説明

便器装置

【課題】ボウル部に吐出する水を節約し易くした便器装置を提供する。
【解決手段】外部の給水源30に接続され給水源30の水をボウル部2に吐出する給水路10と、ボウル部2内の水を排出する排水部4とを有した便器装置1であって、給水路10は、給水路10を流れる水の圧力又は流量を検知するセンサと、給水路10の途中に設けられ通水断面積を変更可能な水量調整部15とを備え、センサの検知結果に応じて水量調整部15に通水断面積を調整させて、給水路10からボウル部2へ吐出する水量を一定にする調整制御を行う制御部5を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器装置、殊に便器装置の給水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、節水型の便器装置として、トラップ部に駆動機構を設け、駆動機構によりトラップ部が封水姿勢と排水姿勢とに切り替わる、所謂ターントラップ式の水栓便器がある(特許文献1等参照)。
【0003】
また、便器装置として、外部の水道配管の水を貯留するタンクを備え汚物排出時やボウル部洗浄時に貯留した水を用いるタンク型のものと、上記タンクを備えないタンクレス型のもの(特許文献2等参照)とがある。
【0004】
タンクレス型の便器装置は、水道配管に上流端を接続しボウル部に下流端を接続した給水路を備え、水道配管の水を貯留せずに給水路からボウル部に吐出する構成となっている。そして、タンクレス型の便器装置はタンクを備えないため、タンク型の便器装置に比べて小型省スペースに構成し易い。また、タンクレス型の便器装置は、給水路の通水と止水を切り替える電磁弁をさらに備えており、この電磁弁での通水と止水の切替により、ボウル部への吐水(給水)と止水とを切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−26904号公報
【特許文献2】特開2006−57453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、タンクレス型の便器装置では、水道配管の水を直接利用するため、洗濯機や浴室等の水道配管を給水源とした他の設備で上記水道配管の水を利用すると、便器装置に流入する水が減少して、汚物に対する排出性能等が低下することがある。そこで、タンクレス型の便器装置では、電磁弁の開成時間(給水時間)を変更することで、ボウル部に吐出する水量を制御することがある。
【0007】
しかしながら、電磁弁で水量を制御した場合、通水と止水の切替のみで水量を調整するため、繊細な水量調整を行い難く、ボウル部への吐水の供給量(水量)に不足や過剰を生じ易い。そして、例えば、水量の不足が生じた場合、排出性能が低下したり、ボウル部の封水が不十分になったりする恐れがある。また、例えば、水を過剰に供給した場合、十分な排出性能を得易くなるが、過剰に供給した水が無駄になるため、ターントラップ式の排水部を備えた便器装置の利点である節水性が低下し易くなる。また、サイホン現象を用いて排水する方式等のタンクレス型の便器装置では、水量の不足を生じた場合、排水性能が低下する恐れがあり、水を過剰に供給した場合、過剰に供給した水が無駄になる。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みて発明したもので、その目的とするところは、ボウル部に吐出する水を節約し易くした便器装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、外部の給水源に接続され前記給水源の水をボウル部に吐出する給水路と、前記ボウル部内の水を排出する排水部とを有した便器装置であって、前記給水路は、前記給水路を流れる水の圧力又は流量を検知するセンサと、前記給水路の途中に設けられ通水断面積を変更可能な水量調整部とを備え、前記センサの検知結果に応じて前記水量調整部に前記通水断面積を調整させて、前記給水路から前記ボウル部へ吐出する水量を一定にする調整制御を行う制御部を設けたことを特徴とする。
【0010】
この便器装置として、前記水量調整部が、前記給水路に設けられ前記給水路の水を通す通水口を有した弁部材と、前記弁部材を回転させ前記通水口の前記通水断面積を変更するステッピングモータとを備え、前記制御部が、前記ステッピングモータの回転を制御して前記調整制御を行うものであることが好ましい。
【0011】
この便器装置として、前記排水部が、上流端が前記ボウル部に接続され下流端が自由端となったトラップ部と、前記トラップ部の前記下流端の向きを変えて封水姿勢と排出姿勢とを切り替える姿勢変更機構部とを備えたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ボウル部に吐出する水を節約し易くすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】便器装置の水量調整部の分解斜視図である。
【図2】通水管の概略構成図である。
【図3】(a)が便器装置の外観の斜視図であり、(b)が図3(a)の一部を省略した斜視図である。
【図4】便器装置の概略構成図である。
【図5】領域Eの一部を透過した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を、添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。図3には、便器装置の一実施形態を示す。便器装置1は、ボウル部2と、蓋3及び座部(図示せず)と、外殻パーツ7と、フレームと、排水部4(図4参照)と、付属装置(図示せず)と、給水路10と、制御部5(図4参照)とを備える。ボウル部2は上方に開口した椀状で、底部に排水口(図示せず)を有し、この排水口が排水部4に連通接続してある。
【0015】
排水部4は、変形自在なトラップ部と、トラップ部の姿勢を変更する姿勢変更機構部と、トラップ部を収容するケース部とを備えた、所謂ターントラップ式(トラップ回動式)の排水部となっている。
【0016】
トラップ部は、上流端が排水口に接続されており、下流端が自由端になっており、姿勢変更機構部による姿勢変更で下流端の向きを変えることで、封水姿勢と排出姿勢とに切り替わる。封水姿勢では、下流端が上方側を向き、トラップ部及びボウル部2内に給水路10からの水を貯留し、排出姿勢では、下流端が後方或いは下方に位置する外部の排水管(図示せず)側を向き、トラップ部及びボウル部2内の水や汚物を排水管に排出する。また、トラップ部の姿勢変更は制御部5によって制御される。
【0017】
フレームは、図3に示すように、下フレーム6aと、上フレーム6bと、縦フレーム6cとで主体が構成される。下フレーム6aはトイレルーム等の床面に載置固定され、縦フレーム6cは下フレーム6aの上方に配置された上フレーム6bを、下フレーム6aに支持する。そして、フレームはボウル部2や排水部4等の構成部材が取り付けられ、構成部材を床面に対して支持する。
【0018】
外殻パーツ7は、前パーツ7aと後パーツ7bと上パーツ7cとで主体が構成されており、前パーツ7a及び後パーツ7bはフレームに支持される。前パーツ7aはボウル部2の外周及びボウル部2の開口縁の上方を覆い、前パーツ7aの上方に座部が取り付けられる。後パーツ7bは排水部4の外面を覆い、後パーツ7bの上部には上パーツ7cが取り付けてある。上パーツ7cは付属装置の外面を覆う。
【0019】
付属装置は、例えば、局部洗浄装置、温風乾燥装置、脱臭装置等となっており、制御部5によって制御される。そして、付属装置は、ボウル部2の上方位置或いはボウル部2のリブに設けた開口部からボウル部2に臨むようにして、上フレーム6bに支持される。
【0020】
給水路10は、図4に示すように、水道配管等の外部の給水源30に直結し、給水源30からの水をボウル部2に供給(吐出)しており、便器装置1はこの水に用いて、ボウル部2やトラップ部内の汚物の排出やボウル部2の洗浄、ボウル部2の封水を行う。そのため、本実施形態の便器装置1は、給水源30からの水(ボウル部2に吐出する水)を貯留するタンクを備えない、所謂タンクレス型となっている。
【0021】
また、給水路10は、通水管11と、吐水用配管12とで主体が構成され、通水と遮断とを切り替える開閉弁(詳細は後述する)が設けてある。
【0022】
通水管11は、円筒状(図2等参照)で、図5に示すように軸心を上下方向に沿って位置するよう配置されており、軸方向における寸法の略中央で上フレーム6bに取り付けてある。そして、通水管11は上フレーム6bより上方に位置する上部が上パーツ7cに覆われ、上フレーム6bより下方に位置する下部が後パーツ7bに覆われる。
【0023】
通水管11は下部の下端にメンテナンス用の水抜き栓13が設けてあり、この下端近傍の周面には接続管11aが設けてある。接続管11aは、外殻パーツ7に設けた開口部に向けて、上記周面から径外方向に突出しており、通水管11と一体に形成してある。そして、接続管11aは、図4に示すように、給水源30に連通接続しており、給水源30の水を通水管11内に導入する(流入する)ための通水管11の上流端となっている。
【0024】
そして、通水管11は、図5に示すように、上部の上端側の周面に接続管11bが設けてある。接続管11bは、上パーツ7cに囲まれた空間内で、上記周面から径外方向に突出しており、通水管11と一体に形成してある。そして、接続管11bは、図4に示すように、吐水用配管12が連通接続されており、通水管11の水を吐水用配管12に吐出するための通水管11の下流端となっている。
【0025】
また、通水管11は、図2に示すように、流路(円筒)の途中に、通水断面積を変更して下流側の水量を調整可能な水量調整部15と、センサ14(図1参照)とが設けてあり、水量調整部15(詳細は後述する)は給水路10の開閉弁を兼ねる。
【0026】
センサ14は水量調整部15より上流側に配置されており、流量センサ又は圧力センサとなっており、水量調整部15より上流側の位置における通水管11内の水の流動状況を検知する。具体的には、流動状況として、流量センサの場合、水量調整部15より上流側の位置で通水管11を流動する水の流量(水量)を検知し、圧力センサの場合、水量調整部15より上流側の位置で通水管11を流動する水の圧力(水圧)を検知する。そして、センサ14は制御部5と電気的に接続されており、流動状況(水量又は水圧)の検知結果を制御部5に出力する。なお、センサ14は、水量調整部15より下流側の吐水用配管12に配置してもよい。
【0027】
水量調整部15は開閉弁としての機能に加えて、吐水用配管12へ供給する水量が一定になるよう調整する水量調整弁としての機能を有する。この水量調整弁としての機能は、給水路10通水中(弁開成中)に、センサ14の検知結果に基づいて弁の開成量(通水量)を調整することで行っており、このセンサ14の検知結果に基づく調整は制御部5によって制御される。
【0028】
具体的には、図1に示すように、水量調整部15は、通水管11内に配置され通水口16aを有した弁部材16と、弁部材16を回転させ通水口16aの通水管11内における開口断面積を変更するステッピングモータ17とを備える。
【0029】
弁部材16は円筒状で、通水管11の上端に略同心で配置されており、筒の上端が天井部で閉塞されており、筒の下端が通水管11に連通した開口部となっている。そして、弁部材16は、周面に断面円形状の通水口16aを有し、この通水口16aが接続管11bの内径と略同径で且つ接続管11bに略同心で連通可能となっている。
【0030】
更に、弁部材16は外周面の通水口16aより上方の部位と、外周面の通水口16aより下方の部位に各々円環状のパッキン18が略同心で取り付けてある。そのため、弁部材16の外周面の上記部位と通水管11の内周面との間が水密構造になっており、通水管11の水は弁部材16の開口部から弁部材16の内周空間に流入し、内周空間から通水口16aを介して接続管11bに流入する。
【0031】
また、弁部材16は、天井部にステッピングモータ17の回転軸17aが取り付けてあり、弁部材16はパッキン18による水密構造を維持して、ステッピングモータ17により通水管11に対して軸周りに回転する。そして、弁部材16は上記回転により、通水口16aを接続管11bに連通させた通水状態と、外周面で接続管11bを閉塞した遮断状態とを切り替わることで、開閉弁として機能する。
【0032】
更に、弁部材16は通水状態において、上記ステッピングモータ17による回転量(回転角)に応じて、通水口16aの接続管11bに対する開口断面積を変更可能となっている。そして、弁部材16は上記開口断面積を変更することで、接続管11bに連通して接続管11b側に水が流通する領域(通水断面積)が変化して、通水管11から吐水用配管12へ供給する水量を変化させる。言い換えると、通水管11は、水量調整部15の通水断面積を変更することで、吐水用配管12を介してボウル部2へ吐出する水量を調整可能となっている。
【0033】
ステッピングモータ17は、制御部5(図4参照)と電気的に接続されており、制御部5の制御により段階的な回転が可能(段階的に回転角を調整可能)となっている。そして、ステッピングモータ17は上記段階的な回転によって、通水口16aの開口断面積(通水断面積)を段階的に変化させており、この回転角(開口断面積)は制御部5によって調整制御される。
【0034】
制御部5は、センサ14の検知結果に応じて回転角(開口断面積)を調整することで、水量調整部15より下流側の水量(通水管11から吐水用配管12へ流入する水量)が一定となるよう調整制御を行う。なお、上述の、一定とは、所定の設定値となる状態、或いは設定値に許容誤差を加えた所定の設定範囲内に収まる状態を意味する。
【0035】
また、制御部5は、水量を一定に調整するにあたって、少なくとも開成直後の検知結果に応じて、水量調整部15の開口断面積(ステッピングモータ17の回転角)を調整する制御(調整制御)を行い、水量を一定にする。なお、制御部5による調整制御は、開成直後のみに限らず、開成直後の調整後も継続して、常時或いは一定時間毎の検知結果に応じて調整制御を行ってもよい。
【0036】
ここで、上記調整制御の一例を説明する。制御部5は、便器装置1に設けた排水動作用の操作部(図示せず)が操作されると、トラップ部が排水姿勢となるよう排水部4を制御し、且つ基準として設定された開口断面積(基準断面積)で水量調整部15に給水路10を通水させる。そして、制御部5は、基準断面積で開口した状態でのセンサ14の検知結果から、ボウル部2に吐出する単位時間当たりの水量が上記一定になるよう水量調整部15に開口断面積(通水断面積)を調整させる。
【0037】
また、制御部5は、給水路10の通水開始からの経過時間をカウントしており、経過時間が第1の設定時間に達すると封水姿勢となるよう排水部4を制御し、ボウル部2の排水・洗浄動作からボウル部2の封水動作に移行する。そして、制御部5は封水動作に移行後、経過時間が第2の設定時間に達すると、水量調整部15に給水路10を止水させる。言い換えると、制御部5が、給水路10の通水開始からの経過時間に応じて、排水部4の動作やボウル部2への給水の停止の制御を行う、所謂時間制御を行うものとなっている。
【0038】
このように、水量調整部15は、ステッピングモータ17による段階的な回転によって、弁部材16の下流側の通水断面積(通水口16aの開口断面積)を変更して、通水管11から吐水用配管12へ供給する水量を調整可能となっている。そして、制御部5がセンサ14の検知結果に応じて水量調整部15の通水断面積を調整して吐水用配管12への水量を一定に調整することで、ボウル部2に吐出する単位時間当たりの水量を一定にすることができる。
【0039】
そのため、時間制御を行った際に、排水・洗浄動作や封水動作における各々の総給水量を毎回略同じ量にし易くなり、ボウル部2への吐水に供給過多や供給不足を生じ難くすることができる。
【0040】
言い換えると、繊細な水量調整を行い易くなるため、例えば、ボウル部2の洗浄や汚物を排出する際に、洗浄水の供給過多や供給不足を生じ難くすることができ、上記洗浄や排出の際に、水量を最適化し易く(最適な水量に調整し易く)することができる。また、洗浄や排出後、封水用にボウル部2に水を供給する際に、水の供給過多や、水の供給不足を生じ難くすることができ、上記封水用の貯留の際に、水量を最適化し易く(最適な水量に調整し易く)することができる。
【0041】
上述の通り、通水断面積を変更可能な水量調整部15により、ボウル部2へ吐出する水量を最適化し易くしたことで、ターントラップ式の排水部4を備えたタンクレス型の便器装置1において、ボウル部2に吐出する水を節約し易くすることができる。
【0042】
なお、本発明は前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更を行うことが可能である。例えば、制御部5が、排水部4の姿勢変更等に基づき、排水、洗浄、封水等のボウル部2への吐水の用途を検知し、用途に合わせて調整制御の設定値や設定範囲の変更を行ってもよい。また、水量調整部とは別部材で開閉弁として電磁弁を設けてもよい。また、サイホン式やサイホンゼット式の排水部を備えた便器装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 便器装置
2 ボウル部
4 排水部
5 制御部
10 給水路
14 センサ
15 水量調整部
30 給水源


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の給水源に接続され前記給水源の水をボウル部に吐出する給水路と、前記ボウル部内の水を排出する排水部とを有した便器装置であって、
前記給水路は、前記給水路を流れる水の圧力又は流量を検知するセンサと、前記給水路の途中に設けられ通水断面積を変更可能な水量調整部とを備え、
前記センサの検知結果に応じて前記水量調整部に前記通水断面積を調整させて、前記給水路から前記ボウル部へ吐出する水量を一定にする調整制御を行う制御部を設けた
ことを特徴とする便器装置。
【請求項2】
前記水量調整部が、前記給水路に設けられ前記給水路の水を通す通水口を有した弁部材と、前記弁部材を回転させ前記通水口の前記通水断面積を変更するステッピングモータとを備え、
前記制御部が、前記ステッピングモータの回転を制御して前記調整制御を行うものである
ことを特徴とする請求項1に記載の便器装置。
【請求項3】
前記排水部が、上流端を前記ボウル部に接続し下流端を自由端としたトラップ部と、前記トラップ部の前記下流端の向きを変えて封水姿勢と排出姿勢とを切り替える姿勢変更機構部とを備えたものである
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の便器装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−87589(P2013−87589A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231913(P2011−231913)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】