説明

便座装置

【課題】便座表面から人体の皮膚を温める際に無駄な熱損失が少なく、快適でエネルギー効率のよい便座装置を提供することにある。
【解決手段】便器14上に設置する本体13と、弾性体層23を有する便座11と、弾性体層23を保持する補強部材24と、補強部材24の上面または下面に設置したヒーター22を備え、ヒータ22は、発熱線463aの外周を覆うように設けたエナメル層463bと絶縁非覆層462を備えたことにより、便座11の弾性体層23が備える適度なクッション性で長時間着座しても疲れない便座11とすることができ、しかも、発熱線463aの絶縁に供するエナメル層463bおよび絶縁層462の熱容量を小さくすることができるので、発熱線463aで発生された熱を迅速に効率よく便座表面に伝達することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性体層を有する便座装置の便座を加熱するヒータの構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、便座装置の便座に使用される樹脂は一般的に硬質樹脂であるため、非常に座り心地が悪いものであった。また座面の端面は皮膚を圧迫し血流の流れを阻害するため、長時間着座した場合は、痺れや痛みが生じてしまうこともあった。特に高齢者あるいは障害者の方の中には、便意が明確でなく、用をたすまで1時間以上便座に着座される方もいるため、このような着座感の悪さは性能上の課題となっていた。
【0003】
一方そのような不具合を解決するため、座面を、荷重がかかる際および荷重が開放される際に、変形する性質を有する低反発物質を用いる構成が提案されている。この場合、大変形が可能であるため、様々な形状の臀部に倣うことが可能である。このような性質を有する低反発物質は、着座時の衝撃を充分吸収することができる。低反発物質では、使用者の臀部を保持しながら変形するため、座位を安定させながら静かに着座状態に移行できる。着座状態では使用者の臀部の形状に倣って変形しているため、効率的に座圧を分散させることができるため、局部的に圧迫される点が生じず、長時間座っても痺れ、痛み等を感じることがなく、しかも内蔵した発熱体により着座面を暖房できるため、非常に良好な座り心地を実現できるという利点を有している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図6は、特許文献1に記載された従来の便座装置の断面を示すものである。図6に示すように、使用者の皮膚に接触する便座1の表面から表皮材2、紐状発熱体3、クッション層4、合成樹脂基材5の順に構成されている。
【特許文献1】特開2005−102843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の便座装置においては、紐状ヒータの熱は表皮材を介して使用者の臀部に伝わる構成であるが、使用者の体重や着座姿勢の差により、表皮材および紐状ヒータに加わる圧力に差が生しるのが一般であり、しかも同一使用者においても便座の部位によって圧力が異なる。上記のように部位によって圧力が異なる場合、使用者は体感温度として、強い圧力が加わる部位は熱く感じ、弱い圧力が加わる部位は温度が低く感じるため、便座全体に温度斑があるように感じて不快を感じる。また、使用者の体型などによって実際には使用者の皮膚に触れていない部分の便座表面においても他の部分同様の均一な温度となるように通電を行っているため、省エネルギ−の観点において効率が悪いという課題を有していた。
【0006】
また上記のような従来の便座装置においては、発熱線と便座ケーシングとを絶縁するために、シリコーンゴムまたは塩化ビニール等からなる被覆チューブが用いられている。この場合、製造上および電気絶縁性確保のために、被覆チューブの厚さを厚くせざるを得なかった。しかしながら、被覆チューブの厚さを厚くした場合、発熱線から便座ケーシングへの伝熱効率が低下し、便座ケーシングを迅速に昇温させることができない。よって使用者が使用したい時だけ瞬時に便座を暖めることができず、使用感を損なわないためには便座を非使用時も含めて一日中保温しておかねばならず、省エネルギ−の観点においてさらに効率が悪いという課題を有していた。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、着座時の衝撃を吸収し、かつ着座状態の座り心地が良く、かつ長時間の着座の際においても人体への影響度が小さい便座を有し、かつ便座表面から人体の皮膚を暖める際に無駄な熱損失が少なく、快適でエネルギ−効率のよい便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の便座装置は、便器上に載置する本体と、弾性体層を有する便座と、弾性体層を保持する補強部材と、補強部材の上面または下面に設置したヒータを備え、ヒータは、発熱線の外周を覆うように設けたエナメル層と絶縁被覆層を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
これにより、便座の弾性体層が備える適度なクッション性で使用者との臀部の血流を妨げることもなく、長時間着座しても疲れない便座とすることができる。また、発熱線の絶縁に供するエナメル層および絶縁層の熱容量を小さくすることができるので、発熱線で発生された熱を迅速に効率よく便座表面に伝達することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の便座装置は、適度なクッション性をもった快適な便座を備え、使用者の体重や着座姿勢などの条件にかかわらずに便座全体の剛性、強度が高く、かつ便座表面の温度が均一で、エネルギ−効率のよい便座装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の発明は、便器上に載置する本体と、少なくとも一部に弾性体層を有する便座と、前記弾性体層を保持する補強部材と、前記補強部材の上面または下面に設置したヒータを備え、前記ヒータは、発熱線の外周を覆うように設けたエナメル層と、前記エナメル層の外側に絶縁被覆層を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
これにより、発熱線で発生された熱が、エナメル層および絶縁層を介して補強部材に伝達され、弾性体層を介して便座表面の温度が上昇する。
【0013】
ここで、エナメル層は十分な電気絶縁性を有するため、エナメル層の厚さを小さくしても、発熱線と補強部材とを十分に絶縁することができる。また、それにより、絶縁被覆層の厚さも小さくすることができる。
【0014】
したがって、この便座装置においては、発熱線と補強部材とを確実に絶縁しつつ、エナメル層および絶縁被覆層の厚さを小さくすることができる。この場合、エナメル層および絶縁層の熱容量を小さくすることができるので、発熱線で発生された熱を迅速に効率よく便座表面に伝達することが可能となる。
【0015】
また、発熱線の熱を効率よく便座に伝達することができるので、発熱線の発熱量を抑制することができる。それにより、エナメル層および絶縁層の耐久性が向上する。その結果、便座装置の信頼性が向上する。
【0016】
また、十分な耐熱性を有するエナメル層を発熱線の外周部に設けているので、絶縁被覆層として耐熱性の低い材料を用いることができる。それにより、便座装置の製品コストを確実に低減することができる。
【0017】
第2の発明は、特に第1の発明において、エナメル層は、ポリエステルイミドおよびポリアミドイミドのうち少なくとも一方を含むものとした。
【0018】
これにより、ポリエステルイミドおよびポリアミドイミドは電気絶縁性および耐熱性に優れているので、発熱線と補強部材とをより確実に絶縁しつつ、便座表面を迅速に昇温させることが可能となる。
【0019】
第3の発明は、特に第1または第2の発明において、エナメル層の厚さおよび絶縁被覆層の厚さの合計が0.4mm以下とした。
【0020】
これにより、発熱線と補強部材とを確実に絶縁しつつ、便座表面をより迅速に昇温させることができる。
【0021】
第4の発明は、特に第1〜3のいずれか1つの発明において、絶縁被覆層を前記エナメル層より耐熱性の低い材料とした。
【0022】
これにより、便座装置の製品コストを十分に低減できる。
【0023】
第5の発明は、特に第4の発明において、絶縁被覆層は、フッ素樹脂を含むことを特徴とする。
【0024】
これにより、発熱線と補強部材とをより確実に絶縁できるとともに、絶縁被覆層の耐久性が向上することとなり、便座装置の信頼性が向上する。
【0025】
第6の発明は、特に第4または第5の発明において、絶縁被覆層は、ポリイミドを含むことを特徴とする。
【0026】
これにより、絶縁被覆層の耐久性が向上することとなり、便座装置の信頼性が向上する。
【0027】
第7の発明は、特に第1〜6のいずれか1つの発明において、ヒータは、第1および第2の金属箔を備え、エナメル層および絶縁被覆層を備えた発熱線を前記第1の金属箔と前記第2の金属箔との間に挟まれるように間隔を開けて連続的に配設した。
【0028】
これにより、エナメル層および絶縁被覆層を備えた発熱線が第1および第2の金属箔に挟まれているので、発熱線で発生された熱が第1および第2の金属箔に効率よく伝達される。また、第1の金属箔の一面が補強部材の上面または下面に設置されかつ第2の金属箔の一面が第1の金属箔の他面に貼着されている。それにより、発熱線から第1および第2の金属箔に伝達された熱を補強部材全体に効率よく伝達することができる。それにより、便座の着座面の全体を均一に昇温させることができる。
【0029】
第8の発明は、特に第7の発明において、第1および第2の金属箔は、アルミニウムからなることを特徴とする。
【0030】
これにより、発熱線で発生された熱を補強部材を介して便座表面により迅速に伝達することができる。
【0031】
第9の発明は、特に第1〜8のいずれか1つの発明において、発熱線は合金材料からなることを特徴とする。
【0032】
これにより、発熱線の強度を確保しつつ発熱線の径を小さくすることができる。それにより、狭いスペースに長い発熱線を高い密度で配列することができる。その結果、便座の昇温速度を向上させることができる。
【0033】
第10の発明は、特に第10の発明において、合金材料は、銀および銅を含むことを特徴とする。
【0034】
これにより、発熱線の強度を十分に確保しつつ発熱線の径を小さくすることができる。それにより、狭いスペースに長い発熱線を高い密度で配列することとなり、便座の昇温速度を向上させることができる。例えば、合金材料に銀を4重量%含有させることにより、発熱線の強度を確実に向上させることができる。
【0035】
第11の発明は、特に特に第1〜10のいずれか1つの発明において、補強部材は、アルミニウム、銅、ステンレス、アルミめっき鋼および亜鉛アルミめっき鋼のうち少なくとも1つを含む材料からなることを特徴とする。
【0036】
これにより、発熱線で発生された熱をさらに効率よく便座表面に伝達することができる。
【0037】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって発明が限定されるものではない。
【0038】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における便座装置全体の外観図、図2は便座の断面図である。
【0039】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態における便座装置は着座面を暖房する暖房便座であって、便座11と、便蓋12と、本体13を主要構成部材としている。
【0040】
本体13の内部には、洗浄用の温水を作り貯湯する熱交換タンク(図示せず)、局部を洗浄する洗浄手段(図示せず)、洗浄水の噴出を制御する電磁弁(図示せず)、洗浄後の局部を乾燥する乾燥ユニット(図示せず)、排便の臭気を脱臭する脱臭ユニット(図示せず)、便座装置の各機能を制御する制御装置(図示せず)等が内蔵されており、使用者は洗浄手段から噴出される温水を局部に当てることにより、用便による汚れを洗い流すことができるものである。この便座装置は、便器14の上面に載置した本体13をゴムブッシュ及びボルトを介して便器14に固定し、便座11と便蓋12は本体13に回動自在に枢支している。
【0041】
図2に示すように、便座11は上面から、使用者の皮膚と接触する面であり変形自在な軟質で使用者の臀部になじむシート状の表皮材21、弾性を備えた軟質樹脂材からなる弾性体層23、硬質樹脂成型品からなる補強部材24、便座ヒータ22、硬質樹脂成型品からなる便座下部部材25の主要部材の順で構成されている。
【0042】
補強部材24と便座下部部材25はビス26で螺合してあり、補強部材24は真ん中をビス止めのために平面形状部27とし、両側はそれぞれ凸部28として強度を上げている。そして端部29には便座下部部材25の端部と嵌合するように長手方向に一定間隔で爪を設けてある。
【0043】
表皮材21の材質としては、TPU(熱可塑性ポリウレタン)シートを使用している。表皮材21としては0.1〜0.3mm程度の薄いフィルムで構成され、耐薬品性のある、かつ熱容量の少ないものであれば他の材質によるものでもかまわない。
【0044】
また弾性体層23の材質としては、高反発発泡ポリウレタンを使用している。弾性体層
23の発泡ポリウレタンは、主として内部の気泡がつながっていない独立気泡構造をとり、ガスの出入りをなくし、空気によるクッション性を持たせているが、適度なクッション性を有するものであれば連続気泡構造のものでもよい。また、弾性体層23は補強部材24の周りを覆うように形成してあり、着座したときも臀部が直接、補強部材24に接しないようにしてある。
【0045】
補強部材24は便座11に弾性体層23を設けることにより、便座11全体の剛性不足で体重を支えきれないことを想定して設けたものである。従来の便座は、一般的に上下樹脂部材を上下ともU字型にして上下のU字部分と逆U字部分の開放面を合わせ面として一体に構成して構造体とすることにより体重を支えるようにしているが、本実施の形態では上部の構成部材は軟質樹脂からなる弾性体層23であるため硬質樹脂同士の合わせで支えることができないことに対する対策として、便座下部部材25と補強部材24で体重を支えるように構成したものである。
【0046】
本実施の形態では、便座ヒータ22は補強部材24の下面に配置してあり、ヒ−タからの発生した熱は熱伝導性に優れた補強部材24に速やかに伝達し、さらに弾性体層23を介して便座表面へと伝達した後、使用者の皮膚へ伝わる。この過程において便座ヒータ22が面状に均一な発熱分布特性を有していないチュ−ビングヒ−タのような構成であったとしても、弾性体層の表面においては温度分布が均一化し、結果として温度均一性に優れた暖房便座とすることができる。
【0047】
また便座ヒ−タ22を補強部材24の下面に配置することで、加工上はまず補強部材24に弾性体層23であるポリウレタンを発泡成形工程でインサ−ト成形し、次に便座ヒ−タ22を補強部材24の下面に貼付けることが可能であるため、製造工程上の作りやすいという利点を有している。
【0048】
次に便座ヒータ22の詳細について説明する。
【0049】
図3は、補強部材24に取り付けた便座ヒータ22の構造の一例を示す断面図である。
【0050】
図3に示すように、補強部材24は、厚さ1mmのアルミニウム板により形成されている。なお、アルミニウム板の代わりに、銅板、ステンレス板、アルミニウムめっき鋼板および亜鉛アルミニウムめっき鋼板のうちいずれかまたは複数を用いてもよい。補強部材24の下面には粘着層452aを介してアルミニウムからなる金属箔451が貼着される。金属箔451の膜厚は、例えば50μmである。
【0051】
便座ヒータ22の線状ヒータ460は、断面円形の発熱線463a、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462により構成される。断面円形の発熱線463aの外周面がエナメル層463bおよび絶縁被覆層462で順に被覆される。発熱線463aは、例えば0.16〜0.25mmの直径を有し、銅または銅合金からなる。本実施の形態では、発熱線463aとして、直径0.176mmの4%Ag−Cu合金からなる高抗張力型ヒータ線が用いており、抵抗値は0.833Ω/mである。
【0052】
エナメル層463bは、180〜300℃の耐熱性を有するポリエステルイミド(PEI)からなる。エナメル層463bの膜厚は、20μm以下であり、本実施の形態では12〜13μmである。このようなエナメル線463は、エナメル層463bの膜厚が極薄い0.01〜0.02mm程度であっても、電気用品技術基準である1000Vで1分間以上の電気絶縁耐圧性能を十分確保することができる。また、エナメル層463bの材料として、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)を用いてもよい。
【0053】
絶縁被覆層462は、約260℃の耐熱性を有するパーフロロアルコキシ混合物(以下PFAと称する)等のフッ素樹脂からなる。絶縁被覆層462の厚みは、0.1〜0.15mmである。PFAからなる絶縁被覆層462の形成は、押出し加工により行うことができる。この場合、絶縁被覆層462の厚みが0.05〜0.1mmと薄くても、雷サージにも耐える電気絶縁耐圧性能を確保することができる。
【0054】
なお、絶縁被覆層462の材料として、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)を用いてもよい。
【0055】
上記構成による線状ヒータ460の外径は、0.46〜0.50mmである。線状ヒータ460の電力密度は、0.95W/cmである。
【0056】
線状ヒータ460は、粘着層452bおよびアルミニウムからなる金属箔453で覆うように金属箔451に取り付けられる。金属箔453の膜厚は、50μmである。
【0057】
このように、単線のエナメル線463上に絶縁被覆層462を形成することにより二重の絶縁構造を確保することができる。
【0058】
また、絶縁被覆層462は比較的薄くても十分な絶縁性が得られる。したがって、絶縁被覆層462の厚さを薄くすることができる。上記構成では、線状ヒータ460の樹脂層(エナメル層463bおよび絶縁被覆層462)の厚さは0.12mm程度であり、極めて薄い。この場合、発熱線463aから金属箔451および補強部材24への熱伝導を極めて俊敏に行うことができる。なお、本実施の形態においてはエナメル層463bと絶縁被覆層462の合計の厚さは約0.12mmであるが、良好な熱伝導性能を得るためには0.4mm以下にすることが必須条件である。
【0059】
ちなみに、従来の便座装置においては、線状ヒータのシリコーンゴムまたは塩化ビニール等からなる被覆チューブの厚さは、上記の例の約10倍の1mm程度ある。このような被覆チューブの熱伝導速度は桁違いに遅く、便座の昇温速度を速くすることはできなかった。
【0060】
また、従来の便座装置においては、便座の昇温速度を無理やり速くするためにヒータ線に大きい電力を供給した場合、断熱状態でヒータ線の温度を高くした場合と同様に、被覆チューブが溶融および焼損する。そのため、このような方法による便座の昇温は実用できなかった。
【0061】
一方、本実施の形態の場合は、耐熱性能に優れたエナメル線463をヒータ線として使用したことにより、十分短時間で便座を昇温でき、かつ電気絶縁性および安全性を確保できる。したがって、本実施の形態の構造は、種々の便座装置にも有効に実用することができる。
【0062】
また、本実施の形態の構造は、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462等からなる樹脂層を0.1〜0.4mm程度の薄い厚さで形成できる。それにより、発熱線463aおよび樹脂層の絶対温度が低い温度に維持された状態で、便座を急速に昇温させることができる。その結果、高価な耐熱絶縁材料でなく比較的安価な絶縁材料を用いることができる。
【0063】
また、本実施の形態においては、線状ヒータ460の熱を補強部材24に効率よく伝達するために、線状ヒータ460をアルミ箔451、453で挟んでいる。ここで、本実施の形態の線状ヒータ460は、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462を薄くできる
ので、線状ヒータ460の外径を細く(約0.2〜0.4mm)できる。この場合、アルミ箔451とアルミ箔453とを貼り合わせる際に、アルミ箔451とアルミ箔453との間の空気層を小さくすることができるとともに、アルミ箔451,453のしわを少なくすることができる。それにより、エナメル線463の局所高熱が抑制され、エナメル線463の断線および電気絶縁層(エナメル層463bおよび絶縁被覆層462)の損傷が防止される。その結果、便座装置の長寿命化が可能になる。
【0064】
なお、本実施に形態においては、補強部材24は平面形状部27と凸部28からなる形状としたがこれに限るものではなく、例えば図5に示すように、そのほとんどが略平面で形成した補強部材30としてもよい、このような形状にすることにより、便座ヒータ22の形状がシンプルになり生産性の向上と便座11の温度の均一化を容易にすることができる。
【0065】
また、本実施の形態においては、便座ヒータ22は補強部材24の下面に設置したがこれに限るものではなく、図5に示すように補強部材の上面に設置してもよい、この場合補強部材24の熱伝導性能が低い材料であっても便座ヒータ22の熱が短時間に便座の表皮材21に伝達することができるので、補強部材24の材料の選択の幅が広くなり樹脂材料等で形成することが可能となる。また、補強部材24を断熱効果の高い発砲樹脂等で形成することにより、省エネルギー効果を高めることも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、本発明に関わる便座装置は、便座表面を短時間に昇温する速暖性を有する便座ヒータを備えているので、他の暖房装置の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態1における便座装置の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における便座の断面図
【図3】本発明の実施の形態1における便座ヒータの詳細断面図
【図4】本発明の実施の形態1における別形状の補強部材を備えた便座の断面図
【図5】本発明の実施の形態1における便座ヒータの別の取り付け方を示す便座の断面図
【図6】従来の便座装置の斜視図および断面図
【符号の説明】
【0068】
11 便座
13 本体
14 便器
22 便座ヒータ(ヒータ)
23 弾性体層
24、30 補強部材
451、453 金属箔
462 絶縁被覆層
463a 発熱線
463b エナメル層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器上に載置する本体と、少なくとも一部に弾性体層を有する便座と、前記弾性体層を保持する補強部材と、前記補強部材の上面または下面に設置したヒータを備え、前記ヒータは、発熱線の外周を覆うように設けたエナメル層と、前記エナメル層の外側に絶縁被覆層を備えたことを特徴とする便座装置。
【請求項2】
エナメル層は、ポリエステルイミドおよびポリアミドイミドのうち少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1記載の便座装置。
【請求項3】
エナメル層の厚さおよび前記絶縁被覆層の厚さの合計が0.4mm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の便座装置。
【請求項4】
絶縁被覆層は、前記エナメル層より耐熱性の低い材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の便座装置。
【請求項5】
絶縁被覆層は、フッ素樹脂を含むことを特徴とする請求項4に記載の便座装置。
【請求項6】
絶縁被覆層は、ポリイミドを含むことを特徴とする請求項4または5に記載の便座装置。
【請求項7】
ヒータは、第1および第2の金属箔を備え、エナメル層および絶縁被覆層を備えた発熱線を前記第1の金属箔と前記第2の金属箔との間に挟まれるように間隔を開けて連続的に配設したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項8】
第1および第2の金属箔は、アルミニウムからなることを特徴とする請求項7記載の便座装置。
【請求項9】
発熱線は合金材料からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項10】
合金材料は、銀および銅を含むことを特徴とする請求項9に記載の便座装置。
【請求項11】
補強部材は、アルミニウム、銅、ステンレス、アルミめっき鋼および亜鉛アルミめっき鋼のうち少なくとも1つを含む材料からなることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の便座装置。

【図1】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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