説明

便座便蓋装置

【課題】ケースと便蓋との隙間を著しく小さくすることができ、しかも便蓋回動時における便蓋支持部材の回動領域も小さく、また、ケース内に埃、ゴミ、水などが入り込むこともない便座便蓋装置を提供する。
【解決手段】便座便蓋装置は、便座ボックス1と、便座ボックス1に対し連結部材10によって回動可能に取り付けられた便蓋3と、支軸を介して回動可能に取り付けられた便座等を備えている。連結部材10は、ベースバー11、ジョイントリンク12,15及び1対のメインリンク13,14を備えている。便蓋3が起立回動するときに連結部材10が伸長する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器に設置される便座便蓋装置に係り、特にケースと倒伏した便蓋との間に大きな隙間が生じないように構成された便座便蓋装置に関する。
【背景技術】
【0002】
洋風便器の後部上面に便座ボックスやタンクカバー等のケースを設置し、このケースに便座及び便蓋を起倒方向回動可能に取り付けた便座便蓋装置において、ケースと、倒伏状態の便蓋の後縁との間に大きな隙間が生じることがある。この隙間は、便蓋が起立回動する際にケースに当ることを防止するために設けられている。
【0003】
この隙間を小さくするように構成した便座便蓋装置として、特許文献1(特開2005−244)の図6,7に、便蓋を回動可能に支持するための部材として、回動軸心線から回動半径方向に延在した延設アーム部と、該延設アーム部から円弧状に延設された円弧アーム部とを有したアーム部材を用いたものが記載されている。
【0004】
この便座便蓋装置においては、便蓋が起立回動するに際し、便蓋が上方へ持ち上げられながら回動するので、ケースと便蓋との隙間を小さく設定した場合であっても、便蓋がケースに当ることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−244
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の便座便蓋装置にあっては、便蓋の開放回動時に延設アーム部及び円弧アーム部が回動するため、これらの回動領域内に部材を配置することができず、ケースにデッドスペースが生じたり、設計上の自由度が小さくなったりする。
【0007】
また、上記特許文献1の便座便蓋装置にあっては、ケース内にアームを配置し、ケース前面部に設けた挿通口を通ってアームがケース前方へ突出する構成となっているため、この挿通口からケース内に埃、ゴミ、水などが入り込むおそれが高い。
【0008】
本発明は、ケースと便蓋との隙間を著しく小さくすることができ、しかも便蓋回動時における便蓋支持部材の回動領域も小さく、また、ケース内に埃、ゴミ、水などが入り込むこともない便座便蓋装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の便座便蓋装置は、便器の後部に設置されるケースと、該ケースに対し起倒方向回動可能に取り付けられた便座及び便蓋とを有した便座便蓋装置であって、該便蓋は、回動可能な連結部材によって該ケースの外面に連結されている便座便蓋装置において、該連結部材は、便蓋倒伏状態から起立回動するほど長さが大きくなる応動伸縮機構を有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の便座便蓋装置では、該応動伸縮機構は、長手方向の途中同士が枢軸によって回動可能に連結された第1及び第2のメインリンクを有することが好ましい。
【0011】
また、前記第1のメインリンクの基端部は前記ケースに対し回動可能に連結されており、第2のメインリンクの基端部は、メインリンクよりも長さの短い基端部ジョイントリンクを介して該ケースに連結されており、第1及び第2のメインリンクのうち、一方のメインリンクの先端部は前記便蓋に対し回動可能に連結されており、他方のメインリンクの先端部は、メインリンクよりも長さの短い先端部ジョイントリンクを介して便蓋に連結されていることが好ましい。
【0012】
また、前記ケースの前面部に上下位置を異ならせて2個の取付座が突設されており、該取付座同士の間にベースバーが架設されており、前記第1及び第2のメインリンクのうち一方のメインリンクの基端部が上側の取付座に対し回動可能に軸支され、他方のメインリンクの基端部が基端部ジョイントリンクの先端側に回動可能に軸支されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の便座便蓋装置にあっては、便蓋倒伏時には短く、便蓋が起立するほど長くなる応動伸縮機構を有する連結部材を介して便蓋がケースに取り付けられている。便蓋が起立回動するときには、便蓋が上側に回動するに従って連結部材の長さが大きくなるので、便蓋は、上方に持ち上げられながら起立回動する。そのため、ケースと便蓋との隙間を小さく設定しても、便蓋がケースに当たることなく起立回動する。
【0014】
本発明では、この連結部材をケースの外側に配置するので、埃、ゴミ、水などがケース内に入り込むことが防止される。
【0015】
本発明では、連結部材の回動領域が上記特許文献1のアームに比べて小さく、ケースの設計上の自由度が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態に係る便座便蓋装置の便蓋起立時の斜視図である。
【図2】便蓋を起立させた状態における図1の便座便蓋装置の要部縦断面図である。
【図3】連結部材の斜視図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】便蓋倒伏時における図2と同一箇所の断面を示すものであり、図6のV−V線断面図である。
【図6】実施の形態に係る便座便蓋装置の便蓋倒伏時の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1〜6を参照して実施の形態について説明する。
【0018】
図1,6の通り、この便座便蓋装置は、洋風便器の後部上面に設置される便座ボックス1と、該便座ボックス1に対し連結部材10によって回動可能に取り付けられた便蓋3と、便座ボックス1に対し回動可能に取り付けられた便座5等を備えている。
【0019】
便座ボックス1の前部には、前方に膨出する膨出部1aが設けられている。この膨出部1aの上面は、それよりも後方側の便座ボックス後部上面1rよりも便蓋3の厚み分よりも低位となっている。膨出部1aの左右(便座5に座った人にとっての左右)の側面1bは、膨出部1a以外の便座ボックス側面1sよりも便座ボックス1の左右方向中央側に引っ込んでいる。膨出部1aの左右両側には、膨出部側面1b、前向き面1c及び斜め上向き面1dで囲まれ、側方、前方及び上方に向って開放する凹所が形成されている。膨出部側面1bに便座5が支軸によって起倒回動可能に取り付けられている。支軸の軸心線方向は便器の左右幅方向となっている。
【0020】
前向き面1cには第1の取付座7が前方に向って突設され、斜め上向き面1dには第2の取付座8が斜め前方に向って突設されている。取付座7は取付座8よりも高位に位置している。
【0021】
前記便蓋3の側面3sの内面には肉厚部3a(図4)が設けられている。
【0022】
連結部材10は、基端部すなわち便座ボックス1側が取付座7,8に連結され、先端部すなわち便蓋3側が肉厚部3aに連結されている。
【0023】
図2,3に明示される通り、連結部材10は、ベースバー11、基端部ジョイントリンク12、メインリンク13,14、先端部ジョイントリンク15よりなる。該ベースバー11は、両端部が取り付けピン21,22によって取付座8,7に取り付けられ、取付座7,8間に架設されている。ベースバー11はメインリンク13,14と同一長さを有している。
【0024】
ジョイントリンク12は、基端部が取り付けピン23によってベースバー11の長手方向の中間部に回動可能に連結されている。ジョイントリンク12の長さはメインリンク13,14の半分となっている。
【0025】
メインリンク13は、基端部が取付座7に対し取り付けピン22によって回動可能に連結され、先端部が取り付けピン26によって先端部ジョイントリンク15の基端部に回動可能に連結されている。メインリンク13,14の長さは同一である。
【0026】
メインリンク14は、基端部が取り付けピン24によって基端部ジョイントリンク12の先端部に対し回動可能に連結されている。メインリンク13,14の長手方向の中間部は取り付けピン25によって回動可能に連結されている。従って、メインリンク13,14は取り付けピン25によって連結されたX字状となっている。メインリンク14の先端部は、取り付けピン27によって肉厚部3aに回動可能に連結されている。
【0027】
ジョイントリンク15は、先端部が取り付けピン28によって肉厚部3aに回動可能に連結されている。なお、図4の通り、肉厚部3aにインサート29が設けられており、取り付けピン28は該インサート29に固定されている。図示は省略するが、取り付けピン27も同様にして固定されている。ジョイントリンク15の基端部は、前述の通り、取り付けピン26によってメインリンク13の先端部に連結されている。ジョイントリンク15の長さはメインリンク13,14の長さの半分である。
【0028】
取り付けピン21,23間、取り付けピン23,22間、取り付けピン23,24間、取り付けピン24,25間、取り付けピン22,25間、取り付けピン25,26間、取り付けピン25,27間、取り付けピン26,28間、取り付けピン27,28間の距離はすべて同一となっている。従って、ベースバー11、メインリンク14及びジョイントリンク15は平行である。また、取り付けピン27,28を結ぶ線分の方向と、メインリンク13及びジョイントリンク12にも平行である。
【0029】
便蓋3が倒伏した図5の状態にあっては、連結部材10が折り畳まれた状態となり、最上部の取り付けピン28とベースバー11の取り付けピン23との距離が最も小さくなっている。なお、この状態において、便蓋3の上面と便座ボックス1の後部上面1rとは面一状となっている。
【0030】
この状態から便蓋3を起立回動させると、連結部材10は徐々に伸長しながら上方へ回動し、図2の起立状態となる。この状態では、メインリンク14とベースバー11、基端部ジョイントリンク15同士が当接しており、便蓋3はそれ以上後方へ回動しない。この状態において、便蓋3は若干後傾している。また、図2の通り、便蓋3の後端縁3eは便座ボックス後部上面1rよりも若干上方に位置している。メインリンク13は便座ボックス前向き面1cよりも前方に位置している。
【0031】
図6のように、倒伏した便蓋3の後縁3eと便座ボックス後部上面1rの前縁とは当接するか、又は隙間幅10mm以下、特に3mm以下となるように著しく近接している。
【0032】
このように構成された便座便蓋装置においては、図6の通り、便蓋3が倒伏した状態において、便蓋3の後縁3eと便座ボックス1の後部上面1rの前縁との間に隙間が実質的に存在せず、美観が良好であると共に、埃、ゴミなどが隙間に入り込むことが防止される。また、従来例(特許文献1)と異なり、アームを便座ボックス内に引き込まないので、アーム挿通口から便座ボックス内に埃、ゴミ、水などが入り込むこともない。
【0033】
図6の状態から便蓋3を起立回動させると、連結部材10は伸長しながら回動するので、便蓋3は便座ボックス1と接触することなく回動する。
【0034】
この実施の形態では、倒伏状態の便蓋3の後部の側面部3sと、便座ボックス側面部1sとは面一状であり、美観に優れる。
【0035】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の態様とされてもよい。例えば、便座ボックスの代わりにタンクカバーをケースとして用いてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 便座ボックス
3 便蓋
5 便座
7,8 取付座
10 連結部材
11 ベースカバー
12,15 ジョイントリンク
13,14 メインリンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の後部に設置されるケースと、該ケースに対し起倒方向回動可能に取り付けられた便座及び便蓋とを有した便座便蓋装置であって、
該便蓋は、回動可能な連結部材によって該ケースの外面に連結されている便座便蓋装置において、
該連結部材は、便蓋倒伏状態から起立回動するほど長さが大きくなる応動伸縮機構を有することを特徴とする便座便蓋装置。
【請求項2】
請求項1において、該応動伸縮機構は、長手方向の途中同士が枢軸によって回動可能に連結された第1及び第2のメインリンクを有することを特徴とする便座便蓋装置。
【請求項3】
請求項2において、前記第1のメインリンクの基端部は前記ケースに対し回動可能に連結されており、第2のメインリンクの基端部は、メインリンクよりも長さの短い基端部ジョイントリンクを介して該ケースに連結されており、第1及び第2のメインリンクのうち、
一方のメインリンクの先端部は前記便蓋に対し回動可能に連結されており、他方のメインリンクの先端部は、メインリンクよりも長さの短い先端部ジョイントリンクを介して便蓋に連結されていることを特徴とする便座便蓋装置。
【請求項4】
請求項3において、前記ケースの前面部に上下位置を異ならせて2個の取付座が突設されており、該取付座同士の間にベースバーが架設されており、
前記第1及び第2のメインリンクのうち一方のメインリンクの基端部が上側の取付座に対し回動可能に軸支され、他方のメインリンクの基端部が前記基端部ジョイントリンクの先端側に回動可能に軸支されていることを特徴とする便座便蓋装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−43057(P2013−43057A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184844(P2011−184844)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】