説明

便座装置

【課題】便座表面から人体の皮膚を暖める際に無駄な熱損失が少なく、快適でエネルギー効率のよい便座装置を提供すること目的とする。
【解決手段】便座の少なくとも一部に弾性体層13と、弾性体層13を保持する補強部材15と、補強部材15に設置した便座ヒータ14を備えたことにより、便座ヒータ14からの熱を温度ムラなく便座表面に伝えることができ、かつ無駄な通電を削減することができ、快適でエネルギ−効率の高い便座装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の体形に沿うように変形する弾性体層を備えた便座におけるヒータの設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、便座装置の便座に使用される樹脂は一般的に硬質樹脂であるため、非常に座り心地が悪いものであった。また座面の端面は皮膚を圧迫し血流の流れを阻害するため、長時間着座した場合は、痺れや痛みが生じてしまうこともあった。特に高齢者あるいは障害者の方の中には、便意が明確でなく、用をたすまで1時間以上便座に着座される方もいるため、このような着座感の悪さは性能上の課題となっていた。
【0003】
一方そのような不具合を解決するため、座面を、荷重がかかる際および荷重が開放される際に、変形する性質を有する低反発物質を用いる構成が提案されている。この場合、大変形が可能であるため、様々な形状の臀部に倣うことが可能である。このような性質を有する低反発物質は、着座時の衝撃を充分吸収することができる。低反発物質では、使用者の臀部を保持しながら変形するため、座位を安定させながら静かに着座状態に移行できる。着座状態では使用者の臀部の形状に倣って変形しているため、効率的に座圧を分散させることができるため、局部的に圧迫される点が生じず、長時間座っても痺れ、痛み等を感じることがなく、しかも内蔵した発熱体により着座面を暖房できるため、非常に良好な座り心地を実現できるという利点を有している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図4は、特許文献1に記載された従来の便座装置の断面を示すものである。図5に示すように、使用者の皮膚に接触する便座1の表面から表皮材2、紐状発熱体3、クッション層4、合成樹脂基材5の順に構成されている。
【特許文献1】特開2005−102843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の便座装置においては、紐状ヒータの熱は表皮材を介して使用者の臀部に伝わる構成であるが、使用者の体重や着座姿勢の差により、表皮材および紐状ヒータに加わる圧力に差が生しるのが一般であり、しかも同一使用者においても便座の部位によって圧力が異なる。上記のように部位によって圧力が異なる場合、使用者は体感温度として、強い圧力が加わる部位は熱く感じ、弱い圧力が加わる部位は温度が低く感じるため、便座全体に温度斑があるように感じて不快感を感じる。また、使用者の体型などによって実際には使用者の皮膚に触れていない部分の便座表面においても他の部分同様の均一な温度となるように通電を行っており、しかも紐状ヒータは表皮材の下面に配置しているため放熱しやすい構成となっており、省エネルギ−の観点において効率が悪いという課題を有していた。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、着座時の衝撃を吸収し、かつ着座状態の座り心地が良く、かつ長時間の着座の際においても人体への影響度が小さい便座を有し、かつ便座表面から人体の皮膚を暖める際に無駄な熱損失が少なく、快適でエネルギ−効率のよい便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の便座装置は、少なくとも一部に弾性体層と、弾性体層を下方から保持する補強部材と、補強部材に設置した便座ヒータを備えたこと
を特徴としている。
【0008】
これにより、使用者の体重や着座姿勢に関わらず強度面に優れ、かつ便座温度の均一性やエネルギ効率の高い便座装置となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の便座装置は、適度なクッション性をもった快適な便座を備え、使用者の体重や着座姿勢などの条件にかかわらずに便座全体の剛性、強度が高く、かつ便座表面の温度が均一で、エネルギ−効率のよい便座装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、便器上面に載置する便座において、少なくとも一部に使用者の体形に沿うように変形する弾性体層と、前記弾性体層を下方から保持する補強部材と、便座を加熱する便座ヒータを備え、前記便座ヒータを前記補強部材に設置したことにより、弾性体層は補強部材で保持したことによって弾性体層は補強され、便座そのものの剛性を高めることができるため、使用者の体型などの条件にかかわらず弾性体層が備える適度なクッション性で使用者との臀部の血流を妨げることもなく、長時間着座しても疲れない便座とすることができ、しかも便座ヒータは補強部材に設置することにより便座内部に安定して設置することができ、かつ便座ヒータと便座表面との間に弾性体層が位置する構造としているため便座ヒータの熱が便座表面まで伝わる過程で温度の均一性が得られるため、快適に臀部の暖房し、しかも便座ヒータは弾性体層で覆われていることにより無駄な熱損失を抑えることのできる便座装置とすることができるものである。
【0011】
第2の発明は、特に第1の発明の弾性体層が蓄熱性能を備えることにより、便座ヒータで発生した熱は弾性体層で蓄熱されるため、従来の暖房便座に比較して便座表面からの放熱損失が少なく、エネルギ−効率のよい便座装置とすることができる。
【0012】
第3の発明は、特に第1または第2の発明において、弾性体層の上部に熱反射膜層を設けることにより、弾性体層から便座の外側へ移動しようとする熱を便座内部へと反射して封じこめる効果を有し、弾性体層の蓄熱効果をより高めることで、さらにエネルギ−効率のよい便座装置とすることができる。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における便座装置全体の外観を示す斜視図、図2は便座の詳細断面図である。
【0015】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態における便座装置は着座面を暖房する暖房便座であって、便座6と、便蓋7と、本体8を主要構成部材としている。
【0016】
本体8の内部には、洗浄用の温水を作り貯湯する熱交換タンク(図示せず)、局部を洗浄する洗浄手段9、洗浄水の噴出を制御する電磁弁(図示せず)、洗浄後の局部を乾燥する乾燥ユニット(図示せず)、排便の臭気を脱臭する脱臭ユニット(図示せず)、便座装置の各機能を制御する制御装置(図示せず)等が内蔵されており、使用者は洗浄手段9から噴出される温水を局部に当てることにより、用便による汚れを洗い流すことができるものである。この便座装置は、便器10の上面に載置した本体8をゴムブッシュ及びボルトを介して便器10に固定し、便座6と便蓋7は本体8に回動自在に枢支している。
【0017】
図2に示すように、便座6は上面から、使用者の皮膚と接触する面であり変形自在な軟質で使用者の臀部になじむシート状の表皮材11、便座内部からの熱を反射して便座外部への無駄な放出を抑制する熱反射膜層12、弾性を備えた軟質樹脂材からなる弾性体層13、便座ヒータ14、硬質樹脂成型品からなる補強部材15、硬質樹脂成型品からなる便座下部部材16の主要部材の順で構成されている。補強部材15と便座下部部材16はビス17で螺合してあり、補強部材15は真ん中をビス止めのために平面部18とし、両側はそれぞれ凸部19として強度を上げている。そして端部20には便座下部部材16の端部と嵌合するように長手方向に一定間隔で爪を設けてある。
【0018】
表皮材11の材質としては、TPU(熱可塑性ポリウレタン)シートを使用している。表皮材11としては0.1〜0.3mm程度の薄いフィルムで構成され、耐薬品性のある、かつ熱容量の少ないものであれば他の材質によるものでもかまわない。
【0019】
熱反射膜層12としては樹脂フィルムにアルミを蒸着したものを使用している。本実施の形態においては熱反射膜層12として独立した部材を表皮材11と弾性体層13の間に介在させた構成としているが、表皮材11としてあらかじめ片面に反射膜層をコ−ティングした樹脂フィルム材料を用いるか、表皮材11を弾性体層13であるポリウレタンと一体発泡成形する前に、表皮材裏面に反射膜層を塗装しておくか、その他の加工方法によるものであってもかまわない。
【0020】
弾性体層13の材質としては、高反発発泡ポリウレタンを使用している。弾性体層13の発泡ポリウレタンは、主として内部の気泡がつながっていない独立気泡構造をとり、ガスの出入りをなくし、空気によるクッション性を持たせてある。また、着座時の使用者の体重を支え、しかも適度の蓄熱性能を持たせるために適度な発泡率で形成してある。適度なクッション性と蓄熱性能を有するものであれば連続気泡構造のものでもよい。
【0021】
また、弾性体層13は補強部材15の周りを覆うように形成してあり、着座したときも臀部が直接、補強部材15に接しないようにしてある。補強部材15は便座7に弾性体層13を設けることにより、便座7全体の剛性不足で体重を支えきれないことを想定して設けたものである。通常、従来までの便座は上下樹脂部材を上下ともU字型にして上下のU字部分と逆U字部分の開放面を合わせ面として一体に構成して構造体とすることにより体重を支えるようにしているが、本実施の形態では上部の構成部材は軟質樹脂からなる弾性体層13であるため硬質樹脂同士の合わせで支えることができないことに対する対策として、便座下部部材16と補強部材15で体重を支えるように構成したものである。
【0022】
便座ヒータ14は補強部材15の上面に配置してあり、本実施の形態で使用した便座ヒータ14は柔軟性フィルムに伸縮性PTC抵抗体と電極を印刷して別の柔軟性フィルムとでサンドイッチした構成の面状のPTCヒータを使用しており、面状のPTCヒータは通電初期のヒータ温度が低いときは抵抗値が小さく大容量の電流が流れ、ヒータ温度が高くなると抵抗値が大きくなり、電流容量小さくなる正温度係数特性を備えており、温度上昇が早く、かつ自己温度制御機能を備えているため省エネと安全性が高いという特徴を持ったものである。
【0023】
ヒ−タから発生した熱は弾性体層13を介して便座表面へと伝達した後、使用者の皮膚へ伝わる。この過程において便座ヒータ14で発生した熱は弾性体層13の内部で拡散し、便座表面においては均一な温度分布となる。
【0024】
本実施の形態で使用した面状のPTCヒータ以外の、均一な発熱分布特性を有していないチュ−ビングヒ−タのような構成のヒータを使用した場合であったとしても、弾性体層の表面においては温度分布が均一化し、結果として温度均一性に優れた暖房便座とするこ
とができる。
【0025】
また便座ヒータ14を補強部材15の上面に配置することで、加工上はまず便座ヒータ14を補強部材15に貼付け、その状態のまま弾性体層13であるポリウレタンの発泡成形工程でインサ−ト成形することが可能であるため、製造工程上の作りやすさが向上するという利点を有している。
【0026】
また本実施の形態においては弾性体層13が蓄熱性能を有する構成とすることにより、暖房便座を使用する際に、初期的に便座ヒータ14からの熱が弾性体層13全体に蓄熱されるまで時間を要するものの、一旦蓄熱が完了すればその後、便座ヒータ14への通電率を下げても便座の表面温度は一定に保持できるため、従来の暖房便座に比べてエネルギ−効率のよいものとすることができる。
【0027】
また、本実施の形態においては、表皮材11と弾性体層13の間に熱反射膜層12を設けたことにより、便座ヒータ14で発生した熱は弾性体層13および表皮材11を介して便座表面側へと放熱しようとするが、熱反射膜層12を追加することによって熱が便座内部へと封じ込まれる効果が生まれるため、弾性体層13による蓄熱効果をさらに高めることが可能となる。この熱反射膜層12は、表皮材11としてあらかじめ片面に反射膜層をコ−ティングした樹脂フィルム材料を用いるか、表皮材11を弾性体層13であるポリウレタンと一体発泡成形する前に、表皮材裏面に反射膜層を塗装しておくか、その他の加工方法によるものであってもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明に関わる便座装置は、便座からの放熱損失を抑えて保温することで、エネルギ−損失の少ない暖房を行うことが可能となるため、人体に直接接触して使用する他の暖房装置の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態における便座装置の斜視図
【図2】本発明の実施の形態における便座の詳細断面図
【図3】従来の便座装置の断面図
【符号の説明】
【0030】
6 便座
10 便器
12 熱反射膜層
13 弾性体層
14 便座ヒータ
15 補強部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器上に載置する便座において、少なくとも一部に使用者の体形に沿うように変形する弾性体層と、前記弾性体層を下方から保持する補強部材と、便座を加熱する便座ヒータを備え、前記便座ヒータを前記補強部材に設置した便座装置。
【請求項2】
弾性体層が蓄熱性能を備えたことを特徴とする請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
弾性体層の上部に熱反射膜層を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の便座装置。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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