説明

便座装置

【課題】弾性体を有する便座、弾性体層が破損した場合に発生する可能性のある感電を防止することにより、安全性の高い便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】弾性体層と、便座ヒータと、前記便座ヒータを覆う遮蔽層を備え、遮蔽層を便座ヒータの上方に位置する弾性体層の内部に設置することにより、弾性体層が破損した場合でも感電するおそれのない安全性の高い便座装置となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の体形に沿うように変形する弾性体層を備えた便座におけるヒータの安全性に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、便座装置の便座に使用される樹脂は一般的に硬質樹脂であるため、非常に座り心地が悪いものであった。また座面の端面は皮膚を圧迫し血流の流れを阻害するため、長時間着座した場合は、痺れや痛みが生じてしまうこともあった。特に高齢者あるいは障害者の方の中には、便意が明確でなく、用をたすまで1時間以上便座に着座される方もいるため、このような着座感の悪さは性能上の課題となっていた。
【0003】
一方そのような不具合を解決するため、座面を、荷重がかかる際および荷重が開放される際に、変形する性質を有する低反発物質を用いる構成が提案されている。この場合、大変形が可能であるため、様々な形状の臀部に倣うことが可能である。このような性質を有する低反発物質は、着座時の衝撃を充分吸収することができる。低反発物質では、使用者の臀部を保持しながら変形するため、座位を安定させながら静かに着座状態に移行できる。着座状態では使用者の臀部の形状に倣って変形しているため、効率的に座圧を分散させることができるため、局部的に圧迫される点が生じず、長時間座っても痺れ、痛み等を感じることがなく、しかも内蔵した発熱体により着座面を暖房できるため、非常に良好な座り心地を実現できるという利点を有している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図4は、特許文献1に記載された従来の便座装置の断面を示すものである。図5に示すように、使用者の皮膚に接触する便座1の表面から表皮材2、発熱体3、クッション層4、合成樹脂基材5の順に構成されている。
【特許文献1】特開2005−102843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら硬質の樹脂で構成される便座とは異なり、座り心地を追求するために軟質の弾性体とヒータを有しているため、容易に弾性体に穴が開いたり破れることが想定される。弾性体の破損がヒータまで達した場合、使用者が感電する恐れが生じ、安全性における課題を有していた。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、着座時の衝撃を吸収し着座状態の座り心地が良く、かつ万が一、弾性体が破損した場合においても感電しない安全性において満足した便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の便座装置は、弾性体層と、便座ヒータと、前記便座ヒータを覆う遮蔽層を備え、遮蔽層を便座ヒータの上方に位置する弾性体層の内部に設置している。
【0008】
これにより、使用者の体重や着座姿勢に関わらず着座状態の座り心地をよくし、かつ弾性体と接触させてヒータを設置しているにもかかわらず、弾性体層が破損した場合でも感電するおそれのない安全性の高い便座装置となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の便座装置は、適度なクッション性をもった快適な便座を備え、かつ安全性の高い便座装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、便器上に載置する便座において、少なくとも一部に使用者の体形に沿うように変形する弾性体層と、便座を加熱する便座ヒータと、前記便座ヒータを覆う遮蔽層を備え、前記便座ヒータは弾性体層の内部または下方に設置し、前記遮蔽層を便座ヒータの上方に位置する弾性体層の内部に設置したことによって、万が一弾性体に穴があく等の破損が生じたときにおいても、遮蔽板があることによって、破損がヒータまで達することを防止するとともに、人体が直接便座ヒータに接触しないため、感電等の危険性を最小限にする事が可能となり、座り心地がよく、かつ安全性の高い便座装置とすることができる。
第2の発明は、特に第1の発明の遮蔽層を金属材質で形成することにより、便座ヒータで発熱した熱が熱伝導性の良い金属材質を介して便座表面に伝わるため、均一の表面温度とすることができる。また、金属製の遮蔽板を弾性体層の内部に設置することにより、人が座ったときの体重による撓み等の強度を強化することができ、安全性と耐久性を備えた便座装置とすることができる。
【0011】
第3の発明は、特に第2の発明において、遮蔽層をアース電位に接続可能な構成としたことにより、たとえ弾性体層の大幅な破損で遮蔽層が便座ヒータに接触した場合でも使用者は感電することがなくより安全性の高い便座装置を提供することができる。
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0013】
(実施の形態1)
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態における便座装置は着座面を暖房する暖房便座であって、便座6と、便蓋7と、本体8を主要構成部材としている。
【0014】
本体8の内部には、洗浄用の温水を作り貯湯する熱交換タンク(図示せず)、局部を洗浄する洗浄手段9、洗浄水の噴出を制御する電磁弁(図示せず)、洗浄後の局部を乾燥する乾燥ユニット(図示せず)、排便の臭気を脱臭する脱臭ユニット(図示せず)、便座装置の各機能を制御する制御装置(図示せず)等が内蔵されており、使用者は洗浄手段9から噴出される温水を局部に当てることにより、用便による汚れを洗い流すことができるものである。この便座装置は、便器10の上面に載置した本体8をゴムブッシュ及びボルトを介して便器10に固定し、便座6と便蓋7は本体8に回動自在に枢支している。
【0015】
図2に示すように、便座6は上面から、使用者の皮膚と接触する面であり変形自在な軟質で使用者の臀部になじむシート状の表皮材11、便座内部からの熱を反射して便座外部への無駄な放出を抑制する熱反射膜層12、弾性を備えた軟質樹脂材からなる弾性体層13、便座ヒータ14、硬質樹脂成型品からなる補強部材15、硬質樹脂成型品からなる便座下部部材16の主要部材の順で構成されている。また、表皮材11と便座ヒータ14との中間に位置する弾性体層13の内部には板状の金属で形成した遮蔽層17を設けてある。
【0016】
また、図3に示すように遮蔽層17にはアースリード線22が接続してあり、別途設けたアース端子(図示せず)に接続する構成となっている。
補強部材15と便座下部部材16はビス18で螺合してあり、補強部材16は真ん中をビス止めのために平面部19とし、両側はそれぞれ凸部20として強度を上げている。そして端部21には便座下部部材17の端部と嵌合するように長手方向に一定間隔で爪を設け
てある。
【0017】
表皮材11の材質としては、TPU(熱可塑性ポリウレタン)シートを使用している。表皮材11としては0.1〜0.3mm程度の薄いフィルムで構成され、耐薬品性のある、かつ熱容量の少ないものであれば他の材質によるものでもかまわない。
【0018】
また弾性体層13の材質としては、高反発発泡ポリウレタンを使用している。弾性体層13の発泡ポリウレタンは、主として内部の気泡がつながっていない独立気泡構造をとり、ガスの出入りをなくし、空気によるクッション性を持たせているが、適度なクッション性を有するものであれば連続気泡構造のものでもよい。また、弾性体層13は補強部材15の周りを覆うように形成してあり、着座したときも臀部が直接、補強部材15に接しないようにしてある。
【0019】
熱反射膜層13としては樹脂フィルムにアルミを蒸着したものを使用している。本実施の形態においては熱反射膜層13として独立した部材を表皮材11と弾性体層14の間に介在させた構成としているが、表皮材11としてあらかじめ片面に反射膜層をコ−ティングした樹脂フィルム材料を用いるか、表皮材11を弾性体層14であるポリウレタンと一体発泡成形する前に、表皮材裏面に反射膜層を塗装しておくか、その他の加工方法によるものであってもかまわない。
【0020】
補強部材15は便座7に弾性体層14を設けることにより、便座7全体の剛性不足で体重を支えきれないことを想定して設けたものである。通常、従来までの便座は上下樹脂部材を上下ともU字型にして上下のU字部分と逆U字部分の開放面を合わせ面として一体に構成して構造体とすることにより体重を支えるようにしているが、本実施の形態では上部の構成部材は軟質樹脂からなる弾性体層13であるため硬質樹脂同士の合わせで支えることができないことに対する対策として、便座下部部材16と補強部材15で体重を支えるように構成したものである。
【0021】
便座ヒータ14は補強部材15の上面に配置してあり、本実施の形態で使用した便座ヒータ14は柔軟性フィルムに伸縮性PTC抵抗体と電極を印刷して別の柔軟性フィルムとでサンドイッチした構成の面状のPTCヒータを使用しており、面状のPTCヒータは通電初期のヒータ温度が低いときは抵抗値が小さく大容量の電流が流れ、ヒータ温度が高くなると抵抗値が大きくなり、電流容量小さくなる正温度係数特性を備えており、温度上昇が早く、かつ自己温度制御機能を備えているため省エネと安全性が高いという特徴を持ったものである。
【0022】
ヒ−タから発生した熱は弾性体層13を介して便座表面へと伝達した後、使用者の皮膚へ伝わる。この過程において便座ヒータ14で発生した熱は遮蔽層17を介して弾性体層13の内部で拡散し、便座表面においては均一な温度分布となる。
【0023】
本実施の形態で使用した面状のPTCヒータ以外の、均一な発熱分布特性を有していないチュ−ビングヒ−タのような構成のヒータを使用した場合であったとしても、弾性体層の表面においては温度分布が均一化し、結果として温度均一性に優れた暖房便座とすることができる。
【0024】
また、本実施の形態においては、表皮材11と弾性体層13の間に熱反射膜層12を設けたことにより、便座ヒータ14で発生した熱は弾性体層13および表皮材11を介して便座表面側へと放熱しようとするが、熱反射膜層12を追加することによって熱が便座内部へと封じ込まれる効果が生まれるため、弾性体層13による蓄熱効果を備えている。
【0025】
しかも、本実施の形態では、表皮材11と便座ヒータ14の間に遮蔽層17を設けた構成としているため、万が一、表皮材11や弾性体層13が破れたり、穴があく等の破損が生じた場合においても便座ヒータ14まで達しないため、直接人間と便座ヒータ14が接することがなく感電する恐れがなく、さらにアースリード線21を介してアースに落としていることにより、遮蔽層17は便座ヒータ14に接触した場合でも感電する恐れがないため、安全性を高めることが可能となる。
【0026】
なお、本実施の形態においては、便座ヒータ14は補強部材15の上面、すなわち弾性体層13の下面に接して設置してあるが、便座ヒータ14の設置位置はこれに限るものではなく、弾性体層13の内部に設置し、その上方に遮蔽層17を配置した構成でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上のように、本発明に関わる便座装置は、部材の破損による使用者の感電を防止し、高い安全性を確保することが可能となるため、人体に直接接触して使用する他の暖房装置の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1における便座装置の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における便座の詳細断面図
【図3】本発明の実施の形態1における便座ヒータと遮蔽層を示す模式図
【図4】従来の便座装置の断面図
【符号の説明】
【0029】
6 便座
10 便器
13 弾性体層
14 便座ヒータ
17 遮蔽層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器上に載置する便座において、少なくとも一部に使用者の体形に沿うように変形する弾性体層と、便座を加熱する便座ヒータと、前記便座ヒータを覆う遮蔽層を備え、前記便座ヒータは弾性体層の内部または下方に設置し、前記遮蔽層を便座ヒータの上方に位置する弾性体層の内部に設置した便座装置。
【請求項2】
遮蔽層を金属材料で形成したことを特徴とする請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
遮蔽層をアース電位に接続可能な構成としたことを特徴とする請求項2に記載の便座装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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