便座取付具及び昇降便座
【課題】上昇位置にある便座装置を安定させることができる便座取付具及び昇降便座を提供する。
【解決手段】便座取付具50は、第1軸部52Aと、第1軸部52Aの外径よりも小さい外径の第2軸部52Bとを有し、便座支持部材13の下面に連結される軸部材52と、便器本体1に貫設された取付孔2に固定され、第1軸部52Aの外径より僅かに大きい内径の第1貫通孔部53Dと、第2軸部52Bの外径より僅かに大きい内径の第2貫通孔部53Eとを有し、挿通された軸部材62が上下動し、第2軸部52Bよりも長い筒部材53と、第2軸部52Bの外周面と第1貫通孔部53Dの内周面との間に配置され、軸部材52が上昇する方向に弾性力を付与する第1弾性部材51とを備えている。軸部材52が上昇した状態では、第1軸部52Aの下端部が第1貫通孔部53Dの上端部に挿通されており、第2軸部52Bの下端部が第2貫通孔部53Eに挿通されている。
【解決手段】便座取付具50は、第1軸部52Aと、第1軸部52Aの外径よりも小さい外径の第2軸部52Bとを有し、便座支持部材13の下面に連結される軸部材52と、便器本体1に貫設された取付孔2に固定され、第1軸部52Aの外径より僅かに大きい内径の第1貫通孔部53Dと、第2軸部52Bの外径より僅かに大きい内径の第2貫通孔部53Eとを有し、挿通された軸部材62が上下動し、第2軸部52Bよりも長い筒部材53と、第2軸部52Bの外周面と第1貫通孔部53Dの内周面との間に配置され、軸部材52が上昇する方向に弾性力を付与する第1弾性部材51とを備えている。軸部材52が上昇した状態では、第1軸部52Aの下端部が第1貫通孔部53Dの上端部に挿通されており、第2軸部52Bの下端部が第2貫通孔部53Eに挿通されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便座取付具及び昇降便座に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図1には、従来の便座取付具が開示されている。この便座取付具は、軸部材と、挿通された軸部材が上下動する貫通孔を有する筒部材と、軸部材が上昇する方向に弾性力を付与する弾性部材とを備えている。軸部材は円柱状であり単一の外径を有している。筒部材は軸部材の外径よりも僅かに大きい内径を有する貫通孔部と、貫通孔部の下方に連続して貫通孔部の内径よりも大きい内径を有する空洞部とを有している。空洞部の下端は蓋体により閉鎖されている。圧縮コイルバネは、軸部材の下端面と、蓋体の上面との間に挟持され、空洞部に収納されている。
【0003】
この便座取付具では、圧縮コイルバネの弾性力によって軸部材が上方に押し上げられる。この際、軸部材は貫通孔部の内周面に保持されて垂直上方に起立している。これにより、便座装置を便器本体の上面より上方の上昇位置に上昇させることができる。このため、便座支持部材の下面と便器本体の後部上面との間に隙間を生じさせることができ、その隙間を利用して便器本体の上面を容易に清掃することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−5100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の便座取付具では、軸部材の上昇量を大きくしようとすると、圧縮コイルバネの伸張幅を大きくし、それに伴い空洞部の上下方向の長さを長くしなければならない。これにより、貫通孔部の上下方向の長さは短くなる。貫通孔部の上下方向の長さが短くなると、上昇した軸部材の保持が不十分となり、便座装置の上昇位置での安定性にかける虞がある。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、上昇位置にある便座装置を安定させることができる便座取付具及び昇降便座を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の便座取付具は、便座及びこの便座を回動自在に軸支する便座支持部材を備えた便座装置を便器本体の上面に昇降自在に取り付ける便座取付具であって、
円柱状の第1軸部と、この第1軸部の下端に連続してこの第1軸部の外径よりも小さい外径に形成された円柱状の第2軸部とを有し、前記便座支持部材の下面に連結される軸部材と、
前記便器本体の後部上面に垂直方向に貫設された取付孔に固定され、前記第1軸部の外径より僅かに大きい内径を有して上端開口部から連続して形成された第1貫通孔部と、前記第2軸部の外径より僅かに大きい内径を有してこの第1貫通孔部の下端に連続して形成された第2貫通孔部とを有し、挿通された前記軸部材が上下動し、前記第2軸部よりも長い筒部材と、
前記第2軸部の外周面と前記第1貫通孔部の内周面との間に配置され、前記第1軸部の下端面と前記第1貫通孔部の下端面との間に挟持されており、前記軸部材が上昇する方向に弾性力を付与する第1弾性部材とを備えており、
前記軸部材が上昇した状態では前記第1軸部の下端部が前記第1貫通孔部の上端部に挿通されており、前記第2軸部の下端部が前記第2貫通孔部に挿通されていることを特徴とする。
【0008】
この便座取付具では、第1弾性部材の弾性力を利用して軸部材を上昇させることにより、便座装置を便器本体の上面から上昇位置に容易に上昇させることができる。便座装置が上昇位置に上昇した状態で、軸部材は、空洞部の上端部と下端開口部とのそれぞれに保持されている。つまり、筒部材の上端部と下端部との最も離れた2箇所で軸部材を保持することができる。
【0009】
したがって、本発明の便座取付具は、上昇位置にある便座装置を安定させることができる。
【0010】
また、第1弾性部材が第2軸部と第1貫通孔部との間に配置され、第2軸部52Bの外周面と第1貫通孔部53Dの内周面とが第1弾性部材の伸縮をガイドする。このため、第1弾性部材が長くても安定して伸縮することができる。
【0011】
また、第1弾性部材が常時、筒部材に覆われており露出してしまわない。このため、第1弾性部材に埃等が溜まらず、安定して伸縮することができる。また、第1弾性部材の伸縮時に生じる音を筒部材内に閉じ込めることができるため、静音化を図ることができる。
【0012】
本発明の昇降便座は、前記便座装置と前記便座取付具とを備えていることを特徴とする。この昇降便座では上述した効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例の昇降便座が便器本体に取り付けられた状態を示す側面図である。
【図2】実施例の昇降便座を便器本体に取り付ける状態を示す斜視図である。
【図3】実施例の便座リフトアップ装置を示す分解斜視図である。
【図4】実施例の便座リフトアップ装置を示す上面図である。
【図5】便座装置が下降位置に配置された状態を示す図4における矢視X−X断面図である。
【図6】図5の要部拡大図である。
【図7】便座装置が上昇位置に配置された状態を示す図4における矢視X−X断面図である。
【図8】図6の要部拡大図である。
【図9】実施例の筒部材の下端部と被結合部材とを示す斜視図である。
【図10】実施例の被結合部材を接続部に取り付ける工程を示す側面図であり、(a)は取付け前の状態、(b)は被結合部材を接続部に挿入した状態、(c)は被結合部材を回転する状態、(d)は被結合部材が接続部に取付けられた状態を示す。
【図11】実施例のレバー部材と便座リフトアップ装置との関係を示す平面図であり、(a)は爪部が第1位置に配置された状態、(b)は爪部が中間位置に移動した状態、(c)は爪部が第2位置に移動した状態を示す。
【図12】実施例の第1係止部材と爪部との関係を示す要部断面図であり、(a)は爪部が第1位置に配置された状態、(b)は爪部が中間位置に移動した状態、(c)は爪部が第2位置に移動した状態を示す。
【図13】実施例の便座装置の上昇位置で上プレートに対して便座装置を着脱する状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の便座取付具を有する便座リフトアップ装置と便座装置とを備えた昇降便座を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0015】
<実施例>
実施例の昇降便座は、図1及び図2に示すように、便座装置10と便座取付具50を有する便座リフトアップ装置20とを備えている。
【0016】
便座装置10は、便座11と、便蓋12と、便座11及び便蓋12を回動自在に軸支する便座支持部13と、レバー部材14とを備えている。
【0017】
便座支持部材13はボックス状に形成されている。便座支持部材13の内部には、一対の局部洗浄用ノズル13Aと、局部洗浄用ノズル13Aへの洗浄水の給水路に設けられた温水タンク13Bと、局部洗浄用ノズル13Aへの洗浄水の給水路に設けられた開閉弁や温水タンク13Bに内蔵されたヒーター等を制御する制御装置13C等を有する局部洗浄装置が収納されている。
【0018】
便座支持部材13の下面には、後述する便座リフトアップ装置20の上プレート30と下プレート40とが重ね合わされた状態で収納される収納凹部16が設けられている。収納凹部16の後端部は開放している。また、収納凹部16の左右両端部には上プレート30の左右に突出して設けられた鍔部30Aを挿入する溝部16Aが設けられている。収納凹部16には、上プレート30と下プレート40とが重ね合わされた状態、若しくは上プレート30が下プレート40から上昇した状態で、収納凹部16の後方から鍔部30Aを溝部16Aに挿入させながらスライドさせることにより、重ね合わされた状態の上プレート30及び下プレート40、若しくは上プレート30のみを収納することができる。
【0019】
レバー部材14は、便座装置10を便器本体1の上面に取り付けた状態で、便器本体1の前方から見て便座支持部材13の左側面に操作部14Bを露出させている。レバー部材14は、左右方向に延び、左右方向に往復移動するレバー本体部14Aを有している。操作部14Bはレバー本体部14Aの一端部から下方に延びて形成されている。レバー本体部14Aは便座支持部材13内の底面に沿って配置されている。
【0020】
レバー本体部14Aには、下方に延びて便座支持部材13の下面(収納凹部16の下面)より下方に突出し、レバー本体部14Aの往復移動に伴い第1位置と第2位置との間を往復移動する1対の爪部14Cが形成されている。
【0021】
レバー本体部14Aには、爪部14Cが第1位置に配置される方向に弾性力を付与する圧縮コイルバネ15が取り付けられている。圧縮コイルバネ15の弾性力により爪部14Cが第1位置に配置された状態では、操作部14Bの外側面は便座支持部材13の左側面と面一である。レバー部材14は、圧縮コイルバネ14の弾性力に抗して、操作部14Bを便座支持部材13の左側面より外側に引き出すことができる。これにより、爪部14Cを第1位置から第2位置に移動させることができる。
【0022】
便座リフトアップ装置20は、図2〜図4に示すように、便器本体1の上面に固定される下プレート40と、下プレート40に対して昇降する上プレート30と、上プレート30を上昇させる方向に弾性力を付与する第1弾性部材である第1圧縮コイルバネ51を有する便座取付具50とを備えている。
【0023】
下プレート40は、下プレート本体部材41と、第1係止部材42と、第2弾性部材である第2圧縮コイルバネ43とを有している。
【0024】
下プレート本体部材41は、下プレート40が便器本体1の上面に固定された状態で、便器本体1の前方から見て左右に前後方向に延びた固定部41Aと、各固定部41Aの後部を連結する連結部41Bとを有している。
【0025】
各固定部41Aは、長方形状の平板であり、前後端及び外側端に上方に延びる土手部が形成されている。各固定部41Aには前後に並んで2つずつ貫通孔44が設けられている。便器本体1が標準タイプの場合、前側の貫通孔44に後述する便座取付具50の筒部材53を挿通して便座リフトアップ装置20を便器本体1に取り付ける。また、便器本体1が大型タイプの場合、後側の貫通孔44に便座取付具50の筒部材53を挿通して便座リフトアップ装置20を便器本体1に取り付ける。
【0026】
各貫通孔44の前後には切り取り可能な切取部44Aが設けられている。切取部44Aを切り取ることにより、固定部41Aに前後方向に延びる長孔を形成することができる。切取部44Aを切り取って長孔を形成することにより、便座取付具50の筒部材53の挿通位置を便器本体1の大きさに合わせて前後方向に微調整することができる。
【0027】
各固定部41Aの左右側部の上面には、複数の小突起45を所定間隔ごとに前後方向に整列させた凹凸部が形成されている。この凹凸部は、後述する便座取付具50の筒部材53の頭部53Cの下面との間で柔軟性を有するリング部材53Gを挟持することにより、筒部材53の挿通位置がずれることを防止するものである。各固定部41Aの下面には、固定部41Aの外形よりも僅かに小さい形状であり、前後方向に延びる長孔が形成された滑り止め部材46が貼着されている。
【0028】
連結部41Bには第1係止部材42を収納する収納部47が形成されている。収納部47は下方に開口しており、下方から第1係止部材42が挿入される。収納部47の下方開口は蓋部材47Aにより閉鎖されている。蓋部材47Aは、小突起を有して連結部41Bの前端面に設けられた係止部41Cと、小突起が挿入する開口を有して蓋部材47Aの前端面に設けた被係止部47Bとを係止し、ビスSにより連結部41Bに固定されている。収納部47内には、第2圧縮コイルバネ43の一端が当接する第1当接部43Bが形成されている。
【0029】
収納部47の上面には、上下方向に貫通し、左右に長い長方形状の第1開口部47Bが貫設されている。第1開口部47Bの上方から、収納部47内に収納された第1係止部材42の後述する後側の第1係止部42Cを望むことができる。また、第1開口部47Bには、上方から上プレート30に設けられた後述する後側の第2係止部32Bが挿入される。この第2係止部32Bは、第1開口部47Bの上方から挿入され、第1係止部42Cに係止する。
【0030】
収納部47の右側面の後部には左右方向に貫通した第2開口部47Cが貫設されている。第2開口部47Cには、第1係止部材42の後述する凸部42Dが収納部47の内側から突出する。
【0031】
第1係止部材42は、左右方向に延びた直方体形状の本体部42Aと、前端面の左右端部の2箇所に設けられた前側の第1係止部42Bと、後端面の左右中間部に設けられた後側の第1係止部42Cと、後端面の右側端部から右方向に突出して設けられた凸部42Dとを有している。前側の各第1係止部42Bは、第1係止部材42が収納部47に収納された状態では、収納部47の前端部より前方に露出している。
【0032】
本体部42Aの上面の中央部には左右方向に延びた凹部42Eが設けられている。凹部42Eには第2圧縮コイルバネ43が収納される。凹部42Eの右側内面には第2圧縮コイルバネ43の他端が当接する第2当接部43Aが形成されている。
【0033】
第1係止部材42を下プレート40の収納部47に収納する際、第2圧縮コイルバネ43は収納部47内に形成された第1当接部43Bと第1係止部材42に設けられた第2当接部43Aとの間に挟持される。このため、第1係止部材42には、第2圧縮コイルバネ43の弾性力が右方向に付与されている。
【0034】
上プレート30は、レバー部材14に形成された一対の爪部14Cと同じ間隔を有して設けられ、上方に開口した2列の係止凹部31を有している。各係止凹部31は、前端部が上プレート30の前端部に開口している。また、各係止凹部31の後端部は直角に右方向に屈曲し、爪部14Cが係止する段部31Aを形成している。このため、各係止凹部31の前端部から後端部に挿入された爪部14Cは、レバー本体部14Aに取り付けられた圧縮コイルバネ15により第1位置に移動すると、段部31Aに係止する。
【0035】
上プレート30の下部には、下プレート40の連結部41Bを収納する空洞部が形成されている。この空洞部には、下プレート40に設けられた前側の第1係止部42Bに対応する2つの前側の第2係止部32Aと、下プレート40に設けられた後側の第1係止部42Cに対応する1つの後側の第2係止部32Bとが設けられている。
【0036】
上プレート30は、下プレート40の各固定部41Aに対応する位置に前後方向に延びて形成された固定凹部33を有している。固定凹部33の中央部には前後方向に延びる長孔33Aが設けられている。この固定凹部33には、後述する便座取付具50の軸部材52を固定するワッシャーW1及びボルトB1が収納される。また、この長孔33Aには軸部材52を固定するボルトB1が挿通される。
【0037】
上プレート30には、下プレート40と重ね合わされた状態で左右に突出する鍔部30Aが形成されている。左右の鍔部30Aは、前部において外側部の間隔が狭くなるように中央側へ傾斜している。このため、上プレート30の鍔部30Aは、前端側から便座支持部材13の溝部16Aに挿入し易い。
【0038】
便座取付具50は、図3、図5〜図8に示すように、軸部材52と、軸部材52が挿通して上下動する貫通孔(第1貫通孔部53D、第2貫通孔部53E)を有する筒部材53と、軸部材52が上昇する方向に弾性力を付与する第1弾性部材である第1圧縮コイルバネ51とを有している。
【0039】
軸部材52は、円柱状の第1軸部52Aと、この第1軸部52Aの下端に連続する円柱状の第2軸部52Bと、この第1軸部52Aの上端に連続する円盤状の頭部52Cとを有している。第2軸部52Bの外径は第1軸部52Aの外径よりも小さく形成されている。頭部52Cの直径は第1軸部52Aの外径よりも大きく形成されている。
【0040】
軸部材52は、頭部52Cの上面から下方へ向けて螺子孔が形成されている。第2軸部52Bの下端部の外周には第2軸部52Bを一周する溝部52Dが設けられている。この溝部52Dには結合部材であるOリング54が嵌め込まれて取り付けられている。Oリング54は、圧縮コイルバネをリング状に連結したものである。
【0041】
第2軸部52Bの下端面には円盤状の停止部材52EがボルトB2により取り付けられている。停止部材52Eは、後述する筒部材53の下端部に取り付けられる被結合部材55の外径と等しい外径を有している。このため、停止部材52Eが被結合部材55の下端面に当接し、軸部材52が筒部材53から上方へ抜けてしまうことを防止している。
【0042】
筒部材53は、外周面にねじ山が刻まれた円筒状の胴部53Aと、胴部53Aの下端に連続する接続部53Bと、接続部53Bに取り付けられた被結合部材55と、胴部53Aの上端に連続する平面視が正方形の平板状の頭部53Cとを有している。筒部材53は第2軸部52Bより長く形成されている。筒部材53は、便器本体1の後部上面に左右に並んで垂直方向に貫設された一対の取付孔2に上方から挿通され、下端から挿入されたワッシャーW2を挟持してナットNをねじ込むことにより固定される。
【0043】
筒部材53には、軸部材52の第1軸部52Aの外径より僅かに大きい内径を有する第1貫通孔部53Dが頭部53Cの上面の開口から連続して、胴部53A内に上下方向に形成されている。また、筒部材53には、軸部材52の第2軸部52Bの外径より僅かに大きい内径を有する第2貫通孔部53Eが第1貫通孔部53Dの下端に連続して筒部材53の接続部53B内に形成されている。
【0044】
筒部材53の下端部である接続部53Bには、筒状の被結合部材55が取り付けられている。被結合部材55は、内周面の下端部に軸部材52のOリング54が係止する係止部55Eが形成されている。また、被結合部材55には、図9及び図10に示すように、上下に並んだ2列のスリット55A、55Bが被結合部材55の中心軸に対して対称の位置の側面に夫々形成されている。上側のスリット55Aには、被結合部材55の上端部の内面に設けられた縦溝55Cが連結されている。また、上側のスリット55Aは、下面の中間部に隆起部55Dが形成されている。接続部53Bの外側面には、筒部材53の中心軸に対して対称の位置に2つの凸部53Fが形成されている。
【0045】
このように形成された被結合部材55は、次のように接続部53Bに取り付けられる。図10(a)、(b)に示すように、接続部53Bの凸部53Fを被結合部材55の縦溝55Cに挿通させ、接続部53Bを被結合部材55内に挿入する。すると、凸部53Fは上側のスリット55Aの端部に挿入される。次に、被結合部材55を筒部材53の中心軸回りに回転させると、図10(c)に示すように、凸部53Fが隆起部55Dを乗り越える。この際、上側のスリット55Aと下側のスリット55Bとの境界部分を下側スリット55Bの空間側に変形させることができるため、凸部53Fが隆起部55Dを乗り越えることができる。また、凸部53Fが乗り上げる側の隆起部55Dの立ち上がり面が上り傾斜に形成されているため、凸部53Fが隆起部55Dを容易に乗り越えることができる。このようにして、図10(d)に示すように、凸部53Fが隆起部55Dを乗り越え、被結合部材55は接続部53Bに取付けられる。隆起部55Dを乗り越えた凸部53Fは、乗り越えた側の隆起部55Dの側面が上側のスリット55Aの底面から垂直に立ち上がっているため、逆方向に隆起部55Dを乗り越え難く、被結合部材55が逆回転して接続部53Bから抜け落ちてしまわない。
【0046】
第1圧縮コイルバネ51は、図5〜図8に示すように、第2軸部52Bと第1貫通孔部53Dとの間に配置され、第1軸部52Aの下端面と第1貫通孔部53Dの下端面との間に挟持されている。このため、軸部材52は上昇する方向に第1圧縮コイルバネ51の弾性力が付与されている。
【0047】
筒部材53は第2軸部52Bより長く形成されているため、軸部材52が上昇した状態では、第1軸部52Aの下端部が第1貫通孔部53Dの上端部に挿入されており、第2軸部52Bの下端部が第2貫通孔部53Eに挿通されている。このように、軸部材52は上昇した状態で、第1軸部52Aの下端部が第1貫通孔部53Dの上端部に保持され、第2軸部52Bの下端部が第2貫通孔部53Eに保持されている。つまり、筒部材53の上端部と下端部との最も離れた2箇所で軸部材52を保持することができる。
【0048】
したがって、実施例の便座取付具50は、上昇位置にある便座装置10を安定させることができる。
【0049】
また、第1圧縮コイルバネ51が第2軸部52Bと第1貫通孔部53Dとの間に配置され、第2軸部52Bの外周面と第1貫通孔部53Dの内周面とが第1圧縮コイルバネ51の伸縮をガイドする。このため、第1圧縮コイルバネ51が長くても安定して伸縮することができる。
【0050】
また、第1圧縮コイルバネ51が常時、筒部材53に覆われており露出してしまわない。このため、第1圧縮コイルバネ51に埃等が溜まらず、安定して伸縮することができる。また、第1圧縮コイルバネ51の伸縮時に生じる音を筒部材53内に閉じ込めることができるため、静音化を図ることができる。
【0051】
このように構成された昇降便座では、次に示すように、便座装置10を便器本体1に取り付ける。
【0052】
先ず、図2に示すように、便座リフトアップ装置20を便器本体1の後部上面に取り付ける。この際、便器本体1が標準タイプの場合、便座取付具50の筒部材53を下プレート40の前側の貫通孔44に挿通する。また、便器本体1が大型タイプの場合、便座取付具50の筒部材53を下プレート40の後側の貫通孔44に挿通する。また、下プレート40の切取部44Aを切り取って長孔にした上で、便座取付具50の筒部材53をこの長孔に挿通してもよい。
【0053】
次に、便器本体1の後部上面の取付孔2に筒部材53を挿通し、下方からナットNをねじ込んで下プレート40を便器本体1の後部上面に固定する。この際、下プレート40の切取部44Aを切り取って長孔にした場合には、前後方向に微調整しながら下プレート40を便器本体1の後部上面に固定することができる。
【0054】
次に、下プレート40の第1係止部42B、42Cと上プレート30の第2係止部32A、32Bとを係止させ、下プレート40と上プレート30とを重ね合わせた状態にする。この状態でボルトB1を締め込み、軸部材52の頭部52CとボルトB1が挿通するワッシャーW1とにより上プレート30を挟み込み、上プレート30に便座取付具50の軸部材52を固定する。
【0055】
次に、便器本体1の後部上面に取り付けられた上プレート30と下プレート40とを便座装置10の便座支持部材13に設けられた収納凹部16に収納するように、便座支持部材13を前方から後方へスライドさせる。この際、便座支持部材13の収納凹部16に設けられた溝部16Aに上プレート30の鍔部30Aを挿入させながら、スライドさせる。すると、便座支持部材13の収納凹部16の下面より下方に突出する爪部14Cが上プレート30の係止凹部31の前端部から挿入される。爪部14Cは、便座支持部材13を後方へスライドさせ、収納凹部16に上プレート30と下プレート40とが完全に収納されると、図11(a)及び図12(a)に示すように、圧縮コイルバネ15の弾性力により第1位置に配置される。つまり、爪部14Cが段部31Aに係止した状態となる。このようにして、便座支持部材13は上プレート16に対して固定される。つまり、昇降便座の便座装置10は便器本体1の上面に取り付けられる。
【0056】
便器本体1に取り付けられた昇降便座において、操作部14Bを一方向(左方向)に引き出す操作を行うと、図11(a)、(b)及び図12(a)、(b)に示すように、爪部14Cは第1位置から第2位置へ向けて移動する。すると、爪部14Cが下プレート40の第1係止部材42に設けられた凸部42Dを左方向に押す。このため、第2圧縮コイルバネ43の弾性力に抗して第1係止部材42が左方向に移動する。これにより、第1係止部材42に設けられた第1係止部42B、42Cも左方向に移動する。
【0057】
このように、爪部14Cを第1位置から第2位置へ向けて移動させるために操作部14Bを操作する際、第2圧縮コイルバネ43の弾性力が加わるため、意図せずに爪部14Cが移動してしまうことを防止することができる。つまり、意図せずに便座装置10を便器本体1上で上昇させてしまったり、便器本体1から取り外してしまったりすることを防止することができる。
【0058】
爪部14Cが第1位置から第2位置へ移動する中間位置において、図11(b)及び図12(b)に示すように、第1係止部42B、42Cは第2係止部32A、32Bとの係止状態を解除する。これにより、便座取付具50の第1圧縮コイルバネ51の弾性力を利用して上プレート30を下プレート40から容易に上昇させることができる。つまり、便座装置10を便器本体1の上面から上昇位置に容易に上昇させることができる。
【0059】
第1圧縮コイルバネ51の弾性力は便座装置10の荷重と略等しく設定されているため、第1係止部42B、42Cと第2係止部32A、32Bとの係止状態が解除されたのみでは、便座装置10は上昇しない。しかし、第1圧縮コイルバネ51の弾性力と便座装置10の荷重とか均衡しているため、便座装置10の荷重を感じずに便座装置10を持ち上げることができる。つまり、操作部14Bを左方向に引き出して爪部14Cを中間位置に移動させながら、便座装置10の便座支持部材13の両側を保持し、便座装置10を容易に上方に持ち上げることができる。
【0060】
便座装置10を持ち上げて、図7及び図8に示すように、第2軸部52Bの下端部のOリング54を被結合部材55の係止部55Eに係止させると、便座装置10を上昇位置に確実に保持することができる。
【0061】
また、便座装置10が上昇位置に保持された状態において、筒部材53の上端部と下端部との最も離れた2箇所で軸部材52を保持しているため、上昇位置にある便座装置10をさらに安定させることができる。
【0062】
便座装置10を持ち上げて、Oリング54を係止部55Eに係止させる際に被結合部材55が弾性変形するためクリック感が生じる。このため、便座装置10が上昇位置に保持されたことを認識することができ、便座装置10を上昇位置に確実に保持することができる。このため、図13に示すように、便座装置10を上昇させた状態でも、上プレート30に対して便座装置10を以下に示す操作によって取り外したり、取付けたりすることができる。
【0063】
操作部14Bを左方向へさらに引き出す操作を行い、爪部14Cを第2位置へ移動させると、図11(c)及び図12(c)に示すように、爪部14Cが係止凹部31の段部31Aからはずれた位置まで移動し、爪部14Cと係止凹部31との係止状態が解除される。これにより、便座支持部材13を前方へ引き出すことができる。つまり、便座装置10を便器本体1から容易に取り外すことができる。このように、爪部14Cを完全に第2位置に移動させなければ、爪部14Cと係止凹部31との係止状態は解除することができない。このため、便座装置10を便器本体1から取り外す際には、爪部14Cが第2位置に完全に移動するように操作部14Bを操作することになり、便座装置10を便器本体1から取り外すための操作部14Bの操作と、便座装置10を便器本体の上面から上昇させるための操作部14Bの操作とを明確に区別することができる。
【0064】
このように、この昇降便座では、一つの操作部14Bを一方向(左方向)に操作することによって、その中間位置で便座装置10を便器本体1の上面から上昇させることができ、さらに操作すると便座装置10を便器本体1から取り外すことができる。また、操作部14Bは便器本体1の上面に配置された便座支持部材13の左側面に露出しているため、操作を容易に行なうことができる。つまり、便座装置10の便器本体1上での昇降及び便座装置10の便器本体1に対する着脱を容易に行なうことができる。
【0065】
また、実施例の便座リフトアップ装置20は、同様のレバー部材14を備えた便座装置に対して利用することができる。つまり、この便座リフトアップ装置20を便器本体1に取り付けることにより、同様のレバー部材14を備えている便座装置であれば、例え、既存の便座装置であっても便器本体1上での昇降及び便器本体1に対する着脱を同様に行なうことができる。また、同様のレバー部材14を備えていれば、新規な便座装置に取り替えたとしても、便器本体1上での昇降及び便器本体1に対する着脱を同様に行なうことができる。このように、この便座リフトアップ装置20は、複数種類の便座装置に適用することができる。
【0066】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例では、上プレートを介して便座装置を昇降させていたが、便座装置の便座支持部材の下面に直接、便座取付具の軸部材の頭部を取り付けて便座装置を昇降させてもよい。
(2)実施例では、第1弾性部材である第1圧縮コイルバネの弾性力を便座装置の荷重と略等しく設定したが、第1弾性部材の弾性力は便座装置の荷重より強くしてもよい。この場合、便座装置を第1弾性部材の弾性力のみにより上昇させることができる。
【符号の説明】
【0067】
1…便器本体
2…取付孔
10…便座装置
11…便座
13…便座支持部材
50…便座取付具
51…第1圧縮コイルバネ(第1弾性部材)
52…軸部材
52A…第1軸部
52B…第2軸部
53…筒部材
53D…第1貫通孔部
53E…第2貫通孔部
【技術分野】
【0001】
本発明は便座取付具及び昇降便座に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図1には、従来の便座取付具が開示されている。この便座取付具は、軸部材と、挿通された軸部材が上下動する貫通孔を有する筒部材と、軸部材が上昇する方向に弾性力を付与する弾性部材とを備えている。軸部材は円柱状であり単一の外径を有している。筒部材は軸部材の外径よりも僅かに大きい内径を有する貫通孔部と、貫通孔部の下方に連続して貫通孔部の内径よりも大きい内径を有する空洞部とを有している。空洞部の下端は蓋体により閉鎖されている。圧縮コイルバネは、軸部材の下端面と、蓋体の上面との間に挟持され、空洞部に収納されている。
【0003】
この便座取付具では、圧縮コイルバネの弾性力によって軸部材が上方に押し上げられる。この際、軸部材は貫通孔部の内周面に保持されて垂直上方に起立している。これにより、便座装置を便器本体の上面より上方の上昇位置に上昇させることができる。このため、便座支持部材の下面と便器本体の後部上面との間に隙間を生じさせることができ、その隙間を利用して便器本体の上面を容易に清掃することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−5100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の便座取付具では、軸部材の上昇量を大きくしようとすると、圧縮コイルバネの伸張幅を大きくし、それに伴い空洞部の上下方向の長さを長くしなければならない。これにより、貫通孔部の上下方向の長さは短くなる。貫通孔部の上下方向の長さが短くなると、上昇した軸部材の保持が不十分となり、便座装置の上昇位置での安定性にかける虞がある。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、上昇位置にある便座装置を安定させることができる便座取付具及び昇降便座を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の便座取付具は、便座及びこの便座を回動自在に軸支する便座支持部材を備えた便座装置を便器本体の上面に昇降自在に取り付ける便座取付具であって、
円柱状の第1軸部と、この第1軸部の下端に連続してこの第1軸部の外径よりも小さい外径に形成された円柱状の第2軸部とを有し、前記便座支持部材の下面に連結される軸部材と、
前記便器本体の後部上面に垂直方向に貫設された取付孔に固定され、前記第1軸部の外径より僅かに大きい内径を有して上端開口部から連続して形成された第1貫通孔部と、前記第2軸部の外径より僅かに大きい内径を有してこの第1貫通孔部の下端に連続して形成された第2貫通孔部とを有し、挿通された前記軸部材が上下動し、前記第2軸部よりも長い筒部材と、
前記第2軸部の外周面と前記第1貫通孔部の内周面との間に配置され、前記第1軸部の下端面と前記第1貫通孔部の下端面との間に挟持されており、前記軸部材が上昇する方向に弾性力を付与する第1弾性部材とを備えており、
前記軸部材が上昇した状態では前記第1軸部の下端部が前記第1貫通孔部の上端部に挿通されており、前記第2軸部の下端部が前記第2貫通孔部に挿通されていることを特徴とする。
【0008】
この便座取付具では、第1弾性部材の弾性力を利用して軸部材を上昇させることにより、便座装置を便器本体の上面から上昇位置に容易に上昇させることができる。便座装置が上昇位置に上昇した状態で、軸部材は、空洞部の上端部と下端開口部とのそれぞれに保持されている。つまり、筒部材の上端部と下端部との最も離れた2箇所で軸部材を保持することができる。
【0009】
したがって、本発明の便座取付具は、上昇位置にある便座装置を安定させることができる。
【0010】
また、第1弾性部材が第2軸部と第1貫通孔部との間に配置され、第2軸部52Bの外周面と第1貫通孔部53Dの内周面とが第1弾性部材の伸縮をガイドする。このため、第1弾性部材が長くても安定して伸縮することができる。
【0011】
また、第1弾性部材が常時、筒部材に覆われており露出してしまわない。このため、第1弾性部材に埃等が溜まらず、安定して伸縮することができる。また、第1弾性部材の伸縮時に生じる音を筒部材内に閉じ込めることができるため、静音化を図ることができる。
【0012】
本発明の昇降便座は、前記便座装置と前記便座取付具とを備えていることを特徴とする。この昇降便座では上述した効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例の昇降便座が便器本体に取り付けられた状態を示す側面図である。
【図2】実施例の昇降便座を便器本体に取り付ける状態を示す斜視図である。
【図3】実施例の便座リフトアップ装置を示す分解斜視図である。
【図4】実施例の便座リフトアップ装置を示す上面図である。
【図5】便座装置が下降位置に配置された状態を示す図4における矢視X−X断面図である。
【図6】図5の要部拡大図である。
【図7】便座装置が上昇位置に配置された状態を示す図4における矢視X−X断面図である。
【図8】図6の要部拡大図である。
【図9】実施例の筒部材の下端部と被結合部材とを示す斜視図である。
【図10】実施例の被結合部材を接続部に取り付ける工程を示す側面図であり、(a)は取付け前の状態、(b)は被結合部材を接続部に挿入した状態、(c)は被結合部材を回転する状態、(d)は被結合部材が接続部に取付けられた状態を示す。
【図11】実施例のレバー部材と便座リフトアップ装置との関係を示す平面図であり、(a)は爪部が第1位置に配置された状態、(b)は爪部が中間位置に移動した状態、(c)は爪部が第2位置に移動した状態を示す。
【図12】実施例の第1係止部材と爪部との関係を示す要部断面図であり、(a)は爪部が第1位置に配置された状態、(b)は爪部が中間位置に移動した状態、(c)は爪部が第2位置に移動した状態を示す。
【図13】実施例の便座装置の上昇位置で上プレートに対して便座装置を着脱する状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の便座取付具を有する便座リフトアップ装置と便座装置とを備えた昇降便座を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0015】
<実施例>
実施例の昇降便座は、図1及び図2に示すように、便座装置10と便座取付具50を有する便座リフトアップ装置20とを備えている。
【0016】
便座装置10は、便座11と、便蓋12と、便座11及び便蓋12を回動自在に軸支する便座支持部13と、レバー部材14とを備えている。
【0017】
便座支持部材13はボックス状に形成されている。便座支持部材13の内部には、一対の局部洗浄用ノズル13Aと、局部洗浄用ノズル13Aへの洗浄水の給水路に設けられた温水タンク13Bと、局部洗浄用ノズル13Aへの洗浄水の給水路に設けられた開閉弁や温水タンク13Bに内蔵されたヒーター等を制御する制御装置13C等を有する局部洗浄装置が収納されている。
【0018】
便座支持部材13の下面には、後述する便座リフトアップ装置20の上プレート30と下プレート40とが重ね合わされた状態で収納される収納凹部16が設けられている。収納凹部16の後端部は開放している。また、収納凹部16の左右両端部には上プレート30の左右に突出して設けられた鍔部30Aを挿入する溝部16Aが設けられている。収納凹部16には、上プレート30と下プレート40とが重ね合わされた状態、若しくは上プレート30が下プレート40から上昇した状態で、収納凹部16の後方から鍔部30Aを溝部16Aに挿入させながらスライドさせることにより、重ね合わされた状態の上プレート30及び下プレート40、若しくは上プレート30のみを収納することができる。
【0019】
レバー部材14は、便座装置10を便器本体1の上面に取り付けた状態で、便器本体1の前方から見て便座支持部材13の左側面に操作部14Bを露出させている。レバー部材14は、左右方向に延び、左右方向に往復移動するレバー本体部14Aを有している。操作部14Bはレバー本体部14Aの一端部から下方に延びて形成されている。レバー本体部14Aは便座支持部材13内の底面に沿って配置されている。
【0020】
レバー本体部14Aには、下方に延びて便座支持部材13の下面(収納凹部16の下面)より下方に突出し、レバー本体部14Aの往復移動に伴い第1位置と第2位置との間を往復移動する1対の爪部14Cが形成されている。
【0021】
レバー本体部14Aには、爪部14Cが第1位置に配置される方向に弾性力を付与する圧縮コイルバネ15が取り付けられている。圧縮コイルバネ15の弾性力により爪部14Cが第1位置に配置された状態では、操作部14Bの外側面は便座支持部材13の左側面と面一である。レバー部材14は、圧縮コイルバネ14の弾性力に抗して、操作部14Bを便座支持部材13の左側面より外側に引き出すことができる。これにより、爪部14Cを第1位置から第2位置に移動させることができる。
【0022】
便座リフトアップ装置20は、図2〜図4に示すように、便器本体1の上面に固定される下プレート40と、下プレート40に対して昇降する上プレート30と、上プレート30を上昇させる方向に弾性力を付与する第1弾性部材である第1圧縮コイルバネ51を有する便座取付具50とを備えている。
【0023】
下プレート40は、下プレート本体部材41と、第1係止部材42と、第2弾性部材である第2圧縮コイルバネ43とを有している。
【0024】
下プレート本体部材41は、下プレート40が便器本体1の上面に固定された状態で、便器本体1の前方から見て左右に前後方向に延びた固定部41Aと、各固定部41Aの後部を連結する連結部41Bとを有している。
【0025】
各固定部41Aは、長方形状の平板であり、前後端及び外側端に上方に延びる土手部が形成されている。各固定部41Aには前後に並んで2つずつ貫通孔44が設けられている。便器本体1が標準タイプの場合、前側の貫通孔44に後述する便座取付具50の筒部材53を挿通して便座リフトアップ装置20を便器本体1に取り付ける。また、便器本体1が大型タイプの場合、後側の貫通孔44に便座取付具50の筒部材53を挿通して便座リフトアップ装置20を便器本体1に取り付ける。
【0026】
各貫通孔44の前後には切り取り可能な切取部44Aが設けられている。切取部44Aを切り取ることにより、固定部41Aに前後方向に延びる長孔を形成することができる。切取部44Aを切り取って長孔を形成することにより、便座取付具50の筒部材53の挿通位置を便器本体1の大きさに合わせて前後方向に微調整することができる。
【0027】
各固定部41Aの左右側部の上面には、複数の小突起45を所定間隔ごとに前後方向に整列させた凹凸部が形成されている。この凹凸部は、後述する便座取付具50の筒部材53の頭部53Cの下面との間で柔軟性を有するリング部材53Gを挟持することにより、筒部材53の挿通位置がずれることを防止するものである。各固定部41Aの下面には、固定部41Aの外形よりも僅かに小さい形状であり、前後方向に延びる長孔が形成された滑り止め部材46が貼着されている。
【0028】
連結部41Bには第1係止部材42を収納する収納部47が形成されている。収納部47は下方に開口しており、下方から第1係止部材42が挿入される。収納部47の下方開口は蓋部材47Aにより閉鎖されている。蓋部材47Aは、小突起を有して連結部41Bの前端面に設けられた係止部41Cと、小突起が挿入する開口を有して蓋部材47Aの前端面に設けた被係止部47Bとを係止し、ビスSにより連結部41Bに固定されている。収納部47内には、第2圧縮コイルバネ43の一端が当接する第1当接部43Bが形成されている。
【0029】
収納部47の上面には、上下方向に貫通し、左右に長い長方形状の第1開口部47Bが貫設されている。第1開口部47Bの上方から、収納部47内に収納された第1係止部材42の後述する後側の第1係止部42Cを望むことができる。また、第1開口部47Bには、上方から上プレート30に設けられた後述する後側の第2係止部32Bが挿入される。この第2係止部32Bは、第1開口部47Bの上方から挿入され、第1係止部42Cに係止する。
【0030】
収納部47の右側面の後部には左右方向に貫通した第2開口部47Cが貫設されている。第2開口部47Cには、第1係止部材42の後述する凸部42Dが収納部47の内側から突出する。
【0031】
第1係止部材42は、左右方向に延びた直方体形状の本体部42Aと、前端面の左右端部の2箇所に設けられた前側の第1係止部42Bと、後端面の左右中間部に設けられた後側の第1係止部42Cと、後端面の右側端部から右方向に突出して設けられた凸部42Dとを有している。前側の各第1係止部42Bは、第1係止部材42が収納部47に収納された状態では、収納部47の前端部より前方に露出している。
【0032】
本体部42Aの上面の中央部には左右方向に延びた凹部42Eが設けられている。凹部42Eには第2圧縮コイルバネ43が収納される。凹部42Eの右側内面には第2圧縮コイルバネ43の他端が当接する第2当接部43Aが形成されている。
【0033】
第1係止部材42を下プレート40の収納部47に収納する際、第2圧縮コイルバネ43は収納部47内に形成された第1当接部43Bと第1係止部材42に設けられた第2当接部43Aとの間に挟持される。このため、第1係止部材42には、第2圧縮コイルバネ43の弾性力が右方向に付与されている。
【0034】
上プレート30は、レバー部材14に形成された一対の爪部14Cと同じ間隔を有して設けられ、上方に開口した2列の係止凹部31を有している。各係止凹部31は、前端部が上プレート30の前端部に開口している。また、各係止凹部31の後端部は直角に右方向に屈曲し、爪部14Cが係止する段部31Aを形成している。このため、各係止凹部31の前端部から後端部に挿入された爪部14Cは、レバー本体部14Aに取り付けられた圧縮コイルバネ15により第1位置に移動すると、段部31Aに係止する。
【0035】
上プレート30の下部には、下プレート40の連結部41Bを収納する空洞部が形成されている。この空洞部には、下プレート40に設けられた前側の第1係止部42Bに対応する2つの前側の第2係止部32Aと、下プレート40に設けられた後側の第1係止部42Cに対応する1つの後側の第2係止部32Bとが設けられている。
【0036】
上プレート30は、下プレート40の各固定部41Aに対応する位置に前後方向に延びて形成された固定凹部33を有している。固定凹部33の中央部には前後方向に延びる長孔33Aが設けられている。この固定凹部33には、後述する便座取付具50の軸部材52を固定するワッシャーW1及びボルトB1が収納される。また、この長孔33Aには軸部材52を固定するボルトB1が挿通される。
【0037】
上プレート30には、下プレート40と重ね合わされた状態で左右に突出する鍔部30Aが形成されている。左右の鍔部30Aは、前部において外側部の間隔が狭くなるように中央側へ傾斜している。このため、上プレート30の鍔部30Aは、前端側から便座支持部材13の溝部16Aに挿入し易い。
【0038】
便座取付具50は、図3、図5〜図8に示すように、軸部材52と、軸部材52が挿通して上下動する貫通孔(第1貫通孔部53D、第2貫通孔部53E)を有する筒部材53と、軸部材52が上昇する方向に弾性力を付与する第1弾性部材である第1圧縮コイルバネ51とを有している。
【0039】
軸部材52は、円柱状の第1軸部52Aと、この第1軸部52Aの下端に連続する円柱状の第2軸部52Bと、この第1軸部52Aの上端に連続する円盤状の頭部52Cとを有している。第2軸部52Bの外径は第1軸部52Aの外径よりも小さく形成されている。頭部52Cの直径は第1軸部52Aの外径よりも大きく形成されている。
【0040】
軸部材52は、頭部52Cの上面から下方へ向けて螺子孔が形成されている。第2軸部52Bの下端部の外周には第2軸部52Bを一周する溝部52Dが設けられている。この溝部52Dには結合部材であるOリング54が嵌め込まれて取り付けられている。Oリング54は、圧縮コイルバネをリング状に連結したものである。
【0041】
第2軸部52Bの下端面には円盤状の停止部材52EがボルトB2により取り付けられている。停止部材52Eは、後述する筒部材53の下端部に取り付けられる被結合部材55の外径と等しい外径を有している。このため、停止部材52Eが被結合部材55の下端面に当接し、軸部材52が筒部材53から上方へ抜けてしまうことを防止している。
【0042】
筒部材53は、外周面にねじ山が刻まれた円筒状の胴部53Aと、胴部53Aの下端に連続する接続部53Bと、接続部53Bに取り付けられた被結合部材55と、胴部53Aの上端に連続する平面視が正方形の平板状の頭部53Cとを有している。筒部材53は第2軸部52Bより長く形成されている。筒部材53は、便器本体1の後部上面に左右に並んで垂直方向に貫設された一対の取付孔2に上方から挿通され、下端から挿入されたワッシャーW2を挟持してナットNをねじ込むことにより固定される。
【0043】
筒部材53には、軸部材52の第1軸部52Aの外径より僅かに大きい内径を有する第1貫通孔部53Dが頭部53Cの上面の開口から連続して、胴部53A内に上下方向に形成されている。また、筒部材53には、軸部材52の第2軸部52Bの外径より僅かに大きい内径を有する第2貫通孔部53Eが第1貫通孔部53Dの下端に連続して筒部材53の接続部53B内に形成されている。
【0044】
筒部材53の下端部である接続部53Bには、筒状の被結合部材55が取り付けられている。被結合部材55は、内周面の下端部に軸部材52のOリング54が係止する係止部55Eが形成されている。また、被結合部材55には、図9及び図10に示すように、上下に並んだ2列のスリット55A、55Bが被結合部材55の中心軸に対して対称の位置の側面に夫々形成されている。上側のスリット55Aには、被結合部材55の上端部の内面に設けられた縦溝55Cが連結されている。また、上側のスリット55Aは、下面の中間部に隆起部55Dが形成されている。接続部53Bの外側面には、筒部材53の中心軸に対して対称の位置に2つの凸部53Fが形成されている。
【0045】
このように形成された被結合部材55は、次のように接続部53Bに取り付けられる。図10(a)、(b)に示すように、接続部53Bの凸部53Fを被結合部材55の縦溝55Cに挿通させ、接続部53Bを被結合部材55内に挿入する。すると、凸部53Fは上側のスリット55Aの端部に挿入される。次に、被結合部材55を筒部材53の中心軸回りに回転させると、図10(c)に示すように、凸部53Fが隆起部55Dを乗り越える。この際、上側のスリット55Aと下側のスリット55Bとの境界部分を下側スリット55Bの空間側に変形させることができるため、凸部53Fが隆起部55Dを乗り越えることができる。また、凸部53Fが乗り上げる側の隆起部55Dの立ち上がり面が上り傾斜に形成されているため、凸部53Fが隆起部55Dを容易に乗り越えることができる。このようにして、図10(d)に示すように、凸部53Fが隆起部55Dを乗り越え、被結合部材55は接続部53Bに取付けられる。隆起部55Dを乗り越えた凸部53Fは、乗り越えた側の隆起部55Dの側面が上側のスリット55Aの底面から垂直に立ち上がっているため、逆方向に隆起部55Dを乗り越え難く、被結合部材55が逆回転して接続部53Bから抜け落ちてしまわない。
【0046】
第1圧縮コイルバネ51は、図5〜図8に示すように、第2軸部52Bと第1貫通孔部53Dとの間に配置され、第1軸部52Aの下端面と第1貫通孔部53Dの下端面との間に挟持されている。このため、軸部材52は上昇する方向に第1圧縮コイルバネ51の弾性力が付与されている。
【0047】
筒部材53は第2軸部52Bより長く形成されているため、軸部材52が上昇した状態では、第1軸部52Aの下端部が第1貫通孔部53Dの上端部に挿入されており、第2軸部52Bの下端部が第2貫通孔部53Eに挿通されている。このように、軸部材52は上昇した状態で、第1軸部52Aの下端部が第1貫通孔部53Dの上端部に保持され、第2軸部52Bの下端部が第2貫通孔部53Eに保持されている。つまり、筒部材53の上端部と下端部との最も離れた2箇所で軸部材52を保持することができる。
【0048】
したがって、実施例の便座取付具50は、上昇位置にある便座装置10を安定させることができる。
【0049】
また、第1圧縮コイルバネ51が第2軸部52Bと第1貫通孔部53Dとの間に配置され、第2軸部52Bの外周面と第1貫通孔部53Dの内周面とが第1圧縮コイルバネ51の伸縮をガイドする。このため、第1圧縮コイルバネ51が長くても安定して伸縮することができる。
【0050】
また、第1圧縮コイルバネ51が常時、筒部材53に覆われており露出してしまわない。このため、第1圧縮コイルバネ51に埃等が溜まらず、安定して伸縮することができる。また、第1圧縮コイルバネ51の伸縮時に生じる音を筒部材53内に閉じ込めることができるため、静音化を図ることができる。
【0051】
このように構成された昇降便座では、次に示すように、便座装置10を便器本体1に取り付ける。
【0052】
先ず、図2に示すように、便座リフトアップ装置20を便器本体1の後部上面に取り付ける。この際、便器本体1が標準タイプの場合、便座取付具50の筒部材53を下プレート40の前側の貫通孔44に挿通する。また、便器本体1が大型タイプの場合、便座取付具50の筒部材53を下プレート40の後側の貫通孔44に挿通する。また、下プレート40の切取部44Aを切り取って長孔にした上で、便座取付具50の筒部材53をこの長孔に挿通してもよい。
【0053】
次に、便器本体1の後部上面の取付孔2に筒部材53を挿通し、下方からナットNをねじ込んで下プレート40を便器本体1の後部上面に固定する。この際、下プレート40の切取部44Aを切り取って長孔にした場合には、前後方向に微調整しながら下プレート40を便器本体1の後部上面に固定することができる。
【0054】
次に、下プレート40の第1係止部42B、42Cと上プレート30の第2係止部32A、32Bとを係止させ、下プレート40と上プレート30とを重ね合わせた状態にする。この状態でボルトB1を締め込み、軸部材52の頭部52CとボルトB1が挿通するワッシャーW1とにより上プレート30を挟み込み、上プレート30に便座取付具50の軸部材52を固定する。
【0055】
次に、便器本体1の後部上面に取り付けられた上プレート30と下プレート40とを便座装置10の便座支持部材13に設けられた収納凹部16に収納するように、便座支持部材13を前方から後方へスライドさせる。この際、便座支持部材13の収納凹部16に設けられた溝部16Aに上プレート30の鍔部30Aを挿入させながら、スライドさせる。すると、便座支持部材13の収納凹部16の下面より下方に突出する爪部14Cが上プレート30の係止凹部31の前端部から挿入される。爪部14Cは、便座支持部材13を後方へスライドさせ、収納凹部16に上プレート30と下プレート40とが完全に収納されると、図11(a)及び図12(a)に示すように、圧縮コイルバネ15の弾性力により第1位置に配置される。つまり、爪部14Cが段部31Aに係止した状態となる。このようにして、便座支持部材13は上プレート16に対して固定される。つまり、昇降便座の便座装置10は便器本体1の上面に取り付けられる。
【0056】
便器本体1に取り付けられた昇降便座において、操作部14Bを一方向(左方向)に引き出す操作を行うと、図11(a)、(b)及び図12(a)、(b)に示すように、爪部14Cは第1位置から第2位置へ向けて移動する。すると、爪部14Cが下プレート40の第1係止部材42に設けられた凸部42Dを左方向に押す。このため、第2圧縮コイルバネ43の弾性力に抗して第1係止部材42が左方向に移動する。これにより、第1係止部材42に設けられた第1係止部42B、42Cも左方向に移動する。
【0057】
このように、爪部14Cを第1位置から第2位置へ向けて移動させるために操作部14Bを操作する際、第2圧縮コイルバネ43の弾性力が加わるため、意図せずに爪部14Cが移動してしまうことを防止することができる。つまり、意図せずに便座装置10を便器本体1上で上昇させてしまったり、便器本体1から取り外してしまったりすることを防止することができる。
【0058】
爪部14Cが第1位置から第2位置へ移動する中間位置において、図11(b)及び図12(b)に示すように、第1係止部42B、42Cは第2係止部32A、32Bとの係止状態を解除する。これにより、便座取付具50の第1圧縮コイルバネ51の弾性力を利用して上プレート30を下プレート40から容易に上昇させることができる。つまり、便座装置10を便器本体1の上面から上昇位置に容易に上昇させることができる。
【0059】
第1圧縮コイルバネ51の弾性力は便座装置10の荷重と略等しく設定されているため、第1係止部42B、42Cと第2係止部32A、32Bとの係止状態が解除されたのみでは、便座装置10は上昇しない。しかし、第1圧縮コイルバネ51の弾性力と便座装置10の荷重とか均衡しているため、便座装置10の荷重を感じずに便座装置10を持ち上げることができる。つまり、操作部14Bを左方向に引き出して爪部14Cを中間位置に移動させながら、便座装置10の便座支持部材13の両側を保持し、便座装置10を容易に上方に持ち上げることができる。
【0060】
便座装置10を持ち上げて、図7及び図8に示すように、第2軸部52Bの下端部のOリング54を被結合部材55の係止部55Eに係止させると、便座装置10を上昇位置に確実に保持することができる。
【0061】
また、便座装置10が上昇位置に保持された状態において、筒部材53の上端部と下端部との最も離れた2箇所で軸部材52を保持しているため、上昇位置にある便座装置10をさらに安定させることができる。
【0062】
便座装置10を持ち上げて、Oリング54を係止部55Eに係止させる際に被結合部材55が弾性変形するためクリック感が生じる。このため、便座装置10が上昇位置に保持されたことを認識することができ、便座装置10を上昇位置に確実に保持することができる。このため、図13に示すように、便座装置10を上昇させた状態でも、上プレート30に対して便座装置10を以下に示す操作によって取り外したり、取付けたりすることができる。
【0063】
操作部14Bを左方向へさらに引き出す操作を行い、爪部14Cを第2位置へ移動させると、図11(c)及び図12(c)に示すように、爪部14Cが係止凹部31の段部31Aからはずれた位置まで移動し、爪部14Cと係止凹部31との係止状態が解除される。これにより、便座支持部材13を前方へ引き出すことができる。つまり、便座装置10を便器本体1から容易に取り外すことができる。このように、爪部14Cを完全に第2位置に移動させなければ、爪部14Cと係止凹部31との係止状態は解除することができない。このため、便座装置10を便器本体1から取り外す際には、爪部14Cが第2位置に完全に移動するように操作部14Bを操作することになり、便座装置10を便器本体1から取り外すための操作部14Bの操作と、便座装置10を便器本体の上面から上昇させるための操作部14Bの操作とを明確に区別することができる。
【0064】
このように、この昇降便座では、一つの操作部14Bを一方向(左方向)に操作することによって、その中間位置で便座装置10を便器本体1の上面から上昇させることができ、さらに操作すると便座装置10を便器本体1から取り外すことができる。また、操作部14Bは便器本体1の上面に配置された便座支持部材13の左側面に露出しているため、操作を容易に行なうことができる。つまり、便座装置10の便器本体1上での昇降及び便座装置10の便器本体1に対する着脱を容易に行なうことができる。
【0065】
また、実施例の便座リフトアップ装置20は、同様のレバー部材14を備えた便座装置に対して利用することができる。つまり、この便座リフトアップ装置20を便器本体1に取り付けることにより、同様のレバー部材14を備えている便座装置であれば、例え、既存の便座装置であっても便器本体1上での昇降及び便器本体1に対する着脱を同様に行なうことができる。また、同様のレバー部材14を備えていれば、新規な便座装置に取り替えたとしても、便器本体1上での昇降及び便器本体1に対する着脱を同様に行なうことができる。このように、この便座リフトアップ装置20は、複数種類の便座装置に適用することができる。
【0066】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例では、上プレートを介して便座装置を昇降させていたが、便座装置の便座支持部材の下面に直接、便座取付具の軸部材の頭部を取り付けて便座装置を昇降させてもよい。
(2)実施例では、第1弾性部材である第1圧縮コイルバネの弾性力を便座装置の荷重と略等しく設定したが、第1弾性部材の弾性力は便座装置の荷重より強くしてもよい。この場合、便座装置を第1弾性部材の弾性力のみにより上昇させることができる。
【符号の説明】
【0067】
1…便器本体
2…取付孔
10…便座装置
11…便座
13…便座支持部材
50…便座取付具
51…第1圧縮コイルバネ(第1弾性部材)
52…軸部材
52A…第1軸部
52B…第2軸部
53…筒部材
53D…第1貫通孔部
53E…第2貫通孔部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座及びこの便座を回動自在に軸支する便座支持部材を備えた便座装置を便器本体の上面に昇降自在に取り付ける便座取付具であって、
円柱状の第1軸部と、この第1軸部の下端に連続してこの第1軸部の外径よりも小さい外径に形成された円柱状の第2軸部とを有し、前記便座支持部材の下面に連結される軸部材と、
前記便器本体の後部上面に垂直方向に貫設された取付孔に固定され、前記第1軸部の外径より僅かに大きい内径を有して上端開口部から連続して形成された第1貫通孔部と、前記第2軸部の外径より僅かに大きい内径を有してこの第1貫通孔部の下端に連続して形成された第2貫通孔部とを有し、挿通された前記軸部材が上下動し、前記第2軸部よりも長い筒部材と、
前記第2軸部の外周面と前記第1貫通孔部の内周面との間に配置され、前記第1軸部の下端面と前記第1貫通孔部の下端面との間に挟持されており、前記軸部材が上昇する方向に弾性力を付与する第1弾性部材とを備えており、
前記軸部材が上昇した状態では前記第1軸部の下端部が前記第1貫通孔部の上端部に挿通されており、前記第2軸部の下端部が前記第2貫通孔部に挿通されていることを特徴とする便座取付具。
【請求項2】
前記便座装置と請求項1記載の便座取付具とを備えていることを特徴とする昇降便座。
【請求項1】
便座及びこの便座を回動自在に軸支する便座支持部材を備えた便座装置を便器本体の上面に昇降自在に取り付ける便座取付具であって、
円柱状の第1軸部と、この第1軸部の下端に連続してこの第1軸部の外径よりも小さい外径に形成された円柱状の第2軸部とを有し、前記便座支持部材の下面に連結される軸部材と、
前記便器本体の後部上面に垂直方向に貫設された取付孔に固定され、前記第1軸部の外径より僅かに大きい内径を有して上端開口部から連続して形成された第1貫通孔部と、前記第2軸部の外径より僅かに大きい内径を有してこの第1貫通孔部の下端に連続して形成された第2貫通孔部とを有し、挿通された前記軸部材が上下動し、前記第2軸部よりも長い筒部材と、
前記第2軸部の外周面と前記第1貫通孔部の内周面との間に配置され、前記第1軸部の下端面と前記第1貫通孔部の下端面との間に挟持されており、前記軸部材が上昇する方向に弾性力を付与する第1弾性部材とを備えており、
前記軸部材が上昇した状態では前記第1軸部の下端部が前記第1貫通孔部の上端部に挿通されており、前記第2軸部の下端部が前記第2貫通孔部に挿通されていることを特徴とする便座取付具。
【請求項2】
前記便座装置と請求項1記載の便座取付具とを備えていることを特徴とする昇降便座。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−160969(P2011−160969A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26750(P2010−26750)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】
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