説明

便器装置

【課題】室温変化に影響されずに報知のタイミングのばらつきを小さく抑えることができ、洗剤無しでの便器洗浄を回避する。
【解決手段】便器の洗浄回数を計測するカウンタ7と、所定の洗浄回数に達したときに外部に警告表示する報知手段8とを備えると共に、洗剤タンク2より吐出する液体洗剤の粘度又はそれに対応する値を測定する粘度測定手段9と、1回当たりの洗剤使用量を粘度又はそれに対応する値の変化に応じた洗剤吐出量に換算して前記所定の洗浄回数に補正を加える洗浄回数補正回路11とを備えた便器装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器装置に関し、詳しくは便器のボウル部を洗浄する洗浄水に、洗剤タンクより液体洗剤を投入して洗剤洗浄を行う便器装置に関するするものである。
【背景技術】
【0002】
洗剤タンク中に貯留した液体洗剤を便器のボウル部に洗浄水を供給する洗浄水流路に投入して、洗剤入りの洗浄水を用いてボウル部を自動的に洗剤洗浄する便器装置にあっては、定期的に洗剤タンク内への液体洗剤の補充が必要となる。
【0003】
しかし、洗剤タンクは便器内に収納されていて外部から洗剤残量を把握できない。そのため一般的に、便器洗浄時に泡が出なくなった時点で洗剤が無くなったものと判断しており、このような判断では泡を見落としやすく、洗剤無しで便器洗浄が行われてしまうおそれがある。
【0004】
そこで従来より、特許文献1において、検出装置及びカウンタ装置により検出されたトイレの利用者数に基づき、洗浄液供給量算出手段により洗浄液の供給量を算出し、洗浄液補充・交換時期報知手段により液体洗剤を補充・交換すべき時期に至ったことを報知する保守管理システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−245187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、洗剤のような薬液の粘度は温度が低いほど高く、温度が高いほど低くなる温度依存性を有しているため、洗剤の温度変化が起これば、洗剤タンクからの洗剤使用量や流速が変動し、そのため季節、昼夜を通じて1回当たりの洗剤使用量が変化する。特に洗剤タンクがボウル部から離れて設置されている場合は洗剤の移動距離が長くなり、室温の影響が大となる。
【0007】
このため、前記特許文献1に示された従来例のように、洗浄液の供給量を算出して定期的に警告表示を行う報知システムでは、室温変化に影響されて洗剤残量にばらつきが生じやすい。結果、報知のタイミングにばらつきが生じやすくなるという課題を有している。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、室温が変化した場合でも報知のタイミングのばらつきを小さく抑えることができ、洗剤無しでの便器洗浄を回避することができる便器装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、第1の発明は、便器のボウル部を洗浄する洗浄水に、洗剤タンクより液体洗剤を投入して洗剤洗浄を行う便器装置であって、前記便器の洗浄回数を計測するカウンタと、所定の洗浄回数に達したときに外部に警告表示する報知手段とを備えると共に、前記洗剤タンクより吐出する液体洗剤の粘度又はそれに対応する値を測定する粘度測定手段と、1回当たりの洗剤使用量を粘度又はそれに対応する値の変化に応じた洗剤吐出量に換算して前記所定の洗浄回数に補正を加える洗浄回数補正回路とを備えることを特徴としている。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、粘度測定手段は、洗剤タンクの周囲の室温を検出する温度センサを備えていることを特徴とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、報知を実行する所定の洗浄回数を室温変化に応じて調整することにより、室温が変化した場合でも報知のタイミングのばらつきを小さく抑えることができ、洗剤無しでの便器洗浄を回避できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の便器装置の制御部に関連するブロック図である。
【図2】同上の便器装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
本便器装置1の基本構造を図2に示す。給水路6の上流端は図示しない水道管に接続され、下流端はボウル部4内に臨んで配置される。給水路6の途中には電磁弁からなる給水制御弁12を設けてあり、該給水制御弁12を開閉することにより給水路6への水の供給の有無が切り替えられる。給水路6の給水制御弁12よりも下流側には、給水路6内に空気を取り込むための空気供給路13が接続されている。給水路6の空気供給路13との接続部よりも下流側には、後述する洗剤供給路5の他端側が接続されている。
【0015】
本便器装置1は、ターントラップ方式のもので、フレキシブルなトラップ筒14を備え、トラップ筒14の一端はボウル部4の下部から後方に突出する排水筒部15に接続され、他端は自由端となっている。トラップ筒14をモータ(図示せず)により回動させることで、自由端側の開口を上向きとしたトラップ構造を形成する状態と、自由端側の開口を下向きとして排出孔から外部配管(図示せず)に排水される状態とを選択できるようになっている。
【0016】
便器内部のボウル部4よりも後方に設けた空間部には、液体洗剤3を貯留する洗剤タンク2と、洗剤タンク2中の液体洗剤3を外部の循環洗剤路17に送出するための循環ポンプ19と、一端が循環洗剤路17の横管部に接続され他端が前記給水路6内に接続される洗剤供給路5とが設けられている。図2中の16は便蓋であり、22は循環ポンプ19の運転時には開き、停止時には閉じて洗剤漏れを防止するための弁である。
【0017】
上記循環洗剤路17は、側面視L字状をした互いに平行な往き側接続管17aと戻り側接続管17bとを備えている。往き側接続管17aと戻り側接続管17bのそれぞれの横管部はU字状に連続形成されていると共に、往き側接続管17aと戻り側接続管17bのそれぞれの縦管部は洗剤タンク2のキャップ18をそれぞれ貫通して、洗剤タンク2内部にそれぞれ差し込まれている。循環ポンプ19を運転することで、洗剤タンク2内の液体洗剤3が往き側接続管17aから吸い出されて戻り側接続管17bから戻るように、循環洗剤路17内を循環するようになっている。洗剤タンク2の洗剤補給口部20は取り外し可能な蓋21で塞がれている。
【0018】
便器洗浄時には、循環ポンプ19を運転した状態で給水制御弁12を開くと、水道管から給水路6に流れこんだ水には空気供給路13から空気が混入される。これと同時に、洗剤供給路5内に発生する負圧によって弁22が開放されて循環洗剤路17を循環する液体洗剤3の一部が洗剤供給路5を経由して給水路6内に吸い込まれて洗浄水に混入される。これにより洗剤が混合し且つ微小化された気泡を含む洗浄効果の高い洗浄液が、ボウル部4に吐出されて洗剤洗浄が行われる。
【0019】
次に、洗剤補充時の制御動作について説明する。
【0020】
本便器装置1は、図1に示すように、便器洗浄を行う洗浄回数を記憶するカウンタ7と、所定の洗浄回数に達したときに外部に警告表示する報知手段8と、報知手段8を作動する制御部10とを備えている。報知手段8として、例えば、ブザーによる警告音、或いはランプや発光ダイオードによる点灯表示などが挙げられる。
【0021】
先ず、室温変化を考慮しない場合を説明する。洗剤タンク2から吐出する1回当たりの洗剤使用量をm、洗浄回数をnとしたとき、1回当たりの洗剤使用量mは予め決まっており、洗浄回数nはカウンタ7で把握できる。従って、洗剤タンク2の容量をA、洗剤残量をB(例えばAの1割以下)としたとき、A−(m×n)≦Bの関係から、報知を実行する所定の洗浄回数nを求めることができる。制御部10は、所定の洗浄回数nに達したときに報知手段8を作動して外部への警告表示を行う。
【0022】
ところで、1回当たりの洗剤使用量mは温度に依存して変化する。つまり、薬液である液体洗剤3は固有の粘度を有しており、温度対粘度の特性は温度が高いときは粘度が低く、温度が低いと粘度は高くなる性質がある。このことから、室温変化に応じて1回当たりの洗剤使用量mにばらつきが生じやすくなり、結果、洗剤残量Bを正確に把握できなくなる。
【0023】
そこで、本便器装置1の制御部10には、図1に示すように、1回当たりの洗剤使用量m(予め決められた数値)を粘度変化に応じた洗剤吐出量(検出された室温下で洗剤タンク2から吐出する洗剤量)に換算するための補正係数データが予め記憶されている。更に、液体洗剤3の粘度又はそれに対応する値(例えば粘度検出信号等)を測定する粘度測定手段9と、粘度変化に応じて報知を実行する所定の洗浄回数nに補正を加えるための洗浄回数補正回路11とが設けられている。
【0024】
本例では、粘度測定手段9は、洗剤タンク2の周囲の室温を検出する温度センサ9aと、温度センサ9aの検出温度から液体洗剤3の粘度を換算する粘度算出回路9bとで構成されている。
【0025】
この温度センサ9aで検出された室温と、カウンタ7でカウントされた洗浄回数nは、定期的に制御部10にフィードバックされる。制御部10の粘度算出回路9bは、粘度と温度との対応関係を示す粘度−温度換算データを基に、検出された室温から液体洗剤3の粘度を算出する。洗浄回数補正回路11は、制御部10のメモリに予め記憶されている粘度と洗剤洗剤使用量との対応関係を示す補正係数データを基に、粘度算出回路9bで算出した粘度に対応する補正係数μを求める。そしてこの補正係数μを1回当たりの洗剤使用量mに積算することで粘度変化に応じた洗剤吐出量(m×μ)を算出して、報知を実行する所定の洗浄回数nに補正を加える。
【0026】
つまり、洗剤タンク2の容量をA、洗剤残量をB(例えばAの1割以下)としたとき、A−(m×μ×n)≦Bの関係から、粘度変化に応じた洗剤吐出量(m×μ)が分かれば、室温変化に影響されずに、洗剤残量Bを正確に把握できる。洗浄回数補正回路11では、この正確な洗剤残量Bを基準にして報知を実行する所定の洗浄回数nを補正する。具体的には、室温低下に伴い洗剤吐出量(m×μ)が減少したときはその減少幅に応じて所定の洗浄回数nを漸次増やしていき、室温上昇に伴い洗剤吐出量(m×μ)が増加したときはその増加幅に応じて所定の洗浄回数nを漸次減らしていく。これにより、室温変化が生じても、報知のタイミングにばらつきが生じにくくなり、結果、洗剤無しでの便器洗浄や、洗剤残量に余裕がある段階での報知をそれぞれ回避できるようになる。この効果は、一般家庭のトイレの場合に限らず、特に公共施設等に多数設置されたトイレのように保守管理者が一括管理する場合において保守管理者の負担を十分に軽減できる点できわめて有効である。
【0027】
また本例では、室温と洗浄回数nとを制御部10にフィードバックして、1回当たりの洗剤使用量mを粘度変化に応じた洗剤吐出量に換算して所定の洗浄回数nに補正を加える換算方式である。従って、例えば室温変化に合わせて循環ポンプの回転量や駆動時間を制御して1回当たりの洗剤使用量を量的に増減調整したりする必要がなく、制御部10の制御動作及び回路構造を簡易化できるものである。そのうえ温度センサ9aを洗剤タンク2の外側に配置するだけでよいので、温度センサ9aの取り付けに手間がかからない利点もある。
【0028】
なお、前記実施形態では粘度測定手段9として温度センサ9aと粘度算出回路9bとを用いた場合を例に挙げて説明したが、粘度算出回路9bを省略して、温度センサ9aから直接に補正係数データを求める構成としてもよい。
【0029】
また、粘度測定手段9として、温度からではなく、粘度計或いは流量センサを循環洗剤路17内部或いは洗剤供給路5内部に設けて、洗剤の粘度を直接測定する構造としてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 便器装置
2 洗剤タンク
3 液体洗剤
4 ボウル部
5 洗剤供給路
6 給水路
7 カウンタ
8 報知手段
9 粘度測定手段
9a 温度センサ
10 制御部
11 洗浄回数補正回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器のボウル部を洗浄する洗浄水に、洗剤タンクより液体洗剤を投入して洗剤洗浄を行う便器装置であって、前記便器の洗浄回数を計測するカウンタと、所定の洗浄回数に達したときに外部に警告表示する報知手段とを備えると共に、前記洗剤タンクより吐出する液体洗剤の粘度又はそれに対応する値を測定する粘度測定手段と、1回当たりの洗剤使用量を粘度又はそれに対応する値の変化に応じた洗剤吐出量に換算して前記所定の洗浄回数に補正を加える洗浄回数補正回路とを備えることを特徴とする便器装置。
【請求項2】
前記粘度測定手段は、前記洗剤タンクの周囲の室温を検出する温度センサを備えることを特徴とする請求項1記載の便器装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−174260(P2011−174260A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37908(P2010−37908)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】