説明

便座

【課題】上向き当接部を有した下側部材と下向き当接部を有した上側部材とを連結してなる便座であって、上向き当接部と下向き当接部との間の擦れ音が防止され、しかも製造も容易な便座を提供する。
【解決手段】便座50は、表側部材としての座表部20と、裏側部材としての座裏部30と、両者の間に介在された弾性材40とを備えている。座裏部30に弾性材40を装着しておき、下向き当接部21と上向き当接部31とを当接させる。弾性材40の突出部42の上面42aが下向き当接部21の平面21aに密着し、側面42bが下向き当接部21の段差面21bに密着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座に係り、特に表側部材と裏側部材とを弾性材を介して連結した便座に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器の便座は、座表部と座裏部の接合面を振動溶着等で溶着して、または接合面をコーティング処理して、便座の内部に水が侵入しないような構造にしている。しかし、かかる接合構造では、溶着機やコーティング処理を行う設備が必要であり、組立生産性が悪いという問題点があり、また溶着されているため分解することができず、内部のヒーター等を取り外して、素材ごとに分別することが困難で、リサイクル化ができないという問題点があった。
【0003】
かかる問題点を解決するものとして、特開2001−269289には、表側部材と裏側部材の接合面を当接させて接合する便器用部材の接合構造において、前記表側部材または裏側部材の接合面あるいは両方の接合面を柔軟性のある軟質樹脂とした便座が記載されている。
【0004】
第3図は、同号公報の便座の裏側部材を構成する座裏部1の斜視構成図であり、また第4図は、便座の表側部材を構成する座表部3を裏返した斜視構成図である。
【0005】
座裏部1には、周縁に外周接合片1aが一体状に立ち上げ形成されており、また、中央部の便座穴Hの外周にも、内周接合片1bが一体状に立ち上げ形成されており、内周接合片1bと外周接合片1a間に、ボス部1cが4個立ち上げ形成され、また、外周接合片1aの内側および内周接合片1bの外側に、所定間隔で爪片1d,1d,1d,1dが立設されたものとなっている。
【0006】
外周接合片1aの内側および内周接合片1bの外側に、第5図の通り、柔軟性を有する軟質樹脂2a,2bが一体化されている。座裏部1と座表部3はPP樹脂で形成されているが、この軟質樹脂2a,2bは、例えばエラストマー樹脂で構成されて、PP樹脂製の座裏部1の製造時に2色成形で一体化させている。軟質樹脂2a,2bは、外周接合片1a及び内周接合片1bよりも上方へ突出しており、その上面が接合面Pとなっている。
【0007】
座表部3は、第4図に示すように、外周に一体状に立ち上げて外周接合片3aが形成されており、この外周接合片3aの上面が接合面Pを構成している。また、便座穴Hの外周にも、立ち上げ状に内周接合片3bが一体形成されており、その上面が接合面Pを構成している。また、内周接合片3bと外周接合片3a間に、4本の補強突起3d,3d,3d,3dが突出状に一体形成されている。
【0008】
第6図の通り、座裏部1に対し座表部3を接合面Pで接合させる際に、前記軟質樹脂2aが座表部3の外周接合片3aの接合面Pに当接し、軟質であるため接合面Pに軟質樹脂2aが密着状態で接合されることとなり、コーティング処理を行わなくても、水等が内部に侵入しないような接合構造となり、確実に水密性を確保することができる。なお、軟質樹脂2bは座表部3の内周接合片3bの接合面Pに密着状態で接合され、水密性が確保される。
【0009】
その状態で各ボス部1cにビスを通して、補強突起3dにねじ込み4本のビスで座裏部1と座表部3を連結固定する。また、爪片1dを座表部3の係止部3cに係入させ、座裏部1と座表部3の連結を補助する。これは、4カ所のビスだけでは、撓みが生ずることがあるためであり、この複数の爪片1dと係止部3cとを係合させることにより、座裏部1と座表部3とを強固に固定する。
【0010】
従って、溶着機やコーティング処理を行う機械設備が不要であり、座裏部1に対し座表部3を押し付けて組付け、水密性を確保することができる。しかも、4本のビスを外すことにより、容易に座裏部1と座表部3を分解することができ、内部に配設されるヒーターを取り外して、樹脂素材を容易に分別することができ、リサイクル化が容易なものとなる。
【0011】
しかしながら、上記特開2001−269289では、座表部3(表側部材)の下向き当接部と、座裏部1(裏側部材)の上向き当接部とが摺動方向にズレ易く、着座等の荷重負荷に伴ってズレ動いて、異音(擦れ音)が発生することがある。
【0012】
かかる表側部材と裏側部材との間の擦れ音を防止するために、特開2005−131092には、第7図のように、裏側部材12(同号公報では便座下部と称している。)にリブ12bを設け、表側部材11(便座上部)に凹条を設け、リブ12bに弾性材13を装着し、リブ12bと凹条とを嵌合させることが記載されている。
【0013】
しかしながら、このようにリブと凹条とを嵌合させる場合、上向き当接部と下向き当接部とを高精度で製作する必要があり、製作コストが高くなる。
【特許文献1】特開2001−269289
【特許文献2】特開2005−131092
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、上向き当接部を有した下側部材と下向き当接部を有した上側部材とを連結してなる便座であって、上向き当接部と下向き当接部との間の擦れ音が防止され、しかも製造も容易な便座を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の便座は、表側部材の下向き当接部と裏側部材の上向き当接部とを、両者の間に弾性材を介して当接させ、該表側部材と裏側部材とを連結してなる便座において、該下向き当接部と上向き当接部との一方に、該便座の周方向に延在した凹条が設けられ、他方に、該凹条と非対面となる位置関係にて、周方向に延在した凸条が設けられており、該凹条に前記弾性材の一部が嵌合し、弾性材の残部は該凹条から突出した突出部となっており、該突出部の先端面と側面とが下向き当接部と上向き当接部との他方に当接していることを特徴とするものである。
【0016】
請求項2の便座は、請求項1において、前記突出部の先端面に、弾性材の延在方向に延在した細幅突起が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の便座にあっては、上向き当接部と下向き当接部との一方に弾性材が装着され、この弾性材の先端面及び側面が、上向き当接部と下向き当接部との他方の部材に当接している。この弾性材の摩擦力が大きいので、弾性材の先端面と該他方との当接面での摺動方向のズレ(擦れ)が防止され、擦れ音が防止される。
【0018】
また、弾性材の側面が該他方の部材に当接しており、両者の間の摩擦力が大きいので、上向き当接部と下向き当接部との上下方向のズレが防止され、このズレに因る擦れ音も防止される。
【0019】
なお、請求項2のように、突出部の先端面に、弾性材の延在方向に延在した細幅突起を設けておくと、弾性材の先端面と該他方の部材との間の密着性が高まり、異音発生防止効果やシール性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、第1図を参照して実施の形態について説明する。第1図は実施の形態に係る便座の周方向と垂直方向の断面図、第2図(a)は表側部材と下側部材との結合部を示す第1図のII部分の拡大図、第2図(b)は第2図(a)の分解図である。
【0021】
この便座50は、表側部材としての座表部20と、裏側部材としての座裏部30と、両者の間に介在された弾性材40とを備えている。
【0022】
第2図(b)の通り、座表部20の下向き当接部21は、最も下位となる平面21cと、該平面21cから立ち上がる段差面21bと、該段差面21bに連なる平面21aとからなる。平面21a,21c同士は平行である。
【0023】
座裏部30の上向き当接部31は、凹条32を除き平面にて構成されている。この凹条32は便座50の周方向に延在している。
【0024】
弾性材40は、この凹条32に嵌合された基部41と、上向き当接部31から上方に突出した突出部42と、該突出部42から上方に突出した細幅突起43とからなる。この弾性材40は、ゴム、エラストマー、軟質樹脂などよりなる。この弾性材40は、凹条32と同じく便座50の周方向に延在している。細幅突起43は、突出部42よりも細幅の三角形断面形状であるが、半円形、半楕円形、台形などの断面形状であってもよい。
【0025】
突出部42の幅は1〜5mm特に3〜4mm程度が好ましい。突出部42の厚みは1〜5mm特に2〜3mm程度が好適である。段差部21bの高さは、突出部42の厚みと等しいか、それよりも0.5〜1mm程度大きいことが好ましい。細幅突起43の基底部の幅は1〜5mm特に2〜3mm程度が好ましく、高さは0.5〜2mm特に0.5〜1mm程度が好ましい。
【0026】
なお、前記第3〜6図の従来例と同様に、座表部20と座裏部30からボス部51と補強突起52が複数個ずつ突設され、ビス53によって連結可能とされている。また、座裏部30から爪部55が突設され、座表部20の係止部56に係合可能とされている。
【0027】
座表部20の裏面には便座暖房用ヒータ57と均熱シート58とが取り付けられている。
【0028】
第2図(b)の通り、この座裏部30に弾性材40を装着しておき、下向き当接部21と上向き当接部31とを当接させる。
【0029】
このように両者を当接させると、弾性材40の突出部42の上面42aが下向き当接部21の平面21aに密着し、側面42bが下向き当接部21の段差面21bに密着する。なお、細幅突起43も平面21aに当接するが、細幅であるため押し潰され、平面21aに強く押し付けられる。細幅突起を設けることにより、これだけ押し潰すだけでよく反発力を小さくすることができる。
【0030】
なお、座表部20と座裏部30とをこのように当接させると、爪部55が係止部56に係合する。その後、ボス部51を通してビス53を補強突起52に締め込むことにより、座表部20と座裏部30とをしっかりと連結して便座50を完成させる。
【0031】
このようにして製作された便座50にあっては、下向き当接部21と上向き当接部31との間に弾性材40が介在し、該弾性材40の突出部42の上面42aが細幅突起43と共に平面21aに密着する。これにより、座表部20と座裏部30との合わせ面方向Aへのズレ動きが抑制され、便座50への着席時や起立時に異音(擦れ音)が発生することが防止される。
【0032】
また、突出部42の側面42bが段差面21bと密着するため、座表部20と座裏部30との接離方向Bへのズレ動きも抑制され、これに伴う異音発生も防止される。
【0033】
また、この便座50は、座表部20と座裏部30とに、溝と凸条とを嵌合可能に設けておくことが不要であり、座表及び座裏の仕上り精度が緩和され、製作が容易である。
【0034】
上記実施の形態では、弾性材40は基部41と、それよりも幅が大きい突出部42とを備え、この突出部42が基部41から両側に張り出すT字形断面形状となっているが、L字形断面形状であってもよい。また、弾性材は基部から突出部にかけて等幅とされてもよい。
【0035】
上記実施の形態では、弾性材40を座裏部30に装着し、座表部20の下向き当接部21に段差面21bを設けているが、上下逆にしてもよい。即ち、弾性材40を座表部20に装着し、座裏部30の上向き当接部31に段差面を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施の形態に係る便座の周方向と垂直方向の断面図である。
【図2】第2図(a)は表側部材と下向き当接部との結合部を示す第1図のII部分の拡大図、第2図(b)は第2図(a)の分解図である。
【図3】従来例に係る便座の座表部の斜視図である。
【図4】従来例に係る便座の座裏部の斜視図である。
【図5】従来例に係る便座の座裏部の断面図である。
【図6】従来例に係る便座の座裏部の断面図である。
【図7】別の従来例に係る便座の部分断面図である。
【符号の説明】
【0037】
20 座表部
21 下向き当接部
21a,21c 平面
21b 段差面
30 座裏部
31 上向き当接部
32 凹条
40 弾性材
41 基部
42 突出部
42a 突出部上面
42b 突出部側面
43 細幅突起
50 便座
51 ボス部
52 補強突起
53 ビス
55 爪部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側部材の下向き当接部と裏側部材の上向き当接部とを、両者の間に弾性材を介して当接させ、該表側部材と裏側部材とを連結してなる便座において、
該下向き当接部と上向き当接部との一方に、該便座の周方向に延在した凹条が設けられ、他方に、該凹条と非対面となる位置関係にて、周方向に延在した凸条が設けられており、
該凹条に前記弾性材の一部が嵌合し、弾性材の残部は該凹条から突出した突出部となっており、
該突出部の先端面と側面とが下向き当接部と上向き当接部との前記他方に当接していることを特徴とする便座。
【請求項2】
請求項1において、前記突出部の先端面に、弾性材の延在方向に延在した細幅突起が設けられていることを特徴とする便座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−6075(P2009−6075A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172570(P2007−172570)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】