説明

便器装置

【課題】合成樹脂製の便器本体と金属製の支持フレームが定位置に固定され、且つ、生産性を向上することが可能となる便器装置を提供する。
【解決手段】便器装置4は、合成樹脂製の便器本体1と、便器本体1と固定部材で連結されて便器本体1からの荷重を支持する金属製の支持フレームを備える。便器本体1に位置決め突起5が設けられ、支持フレームに位置決め孔6が形成される。位置決め突起5が位置決め孔6に嵌め込まれた状態で、便器本体1が支持フレームに固定部材で固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
陶器製の便器は自身の重み、強度により、着座時等の荷重を支える構造であるが、樹脂製の便器は、樹脂のみでは荷重を十分に支えることができないため、金属製の支持フレームを連結することで、荷重を支える構造となっている。
【0003】
樹脂製の便器と金属製の支持フレームを連結する際、荷重時の応力による樹脂製の便器の損傷を防ぐため、樹脂製の便器と金属製の支持フレームの連結部分で両者が直接接触しない構造とする必要がある。
【0004】
そこで、樹脂製の便器と金属製の支持フレームの連結部分において両者の間に一定量の空間をあけるか、あるいは、緩衝用のゴム部材等を挟む方策が取られている。このため、合成樹脂製の便器の固着部材による金属製の支持フレームと連結する部位には、連結する固着部材であるボルトの径より大きい孔を開けられ、孔にボルトを挿通して連結する際、ボルトが孔の内周に接触しないように構成される。
【0005】
この大きな孔に対して支持フレームの孔を定位置に位置させた状態でボルトで連結するには、樹脂製の便器と金属製の支持フレームを位置決めした状態でボルトで連結する必要がある。
【0006】
そこで、従来は、樹脂製の便器と金属製の支持フレームの両方に同じ径の位置決め孔を形成し、両位置決め孔を連通させた状態で位置決めピンを差し込んで位置決めし、これにより、ボルトを挿入する孔同士の位置合わせを行い、ボルトによる連結を行っている。
【0007】
このような従来例として特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−235747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来技術は、ピンを抜き差しする作業工程が必要であり、生産性が良くないという問題がある。
【0010】
本発明は上記の従来例の問題点に鑑みて発明したもので、合成樹脂製の便器と金属製の支持フレームが定位置に固定され、且つ、生産性を向上することが可能な便器装置を提供するにある
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の便器装置は、合成樹脂製の便器本体と、この便器本体と固定部材で連結されて前記便器本体からの荷重を支持する金属製の支持フレームを備えた便器装置であって、前記便器本体に位置決め突起が設けられ、前記支持フレームに位置決め孔が形成され、前記位置決め突起が前記位置決め孔に嵌め込まれた状態で、前記便器本体が前記支持フレームに前記固定部材で固定されていることを特徴とすることを特徴とする。
【0012】
また、前記便器本体に挿通孔が形成され、前記支持フレームに挿入孔が形成され、前記固定部材がボルトにより構成され、前記挿通孔が前記ボルトより大径に形成され、前記位置決め突起が前記位置決め孔に嵌め込まれた状態で、前記ボルトが前記挿入孔、前記挿通孔に挿入されて前記便器本体が前記支持フレームに固定され、前記前記挿通孔の内周面が前記ボルトに非接触となることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、位置決め突起が位置決め孔に嵌め込まれた状態で、便器本体が支持フレームに固定部材で固定されているので、合成樹脂製の便器本体と金属製の支持フレームが固定部材で定位置に固定される。また、従来のように、位置決め用ピンの抜き差し工程を必要としないので、生産性を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の要部分解斜視図である。
【図2】同上の位置決め突起に位置決め孔が嵌め込まれて位置決めされている状態の断面図である。
【図3】同上のボルトにより固定している部分の断面図である。
【図4】同上の位置決め突起に位置決め孔が嵌め込まれて位置決めされている状態の他の実施形態の断面図である。
【図5】同上の便器装置の全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0016】
便器装置4は、樹脂製の便器本体1と、洗浄水の供給装置、人体の局部を洗浄する局部洗浄装置等の便器付設装置と、樹脂製の便器本体1と便器付設設備を支持するための金属製の支持フレーム3を備える。
【0017】
図5には便器装置4の一実施形態の全体の外観を示している。
【0018】
樹脂製の便器本体1は便器装置4の主体を構成するもので、図5に示されるように、樹脂製の前パーツ8と、樹脂製の後パーツ9を備える。
【0019】
前パーツ8は、便器装置4の前部の外郭を構成する平断面略U字状をした樹脂製のスカート部10と、スカート部10内の上部内に位置した樹脂製のボウル部30と、ボウル部30の上に位置する樹脂製のリム部12で構成される。
【0020】
スカート部10とボウル部30とリム部12は溶着などで一体化され、前パーツ8が構成される。
【0021】
便器本体1の前部の外郭を構成するスカート部10は、図5に示されるように、下端よりやや上方位置に内周に沿って内側に向けて突出する平面視略U字状をしたフランジ片11を有する。
【0022】
なお、図1乃至図4は前パーツ8、支持フレーム3を上下逆にした状態の図面である。
【0023】
フランジ片11には、スカート部10の左右両側部、前部に対応する箇所に複数の挿通孔13が形成され、また、少なくとも左右両側部に下方に向けて突出する位置決め突起5が突出形成される。
【0024】
金属製の支持フレーム3は、樹脂製の前パーツ8、樹脂製の後パーツ9を支持するためのもので、図1に示されるように、下フレーム14と、下フレーム14から上方に突出した上フレーム15を備えている。
【0025】
下フレーム14の前部は平面視U字状をしており、下フレーム14の左右両側部、前部に、複数の挿入孔16が形成され、また、少なくとも左右両側部に位置決め孔6が形成される。
【0026】
図2、図3に示すように、下フレーム14は金属角筒により構成されており、挿入孔16は、金属角筒の下面に形成される皿状孔部21と、上面に形成される通孔部22とで構成される。
【0027】
ここで、平面視U字状をした下フレーム14の前部は、スカート部10の平面視略U字状をしたフランジ片11と同じ形状をしている。そして、後述のように、フランジ片11と下フレーム14の前部を重ねた際、複数の挿通孔13と挿入孔16が対応し、位置決め突起5と位置決め孔6が対応するような位置関係となっている。
【0028】
図1、図2に示される実施形態では、位置決め孔6を形成するに当り、位置決め突起5に対応する箇所にも挿入孔16と同じ孔を形成し、この位置決め突起5に対応する箇所に形成した挿入孔16の通孔部22を位置決め孔6として利用する。
【0029】
これにより、下フレーム14に孔あけ加工をするに当り、位置決め孔6として挿入孔16と同じ孔を形成することで、孔あけ加工が容易になされ、生産性の向上が可能となる。
【0030】
もちろん、位置決め孔6として挿入孔16とは別の形状や大きさの孔を形成してもよい。
【0031】
フランジ片11に形成した挿通孔13は、後述の固定部材2を構成する金属のボルト23よりも大径に形成され、また、挿通孔13は、通孔部22より大径に形成され、通孔部22は後述のボルト23の径とほぼ等しく形成される。
【0032】
上記のような構成の前パーツ8のスカート部10を支持フレーム3に取付けるに当っては、図1に示されるように、前パーツ8を上下逆にし、スカート部10の下部のフランジ片11の下面が上となるようにした状態で行う。
【0033】
すなわち、上下逆にしたスカート部10の下部のフランジ片11の下面(図1乃至図4では上となる面)に、樹脂製のフランジ片11と金属製の下フレーム14が直接接しないように緩衝作用を有する材料で形成されたパッキン18を介して下フレーム14を重ねる。
【0034】
ここで、パッキン18はフランジ片11と略同じ平面視U字状をしており、フランジ片11に形成された複数の挿通孔13と対応する位置に複数の連通孔19が形成され、位置決め突起5に対応する位置に位置決め孔20が形成される。
【0035】
上下逆にしたスカート部10の下部のフランジ片11の下面にパッキン18を介して支持フレーム3の下フレーム14を重ねる際、図2に示されるように、位置決め突起5にパッキン18の位置決め孔20と、下フレーム14の位置決め孔6が嵌め込まれる。
【0036】
このように、位置決め突起5に位置決め孔20、位置決め孔6が嵌め込まれることで、フランジ片11、パッキン18、下フレーム14が上下に正確に位置決めされた状態で重ねられ、挿通孔13と連通孔19と挿入孔16とが正しい位置関係で連通する。
【0037】
つまり、通孔部22より大径の挿通孔13の中心が、連通孔19、挿入孔16(皿状孔部21、通孔部22)の各中心と上下方向に略一致するように連通する。
【0038】
挿通孔13、連通孔19、挿入孔16が正しい位置関係で位置決めされた状態で、固定部材2を構成するボルト23を挿入孔16(皿状孔部21、通孔部22)から挿入し、連通孔19、挿通孔13を通しパッキン28、ワッシャ25を介してナット26で固定する。
【0039】
本実施形態は、位置決め突起5に位置決め孔20、位置決め孔6を嵌め込むことで簡単に正しい位置関係に位置決めでき、従来のように位置決めピンによる位置決作業の必要がなく、位置決めピンを抜き取る作業が必要でなく、生産性の向上が可能となる。
【0040】
位置決め突起5に位置決め孔20、位置決め孔6が嵌め込まれて正しい位置関係に位置決めされるので、ボルト23の軸部外周面と、大径の挿通孔13の内周面との間には図2のように周方向に空間が形成され、ボルト23が大径の挿通孔13の内周面に接触しない。
【0041】
このように本実施形態は、ボルト23が大径の挿通孔13の内周面に接触しないように、ボルト23を用いて樹脂製のフランジ片11と金属製の下フレーム14を固着される。
【0042】
したがって、後述のように便器装置4をトイレルームの床に設置して使用して樹脂製の前パーツ8に着座時の荷重が作用した際、荷重時の応力により樹脂製のフランジ片11が金属部分に強く当たって破損するのを防ぐことが可能となる。
【0043】
図4は他の実施形態が示されている。本実施形態では、ボルト23より大径の挿通孔13内にはゴムなどの緩衝作用のある材料で形成したスリーブ29を挿入し、スリーブ29内にボルト23を通す。
【0044】
なお、図5の実施形態では、パッキン18の連通孔19、パッキン28の孔を、大径の挿通孔13と同じ径にし、スリーブ29の両端をこのパッキン19の連通孔19、パッキン28の孔内に嵌め込んでいる。しかし、必ずしもこれに限定されず、パッキン19の連通孔19、パッキン28の孔を大径の挿通孔13よりも小さく且つボルト23が通る程度の孔としてもよい。
【0045】
本実施形態は、ボルト23の軸部外周面と大径の挿通孔13の内周面との間には緩衝作用のあるスリーブ29が介在されるので、荷重時の応力がスリーブ29で緩衝され、樹脂製のフランジ片11が金属部分に強く当たって破損するのを防ぐことが可能となる。
【0046】
なお、図示を省略しているが、ボウル部30の排水口部にトラップが接続される。
【0047】
トラップとしては、例えば回動自在なターントラップが接続される。
【0048】
このターントラップは図示を省略したターントラップケース内に収納され、このターントラップ装置は、金属製の支持フレーム3の後部に取付けられて支持される。
【0049】
もちろん、ターントラップではなく、回動しない従来から公知の固定式のトラップを用いてもよい。
【0050】
また、金属製の支持フレーム3の後部には、ボウル部30への洗浄水の供給装置、人体の局部を洗浄する局部洗浄装置等の便器付設装置等が支持される。
【0051】
下フレーム14とフランジ片11が固着された状態で、下フレーム14はスカート部10の下端部27(フランジ片11より下方の部位)で覆われるが、支持フレーム3の下フレーム14の下端はスカート部10の下端と同じレベル又は僅かに下に位置する。
【0052】
そして、便器装置4を、トイレルームの床に便器装置4を設置する場合、下フレーム14を床に載置して固着手段で固着される。
【0053】
この下フレーム14の床への固着作業は、便器装置4の後部の外郭を構成する樹脂製の後パーツ9を外した状態で行われ、下フレーム14の床への固着後に、支持フレーム3の後部に、便器装置4の後部の外郭を構成する樹脂製の後パーツ9が取付けられる。
【符号の説明】
【0054】
1 便器本体
2 固定部材
3 支持フレーム
4 便器装置
5 位置決め突起
6 位置決め孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の便器本体と、この便器本体と固定部材で連結されて前記便器本体からの荷重を支持する金属製の支持フレームを備えた便器装置であって、
前記便器本体に位置決め突起が設けられ、前記支持フレームに位置決め孔が形成され、前記位置決め突起が前記位置決め孔に嵌め込まれた状態で、前記便器本体が前記支持フレームに前記固定部材で固定されていることを特徴とする便器装置。
【請求項2】
前記便器本体に挿通孔が形成され、前記支持フレームに挿入孔が形成され、前記固定部材がボルトにより構成され、前記挿通孔が前記ボルトより大径に形成され、前記位置決め突起が前記位置決め孔に嵌め込まれた状態で、前記ボルトが前記挿入孔、前記挿通孔に挿入されて前記便器本体が前記支持フレームに固定され、前記前記挿通孔の内周面が前記ボルトに非接触となることを特徴とする請求項1記載の便器装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−67954(P2013−67954A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205541(P2011−205541)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】