間をかけて完了すればいい。第2の水位になる時間が早すぎると小用時の跳ね返りが大きくなる。
【0090】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内で様々な変形及び変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1(a)及び図1(b)は、本発明の実施例1の便器装置の部分透過側面図及び側面図である。
【図2】本発明の実施例1の便器装置のブロック図である。
【図3】図1に示す便器装置の制御系のブロック図である。
【図4】図1に示す便器装置のリム洗浄、便器洗浄及び溜水供給の動作を説明するフローチャートである。
【図5】図1に示す便器装置の別のリム洗浄、便器洗浄及び溜水供給の動作を説明するフローチャートである。
【図6】図5に示すフローチャートに対応するタイミングチャートである。
【図7】実施例1の溜水上昇動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】図7に示すフローチャートに対応するタイミングチャートである。
【図9】実施例1の遅延時間の設定及び変更動作を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の実施例2の便器装置のブロック図である。
【図11】図10に示す便器装置の制御系のブロック図である。
【図12】図10に示す便器装置のリム洗浄、便器洗浄及び溜水供給の動作を説明するフローチャートである。
【図13】図12に示すフローチャートに対応するタイミングチャートである。
【図14】実施例2の溜水上昇動作を説明するためのフローチャートである。
【図15】図14に示すフローチャートに対応するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0092】
1 便器
5 着座センサ(着座検出手段)
12 ボール
16 ゼット口
18 リム口
50 ポンプユニット
34 流路切替弁駆動部
35 流路切替弁
60 制御部
62 操作部
63 メモリ
64 タイマ(計時手段)
65 遅延時間設定部(遅延時間設定手段)
66 遅延時間変更部(遅延時間変更手段)
100、100A 便器装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器と、前記便器のゼット口からボール内へ洗浄水を供給するゼット給水手段と、前記便器のリム口からボール内へ洗浄水を供給するリム給水手段と、前記便器への使用者の着座を検出する着座検出手段と、を有する便器装置において、
前記便器のボール内へ洗浄水を供給し洗浄した直後は前記便器の前記ボール内の水位が、前記便器のトラップ部より溢流を開始する溢流水位より低く、封水の効果を得る最低の水位である最低封水水位よりも高い第1の水位になるように前記ゼット給水手段による給水を制御し、前記着座検出手段が使用者の着座を検出後に前記便器のボール内の水位が前記第1の水位より高く前記溢流水位より低い第2の水位になるように前記リム給水手段による給水を制御する制御部を有することを特徴とする便器装置。
【請求項2】
前記着座検出手段が使用者の着座を検出した時間を計時する計時手段と、
前記着座検出手段が使用者の着座を検出した後で前記計時手段が計測した時間が設定時間になるまで前記リム給水手段の給水を遅延するために前記設定時間を設定する遅延時間設定手段と、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の便器装置。
【請求項3】
前記設定時間を変更可能な遅延時間変更手段を更に有することを特徴とする請求項2に記載の便器装置。
【請求項1】
便器と、前記便器のゼット口からボール内へ洗浄水を供給するゼット給水手段と、前記便器のリム口からボール内へ洗浄水を供給するリム給水手段と、前記便器への使用者の着座を検出する着座検出手段と、を有する便器装置において、
前記便器のボール内へ洗浄水を供給し洗浄した直後は前記便器の前記ボール内の水位が、前記便器のトラップ部より溢流を開始する溢流水位より低く、封水の効果を得る最低の水位である最低封水水位よりも高い第1の水位になるように前記ゼット給水手段による給水を制御し、前記着座検出手段が使用者の着座を検出後に前記便器のボール内の水位が前記第1の水位より高く前記溢流水位より低い第2の水位になるように前記リム給水手段による給水を制御する制御部を有することを特徴とする便器装置。
【請求項2】
前記着座検出手段が使用者の着座を検出した時間を計時する計時手段と、
前記着座検出手段が使用者の着座を検出した後で前記計時手段が計測した時間が設定時間になるまで前記リム給水手段の給水を遅延するために前記設定時間を設定する遅延時間設定手段と、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の便器装置。
【請求項3】
前記設定時間を変更可能な遅延時間変更手段を更に有することを特徴とする請求項2に記載の便器装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−84779(P2009−84779A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251651(P2007−251651)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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