説明

便座構造

【課題】溶着部の外周側にはみ出す溶着バリの量を極力少なくして、溶着後におけるバリ仕上げ加工を簡便に行うこと。
【解決手段】座裏成形品3の上面に着座部6を有する座表成形品2が被せられて溶着により接合一体化された便座成形品1を備える。座表成形品2と座裏成形品3の互いに対向する溶着面2a,3aのいずれか一方に、溶着面2a(3a)の厚み方向Bの中央側に寄せて、溶着時に発生する溶着バリ5aを逃がすための溝条部4を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座成形品の外側に突出する溶着バリの量を極力抑えるようにした便座構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、座表部材の縁部の下面と座裏部材の縁部の上面とを溶着した便座が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
この従来例では、図4(a)に示すように、座表部材30の側面から外側に延びて形成された突出部32を有している。溶着部35の端から外側にはみ出した溶着バリ5aは、座表部材30の突出部32よりも外側の座裏部材31の突出部32に盛り上がるようになる(図4(b)の状態)。これにより、座表部材30の側板部の外表面(便座表面)に溶着バリ5aが付着することを防止している。そして、溶着後は、空洞部10側の溶着部35が残存するように、切断面34に沿って座表部材30の突出部32と座裏部材31の縁部33とを切削するようにしている(図4(c)の状態)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−99274号公報
【特許文献2】特開2010−99275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが上記特許文献1、2に示される従来例にあっては、図4(b)に示すように、溶着後に溶着部35の外周側にはみ出す溶着バリ5aの量が多い。そのうえ、溶着部35の外周には突出部32と縁部33とが突出している。そこで、外周側にはみ出した溶着バリ5aと共に便座成形品36の突出部分32,33をも切削する必要があり、機械による研磨仕上げ加工が必要となる。このため従来では便座成形品36の外観面の仕上げに手間がかかるという問題があった。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、溶着部の外周側にはみ出す溶着バリの量を極力少なくして、溶着後におけるバリ仕上げ加工を簡便に行うことが可能な便座構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明は、座裏成形品の上面に着座部を有する座表成形品が被せられて溶着により接合一体化された便座成形品を備える便座構造であって、前記座表成形品と前記座裏成形品の互いに対向する溶着面のいずれか一方に、前記溶着面の厚み方向の中央側に寄せて、溶着時に発生する溶着バリを逃がすための溝条部を形成してなることを特徴としている。
【0008】
また、前記溝条部は、格子状に仕切られた複数の穴で構成されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の便座構造においては、溶着部の外周側にはみ出す溶着バリの量を極力少なくして、溶着後におけるバリ仕上げ加工を簡便に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に用いる座表成形品と座裏成形品の説明図であり、(a)は座表成形品の溶着面に形成される溝条部付近の断面図であり、(b)は座表成形品の溶着面と座裏成形品の溶着面とを溶着した状態の説明図であり、(c)は(b)のA部で示された溶着部付近の拡大断面図である。
【図2】同上の溝条部の変形例の説明図である。
【図3】同上の溝条部の更に他の変形例であり、(a)は格子状に仕切られた複数の穴で構成された溝条部の一部破断した斜視図であり、(b)は底面図である。
【図4】(a)〜(c)は従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図1を参照しながら説明する。
【0012】
腰掛け式便器用の便座は、熱可塑性樹脂の射出成形によって製作された座裏成形品3と座表成形品2とを備えた便座成形品1で構成されている。
【0013】
座表成形品2の上面には、使用者が着座する環状の着座部6が形成されている。この環状の着座部6の外周下端面と内周下端面とがそれぞれ溶着面2aとなっている。
【0014】
座裏成形品3には、便器(図示略)の開口部の縁に沿って載置可能な環状の便器載置部(図示略)が形成されている。この環状の便器載置部の外周上端面と内周上端面とがそれぞれ溶着面3aとなっている。
【0015】
座裏成形品3の上面に座表成形品2を被せて、座表成形品2の溶着面2aと座裏成形品3の溶着面3aとを溶着により接合一体化することで、便座成形品1が組み立てられる。
【0016】
座表成形品2と座裏成形品3との間には密閉された空洞部10が形成される。この空洞部10内には、暖房便座の場合にあってはヒータ(図示略)が収納される。また、局部洗浄機能を持つ温水洗浄便座の場合にあっては人の着座を検知するためのセンサ(図示略)やその他の電気配線(図示略)が収納される。
【0017】
座表成形品2と座裏成形品3の接合方法として、例えば、加熱した熱板で溶着面2a,3aの樹脂の一部を溶融させて接着する熱板溶着方法、或いは超音波や低周波を利用した振動溶着方法などが用いられる。
【0018】
座裏成形品3の上面側の着座部6は均一な厚みとされ、着座部6の外端から下方に曲がる周側部7を着座部6よりも肉厚に形成してある。図1(a)に示す例では、周側部7の厚みがその上端から下端に行くほど徐々に厚くなり、下端面の溶着面2aにおいて最も肉厚となるように形成してある。
【0019】
溶着面2aには、溶着バリ5を逃がすための溝条部4が形成されている。この溝条部4は、溶着面2aの厚み方向Bの中央部において下向きに開口している。溝条部4は周側部7の周方向の略全周に亘って形成されている。本例の溝条部4の断面形状は、下から上に行く程、つまり深くなる程溝幅が徐々に狭くなるように形成されている。これにより溝条部4は、周側部7の剛性を確保しながら、溶着バリ5の逃がし用空間部として機能するものである。また、溝条部4を挟んで外周側の溶着面部2aと内周側の溶着面部2aはそれぞれ、座裏成形品3の溶着面3aに対して溶着される溶着部8となる。
【0020】
座表成形品2と座裏成形品3とを例えば振動溶着で溶着するにあたっては、座表成形品2と座裏成形品3とをそれぞれ振動溶着機(図示略)のテーブルに組み込む。そして、座表成形品2の溶着面2aと座裏成形品3の溶着面3aとを互いに突き合わせて加圧と振動とを加える。これにより、溶着面2a,3a同士が摩擦し合うことで樹脂が溶融して、溶着面2a,3a同士が接合一体化される。
【0021】
このとき、発生する溶着バリ5が、図1(c)に示すように、溝条部4内に流れ込む(浸入する)ことで、溶着部8の外周側にはみ出す溶着バリ5aの量が抑制される。これにより溶着時に発生する溶着バリ5aが溶着部8の外周側に生成され難くなり、これに伴い、溶着バリ5aが溶着部8の外周面付近に付着し難くなる。つまり、便座成形品1の外観面が汚れ難くなるので、従来のようなバリ付着防止用の突出部32(図4)を設ける必要がなくなる。
【0022】
その後、固化した溶着バリ5aを例えばヤスリやカッター等による手作業で削り取るだけで、図1(b)に示すように、溶着部8の外周面が面一に連続した外観となる。しかも従来のように外側にはみ出した溶着バリと共に便座成形品の一部をも除去する必要がなくなり、機械による研磨仕上げ加工の手間を省くことができる。なお空洞部10側の溶着部35が残存する点は従来と同様である。
【0023】
この結果、便座成形品1の外観面の仕上げに手間がかからず、労力及び能率の面で格段の向上が期待できると共に、表面外観に優れた便座成形品1が簡便に得られるようになる。
【0024】
しかも、バリ取り後には、便座成形品1の溶着部8がそのまま残るので、溶着強度が確保され、便座成形品1の剛性を向上させることができる。
【0025】
図2は、溝条部4の他の実施形態であり、溝条部4´の深さを浅くして、周側部7の上半部に溝条部4´が存在しないようにしてある。これにより、周側部7の中空部分を少なくでき、周側部7においてヒケ等の成形不良が発生するのを極力抑えることが可能となる。
【0026】
図3は、溝条部4の更に他の実施形態であり、溝条部4を格子状に仕切られた複数の穴4aで構成した場合の一例を示している。本例では、溝条部4を複数の縦格子40で仕切り、さらに隣り合う縦格子40間に斜め格子41を掛け渡すことで複数の穴4aをそれぞれ三角形状に形成してある。これにより溶着バリ5を各穴4aに逃がす効果に加えて、格子40,41が補強リブとなって溝条部4の強度を確保でき、周側部7においてヒケ等の成形不良が発生するのを極力抑えることが可能となる。
【0027】
なお、溝条部4は格子状に限らず、例えば波形状に仕切られてもよく、要は、下方に開口する穴4aを有するものであれば穴4aの形状は任意に変更自在である。
【0028】
前記実施形態では、溝条部4を座表成形品2の溶着面2aに形成したが、この座表成形品2の溶着面2aと対向する座裏成形品3の溶着面3a側に溝条部4を形成する構成も可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 便座成形品
2 座表成形品
2a 溶着面
3 座裏成形品
3a 溶着面
4 溝条部
5a 溶着バリ
6 着座部
7 周側部
8 溶着部
B 厚み方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座裏成形品の上面に着座部を有する座表成形品が被せられて溶着により接合一体化された便座成形品を備える便座構造であって、前記座表成形品と前記座裏成形品の互いに対向する溶着面のいずれか一方に、前記溶着面の厚み方向の中央側に寄せて、溶着時に発生する溶着バリを逃がすための溝条部を形成してなることを特徴とする便座構造。
【請求項2】
前記溝条部は、格子状に仕切られた複数の穴で構成されていることを特徴とする請求項1記載の便座構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−223350(P2012−223350A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93303(P2011−93303)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】