説明

便器装置

【課題】便蓋や便座を回動しても前垂下片が外れ難く、また、便蓋や便座の回動の際に擦れ音の発生を抑制することが可能となる。
【解決手段】ボウル1を備えた前パーツ2と後パーツ3とで便器4を構成する。前パーツ2の上面のボウル1の上開口5よりも後方位置にボウル1の上開口5の後縁に沿う立上壁6を一体に立ち上げる。後パーツ3に便器4の後部に内装した便器付属装置7の上側を覆う上カバー8を備える。上カバー8の前縁から垂下した前垂下片9の下端部が立上壁6の上端部の前側に重複すると共に、上カバー8の側縁から垂下した側垂下片10に、便蓋26、便座27の両方またはいずれか一方を回動自在に枢支する枢支部28を備える。上カバー8に、この上カバー8が上昇した際に立上壁6と接触する接触部11を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボウルを備えた前パーツと後パーツとで構成された便器装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ボウルを備えた前パーツと後パーツとで構成された便器装置が特許文献1等により知られている。
【0003】
前パーツの上面には、ボウルの上開口よりも後方位置に上開口の後縁に沿うように立上壁を一体に立ち上げている。また、後パーツには、便器の後部に内装した便器付属装置の上側を覆う上カバーを備えている。この上カバーには、前縁から前パーツの立上壁の上端部の前側に重複する前垂下片を垂下すると共に、側縁から便蓋と便座を回動自在に枢支する枢支部を備えた側垂下片を垂下している。
【0004】
前パーツは床に固着されるフレームの前部に固着具で固着し、後パーツの一構成要素である便器付属装置を設ける装置支持ケースをフレームの後部に固着具で固着し、後パーツの別の一構成要素である上カバーを装置支持ケースに固着具で固着している。
【0005】
このように、前パーツ、後パーツは固着具で固着してないが、前垂下片を前パーツの立上壁の上端部の前側に重複することで、前垂下片と前パーツの立上壁との境から水が内部に浸入しないようにしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−95451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来技術は、便蓋、便座を倒した状態から起立させるために、強い力を加えて回動して後ろに押したり、あるいは、起立させた状態で後ろに押すと、前パーツを上方に持ち上げようとする力が作用して、前垂下片が上昇し、立上壁から外れるおそれがある。
【0008】
そこで、前垂下片が立上壁に対して外れないようにするため、爪で係止することが考えられるが、爪が常時接触しているため、便蓋や便座の回動の際も、爪が擦れる擦れ音が発生するおそれがある。
【0009】
本発明は、上記の従来例の問題点に鑑みて発明したもので、その目的は、便蓋や便座を回動しても前垂下片が外れ難く、また、便蓋や便座の回動の際に擦れ音の発生を抑制することが可能となる便器装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の便器装置は、ボウルを備えた前パーツと後パーツとで便器を構成し、前記前パーツの上面の前記ボウルの上開口よりも後方位置に前記ボウルの前記上開口の後縁に沿う立上壁を一体に立ち上げ、前記後パーツに前記便器の後部に内装した便器付属装置の上側を覆う上カバーを備え、前記上カバーの前縁から垂下した前垂下片の下端部が前記立上壁の上端部の前側に重複すると共に、前記上カバーの側縁から垂下した側垂下片に、便蓋、便座の両方またはいずれか一方を回動自在に枢支する枢支部を備え、前記上カバーに、この上カバーが上昇した際に前記立上壁と接触する接触部を備えることを特徴とする。
【0011】
ここで、前記上カバーが上昇した際、前記立上壁の前記前垂下片と重複する部分の後面側の下部と前記接触部が接触することが好ましい。
【0012】
また、前記立上壁の前記前垂下片と重複する部分の後面側の下部に、前記接触部と接触する横リブを備えることが好ましい。
【0013】
また、前記上カバーが0.5〜3mm上昇した時に、前記接触部と前記立上壁とが接触することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上カバーに、この上カバーが上昇した際に前記立上壁と接触する接触部を備えているので、強い力で便蓋や便座を回動して後ろに押した場合に前垂下片が外れ難い。また、上カバーが上昇してもある一定以上上昇しない限り接触部が立壁部に接触せず、便蓋や便座の回動による擦れ音の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の要部断面図である。
【図2】同上の接触板が横リブの下方に位置している状態を示す下方から見た斜視図である。
【図3】同上の上カバーの取付け順序を示す説明図である。
【図4】同上の上カバーを装置支持ケースにねじ具で固定している部分を示す斜視図である。
【図5】本発明の全体の分解斜視図である。
【図6】同上の斜視図である。
【図7】同上の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0017】
なお、以下の説明で「後」、「前」とは、便器4の便座に人が通常の使用状態で座った際に背面となる側を「後」、正面となる側を「前」と定義して説明する。
【0018】
便器4は図5乃至図7に示すようなもので、ボウル1を備えた前パーツ2と後パーツ3と支持フレーム13で構成し、前パーツ2及び後パーツ3は支持フレーム13にそれぞれ独立して取付ける。
【0019】
前パーツ2は、ボウル部1aとボウル部1aの上方に設けられるリム部14と、ボウル部1aとリム部14で構成されるボウル1の外側を覆うスカート部15とを備えており、これら合成樹脂製のボウル部1a、リム部14、スカート部15を溶着一体化することで前パーツ2を構成している。
【0020】
ボウル1の上面であるリム部14の上面の上開口5よりも後方位置に、上開口5の後縁に沿う立上壁6を一体に立ち上げている。立上壁6の上端部は前面側を凹ませて重複用凹み部16となっており、重複用凹み部16の後ろ側の壁部が重複片17となっている。立上壁6の後面の重複片17の下方側に被接触部を設けており、図1の実施形態では重複片17の後面側の下方部位から横リブ12を後方に突出して被接触部を構成している。
【0021】
前パーツ2は、床に設置して取付けられる支持フレーム13の前部にボルトなどの固着具により取付ける。
【0022】
後パーツ3は、図5に示すように、便器付属装置7を設けた装置支持ケース18と、装置支持ケース18、便器付属装置7の上方を覆う上カバー8と、上カバー8の後部の下方に配置される後カバー19と、後カバー19の上部両側の前方に配置される上側カバー20と、後カバー19の下部両側部の前方に配置される下側カバー21とを備えている。装置支持ケース18、上カバー8、後カバー19、上側カバー20、下側カバー21は合成樹脂製である。
【0023】
上カバー8は、前縁から垂下した前垂下片9と、両側縁から垂下した側垂下片10と、後縁から垂下した後垂下片22とを備えている。
【0024】
図1に示すように、上カバー8下面の前垂下片9よりやや後方位置に固定部23となるボスが下方に向けて突出しており、固定部23の下端が前垂下片9より下方に位置している。
【0025】
固定部23の下端面部に接触部11を構成する接触板11aをねじ具24により取付けている。上カバー8下面の固定部23を設けた部位の後方に突片25が垂下してあり、図1、図2に示すように接触板11aの後端が突片25の前面に当接することで、ねじ具24を中心に接触板11aが回転しないようになっている。このようにして、上カバー8の前端部の左右方向の複数個所に接触部11を構成する接触板11aを取付ける。
【0026】
また、図1、図2に示すように、上カバー8の下面の前端部には、更に前垂下片9との間に隙間32を隔ててずれ防止用垂下片33が垂下してあり、このずれ防止用垂下片33の下端は前垂下片9より上に位置し、隙間32の前後方向の寸法は重複片17の肉厚よりも長い。
【0027】
側垂下片10には便蓋26、便座27をそれぞれ回動自在に枢支するための枢支部28を設けている。
【0028】
なお、便蓋26、便座27を枢支する枢支部28としては、上カバー8の下面部に回転装置を設けて、この回転装置の駆動力で便蓋26、便座27を回動するようにしてもよく、あるいは、手動で回動して開閉するものでもよい。
【0029】
また、側垂下片10に便蓋26のみ、あるいは、便座27のみを枢支する枢支部28を備えてもよい。
【0030】
装置支持ケース18に設けられる便器付属装置7としては、温水洗浄装置、温風乾燥装置、脱臭装置等の便器4に付属する種々の装置、これらの装置を制御する制御部を挙げることができる。
【0031】
装置支持ケース18は支持フレーム13の上部にボルトなどの固着具で取付けられる。
【0032】
上カバー8は装置支持ケース18及び便器付属装置7を覆うように装置支持ケース18の上方に配置し、ねじ具30を用いて図4のように装置支持ケース18に取付けるか、又は、支持フレーム13に取付ける。
【0033】
上カバー8の取付けに当たっては、まず、図3の実線のように、上カバー8を斜め前下がりの姿勢にして、接触板11aの先端を横リブ12の先端に位置させる。この状態で、接触板11aの先端を回転中心にして図3の矢印の方向に上カバー8を回動し、前垂下片9の下端部を前記立上壁6の上端部の重複用凹み部16に位置させて、重複片17の前面に重複させる。その後、ねじ具30で装置支持ケース18に取付けるか、又は、支持フレーム13に取付ける。この上カバー8の取付け状態で、接触部11を構成する接触板11aの前端部が、被接触部である横リブ12の下方に隙間31を介して位置する。この隙間31の上下寸法は、前垂下片9と重複片17との上下方向の重複長さより短い寸法で、0.5〜3mm程度に設定するのが好ましい。
【0034】
また、前垂下片9の下端部を重複片17の前面に重ねた状態で、ずれ防止用垂下片33の下端部が重複片17の後面の上端部の後方に僅かな隙間を介して対向している。
【0035】
これにより上カバー8を後方に動かそうとする外力が作用した場合、前垂下片9の下端部が重複片17の前面に重複することで、後方への移動を防止し、上カバー8に前方に動かそうとする外力が作用した場合、ずれ防止用垂下片33が重複片17の後面の上端部に当たって前方への移動を防止する。
【0036】
なお、後パーツ3の構成部材のうち後カバー19、上側カバー20、下側カバー21は装置支持ケース18に取付けるか、又は、支持フレーム13に取付ける。
【0037】
上記のような構成の便器装置は、使用しない時は、便座27を倒し、便座27をリム部14の上面に載置し、更に、便蓋26を倒して、ボウル1の上開口5と便座27を覆う。
【0038】
使用に当たっては、便蓋26のみを回動して起立させたり、あるいは、便蓋26、便座27を回動して起立させる。
【0039】
ここで、便蓋26、便座27を起立方向に回動したり、あるいは、起立した状態の便蓋26や便座27を図7の矢印のように後方に押すと、便蓋26、便座27を枢支している上カバー8の前端部が上方に浮き上がるような力が作用する。
【0040】
このような便蓋26、便座27に後方に押す力が作用して上カバー8の前端部が浮き上がって上方に移動した場合、その浮き上がり量が、横リブ12と下方の接触板11aとの間の隙間31よりも小さい時は、接触板11aの前端部は横リブ12に接触せず、また、前垂下片9が重複片17から外れることはない。更に、上カバー8に浮き上がらせようとする大きな力が作用して、上カバー8が隙間31寸法以上上方に移動しようとしても、接触板11aの前端部が横リブ12に接触し、それ以上の上カバー8の上方への移動を防止し、前垂下片9が重複片17から外れ難いようになっている。
【0041】
また、上記のように隙間31があるので、隙間31の上下寸法内で上カバー8が浮き上がっても擦れ音が発生しない。また、隙間31寸法を越えて浮き上がろうとする場合、接触板11aの前端部が横リブ12の下面に接触するだけなので、擦れ音は抑制される。
【0042】
ところで、上カバー8の取付け状態で、接触板11aの前端部と横リブ12との間に隙間31が存在するように構成しているので、上カバー8の取付けに当たり、図3に示すような取付けができて取付け作業が簡単にできる。つまり、図3の実線のように、上カバー8を斜め前下がりの姿勢にして、接触板11aの先端を横リブ12の下側に位置させる際、上カバー8を斜めにして簡単に接触板11aの先端を横リブ12の下側に位置させて、ここを支点にして回動させることができる。この場合、更に、ずれ防止用垂下片33の下端が前垂下片9より上に位置し、隙間32の前後方向の寸法は重複片17の肉厚よりも長いので、上カバー8を図3のようにして取付ける際にずれ防止用垂下片33が邪魔にならない。
【符号の説明】
【0043】
1 ボウル
2 前パーツ
3 後パーツ
4 便器
5 上開口
6 立上壁
7 便器付属装置
8 上カバー
9 前垂下片
10 側垂下片
11 接触部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボウルを備えた前パーツと後パーツとで便器を構成し、前記前パーツの上面の前記ボウルの上開口よりも後方位置に前記ボウルの前記上開口の後縁に沿う立上壁を一体に立ち上げ、前記後パーツに前記便器の後部に内装した便器付属装置の上側を覆う上カバーを備え、前記上カバーの前縁から垂下した前垂下片の下端部が前記立上壁の上端部の前側に重複すると共に、前記上カバーの側縁から垂下した側垂下片に、便蓋、便座の両方またはいずれか一方を回動自在に枢支する枢支部を備え、前記上カバーに、この上カバーが上昇した際に前記立上壁と接触する接触部を備えることを特徴とする便器装置。
【請求項2】
前記上カバーが上昇した際、前記立上壁の前記前垂下片と重複する部分の後面側の下部と前記接触部が接触することを特徴とする請求項1記載の便器装置。
【請求項3】
前記立上壁の前記前垂下片と重複する部分の後面側の下部に、前記接触部と接触する横リブを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の便器装置。
【請求項4】
前記上カバーが0.5〜3mm上昇した時に、前記接触部と前記立上壁とが接触することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の便器装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−202490(P2011−202490A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73626(P2010−73626)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】