説明

便座装置

【課題】便器上面に配設される全部材を容易に取り外して清掃できるようにするとともに、汚れの程度に応じて適正な清掃方法を選択することができ、かつ取付施工の容易な便座装置を提供する。
【解決手段】便器の後部上面に固定される固定部2と、前記固定部2に昇降可能に設けられる基部3と、前記基部3に回動可能に設けられる便座と、を備える便座装置1であって、前記便器上面のみからの施工により前記固定部2を着脱可能に固定する上面施工手段と、前記固定部2に設けられて前記基部3の昇降及び着脱を案内するガイド手段(ガイドピン61、62)と、前記固定部2と前記基部3との間に配設されて前記基部3を上向きに付勢する付勢手段(コイルスプリング7)と、前記基部3が下降した所定の使用位置で前記基部3を前記固定部2に係止する係止手段(ロック溝81、ロック部材、ロックレバー82)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋式便器に設けられる便座装置に関し、より詳細には清掃及び取付施工に配慮した便座装置の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
便座装置は、通常、洋式便器の後部上面に設けられる基部と、基部に回動可能に設けられる便座及び便蓋とで構成され、便座及び便蓋を開閉するための便宜が図られている。また、各種ニーズに応じて、便座を適温に維持するヒータや保温部、人体局部を洗浄するための洗浄ノズルや洗浄水タンク、使用者の着座を検出する着座検出センサ、などが適宜装備されることも一般的となっている。この種の便座装置では、便器上面と便座装置との間に汚れが染みこんで臭気の原因となるおそれがあるため、便座装置を便器上面で移動する可動形として清掃作業を容易にした各種発明がなされている。
【0003】
特許文献1に開示された便器上面設備は、設備の昇降を可能とすることによって清掃作業を容易にした一例である。この便器上面設備は、便器に固定される固定メンバと、固定メンバに対して昇降可能な昇降メンバと、昇降メンバを緩やかに下降させる緩行装置としてエアダンパと、を備えており、緩行装置としてロータリダンパ採用した場合よりも低価格であるとされている。可動形の便座装置には、昇降形の他にも前後に移動するスライド形やその場で回動する回動形などがあり、いずれも便器上面との間に隙間が生じて清掃を行えるようになっている。
【0004】
一方、便座装置を取付施工する構造としては、便器上面の周縁部に貫通取付孔を形成し、締結部材を貫通させて固定部を便器に固定し、固定部に対して便座装置の基部を取り付ける構造が一般的となっている。
【特許文献1】特開2004−329489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の便器上面設備では、便器に対して昇降メンバを衝撃落下させないための緩行装置や昇降を案内する案内装置などの付帯装置を便器上面に設けている。このため、付帯装置と便器との間は昇降メンバを上昇させても清掃を行うことができない。便器上面全体の清掃作業のために付帯設備を取り外そうとしても、便器下側の狭隘な箇所で取り外し作業を行う必要があって大いに煩雑であり、現実的でない。また、昇降メンバを上昇させても、付帯設備が障害物となって残っているため、隙間から行う清掃作業は煩わしいものであった。昇降メンバの上昇を人力で行うことも、煩わしさの一因となっている。一方、取付施工時に貫通取付孔に締結部材を貫通させる方法は、便器下側の狭隘な箇所での作業が必要となるため、施工方法が大きく制限されていた。
【0006】
以上述べた清掃時及び取付施工時の課題は、特許文献1の便器上面設備に限らず、可動形の便座装置に共通している。
【0007】
本発明は上記背景に鑑みてなされたものであり、便器上面に配設される全部材を容易に取り外して清掃できるようにするとともに、汚れの程度に応じて適正な清掃方法を選択することができ、かつ取付施工の容易な便座装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の便座装置は、便器の後部上面に固定される固定部と、前記固定部に昇降可能に設けられる基部と、前記基部に回動可能に設けられる便座と、を備える便座装置であって、前記便器上面のみからの施工により前記固定部を着脱可能に固定する上面施工手段と、前記固定部に設けられて前記基部の昇降及び着脱を案内するガイド手段と、前記固定部と前記基部との間に配設されて前記基部を上向きに付勢する付勢手段と、前記基部が下降した所定の使用位置で前記基部を前記固定部に係止する係止手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明は、便器側の固定部を便器上面のみからの施工により着脱可能とし、さらに可動側の基部を着脱可能とすることによって、便器上面に配設される全部材を容易に取り外して清掃できるように改良したことを主旨としている。本発明の便座装置は、固定部、基部、便座に加え、上面施工手段、ガイド手段、付勢手段、係止手段、の各手段を備えている。
【0010】
固定部は、便器の後部上面に固定され、基部を昇降させる基準となる部材である。基部は、固定部を基準として昇降可能に形成され、便座を回動可能に保持しており、一般的には便蓋をも回動可能に保持している。基部には、便座及び便蓋の回動を駆動するモータや駆動機構部を設けることができ、他に人体局部洗浄機構や便座保温機構なども設けることができる。
【0011】
上面施工手段は、便器上面のみからの施工により固定部を着脱可能に固定する手段である。前記上面施工手段は、前記便器の上面に設けられた取付孔と、前記取付孔に上方から挿入される円筒形弾性変形部と、前記円筒形弾性変形部に上方から挿入されるとともに前記固定部を保持し下側にねじ部をもち上側に回転駆動部をもつボルトと、前記円筒形弾性変形部の下側に設けられて前記ボルトのねじ部が螺合されるナットとを用い、前記ボルトを一方向に回動して前記ナットを締め付けることにより円筒形弾性変形部を周方向に拡張して前記取付孔の周壁に圧接させ前記固定部を前記便器に固定し、前記ボルトを反対方向に回動して前記固定部を前記便器から取り外す手段である、ことが好ましい。
【0012】
上面施工手段には、例えば、円筒形弾性変形部とこれを弾性変形させるボルト及びナットとからなる締結部材を用いることができる。この締結部材によれば、便器上面の取付孔に、ナットをもつ円筒形弾性変形部と、固定部を保持するボルトとを差し込み、ボルトを一方向に回動するだけで、固定部を便器に取り付けることができる。また、ボルトを反対方向に回動するだけで固定部を取り外すことができる。この固定部の着脱作業は便器上面のみで行うことができる。かつ、弾性変形を利用しているので、締結部材は繰り返して使用することができる。この締結部材には、本願出願人が特開2006−241944にて出願した温水洗浄便座装置の締結部材を適用することができ、詳述は省略する。
【0013】
ガイド手段は、固定部に設けられて基部の昇降及び着脱を案内する手段である。前記ガイド手段は、前記固定部に立設される複数本のガイドピンと、前記基部に設けられて各前記ガイドピンがそれぞれ貫挿するガイド筒と、からなることが好ましい。
【0014】
ガイド手段は、基部が安定して昇降できるように案内するとともに、基部の上方への取り外しを案内する手段である。ガイド手段は、例えば、固定部に立設される丸棒状のガイドピンと、基部に設けられる円筒状のガイド筒とすることができる。この態様では、ガイド筒がガイドピンに摺動しながら基部は滑らかに昇降し、ガイド筒が上方に抜け出ることによって基部が取り外される。ガイドピンを複数本とした理由は、基部の回転防止と、複数点支持による水平安定性向上である。したがって、ガイドピンは略中央に立設される唯1本の角棒とすることもできる。
【0015】
付勢手段は、固定部と基部との間に配設されて基部を上向きに付勢する手段である。前記付勢手段は、いずれかの前記ガイドピンを取り巻くように配設された少なくとも1本のコイルスプリングであってもよい。
【0016】
付勢手段は、基部を上向きに付勢することにより、基部を下方の使用位置から上方の清掃位置まで上昇させる際の所要操作力を低減する手段である。付勢手段にコイルスプリングを用いた態様では、外力が加えられないときの自由長とばね定数とを適宜選定することにより、コイルスプリングに支持される基部の高さ位置や、基部の昇降に要する操作力を適正化することができる。例えば、自動的に所定の高さの清掃位置まで上昇させることができ、あるいは、途中の高さまで自動で上昇し残りはわずかな人手の操作力で上昇させるようにすることができる。ガイドピンを取り巻くようにコイルスプリングを配設する理由は、スプリングの座屈防止と設置スペースの節約、及び部材兼用化によるコストダウンであり、ガイドピンとは別の位置にスプリングを設けるようにしてもよい。
【0017】
係止手段は、下方の所定の使用位置で基部を固定部に係止する手段である。前記係止手段は、前記ガイドピンの側周面に形成されたロック溝と、前記基部に設けられて前記使用位置で前記ロック溝に嵌入するロック部材と、前記ロック部材の嵌入及び離脱を操作するロックレバーと、からなることが好ましい。
【0018】
係止手段は、付勢手段に抗して下降させた基部を使用位置に係止することにより、普段の使用に供するようにしている。係止手段を、ロック溝とロック部材とロックレバーとで形成した態様では、基部が所定の高さの使用位置まで下降したときに、ロックレバーでロック部材を操作してロック溝に嵌入させることができ、基部は使用位置でロックされる。また基部がロックされた状態において、ロック部材をロック溝から離脱させれば、基部は付勢手段に付勢されて自然に上昇する。ロック溝をガイドピンに設けた理由は、ガイドピンの部材兼用化によるコストダウンを図ったものであり、ロック溝は固定部の別の箇所に設けるようにしてもよい。
【0019】
前記ガイドピンの前記側周面に向けて前記ロック部材を付勢するロック付勢手段をもつ、ようにしてもよい。ロック付勢手段をもつ態様では、常時ロック部材がガイドピンの側周面に押しつけられた状態となり、基部が使用位置まで下降すると、自動的にロックされる。また、振動などにより誤ってロックが解除されるおそれがなくなる。
【0020】
前記ロック溝が形成された前記ガイドピンは、前記基部が上昇して所定の清掃位置に達したときに前記ロック部材が嵌入する清掃用ロック溝をもつ、ようにしてもよい。ガイドピンの下方に使用位置のロック溝を設け、上方に清掃位置の清掃用ロック溝を設け、それぞれの位置で基部を係止できるようにすることもできる。清掃用ロック溝を設けた態様では、基部を上昇させると清掃位置で係止され、勢い余って上がりすぎ意図しないのに外れてしまうおそれがない。
【0021】
次に、上述のように構成された本発明の便座装置の取り扱い方法及び作用について説明する。取付施工時には、まず、上面施工手段により、固定部を便器の後部上面に取り付ける。このとき、便器上面のみからで施工でき、便器下側の狭隘な箇所での作業は不要である。とりわけ、円筒形弾性変形部とボルト及びナットからなる締結部材を用いた態様では、これらの部材を便器上面の取付孔に差し込んで、ボルトを回動すればよく、作業性はきわめて良好である。次いで、ガイド手段を利用して基部を固定部に向けて徐々に下降させる。ガイドピンとガイド筒とからなるガイド手段では、ガイドピンに沿わせてガイド筒を下降させることができる。このとき、付勢手段が対抗するが、基部を下降させる操作は比較的容易であり、困難は伴わない。基部が下方の使用位置に達したら、ロックレバーを操作して基部をロックすなわち係止する。なお、ロック付勢手段をもつ態様では、使用位置で自動的にロックが行われる。これで、基部の取付施工が終わり、最後に電気配線や配水管の施工を行うことで、使用に供することができる。
【0022】
清掃時には、まず、ロックレバーを操作して基部のロックを解除する。すると、付勢手段の作用により、基部は自動的に付勢手段とつりあう清掃位置の高さまで上昇する。ガイドピンが清掃用ロック溝をもつ態様では、基部は所定の高さの清掃位置に係止される。いずれの態様においても、人手の操作力はほとんど不要であり、煩わしさがない。そして、基部と便器上面との間に隙間ができて、簡単に清掃が行えるようになる。汚れの程度が進んでいるときには、基部をさらに上昇させて固定部から完全に取り外すことにより、丁寧に清掃が行えるようになる。さらに、汚れの程度が著しい場合には、固定部をも取り外して、便器上面全体をもれなく清掃することができる。基部を取り外しての清掃や、固定部を取り外しての清掃は、例えば毎月1回など、適宜頻度を定めて行うようにしてもよい。また、使用回数を累計するカウンタや、汚れの程度を検知するセンサを設けて、清掃時期を通知するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
以上説明した本発明の便座装置では、固定部を便器上面のみから取付施工できるようにして、便器下側の狭隘な箇所での作業を不要としたので、取付施工の作業性はきわめて良好である。また、基部を使用位置から清掃位置へと上昇させるだけでなく容易に取り外しできるようにして、かつ固定部をも着脱できるようにしたので、便器上面全体をもれなく清掃することができ、また汚れの程度に応じて適正な清掃方法を選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を実施するための最良の形態を、図1〜図6を参考にして説明する。図1は、本発明の実施例の便座装置の取付状態を説明する図である。実施例の便座装置1は、洋式便器91の後部上面に搭載されており、図には見えていない固定部と、基部3と、便座41及び便蓋42と、を主要な構成部材とし、人体局部洗浄機構31を付属している。
【0025】
基部3は、固定部を基準として昇降可能に形成され、便座41及び便蓋42を回動可能に保持している。基部3の図中左手前側には袖部32が設けられ、袖部32の上面には人体局部洗浄機構31を操作する操作パネル33が設けられている。基部3の筐体は上側部材35と下側部材36とが結合されて形成されており、筐体内には便座41及び便蓋42の軸支部及び駆動機構と人体局部洗浄機構31の大部分とが収納されている。また、基部3には、家庭用コンセントから交流電源を得るための電源コード37と、給水源から洗浄水を得るための配水管38と、が設けられている。
【0026】
図2は、洋式便器91後方に配置された水先タンク92の方向からみた、実施例の便座装置1を説明する斜視図である。固定部2は樹脂製の略板状のプレート部材21で形成されており、プレート部材21の上面の図中右側と略中央とにそれぞれ、ガイド部材に相当する丸棒状のガイドピン61、62が立設されている。図中右側のガイドピン61の根本を取り巻くように、付勢手段に相当するコイルスプリング7が配設されている。コイルスプリング7の配設位置は便器の中央から外れているが、袖部32を有する基部3の略重心位置とされている。また、コイルスプリング7の自然長及びばね定数は、基部3を上向きに付勢して上方の掃除位置まで押し上げる付勢力を得られる特性量とされている。一方、略中央のガイドピン62の根本には、ロック溝81が水平方向に切り欠かれて形成されている。
【0027】
図2では、基部3の上側部材35は略されて筐体内部が図示されており、下側部材36の略中央には、2個の円筒状のガイド筒65、66を一体に備えたガイド部材64が固設されている。2個のガイド筒65、66は、固定部2のガイドピン61、62によって昇降及び着脱可能に案内されるように構成されている。すなわち、ガイド筒65、66がガイドピン61、62に摺動しながら昇降することにより基部3が昇降するようになっている。さらに、ガイド筒65、66がガイドピン61、62の上方に抜け出ることによって基部3を取り外すことができるようになっている。
【0028】
また、下側部材36に保持されて、図中左側方に突出し、かつ図中左右に操作可能にロックレバー82が設けられている。ロックレバー82は図略のロック部材に結合している。ロックレバー82とロック部材、及びガイドピン62に設けられたロック溝81によって係止手段が構成されている。詳述すると、基部3が所定の使用位置まで下降し、ロック部材がロック溝81の高さに一致したときにロックレバー82を図中右方向に押し込み操作すると、ロック部材がロック溝81に嵌入され、基部3が使用位置の高さにロックされる。また、基部3が使用位置でロックされているときに、ロックレバー82を図中左方向に引き抜き操作すると、ロック部材がロック溝81から離脱して、基部3のロックが解除される。なお、使用位置と異なる高さ位置でロックレバー82を操作しても、嵌入動作は生じないので基部3はロックされない。
【0029】
次に、図3を参考にして、上面施工手段について説明する。図3は、図1では隠れている固定部を、便器91上面に着脱可能に固定する上面施工手段を説明する側面断面図であり、(A)は取付途中状態、(B)は取付終了状態をそれぞれ示している。実施例の上面施工手段5は、図3の構成を複数個用いて、固定部2の固定プレート21を、上面のみからの施工によりに便器91上面に着脱可能に固定するものである。上面施工手段5は、便器側の取付孔51と、下側内周にナット55をもつ円筒形弾性変形部52と、ボルト53と、樹脂ワッシャ56と、で構成されている。
【0030】
取付孔51は、便器91上面から下向きに設けられて、下側が閉じた円形断面の孔である。なお、取付孔51と同じ配置で、固定プレート21にも貫通穴22が穿鑿されている。円筒形弾性変形部52は、合成ゴムなどの弾性材料により円筒形に成形された部材であり、下側内周には金属製のナット55が固設され、上側は樹脂ワッシャ56に当接されるように形成されている。ボルト53は金属製で、下側にナット55と螺合する細径のねじ部57をもち、上側に回転駆動部58をもっている。樹脂ワッシャ56は樹脂製で、図示されるように、貫通穴22よりも大きな外径を有し、ボルト53が内貫される略円環状の部材である。
【0031】
上面施工手段5による取付施工では、まず、便器92上面に固定プレート21を戴置する。次に、ボルト53と、樹脂ワッシャ56と、ナット55をもつ円筒形弾性変形部52とを螺合により一体化した締結部材を、上方から差し込む。すなわち、図3(A)に示されるように、樹脂ワッシャ56が固定プレート21に当接する状態とし、締結部材を固定プレート21の貫通穴22を経由して、便器92の取付孔51まで差し込む。次に、ボルト53の回転駆動部58をドライバにより一方向に回転してやると、ナット55が上方に締め付けられ、図3(A)に示されるように円筒形弾性変形部52の中間高さ部分が周方向にふくらみ始める。さらに、ナット55が締め付けられると、図3(B)に示されるように、円筒形弾性変形部52の中間高さ部分が取付孔51の周壁に圧接される。つまり、便器91に対して締付部材が固定され、締付部材のうちの樹脂ワッシャ56が、固定プレート21を押さえつけて固定することになる。逆に、回転駆動部58を反対方向に回転してやると、図3(B)から(A)の状態を経て、固定プレート21を取り外すことができる。すなわち、便器91上面のみからの施工により、固定部2を着脱することができる。
【0032】
続いて、基部3の取付、昇降、及び取り外しの方法について説明する。図4は基部3の取り付け直前の状態、図5は基部3の使用位置への取り付け状態、図6は基部3の清掃位置への上昇状態、をそれぞれ説明する図である。図4において、固定部2は既に便器91に固定されており、固定部2の上方に基部3が配置されている。そして、固定部2の2本のガイドピン61、62の真上に基部3のガイド筒65、66が配置された状態から、基部3を真下に下降させれば、ガイド筒65、66にガイドピン61、62が貫挿された後、ガイド筒65、66がガイドピン61、62に摺動して、基部3が下降する。このとき、ロックレバー82は、左方向に引き抜き操作された状態として、下降の障害とならないようにしておく。基部3は、ただ単に下降させただけでは、コイルスプリング7の付勢力が対抗するため、使用位置まで人手により押し下げた後、ロックレバー82を右方向に押し込み操作して、ロック部材をロック溝81に嵌入させる。これで、図5に示されるように使用位置に基部3がロックされ、電源コード37及び配水管38の施工を行うことで、使用に供することができる。
【0033】
また、図5の使用状態で、ロックレバー82を左方向に引き抜き操作してやれば、ロック部材がロック溝81から離脱する。すると、コイルスプリング7の付勢力が作用して、基部3は図6に示されるように高さHの清掃位置まで自動的に上昇する。さらに、基部3を人手で持ち上げれば、基部3は固定部から取り外すことができて、図4の状態に戻る。
【0034】
以上説明したように、本実施例の便座装置1では、(1)基部3を清掃位置まで上昇させた状態、(2)基部3を取り外した状態、(3)基部3だけでなく固定部2をも取り外して便器91上面には何もない状態、でそれぞれ清掃を行うことができる。(3)では便器上面全体をもれなく清掃することができ、また汚れの程度に応じて適宜(1)〜(3)のいずれかを選択して清掃を行うことができる。したがって、臭気の防止や清潔の維持の面で極めて効果的である。また、固定部2の施工取付は便器91上面のみから行えるため、極めて作業性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例の便座装置の取付状態を説明する図である。
【図2】図1の実施例を、後方の水先タンクの方向からみた斜視図である。
【図3】図1の実施例において、固定部を便器上面に着脱可能に固定する上面施工手段を説明する側面断面図であり、(A)は取付途中状態、(B)は取付終了状態をそれぞれ示している。
【図4】図1の実施例において、基部の取り付け直前の状態を説明する図である。
【図5】図1の実施例において、基部の使用位置への取り付け状態を説明する図である。
【図6】図1の実施例において、基部の清掃位置への上昇状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0036】
1:便座装置
2:固定部 21:固定プレート
3:基部 32:袖部 35:上側部材 36:下側部材
41:便座 42:便蓋
5:上面施工手段 51:取付孔 52:円筒形弾性変形部 53:ボルト
55:ナット 56:樹脂ワッシャ
61、62:ガイドピン(ガイド手段) 65、66:ガイド筒
7:コイルスプリング(付勢手段)
81:ロック溝 82:ロックレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の後部上面に固定される固定部と、前記固定部に昇降可能に設けられる基部と、前記基部に回動可能に設けられる便座と、を備える便座装置であって、
前記便器上面のみからの施工により前記固定部を着脱可能に固定する上面施工手段と、前記固定部に設けられて前記基部の昇降及び着脱を案内するガイド手段と、前記固定部と前記基部との間に配設されて前記基部を上向きに付勢する付勢手段と、前記基部が下降した所定の使用位置で前記基部を前記固定部に係止する係止手段と、を備えることを特徴とする便座装置。
【請求項2】
前記上面施工手段は、前記便器の上面に設けられた取付孔と、前記取付孔に上方から挿入される円筒形弾性変形部と、前記円筒形弾性変形部に上方から挿入されるとともに前記固定部を保持し下側にねじ部をもち上側に回転駆動部をもつボルトと、前記円筒形弾性変形部の下側に設けられて前記ボルトのねじ部が螺合されるナットとを用い、前記ボルトを一方向に回動して前記ナットを締め付けることにより円筒形弾性変形部を周方向に拡張して前記取付孔の周壁に圧接させ前記固定部を前記便器に固定し、前記ボルトを反対方向に回動して前記固定部を前記便器から取り外す手段である、請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
前記ガイド手段は、前記固定部に立設される複数本のガイドピンと、前記基部に設けられて各前記ガイドピンがそれぞれ貫挿するガイド筒と、からなる請求項1または2のいずれかに記載の便座装置。
【請求項4】
前記付勢手段は、いずれかの前記ガイドピンを取り巻くように配設された少なくとも1本のコイルスプリングである請求項3に記載の便座装置。
【請求項5】
前記係止手段は、前記ガイドピンの側周面に形成されたロック溝と、前記基部に設けられて前記使用位置で前記ロック溝に嵌入するロック部材と、前記ロック部材の嵌入及び離脱を操作するロックレバーと、からなる請求項3または4のいずれかに記載の便座装置。
【請求項6】
前記ガイドピンの前記側周面に向けて前記ロック部材を付勢するロック付勢手段をもつ、請求項5に記載の便座装置。
【請求項7】
前記ロック溝が形成された前記ガイドピンは、前記基部が上昇して所定の清掃位置に達したときに前記ロック部材が嵌入する清掃用ロック溝をもつ、請求項5または6のいずれかに記載の便座装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−228991(P2008−228991A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72861(P2007−72861)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】