説明

便座装置及びその製造方法

【課題】本発明は、剛性の高い便座装置を提供することを目的とした。
【解決手段】座面を形成する座面部材2と、便器に載置する裏面部材3と、座面部材2と裏面部材3とに囲まれた空間10に設置されたリブ部材5からなる便座装置1において、リブ部材5は、座面部材2と裏面部材3を天地方向に支持する本体部23と、本体部23を介して互いに離反方向に突出した内側リブ片24と外側リブ片25を有し、内側リブ片24と外側リブ片25は、座面部材2又は裏面部材3を固着支持する構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置とその製造方法に関するものであり、特に暖房機能を有した便座装置に好適である。
【背景技術】
【0002】
樹脂製の便座装置(以下樹脂便座ともいう)は、従来の陶器製のものと比べ軽くて丈夫であり、意匠性にも優れることから、益々その需要が高まっている。例えば、特許文献1には、座面部材と裏面部材に分割された部品を組み合わせた便座装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−245825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の樹脂便座では、座面部材若しくは裏面部材に補強部材が設けられている。即ち、この樹脂便座は、座面部材の弾性と補強部材の剛性によって、使用者の着座荷重を支えている。しかしながら、この構成は、成形時に座面部材や裏面部材の表面にヒケが発生することを防止する為に、補強部材の厚みや補強部材の位置に制限が存在している。そのため、座面部材の厚さを薄くすると、使用者が着座するにあたって、十分な強度が得られない。また、通常の厚さの座面部材を用いても、位置によって強度の低いところと高いところが生じる恐れがある。即ち、使用者の体重や着座姿勢によって荷重に偏りが生じた状態で使用し続けると、便座に亀裂等が入る恐れがあった。
【0005】
そこで、本発明では、従来技術の問題に鑑み、剛性の高い便座装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、座面を形成する座面部材と、便器に載置する裏面部材と、座面部材と裏面部材とに囲まれた空間に設置されたリブ部材からなる便座装置において、リブ部材は、座面部材と裏面部材を天地方向に支持する本体部と、本体部を介して互いに離反方向に突出した内側リブ片と外側リブ片を有し、内側リブ片と外側リブ片は、座面部材又は裏面部材を固着支持することを特徴とする便座装置である。
【0007】
かかる構成によれば、座面部材と裏面部材とリブ部材の3部材で構成されているため、使用用途に応じた座面部材と裏面部材とリブ部材の各々の設計が可能である。即ち、リブ部材は、座面部材と裏面部材とに囲まれた空間の範囲内で、リブ部材の内側リブ片と外側リブ片の、厚みや本数などを自由に設計可能である。また、座面部材と裏面部材を天地方向に支持する本体部と、本体部を介して互いに離反方向に突出した内側リブ片と外側リブ片を有するため、位置による強度の偏りが生じにくい。即ち、例え座面部材の偏った位置に使用者の着座荷重が加わったとしても、高い剛性を維持することができる。言い換えると、リブ部材の存在により、剛性を向上させることができるため、座面部材の厚みを薄く設計することもできる。即ち、例えば本発明を暖房便座に採用した場合には、座面部材の厚みを薄く設計することもできるため、便座に内蔵されたヒーターからの熱を効率良く伝えることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1における便座装置において、内側リブ片と外側リブ片は、摩擦発熱によって座面部材及び裏面部材と一体化することを特徴とする便座装置の製造方法である。
【0009】
ここで、摩擦発熱とは、材料の摩擦熱を利用して加熱することを表す。即ち、摩擦発熱によって一体化するとは、振動溶着やスピン溶着、超音波溶着などを含む概念である。
【0010】
かかる方法によれば、内側リブ片と外側リブ片は、摩擦発熱によって座面部材及び裏面部材と一体化するため、不可分一体に接着可能である。言い換えると、破壊や変形等を行わない限り、分離することがなく、剛性がより向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の便座装置では、座面部材と裏面部材とリブ部材の3部材で構成されているため、使用用途に応じた座面部材と裏面部材とリブ部材の各々の設計が可能である。即ち、リブ部材は、座面部材と裏面部材とに囲まれた空間の範囲内で、リブ部材の内側リブ片と外側リブ片の、厚みや本数などを自由に設計可能である。また、座面部材と裏面部材を天地方向に支持する本体部と、本体部を介して互いに離反方向に突出した内側リブ片と外側リブ片を有するため、位置による強度の偏りが生じにくい。即ち、例え座面部材の偏った位置に使用者の着座荷重が加わったとしても、高い剛性を維持することができる。言い換えると、リブ部材の存在により、剛性を向上させることができるため、座面部材の厚みを薄く設計することもできる。即ち、例えば本発明を暖房便座に採用した場合には、座面部材の厚みを薄く設計することもできるため、便座に内蔵されたヒーターからの熱を効率良く伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態にかかる便座装置の通常の設置位置での設置図である。
【図2】図1の便座装置の分解斜視図であって、下方から見た図である。
【図3】(a)図1の便座装置を示すA−A面の断面図である。(b)前記(a)の円内の拡大図である。
【図4】本実施形態にかかる便座装置の製造工程の説明図である。(a)組み立て前の便座装置の説明図、(b)仮組み状態での便座装置の説明図、(c)組み立て後の便座装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、特に断りがない限り、上下の関係は、便座装置を便器に載置した状態の姿勢を基準として説明している。即ち、図1において左右方向を左右、上下方向を上下、紙面に対して手前奥方向を前後と表す。
【0014】
まず、本発明の第1実施形態に係る便器装置1の構成について説明する。
【0015】
本実施形態における便座装置1は、暖房機能を有した所謂暖房便座装置に使用するものである。便座装置1は、図1、2のように環状に形成されている。以下の説明において、図1の環状の中心側を内側と表す。
【0016】
具体的には、便座装置1は、図3に示すように、断面形状が略楕円形であって、上面が便座装置1の内側(図3(a)の右側)に向かって下り傾斜している。
【0017】
また、便座装置1は、座面部材2と裏面部材3とリブ部材5の3部材を接合して一体化されている。即ち、座面部材2と裏面部材3によって囲まれた空間10内にリブ部材5が設置されている。
【0018】
以下に便座装置1の各部材に構成について説明する。
【0019】
座面部材2は、図3のように主に使用者の肌が接触する座板部6と、座板部6の両端部から下方向に向かって折れ曲がった内側座板支持部7と外側座板支持部8から形成されている。即ち、座板部6と、内側座板支持部7と外側座板支持部8の各々は連続している。座面部材2の断面形状は、下側に開放した凹部を有する略「コ」の字状となっている。
【0020】
座板部6の断面形状は、上方に突出した山形状をした板材である。座板部6の下面には、図示しないヒーター等の加熱手段が設置されている。座板部6は、内外方向(図3(a)の左右方向)の中間位置から両端部に向かって緩やかに傾斜している。座板部6の厚みは、特に限定されないが、熱伝導の観点から0.5mm〜3mmであることが好ましい。内側座板支持部7と外側座板支持部8は、下方に向けて厚さが厚くなっている。
【0021】
内側座板支持部7の下端部の構成は、外側座板支持部8の下端部の構成とほぼ同様の構成を有している。そこで、内側座板支持部7及び外側座板支持部8の下端部の構成については、内側座板支持部7のみについて説明し、外側座板支持部8については省略する。
【0022】
内側座板支持部7の下端部は、図2、図3(b)のように空間10側から順に高さが異なるリブ接続面15と裏面接続面16を有しており、リブ接続面15と裏面接続面16は立壁部17を介して段状に連続している。即ち、リブ接続面15は裏面接続面16よりも上方の位置となっている。また、リブ接続面15の内外方向の中間には、図2のように下方(図2では上方)に向けて突出した複数の固定部12を有している。固定部12は、図2のように略円柱状の突起であり、所定の間隔を空けて設けられている。固定部12の外径はリブ部材5の固定孔11の大きさの内径とほぼ等しい。
【0023】
また、固定部12の突出長さ(リブ接続面15から固定部12の先端までの長さ)は、図3のように、後述するリブ部材5の内側リブ片24又は外側リブ片25の厚さよりも長い。固定部12の下端面は裏面接続面16と同一面となっている。そして、立壁部17と固定部12の外側側面との間には、バリ留り空間30を有する。また、固定部12の内側側面付近にはバリ留り空間32を有する。
【0024】
続いて、裏面部材3の説明に移る。
【0025】
裏面部材3は、図3のように便器に載置する裏板部18と、裏板部18の両端部から上方向に向かって折れ曲がった内側裏板支持部21と外側裏板支持部22から形成されている。即ち、裏板部18と、内側裏板支持部21と外側裏板支持部22の各々は連続している。裏面部材3の断面形状は、上側に開放した凹部を有する略「コ」の字状となっている。
【0026】
続いて、リブ部材5の説明に移る。
【0027】
リブ部材5は、図2、3のように座面部材2と裏面部材3を天地方向に支持する本体部23と、本体部23を介して互いに離反方向に突出した内側リブ片24と外側リブ片25を有する。
【0028】
本体部23の上面には、図3(a)のように使用者が着座したことを感知する着座スイッチ20が設けられている。即ち、着座スイッチ20は、座面部材2からの押圧によって使用者の着座を感知する。
【0029】
また、組み立て完成時の本体部23の高さは、裏面部材3の裏板部18の上面から座面部材2の座板部6の下面までの長さに等しい。
【0030】
内側リブ片24は、本体部23の内側側面から張り出したリブ状の部材である。外側リブ片25は、本体部23の外側側面から張り出したリブ状の部材である。内側リブ片24と外側リブ片25は、図2のように本体部23の全体に亘って形成されている。内側リブ片24と外側リブ片25は、本体部23からの張出長さや突出方向は異なるが、内側リブ片24と外側リブ片25の先端付近の構成はほぼ同様である。即ち、本体部23からの内側リブ片24の張出長さは、本体部23からの外側リブ片25の張出長さよりも長い。内側リブ片24及び外側リブ片25の先端は、図3のように内側座板支持部7及び外側座板支持部8の立壁部17と当接している。内側リブ片24及び外側リブ片25の先端は、座面部材2と固着されている。内側リブ片24及び外側リブ片25の先端付近の下面は、組み立て加工時に生じたバリ31によって一部が覆われている。また、内側リブ片24及び外側リブ片25は、図2のように所定の間隔を空けて固定孔11が配されている。具体的には、組み立て完成時に、内側リブ片24及び外側リブ片25の固定孔11は、内側座板支持部7及び外側座板支持部8の下端部に設けられた固定部12に対応する位置に設けられている。
【0031】
以上が各部材の構成の説明である。
【0032】
続いて、便座装置1の組み立て手順に沿って、便座装置1の各部材の位置関係について、図面を参照しながら説明する。
【0033】
あらかじめ、射出成形等の公知の成形方法によって、座面部材2や裏面部材3、リブ部材5を成形する。ここで、座面部材2は、内側座板支持部7及び外側座板支持部8の下端部に位置する立壁部17の高さをやや高めに形成しておく。即ち、座面部材2のリブ接続面15に対する裏面接続面16の高さは、やや高い位置に形成する。
【0034】
リブ部材5の内側リブ片24及び外側リブ片25に配された固定孔11に座面部材2の内側座板支持部7及び外側座板支持部8の下端部に配された固定部12を挿入し、仮位置決めを行う(図4(a)から(b))。
【0035】
この時、リブ部材の内側リブ片24及び外側リブ片25の先端部付近の上面はリブ接続面15に接触している。また、内側リブ片24及び外側リブ片25の固定孔11に内側座板支持部7及び外側座板支持部8の固定部12が挿入されている。即ち、固定部12の先端は裏面部材3の内側裏板支持部21及び外側裏板支持部22に接触していない。
【0036】
そして、公知の振動溶着装置によって、座面部材2の内側座板支持部7及び外側座板支持部8の下端部に位置する裏面接続面16を加熱し、座面部材2と裏面部材3とリブ部材5の3部材を一体的に溶着する(図4(b)から(c))。即ち、内側リブ片24と外側リブ片25は、摩擦発熱によって座面部材2及び裏面部材3と一体化する。
【0037】
この時、座面部材2はバリ溜り空間30、32を有するため、溶解した樹脂がバリ溜り空間30、32内に進入する。バリ留り空間30、32内の一部又は全部は溶解した樹脂によって満たされる。即ち、バリ溜り空間30、32はバリ溜まりとして機能し、溶解した樹脂が表面に出る恐れが少ない。
【0038】
また、バリ溜り空間30、32内に進入した樹脂が内側リブ片24及び外側リブ片25の一部と固着している。
【0039】
その後、公知の方法によって便座装置1の露出部分に発生したバリを除去し、便座装置1は完成する。
【0040】
本発明の便座装置1を用いると、座面部材2と裏面部材3を天地方向に支持するリブ部材5の本体部23と、本体部23を介して互いに離反方向に突出した内側リブ片24と外側リブ片25を有するため、位置的に強度の偏りが生じにくく、高い剛性が得られる。
【0041】
上記した実施形態における座面部材2及び裏面部材3の材質は、樹脂製部材である。特に座面部材2は、熱可塑性を有した樹脂であることが好ましく、特にポリプロピレン樹脂やポリメタクリル酸メチル樹脂製であることが好ましい。
【0042】
また、上記した実施形態におけるリブ部材5の材質は、限定されるものではなく、剛性を有した金属材料や樹脂材料などが使用可能である。
【0043】
上記した実施形態では、暖房便座装置について説明したため、着座スイッチ20を設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、着座スイッチ20を設けなくてもよい。
【0044】
上記した実施形態では、振動溶着によって、座面部材2と裏面部材3とリブ部材5の3部材を一体化したが、本発明はこれに限定されるものではなく、スピン溶着や超音波溶着によって一体化してもよい。
【0045】
上記した実施形態では、円形の固定孔を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。固定孔は長孔や方形状であってもよい。勿論、固定孔の形状に合わせて、固定部の形状を変形してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 便座装置
2 座面部材
3 裏面部材
4 リブ部材
10 空間
23 本体部
24 内側リブ片
25 外側リブ片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面を形成する座面部材と、便器に載置する裏面部材と、座面部材と裏面部材とに囲まれた空間に設置されたリブ部材からなる便座装置において、
リブ部材は、座面部材と裏面部材を天地方向に支持する本体部と、
本体部を介して互いに離反方向に突出した内側リブ片と外側リブ片を有し、内側リブ片と外側リブ片は、座面部材又は裏面部材を固着支持することを特徴とする便座装置。
【請求項2】
請求項1における便座装置において、内側リブ片と外側リブ片は、摩擦発熱によって座面部材及び裏面部材と一体化することを特徴とする便座装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−170613(P2012−170613A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35334(P2011−35334)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】