説明

便座装置

【課題】焦電センサが人体を短時間だけ検知しただけでは便蓋が開いてしまうことが防止される便座装置を提供する。
【解決手段】便器の後部上面に設置される便座ボックス2と、便座3及び便蓋4と、人体検知用の光電センサ7及び焦電センサ8と、センサ7,8の人体検知信号に基づいて便蓋4の作動を制御する制御手段とを備えている。焦電センサ8はトイレルーム内と、その入口付近の人体とを検知する。焦電センサ8の人体検知が所定時間T以上継続したときに便蓋4を開とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレの便器に設置される便座装置に係り、特に人体を検知して便蓋等を開閉(起立、倒伏)させる便座装置に関する。さらに詳しくは、人体検知センサとして焦電センサを採用した便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレ使用者を焦電センサや光電センサによって検知し、自動的に機器を作動させるよう構成した便座装置が周知である(特許文献1〜3)。特許文献1では、小便器に近づく人体を焦電センサで検知し、それ以降は赤外線投・受光式センサで人体を検知するようにしている。特許文献2の0031〜0032段落には、トイレ室への人体の入室を焦電センサで検知し、便器の前に立った人体を赤外線投光式センサで検知することが記載されている。
【0003】
特許文献3の0081〜0082段落には、便蓋が閉じた状態で焦電センサが人体を検知すると、便蓋を開けること、便蓋が開くと赤外線投光式センサが露出し、それ以降はこの赤外線投光式センサによって便器正面に立つ人体を検知することが記載されている。なお、この特許文献3の0081段落には、焦電センサが使用者を検知すると、便座を急速暖房することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平3−54215
【特許文献2】特開2008−240495
【特許文献3】特開2007−322253
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
焦電センサは、検知エリアが広いため、トイレルームのドアが全開ないし半開きとなっている状態にあるときにトイレルームの前を人が横切った場合でも、人体が焦電センサによって検知され得る。そのため、焦電センサを備えた便座自動開閉装置では、このような場合でも便座が開いてしまう。また、便座急速暖房装置では、このような場合でも便座に通電が行われることになる。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決し、焦電センサが人体を短時間だけ検知しただけでは便蓋が開いてしまうことが防止される便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(請求項1)の便座装置は、便器の後部上面に設置されるケースと、該ケースに開閉回動可能に支持された便座及び便蓋と、該ケースに設置された人体検知用の焦電センサと、該焦電センサの人体検知信号に基づいて便蓋の作動を制御する制御手段とを備えた便座装置において、該制御手段は、該焦電センサの人体検知が所定時間以上継続したときに便蓋を開とするよう構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の便座装置は、請求項1において、前記便座に便座暖房用ヒータが設けられており、前記制御手段は、前記焦電センサが人体を検知すると該ヒータへの通電を開始するよう構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の便座装置は、請求項2において、前記焦電センサは便蓋が起立したときに便蓋の背後となる位置に配置されており、該便蓋が起立したときに露呈して便器前方の人体を検知可能となる光電センサが前記ケースに設置されており、前記制御手段は、該光電センサが人体不検知となったとき又はそれから設定時間が経過した後、便座ヒータへの通電を停止すると共に、便蓋を閉とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の便座装置は、焦電センサによって人体を検知し、便蓋を開けるように構成した便座装置において、焦電センサが人体を所定時間以上継続して検知した場合に便蓋を開け、この所定時間経過前に該焦電センサによって人体が検知されなくなったときには、便蓋等を開けないようにしたものである。これにより、ドアが全開ないし半開きのトイレルームの前を人が横切っただけでは便蓋等が開くことが防止される。
【0011】
本発明では、焦電センサが人体を検知した場合に便座ヒータに通電を開始し、便座を急速暖房するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態に係る便座装置を備えた洋風便器の斜視図である。
【図2】図1の便器を設置したトイレルームの平面図である。
【図3】実施の形態に係る便座装置の回路ブロック図である。
【図4】実施の形態に係る便座装置の作動を示すタイミングチャートである。
【図5】実施の形態に係る便座装置の作動を示すタイミングチャートである。
【図6】実施の形態に係る便座装置の作動を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施の形態]
以下、第1図〜第5図を参照して第1の実施の形態について説明する。第1図は第1の実施の形態に係る便座装置を備えた洋風便器の斜視図、第2図はトイレルームの平面図、第3図は制御ブロック図、第4図及び第5図は制御内容を示すタイミングチャートである。
【0014】
洋風便器1の後部上面にケースとしての便座ボックス2が設置されている。この便座ボックス2に便座3及び便蓋4が起倒方向回動可能に取り付けられている。便座ボックス2内には、第3図の通り、この便座3の起倒駆動用の便座駆動装置5と便蓋4の起倒駆動用の便蓋駆動装置6とが設けられている。これらの駆動装置5,6はモータ及びギヤよりなる。
【0015】
便座ボックス2の前面には赤外線光電センサ7が設けられている。この光電センサ7は、赤外線の投光器と、反射赤外線を受光する受光器とからなるものであり、便器1の前に立つ人体(第2図のエリアAの人体)を検知するためのものである。便座ボックス2の上面にはトイレルームへの入室を検知する焦電センサ8が設けられている。この焦電センサ8は、トイレルーム11内の便器前方領域のほぼ全体と、ドア12近傍の廊下スペース13の検知エリアBの人体を検知可能である。
【0016】
便座ボックス2内には、この駆動装置5,6の駆動を制御するための制御ユニット9が設けられている。便座ボックス2には、後述のリモコン20からの赤外線信号光を受信するための信号光受信器10が設けられている。センサ7,8及び信号光受信器10からの信号は制御ユニット9に入力される。また、便座駆動装置5及び便蓋駆動装置6にそれぞれ設けられたリミットスイッチ(図示略)からは、便座3及び便蓋4の倒伏状態及び起立状態を示す信号が制御ユニット9に入力される。制御ユニット9は、便座3に設けられた便座ヒータ3aの通電制御も行うよう構成されている。
【0017】
この便座ヒータ3aは、トイレの非使用時には通電されず、焦電センサ8が人体を検知すると通電開始され、急速に昇温するよう構成された急速暖房タイプのものである。
【0018】
図示は省略するが、便座ボックス2には、便座3に着座した人体の臀部に向って温水を噴出する温水洗浄ノズル及びビデノズル、該臀部に向って温風を吹き出す温風乾燥ファン等が設けられている。
【0019】
この洋風便器1の側方のトイレルーム壁面にリモコン20が設置されている。このリモコン20には、肛門洗浄用操作スイッチ(シャワースイッチ)、ビデ洗浄用操作スイッチ、温風を吹き出させるドライスイッチ、肛門洗浄(シャワー洗浄)、ビデ洗浄、温風乾燥等の作動をストップさせるストップスイッチ等が設置されている。また、リモコン20には、洗浄ノズルの前進限位置を調節するスイッチ、洗浄の広がりを調整するためのワイド洗浄入/切スイッチのほか、便座3を開閉させる便座開閉スイッチと、洋風便器1の便鉢に多量の水を流す大洗浄用スイッチと、便鉢に少量の水を流す小洗浄用スイッチとが設けられている。
【0020】
リモコン20内には、前記各スイッチの操作信号を赤外線として便座ボックス2に向けて発信する発信回路が設置されている。
【0021】
第4図を参照してこの便座装置の制御の一例を説明する。第4図の通り、焦電センサ8が人体を検知するまでは、便座装置は、便蓋4が閉じ、且つ便座ヒータ3aへの通電が停止された待機状態となっている。第2図のように、トイレルーム11のドア12が半開きないし全開になっていると、焦電センサ8の検知エリアBは、トイレルーム11内からさらに廊下スペース13にまで広がっている。従って、トイレルーム11に入室せず、単にトイレルーム11の前の廊下スペース13を通り抜けただけでも人体が焦電センサ8によって検知されることになる。
【0022】
第4図では、人体がこのようにトイレルーム11前の廊下スペース13を単に通り抜けた場合、時刻tで焦電センサ8が人体を検知するが、その直後の時刻tで焦電センサ8が人体不検知となる。時刻tで焦電センサ8が人体を検知することにより、便座ヒータ3aに通電が開始されるが、時刻tでこの通電が停止される。この場合は、時刻tとtとの時間差は、t−tが所定値(タイムラグ時間)Tよりも小さいため、便蓋4は開かない。
【0023】
時刻tでトイレ使用者がトイレルーム11に入室し、便器1に近づく場合、ドア12付近で当該人体が焦電センサ8によって検知され、これに伴って便座ヒータ3aに通電が開始する。
【0024】
その後、人体は焦電センサ8によって検知され続ける。そして、tから所定時間Tが経過した時刻tになると、便蓋4が開く。なお、便蓋4が開くと、焦電センサ8は便蓋4の背後に隠れることになるので、この時刻t以降は光電センサ7によってトイレルーム11内の人体を検知する。この時刻tでは、時刻tからある程度時間が経過しており、人体は既に便器1の近くの検知エリアAに到達しているので、時刻tで便蓋4が開くと直ちに人体が光電センサ7で検知される。
【0025】
その後、時刻tにて人体が検知エリアAから離脱してトイレルームの出入口側に移動すると、便座ヒータ3aへの通電が停止され、それから若干時間が経過した時刻tになると便蓋4を閉める。なお、便蓋4を閉めるタイミングは時刻tすなわち人体が検知エリアAから離脱した時点としてもよい。
【0026】
便蓋4が閉まると、焦電センサ8が人体を検知するが、この場合は便蓋4を閉じたままとする。その後、人がトイレルーム11を出てドア12を閉めたり、検知エリアB外に立ち去った時刻tに焦電センサ8が人体不検知となる。
【0027】
このように、この実施の形態では、焦電センサ8が人体を検知しても所定時間Tのタイムラグを設け、この間に人体が不検知となるときには便蓋4を開けないので、開放したドア12の前を人が単に通過しただけでは、便蓋4は開かない。そのため、便蓋4が無駄に開閉することが防止される。上記のタイムラグ時間Tは0.5〜2秒程度とするのが好ましい。
【0028】
この実施の形態では、焦電センサ8によって人体が検知されると、直ちに便座ヒータ3aへの通電が開始されるので、便座3への着座時に便座3の温度は十分に高くなっている。なお、第4図のt〜tのように、単に人がトイレルーム11の前を通った場合にも便座ヒータ3aに通電が行われるが、この時間は短いので、電力消費量は少ない。
【0029】
トイレルーム11の入口付近に人体がT時間以上立ち止まり、その後、便器1に近づくことなく人体が焦電センサ8の検知エリアB外に立ち去ることもある。第5図を参照して、この場合の便座装置の制御の一例を説明する。
【0030】
第5図の通り、時刻tにトイレルーム11の入口付近に人体が立ち止まると、当該人体が焦電センサ8により検知され、これに伴って便座ヒータ3aに通電が開始される(作動−1)。その後、人体は焦電センサ8によって検知され続ける。そして、時刻tから所定時間Tが経過した時刻tになると、便蓋4が開く(作動−2)。前述の通り、便蓋4が開くと、焦電センサ8は便蓋4の背後に隠れるので、この時刻t以降は光電センサ7によってトイレルーム11内の人体を検知することとなるが、人体は入口付近に立ち止まっているので、光電センサ7によって人体が検知されない。光電センサ7によって人体が検知されないまま時刻tから設定時間T’が経過した時刻tになると、便蓋4が閉じ、便座ヒータ3aへの通電も停止される(作動−3)。なお、この設定時間T’は30〜60秒程度とすることが好ましい。
【0031】
便蓋4が閉じると、光電センサ7が便蓋4の陰に隠れるので、これ以降は焦電センサ8によってトイレルーム11の入口付近の人体を検知することとなる。第5図のように、時刻t〜tの間に人体がトイレルーム11の入口付近から立ち去った場合には、便蓋4が閉じた後、焦電センサ8が人体不検知となり、便座装置が待機状態に復帰する。
【0032】
時刻t以降もトイレルーム11の入口付近に人体が立ち止まっている場合には、便蓋4が閉じた後、再び焦電センサ8によって当該人体が検知される。この場合、上記の作動−1〜3が繰り返される。即ち、便蓋4が閉じた後、焦電センサ8によって人体が検知された場合には、再び便座ヒータ3aへの通電が開始される(作動−1)。その後、焦電センサ8が人体を検知したまま所定時間Tが経過すると、便蓋4が開く(作動−2)。その後、光電センサ7よって人体が検知されないまま設定時間T’が経過すると、便蓋4が閉じ、便座ヒータ3aへの通電も停止される(作動−3)。この作動−1〜3は、作動−3にて便蓋4が閉じた後に焦電センサ8が人体不検知となるまで繰り返される。
【0033】
なお、作動−1の後、所定時間Tが経過する前に焦電センサ8が人体不検知となった場合には、便座ヒータ3aへの通電が停止され、便座装置が待機状態に復帰する。作動−2の後、設定時間T’が経過する前に光電センサ7よって人体が検知された場合には、設定時間T’が経過しても便蓋4を開いたままとする。その後は、第4図における時刻t以降と同様の制御が行われる。
【0034】
作動−3において、便蓋4を閉じてから所定のタイムラグ(例えば5〜30秒程度)をおいて便座ヒータ3aへの通電を停止するようにしてもよい。この場合、作動−3にて便蓋4が閉じた後、焦電センサ8によって人体が検知された場合には、便座ヒータ3aへの通電を継続する。これにより、上記の作動−1〜3の繰り返し時における便座ヒータ3aのON/OFF切り替えを省略することができる。
【0035】
この洋風便器1を男子小用に供するべく入室者がリモコン20の便座開放スイッチを操作したり、直接に手で便座3を押し上げて便座3を開けることがある。このような場合には、便座開放スイッチが押されたとき又は便座開放がリミットスイッチで検知されたときに便座ヒータ3aへの通電を停止すればよい。その後、便座3がスイッチ操作又は手動にて閉められたときには、その時点で便座ヒータ3aへの通電を再開し、人体不検知となった時点(第4図ではt)で便座ヒータ3aへの通電を停止する。
【0036】
男子用トイレに設置された場合など、便器が主として男子小用に供されるときには、焦電センサ8が人体を検知しても便座ヒータ3aへの通電を行わないようにしてもよい。この場合は、リモコンの便座閉スイッチが操作されたとき、又は便座閉がリミットスイッチで検知されたときに便座ヒータ3aへの通電を開始し、その後、人体が検知されなくなったり、再度便座が開となったときに便座ヒータ3aへの通電を停止するのが好ましい。
【0037】
[別の実施の形態]
温水洗浄便座装置の1つのタイプとして、便座ボックスから側方に張出部(操作部と称されることもある。)を突設し、この張出部の上面にスイッチ類を設けたものも広く用いられている。
【0038】
このように張出部を有する温水洗浄便座装置の場合は、焦電センサを張出部に設けるのが好ましい。このようにすれば、便蓋が開となっても焦電センサで人体を検知することができる。この場合の作動例を第6図に示す。
【0039】
第6図においても、トイレルーム11のドア12は開いているものとする。このトイレルーム11の前を人体が単に通過しただけでは、便座3は開かない(時刻t11〜t12)。ただし、時刻t11〜t12の間には便座ヒータ3aへの通電が行われる。
【0040】
その後、時刻t13にて人体がトイレルーム11に入室しようとして焦電センサ8で検知されると、便座ヒータ3aへの通電が開始され、それから所定時間Tが経過した時刻t14で便蓋4が開く。この場合、便蓋4が開いても焦電センサ8は人体を検知し続けている。その後、時刻t15にて焦電センサ8が人体を検知しなくなると、便座ヒータ3aへの通電が停止されると共に、便蓋4が閉まる。なお、時刻t15から所定時間経過後に便蓋4を閉めてもよい。
【0041】
上記各実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の態様とされてもよい。
【0042】
例えば、上記の所定時間Tは長短調節できるようにしてもよい。この調節を行うために、専用のスイッチをリモコン20や便座ボックス2に設けてもよい。また、リモコン20の特定の複数のスイッチを同時に操作すると、この時間Tを調節できるようにしてもよい。
【0043】
上記各実施の形態では、ケースとして便座ボックスが示されているが、ロータンクカバーなどであってもよい。この場合、ロータンクカバーの上部(起立した便蓋よりも上方部)に焦電センサを設けるのが好ましい。この場合の制御システム及び制御例は第6図(張出部タイプ)と同様となる。
【符号の説明】
【0044】
1 洋風便器
2 便座ボックス
3 便座
4 便蓋
7 光電センサ
8 焦電センサ
11 トイレルーム
12 ドア
13 廊下スペース
20 リモコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の後部上面に設置されるケースと、
該ケースに開閉回動可能に支持された便座及び便蓋と、
該ケースに設置された人体検知用の焦電センサと、
該焦電センサの人体検知信号に基づいて便蓋の作動を制御する制御手段と
を備えた便座装置において、
該制御手段は、該焦電センサの人体検知が所定時間以上継続したときに便蓋を開とするよう構成されていることを特徴とする便座装置。
【請求項2】
請求項1において、前記便座に便座暖房用ヒータが設けられており、
前記制御手段は、前記焦電センサが人体を検知すると該ヒータへの通電を開始するよう構成されていることを特徴とする便座装置。
【請求項3】
請求項2において、前記焦電センサは便蓋が起立したときに便蓋の背後となる位置に配置されており、
該便蓋が起立したときに露呈して便器前方の人体を検知可能となる光電センサが前記ケースに設置されており、
前記制御手段は、該光電センサが人体不検知となったとき又はそれから設定時間が経過した後、便座ヒータへの通電を停止すると共に、便蓋を閉とすることを特徴とする便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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