便座装置
【課題】便座への通電時間を正確に計測し、快適かつ安全に便座に着座することができる便座装置を提供する。
【解決手段】便座400を暖める加熱手段450への通電を制御する制御手段90に、異なる複数の計測源からなる便座通電時間計測手段を備えたことにより、すべての計測源が同時に許容範囲外にずれる確率は、計測源が1つの場合よりも大幅に低くなるため、計測値の平均処理や比較処理等を行うことによって、計測の精度を向上させることが可能となり、便座400の温度制御を正確に行うことができる。
【解決手段】便座400を暖める加熱手段450への通電を制御する制御手段90に、異なる複数の計測源からなる便座通電時間計測手段を備えたことにより、すべての計測源が同時に許容範囲外にずれる確率は、計測源が1つの場合よりも大幅に低くなるため、計測値の平均処理や比較処理等を行うことによって、計測の精度を向上させることが可能となり、便座400の温度制御を正確に行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置における加熱手段の通電制御に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の局部を洗浄する便座装置の分野においては、人体に不快感を与えないようにするために、例えば、洗浄に用いる洗浄水を適切な温度に調整する加熱装置や人体との接触部の温度を適切な温度に調整する便座装置等様々な機能を有する装置が案出されている。なかでも、上記に示す便座装置によれば、使用者は冬場等気温が低い場合においても不快を感じることなく便座に着座することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載の便座装置においては、便座を暖める熱源と、人体検知手段と、熱源及び人体検知手段とを制御する制御手段を備えている。
【0004】
このような構成において、制御手段は、人体検知手段にて人体を検知すると便座を暖める熱源に複数の通電率にて一定時間電力を供給した後、複数の通電率よりも高い一定の通電率にて便座温度が所定時間内に着座可能温度に達するように制御する。それにより、便座部の温度が上昇し、使用者は快適に便座に着座することができる。
【特許文献1】特開2007−007018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来の便座装置においては、使用者が快適に便座に着座するためには、各々の通電率の通電時間を正確に計測し、次のステップの通電率に電力を切り替える必要がある。
【0006】
時間の計測がずれると便座部の温度が所定値を超えたり、所定値に達しない。特に最大電力で通電される時間が正確に計測されない場合、便座部の温度が過昇し、使用者がやけどを負ったり、サーモスタット等の安全装置が働いて停止し、便座が暖まらない等の課題があった。
【0007】
本発明の目的は、便座への通電時間を正確に計測し、快適かつ安全に便座に着座することができる便座装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の便座装置は、便座を暖める加熱手段への通電を制御する制御手段に、異なる複数の計測源からなる便座通電時間計測手段を備えたものである。
【0009】
これによって、計測源が複数あるため、すべての計測源が同時に許容範囲外にずれる確率は、計測源が1つの場合よりも大幅に低くなる。よって、計測値の平均処理や比較処理等を行うことによって、計測の精度を向上させることが可能となり、便座部の温度制御を正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、計測源を複数持つことにより、便座への通電時間を正確に計測し、快適かつ安全に便座を加熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の発明に係る便座装置は、便座を暖める加熱手段と、前記加熱手段への通電を制御する制御手段を備え、前記制御手段は異なる複数の計測源からなる便座通電時間計測手段を備えたものである。
【0012】
この便座装置においては、計測源が複数あるため、すべての計測源が同時に許容範囲外にずれる確率は、計測源が1つの場合よりも大幅に低くなる。よって、計測値の平均処理や比較処理等を行うことによって、計測の精度を向上させることが可能となり、便座部の温度制御を正確に行うことができる。
【0013】
第2の発明は、特に、第1の発明において、便座通電時間計測手段の計測値の少なくとも1つが規定時間を超過すると次の通電パターンに移行するとしたものである。
【0014】
これによって、複数の計測源から、最も通電時間が短くなるものを使用するため、通電時間が規定時間より長くなって、便座部の温度が使用者の設定した温度を超過することを防止することができる。よって使用者は、安全かつ快適に便座に着座することができる。
【0015】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、最大電力で通電する時間を計測し、計測値の少なくとも1つが規定時間を超過すると加熱手段への通電電力を低減するとしたものである。
【0016】
これによって、最大電力で通電する場合、規定の時間を超過しないように制限し、超過した場合は、通電率を下げることにより、便座部の温度の過昇温を防止することができる。さらに複数の計測源から、最も通電時間が短くなるものを使用するため、より確実に便座部の温度の過昇温を防止することができる。
【0017】
第4の発明は、特に、第1または第2の発明において、最大電力で通電する時間を計測し、計測値の少なくとも1つが規定時間を超過すると加熱手段への通電電力を遮断するとしたものである。
【0018】
これによって、規定時間を超過すると便座への通電電力を速やかに遮断し、さらに複数の計測源から、最も通電時間が短くなるものを使用するため、より確実に便座部の温度の過昇温を防止することができるので、さらに安全かつ快適な便座を提供することができる。
【0019】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、便座通電時間計測手段の計測源を、マイクロコンピュータのプログラムの実行速度を規定する発振子と、交流電圧の周期としたものである。
【0020】
上記構成においては、発振子のばらつきは、主に部品の製造工程で発生し、交流電圧の周期のばらつきは、主に電源事情によるものである。このように全くばらつきの要因の異なるものを計測源とすることで、同時に2つの計測源が許容範囲外にばらつく確率を大幅に低くすることができるので、さらに計測の精度を向上させることが可能となり、便座の温度制御をより正確に行うことができる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
<1>便座装置およびそれを備えるトイレ装置の外観
図1は本発明の第1の実施の形態に係る衛生洗浄装置およびそれを備えるトイレ装置を示す外観斜視図である。トイレ装置1000はトイレットルーム内に設置される。
【0023】
トイレ装置1000において、便器700には衛生洗浄装置100が取り付けられる。衛生洗浄装置100は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および蓋部500により構成される。蓋部500を除く衛生洗浄装置100の各構成要素が、後述の便座装置110を構成する。
【0024】
本体部200には、便座部400および蓋部500が開閉可能に取り付けられている。また、本体部200には、図示しない洗浄水供給機構が設けられるとともに、後述の制御部90(図3)が内蔵される。
【0025】
図1では、本体部200の正面上部に設けられる着座センサ610が示されている。この着座センサ610は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、着座センサ610は、人体から反射された赤外線を検出することにより便座部400上に使用者が存在することを検知する。
【0026】
さらに、図1では、本体部200の正面下部に設けられる便器ノズル40が便器700の内側に突出している状態が示されている。この便器ノズル40は、上述の洗浄水供給機構に接続されている。
【0027】
洗浄水供給機構は、図示しない水道配管に接続されている。これにより、洗浄水供給機構は、水道配管から供給される洗浄水を便器ノズル40に供給する。それにより、便器ノズル40から便器700の内面の広い範囲に洗浄水が噴出される(便器プレ洗浄)。または、便器ノズル40から便器700の内面の背面側に洗浄水が噴出される(便器後部洗浄)。
【0028】
また、洗浄水供給機構は、図示しないノズル部に接続されている。これにより、洗浄水供給機構は、水道配管から供給される洗浄水をノズル部に供給する。それにより、ノズル部から使用者の局部に洗浄水が噴出される。
【0029】
遠隔操作装置300には、複数のスイッチが設けられている。遠隔操作装置300は、例えば便座部400上に着座する使用者が操作可能な場所に取り付けられる。
【0030】
入室検知センサ600は、トイレットルームの入口等に取り付けられる。入室検知センサ600は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、入室検知センサ600は、人体から反射された赤外線を検出した場合にトイレットルーム内に使用者が入室したことを検知する。
【0031】
本体部200の制御部90(図3)は、遠隔操作装置300、入室検知センサ600および着座センサ610から送信される信号に基づいて、衛生洗浄装置100の各部の動作を制御する。
【0032】
<2>遠隔操作装置の構成
図2は、図1の遠隔操作装置300の正面図である。遠隔操作装置300は、コントローラ本体部301の下部にコントローラ蓋部302が開閉自在に設けられた構造を有する。
【0033】
図2(a)に示すように、コントローラ蓋部302が閉じられた状態で、コントローラ本体部301の上部には乾燥スイッチ320、強さ調整スイッチ322,323および位
置調整スイッチ325,326が設けられ、コントローラ蓋部302には停止スイッチ311、おしりスイッチ312およびビデスイッチ313が設けられている。
【0034】
使用者により、上記各スイッチが操作される。これにより、遠隔操作装置300から図1の本体部200に各スイッチに応じた所定の信号が無線送信される。本体部200の制御部90(図3)は、受信した信号に基づいて本体部200(図1)および便座部400(図1)の各構成部の動作を制御する。
【0035】
例えば、使用者がおしりスイッチ312またはビデスイッチ313を操作することにより、図示しないノズル部から使用者の局部に洗浄水が噴出される。また、使用者が停止スイッチ311を操作することにより、ノズル部から使用者の局部への洗浄水の噴出が停止される。
【0036】
使用者が乾燥スイッチ320を操作することにより、使用者の局部に本体部200に設けられた図示しない乾燥ユニットから温風が噴出される。また、使用者が強さ調整スイッチ322,323を操作することにより、使用者の局部に噴出される洗浄水の流量および圧力等が調整される。
【0037】
さらに、使用者が位置調整スイッチ325,326を操作することにより、図示しないおしりまたはビデノズルの位置が調整される。それにより、使用者の局部への洗浄水の噴出位置が調整される。
【0038】
図2(b)に、コントローラ蓋部302が開かれた状態の遠隔操作装置300の正面図が示されている。図2(b)に示すように、コントローラ蓋部302により覆われるコントローラ本体部301の下部には、上述の停止スイッチ311、おしりスイッチ312およびビデスイッチ313に加えて、自動開閉スイッチ331、水温調整スイッチ332、便座温度調整スイッチ333、除菌スイッチ335および便器洗浄スイッチ336が設けられている。
【0039】
これらのスイッチが操作される場合にも、遠隔操作装置300から本体部200に各スイッチに応じた所定の信号が無線送信される。これにより、本体部200の制御部90は、受信した信号に基づいて本体部200および便座部400の各構成部の動作を制御する。
【0040】
自動開閉スイッチ331はつまみにより構成されている。使用者が自動開閉スイッチ331のつまみを操作することにより、蓋部500(図1)の開閉動作が設定される。すなわち、自動開閉スイッチ331のつまみがオンの位置にある場合、使用者のトイレットルームへの入室に応じて蓋部500が開閉される。
【0041】
使用者が水温調整スイッチ332を操作することにより、ノズル部20から使用者の局部に噴出される洗浄水の温度が調整される。使用者が便座温度調整スイッチ333を操作することにより、便座部400の温度が調整される。
【0042】
また、使用者が除菌スイッチ335を操作することにより、本体部200の洗浄水供給機構に銀イオンを含む洗浄水が流れ、除菌動作が行われる。
【0043】
自動開閉スイッチ331と同様に、便器洗浄スイッチ336はつまみにより構成されている。使用者が便器洗浄スイッチ336のつまみを操作することにより、便器ノズル40による便器プレ洗浄および便器後部洗浄の動作が設定される。
【0044】
すなわち、便器洗浄スイッチ336のつまみがオンの位置にある場合、使用者のトイレットルームへの入室に応じて便器ノズル40から便器700内部の広い範囲に洗浄水が噴出される。また、使用者の便座部400への着座中に便器ノズル40から便器700の内面の背面側に洗浄水が噴出される。
【0045】
<3>便座装置
(3−a)便座装置の構成
図3は、便座装置110の構成を示す模式図である。上述のように、便座装置110は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および入室検知センサ600を備える。
【0046】
図3に示すように、本体部200は、制御部90、温度測定部401、ヒータ駆動部402、便座温調ランプRA1および着座センサ610を含む。
【0047】
また、便座部400は便座ヒータ450およびサーミスタ401aを備える。
【0048】
制御部90は、例えばマイクロコンピュータからなり、使用者の入室および便座部400の温度等を判定する判定部、タイマ機能を有する計時部、種々の情報を記憶する記憶部、ならびに、ヒータ駆動部402の動作を制御するための通電率切替回路等を含む。
【0049】
本体部200の温度測定部401は、便座部400のサーミスタ401aに接続されている。これにより、温度測定部401は、サーミスタ401aから出力される信号に基づいて便座部400の温度を測定する。以下、サーミスタ401aを通じて温度測定部401により測定される便座部400の温度を測定温度値と称する。
【0050】
また、本体部200のヒータ駆動部402は、便座部400の便座ヒータ450に接続されている。これにより、ヒータ駆動部402は便座ヒータ450を駆動する。
【0051】
本実施の形態において、便座装置110は次のように動作する。初期設定時では、制御部90がヒータ駆動部402を制御することにより、便座部400が例えば約18℃となるように温度調整される。このときの温度を待機温度と称する。 ここで、使用者が遠隔操作装置300の便座温度調整スイッチ333を操作することにより、便座設定温度が制御部90に送信される。制御部90は、遠隔操作装置300から受信した便座設定温度を記憶部に記憶する。
【0052】
使用者がトイレットルームに入室すると、入室検知センサ600が使用者の入室を検知する。それにより、使用者の入室検知信号が制御部90に送信される。
【0053】
次に、通常の使用時の動作について説明する。制御部90の判定部は、入室検知センサ600からの入室検知信号により使用者のトイレットルームへの入室を検知する。そこで、判定部は、便座部400の測定温度値、および記憶部に記憶された便座設定温度に基づいて便座ヒータ450の駆動に関する特定のヒータ制御パターンを選択する。
【0054】
通電率切替回路は、選択されたヒータ制御パターンおよび計時部により得られる時間情報に基づいてヒータ駆動部402の動作を制御する。
【0055】
それにより、ヒータ駆動部402により便座ヒータ450が駆動され、便座部400の温度が便座設定温度へと瞬時に上昇される。
【0056】
(3−b)便座部の第1の例
図4は、便座部400の分解斜視図である。図5(a)は、第1の例の便座部400の便座ヒータ450の平面図、図5(b)は、図5(a)の領域C72の拡大図である。図6は、第1の例の便座部400の平面図である。図7は、図6の便座部400のC73−C73断面図である。
【0057】
図4に示すように、便座部400は、主としてアルミニウムにより形成された略楕円形状の上部便座ケーシング410、略馬蹄形状の便座ヒータ450および合成樹脂により形成された略楕円形状の下部便座ケーシング420を備える。
【0058】
以下、着座した使用者から見て前方側を便座部400の前部とし、着座した使用者から見て後方側を便座部400の後部とする。
【0059】
図5(a)および図6に示すように、便座ヒータ450は、前部の一部が切り取られた略馬蹄状に形成される。なお、便座ヒータ450は、略楕円形状を有してもよい。便座ヒータ450は、例えばアルミニウムからなる金属箔451,453および線状ヒータ460を含む。
【0060】
線状ヒータ460は、シート中央部SE3からシート一方端部SE1までの領域およびシート中央部SE3からシート他方端部SE2までの領域において上部便座ケーシング410の形状に合わせて蛇行形状に配設される。
【0061】
具体的には、線状ヒータ460は、左右6列程度のU字状部を有するように形成される。これらのU字状部は、着座した使用者の大腿部の方向にほぼ沿って並行に配置される。各U字状部における線状ヒータ460の間隔は5mm程度である。
【0062】
線状ヒータ460のヒータ始端部460aおよびヒータ終端部460bは、便座部400の後部の一方側から引き出されるリード線470にそれぞれ接続される。
【0063】
さらに、図5(b)に示すように、蛇行形状の線状ヒータ460の経路中に熱応力緩衝部となる複数の折曲部CUが設けられる。
【0064】
図7に示すように、上部便座ケーシング410の外側の側辺に沿った領域G1における線状ヒータ460の間隔ds1および内側の側辺に沿った領域G3における線状ヒータ460の間隔ds3は、上部便座ケーシング410の中央部の領域G2における線状ヒータ460の間隔ds2よりも小さく設定される。それにより、上部便座ケーシング410の外側の側辺に沿った領域G1および内側の側辺に沿った領域G3では、中央部の領域G2に比べて線状ヒータ460が密に配列される。
【0065】
(3−c)便座部の第2の例
図8(a)は、第2の例の便座部400の便座ヒータ450の平面図、図8(b)は、図8(a)の領域C77の拡大図、図9は、第2の例の便座部400の平面図である。
【0066】
図8(a)および図9に示すように、線状ヒータ460は、シート中央部SE3からシート一方端部SE1までの領域およびシート中央部SE3からシート他方端部SE2までの領域において上部便座ケーシング410の形状に合わせて左右方向に蛇行する蛇行形状に配設される。本例では、線状ヒータ460は、蛇行形状の曲げ部が上部便座ケーシング410の外側の側辺および内側の側辺の近傍に位置するように配置される。
【0067】
具体的には、線状ヒータ460が便座ヒータ450の後部の一方側からシート一方端部SE1の近傍まで左右に蛇行しながら延びることにより図8(b)の第1系列Aの蛇行形
状が形成される。また、線状ヒータ460がシート一方端部SE1の近傍から左右に蛇行しながらシート中央部SE3の近傍を経由してシート他方端部SE2の近傍まで延びることにより第2系列Bの蛇行形状が形成される。さらに、線状ヒータ460がシート他方端部SE2の近傍からシート中央部SE3の近傍を経由して便座ヒータ450の後部の一方側まで延びることにより第1系列Aの蛇行形状が形成される。
【0068】
さらに、図8(b)に示すように、第1系列Aの蛇行形状の線状ヒータ460と第2系列Bの蛇行形状の線状ヒータ460とはほぼ平行に配列される。第1系列Aおよび第2系列Bの蛇行形状の線状ヒータ460はヒータ始端部460aからヒータ終端部460bまで連続している。
【0069】
線状ヒータ460のヒータ始端部460aおよびヒータ終端部460bは、便座部400の後部の一方側から引き出されるリード線470にそれぞれ接続される。
【0070】
本例では、線状ヒータ460は、便座ヒータ450の内側の側辺の近傍および外側の側辺の近傍に曲げ部が位置する蛇行形状を有する。それにより、曲げ部間の間隔が短い。したがって、熱膨張および熱収縮に起因する長さ変化が小さくなるので、たとえ線状ヒータ460が伸縮しても曲げ部で伸縮による歪が吸収および緩衝される。その結果、線状ヒータ460の熱膨張および熱収縮に起因するストレスが小さくなり、長期間の使用での破損を抑制することができる。
【0071】
また、線状ヒータ460の熱的伸縮が小さいので、金属箔451,453に対する密着性を長期間良好に維持することができる。それにより、便座ヒータ450の加温を効率的にかつ確実に行うことができる。
【0072】
また、図8(b)に示すように、曲げ部の長さLa,Lbおよび曲げ部間の間隔Sは、任意に調整することができる。それにより、便座ヒータ450の加熱分布を調整することができる。
【0073】
例えば、便座ヒータ450の外側および内側の側辺近傍の加熱密度が便座ヒータ450の中央部の加熱密度よりも高くなるように、曲げ部の長さLa,Lbおよび曲げ部間の間隔Sを調整する。それにより、便座ヒータ450の全領域において均等な暖房温度を維持することができる。
【0074】
また、本例では、第1系列Aの蛇行形状の線状ヒータ460での電流の向きが第1系列Bの蛇行形状の線状ヒータ460での電流の向きと逆になる。それにより、線状ヒータ460から発生する電磁波が互いが打ち消される。その結果、ノイズの発生が防止される。
【0075】
(3−d)便座部の第3の例
図10(a)は、第3の例の便座部400の便座ヒータ450の平面図、図10(b)は、図10(a)の一部の拡大断面図である。
【0076】
図10(a)に示すように、便座ヒータ450の後部の両側に線状ヒータ460が高い密度で蛇行する検温部450Tがそれぞれ形成される。図10(b)に示すように、一方の検温部450Tには、バイメタル等を用いた復帰型のサーモスタット450Qが設けられる。他方の検温部450Tには、温度ヒューズ等を用いた非復帰型のサーモスタット450Qが設けられる。
【0077】
例えば、便座ヒータ450が想定外の異常温度になると、復帰型のサーモスタット450Qが開くことにより、一時的に通電が停止される。また、復帰型のサーモスタット45
0Qが故障等を起こすことにより、便座ヒータ450が危険温度に達しようとすると、非復帰型のサーモスタット450Qが開くことにより、電力の供給が遮断される。
【0078】
ここで、温度過昇防止のためのサーモスタット450Qまたは温度ヒューズの動作温度設定は、実際に遮断したい温度よりも低くしておくことが望ましい。本実施の形態で説明している構成の便座は昇温速度が速い。したがって、安全装置(例えば、サーモスタット450Qまたは温度ヒューズ等)の動作速度によっては、実際に通電が停止されたタイミングで便座表面が予め設定された温度よりもさらに高い温度になってしまっている可能性があるためである。人体の皮膚のうち、普段露出していない臀部や大腿部の皮膚は他の部分の皮膚に比べて敏感である。これにより、上記のような、より高い安全設計が重要となる。
【0079】
(3−e)便座部の第4の例
図11は、第4の例の便座部400の便座ヒータ450の平面図である。
【0080】
図11に示すように、シート中央部SE3から左シート一方端部SE1までの領域に配列される線状ヒータ460と、シート中央部SE3からシート他方端部SE2までの領域に配列される線状ヒータ460とが互いに分離されている。
【0081】
一方の線状ヒータ460のヒータ始端部460aおよびヒータ終端部460bは、便座部400の後部の一方側から引き出されるリード線470にそれぞれ接続される。他方の線状ヒータ460のヒータ始端部460cおよびヒータ終端部460dは、便座部400の後部の他方側から引き出されるリード線470にそれぞれ接続される。
【0082】
(3−f)便座ヒータの構造の一例
図12は、上部便座ケーシング410に取り付けられる便座ヒータ450の構造の一例を示す断面図である。
【0083】
図12に示すように、上部便座ケーシング410は、例えば厚さ1mmのアルミニウム板413により形成される。アルミニウム板413の上面には、アルマイト層412および表面化粧層411が形成される。表面化粧層411の上面が着座面410Uとなる。また、アルミニウム板413の下面には、塗装膜414が形成される。塗装膜414は、例えば膜厚40μmおよび150℃の耐熱性を有するポリエステル粉体塗装膜である。
【0084】
なお、アルミニウム板413の代わりに、銅板、ステンレス板、アルミニウムめっき鋼板および亜鉛アルミニウムめっき鋼板のうちいずれかまたは複数を用いてもよい。
【0085】
塗装膜414の下面に粘着層452aを介して例えばアルミニウムからなる金属箔451が貼着される。金属箔451の膜厚は、例えば50μmである。
【0086】
線状ヒータ460は、断面円形の発熱線463a、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462により構成される。断面円形の発熱線463aの外周面がエナメル層463bおよび絶縁被覆層462で順に被覆される。発熱線463aおよびエナメル層463bによりエナメル線463が構成される。
【0087】
発熱線463aは、例えば0.16〜0.25mmの直径を有し、銅または銅合金からなる。本例では、発熱線463aとして、直径0.176mmの4%Ag−Cu合金からなる高抗張力型ヒータ線が用いられる。抵抗値は0.833Ω/mである。
【0088】
エナメル層463bは、例えば180〜300℃の耐熱性を有するポリエステルイミド
(PEI)からなる。エナメル層463bの膜厚は、20μm以下であり、本例では12〜13μmである。このようなエナメル線463は、エナメル層463bの膜厚が極薄い0.01〜0.02mm程度であっても、電気用品技術基準である1000Vで1分間以上の電気絶縁耐圧性能を十分確保することができる。また、エナメル層463bの材料として、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)を用いてもよい。
【0089】
絶縁被覆層462は、例えば260℃の耐熱性を有するパーフロロアルコキシ混合物(以下PFAと称する)等のフッ素樹脂からなる。絶縁被覆層462の厚みは、例えば0.1〜0.15mmである。PFAからなる絶縁被覆層462の形成は、押出し加工により行うことができる。この場合、絶縁被覆層462の厚みが0.05〜0.1mmと薄くても、雷サージにも耐える電気絶縁耐圧性能を確保することができる。
【0090】
なお、絶縁被覆層462の材料として、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)を用いてもよい。
【0091】
線状ヒータ460の外径は、例えば0.46〜0.50mmである。線状ヒータ460の電力密度は、例えば0.95W/cm2である。
【0092】
線状ヒータ460は、粘着層452bおよび例えばアルミニウムからなる金属箔453で覆うように金属箔451に取り付けられる。金属箔453の膜厚は、例えば50μmである。
【0093】
このように、単一のエナメル線463上に絶縁被覆層462を形成することにより二重の絶縁構造を確保することができる。
【0094】
また、絶縁被覆層462は比較的薄くても十分な絶縁性が得られる。したがって、絶縁被覆層462の厚さを薄くすることができる。上記の例では、線状ヒータ460の樹脂層(エナメル層463bおよび絶縁被覆層462)の厚さは、0.12mm程度であり、極めて薄い。この場合、発熱線463aから金属箔451および便座ケーシング410への熱伝導を極めて俊敏に行うことができる。
【0095】
ちなみに従来の便座装置においては、線状ヒータのシリコーンゴムまたは塩化ビニール等からなる被覆チューブの厚さは、上記の例の約10倍の1mm程度ある。このような被覆チューブの熱伝導速度は桁違いに遅く、便座の昇温速度を速くすることはできなかった。
【0096】
従来の便座装置において便座の昇温速度を無理やり速くするためにヒータ線に大きい電力を供給した場合、断熱状態でヒータ線の温度を高くした場合と同様に、被覆チューブが溶融および焼損する。そのため、このような方法による便座の昇温は実用できなかった。
【0097】
一方、本例のように耐熱性能に優れたエナメル線463をヒータ線として使用した場合、十分短時間で便座を昇温でき、かつ電気絶縁性および安全性を確保できる。したがって、本例の構造は、種々の便座装置に有効に実用することができる。
【0098】
また、本例の構造では、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462等からなる樹脂層を0.1〜0.4mm程度の薄い厚さで形成できる。それにより、発熱線463aおよび樹脂層の絶対温度が低い温度に維持された状態で、便座を急速に昇温させることができる。その結果、高価な耐熱絶縁材料でなく比較的安価な絶縁材料を用いることができる。
【0099】
また、本例においては、線状ヒータ460の熱を便座ケーシング410に効率よく伝達
するために、線状ヒータ460をアルミ箔451,452で挟んでいる。ここで、本例の線状ヒータ460においては、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462を薄くできるので、線状ヒータ460の外径を細く(約φ0.2〜φ0.4)できる。この場合、アルミ箔451とアルミ箔452とを貼り合わせる際に、アルミ箔451とアルミ箔452との間の空気層を小さくすることができるとともに、アルミ箔451,452のしわを少なくすることができる。それにより、エナメル線463の局所高熱が抑制され、エナメル線463の断線および電気絶縁層(エナメル層463bおよび絶縁被覆層462)の損傷が防止される。その結果、便座装置110の長寿命化が可能になる。
【0100】
また、エナメル線463を細くできるので、便座ヒータ450の重量を低減でき、便座開閉トルクを小さくすることができる。それにより、便座開閉用の電動開閉ユニットを小型化でき、便座装置110の小型化が可能となる。
【0101】
(3−g)便座ヒータの構造の他の例
図13は、上部便座ケーシング410に取り付けられる便座ヒータ450の構造の他の例を示す断面図である。
【0102】
図13の例では、複数のエナメル線463が撚り合わされ、絶縁被覆層462で被覆されている。各エナメル線463は、例えば直径0.1mmの発熱線463aおよび膜厚10μmのエナメル層463bにより構成される。
【0103】
このように、複数のエナメル線463の束の周囲を取り囲むように絶縁被覆層462を形成することにより二重の絶縁構造を確保することができる。
【0104】
なお、図13の例では、7本のエナメル線463が撚り合わされているが、エナメル線463の数は7本に限定されない。例えば、2本のエナメル線463およびエナメル層463bにより被覆されていない1本の発熱線463a(以下、単体発熱線463aと称する。)を撚り合わせてもよい。
【0105】
この構成においては、例えば、局所高熱等により上記2本のエナメル線463のうちの一方のエナメル層463bが絶縁破壊された場合、そのエナメル線463の発熱線463aと、上記の単体発熱線463aとが電気的に接続される。したがって、この構成によれば、単体発熱線463aを絶縁破壊検知線として用いることにより、エナメル層463bの絶縁破壊を検知することができる。それにより、2本のエナメル線463のうちいずれかのエナメル線463のエナメル層463bが絶縁破壊された場合には、すべての発熱線463aへの通電を遮断することができる。
【0106】
つまり、複数本の撚り線のうち少なくとも1本をエナメル層463bのない非絶縁電線とすることにより、局所高熱等によりいずれかのエナメル線463のエナメル層463bが絶縁破壊された場合にも、その絶縁破壊を迅速に検知することができる。それにより、安全に発熱線463aへの通電を遮断することができる。
【0107】
なお、上記においては、複数のエナメル線463を撚り合わせて用いた場合について説明したが、複数のエナメル線463を単に束ねて用いてもよい。
【0108】
また、複数本の発熱線463aのうちの所定数の発熱線463aに流れる電流の向きと残りの発熱線463aに流れる電流の向きとを逆にしてもよい。この場合、一方向に流れる電流により発生する磁界と他方向に流れる電流により発生する磁界とが打ち消し合う。それにより、漏洩磁界の発生およびノイズの発生を抑制することができる。
【0109】
(3−h)便座ヒータの構造のさらに他の例
図14は、上部便座ケーシング410に取り付けられる便座ヒータ450の構造のさらに他の例を示す断面図である。
【0110】
図14の例では、金属箔451と粘着層452bとの間に耐熱絶縁層455が形成される。また、粘着層452bと金属箔453との間に耐熱絶縁層456が形成される。耐熱絶縁層455は、例えば150℃の耐熱性を有する膜厚12〜25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)からなる。同様に、耐熱絶縁層455は、例えば150℃の耐熱性を有する膜厚12〜25μmのPETからなる。
【0111】
このように、単一のエナメル線463上に絶縁被覆層462を形成するとともに耐熱絶縁層455,456を形成することにより三重絶縁構造を確保することができる。
【0112】
なお、図14の便座ヒータ450において、単一のエナメル線463の代わりに複数のエナメル線463の束を用いてもよい。
【0113】
(3−i)発熱線の被覆厚さ
図15は、発熱線463aの被覆厚さと便座部400の各部の温度上昇との関係の測定結果を示す図である。図15において、横軸は発熱線463aの被覆厚さを表し、縦軸は通電開始から6秒後の温度上昇値[K]を表す。
【0114】
測定には、図14の構造を有する便座ヒータ450を用いた。発熱線463aの被覆厚さは、発熱線463aとアルミニウム板413との間の厚さであり、本例では、エナメル層463b、耐熱絶縁層455、粘着層452aおよび塗装膜414の合計の厚さである。
【0115】
ここでは、6秒で約10Kの便座部400の着座面410Uの温度上昇を実用昇温性能とし、6秒で約13Kの温度上昇を目標昇温性能とした。
【0116】
図15において、丸印は便座部400の着座面410Uの温度上昇値であり、三角印はアルミニウムからなる金属箔451の温度上昇値であり、四角印は絶縁被覆層462の温度上昇値である。
【0117】
図15の結果から、発熱線463aの被覆厚さが0.4mm以下の場合には、実用昇温性能が得られることがわかる。また、発熱線463aの被覆厚さが0.2mm以下の場合には、目標昇温性能が得られることがわかる。したがって、発熱線463aの被覆厚さは、0.4mm以下であることが好ましく、0.2mm以下であることがより好ましい。
【0118】
(3−j)絶縁被覆層の材料
次に、図14の構造を有する3種類の便座ヒータ450に交流100Vの電圧を印加して発熱線463aの温度を測定した。
【0119】
第1の便座ヒータ450では、絶縁被覆層462の材料として膜厚100μmおよび耐熱温度260℃のPFAを用い、耐熱絶縁層455,456の材料としてそれぞれ膜厚25μmおよび耐熱温度150℃のPETを用いた。第2の便座ヒータ450では、絶縁被覆層462の材料として膜厚35〜40μmおよび耐熱温度350℃のPI巻被覆を用い、耐熱絶縁層455,456の材料としてそれぞれ膜厚25μmおよび耐熱温度150℃のPETを用いた。第3の便座ヒータ450では、絶縁被覆層462の材料として膜厚35〜40μmおよび耐熱温度350℃のPI巻被覆を用い、耐熱絶縁層455,456の材料としてそれぞれ膜厚3〜6μmおよび耐熱温度90℃のアクリル樹脂を用いた。
【0120】
第1の便座ヒータ450については、発熱線463aの温度がPFAからなる絶縁被覆層462の耐熱温度260℃よりも低い162.3℃となった。第2の便座ヒータ450については、発熱線463aの温度がPIからなる絶縁被覆層462の耐熱温度350℃よりも低い155.4℃となった。第3の便座ヒータ450については、発熱線463aの温度がPIからなる絶縁被覆層462の耐熱温度350℃よりも低い125.7℃となった。
【0121】
これらの結果から、絶縁被覆層462の材料として、PFAだけでなく、PI等の他の樹脂を用いることができることがわかった。
【0122】
(3−k)線状ヒータ460とリード線470との接続方法
図16は、線状ヒータ460とリード線470との接続方法を示す図である。図17は、線状ヒータ460とリード線470との接続部の断面図である。図18は、熱カシメの方法を示す図である。
【0123】
図16および図17に示すように、リード線470の芯線は端子471に接続されている。端子471がU字形状に折曲され、線状ヒータ460の屈曲された先端部が端子471のU字形状の折曲部内に挿入される。
【0124】
この状態で、図18に示すように、端子471のU字形状の折曲部を一対の電極EL1,EL2で挟み込む。一対の電極EL1,EL2で端子471のU字形状の折曲部を押圧しつつトランスTSから電極EL1,EL2を通して端子471および線状ヒータ460に電流を供給する。それにより、図17に示すように、絶縁被覆層462および線状ヒータ460のエナメル層463bが溶融する。その結果、線状ヒータ460の発熱線463aが接触点463Cで端子471に接触する。
【0125】
図16に示すように、リード線470の端子471と線状ヒータ460との接続部475には例えば厚さ12μmのポリイミド薄膜からなる耐熱シート480が2〜3回巻き付けられる。さらに、リード線470の端子471と線状ヒータ460との接続部475は、シリコーン樹脂で被覆され、図5〜図14の金属箔451,453間に挟み込まれる。
【0126】
このように、線状ヒータ460の発熱線463aの熱が金属箔451,453およびリード線470の端子471に伝導する。それにより、発熱線463aの局部過熱および断線が防止され、便座ヒータ450の均熱性が確保される。
【0127】
また、線状ヒータ460の発熱線463aとリード線470の端子471との接続部475が耐熱シート480およびシリコーン樹脂の二重絶縁構造を有する。この場合、接続部475の熱が耐熱シート480およびシリコーン樹脂を通して便座ヒータ450の金属箔451,453に伝導する。それにより、十分な絶縁性を確保しつつ発熱線463aの局部過熱および断線が防止される。
【0128】
さらに、線状ヒータ460の発熱線463aとリード線470の端子471とが熱カシメにより接続されるので、薄く確実な電気的接続が実現される。また、発熱線463aの浮き上がりが防止されるので、発熱線463aの局部過熱および断線が防止される。
【0129】
なお、便座部400の安全性確保のために、便座装置110には2つの安全回路が内蔵されている。1つの安全回路は、便座ヒータ450の一方のリード線470とプリント基板230内部の便座ヒータ絶縁破壊検知回路との間に接続され、他の1つの安全回路は、便座ヒータ450の両方のリード線470と便座ヒータ断線検出回路との間に接続されて
いる。いずれの安全回路も便座ヒータ402に異常が発生したときに使用者の感電を防止するために用いるものである。
【0130】
便座ヒータ絶縁破壊検知回路は、便座ヒータ450が異常発熱した際の絶縁被覆層462溶融時に便座ヒータ450と金属箔451の間に電流が流れることを検出するものである。また、便座ヒータ断線検出回路は、便座ヒータ450両端に発生する電圧波形が便座ヒータ450断線時には発生しなくなることを検出するものである。ヒータ駆動部402は、2つの安全回路の両方が正常状態を検出しているときにのみ便座ヒータ450に通電を行う。
【0131】
(3−l)便座ヒータの動作
次に、便座ヒータ450の動作について説明する。便座ヒータ450のヒータ始端部460aとヒータ終端部460bとの間に一定の電圧が印加されると、内部の発熱線463aを電流が流れ、この発熱線463aが発熱する。このとき、発生した熱は、発熱線463aからエナメル層463bおよび金属箔451,453を通って上部便座ケーシング410の着座面410Uに伝導する。
【0132】
線状ヒータ460は、絶縁被覆層462が260℃程度の耐熱性を有するPFAにより形成されるため、絶縁被覆層462の厚みが例えば0.1〜0.15mmと薄くても、発熱線463aの100〜150℃への急速昇温時にもエナメル層463bが破壊されることが防止される。したがって、線状ヒータ460から着座面410Uへの熱伝導を迅速に進行させることにより、着座面410Uを急速に昇温させることができる。
【0133】
この場合、線状ヒータ460への通電開始から所定の最適温度に到達するのは5〜6秒と短時間であり、例えば、使用者がトイレットルームに入室して着座面410Uに着座するまでに要する7〜8秒より短時間である。したがって、使用者がトイレットルームに入室したことを入室検知センサ600により検知されると同時に線状ヒータ460に通電を開始しても、使用者が着座するまでには着座面410Uを十分に最適温度に到達させることができる。
【0134】
さらに、図7の着座面410Uの内側の領域G3および外側の領域G1は、中央部の領域G2に比べて放熱性が高い。本実施の形態では、内側の領域G3および外側の領域G1では、中央部の領域G2に比べて線状ヒータ460が密に配列される。したがって、使用者が着座面410Uに着座した瞬間に温度むらおよび冷感を感じることがない。
【0135】
一方、線状ヒータ460は、全長10m程度と長く、発熱線463aの急速昇温に伴って急速な膨張が発生し、結果として長さ方向に伸張する。また、通電が停止された場合は、発熱線463aの温度が低下し、収縮により元の長さに戻る。つまり、発熱線463aには熱膨張および熱収縮による熱応力歪が反復して形成される。
【0136】
線状ヒータ460と金属箔451,453との密着が弱く、または線状ヒータ460と着座面410Uとの間に隙間が形成された場合、熱応力歪全体がそれらのうちの最も動きやすい箇所に集中する。その結果、線状ヒータ460に比較的強い屈伸運動が発生し、その応力疲労の蓄積により発熱線463aの破断といった線状ヒータ460の破損が発生する。
【0137】
本例では、線状ヒータ460に熱応力緩衝部として複数の折曲部が形成されるので、これらの折曲部が全体の熱応力歪を細かく分散させるとともに、折曲部が熱応力歪を吸収する作用をも果たす。したがって、折曲部での熱応力は極めて小さく、結果として微小な屈伸の発生に留まる。その結果、発熱線463aの破断という事態には至らず、線状ヒータ
460の長寿命化および耐久性が向上する。
【0138】
なお、比較的放熱の多い着座面410Uの内側の領域G3および外側の領域G1では、中央部の領域G2に比べて線状ヒータ460の間隔を大きくし、折曲部の数を少なくてもよい。
【0139】
上記のように、線状ヒータ460の全長はほぼ10mと長く、かつ線状ヒータ460には折曲部が形成される。そのため、着座面410Uへの線状ヒータ460の装着時に、これらの線状ヒータ460の配列を維持および固定化する必要がある。線状ヒータ460を金属箔451,453で挟持した状態で線状ヒータ460を金属箔451,453に密着させることによりユニット化された便座ヒータ450が構成される。したがって、線状ヒータ460の配列を強固に維持した状態で線状ヒータ460を着座面410Uに接着することができる。
【0140】
また、金属箔451,453により線状ヒータ460が挟持されるように構成されるので、金属箔451,453により均等に熱分散が行われる。それにより、線状ヒータ460が高温化することを防止することができる。また、着座面410Uが均熱化されるとともに、便座ヒータ450の破損が防止される。
【0141】
(3−m)便座装置の通電シーケンス
便座ヒータ450の駆動の制御は、便座ヒータ450を駆動する電力を大きく3つに変化させることにより行う。
【0142】
例えば、便座部400を第1の温度勾配で昇温させる場合、図3のヒータ駆動部402は約1200Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(1200W駆動)。
【0143】
前述のように、便座ヒータ450の抵抗値は0.833Ω/mであり、全長10mである。したがって、便座ヒータ450の抵抗値は8.33Ωとなる。この抵抗値を有する便座ヒータ450に交流100Vが印加されると、(100V×100V)÷8.33Ω=1200Wの電力が発生する。すなわち、便座ヒータ450に交流電源の全周期に渡って電流を流すことにより、1200Wの電力が発生する。
【0144】
また、便座部400を第1の温度勾配よりもやや緩やかな第2の温度勾配で昇温させる場合、ヒータ駆動部402は約600Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(600W駆動)。さらに、便座部400の温度を一定に保つ場合、ヒータ駆動部402は約50Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(低電力駆動)。なお、低電力駆動とは、1200W駆動および600W駆動に比べて十分に低い電力(例えば、0W〜50Wの範囲内の電力)により便座ヒータ450を駆動することをいう。
【0145】
1200W駆動、600W駆動および低電力駆動の切替えは、制御部90の通電率切替回路が、ヒータ駆動部402から便座ヒータ450への通電を制御することにより行われる。
【0146】
ヒータ駆動部402には図示しない電源回路から交流電流が供給されている。そこで、ヒータ駆動部402は、通電率切替回路から与えられる通電制御信号に基づいて供給された交流電流を便座ヒータ450に流す。
【0147】
図19は、便座ヒータ450の駆動例および便座部400の表面温度の変化を示す図である。
【0148】
図19においては、便座部400の表面温度と時間との関係を示すグラフと、便座ヒータ450を駆動する際の通電率と時間との関係を示すグラフとが示されている。これら2つのグラフの横軸は共通の時間軸である。
【0149】
本例では、使用者が予め暖房機能をオンし、便座設定温度を高く(38℃)設定した場合を想定する。
【0150】
冬季等室温が待機温度である18℃よりも低い場合、制御部90(図3)は、便座部400の温度を18℃となるように温度調整する。このように、制御部90は、入室検知センサ600により使用者の入室が検知されるまでの待機期間D1の間、便座部400の表面温度が18℃で一定となるように、便座ヒータ450の低電力駆動を行う。この待機温度を調整するための便座ヒータ450への低電力駆動の制御はサーミスタ401aで検知する温度測定部401による便座部400の測定温度値に基づいて行われる。
【0151】
次に、制御部90は、時刻t1で入室検知センサ600により使用者の入室が検知された場合、突入電流低減期間D2の間、600W駆動を行う。なお、この600W駆動は、突入電流を十分に低減するために行う。この場合、便座部400の表面温度はやや緩やかな第2の温度勾配で上昇される。
【0152】
その後、制御部90は、突入電流低減期間D2の経過後の時刻t2で、便座ヒータ450の1200W駆動を開始し、第1の昇温期間D3の間便座ヒータ450の1200W駆動を継続する。この場合、便座部400の表面温度は上述の第1の温度勾配で上昇される。
【0153】
第1の温度勾配は非常に急激な上昇であるため、便座部400に設置したサーミスタ401aの温度検知に基づく制御では対応できないため、第1の昇温期間D3は予め実験に基づいて設定した時間を制御部90に記憶させ、設定した第1の昇温期間D3を正確に計測して便座ヒータ450に通電する時間制御による駆動を行う。特に、通電時間は秒以下のレベルで正確に制御することが必要であり、後述の(3−n)便座装置の通電時間計測手段で詳細を記述する。
【0154】
ここで、便座部400の表面温度は急激に上昇される。便座ヒータ450の1200W駆動は、便座部400の表面温度が予め設定した所定温度(例えば30℃)に達するまで行われる。もちろん、この所定温度は暖房温度として設定された温度であってもよいが、この所定温度は暖房温度にまで十分に上昇した温度でなく、それよりも低くても、使用者が着座した際に冷たいという不快感情を生じない最低限界の温度(限界温度)であればよい。この限界温度は、発明者らの実施した被験者実験により約29℃であることがわかっている。
【0155】
このように、第1の昇温期間D3においては、便座部400の表面温度が1200W駆動により迅速に限界温度まで上昇される。それにより、使用者は便座部400を冷たいと感じることなく便座部400に着座することができる。
【0156】
また、上述のように、便座部400の表面温度を急激に上昇させると、その温度変化にオーバーシュートが生じる。しかしながら、本例では、便座部400の表面温度が所定温度に達したときに便座ヒータ450の1200W駆動を600W駆動に切替える。したがって、便座部400の表面温度の変化がオーバーシュートした場合でも、その表面温度は便座設定温度を超えない。その結果、使用者が着座時に便座部400を熱いと感じることが防止される。
【0157】
続いて、制御部90は、第1の昇温期間D3の経過後の時刻t3で、便座ヒータ450の600W駆動を開始し、第2の昇温期間D4の間便座ヒータ450の600W駆動を継続する。この場合、便座部400の表面温度は上述の第2の温度勾配で上昇される。
【0158】
便座ヒータ450の600W駆動は、便座部400の表面温度が便座設定温度(38℃)に達するまで行われる。
【0159】
第2の昇温期間D4の便座ヒータ450の駆動も、前述の第1の昇温期間D3と同様に予め設定した時間を通電する時間制御で行う。
【0160】
第2の温度勾配は第1の温度勾配よりも緩やかである。これにより、便座部400の表面温度の変化に大きなオーバーシュートが生じることが防止される。制御部90は、第2の昇温期間D4の経過後の時刻t4で、便座ヒータ450の低電力駆動を開始し、第1の維持期間D5の間便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。それにより、便座部400の表面温度が便座設定温度で一定となる。
【0161】
制御部90は、時刻t5で着座センサ290により使用者の便座部400への着座が検知された場合、低電力駆動の通電率を低下させ、第1の着座期間D6の間便座部400の表面温度が便座設定温度を維持するように便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。本例では、第1の着座期間D6は約10分に設定される。
【0162】
また、制御部90は、第1の着座期間D6の経過後の時刻t6で、低電力駆動の通電率をさらに低下させ、第2の着座期間D7の間便座部400の表面温度が便座設定温度よりもやや低い温度(36℃)に低下するように便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。本例では、第2の着座期間D7は約2分に設定される。
【0163】
制御部90は、第2の着座期間D7の経過後の時刻t7で、低電力駆動の通電率をさらに低下させ、第2の維持期間D8の間便座部400の表面温度が便座設定温度よりもやや低い温度(36℃)で一定となるように便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。以下の説明では、第2の維持期間D8において一定に維持される期間便座部400の表面温度、すなわち便座設定温度よりもやや低い温度を維持温度と称する。
【0164】
このように、本例では、使用者が便座部400に着座した後、制御部90が徐々に便座部400の表面温度を低下させる。それにより、使用者が低温やけどすることが防止される。
【0165】
制御部90は、時刻t8で着座センサ290により使用者が便座部400から離れたことを検知すると、停止期間D9の間便座ヒータ450の駆動を停止する。それにより、便座部400の表面温度が低下する。
【0166】
制御部90は、便座部400の表面温度が18℃に達した時刻t9で、再び便座ヒータ450の低電力駆動を開始し、便座部400の表面温度が18℃で一定となるように待機期間D10の間便座ヒータ450の低電力駆動を維持する。
【0167】
このように温度勾配が徐々に緩やかになる場合、便座部400の温度変化により生じるオーバーシュートを十分に小さくすることができる。
【0168】
本例では、使用者の便座部400への着座後、便座ヒータ450の駆動に用いる電力を調整することにより便座部400の表面温度を徐々に低下させているが、便座ヒータ450の駆動は使用者の便座部400への着座時に停止してもよい。この場合においても、使
用者が低温やけどすることが防止される。
【0169】
上記のように、本例では、時刻t8に使用者が便座部400から離れたことが検知されることにより便座ヒータ450の駆動が停止される旨を説明したが、便座ヒータ450の駆動の停止は、使用者が便座部400から離れたことが検知された時刻t8から一定時間(例えば1分間)経過後に行われてもよい。この場合、一度使用者が便座部400から離れた後に再度便意をもよおし、再度便座部400に着座する際にも、便座部400の表面温度が低下しない。これにより、使用者は快適に便座部400に着座することができる。
【0170】
1200W駆動時、600W駆動時および低電力駆動時における便座ヒータ450への通電状態を通電率切替回路の通電制御信号とともに説明する。
【0171】
以下の説明において、通電率とは交流電流の1周期に対して便座ヒータ450に交流電流を流す時間の割合をいう。
【0172】
図20(a)は1200W駆動時に便座ヒータ450を流れる電流の波形図、図20(b)は1200W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部402に与えられる通電制御信号の波形図である。
【0173】
図20(b)に示すように、1200W駆動時における通電制御信号は常に論理「1」となる。ヒータ駆動部402は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流を便座ヒータ450に流す(図20(a)太線部)。それにより、全周期の期間に渡って交流電流が便座ヒータ450に流れる。その結果、便座ヒータ450が約1200Wの電力で駆動される。
【0174】
図21(a)は600W駆動時に便座ヒータ450を流れる電流の波形図、図21(b)は600W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部402に与えられる通電制御信号の波形図である。
【0175】
図21(b)に示すように、600W駆動時における通電制御信号は、ヒータ駆動部402に供給される交流電流と同じ周期のパルスからなる。パルスのデューティー比は50%に設定される。
【0176】
ヒータ駆動部402は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流を便座ヒータ450に流す(図21(a)太線部)。それにより、半周期の期間交流電流が便座ヒータ450に流れる。その結果、便座ヒータ450が約600Wの電力で駆動される。
【0177】
図22(a)は低電力駆動時に便座ヒータ450を流れる電流の波形図、図22(b)は低電力駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部402に与えられる通電制御信号の波形図である。
【0178】
図22(b)に示すように、低電力駆動時における通電制御信号は、ヒータ駆動部402に供給される交流電流と同じ周期のパルスからなる。パルスのデューティー比は50%よりも小さく(例えば数%程度)に設定される。
【0179】
ヒータ駆動部402は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流を便座ヒータ450に流す(図22(a)太線部)。各周期においては、パルス幅に相当する期間交流電流が便座ヒータ450に流れる。その結果、便座ヒータ450が例えば約50Wの電力で駆動する。
【0180】
上記の他、便座部400の温度を低くする場合、または便座装置110の暖房機能をオフしている場合等には、通電率切替回路はヒータ駆動部402に通電制御信号を与えない(通電制御信号を論理「0」に設定する)。これにより、ヒータ駆動部402は便座ヒータ450を駆動しない。
【0181】
ここで、一般に、電子機器に供給される電流が高調波成分を有する場合、ノイズが発生する。本例では、上述のように便座ヒータ450の1200W駆動または600W駆動を行う場合には、便座ヒータ450に供給される電流がサインカーブを描くように変化するので、電流の大きさが大きくなってもノイズの発生が十分に低減される。
【0182】
また、便座ヒータ450の低電力駆動を行う場合、便座ヒータ450に供給される電流は高調波成分を有するが、電流の大きさが1200W駆動時および600W駆動時に比べて非常に小さいので、ノイズの発生が十分に低減される。
【0183】
上記のように、本実施の形態では、便座ヒータ450を1200W、600Wおよび約50Wの電力で駆動するとしているが、他の大きさの電力で便座ヒータ450を駆動してもよい。
【0184】
例えば、便座ヒータ450に半周期の期間交流電流を流す場合には、交流電流を流すタイミングを2周期または3周期等所定の周期の間隔で設定する。それにより、1200W、600Wおよび約50Wとは異なる大きさの電力で、ノイズの発生を十分に防止しつつ便座ヒータ450を駆動することができる。
【0185】
なお、本例では、制御部90は通電制御信号が論理「1」のときに便座ヒータ450に電流を供給し、通電制御信号が論理「0」のときに便座ヒータ450への電流の供給を停止しているが、通電制御信号が論理「1」のときに便座ヒータ450への電流の供給を停止し、通電制御信号が論理「0」のときに便座ヒータ450に電流を供給してもよい。
(3−n)便座装置の通電時間計測手段
前述のように本実施の形態の便座装置110においては、便座ヒータ450の駆動の多くは予め設定した時間により制御されるため、時間の計測がずれると便座部400の温度が所定値を超えて危険が生じたり、所定値に達しないため不快を感じる等の不都合が生じる。そこで、時間の計測がずれないように、制御部90では、2つの計測源にて便座ヒータ450のオンの時間を計測する。
【0186】
図23は制御部90による便座ヒータ450の通電シーケンスのフローチャートである。
【0187】
図23に示すように、制御部90は、第1の計測手段の計測値と規定時間を比較する(ステップS1)。ここで規定時間とは、前述の図20における、便座ヒータ450の駆動における突入電流低減期間D2、第1の昇温期間D3、第2の昇温期間D4等を指す。
【0188】
例えば、突入電流低減期間の600W駆動を行う場合、第1の計測手段の計測値が規定時間(突入電流低減期間D2)を超過している場合は、次の通電パターン(便座ヒータ450の1200W駆動)へ移行する(ステップS3)。
【0189】
第1の計測手段の計測値が規定時間を超過していない場合は、第2の計測手段の計測値と規定時間を比較する(ステップS2)。第2の計測手段の計測値が規定時間を超過している場合は、次の通電パターン(便座ヒータ450の1200W駆動)へ移行する(ステップS3)。
【0190】
第2の計測手段の計測値が規定時間を超過していない場合は、現在の通電パターン(突入電流低減期間の600W駆動)を継続する(ステップS4)。
【0191】
このように、少なくとも一方の計測値が規定時間を超過すると、次の通電パターンに移行するため、時間計測の精度を向上させることが可能となる。よって便座の温度制御の信頼性が向上する。
【0192】
便座ヒータ450の駆動の時間を計測する計測源の例として、1つは制御部90のプログラムの実効速度を規定する発振子、もう1つは交流電圧の周期が挙げられる。このような異なる2つの計測源を用いることにより、どちらか一方の時間計測が長くなる方向にばらついた場合であっても、正確に通電時間を計測することができる。
【0193】
特に、便座に1200W通電される時間が正確に計測されるため過昇がより確実に防止される。これにより、さらに機器の安全性が向上する。
【0194】
また、本実施の形態においては安全装置として、便座ヒータ450が1200W通電される時間を計測し、所定時間を超えると、強制的にヒータへの通電を遮断もしくは制限することによって、より確実に安全性を確保している。
【0195】
(3−o)便座装置に関する効果
本実施の形態の便座装置110においては、高容量の便座ヒータ450を駆動することにより短時間に便座部400を昇温することができるとともに、便座ヒータ450の駆動を時間制御で行うことにより安全性を確保することができる。
【0196】
しかも、制御部90においては2つの計測源にて便座ヒータ450の駆動時間を計測することにより、便座の温度制御の信頼性が向上する。
【0197】
特に、便座に1200W通電される時間が正確に計測されるため過昇温がより確実に防止される。これにより、さらに便座装置の安全性が向上する。
【0198】
また安全装置として、便座ヒータ450が1200W通電される時間を計測し、所定時間を超えると、強制的にヒータへの通電を遮断もしくは制限することによって、より確実に安全性をことができる。
【産業上の利用可能性】
【0199】
本発明の便座装置は、高容量の加熱手段で便座を短時間に安全に昇温することができるので、間欠的に短時間使用する他の暖房器具等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】本発明の一実施の形態に係る便座装置およびそれを備えるトイレ装置を示す外観斜視図
【図2】図1の遠隔操作装置の正面図
【図3】便座装置の構成を示す模式図
【図4】便座部の分解斜視図
【図5】(a)第1の例の便座部の便座ヒータの平面図(b)は(a)の領域の拡大平面図
【図6】第1の例の便座部の平面図
【図7】図6の便座部のC73−C73断面図
【図8】(a)第2の例の便座部の便座ヒータの平面図(b)は(a)の領域の拡大平面図
【図9】第2の例の便座部の平面図
【図10】(a)第3の例の便座部の便座ヒータの平面図(b)は(a)の一部の拡大断面図
【図11】第4の例の便座部の便座ヒータの平面図
【図12】上部便座ケーシングに取り付けられる便座ヒータの構造の一例を示す断面図
【図13】上部便座ケーシングに取り付けられる便座ヒータの構造の他の例を示す断面図
【図14】上部便座ケーシングに取り付けられる便座ヒータの構造のさらに他の例を示す断面図
【図15】発熱線の被覆厚さと便座部の各部の温度上昇との関係の測定結果を示すグラフ
【図16】線状ヒータとリード線との接続方法を示す模式図
【図17】線状ヒータとリード線との接続部の断面図
【図18】熱カシメの方法を示す模式図
【図19】便座ヒータの駆動例および便座部の表面温度の変化を示すグラフ
【図20】(a)1200W駆動時に便座ヒータを流れる電流の波形図(b)1200W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部に与えられる通電制御信号の波形図
【図21】(a)600W駆動時に便座ヒータを流れる電流の波形図(b)600W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部に与えられる通電制御信号の波形図
【図22】(a)低電力駆動時に便座ヒータを流れる電流の波形図(b)低電力駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部に与えられる通電制御信号の波形図
【図23】制御部による便座の通電シーケンスのフローチャート
【符号の説明】
【0201】
90 制御部(制御手段)
110 便座装置
400 便座部(便座)
450 便座ヒータ(加熱手段)
D2 突入電流低減期間(規定時間)
D3 第1の昇温期間(規定時間)
D4 第2の昇温期間(規定時間)
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置における加熱手段の通電制御に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の局部を洗浄する便座装置の分野においては、人体に不快感を与えないようにするために、例えば、洗浄に用いる洗浄水を適切な温度に調整する加熱装置や人体との接触部の温度を適切な温度に調整する便座装置等様々な機能を有する装置が案出されている。なかでも、上記に示す便座装置によれば、使用者は冬場等気温が低い場合においても不快を感じることなく便座に着座することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載の便座装置においては、便座を暖める熱源と、人体検知手段と、熱源及び人体検知手段とを制御する制御手段を備えている。
【0004】
このような構成において、制御手段は、人体検知手段にて人体を検知すると便座を暖める熱源に複数の通電率にて一定時間電力を供給した後、複数の通電率よりも高い一定の通電率にて便座温度が所定時間内に着座可能温度に達するように制御する。それにより、便座部の温度が上昇し、使用者は快適に便座に着座することができる。
【特許文献1】特開2007−007018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来の便座装置においては、使用者が快適に便座に着座するためには、各々の通電率の通電時間を正確に計測し、次のステップの通電率に電力を切り替える必要がある。
【0006】
時間の計測がずれると便座部の温度が所定値を超えたり、所定値に達しない。特に最大電力で通電される時間が正確に計測されない場合、便座部の温度が過昇し、使用者がやけどを負ったり、サーモスタット等の安全装置が働いて停止し、便座が暖まらない等の課題があった。
【0007】
本発明の目的は、便座への通電時間を正確に計測し、快適かつ安全に便座に着座することができる便座装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の便座装置は、便座を暖める加熱手段への通電を制御する制御手段に、異なる複数の計測源からなる便座通電時間計測手段を備えたものである。
【0009】
これによって、計測源が複数あるため、すべての計測源が同時に許容範囲外にずれる確率は、計測源が1つの場合よりも大幅に低くなる。よって、計測値の平均処理や比較処理等を行うことによって、計測の精度を向上させることが可能となり、便座部の温度制御を正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、計測源を複数持つことにより、便座への通電時間を正確に計測し、快適かつ安全に便座を加熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の発明に係る便座装置は、便座を暖める加熱手段と、前記加熱手段への通電を制御する制御手段を備え、前記制御手段は異なる複数の計測源からなる便座通電時間計測手段を備えたものである。
【0012】
この便座装置においては、計測源が複数あるため、すべての計測源が同時に許容範囲外にずれる確率は、計測源が1つの場合よりも大幅に低くなる。よって、計測値の平均処理や比較処理等を行うことによって、計測の精度を向上させることが可能となり、便座部の温度制御を正確に行うことができる。
【0013】
第2の発明は、特に、第1の発明において、便座通電時間計測手段の計測値の少なくとも1つが規定時間を超過すると次の通電パターンに移行するとしたものである。
【0014】
これによって、複数の計測源から、最も通電時間が短くなるものを使用するため、通電時間が規定時間より長くなって、便座部の温度が使用者の設定した温度を超過することを防止することができる。よって使用者は、安全かつ快適に便座に着座することができる。
【0015】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、最大電力で通電する時間を計測し、計測値の少なくとも1つが規定時間を超過すると加熱手段への通電電力を低減するとしたものである。
【0016】
これによって、最大電力で通電する場合、規定の時間を超過しないように制限し、超過した場合は、通電率を下げることにより、便座部の温度の過昇温を防止することができる。さらに複数の計測源から、最も通電時間が短くなるものを使用するため、より確実に便座部の温度の過昇温を防止することができる。
【0017】
第4の発明は、特に、第1または第2の発明において、最大電力で通電する時間を計測し、計測値の少なくとも1つが規定時間を超過すると加熱手段への通電電力を遮断するとしたものである。
【0018】
これによって、規定時間を超過すると便座への通電電力を速やかに遮断し、さらに複数の計測源から、最も通電時間が短くなるものを使用するため、より確実に便座部の温度の過昇温を防止することができるので、さらに安全かつ快適な便座を提供することができる。
【0019】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、便座通電時間計測手段の計測源を、マイクロコンピュータのプログラムの実行速度を規定する発振子と、交流電圧の周期としたものである。
【0020】
上記構成においては、発振子のばらつきは、主に部品の製造工程で発生し、交流電圧の周期のばらつきは、主に電源事情によるものである。このように全くばらつきの要因の異なるものを計測源とすることで、同時に2つの計測源が許容範囲外にばらつく確率を大幅に低くすることができるので、さらに計測の精度を向上させることが可能となり、便座の温度制御をより正確に行うことができる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
<1>便座装置およびそれを備えるトイレ装置の外観
図1は本発明の第1の実施の形態に係る衛生洗浄装置およびそれを備えるトイレ装置を示す外観斜視図である。トイレ装置1000はトイレットルーム内に設置される。
【0023】
トイレ装置1000において、便器700には衛生洗浄装置100が取り付けられる。衛生洗浄装置100は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および蓋部500により構成される。蓋部500を除く衛生洗浄装置100の各構成要素が、後述の便座装置110を構成する。
【0024】
本体部200には、便座部400および蓋部500が開閉可能に取り付けられている。また、本体部200には、図示しない洗浄水供給機構が設けられるとともに、後述の制御部90(図3)が内蔵される。
【0025】
図1では、本体部200の正面上部に設けられる着座センサ610が示されている。この着座センサ610は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、着座センサ610は、人体から反射された赤外線を検出することにより便座部400上に使用者が存在することを検知する。
【0026】
さらに、図1では、本体部200の正面下部に設けられる便器ノズル40が便器700の内側に突出している状態が示されている。この便器ノズル40は、上述の洗浄水供給機構に接続されている。
【0027】
洗浄水供給機構は、図示しない水道配管に接続されている。これにより、洗浄水供給機構は、水道配管から供給される洗浄水を便器ノズル40に供給する。それにより、便器ノズル40から便器700の内面の広い範囲に洗浄水が噴出される(便器プレ洗浄)。または、便器ノズル40から便器700の内面の背面側に洗浄水が噴出される(便器後部洗浄)。
【0028】
また、洗浄水供給機構は、図示しないノズル部に接続されている。これにより、洗浄水供給機構は、水道配管から供給される洗浄水をノズル部に供給する。それにより、ノズル部から使用者の局部に洗浄水が噴出される。
【0029】
遠隔操作装置300には、複数のスイッチが設けられている。遠隔操作装置300は、例えば便座部400上に着座する使用者が操作可能な場所に取り付けられる。
【0030】
入室検知センサ600は、トイレットルームの入口等に取り付けられる。入室検知センサ600は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、入室検知センサ600は、人体から反射された赤外線を検出した場合にトイレットルーム内に使用者が入室したことを検知する。
【0031】
本体部200の制御部90(図3)は、遠隔操作装置300、入室検知センサ600および着座センサ610から送信される信号に基づいて、衛生洗浄装置100の各部の動作を制御する。
【0032】
<2>遠隔操作装置の構成
図2は、図1の遠隔操作装置300の正面図である。遠隔操作装置300は、コントローラ本体部301の下部にコントローラ蓋部302が開閉自在に設けられた構造を有する。
【0033】
図2(a)に示すように、コントローラ蓋部302が閉じられた状態で、コントローラ本体部301の上部には乾燥スイッチ320、強さ調整スイッチ322,323および位
置調整スイッチ325,326が設けられ、コントローラ蓋部302には停止スイッチ311、おしりスイッチ312およびビデスイッチ313が設けられている。
【0034】
使用者により、上記各スイッチが操作される。これにより、遠隔操作装置300から図1の本体部200に各スイッチに応じた所定の信号が無線送信される。本体部200の制御部90(図3)は、受信した信号に基づいて本体部200(図1)および便座部400(図1)の各構成部の動作を制御する。
【0035】
例えば、使用者がおしりスイッチ312またはビデスイッチ313を操作することにより、図示しないノズル部から使用者の局部に洗浄水が噴出される。また、使用者が停止スイッチ311を操作することにより、ノズル部から使用者の局部への洗浄水の噴出が停止される。
【0036】
使用者が乾燥スイッチ320を操作することにより、使用者の局部に本体部200に設けられた図示しない乾燥ユニットから温風が噴出される。また、使用者が強さ調整スイッチ322,323を操作することにより、使用者の局部に噴出される洗浄水の流量および圧力等が調整される。
【0037】
さらに、使用者が位置調整スイッチ325,326を操作することにより、図示しないおしりまたはビデノズルの位置が調整される。それにより、使用者の局部への洗浄水の噴出位置が調整される。
【0038】
図2(b)に、コントローラ蓋部302が開かれた状態の遠隔操作装置300の正面図が示されている。図2(b)に示すように、コントローラ蓋部302により覆われるコントローラ本体部301の下部には、上述の停止スイッチ311、おしりスイッチ312およびビデスイッチ313に加えて、自動開閉スイッチ331、水温調整スイッチ332、便座温度調整スイッチ333、除菌スイッチ335および便器洗浄スイッチ336が設けられている。
【0039】
これらのスイッチが操作される場合にも、遠隔操作装置300から本体部200に各スイッチに応じた所定の信号が無線送信される。これにより、本体部200の制御部90は、受信した信号に基づいて本体部200および便座部400の各構成部の動作を制御する。
【0040】
自動開閉スイッチ331はつまみにより構成されている。使用者が自動開閉スイッチ331のつまみを操作することにより、蓋部500(図1)の開閉動作が設定される。すなわち、自動開閉スイッチ331のつまみがオンの位置にある場合、使用者のトイレットルームへの入室に応じて蓋部500が開閉される。
【0041】
使用者が水温調整スイッチ332を操作することにより、ノズル部20から使用者の局部に噴出される洗浄水の温度が調整される。使用者が便座温度調整スイッチ333を操作することにより、便座部400の温度が調整される。
【0042】
また、使用者が除菌スイッチ335を操作することにより、本体部200の洗浄水供給機構に銀イオンを含む洗浄水が流れ、除菌動作が行われる。
【0043】
自動開閉スイッチ331と同様に、便器洗浄スイッチ336はつまみにより構成されている。使用者が便器洗浄スイッチ336のつまみを操作することにより、便器ノズル40による便器プレ洗浄および便器後部洗浄の動作が設定される。
【0044】
すなわち、便器洗浄スイッチ336のつまみがオンの位置にある場合、使用者のトイレットルームへの入室に応じて便器ノズル40から便器700内部の広い範囲に洗浄水が噴出される。また、使用者の便座部400への着座中に便器ノズル40から便器700の内面の背面側に洗浄水が噴出される。
【0045】
<3>便座装置
(3−a)便座装置の構成
図3は、便座装置110の構成を示す模式図である。上述のように、便座装置110は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および入室検知センサ600を備える。
【0046】
図3に示すように、本体部200は、制御部90、温度測定部401、ヒータ駆動部402、便座温調ランプRA1および着座センサ610を含む。
【0047】
また、便座部400は便座ヒータ450およびサーミスタ401aを備える。
【0048】
制御部90は、例えばマイクロコンピュータからなり、使用者の入室および便座部400の温度等を判定する判定部、タイマ機能を有する計時部、種々の情報を記憶する記憶部、ならびに、ヒータ駆動部402の動作を制御するための通電率切替回路等を含む。
【0049】
本体部200の温度測定部401は、便座部400のサーミスタ401aに接続されている。これにより、温度測定部401は、サーミスタ401aから出力される信号に基づいて便座部400の温度を測定する。以下、サーミスタ401aを通じて温度測定部401により測定される便座部400の温度を測定温度値と称する。
【0050】
また、本体部200のヒータ駆動部402は、便座部400の便座ヒータ450に接続されている。これにより、ヒータ駆動部402は便座ヒータ450を駆動する。
【0051】
本実施の形態において、便座装置110は次のように動作する。初期設定時では、制御部90がヒータ駆動部402を制御することにより、便座部400が例えば約18℃となるように温度調整される。このときの温度を待機温度と称する。 ここで、使用者が遠隔操作装置300の便座温度調整スイッチ333を操作することにより、便座設定温度が制御部90に送信される。制御部90は、遠隔操作装置300から受信した便座設定温度を記憶部に記憶する。
【0052】
使用者がトイレットルームに入室すると、入室検知センサ600が使用者の入室を検知する。それにより、使用者の入室検知信号が制御部90に送信される。
【0053】
次に、通常の使用時の動作について説明する。制御部90の判定部は、入室検知センサ600からの入室検知信号により使用者のトイレットルームへの入室を検知する。そこで、判定部は、便座部400の測定温度値、および記憶部に記憶された便座設定温度に基づいて便座ヒータ450の駆動に関する特定のヒータ制御パターンを選択する。
【0054】
通電率切替回路は、選択されたヒータ制御パターンおよび計時部により得られる時間情報に基づいてヒータ駆動部402の動作を制御する。
【0055】
それにより、ヒータ駆動部402により便座ヒータ450が駆動され、便座部400の温度が便座設定温度へと瞬時に上昇される。
【0056】
(3−b)便座部の第1の例
図4は、便座部400の分解斜視図である。図5(a)は、第1の例の便座部400の便座ヒータ450の平面図、図5(b)は、図5(a)の領域C72の拡大図である。図6は、第1の例の便座部400の平面図である。図7は、図6の便座部400のC73−C73断面図である。
【0057】
図4に示すように、便座部400は、主としてアルミニウムにより形成された略楕円形状の上部便座ケーシング410、略馬蹄形状の便座ヒータ450および合成樹脂により形成された略楕円形状の下部便座ケーシング420を備える。
【0058】
以下、着座した使用者から見て前方側を便座部400の前部とし、着座した使用者から見て後方側を便座部400の後部とする。
【0059】
図5(a)および図6に示すように、便座ヒータ450は、前部の一部が切り取られた略馬蹄状に形成される。なお、便座ヒータ450は、略楕円形状を有してもよい。便座ヒータ450は、例えばアルミニウムからなる金属箔451,453および線状ヒータ460を含む。
【0060】
線状ヒータ460は、シート中央部SE3からシート一方端部SE1までの領域およびシート中央部SE3からシート他方端部SE2までの領域において上部便座ケーシング410の形状に合わせて蛇行形状に配設される。
【0061】
具体的には、線状ヒータ460は、左右6列程度のU字状部を有するように形成される。これらのU字状部は、着座した使用者の大腿部の方向にほぼ沿って並行に配置される。各U字状部における線状ヒータ460の間隔は5mm程度である。
【0062】
線状ヒータ460のヒータ始端部460aおよびヒータ終端部460bは、便座部400の後部の一方側から引き出されるリード線470にそれぞれ接続される。
【0063】
さらに、図5(b)に示すように、蛇行形状の線状ヒータ460の経路中に熱応力緩衝部となる複数の折曲部CUが設けられる。
【0064】
図7に示すように、上部便座ケーシング410の外側の側辺に沿った領域G1における線状ヒータ460の間隔ds1および内側の側辺に沿った領域G3における線状ヒータ460の間隔ds3は、上部便座ケーシング410の中央部の領域G2における線状ヒータ460の間隔ds2よりも小さく設定される。それにより、上部便座ケーシング410の外側の側辺に沿った領域G1および内側の側辺に沿った領域G3では、中央部の領域G2に比べて線状ヒータ460が密に配列される。
【0065】
(3−c)便座部の第2の例
図8(a)は、第2の例の便座部400の便座ヒータ450の平面図、図8(b)は、図8(a)の領域C77の拡大図、図9は、第2の例の便座部400の平面図である。
【0066】
図8(a)および図9に示すように、線状ヒータ460は、シート中央部SE3からシート一方端部SE1までの領域およびシート中央部SE3からシート他方端部SE2までの領域において上部便座ケーシング410の形状に合わせて左右方向に蛇行する蛇行形状に配設される。本例では、線状ヒータ460は、蛇行形状の曲げ部が上部便座ケーシング410の外側の側辺および内側の側辺の近傍に位置するように配置される。
【0067】
具体的には、線状ヒータ460が便座ヒータ450の後部の一方側からシート一方端部SE1の近傍まで左右に蛇行しながら延びることにより図8(b)の第1系列Aの蛇行形
状が形成される。また、線状ヒータ460がシート一方端部SE1の近傍から左右に蛇行しながらシート中央部SE3の近傍を経由してシート他方端部SE2の近傍まで延びることにより第2系列Bの蛇行形状が形成される。さらに、線状ヒータ460がシート他方端部SE2の近傍からシート中央部SE3の近傍を経由して便座ヒータ450の後部の一方側まで延びることにより第1系列Aの蛇行形状が形成される。
【0068】
さらに、図8(b)に示すように、第1系列Aの蛇行形状の線状ヒータ460と第2系列Bの蛇行形状の線状ヒータ460とはほぼ平行に配列される。第1系列Aおよび第2系列Bの蛇行形状の線状ヒータ460はヒータ始端部460aからヒータ終端部460bまで連続している。
【0069】
線状ヒータ460のヒータ始端部460aおよびヒータ終端部460bは、便座部400の後部の一方側から引き出されるリード線470にそれぞれ接続される。
【0070】
本例では、線状ヒータ460は、便座ヒータ450の内側の側辺の近傍および外側の側辺の近傍に曲げ部が位置する蛇行形状を有する。それにより、曲げ部間の間隔が短い。したがって、熱膨張および熱収縮に起因する長さ変化が小さくなるので、たとえ線状ヒータ460が伸縮しても曲げ部で伸縮による歪が吸収および緩衝される。その結果、線状ヒータ460の熱膨張および熱収縮に起因するストレスが小さくなり、長期間の使用での破損を抑制することができる。
【0071】
また、線状ヒータ460の熱的伸縮が小さいので、金属箔451,453に対する密着性を長期間良好に維持することができる。それにより、便座ヒータ450の加温を効率的にかつ確実に行うことができる。
【0072】
また、図8(b)に示すように、曲げ部の長さLa,Lbおよび曲げ部間の間隔Sは、任意に調整することができる。それにより、便座ヒータ450の加熱分布を調整することができる。
【0073】
例えば、便座ヒータ450の外側および内側の側辺近傍の加熱密度が便座ヒータ450の中央部の加熱密度よりも高くなるように、曲げ部の長さLa,Lbおよび曲げ部間の間隔Sを調整する。それにより、便座ヒータ450の全領域において均等な暖房温度を維持することができる。
【0074】
また、本例では、第1系列Aの蛇行形状の線状ヒータ460での電流の向きが第1系列Bの蛇行形状の線状ヒータ460での電流の向きと逆になる。それにより、線状ヒータ460から発生する電磁波が互いが打ち消される。その結果、ノイズの発生が防止される。
【0075】
(3−d)便座部の第3の例
図10(a)は、第3の例の便座部400の便座ヒータ450の平面図、図10(b)は、図10(a)の一部の拡大断面図である。
【0076】
図10(a)に示すように、便座ヒータ450の後部の両側に線状ヒータ460が高い密度で蛇行する検温部450Tがそれぞれ形成される。図10(b)に示すように、一方の検温部450Tには、バイメタル等を用いた復帰型のサーモスタット450Qが設けられる。他方の検温部450Tには、温度ヒューズ等を用いた非復帰型のサーモスタット450Qが設けられる。
【0077】
例えば、便座ヒータ450が想定外の異常温度になると、復帰型のサーモスタット450Qが開くことにより、一時的に通電が停止される。また、復帰型のサーモスタット45
0Qが故障等を起こすことにより、便座ヒータ450が危険温度に達しようとすると、非復帰型のサーモスタット450Qが開くことにより、電力の供給が遮断される。
【0078】
ここで、温度過昇防止のためのサーモスタット450Qまたは温度ヒューズの動作温度設定は、実際に遮断したい温度よりも低くしておくことが望ましい。本実施の形態で説明している構成の便座は昇温速度が速い。したがって、安全装置(例えば、サーモスタット450Qまたは温度ヒューズ等)の動作速度によっては、実際に通電が停止されたタイミングで便座表面が予め設定された温度よりもさらに高い温度になってしまっている可能性があるためである。人体の皮膚のうち、普段露出していない臀部や大腿部の皮膚は他の部分の皮膚に比べて敏感である。これにより、上記のような、より高い安全設計が重要となる。
【0079】
(3−e)便座部の第4の例
図11は、第4の例の便座部400の便座ヒータ450の平面図である。
【0080】
図11に示すように、シート中央部SE3から左シート一方端部SE1までの領域に配列される線状ヒータ460と、シート中央部SE3からシート他方端部SE2までの領域に配列される線状ヒータ460とが互いに分離されている。
【0081】
一方の線状ヒータ460のヒータ始端部460aおよびヒータ終端部460bは、便座部400の後部の一方側から引き出されるリード線470にそれぞれ接続される。他方の線状ヒータ460のヒータ始端部460cおよびヒータ終端部460dは、便座部400の後部の他方側から引き出されるリード線470にそれぞれ接続される。
【0082】
(3−f)便座ヒータの構造の一例
図12は、上部便座ケーシング410に取り付けられる便座ヒータ450の構造の一例を示す断面図である。
【0083】
図12に示すように、上部便座ケーシング410は、例えば厚さ1mmのアルミニウム板413により形成される。アルミニウム板413の上面には、アルマイト層412および表面化粧層411が形成される。表面化粧層411の上面が着座面410Uとなる。また、アルミニウム板413の下面には、塗装膜414が形成される。塗装膜414は、例えば膜厚40μmおよび150℃の耐熱性を有するポリエステル粉体塗装膜である。
【0084】
なお、アルミニウム板413の代わりに、銅板、ステンレス板、アルミニウムめっき鋼板および亜鉛アルミニウムめっき鋼板のうちいずれかまたは複数を用いてもよい。
【0085】
塗装膜414の下面に粘着層452aを介して例えばアルミニウムからなる金属箔451が貼着される。金属箔451の膜厚は、例えば50μmである。
【0086】
線状ヒータ460は、断面円形の発熱線463a、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462により構成される。断面円形の発熱線463aの外周面がエナメル層463bおよび絶縁被覆層462で順に被覆される。発熱線463aおよびエナメル層463bによりエナメル線463が構成される。
【0087】
発熱線463aは、例えば0.16〜0.25mmの直径を有し、銅または銅合金からなる。本例では、発熱線463aとして、直径0.176mmの4%Ag−Cu合金からなる高抗張力型ヒータ線が用いられる。抵抗値は0.833Ω/mである。
【0088】
エナメル層463bは、例えば180〜300℃の耐熱性を有するポリエステルイミド
(PEI)からなる。エナメル層463bの膜厚は、20μm以下であり、本例では12〜13μmである。このようなエナメル線463は、エナメル層463bの膜厚が極薄い0.01〜0.02mm程度であっても、電気用品技術基準である1000Vで1分間以上の電気絶縁耐圧性能を十分確保することができる。また、エナメル層463bの材料として、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)を用いてもよい。
【0089】
絶縁被覆層462は、例えば260℃の耐熱性を有するパーフロロアルコキシ混合物(以下PFAと称する)等のフッ素樹脂からなる。絶縁被覆層462の厚みは、例えば0.1〜0.15mmである。PFAからなる絶縁被覆層462の形成は、押出し加工により行うことができる。この場合、絶縁被覆層462の厚みが0.05〜0.1mmと薄くても、雷サージにも耐える電気絶縁耐圧性能を確保することができる。
【0090】
なお、絶縁被覆層462の材料として、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)を用いてもよい。
【0091】
線状ヒータ460の外径は、例えば0.46〜0.50mmである。線状ヒータ460の電力密度は、例えば0.95W/cm2である。
【0092】
線状ヒータ460は、粘着層452bおよび例えばアルミニウムからなる金属箔453で覆うように金属箔451に取り付けられる。金属箔453の膜厚は、例えば50μmである。
【0093】
このように、単一のエナメル線463上に絶縁被覆層462を形成することにより二重の絶縁構造を確保することができる。
【0094】
また、絶縁被覆層462は比較的薄くても十分な絶縁性が得られる。したがって、絶縁被覆層462の厚さを薄くすることができる。上記の例では、線状ヒータ460の樹脂層(エナメル層463bおよび絶縁被覆層462)の厚さは、0.12mm程度であり、極めて薄い。この場合、発熱線463aから金属箔451および便座ケーシング410への熱伝導を極めて俊敏に行うことができる。
【0095】
ちなみに従来の便座装置においては、線状ヒータのシリコーンゴムまたは塩化ビニール等からなる被覆チューブの厚さは、上記の例の約10倍の1mm程度ある。このような被覆チューブの熱伝導速度は桁違いに遅く、便座の昇温速度を速くすることはできなかった。
【0096】
従来の便座装置において便座の昇温速度を無理やり速くするためにヒータ線に大きい電力を供給した場合、断熱状態でヒータ線の温度を高くした場合と同様に、被覆チューブが溶融および焼損する。そのため、このような方法による便座の昇温は実用できなかった。
【0097】
一方、本例のように耐熱性能に優れたエナメル線463をヒータ線として使用した場合、十分短時間で便座を昇温でき、かつ電気絶縁性および安全性を確保できる。したがって、本例の構造は、種々の便座装置に有効に実用することができる。
【0098】
また、本例の構造では、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462等からなる樹脂層を0.1〜0.4mm程度の薄い厚さで形成できる。それにより、発熱線463aおよび樹脂層の絶対温度が低い温度に維持された状態で、便座を急速に昇温させることができる。その結果、高価な耐熱絶縁材料でなく比較的安価な絶縁材料を用いることができる。
【0099】
また、本例においては、線状ヒータ460の熱を便座ケーシング410に効率よく伝達
するために、線状ヒータ460をアルミ箔451,452で挟んでいる。ここで、本例の線状ヒータ460においては、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462を薄くできるので、線状ヒータ460の外径を細く(約φ0.2〜φ0.4)できる。この場合、アルミ箔451とアルミ箔452とを貼り合わせる際に、アルミ箔451とアルミ箔452との間の空気層を小さくすることができるとともに、アルミ箔451,452のしわを少なくすることができる。それにより、エナメル線463の局所高熱が抑制され、エナメル線463の断線および電気絶縁層(エナメル層463bおよび絶縁被覆層462)の損傷が防止される。その結果、便座装置110の長寿命化が可能になる。
【0100】
また、エナメル線463を細くできるので、便座ヒータ450の重量を低減でき、便座開閉トルクを小さくすることができる。それにより、便座開閉用の電動開閉ユニットを小型化でき、便座装置110の小型化が可能となる。
【0101】
(3−g)便座ヒータの構造の他の例
図13は、上部便座ケーシング410に取り付けられる便座ヒータ450の構造の他の例を示す断面図である。
【0102】
図13の例では、複数のエナメル線463が撚り合わされ、絶縁被覆層462で被覆されている。各エナメル線463は、例えば直径0.1mmの発熱線463aおよび膜厚10μmのエナメル層463bにより構成される。
【0103】
このように、複数のエナメル線463の束の周囲を取り囲むように絶縁被覆層462を形成することにより二重の絶縁構造を確保することができる。
【0104】
なお、図13の例では、7本のエナメル線463が撚り合わされているが、エナメル線463の数は7本に限定されない。例えば、2本のエナメル線463およびエナメル層463bにより被覆されていない1本の発熱線463a(以下、単体発熱線463aと称する。)を撚り合わせてもよい。
【0105】
この構成においては、例えば、局所高熱等により上記2本のエナメル線463のうちの一方のエナメル層463bが絶縁破壊された場合、そのエナメル線463の発熱線463aと、上記の単体発熱線463aとが電気的に接続される。したがって、この構成によれば、単体発熱線463aを絶縁破壊検知線として用いることにより、エナメル層463bの絶縁破壊を検知することができる。それにより、2本のエナメル線463のうちいずれかのエナメル線463のエナメル層463bが絶縁破壊された場合には、すべての発熱線463aへの通電を遮断することができる。
【0106】
つまり、複数本の撚り線のうち少なくとも1本をエナメル層463bのない非絶縁電線とすることにより、局所高熱等によりいずれかのエナメル線463のエナメル層463bが絶縁破壊された場合にも、その絶縁破壊を迅速に検知することができる。それにより、安全に発熱線463aへの通電を遮断することができる。
【0107】
なお、上記においては、複数のエナメル線463を撚り合わせて用いた場合について説明したが、複数のエナメル線463を単に束ねて用いてもよい。
【0108】
また、複数本の発熱線463aのうちの所定数の発熱線463aに流れる電流の向きと残りの発熱線463aに流れる電流の向きとを逆にしてもよい。この場合、一方向に流れる電流により発生する磁界と他方向に流れる電流により発生する磁界とが打ち消し合う。それにより、漏洩磁界の発生およびノイズの発生を抑制することができる。
【0109】
(3−h)便座ヒータの構造のさらに他の例
図14は、上部便座ケーシング410に取り付けられる便座ヒータ450の構造のさらに他の例を示す断面図である。
【0110】
図14の例では、金属箔451と粘着層452bとの間に耐熱絶縁層455が形成される。また、粘着層452bと金属箔453との間に耐熱絶縁層456が形成される。耐熱絶縁層455は、例えば150℃の耐熱性を有する膜厚12〜25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)からなる。同様に、耐熱絶縁層455は、例えば150℃の耐熱性を有する膜厚12〜25μmのPETからなる。
【0111】
このように、単一のエナメル線463上に絶縁被覆層462を形成するとともに耐熱絶縁層455,456を形成することにより三重絶縁構造を確保することができる。
【0112】
なお、図14の便座ヒータ450において、単一のエナメル線463の代わりに複数のエナメル線463の束を用いてもよい。
【0113】
(3−i)発熱線の被覆厚さ
図15は、発熱線463aの被覆厚さと便座部400の各部の温度上昇との関係の測定結果を示す図である。図15において、横軸は発熱線463aの被覆厚さを表し、縦軸は通電開始から6秒後の温度上昇値[K]を表す。
【0114】
測定には、図14の構造を有する便座ヒータ450を用いた。発熱線463aの被覆厚さは、発熱線463aとアルミニウム板413との間の厚さであり、本例では、エナメル層463b、耐熱絶縁層455、粘着層452aおよび塗装膜414の合計の厚さである。
【0115】
ここでは、6秒で約10Kの便座部400の着座面410Uの温度上昇を実用昇温性能とし、6秒で約13Kの温度上昇を目標昇温性能とした。
【0116】
図15において、丸印は便座部400の着座面410Uの温度上昇値であり、三角印はアルミニウムからなる金属箔451の温度上昇値であり、四角印は絶縁被覆層462の温度上昇値である。
【0117】
図15の結果から、発熱線463aの被覆厚さが0.4mm以下の場合には、実用昇温性能が得られることがわかる。また、発熱線463aの被覆厚さが0.2mm以下の場合には、目標昇温性能が得られることがわかる。したがって、発熱線463aの被覆厚さは、0.4mm以下であることが好ましく、0.2mm以下であることがより好ましい。
【0118】
(3−j)絶縁被覆層の材料
次に、図14の構造を有する3種類の便座ヒータ450に交流100Vの電圧を印加して発熱線463aの温度を測定した。
【0119】
第1の便座ヒータ450では、絶縁被覆層462の材料として膜厚100μmおよび耐熱温度260℃のPFAを用い、耐熱絶縁層455,456の材料としてそれぞれ膜厚25μmおよび耐熱温度150℃のPETを用いた。第2の便座ヒータ450では、絶縁被覆層462の材料として膜厚35〜40μmおよび耐熱温度350℃のPI巻被覆を用い、耐熱絶縁層455,456の材料としてそれぞれ膜厚25μmおよび耐熱温度150℃のPETを用いた。第3の便座ヒータ450では、絶縁被覆層462の材料として膜厚35〜40μmおよび耐熱温度350℃のPI巻被覆を用い、耐熱絶縁層455,456の材料としてそれぞれ膜厚3〜6μmおよび耐熱温度90℃のアクリル樹脂を用いた。
【0120】
第1の便座ヒータ450については、発熱線463aの温度がPFAからなる絶縁被覆層462の耐熱温度260℃よりも低い162.3℃となった。第2の便座ヒータ450については、発熱線463aの温度がPIからなる絶縁被覆層462の耐熱温度350℃よりも低い155.4℃となった。第3の便座ヒータ450については、発熱線463aの温度がPIからなる絶縁被覆層462の耐熱温度350℃よりも低い125.7℃となった。
【0121】
これらの結果から、絶縁被覆層462の材料として、PFAだけでなく、PI等の他の樹脂を用いることができることがわかった。
【0122】
(3−k)線状ヒータ460とリード線470との接続方法
図16は、線状ヒータ460とリード線470との接続方法を示す図である。図17は、線状ヒータ460とリード線470との接続部の断面図である。図18は、熱カシメの方法を示す図である。
【0123】
図16および図17に示すように、リード線470の芯線は端子471に接続されている。端子471がU字形状に折曲され、線状ヒータ460の屈曲された先端部が端子471のU字形状の折曲部内に挿入される。
【0124】
この状態で、図18に示すように、端子471のU字形状の折曲部を一対の電極EL1,EL2で挟み込む。一対の電極EL1,EL2で端子471のU字形状の折曲部を押圧しつつトランスTSから電極EL1,EL2を通して端子471および線状ヒータ460に電流を供給する。それにより、図17に示すように、絶縁被覆層462および線状ヒータ460のエナメル層463bが溶融する。その結果、線状ヒータ460の発熱線463aが接触点463Cで端子471に接触する。
【0125】
図16に示すように、リード線470の端子471と線状ヒータ460との接続部475には例えば厚さ12μmのポリイミド薄膜からなる耐熱シート480が2〜3回巻き付けられる。さらに、リード線470の端子471と線状ヒータ460との接続部475は、シリコーン樹脂で被覆され、図5〜図14の金属箔451,453間に挟み込まれる。
【0126】
このように、線状ヒータ460の発熱線463aの熱が金属箔451,453およびリード線470の端子471に伝導する。それにより、発熱線463aの局部過熱および断線が防止され、便座ヒータ450の均熱性が確保される。
【0127】
また、線状ヒータ460の発熱線463aとリード線470の端子471との接続部475が耐熱シート480およびシリコーン樹脂の二重絶縁構造を有する。この場合、接続部475の熱が耐熱シート480およびシリコーン樹脂を通して便座ヒータ450の金属箔451,453に伝導する。それにより、十分な絶縁性を確保しつつ発熱線463aの局部過熱および断線が防止される。
【0128】
さらに、線状ヒータ460の発熱線463aとリード線470の端子471とが熱カシメにより接続されるので、薄く確実な電気的接続が実現される。また、発熱線463aの浮き上がりが防止されるので、発熱線463aの局部過熱および断線が防止される。
【0129】
なお、便座部400の安全性確保のために、便座装置110には2つの安全回路が内蔵されている。1つの安全回路は、便座ヒータ450の一方のリード線470とプリント基板230内部の便座ヒータ絶縁破壊検知回路との間に接続され、他の1つの安全回路は、便座ヒータ450の両方のリード線470と便座ヒータ断線検出回路との間に接続されて
いる。いずれの安全回路も便座ヒータ402に異常が発生したときに使用者の感電を防止するために用いるものである。
【0130】
便座ヒータ絶縁破壊検知回路は、便座ヒータ450が異常発熱した際の絶縁被覆層462溶融時に便座ヒータ450と金属箔451の間に電流が流れることを検出するものである。また、便座ヒータ断線検出回路は、便座ヒータ450両端に発生する電圧波形が便座ヒータ450断線時には発生しなくなることを検出するものである。ヒータ駆動部402は、2つの安全回路の両方が正常状態を検出しているときにのみ便座ヒータ450に通電を行う。
【0131】
(3−l)便座ヒータの動作
次に、便座ヒータ450の動作について説明する。便座ヒータ450のヒータ始端部460aとヒータ終端部460bとの間に一定の電圧が印加されると、内部の発熱線463aを電流が流れ、この発熱線463aが発熱する。このとき、発生した熱は、発熱線463aからエナメル層463bおよび金属箔451,453を通って上部便座ケーシング410の着座面410Uに伝導する。
【0132】
線状ヒータ460は、絶縁被覆層462が260℃程度の耐熱性を有するPFAにより形成されるため、絶縁被覆層462の厚みが例えば0.1〜0.15mmと薄くても、発熱線463aの100〜150℃への急速昇温時にもエナメル層463bが破壊されることが防止される。したがって、線状ヒータ460から着座面410Uへの熱伝導を迅速に進行させることにより、着座面410Uを急速に昇温させることができる。
【0133】
この場合、線状ヒータ460への通電開始から所定の最適温度に到達するのは5〜6秒と短時間であり、例えば、使用者がトイレットルームに入室して着座面410Uに着座するまでに要する7〜8秒より短時間である。したがって、使用者がトイレットルームに入室したことを入室検知センサ600により検知されると同時に線状ヒータ460に通電を開始しても、使用者が着座するまでには着座面410Uを十分に最適温度に到達させることができる。
【0134】
さらに、図7の着座面410Uの内側の領域G3および外側の領域G1は、中央部の領域G2に比べて放熱性が高い。本実施の形態では、内側の領域G3および外側の領域G1では、中央部の領域G2に比べて線状ヒータ460が密に配列される。したがって、使用者が着座面410Uに着座した瞬間に温度むらおよび冷感を感じることがない。
【0135】
一方、線状ヒータ460は、全長10m程度と長く、発熱線463aの急速昇温に伴って急速な膨張が発生し、結果として長さ方向に伸張する。また、通電が停止された場合は、発熱線463aの温度が低下し、収縮により元の長さに戻る。つまり、発熱線463aには熱膨張および熱収縮による熱応力歪が反復して形成される。
【0136】
線状ヒータ460と金属箔451,453との密着が弱く、または線状ヒータ460と着座面410Uとの間に隙間が形成された場合、熱応力歪全体がそれらのうちの最も動きやすい箇所に集中する。その結果、線状ヒータ460に比較的強い屈伸運動が発生し、その応力疲労の蓄積により発熱線463aの破断といった線状ヒータ460の破損が発生する。
【0137】
本例では、線状ヒータ460に熱応力緩衝部として複数の折曲部が形成されるので、これらの折曲部が全体の熱応力歪を細かく分散させるとともに、折曲部が熱応力歪を吸収する作用をも果たす。したがって、折曲部での熱応力は極めて小さく、結果として微小な屈伸の発生に留まる。その結果、発熱線463aの破断という事態には至らず、線状ヒータ
460の長寿命化および耐久性が向上する。
【0138】
なお、比較的放熱の多い着座面410Uの内側の領域G3および外側の領域G1では、中央部の領域G2に比べて線状ヒータ460の間隔を大きくし、折曲部の数を少なくてもよい。
【0139】
上記のように、線状ヒータ460の全長はほぼ10mと長く、かつ線状ヒータ460には折曲部が形成される。そのため、着座面410Uへの線状ヒータ460の装着時に、これらの線状ヒータ460の配列を維持および固定化する必要がある。線状ヒータ460を金属箔451,453で挟持した状態で線状ヒータ460を金属箔451,453に密着させることによりユニット化された便座ヒータ450が構成される。したがって、線状ヒータ460の配列を強固に維持した状態で線状ヒータ460を着座面410Uに接着することができる。
【0140】
また、金属箔451,453により線状ヒータ460が挟持されるように構成されるので、金属箔451,453により均等に熱分散が行われる。それにより、線状ヒータ460が高温化することを防止することができる。また、着座面410Uが均熱化されるとともに、便座ヒータ450の破損が防止される。
【0141】
(3−m)便座装置の通電シーケンス
便座ヒータ450の駆動の制御は、便座ヒータ450を駆動する電力を大きく3つに変化させることにより行う。
【0142】
例えば、便座部400を第1の温度勾配で昇温させる場合、図3のヒータ駆動部402は約1200Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(1200W駆動)。
【0143】
前述のように、便座ヒータ450の抵抗値は0.833Ω/mであり、全長10mである。したがって、便座ヒータ450の抵抗値は8.33Ωとなる。この抵抗値を有する便座ヒータ450に交流100Vが印加されると、(100V×100V)÷8.33Ω=1200Wの電力が発生する。すなわち、便座ヒータ450に交流電源の全周期に渡って電流を流すことにより、1200Wの電力が発生する。
【0144】
また、便座部400を第1の温度勾配よりもやや緩やかな第2の温度勾配で昇温させる場合、ヒータ駆動部402は約600Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(600W駆動)。さらに、便座部400の温度を一定に保つ場合、ヒータ駆動部402は約50Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(低電力駆動)。なお、低電力駆動とは、1200W駆動および600W駆動に比べて十分に低い電力(例えば、0W〜50Wの範囲内の電力)により便座ヒータ450を駆動することをいう。
【0145】
1200W駆動、600W駆動および低電力駆動の切替えは、制御部90の通電率切替回路が、ヒータ駆動部402から便座ヒータ450への通電を制御することにより行われる。
【0146】
ヒータ駆動部402には図示しない電源回路から交流電流が供給されている。そこで、ヒータ駆動部402は、通電率切替回路から与えられる通電制御信号に基づいて供給された交流電流を便座ヒータ450に流す。
【0147】
図19は、便座ヒータ450の駆動例および便座部400の表面温度の変化を示す図である。
【0148】
図19においては、便座部400の表面温度と時間との関係を示すグラフと、便座ヒータ450を駆動する際の通電率と時間との関係を示すグラフとが示されている。これら2つのグラフの横軸は共通の時間軸である。
【0149】
本例では、使用者が予め暖房機能をオンし、便座設定温度を高く(38℃)設定した場合を想定する。
【0150】
冬季等室温が待機温度である18℃よりも低い場合、制御部90(図3)は、便座部400の温度を18℃となるように温度調整する。このように、制御部90は、入室検知センサ600により使用者の入室が検知されるまでの待機期間D1の間、便座部400の表面温度が18℃で一定となるように、便座ヒータ450の低電力駆動を行う。この待機温度を調整するための便座ヒータ450への低電力駆動の制御はサーミスタ401aで検知する温度測定部401による便座部400の測定温度値に基づいて行われる。
【0151】
次に、制御部90は、時刻t1で入室検知センサ600により使用者の入室が検知された場合、突入電流低減期間D2の間、600W駆動を行う。なお、この600W駆動は、突入電流を十分に低減するために行う。この場合、便座部400の表面温度はやや緩やかな第2の温度勾配で上昇される。
【0152】
その後、制御部90は、突入電流低減期間D2の経過後の時刻t2で、便座ヒータ450の1200W駆動を開始し、第1の昇温期間D3の間便座ヒータ450の1200W駆動を継続する。この場合、便座部400の表面温度は上述の第1の温度勾配で上昇される。
【0153】
第1の温度勾配は非常に急激な上昇であるため、便座部400に設置したサーミスタ401aの温度検知に基づく制御では対応できないため、第1の昇温期間D3は予め実験に基づいて設定した時間を制御部90に記憶させ、設定した第1の昇温期間D3を正確に計測して便座ヒータ450に通電する時間制御による駆動を行う。特に、通電時間は秒以下のレベルで正確に制御することが必要であり、後述の(3−n)便座装置の通電時間計測手段で詳細を記述する。
【0154】
ここで、便座部400の表面温度は急激に上昇される。便座ヒータ450の1200W駆動は、便座部400の表面温度が予め設定した所定温度(例えば30℃)に達するまで行われる。もちろん、この所定温度は暖房温度として設定された温度であってもよいが、この所定温度は暖房温度にまで十分に上昇した温度でなく、それよりも低くても、使用者が着座した際に冷たいという不快感情を生じない最低限界の温度(限界温度)であればよい。この限界温度は、発明者らの実施した被験者実験により約29℃であることがわかっている。
【0155】
このように、第1の昇温期間D3においては、便座部400の表面温度が1200W駆動により迅速に限界温度まで上昇される。それにより、使用者は便座部400を冷たいと感じることなく便座部400に着座することができる。
【0156】
また、上述のように、便座部400の表面温度を急激に上昇させると、その温度変化にオーバーシュートが生じる。しかしながら、本例では、便座部400の表面温度が所定温度に達したときに便座ヒータ450の1200W駆動を600W駆動に切替える。したがって、便座部400の表面温度の変化がオーバーシュートした場合でも、その表面温度は便座設定温度を超えない。その結果、使用者が着座時に便座部400を熱いと感じることが防止される。
【0157】
続いて、制御部90は、第1の昇温期間D3の経過後の時刻t3で、便座ヒータ450の600W駆動を開始し、第2の昇温期間D4の間便座ヒータ450の600W駆動を継続する。この場合、便座部400の表面温度は上述の第2の温度勾配で上昇される。
【0158】
便座ヒータ450の600W駆動は、便座部400の表面温度が便座設定温度(38℃)に達するまで行われる。
【0159】
第2の昇温期間D4の便座ヒータ450の駆動も、前述の第1の昇温期間D3と同様に予め設定した時間を通電する時間制御で行う。
【0160】
第2の温度勾配は第1の温度勾配よりも緩やかである。これにより、便座部400の表面温度の変化に大きなオーバーシュートが生じることが防止される。制御部90は、第2の昇温期間D4の経過後の時刻t4で、便座ヒータ450の低電力駆動を開始し、第1の維持期間D5の間便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。それにより、便座部400の表面温度が便座設定温度で一定となる。
【0161】
制御部90は、時刻t5で着座センサ290により使用者の便座部400への着座が検知された場合、低電力駆動の通電率を低下させ、第1の着座期間D6の間便座部400の表面温度が便座設定温度を維持するように便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。本例では、第1の着座期間D6は約10分に設定される。
【0162】
また、制御部90は、第1の着座期間D6の経過後の時刻t6で、低電力駆動の通電率をさらに低下させ、第2の着座期間D7の間便座部400の表面温度が便座設定温度よりもやや低い温度(36℃)に低下するように便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。本例では、第2の着座期間D7は約2分に設定される。
【0163】
制御部90は、第2の着座期間D7の経過後の時刻t7で、低電力駆動の通電率をさらに低下させ、第2の維持期間D8の間便座部400の表面温度が便座設定温度よりもやや低い温度(36℃)で一定となるように便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。以下の説明では、第2の維持期間D8において一定に維持される期間便座部400の表面温度、すなわち便座設定温度よりもやや低い温度を維持温度と称する。
【0164】
このように、本例では、使用者が便座部400に着座した後、制御部90が徐々に便座部400の表面温度を低下させる。それにより、使用者が低温やけどすることが防止される。
【0165】
制御部90は、時刻t8で着座センサ290により使用者が便座部400から離れたことを検知すると、停止期間D9の間便座ヒータ450の駆動を停止する。それにより、便座部400の表面温度が低下する。
【0166】
制御部90は、便座部400の表面温度が18℃に達した時刻t9で、再び便座ヒータ450の低電力駆動を開始し、便座部400の表面温度が18℃で一定となるように待機期間D10の間便座ヒータ450の低電力駆動を維持する。
【0167】
このように温度勾配が徐々に緩やかになる場合、便座部400の温度変化により生じるオーバーシュートを十分に小さくすることができる。
【0168】
本例では、使用者の便座部400への着座後、便座ヒータ450の駆動に用いる電力を調整することにより便座部400の表面温度を徐々に低下させているが、便座ヒータ450の駆動は使用者の便座部400への着座時に停止してもよい。この場合においても、使
用者が低温やけどすることが防止される。
【0169】
上記のように、本例では、時刻t8に使用者が便座部400から離れたことが検知されることにより便座ヒータ450の駆動が停止される旨を説明したが、便座ヒータ450の駆動の停止は、使用者が便座部400から離れたことが検知された時刻t8から一定時間(例えば1分間)経過後に行われてもよい。この場合、一度使用者が便座部400から離れた後に再度便意をもよおし、再度便座部400に着座する際にも、便座部400の表面温度が低下しない。これにより、使用者は快適に便座部400に着座することができる。
【0170】
1200W駆動時、600W駆動時および低電力駆動時における便座ヒータ450への通電状態を通電率切替回路の通電制御信号とともに説明する。
【0171】
以下の説明において、通電率とは交流電流の1周期に対して便座ヒータ450に交流電流を流す時間の割合をいう。
【0172】
図20(a)は1200W駆動時に便座ヒータ450を流れる電流の波形図、図20(b)は1200W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部402に与えられる通電制御信号の波形図である。
【0173】
図20(b)に示すように、1200W駆動時における通電制御信号は常に論理「1」となる。ヒータ駆動部402は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流を便座ヒータ450に流す(図20(a)太線部)。それにより、全周期の期間に渡って交流電流が便座ヒータ450に流れる。その結果、便座ヒータ450が約1200Wの電力で駆動される。
【0174】
図21(a)は600W駆動時に便座ヒータ450を流れる電流の波形図、図21(b)は600W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部402に与えられる通電制御信号の波形図である。
【0175】
図21(b)に示すように、600W駆動時における通電制御信号は、ヒータ駆動部402に供給される交流電流と同じ周期のパルスからなる。パルスのデューティー比は50%に設定される。
【0176】
ヒータ駆動部402は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流を便座ヒータ450に流す(図21(a)太線部)。それにより、半周期の期間交流電流が便座ヒータ450に流れる。その結果、便座ヒータ450が約600Wの電力で駆動される。
【0177】
図22(a)は低電力駆動時に便座ヒータ450を流れる電流の波形図、図22(b)は低電力駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部402に与えられる通電制御信号の波形図である。
【0178】
図22(b)に示すように、低電力駆動時における通電制御信号は、ヒータ駆動部402に供給される交流電流と同じ周期のパルスからなる。パルスのデューティー比は50%よりも小さく(例えば数%程度)に設定される。
【0179】
ヒータ駆動部402は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流を便座ヒータ450に流す(図22(a)太線部)。各周期においては、パルス幅に相当する期間交流電流が便座ヒータ450に流れる。その結果、便座ヒータ450が例えば約50Wの電力で駆動する。
【0180】
上記の他、便座部400の温度を低くする場合、または便座装置110の暖房機能をオフしている場合等には、通電率切替回路はヒータ駆動部402に通電制御信号を与えない(通電制御信号を論理「0」に設定する)。これにより、ヒータ駆動部402は便座ヒータ450を駆動しない。
【0181】
ここで、一般に、電子機器に供給される電流が高調波成分を有する場合、ノイズが発生する。本例では、上述のように便座ヒータ450の1200W駆動または600W駆動を行う場合には、便座ヒータ450に供給される電流がサインカーブを描くように変化するので、電流の大きさが大きくなってもノイズの発生が十分に低減される。
【0182】
また、便座ヒータ450の低電力駆動を行う場合、便座ヒータ450に供給される電流は高調波成分を有するが、電流の大きさが1200W駆動時および600W駆動時に比べて非常に小さいので、ノイズの発生が十分に低減される。
【0183】
上記のように、本実施の形態では、便座ヒータ450を1200W、600Wおよび約50Wの電力で駆動するとしているが、他の大きさの電力で便座ヒータ450を駆動してもよい。
【0184】
例えば、便座ヒータ450に半周期の期間交流電流を流す場合には、交流電流を流すタイミングを2周期または3周期等所定の周期の間隔で設定する。それにより、1200W、600Wおよび約50Wとは異なる大きさの電力で、ノイズの発生を十分に防止しつつ便座ヒータ450を駆動することができる。
【0185】
なお、本例では、制御部90は通電制御信号が論理「1」のときに便座ヒータ450に電流を供給し、通電制御信号が論理「0」のときに便座ヒータ450への電流の供給を停止しているが、通電制御信号が論理「1」のときに便座ヒータ450への電流の供給を停止し、通電制御信号が論理「0」のときに便座ヒータ450に電流を供給してもよい。
(3−n)便座装置の通電時間計測手段
前述のように本実施の形態の便座装置110においては、便座ヒータ450の駆動の多くは予め設定した時間により制御されるため、時間の計測がずれると便座部400の温度が所定値を超えて危険が生じたり、所定値に達しないため不快を感じる等の不都合が生じる。そこで、時間の計測がずれないように、制御部90では、2つの計測源にて便座ヒータ450のオンの時間を計測する。
【0186】
図23は制御部90による便座ヒータ450の通電シーケンスのフローチャートである。
【0187】
図23に示すように、制御部90は、第1の計測手段の計測値と規定時間を比較する(ステップS1)。ここで規定時間とは、前述の図20における、便座ヒータ450の駆動における突入電流低減期間D2、第1の昇温期間D3、第2の昇温期間D4等を指す。
【0188】
例えば、突入電流低減期間の600W駆動を行う場合、第1の計測手段の計測値が規定時間(突入電流低減期間D2)を超過している場合は、次の通電パターン(便座ヒータ450の1200W駆動)へ移行する(ステップS3)。
【0189】
第1の計測手段の計測値が規定時間を超過していない場合は、第2の計測手段の計測値と規定時間を比較する(ステップS2)。第2の計測手段の計測値が規定時間を超過している場合は、次の通電パターン(便座ヒータ450の1200W駆動)へ移行する(ステップS3)。
【0190】
第2の計測手段の計測値が規定時間を超過していない場合は、現在の通電パターン(突入電流低減期間の600W駆動)を継続する(ステップS4)。
【0191】
このように、少なくとも一方の計測値が規定時間を超過すると、次の通電パターンに移行するため、時間計測の精度を向上させることが可能となる。よって便座の温度制御の信頼性が向上する。
【0192】
便座ヒータ450の駆動の時間を計測する計測源の例として、1つは制御部90のプログラムの実効速度を規定する発振子、もう1つは交流電圧の周期が挙げられる。このような異なる2つの計測源を用いることにより、どちらか一方の時間計測が長くなる方向にばらついた場合であっても、正確に通電時間を計測することができる。
【0193】
特に、便座に1200W通電される時間が正確に計測されるため過昇がより確実に防止される。これにより、さらに機器の安全性が向上する。
【0194】
また、本実施の形態においては安全装置として、便座ヒータ450が1200W通電される時間を計測し、所定時間を超えると、強制的にヒータへの通電を遮断もしくは制限することによって、より確実に安全性を確保している。
【0195】
(3−o)便座装置に関する効果
本実施の形態の便座装置110においては、高容量の便座ヒータ450を駆動することにより短時間に便座部400を昇温することができるとともに、便座ヒータ450の駆動を時間制御で行うことにより安全性を確保することができる。
【0196】
しかも、制御部90においては2つの計測源にて便座ヒータ450の駆動時間を計測することにより、便座の温度制御の信頼性が向上する。
【0197】
特に、便座に1200W通電される時間が正確に計測されるため過昇温がより確実に防止される。これにより、さらに便座装置の安全性が向上する。
【0198】
また安全装置として、便座ヒータ450が1200W通電される時間を計測し、所定時間を超えると、強制的にヒータへの通電を遮断もしくは制限することによって、より確実に安全性をことができる。
【産業上の利用可能性】
【0199】
本発明の便座装置は、高容量の加熱手段で便座を短時間に安全に昇温することができるので、間欠的に短時間使用する他の暖房器具等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】本発明の一実施の形態に係る便座装置およびそれを備えるトイレ装置を示す外観斜視図
【図2】図1の遠隔操作装置の正面図
【図3】便座装置の構成を示す模式図
【図4】便座部の分解斜視図
【図5】(a)第1の例の便座部の便座ヒータの平面図(b)は(a)の領域の拡大平面図
【図6】第1の例の便座部の平面図
【図7】図6の便座部のC73−C73断面図
【図8】(a)第2の例の便座部の便座ヒータの平面図(b)は(a)の領域の拡大平面図
【図9】第2の例の便座部の平面図
【図10】(a)第3の例の便座部の便座ヒータの平面図(b)は(a)の一部の拡大断面図
【図11】第4の例の便座部の便座ヒータの平面図
【図12】上部便座ケーシングに取り付けられる便座ヒータの構造の一例を示す断面図
【図13】上部便座ケーシングに取り付けられる便座ヒータの構造の他の例を示す断面図
【図14】上部便座ケーシングに取り付けられる便座ヒータの構造のさらに他の例を示す断面図
【図15】発熱線の被覆厚さと便座部の各部の温度上昇との関係の測定結果を示すグラフ
【図16】線状ヒータとリード線との接続方法を示す模式図
【図17】線状ヒータとリード線との接続部の断面図
【図18】熱カシメの方法を示す模式図
【図19】便座ヒータの駆動例および便座部の表面温度の変化を示すグラフ
【図20】(a)1200W駆動時に便座ヒータを流れる電流の波形図(b)1200W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部に与えられる通電制御信号の波形図
【図21】(a)600W駆動時に便座ヒータを流れる電流の波形図(b)600W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部に与えられる通電制御信号の波形図
【図22】(a)低電力駆動時に便座ヒータを流れる電流の波形図(b)低電力駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部に与えられる通電制御信号の波形図
【図23】制御部による便座の通電シーケンスのフローチャート
【符号の説明】
【0201】
90 制御部(制御手段)
110 便座装置
400 便座部(便座)
450 便座ヒータ(加熱手段)
D2 突入電流低減期間(規定時間)
D3 第1の昇温期間(規定時間)
D4 第2の昇温期間(規定時間)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座を暖める加熱手段と、前記加熱手段への通電を制御する制御手段を備え、前記制御手段は異なる複数の計測源からなる便座通電時間計測手段を備えたことを特徴とする便座装置。
【請求項2】
便座通電時間計測手段の計測値の少なくとも1つが規定時間を超過すると次の通電パターンに移行することを特徴とする請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
便座通電時間計測手段は、最大電力で通電する時間を計測し、計測値の少なくとも1つが規定時間を超過すると加熱手段への通電電力を低減することを特徴とする請求項1または2に記載の便座装置。
【請求項4】
便座通電時間計測手段は、最大電力で通電する時間を計測し、計測値の少なくとも1つが規定時間を超過すると加熱手段への通電を遮断することを特徴とする請求項1または2に記載の便座装置。
【請求項5】
便座通電時間計測手段の計測源は、マイクロコンピュータのプログラムの実行速度を規定する発振子と、交流電圧の周期からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項1】
便座を暖める加熱手段と、前記加熱手段への通電を制御する制御手段を備え、前記制御手段は異なる複数の計測源からなる便座通電時間計測手段を備えたことを特徴とする便座装置。
【請求項2】
便座通電時間計測手段の計測値の少なくとも1つが規定時間を超過すると次の通電パターンに移行することを特徴とする請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
便座通電時間計測手段は、最大電力で通電する時間を計測し、計測値の少なくとも1つが規定時間を超過すると加熱手段への通電電力を低減することを特徴とする請求項1または2に記載の便座装置。
【請求項4】
便座通電時間計測手段は、最大電力で通電する時間を計測し、計測値の少なくとも1つが規定時間を超過すると加熱手段への通電を遮断することを特徴とする請求項1または2に記載の便座装置。
【請求項5】
便座通電時間計測手段の計測源は、マイクロコンピュータのプログラムの実行速度を規定する発振子と、交流電圧の周期からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の便座装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2008−264057(P2008−264057A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107949(P2007−107949)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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