便座取付具
【課題】異音の発生を防止する。
【解決手段】便座取付具30は、便器本体80に固定される筒部材40と、筒部材40内に挿入されることで支持部材13と一体となって昇降可能にガイドされる軸部材60と、筒部材40内に同軸状に収容されて軸部材60を上方へ付勢する圧縮コイルバネ73とを備える。筒部材40は、下面が開放された筒本体41に下方からねじ込み部材48(バネ受け部材)をねじ込んで構成され、圧縮コイルバネ73は、軸部材60とねじ込み部材48との間で挟まれている。筒本体41に組み付けるときのねじ込み部材48の回転方向と、圧縮コイルバネ73を構成する素線を上方へ辿っていったときの回転方向とが逆向きである。
【解決手段】便座取付具30は、便器本体80に固定される筒部材40と、筒部材40内に挿入されることで支持部材13と一体となって昇降可能にガイドされる軸部材60と、筒部材40内に同軸状に収容されて軸部材60を上方へ付勢する圧縮コイルバネ73とを備える。筒部材40は、下面が開放された筒本体41に下方からねじ込み部材48(バネ受け部材)をねじ込んで構成され、圧縮コイルバネ73は、軸部材60とねじ込み部材48との間で挟まれている。筒本体41に組み付けるときのねじ込み部材48の回転方向と、圧縮コイルバネ73を構成する素線を上方へ辿っていったときの回転方向とが逆向きである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座取付具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、便座を回動可能に支持する支持部材を、便器本体の上面側に昇降可能に取り付けるための便座取付具が開示されている。この便座取付具は、便器本体に対し軸線を上下方向に向けて固定される筒部材と、支持部材に対し下方へ突出する形態で取り付けられて筒部材内に昇降可能に挿入される軸部材と、軸部材を上方へ付勢するために筒部材内に同軸状に収容された圧縮コイルバネとを備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−5100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
筒部材は、下面が開放された筒本体と、筒本体にその下方からねじ込みにより取り付けられたねじ込み部材とを備えて構成されており、圧縮コイルバネは、ねじ込み部材の上面と軸部材の下端面との間で上下に挟まれるように装着されている。筒本体とねじ込み部材と圧縮コイルバネを組み付ける際には、まず、筒本体内に圧縮コイルバネを収容してその上端を軸部材の下端面と対向させ、その後、圧縮コイルバネを軸線方向に弾縮させながらねじ込み部材を筒本体にねじ込んでいく。
【0005】
ねじ込み部材をねじ込んでいく際に、圧縮コイルバネの上端が、軸部材の下端面との間の摩擦抵抗により回転を規制されるのに対し、圧縮コイルバネの下端は、ねじ込み部材の上面との間の摩擦抵抗によりねじ込み部材と一体となって回転されるため、圧縮コイルバネは、全体として捻られることになる。このときの圧縮コイルバネの捻れの向きが、圧縮コイルバネを拡径変形させるような方向であった場合には、拡径した圧縮コイルバネが筒本体の内周面に当接し、軸部材の昇降に伴って、圧縮コイルバネが筒本体の内周に擦れて異音を生じることが懸念される。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、異音の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、便座を回動可能に支持する支持部材を、便器本体の上面側に昇降可能に取り付けるための便座取付具であって、前記便器本体に対し軸線を上下方向に向けて固定される筒部材と、前記支持部材に対し下方へ突出する形態で取り付けられ、前記筒部材内に挿入されることで前記支持部材と一体となって昇降可能にガイドされる軸部材と、前記筒部材内に同軸状に収容されて前記軸部材を上方へ付勢する圧縮コイルバネとを備えており、前記筒部材が、下面が開放された筒本体に対し下方からバネ受け部材を回転させながら組み付けて構成され、前記圧縮コイルバネが、前記軸部材と前記バネ受け部材との間で挟まれた状態で取り付けられており、前記筒本体に組み付けるときの前記バネ受け部材の回転方向と、前記圧縮コイルバネを構成する素線を上方へ辿っていったときの回転方向とが逆向きとされているところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記軸部材は、前記軸部材の上面に同軸状にねじ込まれるビスによって前記支持部材に取り付けられるようになっており、前記ビスの螺旋の向きと、前記圧縮コイルバネを構成する前記素線の螺旋の向きとが逆向きとされているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
<請求項1の発明>
バネ受け部材を筒本体に組み付けるために回転させると、圧縮コイルバネの下端が、バネ受け部材との間の摩擦抵抗によってバネ受け部材と一体に回転し、圧縮コイルバネが全体として捻られる。このとき、バネ受け部材の回転方向と、圧縮コイルバネを構成する素線を上方へ辿っていったときの回転方向とが逆向きとなっているので、圧縮コイルバネは、バネ受け部材の回転に伴って縮径するように変形する。したがって、圧縮コイルバネが筒本体の内周に摺接することに起因する異音の発生が防止される。
【0010】
<請求項2の発明>
ビスを軸本体にねじ込んでいくと、軸部材がビスと同じ向きに連れ回りするので、圧縮コイルバネの上端が、軸部材との間の摩擦抵抗によって軸部材と一体に回転し、圧縮コイルバネが全体として捻られる。このとき、ビスの螺旋の向き、圧縮コイルバネを構成する素線の螺旋の向きとが逆向きとなっているので、圧縮コイルバネは、ビスのねじ込みに伴って縮径するように変形する。したがって、圧縮コイルバネが筒本体の内周に摺接することに起因する異音の発生が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1において便座装置が下降位置に保持されている状態をあらわす側面図
【図2】便座装置が上昇位置に保持されている状態をあらわす側面図
【図3】便座装置が下降位置に保持されている状態をあらわす背面図
【図4】便座装置と軸部材が下降位置に保持されている状態をあらわす便座取付具の断面図
【図5】便座装置と軸部材が上昇位置に保持されている状態をあらわす背面図
【図6】便座装置と軸部材が上昇位置に保持されている状態をあらわす便座取付具の断面図
【図7】便座装置と軸部材を上昇位置に保持するための構造をあらわす便座取付具の部分拡大断面図
【図8】図7の部分拡大図
【図9】筒部材の下端部の部分拡大断面図
【図10】ねじ込み部材と圧縮コイルバネとビスの螺旋の向きをあらわす側面図
【図11】便座取付具の分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図11を参照して説明する。図1,2に示すように、昇降便座は、便座装置10と、便座装置10を便器本体80に対して昇降可能に取り付けるためのリフトアップ装置20とを備えて構成されている。
【0013】
便座装置10は、便座11と、便蓋12と、便座11及び便蓋12を開閉可能に支持するボックス状の支持部材13とを備えて構成されている。支持部材13の内部には、局部洗浄装置を構成する一対の局部洗浄ノズル14、局部洗浄ノズル14への給水路(図示省略)に設けた温水タンク15、局部洗浄ノズル14への給水路を開閉する開閉弁(図示省略)や温水タンク15に内蔵されたヒーター等を制御する制御装置16等の機器が収容されている。
【0014】
図2,4〜6に示すように、リフトアップ装置20は、便器本体80の上面に載置された状態で固定される下プレート21と、支持部材13の下面に固定される上プレート22と、下プレート21と上プレート22とを連結することで便座装置10を便器本体80に対して昇降可能に取り付けるための左右一対の便座取付具30とを備えて構成されている。
【0015】
<便座取付具30を構成する部材>
図4,6に示すように、便座取付具30は、便器本体80に取り付けた状態において軸線を上下方向に向けた状態で便器本体80に固定される筒部材40と、筒部材40内に挿入されることで上昇位置(図2,5,6を参照)と下降位置(図1,3,4を参照)との間で昇降可能にガイドされる軸部材60と、軸部材60を上方へ付勢するための圧縮コイルバネ73と、軸部材60を上昇位置に保持するための保持手段31と、昇降する軸部材60に対して抗力を付与するためのダンパー機構32とを備えて構成されている。
【0016】
<筒部材40>
図4,6に示すように、筒部材40は、上下両端面が開放された円筒形をなす合成樹脂製の筒本体41と、筒本体41の上端側の開口部に取り付けられる合成樹脂製の筒用固定部材42と、筒本体41に対しその下端面の開口部を塞ぐように取り付けられる合成樹脂製のねじ込み部材48(本発明の構成要件であるバネ受け部材)とを備えて構成されている。
【0017】
図7,11に示すように、筒用固定部材42は、筒本体41と同軸状の円筒部43と、円筒部43の上端に形成した略方形の拡径部44とを一体に形成したものであり、円筒部43の外周のネジ部を筒本体41の上端部内周のネジ部に螺合することによって取り付けられている。
【0018】
図4,6,7に示すように、筒本体41の内周上端部には、同軸状の縮径部45が形成されている。図8に示すように、縮径部45の上端面と筒用固定部材42の下端面との間に形成された周方向の保持溝46内には、金属製のコイルバネからなる受けリング47が、その軸線を筒部材40と同軸状の円形となるように弾性変形させた状態で、且つ筒部材40における径方向(水平方向)への弾性変形を可能に収容されている。弾性変形していない状態の受けリング47の最小内径は、縮径部45の内径(つまり、筒部材40の最小内径)よりも小さい。したがって、受けリング47は、筒部材40のほぼ全周に亘って、縮径部45の内周面よりも少し内側へ突出している。この受けリング47は、筒部材40の上端部に配置され、後述する係止部62とともに保持手段31を構成する。また、受けリング47はコイルバネなので、筒本体41の内周と後述する軸本体61の外周との隙間のうち受けリング47が配置されている部分では、空気が自由に通過し得るようになっている。
【0019】
図4,6,9に示すように、ねじ込み部材48は、筒本体41と同軸状の円筒形をなし、下端部の外周には雄ネジ部49が形成されている。ねじ込み部材48のうち雄ネジ部49よりも上方の領域は、雄ネジ部49よりも小径であってねじ込み部材48と同軸状の円筒形をなす筒状突部50となっている。図10に示すように、雄ネジ部49の螺旋の向きは、右利きの作業者が多いという点を考慮して、Z巻き方向(右ネジ方向)となっている。図9に示すように、ねじ込み部材48は、雄ネジ部49を筒本体41の下端部内周の雌ネジ部51に螺合することによって筒本体41に取り付けられている。取り付けられたねじ込み部材48は、筒本体41の下端面の開口部を閉塞し、筒本体41の底壁部52を構成している。そして、ねじ込み部材48の下端面は、筒部材40の最下端面53となっている。
【0020】
図9に示すように、筒状突部50の上面壁には、空気の流通を許容するが、大きな流動抵抗を生じさせる円形のオリフィス54が、同軸状に上下に貫通する形態で形成されている。オリフィス54は、上下方向において筒部材40の下端部よりも少し上方の位置に配置されているとともに、筒部材40の底壁部52を上下に貫通する流路の一部を構成している。このオリフィス54は、ダンパー機構32を構成する。
【0021】
また、ねじ込み部材48の上面のうち筒状突部50を包囲する円環状の領域は、バネ受け面55となっている。ねじ込み部材48の内部には、上端がオリフィス54に連通するとともに、下端が筒部材40の最下端面53(ねじ込み部材48の下端面)に開口した同軸状円形の流通孔56が形成されている。流通孔56は、その下端部において内径が大きい形状となっている。この流通孔56は、オリフィス54とともに底壁部52を上下に貫通する流路を構成している。
【0022】
<軸部材60>
図4,6,11に示すように、軸部材60は、筒部材40と同軸状の円柱形をなす金属製の軸本体61と、軸本体61の上端部に取り付けられる金属製の軸用固定部材65と、軸本体61の下端部に取り付けられる金属製のリング部材68と、ゴム製のシール部材71とを備えて構成されている。
【0023】
図4,6〜8,11に示すように、軸部材60の外周には、その下端に近い位置を局部的に且つ同軸状に拡径させた形態の係止部62が一体に形成されている。軸本体61(係止部62を除く)の外径は、弾性変形していない状態の受けリング47の最小内径よりも少し小さい寸法とされているが、係止部62の最大外径は、弾性変形していない状態の受けリング47の最小内径よりも大きい寸法とされている。この係止部62は、受けリング47とともに保持手段31を構成する。図8に示すように、係止部62の外周面のうち上側の領域は、軸部材60(軸本体61)の軸線に対し上方に向かって次第に縮径するように傾斜したテーパ状の誘導面63となっている。係止部62の外周面における下端部には、略四半円弧状に湾曲した係止面64が形成されている。
【0024】
図4,6,11に示すように、軸用固定部材65は、軸本体61と同軸状の円柱状をなしており、軸本体61の上端部にはフランジ部66が形成されている。また、軸用固定部材65には、その上端面を同軸状に穿孔した形態のビス孔67が形成されている。軸用固定部材65は、その下端面に開口するネジ孔を軸本体61の上端部外周のネジ部に螺合することによって、軸本体61に対して同軸状に取り付けられている。
【0025】
図4,6,7,11に示すように、リング部材68は、円筒形をなし、リング部材68の外周は、その上端側部分が下端側部分に対して段差状に縮径した形状をなしている。リング部材68の上端面は軸本体61の下端面に当接され、リング部材68の中心孔に下から挿通したビス69が、軸本体61の下端面に開口するネジ孔に螺合されており、このビス69によってリング部材68が軸本体61に対して同軸状に取り付けられている。リング部材68を取り付けた状態では、図7に示すように、リング部材68の外周における小径の上端側部分と、軸本体61の下端面とによって、軸部材60の下端部外周にシール溝70が形成されている。このシール溝70には、リング状をなすシール部材71が取り付けられている。シール部材71は、上記オリフィス54とともにダンパー機構32を構成する。
【0026】
<便座取付具30の全体構成>
軸部材60を筒部材40に取り付けた状態では、軸部材60が、筒部材40にガイドされて上昇位置と下降位置との間で上下動する。軸部材60の昇降ストロークの全領域において、軸部材60の下端部(係止部62とシール部材71を含む領域)は、常に、筒部材40の内部に収容されるのに対し、軸部材60の上端部(フランジ部66)は、常に、筒部材40の上方外部へ突出している。シール部材71は、軸部材60の昇降ストロークの全領域において、常に、筒部材40の縮径部45及び受けリング47よりも下方に位置して、筒本体41の内周に対して気密状に摺接する。一方、係止部62は、軸部材60が上昇位置にあるときには、受けリング47よりも上方に位置して、係止面64を受けリング47に対して上から係止させる状態となる。また、軸部材60が上昇位置よりも下方に位置するときには、係止部62は、受けリング47よりも下方に位置する。
【0027】
図6,7,9に示すように、軸部材60を筒部材40に取り付けた状態では、筒部材40の内部に空気室72が形成される。空気室72の上端部は、シール部材71によって筒部材40の外部から気密状に遮断され、空気室72の下端部は、オリフィス54を介して筒部材40の外部に連通している。
【0028】
図4,6,7,9に示すように、空気室72の内部には、圧縮コイルバネ73が筒部材40及び軸部材60と同軸状に収容されている。図10に示すように、圧縮コイルバネ73は、金属製の素線を螺旋巻きしたものであって、その素線の螺旋の向きは、ねじ込み部材48の雄ネジ部49とは逆のS巻き方向(左ネジ方向)となっている。空気室72に収容された圧縮コイルバネ73は、ねじ込み部材48のバネ受け面55と軸部材60(リング部材68)の下端面との間で軸線方向(上下方向)に挟まれて弾縮された状態に保持されている。そして、この圧縮コイルバネ73の弾性復元力により、軸部材60が、常に、上方へ付勢されている。
【0029】
<便座取付具30の組付け手順>
筒部材40に対する軸部材60と圧縮コイルバネ73の組付けは、次の手順で行われる。筒本体41に受けリング47と筒用固定部材42を組み付けておくとともに、軸本体61にシール部材71とリング部材68を組み付けておく。次に、軸本体61を下方から筒本体41内に挿入し、軸本体61の上端部を筒本体41の上方へ突出させ、その軸本体61の上端部に軸用固定部材65を組み付ける。この後、圧縮コイルバネ73の上端部を下方から筒本体41内に挿入し、その圧縮コイルバネ73の下端部にねじ込み部材48の筒状突部50を嵌入する。そして、ねじ込み部材48により圧縮コイルバネ73を押して軸方向に弾縮変形させながら、ねじ込み部材48の雄ネジ部49を筒本体41の雌ネジ部51に螺合する。
【0030】
ねじ込み部材48を筒本体41内にねじ込んでいくとき、圧縮コイルバネ73の上端が、軸部材60の下端面との間の摩擦抵抗によって回転を規制されているのに対し、圧縮コイルバネ73の下端は、ねじ込み部材48のバネ受け面55との間の摩擦抵抗によってねじ込み部材48と一体となって回転(連れ回り)するため、圧縮コイルバネ73は、全体として捻られることになる。ここで、ねじ込み部材48の雄ネジ部49の螺旋の向きはZ巻き方向に設定されているので、ねじ込み部材48の回転方向は、右ネジ方向(ねじ込み方向後方から見たときの時計回り方向)となっている。
【0031】
一方、圧縮コイルバネ73を構成する素線の螺旋の向きは、ねじ込み部材48の雄ネジ部49とは逆にS巻き方向となっている。換言すると、筒本体41に組み付けるときのねじ込み部材48の回転方向と、圧縮コイルバネ73の素線を上方へ辿っていったときの回転方向とが逆向きとなっている。したがって、ねじ込み部材48のねじ込みに伴って圧縮コイルバネ73が全体的に捻られると、圧縮コイルバネ73は、縮径するように弾性変形させられることになる。その結果、圧縮コイルバネ73と筒本体41の内周とは、接触しないか、軽く(低圧で)接触する状態となるのであって、圧縮コイルバネ73が筒本体41の内周に強く押し付けられることはない。以上により、便座取付具30の組付けが完了する。組付けが完了した状態では、軸部材60が圧縮コイルバネ73に弾性復元力により筒部材40から上方へ突出した状態となっている。
【0032】
上記のようにして組み付けられた一対の便座取付具30は、便器本体80と支持部材13とに取り付けられる。便器本体80に取り付ける際には、下プレート21を便器本体80の上面に水平に載置し、下プレート21の下部貫通孔23を、便器本体80に上下方向に貫通するように形成した取付孔81に整合させる。そして、筒部材40を、上方から下部貫通孔23に差し込んで取付孔81に落とし込むように嵌入し、拡径部44を下プレート21の上面に係止させる。このとき、筒部材40の下端部は、取付孔81の下端から便器本体80の外部下方へ突出した状態となる。そして、ナット82を、下方から筒部材40の外周のネジ部に螺合して上方へ螺進させ、便器本体80の下面に当接させて締め付ける。これにより、左右一対の筒部材40が便器本体80に固定される。
【0033】
次に、左右一対の軸部材60の上端部に上プレート22を水平に組み付ける。組付けに際しては、左右両軸用固定部材65のフランジ部66の上面に上プレート22を水平に載置し、上プレート22に形成した左右一対の上部貫通孔24をビス孔67に整合させる。そして、上プレート22の上方から、ビス74を、上部貫通孔24に挿通し、ビス孔67にねじ込んで下方へ螺進させ、ビス74の頭部とフランジ部66との間で上プレート22を挟み付ける。これにより、左右一対の軸部材60の上端部と上プレート22とが一体的に上下動し得るように組み付けられる。
【0034】
ビス74をビス孔67(軸部材60)内にねじ込んでいくのに伴い、軸部材60が、ビス74と同じ方向へ連れ回りする。軸部材60が連れ回りするとき、圧縮コイルバネ73の下端が、ねじ込み部材48(底壁部52)のバネ受け面55との間の摩擦抵抗によって回転を規制されているのに対し、圧縮コイルバネ73の上端は、軸部材60(リング部材68)の下端面との間の摩擦抵抗によって軸部材60と一体となって回転(連れ回り)するため、圧縮コイルバネ73は、全体として捻られることになる。ここで、図10に示すように、ビス74の螺旋の向きは、ねじ込み部材48の雄ネジ部49と同じZ巻き方向に設定されているので、ビス74の回転方向は、右ネジ方向(ねじ込み方向後方から見たときの時計回り方向)となっている。
【0035】
一方、圧縮コイルバネ73を構成する素線の螺旋の向きは、ビス74とは逆にS巻き方向となっているので、ビス74のねじ込みに伴って捻られた圧縮コイルバネ73は、縮径するように弾性変形させられることになる。したがって、圧縮コイルバネ73の外周が筒本体41の内周に接近する虞がなく、圧縮コイルバネ73と筒本体41の内周とは、接触しないか、軽く(低圧で)接触する状態に保持される。
【0036】
一対の軸部材60と上プレート22とを連結した後は、支持部材13を上プレート22の上面に被せ、支持部材13の底面に形成した嵌合溝を上プレート22の左右両側縁部に嵌合して前後方向にスライドさせ、支持部材13を上プレート22に組み付ける。これにより、一対の軸部材60の上端部と上プレート22と支持部材13とが、一体となって昇降し得るように組み付けられる。以上により、便座取付具30によって便座装置10(支持部材13)が便器本体80に対して昇降可能に支持される。
【0037】
<実施形態の作用>
本実施形態の昇降便座は、常には、便座装置10(支持部材13)と軸部材60を下降位置に保持した状態で使用される。支持部材13と軸部材60を下降位置に保持する手段としては、下プレート21に左右へのスライド可能に設けた操作部材(図示省略)の係止爪を、上プレート22の係止縁部(図示省略)に係止させる構造が用いられる。この係止状態は、操作部材をスライドさせて係止爪を係止縁部から外すことによって解除される。軸部材60と便座装置10が下降位置に保持されている状態では、圧縮コイルバネ73が最も弾縮させられているとともに、空気室72の容積が最小となっている。
【0038】
便座装置10を上昇位置へ移動させるときには、操作部材を操作して係止爪と係止縁部との係止を解除し、便座装置10を掴んで持ち上げるようにする。この間、便座装置10には、軸部材60を介して圧縮コイルバネ73による上向きの付勢力が作用しているのであるが、圧縮コイルバネ73の弾性復元力は便座装置10の全重量とほぼ均衡するように設定されているので、便座装置10が急激に押し上げられる虞はない。また、軸部材60が上昇するのに伴い、空気室72内の容積が増大するので、筒部材40の外部から流通孔56とオリフィス54を通って空気室72内に流入するのであるが、流入する空気がオリフィス54を通過するときに大きな流動抵抗を受けるので、流入する空気の流量が小さく抑えられ、エアダンパー機能が発揮される。このエアダンパー機能は、圧縮コイルバネ73の弾性復元力の抗力として作用するので、便座装置10が急速に上昇する虞はない。
【0039】
便座装置10が上昇する過程では、上昇位置に到達する直前で、軸部材60の係止部62が受けリング47を通過するのであるが、このとき、受けリング47は、係止部62との干渉によって拡径するように一時的に弾性変形させられる。そして、便座装置10が上昇位置に到達すると、係止部62が受けリング47を通過するので、受けリング47が弾性復帰し、係止部62の係止面64が受けリング47に対して上から係止する。この係止作用により、便座装置10と軸部材60が上昇位置に保持される。
【0040】
上昇位置の便座装置10を下降させる際には、係止部62と受けリング47との係止力(受けリング47の弾力)を上回る下向きの操作力を便座装置10に付与すると、受けリング47が拡径するように弾性変形して、係止部62との係止が解除され、便座装置10と軸部材60は下降していく。便座装置10と軸部材60が下降位置に到達すると、係止爪が係止縁部に係止することによって、便座装置10と軸部材60が下降位置に保持される。
【0041】
軸部材60が下降するのに伴い、空気室72の容積が減少するので、空気室72内の空気がオリフィス54と流通孔56を通って筒部材40の外部へ流出するのであるが、オリフィス54を通過するときの流動抵抗によるエアダンパー機能により、便座装置10の急速な下降が防止されている。また、圧縮コイルバネ73が軸部材60を上向きに付勢していることによっても、便座装置10の急速な下降が防止されている。
【0042】
また、軸部材60が昇降する過程では、圧縮コイルバネ73を構成する素線が筒本体41の内周に包囲された状態で上下方向に変位するため、素線が筒本体41の内周に強く押し付けられた状態で摺動することに起因して異音が発生することが懸念される。しかし、本実施形態では、ねじ込み部材48を筒本体41に組み付けるときのねじ込み動作と、軸部材60を上プレート22に組み付けるときのねじ込み動作とによって、圧縮コイルバネ73が縮径変形させられているので、圧縮コイルバネ73の素線が筒本体41の内周に強く押し付けられる虞がない。したがって、圧縮コイルバネ73の素線が筒本体41の内周に擦れることに起因する異音の発生が、確実に防止されている。
【0043】
<実施形態の効果>
便座装置10と軸部材60を上昇位置に保持するための保持手段31は、筒部材40の内周に径方向への弾性変位を可能に設けた受けリング47と、軸部材60の外周に設けた係止部62とを備えて構成され、受けリング47に対して係止部62が上から係止することで、軸部材60と支持部材13を上昇位置に保持し、上昇位置に保持されている軸部材60に対して受けリング47と係止部62の係止力を上回る下向きの外力を付与すると、受けリング47が径方向に弾性変位して係止部62との係止を解除するようになっている。
【0044】
この構成によれば、保持手段31を構成する受けリング47と係止部62が、いずれも、筒部材40の内部に収容されるので、上下方向において保持手段31を配置可能な範囲は、便器本体80の形状や大きさによる制約を受けずに済む。したがって、筒部材40の上下寸法及び軸部材60の上下寸法を小さく抑えることができる。また、受けリング47と係止部62は、筒部材40の全長の範囲内であればどの位置にでも配置することが可能であるから、本実施形態では、受けリング47と係止部62を筒部材40の上端部に配置している。これにより、軸部材60の上下寸法を、更に小さく抑えることが実現されている。
【0045】
また、軸部材60を上方へ付勢する弾性部材として、圧縮コイルバネ73を筒部材40内に収容しており、この圧縮コイルバネ73を、筒部材40の底壁部52と軸部材60の下端面との間で上下に挟まれるように配置した。この構成により、軸部材60の上下寸法を小さく抑えることができた。
【0046】
また、昇降する軸部材60に対して抗力を付与するダンパー機構32は、筒部材40の内部に形成され、軸部材60の昇降に伴って容積が増減する空気室72と、筒部材40を構成する底壁部52を流通孔56と協動して貫通することで空気室72内と筒部材40の外部空間とを連通させるオリフィス54と、筒部材40の内周と軸部材60の外周との摺接領域における空気の流通を抑制又は規制する流通阻害手段としてのシール部材71とを備えている。このダンパー機構32は、昇降する軸部材60をガイドする手段である筒部材40に設けられているので、ガイド手段としての筒部材とは別に専用のダンパー機構を設ける場合に比べると、本実施形態では、部品の数が少なく抑えられている。
【0047】
また、オリフィス54は、筒部材40を構成する底壁部52を上下方向に貫通する流路の一部を構成しているが、この形態は、オリフィス54において空気室72から筒部材40の外部空間側へ向かう空気の流れの方向が、下向きであることを意味する。この構成によれば、筒部材40の外部の異物がオリフィス54を通って空気室72内に侵入することを防止できる。
【0048】
また、筒部材40の底壁部52には、上方へ筒状に突出するとともに、上端の開口部が絞られた形態の筒状突部50が形成されており、この筒状突部50の上端の開口部をオリフィス54としている。この構成によれば、オリフィス54における底壁部52の外面側の開口部が、底壁部52の最下端面53よりも上方の位置で開口していることになるので、異物がオリフィス54を通って空気室72内に侵入するのを確実に防止することができる。
【0049】
また、筒部材40は、軸部材60を包囲する下面開放の筒本体41と、筒本体41に対しその下面の開口部を塞ぐように取り付けられるねじ込み部材48とを備えて構成され、筒本体41内(空気室72内)には、軸部材60上方へ付勢するための圧縮コイルバネ73が上下に弾縮された状態で収容されるようになっている。したがって、筒本体41に圧縮コイルバネ73とねじ込み部材48を組み付ける際には、ねじ込み部材48で圧縮コイルバネ73を押して軸線方向に弾縮させることになる。そのため、圧縮コイルバネ73からの弾性反力により、ねじ込み部材48が径方向に滑って圧縮コイルバネ73から外れることが懸念されるのであるが、本実施形態では、ねじ込み部材48に形成した筒状突部50を圧縮コイルバネ73の内部に挿入するようにしている。これにより、圧縮コイルバネ73とねじ込み部材48を筒本体41に組み付ける際に、筒状突部50(ねじ込み部材48)と圧縮コイルバネ73とを略同軸状に位置決めしておくことができるので、作業性に優れている。
【0050】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、ねじ込み部材と筒本体とのねじ込み部分において、ねじ込み部材の外周に形成した雄ネジ部と、筒本体の内周に形成した雌ネジ部とを螺合させるようにしたが、ねじ込み部材に雌ネジ部を有する筒部を形成し、この雌ネジ部を、筒本体の外周に形成した雄ネジ部に螺合させてもよい。
(2)上記実施形態では、右利きの作業者が多いという点を考慮して、ねじ込み部材の雄ネジ部の螺旋の向きをZ巻き(右ネジ)とし、圧縮コイルバネの素線の螺旋の向きをS巻きとしたが、これとは逆に、ねじ込み部材の雄ネジ部の螺旋の向きをS巻き(左ネジ)とし、圧縮コイルバネの素線の螺旋の向きをS巻きとしてもよい。この場合、ビスの螺旋の向きは、ねじ込み部材の雄ネジ部と同じ向きにすることが好ましい。
(3)上記実施形態では、筒本体を合成樹脂製としたが、筒本体は、金属製であってもよい。
(4)上記実施形態では、ねじ込み部材を合成樹脂製としたが、ねじ込み部材は、金属製であってもよい。
(5)上記実施形態では、軸部材を、軸部材の上面に同軸状にねじ込まれるビスによって支持部材に取り付けるようにしたが、軸部材はビスのねじ込み以外の手段によって支持部材に取り付けられていてもよい。
(6)上記実施形態では、バネ受け部材(ねじ込み部材)を筒本体に対して複数回、回転させる(つまり、ねじ込む)ことによって組み付けたが、バネ受け部材の組付け時の回転角度は360°未満であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
11…便座
13…支持部材
30…便座取付具
40…筒部材
41…筒本体
48…ねじ込み部材(バネ受け部材)
49…雄ネジ部
60…軸部材
73…圧縮コイルバネ
74…ビス
80…便器本体
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座取付具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、便座を回動可能に支持する支持部材を、便器本体の上面側に昇降可能に取り付けるための便座取付具が開示されている。この便座取付具は、便器本体に対し軸線を上下方向に向けて固定される筒部材と、支持部材に対し下方へ突出する形態で取り付けられて筒部材内に昇降可能に挿入される軸部材と、軸部材を上方へ付勢するために筒部材内に同軸状に収容された圧縮コイルバネとを備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−5100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
筒部材は、下面が開放された筒本体と、筒本体にその下方からねじ込みにより取り付けられたねじ込み部材とを備えて構成されており、圧縮コイルバネは、ねじ込み部材の上面と軸部材の下端面との間で上下に挟まれるように装着されている。筒本体とねじ込み部材と圧縮コイルバネを組み付ける際には、まず、筒本体内に圧縮コイルバネを収容してその上端を軸部材の下端面と対向させ、その後、圧縮コイルバネを軸線方向に弾縮させながらねじ込み部材を筒本体にねじ込んでいく。
【0005】
ねじ込み部材をねじ込んでいく際に、圧縮コイルバネの上端が、軸部材の下端面との間の摩擦抵抗により回転を規制されるのに対し、圧縮コイルバネの下端は、ねじ込み部材の上面との間の摩擦抵抗によりねじ込み部材と一体となって回転されるため、圧縮コイルバネは、全体として捻られることになる。このときの圧縮コイルバネの捻れの向きが、圧縮コイルバネを拡径変形させるような方向であった場合には、拡径した圧縮コイルバネが筒本体の内周面に当接し、軸部材の昇降に伴って、圧縮コイルバネが筒本体の内周に擦れて異音を生じることが懸念される。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、異音の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、便座を回動可能に支持する支持部材を、便器本体の上面側に昇降可能に取り付けるための便座取付具であって、前記便器本体に対し軸線を上下方向に向けて固定される筒部材と、前記支持部材に対し下方へ突出する形態で取り付けられ、前記筒部材内に挿入されることで前記支持部材と一体となって昇降可能にガイドされる軸部材と、前記筒部材内に同軸状に収容されて前記軸部材を上方へ付勢する圧縮コイルバネとを備えており、前記筒部材が、下面が開放された筒本体に対し下方からバネ受け部材を回転させながら組み付けて構成され、前記圧縮コイルバネが、前記軸部材と前記バネ受け部材との間で挟まれた状態で取り付けられており、前記筒本体に組み付けるときの前記バネ受け部材の回転方向と、前記圧縮コイルバネを構成する素線を上方へ辿っていったときの回転方向とが逆向きとされているところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記軸部材は、前記軸部材の上面に同軸状にねじ込まれるビスによって前記支持部材に取り付けられるようになっており、前記ビスの螺旋の向きと、前記圧縮コイルバネを構成する前記素線の螺旋の向きとが逆向きとされているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
<請求項1の発明>
バネ受け部材を筒本体に組み付けるために回転させると、圧縮コイルバネの下端が、バネ受け部材との間の摩擦抵抗によってバネ受け部材と一体に回転し、圧縮コイルバネが全体として捻られる。このとき、バネ受け部材の回転方向と、圧縮コイルバネを構成する素線を上方へ辿っていったときの回転方向とが逆向きとなっているので、圧縮コイルバネは、バネ受け部材の回転に伴って縮径するように変形する。したがって、圧縮コイルバネが筒本体の内周に摺接することに起因する異音の発生が防止される。
【0010】
<請求項2の発明>
ビスを軸本体にねじ込んでいくと、軸部材がビスと同じ向きに連れ回りするので、圧縮コイルバネの上端が、軸部材との間の摩擦抵抗によって軸部材と一体に回転し、圧縮コイルバネが全体として捻られる。このとき、ビスの螺旋の向き、圧縮コイルバネを構成する素線の螺旋の向きとが逆向きとなっているので、圧縮コイルバネは、ビスのねじ込みに伴って縮径するように変形する。したがって、圧縮コイルバネが筒本体の内周に摺接することに起因する異音の発生が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1において便座装置が下降位置に保持されている状態をあらわす側面図
【図2】便座装置が上昇位置に保持されている状態をあらわす側面図
【図3】便座装置が下降位置に保持されている状態をあらわす背面図
【図4】便座装置と軸部材が下降位置に保持されている状態をあらわす便座取付具の断面図
【図5】便座装置と軸部材が上昇位置に保持されている状態をあらわす背面図
【図6】便座装置と軸部材が上昇位置に保持されている状態をあらわす便座取付具の断面図
【図7】便座装置と軸部材を上昇位置に保持するための構造をあらわす便座取付具の部分拡大断面図
【図8】図7の部分拡大図
【図9】筒部材の下端部の部分拡大断面図
【図10】ねじ込み部材と圧縮コイルバネとビスの螺旋の向きをあらわす側面図
【図11】便座取付具の分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図11を参照して説明する。図1,2に示すように、昇降便座は、便座装置10と、便座装置10を便器本体80に対して昇降可能に取り付けるためのリフトアップ装置20とを備えて構成されている。
【0013】
便座装置10は、便座11と、便蓋12と、便座11及び便蓋12を開閉可能に支持するボックス状の支持部材13とを備えて構成されている。支持部材13の内部には、局部洗浄装置を構成する一対の局部洗浄ノズル14、局部洗浄ノズル14への給水路(図示省略)に設けた温水タンク15、局部洗浄ノズル14への給水路を開閉する開閉弁(図示省略)や温水タンク15に内蔵されたヒーター等を制御する制御装置16等の機器が収容されている。
【0014】
図2,4〜6に示すように、リフトアップ装置20は、便器本体80の上面に載置された状態で固定される下プレート21と、支持部材13の下面に固定される上プレート22と、下プレート21と上プレート22とを連結することで便座装置10を便器本体80に対して昇降可能に取り付けるための左右一対の便座取付具30とを備えて構成されている。
【0015】
<便座取付具30を構成する部材>
図4,6に示すように、便座取付具30は、便器本体80に取り付けた状態において軸線を上下方向に向けた状態で便器本体80に固定される筒部材40と、筒部材40内に挿入されることで上昇位置(図2,5,6を参照)と下降位置(図1,3,4を参照)との間で昇降可能にガイドされる軸部材60と、軸部材60を上方へ付勢するための圧縮コイルバネ73と、軸部材60を上昇位置に保持するための保持手段31と、昇降する軸部材60に対して抗力を付与するためのダンパー機構32とを備えて構成されている。
【0016】
<筒部材40>
図4,6に示すように、筒部材40は、上下両端面が開放された円筒形をなす合成樹脂製の筒本体41と、筒本体41の上端側の開口部に取り付けられる合成樹脂製の筒用固定部材42と、筒本体41に対しその下端面の開口部を塞ぐように取り付けられる合成樹脂製のねじ込み部材48(本発明の構成要件であるバネ受け部材)とを備えて構成されている。
【0017】
図7,11に示すように、筒用固定部材42は、筒本体41と同軸状の円筒部43と、円筒部43の上端に形成した略方形の拡径部44とを一体に形成したものであり、円筒部43の外周のネジ部を筒本体41の上端部内周のネジ部に螺合することによって取り付けられている。
【0018】
図4,6,7に示すように、筒本体41の内周上端部には、同軸状の縮径部45が形成されている。図8に示すように、縮径部45の上端面と筒用固定部材42の下端面との間に形成された周方向の保持溝46内には、金属製のコイルバネからなる受けリング47が、その軸線を筒部材40と同軸状の円形となるように弾性変形させた状態で、且つ筒部材40における径方向(水平方向)への弾性変形を可能に収容されている。弾性変形していない状態の受けリング47の最小内径は、縮径部45の内径(つまり、筒部材40の最小内径)よりも小さい。したがって、受けリング47は、筒部材40のほぼ全周に亘って、縮径部45の内周面よりも少し内側へ突出している。この受けリング47は、筒部材40の上端部に配置され、後述する係止部62とともに保持手段31を構成する。また、受けリング47はコイルバネなので、筒本体41の内周と後述する軸本体61の外周との隙間のうち受けリング47が配置されている部分では、空気が自由に通過し得るようになっている。
【0019】
図4,6,9に示すように、ねじ込み部材48は、筒本体41と同軸状の円筒形をなし、下端部の外周には雄ネジ部49が形成されている。ねじ込み部材48のうち雄ネジ部49よりも上方の領域は、雄ネジ部49よりも小径であってねじ込み部材48と同軸状の円筒形をなす筒状突部50となっている。図10に示すように、雄ネジ部49の螺旋の向きは、右利きの作業者が多いという点を考慮して、Z巻き方向(右ネジ方向)となっている。図9に示すように、ねじ込み部材48は、雄ネジ部49を筒本体41の下端部内周の雌ネジ部51に螺合することによって筒本体41に取り付けられている。取り付けられたねじ込み部材48は、筒本体41の下端面の開口部を閉塞し、筒本体41の底壁部52を構成している。そして、ねじ込み部材48の下端面は、筒部材40の最下端面53となっている。
【0020】
図9に示すように、筒状突部50の上面壁には、空気の流通を許容するが、大きな流動抵抗を生じさせる円形のオリフィス54が、同軸状に上下に貫通する形態で形成されている。オリフィス54は、上下方向において筒部材40の下端部よりも少し上方の位置に配置されているとともに、筒部材40の底壁部52を上下に貫通する流路の一部を構成している。このオリフィス54は、ダンパー機構32を構成する。
【0021】
また、ねじ込み部材48の上面のうち筒状突部50を包囲する円環状の領域は、バネ受け面55となっている。ねじ込み部材48の内部には、上端がオリフィス54に連通するとともに、下端が筒部材40の最下端面53(ねじ込み部材48の下端面)に開口した同軸状円形の流通孔56が形成されている。流通孔56は、その下端部において内径が大きい形状となっている。この流通孔56は、オリフィス54とともに底壁部52を上下に貫通する流路を構成している。
【0022】
<軸部材60>
図4,6,11に示すように、軸部材60は、筒部材40と同軸状の円柱形をなす金属製の軸本体61と、軸本体61の上端部に取り付けられる金属製の軸用固定部材65と、軸本体61の下端部に取り付けられる金属製のリング部材68と、ゴム製のシール部材71とを備えて構成されている。
【0023】
図4,6〜8,11に示すように、軸部材60の外周には、その下端に近い位置を局部的に且つ同軸状に拡径させた形態の係止部62が一体に形成されている。軸本体61(係止部62を除く)の外径は、弾性変形していない状態の受けリング47の最小内径よりも少し小さい寸法とされているが、係止部62の最大外径は、弾性変形していない状態の受けリング47の最小内径よりも大きい寸法とされている。この係止部62は、受けリング47とともに保持手段31を構成する。図8に示すように、係止部62の外周面のうち上側の領域は、軸部材60(軸本体61)の軸線に対し上方に向かって次第に縮径するように傾斜したテーパ状の誘導面63となっている。係止部62の外周面における下端部には、略四半円弧状に湾曲した係止面64が形成されている。
【0024】
図4,6,11に示すように、軸用固定部材65は、軸本体61と同軸状の円柱状をなしており、軸本体61の上端部にはフランジ部66が形成されている。また、軸用固定部材65には、その上端面を同軸状に穿孔した形態のビス孔67が形成されている。軸用固定部材65は、その下端面に開口するネジ孔を軸本体61の上端部外周のネジ部に螺合することによって、軸本体61に対して同軸状に取り付けられている。
【0025】
図4,6,7,11に示すように、リング部材68は、円筒形をなし、リング部材68の外周は、その上端側部分が下端側部分に対して段差状に縮径した形状をなしている。リング部材68の上端面は軸本体61の下端面に当接され、リング部材68の中心孔に下から挿通したビス69が、軸本体61の下端面に開口するネジ孔に螺合されており、このビス69によってリング部材68が軸本体61に対して同軸状に取り付けられている。リング部材68を取り付けた状態では、図7に示すように、リング部材68の外周における小径の上端側部分と、軸本体61の下端面とによって、軸部材60の下端部外周にシール溝70が形成されている。このシール溝70には、リング状をなすシール部材71が取り付けられている。シール部材71は、上記オリフィス54とともにダンパー機構32を構成する。
【0026】
<便座取付具30の全体構成>
軸部材60を筒部材40に取り付けた状態では、軸部材60が、筒部材40にガイドされて上昇位置と下降位置との間で上下動する。軸部材60の昇降ストロークの全領域において、軸部材60の下端部(係止部62とシール部材71を含む領域)は、常に、筒部材40の内部に収容されるのに対し、軸部材60の上端部(フランジ部66)は、常に、筒部材40の上方外部へ突出している。シール部材71は、軸部材60の昇降ストロークの全領域において、常に、筒部材40の縮径部45及び受けリング47よりも下方に位置して、筒本体41の内周に対して気密状に摺接する。一方、係止部62は、軸部材60が上昇位置にあるときには、受けリング47よりも上方に位置して、係止面64を受けリング47に対して上から係止させる状態となる。また、軸部材60が上昇位置よりも下方に位置するときには、係止部62は、受けリング47よりも下方に位置する。
【0027】
図6,7,9に示すように、軸部材60を筒部材40に取り付けた状態では、筒部材40の内部に空気室72が形成される。空気室72の上端部は、シール部材71によって筒部材40の外部から気密状に遮断され、空気室72の下端部は、オリフィス54を介して筒部材40の外部に連通している。
【0028】
図4,6,7,9に示すように、空気室72の内部には、圧縮コイルバネ73が筒部材40及び軸部材60と同軸状に収容されている。図10に示すように、圧縮コイルバネ73は、金属製の素線を螺旋巻きしたものであって、その素線の螺旋の向きは、ねじ込み部材48の雄ネジ部49とは逆のS巻き方向(左ネジ方向)となっている。空気室72に収容された圧縮コイルバネ73は、ねじ込み部材48のバネ受け面55と軸部材60(リング部材68)の下端面との間で軸線方向(上下方向)に挟まれて弾縮された状態に保持されている。そして、この圧縮コイルバネ73の弾性復元力により、軸部材60が、常に、上方へ付勢されている。
【0029】
<便座取付具30の組付け手順>
筒部材40に対する軸部材60と圧縮コイルバネ73の組付けは、次の手順で行われる。筒本体41に受けリング47と筒用固定部材42を組み付けておくとともに、軸本体61にシール部材71とリング部材68を組み付けておく。次に、軸本体61を下方から筒本体41内に挿入し、軸本体61の上端部を筒本体41の上方へ突出させ、その軸本体61の上端部に軸用固定部材65を組み付ける。この後、圧縮コイルバネ73の上端部を下方から筒本体41内に挿入し、その圧縮コイルバネ73の下端部にねじ込み部材48の筒状突部50を嵌入する。そして、ねじ込み部材48により圧縮コイルバネ73を押して軸方向に弾縮変形させながら、ねじ込み部材48の雄ネジ部49を筒本体41の雌ネジ部51に螺合する。
【0030】
ねじ込み部材48を筒本体41内にねじ込んでいくとき、圧縮コイルバネ73の上端が、軸部材60の下端面との間の摩擦抵抗によって回転を規制されているのに対し、圧縮コイルバネ73の下端は、ねじ込み部材48のバネ受け面55との間の摩擦抵抗によってねじ込み部材48と一体となって回転(連れ回り)するため、圧縮コイルバネ73は、全体として捻られることになる。ここで、ねじ込み部材48の雄ネジ部49の螺旋の向きはZ巻き方向に設定されているので、ねじ込み部材48の回転方向は、右ネジ方向(ねじ込み方向後方から見たときの時計回り方向)となっている。
【0031】
一方、圧縮コイルバネ73を構成する素線の螺旋の向きは、ねじ込み部材48の雄ネジ部49とは逆にS巻き方向となっている。換言すると、筒本体41に組み付けるときのねじ込み部材48の回転方向と、圧縮コイルバネ73の素線を上方へ辿っていったときの回転方向とが逆向きとなっている。したがって、ねじ込み部材48のねじ込みに伴って圧縮コイルバネ73が全体的に捻られると、圧縮コイルバネ73は、縮径するように弾性変形させられることになる。その結果、圧縮コイルバネ73と筒本体41の内周とは、接触しないか、軽く(低圧で)接触する状態となるのであって、圧縮コイルバネ73が筒本体41の内周に強く押し付けられることはない。以上により、便座取付具30の組付けが完了する。組付けが完了した状態では、軸部材60が圧縮コイルバネ73に弾性復元力により筒部材40から上方へ突出した状態となっている。
【0032】
上記のようにして組み付けられた一対の便座取付具30は、便器本体80と支持部材13とに取り付けられる。便器本体80に取り付ける際には、下プレート21を便器本体80の上面に水平に載置し、下プレート21の下部貫通孔23を、便器本体80に上下方向に貫通するように形成した取付孔81に整合させる。そして、筒部材40を、上方から下部貫通孔23に差し込んで取付孔81に落とし込むように嵌入し、拡径部44を下プレート21の上面に係止させる。このとき、筒部材40の下端部は、取付孔81の下端から便器本体80の外部下方へ突出した状態となる。そして、ナット82を、下方から筒部材40の外周のネジ部に螺合して上方へ螺進させ、便器本体80の下面に当接させて締め付ける。これにより、左右一対の筒部材40が便器本体80に固定される。
【0033】
次に、左右一対の軸部材60の上端部に上プレート22を水平に組み付ける。組付けに際しては、左右両軸用固定部材65のフランジ部66の上面に上プレート22を水平に載置し、上プレート22に形成した左右一対の上部貫通孔24をビス孔67に整合させる。そして、上プレート22の上方から、ビス74を、上部貫通孔24に挿通し、ビス孔67にねじ込んで下方へ螺進させ、ビス74の頭部とフランジ部66との間で上プレート22を挟み付ける。これにより、左右一対の軸部材60の上端部と上プレート22とが一体的に上下動し得るように組み付けられる。
【0034】
ビス74をビス孔67(軸部材60)内にねじ込んでいくのに伴い、軸部材60が、ビス74と同じ方向へ連れ回りする。軸部材60が連れ回りするとき、圧縮コイルバネ73の下端が、ねじ込み部材48(底壁部52)のバネ受け面55との間の摩擦抵抗によって回転を規制されているのに対し、圧縮コイルバネ73の上端は、軸部材60(リング部材68)の下端面との間の摩擦抵抗によって軸部材60と一体となって回転(連れ回り)するため、圧縮コイルバネ73は、全体として捻られることになる。ここで、図10に示すように、ビス74の螺旋の向きは、ねじ込み部材48の雄ネジ部49と同じZ巻き方向に設定されているので、ビス74の回転方向は、右ネジ方向(ねじ込み方向後方から見たときの時計回り方向)となっている。
【0035】
一方、圧縮コイルバネ73を構成する素線の螺旋の向きは、ビス74とは逆にS巻き方向となっているので、ビス74のねじ込みに伴って捻られた圧縮コイルバネ73は、縮径するように弾性変形させられることになる。したがって、圧縮コイルバネ73の外周が筒本体41の内周に接近する虞がなく、圧縮コイルバネ73と筒本体41の内周とは、接触しないか、軽く(低圧で)接触する状態に保持される。
【0036】
一対の軸部材60と上プレート22とを連結した後は、支持部材13を上プレート22の上面に被せ、支持部材13の底面に形成した嵌合溝を上プレート22の左右両側縁部に嵌合して前後方向にスライドさせ、支持部材13を上プレート22に組み付ける。これにより、一対の軸部材60の上端部と上プレート22と支持部材13とが、一体となって昇降し得るように組み付けられる。以上により、便座取付具30によって便座装置10(支持部材13)が便器本体80に対して昇降可能に支持される。
【0037】
<実施形態の作用>
本実施形態の昇降便座は、常には、便座装置10(支持部材13)と軸部材60を下降位置に保持した状態で使用される。支持部材13と軸部材60を下降位置に保持する手段としては、下プレート21に左右へのスライド可能に設けた操作部材(図示省略)の係止爪を、上プレート22の係止縁部(図示省略)に係止させる構造が用いられる。この係止状態は、操作部材をスライドさせて係止爪を係止縁部から外すことによって解除される。軸部材60と便座装置10が下降位置に保持されている状態では、圧縮コイルバネ73が最も弾縮させられているとともに、空気室72の容積が最小となっている。
【0038】
便座装置10を上昇位置へ移動させるときには、操作部材を操作して係止爪と係止縁部との係止を解除し、便座装置10を掴んで持ち上げるようにする。この間、便座装置10には、軸部材60を介して圧縮コイルバネ73による上向きの付勢力が作用しているのであるが、圧縮コイルバネ73の弾性復元力は便座装置10の全重量とほぼ均衡するように設定されているので、便座装置10が急激に押し上げられる虞はない。また、軸部材60が上昇するのに伴い、空気室72内の容積が増大するので、筒部材40の外部から流通孔56とオリフィス54を通って空気室72内に流入するのであるが、流入する空気がオリフィス54を通過するときに大きな流動抵抗を受けるので、流入する空気の流量が小さく抑えられ、エアダンパー機能が発揮される。このエアダンパー機能は、圧縮コイルバネ73の弾性復元力の抗力として作用するので、便座装置10が急速に上昇する虞はない。
【0039】
便座装置10が上昇する過程では、上昇位置に到達する直前で、軸部材60の係止部62が受けリング47を通過するのであるが、このとき、受けリング47は、係止部62との干渉によって拡径するように一時的に弾性変形させられる。そして、便座装置10が上昇位置に到達すると、係止部62が受けリング47を通過するので、受けリング47が弾性復帰し、係止部62の係止面64が受けリング47に対して上から係止する。この係止作用により、便座装置10と軸部材60が上昇位置に保持される。
【0040】
上昇位置の便座装置10を下降させる際には、係止部62と受けリング47との係止力(受けリング47の弾力)を上回る下向きの操作力を便座装置10に付与すると、受けリング47が拡径するように弾性変形して、係止部62との係止が解除され、便座装置10と軸部材60は下降していく。便座装置10と軸部材60が下降位置に到達すると、係止爪が係止縁部に係止することによって、便座装置10と軸部材60が下降位置に保持される。
【0041】
軸部材60が下降するのに伴い、空気室72の容積が減少するので、空気室72内の空気がオリフィス54と流通孔56を通って筒部材40の外部へ流出するのであるが、オリフィス54を通過するときの流動抵抗によるエアダンパー機能により、便座装置10の急速な下降が防止されている。また、圧縮コイルバネ73が軸部材60を上向きに付勢していることによっても、便座装置10の急速な下降が防止されている。
【0042】
また、軸部材60が昇降する過程では、圧縮コイルバネ73を構成する素線が筒本体41の内周に包囲された状態で上下方向に変位するため、素線が筒本体41の内周に強く押し付けられた状態で摺動することに起因して異音が発生することが懸念される。しかし、本実施形態では、ねじ込み部材48を筒本体41に組み付けるときのねじ込み動作と、軸部材60を上プレート22に組み付けるときのねじ込み動作とによって、圧縮コイルバネ73が縮径変形させられているので、圧縮コイルバネ73の素線が筒本体41の内周に強く押し付けられる虞がない。したがって、圧縮コイルバネ73の素線が筒本体41の内周に擦れることに起因する異音の発生が、確実に防止されている。
【0043】
<実施形態の効果>
便座装置10と軸部材60を上昇位置に保持するための保持手段31は、筒部材40の内周に径方向への弾性変位を可能に設けた受けリング47と、軸部材60の外周に設けた係止部62とを備えて構成され、受けリング47に対して係止部62が上から係止することで、軸部材60と支持部材13を上昇位置に保持し、上昇位置に保持されている軸部材60に対して受けリング47と係止部62の係止力を上回る下向きの外力を付与すると、受けリング47が径方向に弾性変位して係止部62との係止を解除するようになっている。
【0044】
この構成によれば、保持手段31を構成する受けリング47と係止部62が、いずれも、筒部材40の内部に収容されるので、上下方向において保持手段31を配置可能な範囲は、便器本体80の形状や大きさによる制約を受けずに済む。したがって、筒部材40の上下寸法及び軸部材60の上下寸法を小さく抑えることができる。また、受けリング47と係止部62は、筒部材40の全長の範囲内であればどの位置にでも配置することが可能であるから、本実施形態では、受けリング47と係止部62を筒部材40の上端部に配置している。これにより、軸部材60の上下寸法を、更に小さく抑えることが実現されている。
【0045】
また、軸部材60を上方へ付勢する弾性部材として、圧縮コイルバネ73を筒部材40内に収容しており、この圧縮コイルバネ73を、筒部材40の底壁部52と軸部材60の下端面との間で上下に挟まれるように配置した。この構成により、軸部材60の上下寸法を小さく抑えることができた。
【0046】
また、昇降する軸部材60に対して抗力を付与するダンパー機構32は、筒部材40の内部に形成され、軸部材60の昇降に伴って容積が増減する空気室72と、筒部材40を構成する底壁部52を流通孔56と協動して貫通することで空気室72内と筒部材40の外部空間とを連通させるオリフィス54と、筒部材40の内周と軸部材60の外周との摺接領域における空気の流通を抑制又は規制する流通阻害手段としてのシール部材71とを備えている。このダンパー機構32は、昇降する軸部材60をガイドする手段である筒部材40に設けられているので、ガイド手段としての筒部材とは別に専用のダンパー機構を設ける場合に比べると、本実施形態では、部品の数が少なく抑えられている。
【0047】
また、オリフィス54は、筒部材40を構成する底壁部52を上下方向に貫通する流路の一部を構成しているが、この形態は、オリフィス54において空気室72から筒部材40の外部空間側へ向かう空気の流れの方向が、下向きであることを意味する。この構成によれば、筒部材40の外部の異物がオリフィス54を通って空気室72内に侵入することを防止できる。
【0048】
また、筒部材40の底壁部52には、上方へ筒状に突出するとともに、上端の開口部が絞られた形態の筒状突部50が形成されており、この筒状突部50の上端の開口部をオリフィス54としている。この構成によれば、オリフィス54における底壁部52の外面側の開口部が、底壁部52の最下端面53よりも上方の位置で開口していることになるので、異物がオリフィス54を通って空気室72内に侵入するのを確実に防止することができる。
【0049】
また、筒部材40は、軸部材60を包囲する下面開放の筒本体41と、筒本体41に対しその下面の開口部を塞ぐように取り付けられるねじ込み部材48とを備えて構成され、筒本体41内(空気室72内)には、軸部材60上方へ付勢するための圧縮コイルバネ73が上下に弾縮された状態で収容されるようになっている。したがって、筒本体41に圧縮コイルバネ73とねじ込み部材48を組み付ける際には、ねじ込み部材48で圧縮コイルバネ73を押して軸線方向に弾縮させることになる。そのため、圧縮コイルバネ73からの弾性反力により、ねじ込み部材48が径方向に滑って圧縮コイルバネ73から外れることが懸念されるのであるが、本実施形態では、ねじ込み部材48に形成した筒状突部50を圧縮コイルバネ73の内部に挿入するようにしている。これにより、圧縮コイルバネ73とねじ込み部材48を筒本体41に組み付ける際に、筒状突部50(ねじ込み部材48)と圧縮コイルバネ73とを略同軸状に位置決めしておくことができるので、作業性に優れている。
【0050】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、ねじ込み部材と筒本体とのねじ込み部分において、ねじ込み部材の外周に形成した雄ネジ部と、筒本体の内周に形成した雌ネジ部とを螺合させるようにしたが、ねじ込み部材に雌ネジ部を有する筒部を形成し、この雌ネジ部を、筒本体の外周に形成した雄ネジ部に螺合させてもよい。
(2)上記実施形態では、右利きの作業者が多いという点を考慮して、ねじ込み部材の雄ネジ部の螺旋の向きをZ巻き(右ネジ)とし、圧縮コイルバネの素線の螺旋の向きをS巻きとしたが、これとは逆に、ねじ込み部材の雄ネジ部の螺旋の向きをS巻き(左ネジ)とし、圧縮コイルバネの素線の螺旋の向きをS巻きとしてもよい。この場合、ビスの螺旋の向きは、ねじ込み部材の雄ネジ部と同じ向きにすることが好ましい。
(3)上記実施形態では、筒本体を合成樹脂製としたが、筒本体は、金属製であってもよい。
(4)上記実施形態では、ねじ込み部材を合成樹脂製としたが、ねじ込み部材は、金属製であってもよい。
(5)上記実施形態では、軸部材を、軸部材の上面に同軸状にねじ込まれるビスによって支持部材に取り付けるようにしたが、軸部材はビスのねじ込み以外の手段によって支持部材に取り付けられていてもよい。
(6)上記実施形態では、バネ受け部材(ねじ込み部材)を筒本体に対して複数回、回転させる(つまり、ねじ込む)ことによって組み付けたが、バネ受け部材の組付け時の回転角度は360°未満であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
11…便座
13…支持部材
30…便座取付具
40…筒部材
41…筒本体
48…ねじ込み部材(バネ受け部材)
49…雄ネジ部
60…軸部材
73…圧縮コイルバネ
74…ビス
80…便器本体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座を回動可能に支持する支持部材を、便器本体の上面側に昇降可能に取り付けるための便座取付具であって、
前記便器本体に対し軸線を上下方向に向けて固定される筒部材と、
前記支持部材に対し下方へ突出する形態で取り付けられ、前記筒部材内に挿入されることで前記支持部材と一体となって昇降可能にガイドされる軸部材と、
前記筒部材内に同軸状に収容されて前記軸部材を上方へ付勢する圧縮コイルバネとを備えており、
前記筒部材が、下面が開放された筒本体に対し下方からバネ受け部材を回転させながら組み付けて構成され、
前記圧縮コイルバネが、前記軸部材と前記バネ受け部材との間で挟まれた状態で取り付けられており、
前記筒本体に組み付けるときの前記バネ受け部材の回転方向と、前記圧縮コイルバネを構成する素線を上方へ辿っていったときの回転方向とが逆向きとされていることを特徴とする便座取付具。
【請求項2】
前記軸部材は、前記軸部材の上面に同軸状にねじ込まれるビスによって前記支持部材に取り付けられるようになっており、
前記ビスの螺旋の向きと、前記圧縮コイルバネを構成する前記素線の螺旋の向きとが逆向きとされていることを特徴とする請求項1記載の便座取付具。
【請求項1】
便座を回動可能に支持する支持部材を、便器本体の上面側に昇降可能に取り付けるための便座取付具であって、
前記便器本体に対し軸線を上下方向に向けて固定される筒部材と、
前記支持部材に対し下方へ突出する形態で取り付けられ、前記筒部材内に挿入されることで前記支持部材と一体となって昇降可能にガイドされる軸部材と、
前記筒部材内に同軸状に収容されて前記軸部材を上方へ付勢する圧縮コイルバネとを備えており、
前記筒部材が、下面が開放された筒本体に対し下方からバネ受け部材を回転させながら組み付けて構成され、
前記圧縮コイルバネが、前記軸部材と前記バネ受け部材との間で挟まれた状態で取り付けられており、
前記筒本体に組み付けるときの前記バネ受け部材の回転方向と、前記圧縮コイルバネを構成する素線を上方へ辿っていったときの回転方向とが逆向きとされていることを特徴とする便座取付具。
【請求項2】
前記軸部材は、前記軸部材の上面に同軸状にねじ込まれるビスによって前記支持部材に取り付けられるようになっており、
前記ビスの螺旋の向きと、前記圧縮コイルバネを構成する前記素線の螺旋の向きとが逆向きとされていることを特徴とする請求項1記載の便座取付具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−105913(P2012−105913A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258730(P2010−258730)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】
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