説明

便座装置

【課題】情報量の多い表示を行うことができる透光区画を有した便座装置を提供する。
【解決手段】便座ボックス3の上面に透明な合成樹脂フィルム11、着色層12、表示20〜27付きの遮光層13及び透明合成樹脂プレート14よりなる透光区画10が設けられている。遮光層13には図形又は記号形状の非印刷部よりなる透光部が設けられ、表示20〜27が形成されている。表示20〜27に対面して、複数のLEDを有した光源ユニット15が設けられている。着色層12の色は透光区画10周囲の便座ボックス3と同色であり、便座ボックスの外観は一様である。LEDを点灯すると表示20〜27が現われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器に設置される便座ボックス等の便座装置に係り、特にケースの一部が透光性の区画となっており、この透光性の区画の裏側に光源が設けられている便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
洋風便器の後部上面には、便座ボックス又はロータンクカバーが設置され、この便座ボックス又はロータンクカバーに便座及び便蓋が起倒方向回動可能に取り付けられている。この便座ボックスやロータンクカバーのケースは合成樹脂製とされることが殆どである。
【0003】
特開2006−304821(特許文献1)には、便座ボックスの合成樹脂製ケースを、最外面の合成樹脂フィルムと、該合成樹脂フィルムの裏面の着色層と、該合成樹脂フィルム裏面に射出成形された透明樹脂製パネル基材とで構成されたものが記載されている。特許文献1では、この着色層を部分的に形成しないことにより当該部分に透光区画(特許文献1では「表示ランプ部」と称している。)を形成し、この透光区画の裏側にランプを設置している。ランプからの光は透光区画(表示ランプ部)を透過する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−304821
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の便座装置にあっては、透光区画(表示ランプ部)が単なる透光ゾーンとなっており、ランプからの光がそのまま透過するだけである。そのため、ランプのON、OFFの切り替えによる情報のみを表示できるだけであり、種々の情報を表示することはできなかった。
【0006】
本発明は、情報量の多い表示を行うことができる透光区画を有した便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の便座装置は、便器に設置されるケースと、該ケースに回動可能に取り付けられた便座とを有し、該ケースの一部が透光材よりなる透光区画となっており、該透光区画の裏側に光源が設けられている便座装置において、該透光区画に遮光層が設けられ、該遮光層の一部に、文字、図形又は記号形状の透光部が設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明では、透光区画の最外面が合成樹脂フィルムよりなり、この合成樹脂フィルムの裏面と前記遮光層との間に、前記透光区画周囲のケースと同色の着色層が形成されていることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様では、前記透光区画は、少なくとも、最外面の合成樹脂フィルムと、該フィルムの裏面に印刷により形成された前記透光部を有する前記遮光層と、該フィルムの裏面に一体に設けられた透光性合成樹脂プレートとによって構成されている。
【0010】
この透光性合成樹脂プレートと、その周囲の合成樹脂製ケースとは、インサート成形又は二色成形により一体化されていることが好ましい。
【0011】
また、この透光性合成樹脂プレートは、前記透光区画よりも側方に延出した延出部を有してもよい。
【0012】
この延出部に厚み方向に貫通した孔が設けられ、該孔内に前記合成樹脂製ケースを構成する合成樹脂が入り込んでもよい。
【0013】
本発明の別の一態様では、前記透光区画は、少なくとも、最外面の合成樹脂フィルムと、該フィルムの裏面に印刷により形成された前記透光部を有する前記遮光層と、該フィルムの裏面に対面して配置された、該フィルムとは別体の透光性合成樹脂プレートとによって構成されており、該透光性合成樹脂プレートは、前記光源を有した回路基板に支持されており、該回路基板が前記透光区画周囲のケースに取付手段によって取り付けられている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の便座装置にあっては、ケースの一部を透光区画とし、この透光区画の裏側に光源を配置しており、この光源を点灯すると、表示がケース外面に現出する。この表示を有するケースは、外面を面一状とすることができ、美観が良好となる。また、ケース外面の清掃も容易となる。
【0015】
この透光区画に遮光層が設けられ、この遮光層の一部に文字、図形又は記号形状の透光部が設けられている。このため、光源を点灯すると、この文字、図形又は記号形状の透光部を透過した光がケース外面に現出し、ケース外面に文字、図形又は記号が表示される。これにより、種々の情報を表示することが可能となる。
【0016】
合成樹脂フィルムの裏面と遮光層との間に透光区画周囲のケースと同色の着色層を形成しておくと、透光区画とその周囲とが同色となり、外観上一体化して視認されるようになり、ケースの美観が良好となる。
【0017】
本発明の一態様では、合成樹脂フィルムと、該フィルム裏面に印刷された遮光層と、フィルム裏面に一体に設けられた合成樹脂プレートとによって透光区画が形成されている。この合成樹脂プレートは、その周囲のケースとインサート成形又は二色成形によって一体化される。この場合、合成樹脂プレートに透光区画よりも側方に延出した延出部を設けておくことにより、合成樹脂プレートと周囲のケースとの一体性が向上する。また、この延出部に厚み方向に貫通した孔を設け、該孔内にケースを構成する合成樹脂を入り込ませることにより、合成樹脂プレートとケースとの一体性が向上する。
【0018】
本発明の別の一態様では、遮光層付きの合成樹脂フィルムと合成樹脂プレートとが別体とされている。この合成樹脂プレートは回路基板に支持され、該回路基板が透光区画周囲のケースにビス等の取付手段によって取り付けられている。この態様によれば、ケースに対して種々の合成樹脂プレートを取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態に係る便座装置を備えた洋風便器の斜視図である。
【図2】図1の便座装置の平面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図1の便座装置の製造方法を説明する断面図である。
【図5】図1の便座装置の透光区画の拡大平面図である。
【図6】別の実施の形態に係る便座装置の部分断面図である。
【図7】別の実施の形態に係る便座装置の部分断面図である。
【図8】別の実施の形態に係る便座装置の部分断面図である。
【図9】(a)図は別の実施の形態に係る便座装置の部分断面図である。(b)図は(a)図の便座装置組立て方法を説明する断面図である。
【図10】別の実施の形態に係る便座装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0021】
図1〜5は第1の実施の形態に係る便座装置1を示す。図1の通り、陶器製の洋風便器2の後部上面に便座ボックス3が設置され、該便座ボックス3に便座(図示略)及び便蓋6が起倒回動可能に取り付けられている。便座ボックス3の上面の側縁のセンサ設置部4にはトイレルーム入室者を検知する人体検知センサが設置されている。便座ボックス3の前面のセンサ設置部5には、便蓋6の起立後に人体を検知するための人体検知センサ及び着座検知センサが設けられている。
【0022】
図2の通り、便座ボックス3の上面には透光区画10が設定されている。図3の通り、この透光区画10は、透明な合成樹脂フィルム11と該フィルム11の裏面にそれぞれ印刷により形成された着色層12及び遮光層13と、フィルム11と一体に成形された透明な合成樹脂プレート14とで構成されている。なお、図3,4は厚み方向に拡大されており、便座ボックス3、フィルム11、着色層12、遮光層13及びプレート14は実際の厚みよりも厚く図示されている。
【0023】
この実施の形態では、図4に示すように、着色層12及び遮光層13を印刷したフィルム11(図4(a))を金型にセットして合成樹脂プレート14を射出成形するインサート成形によってフィルム11付きプレート14(図4(b))を成形し、さらにインサート成形又は二色成形することにより、フィルム付きプレート14が一体となった便座ボックス3を成形している。
【0024】
図3の通り、プレート14の裏面に近接又は当接するようにして、複数のLEDを有した光源ユニット15付き回路基板16が便座ボックス3内に設置されている。LEDは後述の各表示20〜27毎に設置されている。
【0025】
前記着色層12は、透光区画10周囲の便座ボックス3の色と同色である。なお、着色層12は、光源ユニット15からの光が透過しうる程度の、厚さの小さいものとなっている。
【0026】
遮光層13は、黒色又はグレーの印刷層よりなる。この遮光層13には、図5に示す文字、図形又は記号形状の非印刷部よりなる透光部が形成され、該透光部を通って光源ユニット15からの光が便座ボックス3外へ透過し、文字、図形又は記号形状の表示20〜27が人に視覚されるように構成されている。着色層12と遮光層13とを含めたフィルム11の厚さは0.3〜1mm程度が好ましいが、これに限定されない。
【0027】
表示20は、作動中の節電タイマーの残り時間を示すためのものであり、7セグメントデジタル数字4個を並列し、中央にコロンを配した時分表示である。節電タイマーとは、便座ボックス3内の温水ヒータ等の機器や便座ヒータを所定時間オフとするためのタイマーであり、6時間タイマー、8時間タイマー、24時間タイマーなどがある。例えば8時間タイマーをセットすると、セットしてから8時間はヒータ等がオフとなる。
【0028】
表示21は「電源」の文字を伴っている略C字形状のマークであり、電源スイッチがONとなっている場合に点灯する。
【0029】
表示22は便座設定温度を表示する二重楕円形状のマークであり、「便座温度」の文字を伴っている。表示22の裏側には、発光色の異なる3個のLEDが設置されており、便座設定温度の低、中、高に応じて青、オレンジ、赤色のLEDを点灯させるように構成されている。
【0030】
表示23,24,25は大きさが小、中、大の3個の葉形状のマークであり、「ECO」の文字を伴っている。便座ボックス3内の機器及び便座ヒータの設定温度を勘案して節電モードとなっているときには、節電モードの程度に応じて表示23,24,25を点灯表示する。
【0031】
表示26は便器洗浄機能の作動状態を示す三角形のマークを含むものであり、「洗浄準備中」、「洗浄中」、「大」、及び「小」の各文字を伴っている。リモコンの大洗浄スイッチ又は小洗浄スイッチを操作すると(脱座後自動洗浄機能を有する場合は、脱座が検知されると)、洗浄準備中の文字及びマーク26が点滅し、洗浄が開始すると「洗浄中」の文字と、そのときの洗浄状態に応じて「大」又は「小」の文字が点灯又は点滅する。
【0032】
表示27は、機器の故障を報知するためのものであり、E字形のマーク及び「エラー」の文字よりなる。機器に故障が生じたことが検知された場合には、この表示27を点灯又は点滅させる。
【0033】
なお、各表示20〜27の図形、記号部分だけでなく、文字部分についても透光部となっている。一例として「電源」の部分の拡大図を図5(b)に示す。この図5(b)のように非印刷部よりなる切り抜き文字状の透光部が形成されているので、各表示の裏側に配置されたLEDの光が透光部を透過し、「電源」などの文字が便座ボックスの外面に現出する。
【0034】
このように構成された便座装置においては、着色層12が周囲の便座ボックス3の色と同色であるので、透光区画10の色調は周囲と同一である。表示20〜27をすべて消灯させた場合、便座ボックス3の上面の外観が透光区画10を含めて一様であり、違和感はなく、美観に優れる。また、表示20〜27が点灯(点滅でもよい)すると多様な情報を表示することができる。各表示21〜27は、図形又は記号よりなるマークと文字とを組み合わせたものであり、情報内容を容易に理解することができる。表示20は文字(数字)よりなり、内容を容易に理解することができる。表示20に「節電タイマー」の文字よりなる透光部を設けてもよい。
【0035】
図6〜9を参照して別の実施の形態に係る便座ボックス3A〜3Dについて説明する。
【0036】
図6の便座ボックス3Aは、合成樹脂プレート14Aがフィルム12よりも側方に延出するように延出部14aを備えており、延出部14aの側端面だけでなく、延出部14aの上面側(便座ボックスの外面を向く面)にも透光区画10周囲の便座ボックス3Aの合成樹脂が回り込んでいる。このため、合成樹脂プレート14Aと便座ボックス3Aとの付着面積が大きいので両者の結合強度が高く、一体性に優れる。
【0037】
図7の便座ボックス3Bでは、合成樹脂プレート14Bは、延出部14aを有し、且つ該延出部14aに厚み方向の貫通孔14bが設けられている。透光区画10の周囲の便座ボックス3Bの合成樹脂がこの貫通孔14b内にまで入り込んでいる。特に、この実施の形態では、貫通孔14bは便座ボックス裏面側が拡大したテーパ形状となっている。このため、この合成樹脂プレート14Bと便座ボックス3Bとの結合強度が高い。
【0038】
図8の便座ボックス3Cでは、合成樹脂プレート14Cの厚み方向中心付近から側方に延出部14cが延出しており、この延出部14cの両面に、透光区画10周囲の便座ボックス3Cの合成樹脂が回り込んでいる。このため、合成樹脂プレート14Cと便座ボックス3Cとの結合強度が高い。
【0039】
図9(a),(b)の便座ボックス3Dでは、合成樹脂フィルム11が透光区画10の周囲にまで広がっている。透光区画10にあっては、フィルム11の裏面に着色層12及び遮光層13が印刷され、この遮光層13には図5と同一の表示20〜27(図9では図示略)が設けられている。便座ボックス3Dは、透光区画10に穴31を有している。この穴31はフィルム11によって便座ボックス外面側が閉鎖され、便座ボックス内側に向って開放している。
【0040】
この穴31に対し合成樹脂プレート14が嵌合されている。このプレート14は、別個に成形された小板状である。プレート14は光源ユニット15を有した回路基板16に支持され、回路基板16は取付手段としてのビス32によって便座ボックス3Dに取り付けられている。プレート14の上面は遮光層13に密着状に当接している。なお、回路基板16にはビス32の挿通孔33が設けられている。便座ボックス3Dには、ビス32のねじ込み用の穴35を有したボス部34が設けられている。
【0041】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態とされてもよい。例えば、図5以外の表示を設けてもよい。表示は棒グラフ状のものであってもよい。例えば節電タイマーの残り時間を示す表示は、携帯電話器の電池残量表示と同様に長さの異なる複数本の棒状表示を並列配置したものであってもよい。また、節電タイマーの残り時間が短くなるほど長さが短くなる帯状表示であってもよい。
【0042】
節電タイマーの表示は、「毎日a時〜b時節電」であってもよい。(a,bには該当する時刻の数値が入る。)節電タイマーの表示は、「節電時間をc時間短くしました」又は「節電時間をd時間長くしました」であってもよい。(c,dには該当する時間の数値が入る。)
【0043】
本発明では、図10のように、便蓋6’の後縁の左右両サイドに後方延出脚部6b,6bを設けることにより、該後方延出脚部6b,6b間に切り欠き状部6aを設け、便蓋6’を起立させたときでも切り欠き状部6aを通して透光区画10の表示を見ることができるようにしてもよい。図10の2点鎖線は起立状態の便蓋6’を示している。図10のその他の符号は図1と同じ部分を示している。
【0044】
本発明はロータンクカバーについても適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
3,3A〜3D 便座ボックス
10 透光区画
11 合成樹脂フィルム
12 着色層
13 遮光層
14 合成樹脂プレート
15 光源ユニット
16 回路基板
20〜27 表示
31 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器に設置されるケースと、該ケースに回動可能に取り付けられた便座とを有し、
該ケースの一部が透光材よりなる透光区画となっており、該透光区画の裏側に光源が設けられている便座装置において、
該透光区画に遮光層が設けられ、該遮光層の一部に、文字、図形又は記号形状の透光部が設けられていることを特徴とする便座装置。
【請求項2】
請求項1において、前記透光区画の最外面が合成樹脂フィルムよりなり、該合成樹脂フィルムの裏面と前記遮光層との間に、前記透光区画周囲のケースと同色の着色層が形成されていることを特徴とする便座装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記透光区画は、少なくとも、
最外面の合成樹脂フィルムと、
該フィルムの裏面に印刷により形成された前記透光部を有する前記遮光層と、
該フィルムの裏面に一体に設けられた透光性合成樹脂プレートと
によって構成されていることを特徴とする便座装置。
【請求項4】
請求項3において、前記透光性合成樹脂プレートと、その周囲の合成樹脂製ケースとがインサート成形又は二色成形により一体化されていることを特徴とする便座装置。
【請求項5】
請求項4において、前記透光性合成樹脂プレートは、前記透光区画よりも側方に延出した延出部を有していることを特徴とする便座装置。
【請求項6】
請求項5において、前記延出部に厚み方向に貫通した孔が設けられ、該孔内に前記合成樹脂製ケースを構成する合成樹脂が入り込んでいることを特徴とする便座装置。
【請求項7】
請求項1又は2において、前記透光区画は、少なくとも、
最外面の合成樹脂フィルムと、
該フィルムの裏面に印刷により形成された前記透光部を有する前記遮光層と、
該フィルムの裏面に対面して配置された、該フィルムとは別体の透光性合成樹脂プレートと
によって構成されており、
該透光性合成樹脂プレートは、前記光源を有した回路基板に支持されており、該回路基板が前記透光区画周囲のケースに取付手段によって取り付けられていることを特徴とする便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−85708(P2013−85708A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229005(P2011−229005)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】