説明

便座装置

【課題】 本発明は、布製の座面に小水や手洗い水の飛沫などの汚れがこびりつきにくい便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 便座2と、便座2を回動可能に軸支するケーシング1とを備えた便座装置において、便座2は、振動発生部6を内蔵した底部部材21と、クッション部22aの上面に、撥水性及び防水性を有する布地製座面部22bを設けた上部部材22とを接合してなり、振動発生部6による振動発生の有無を制御する制御部を備え、振動発生部6による振動を便座2の座面に伝達させるように振動発生部6の動作を制御する制御部を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座面を布地製とした便座と、前記便座を回動可能に軸支するケーシングとを備えた便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な便座はポリプロピレンで形成されており、座面が硬く、座り心地を改善したいというニーズが高まっていた。従来は、座面の形状を座り心地の良い形状にする等の改良が加えられてきた。また、やわらかい布地製の便座カバーを装着することでも座り心地を向上させることができる。
その中で、便座と便座カバーの間にクッション材を用いた考案が提案されている(特許文献1)。この技術によれば、便座カバーの下にクッション材があるので、座り心地がさらに向上するものである。
【特許文献1】実開昭59−44399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1においては、座面が布製の便座カバーで構成されているため、ポリプロピレン製の座面に比べて排泄物の跳ね返りや人の汗等の汚れがこびりつきやすいという問題があった。
そこで、本発明は、布製の座面に小水や手洗い水の飛沫などの汚れがこびりつきにくい便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、
本発明は、便座と、前記便座を回動可能に軸支するケーシングとを備えた便座装置において、
前記便座は、振動発生部を内蔵した底部部材と、座面を撥水性及び防水性を有する布地で構成した上部部材とを接合してなり、
前記振動発生部による振動発生の有無を制御する制御部を備え、
前記振動発生部による振動を前記座面に伝達させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、布製の座面に汚れがこびりつきにくい便座装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
図1は便座装置の斜視図、図2は便座への送風路を示す概略図、図3及び図4は便座の断面図(図4は、図3とは垂直な角度から切断した状態の断面図)、図5は便座内への振動子の配置状態を示す便座の概略斜視図である。
【0007】
図1及び図2に示すように、便座装置Aは、ケーシング1と、ケーシング1に対して回動可能に取付けられる便座2及び便蓋(図示省略)を備えている。また、ケーシング1の内部には、送風器3、加熱ヒータ4を有する風路5、及び送風器3や加熱ヒータ等の動作を制御する制御部(図示せず)を設けている。また、ケーシング内に、便座2に座った人の局部を洗浄する局部洗浄機構を内蔵させてもよい。
【0008】
ケーシング1内の風路5を通過した風は、風路5の一端部から便座2内に吹き込まれる。そして、便座2内を1周した風は、再度ケーシング1内の風路5の他端部に吸い込まれて送風器3に戻る。なお、加熱ヒータ4をONにしておけば、便座内を通過する風は温風となるので、温風と便座2とで熱交換を行い便座2の座面を暖めることができる。
【0009】
便座2は、図3、図4に示すように、底部部材21と、底部部材21の上面に接合された上部部材22とで構成される。
【0010】
底部部材21は、上板21aと底板21bを接合して内部を空洞としたポリプロピレン製の部材であり、その空洞部21cに前述した温風が通過するようになっている。
【0011】
上部部材22は、クッション部22aと、クッション部22aの上面と接着された座面部22bとで構成されている。座面部22bは、その表面が撥水性及び防水性を具備する布地で形成されている。また、座面部22bの上面を、大便器のボウルに向かう下り勾配としている。
【0012】
座面部22bには、気体の水蒸気は通過させるが液体の水は通過させない程度の大きさの微細孔(図示せず)が形成されており、また、液体の水の接触角度が大きく、従って濡れにくい材料により形成されている。これにより、座面部22bは、透湿性、防水性及び撥水性を有している。座面部22bは、例えば、疎水基を有する化学繊維からなる織布であり、例えば、フロロカーボン・ポリマーからなる織布であり、例えば、PTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene resin:4フッ化エチレン樹脂)やポリウレタンを延伸加工して得られた繊維からなる織布であり、例えば、前者ではジャパンゴアテックス株式会社製「ゴアテックス」(商標)のメンブレン(膜)であり、後者では帝人株式会社製「ウェルドライ」(商標)である。また、座面部22bの表面上にさらに、撥水性や強度を保つための保護層を設けても良い。このような保護層には、具体的には、例えば撥水処理加工されたポリエステル加工生地を用いることができる。
また、微細孔のない表皮材でも良い。具体的には、ポリウレタン製や塩化ビニル製の一般的な合皮素材や本皮であっても良い。
【0013】
クッション部22aは、層厚方向に力が印加されると圧縮し、力が印加されなくなると元の形状に復元する層である。また、その内部及び外部との間で空気を流通させる層である。すなわち、クッション部22aは、柔軟性及び通気性を有している。例えば、クッション部22aは、化学繊維からなる織物であり、その化学繊維の少なくとも一部は層厚方向に延びている。すなわち、繊維が層厚方向に配向した材料を用いることができる。また、クッション部22aにおいて、その繊維密度を疎とすれば、クッション部22aの空気拡散性が優れたものとなる。更に、クッション部22aの上下面は凹凸が少ないため、他の層との接着性が優れている。クッション部22aは、例えば、旭化成せんい株式会社製「フュージョン」(商標)により形成されている。このほか、東洋紡株式会社製「ブレスエアー」(商標)や帝人株式会社製「エアクイーン」(商標)によりクッション部22aを形成してもよい。また、吸排気層42の全体積に占める繊維の体積の割合は例えば1〜30体積%である。更に、表面の凹凸の高さは例えば0.05〜0.5ミリメートルである。
また、ポリエチレン或いはポリウレタンの発泡質のクッション材でも良い。発泡形状は独立気泡であっても、連続気泡であっても構わない。発泡倍率は2倍から50倍の範囲から選択可能である。厚みは1mmから20mmが好適であり、上記の条件と組み合わせても良い。例えば、三和化工株式会社製「サンペルカ」やイノアックポリウレタン株式会社のポリウレタンフォームによってクッション部を形成しても良い。
【0014】
底部部材21の内部には、図5に示すように便座内の複数の箇所に振動発生部6が設けられている。本実施形態においては、振動発生部6は、図4に示すように、底板21bから立ち上げられた支持板61に紐62を介して取付けられた振動子63である。この振動子63は、便座内を通過する風が支持板61に衝突することで乱流となり、その流れによってたなびくものである。振動子63が大きくたなびくと、振動子63が上板21a及び底板21bに衝突し、底部部材21に振動を付与する。底部部材21の振動は、その上面に接合されている上部部材22に伝達され、座面にも伝達する。
【0015】
なお、クッション部22aにより振動を増幅させて座面部22bに伝達させるようにすることも可能である。
【0016】
座面上に汗、尿又は手洗い水といった水系の汚れが残っている場合には、座面が撥水性であるため水系汚れが水玉状になりやすい。そこに、振動を付与すれば、その汚れは座面部22bの上面の下り勾配を伝って大便器のボウルに落ちる。
【0017】
このように、便座2の座面に水系の汚れがあっても、振動発生部6の作用によりその汚れを座面から排除することができるので、座面に汚れがこびりつきにくくなるのである。
【0018】
次に、制御部により制御される振動発生部6の動作について説明する。
図5〜図7は、それぞれ振動発生部6の動作の別の形態を示すフローチャートである。
【0019】
座面の汚れは、人がトイレを使用した後に発生する。そこで、図5のフローチャートでは、便座2に座っていた人が立ち上がったことを着座検出手段7が検知した場合に振動発生部6が振動を付与するものである。
通常は、第一速度の温風が便座内を通過しており、便座2の暖房を行なっている。ここでは、振動子63は上板21a又は底板21bに衝突しない程度にたなびいている。着座検出手段7が非着座を検知すると、タイマがオンされ、さらに第二速度で送風するように送風器3の動作を制御する。すると振動子63のたなびきが大きくなり、振動子63が上板21a又は底板21bに衝突する。すなわち、便座2から立ち上がったことにより、座面に振動を付与して、座面の水系汚れを大便器のボウルに落とすのである。よって、座面に水系汚れが発生してから直ちに振動するので、汚れのこびりつきをより確実に防止できる。なお、タイマが所定時間カウントした時点で、風の速度を第二速度から第一速度に変化させて、通常状態に戻す。この所定時間は、汚れが落ちる程度に振動する時間であり、例えば、30秒程度に定めることができる。
【0020】
図6のフローチャートは、便座装置Aに設けた人体検出装置8が、便器の前から人が居なくなったことを検知した場合に振動発生部6が振動を付与するものである。
通常は、第一速度の温風が便座内を通過しており、便座2の暖房を行なっている。ここでは、振動子63は上板21a又は底板21bに衝突しない程度にたなびいている。人体検出手段8が人不在を検知すると、タイマがオンされ、さらに第二速度で送風するように送風器3の動作を制御する。すると振動子63のたなびきが大きくなり、振動子63が上板21a又は底板21bに衝突する。すなわち、便器の前から立ち去ったことにより、座面に振動を付与して、座面の水系汚れを大便器のボウルに落とすのである。よって、用便後の手洗い水が座面にかかったとしても、その後振動子が振動するので、手洗い水のこびりつきを防止できる。なお、タイマが所定時間カウントした時点で、風の速度を第二速度から第一速度に変化させて、通常状態に戻す。この所定時間は、汚れが落ちる程度に振動する時間であり、例えば、30秒程度に定めることができる。
【0021】
図7のフローチャートは、便座装置Aに備えた人体検出装置8が、便器の前から人が居なくなったことを検知した場合、それから所定時間経過した後に振動発生部6が振動を付与するものである。
通常は、第一速度の温風が便座内を通過しており、便座2の暖房を行なっている。ここでは、振動子63は上板21a又は底板21bに衝突しない程度にたなびいている。人体検出手段8が人不在を検知するとタイマがオンされ、タイマが第一所定時間カウントすると、第二速度で送風するように送風器3の動作を制御する。すると振動子63のたなびきが大きくなり、振動子63が上板21a又は底板21bに衝突する。なお、第一所定時間は、トイレを使用した人がトイレから立ち去るまでの時間程度であり、具体的には90秒程度が好ましい。この例によれば、トイレから人が居なくなったと判断した時点で、座面に振動を付与して、座面の水系汚れを大便器のボウルに落とすのである。よって、振動子63の衝突音がトイレ使用者の耳ざわりになることがない。なお、タイマが第二所定時間カウントした時点で、風の速度を第二速度から第一速度に変化させて、通常状態に戻す。この第二所定時間は、汚れが落ちる程度に振動する時間であり、例えば、30秒程度に定めることができる。
【0022】
上述したように、本発明では、座面に振動を付与することで座面の水系汚れを大便器のボウルに落とすため、座面に汚れがこびりつくにくい便座装置を提供することができる。なお、座面が撥水性であることから、水系の汚れが最も落としやすいが、その他の汚れも座面に軽く付着している程度であれば、振動により落とすことが可能である。
【0023】
なお、本発明は、上述した実施形態に拘泥されず、さまざまな形態で実施することができる。以下、変形例について説明する。
【0024】
(1)本実施形態では振動子63をたなびかせる外因として風を利用したが、それに代えて、支持板61にモータを組込み、モータの回転力を利用して紐を回転させて振動子63を揺動させてもよい。
【0025】
(2)むろん、支持板61を上板21aから下方に突出させてもよい。
【0026】
(3)また、風やモータでたなびく振動子63を便座に内蔵するのに代えて、機械振動手段を便座に内蔵させてもよい。機械振動手段は、例えば、モータの回転軸に偏心錘りを取付けて、モータの回転を受けて回る偏心錘りによりモータにかかる負荷を変化させることにより振動させるような構成を採用することができる。
【0027】
(4)また、送風器3は、ケーシング1の内部に収納せずに、便座2の内部に収納させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の便座装置の斜視図である。
【図2】本発明の便座への風路を示す概略図である。
【図3】図2の便座の概略断面図である。
【図4】図2の便座を、図3とは垂直な角度から切断した概略断面図である。
【図5】便座内への振動子の配置状態を示す便座の概略斜視図である。
【図6】振動発生部の動作の第1の形態を示すフローチャートである。
【図7】振動発生部の動作の第2の形態を示すフローチャートである。
【図8】振動発生部の動作の第3の形態を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0029】
1 ケーシング
2 便座
21 底部部材
21c 中空部
22 上部部材
22a クッション部
22b 座面部
3 送風器
6 振動発生部
63 振動子
7 着座検出手段
8 人体検出手段
A 便座装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座と、前記便座を回動可能に軸支するケーシングとを備えた便座装置において、
前記便座は、振動発生部を内蔵した底部部材と、座面を撥水性及び防水性を有する布地で構成した上部部材とを接合してなり、
前記振動発生部による振動を前記座面に伝達させるように前記振動発生部の動作を制御する制御部を備えたことを特徴とする便座装置。
【請求項2】
前記上部部材は、前記底部部材の上面に接触するクッション部と、前記布地製の座面部とを有することを特徴とする請求項1記載の便座装置。
【請求項3】
前記底部部材は、内部を空洞とした中空部を備え、
前記振動発生部は、前記中空部の内部で外因を受けて揺動して前記中空部の内壁に衝突する振動子としたことを特徴する請求項1又は2に記載の便座装置。
【請求項4】
前記底部部材又は前記ケーシングに、前記中空部に風を送る送風器を内蔵させ、
前記外因は前記送風器から送られる風としたことを特徴する請求項3記載の便座装置。
【請求項5】
前記振動発生部は、前記底部部材に取り付けられて前記底部部材に振動を付与する機械振動手段としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の便座装置。
【請求項6】
さらに、着座検出手段を備え、
前記制御部は、前記着座検出手段が非着座を検出した際に、前記振動発生部による振動を前記座面に伝達させるように前記振動発生部の動作を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項7】
さらに、人体検出手段を備え、
前記制御部は、前記人体検出手段が人不在を検出した際に、前記振動発生部による振動を前記座面に伝達させるように前記振動発生部の動作を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項8】
さらに、人体検出手段を備え、
前記制御部は、前記人体検出手段が人不在を検出してから所定時間経過後に、前記振動発生部による振動が前記座面に伝達されないように前記振動発生部の動作を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の便座装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図5】
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