説明

便座

【課題】 従来技術より底板及び着座面板の外周縁及び接着部の設計の自由度が高く、高い加工精度が必要でなく、振動溶着時の加圧によって割れ等の不具合が生じず、溶着ビート又は溶着ヒゲが外周縁に突出することを防止する便座を提供すること。
【解決手段】 便座1は、底板2と、底板2に被せて振動溶着法により一体化する着座面板3と、底板2と着座面板3が合わさる外周縁4と、外周縁4と間隔をおいた位置で底板2及び着座面板3が溶着して接合する溶着部5と、外周縁4と溶着部5の間に形成される空間6と、を備え、底板2に形成され、空間6に位置し、底板2及び着座面板3の溶着の際に発生する溶着ビート等9が外周縁4の外へ突出するのを防止する障害壁7を設けた構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底板と着座面板とを振動溶着法により溶着した便座に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂製品の部材どうしを接合する方法として、超音波や低周波を利用した振動溶着法が従来から広くから利用され、腰掛け式の便器に付帯する合成樹脂製の便座についてもこの振動溶着法が適用されている。便器用の便座としては、一枚の緩やかな円弧用の断面形状とした最も簡単なもののほか、たとえば暖房便座のようにヒータを内蔵するものや、局部洗浄機能を持つ温水洗浄便座のように人の着座を検知するためのセンサやその他の電気配線を収納するものでは内部を中空構造としたものがある。そして、後者のものでは便器本体側に臨む底板とこれに被さる着座面板の2つの部材を振動溶着法によって接合して製品化されている。振動溶着法では、溶着部に溶着ビート又は溶着ヒゲが発生することは避けられないことは従来から知られている。
【0003】
この問題に対して従来技術として、底板及び着座面板をそれぞれの外周縁と間隔をおいた位置の溶着部を振動溶着法により接合する便座において、溶着部より外側に位置して便座の外郭を相互の重合によって形成する底板または着座面板のそれぞれの部位の少なくとも一方を、振動溶着時の加圧によって撓み変形可能な肉厚とし、底板溶着治具及び面板溶着治具の少なくとも一方は、撓み変形可能な肉厚とした部位を自由端とする形状のものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−165331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来技術では、底板または着座面板の少なくとも一方を振動溶着時の加圧によって撓み変形可能な肉厚とした部位を自由端とする形状にする必要があり、製品設計の自由度が制限され、また高度な加工精度が求められ、コスト高の要因になる。また、振動溶着時の加圧によって撓み変形可能な肉厚部に割れ等の不具合を生じる虞がある。また、底板及び着座面板の振動溶着の際に発生する溶着ビート又は溶着ヒゲが外周縁に噛み込んで、外周縁の外へ突出する虞がある。溶着ビート又は溶着ヒゲが外周縁に噛み込んで、外周縁の外へ突出すると外観不良となり、人の手で溶着ビード又は溶着ヒゲを取り除く作業が必要で生産性の低下、コストの増大につながる。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みて成されたものであり、従来技術より底板及び着座面板の外周縁及び接着部の設計の自由度が高く、高い加工精度が不要で、振動溶着時の加圧による割れ等の不具合が生じず、溶着ビート又は溶着ヒゲが外周縁の外に突出することを防止する便座を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の課題解決手段は、底板と、前記底板に被せて振動溶着法により一体化する着座面板と、前記底板と前記着座面板が合わさる外周縁と、前記外周縁と間隔をおいた位置で前記底板及び前記着座面板が溶着して接合する溶着部と、前記外周縁と前記溶着部の間に形成される空間と、を備える便座であって、前記底板及び前記着座面板の少なくともいずれか一方に形成され、前記空間に位置し、前記底板及び前記着座面板の溶着の際に発生する溶着ビート又は溶着ヒゲが前記外周縁の外へ突出するのを防止する障害壁を設けた構成である。
【0008】
また、第2の課題解決手段は、前記障害壁は、前記空間の前記溶着部と前記外周縁を結ぶ位置に設けられる構成である。
【0009】
また、第3の課題解決手段は、前記障害壁は、前記底板の平面に突起した形状で設けられる構成である。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、底板及び着座面板の少なくともいずれか一方で、外周縁と溶着部の間の空間に位置する障害壁を備えるため、振動溶着の際に発生した溶着ビート又は溶着ヒゲが空間を通って外周縁の合わせ隙間から突出することを防止できる。従来技術のような底板または着座面板の少なくとも一方を振動溶着時の加圧によって撓み変形可能な肉厚とした部位を自由端とする形状が不要で、外周縁及び接着部の設計の自由度が高く、高い加工精度が不要で、振動溶着時の加圧によって割れ等の不具合が生じる虞がない。
【0011】
また、障害壁は空間内で溶着部と外周縁を結ぶ線上の位置に設けられるため、溶着の際の溶着ビート又は溶着ヒゲが延びて外周縁の合わせ隙間から突出することを防止できる。
【0012】
また、障害壁は、底板の平面に突起した形状で設けられるシンプルな構成のため、従来技術と比べて設計の自由度が高く、また高い加工精度が不要なため、低コスト化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の便座の裏面図である。
【図2】本発明の便座のA−A断面図である。
【図3】本発明の便座のB部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の温水洗浄装置の便座1の裏面図である。便座1は、熱可塑性樹脂から成る底板2と、底板2に被せて振動溶着法により一体化される熱可塑性樹脂から成る着座面板3と、から構成される。
【0016】
図2は、図1のA−A断面図である。底板2と着座面板3が合わさるB部は、外周縁4と、外周縁4と間隔をおいた位置で底板2及び着座面板3が溶着して接合する溶着部5と、外周縁4と溶着部5の間に形成される空間6と、を備える。底板2はほぼ一様な肉厚の平面で、外周縁4、溶着部5は便座1の全周に渡って形成される。
【0017】
図3は、図2のB部拡大図である。空間6には底板2に形成された障害壁7が設けられる。障害壁7は、空間6の溶着部5と外周縁4を結ぶ線上に位置し、底板2の平面から突起した形状である。
【0018】
本発明の便座1の溶着の際の障害壁7の機能について説明する。底板2と着座面板3は、図示しない溶着治具によって加圧と振動が加えられる。溶着部5は摩擦熱で溶融し、底板2と着座面板3は溶着部で溶着される。このとき、溶着部には摩擦熱で溶融した熱可塑性樹脂が溶着ビート等9(溶着ビート又は溶着ヒゲ)として発生する。障害壁7は空間6内で溶着部5と外周縁4を結ぶ線上の位置に設けられるため、溶着ビート等9が外周縁4の合わせ隙間8から外に突出するのを防止する。
【0019】
本発明では、底板2に外周縁4と溶着部5の間の空間に位置する障害壁7を備えるため、振動溶着の際に発生した溶着ビート等9が空間6を通って外周縁4の合わせ隙間8から外に突出することを防止できる。底板または着座面板の少なくとも一方を振動溶着時の加圧によって撓み変形可能な肉厚とした部位を自由端とする形状が不要で、外周縁4及び接着部5の設計の自由度が高く、高い加工精度が不要で、振動溶着時の加圧によって割れ等の不具合を生じない。
【0020】
また、障害壁7は空間6内で溶着部5と外周縁4を結ぶ線上の位置に設けられるため、溶着の際の溶着ビート等9が延びて外周縁4の合わせ隙間8から突出することを防止できる。
【0021】
また、障害壁7は、底板2の平面に突起したシンプルな形状であるため、従来技術と比べて設計の自由度が高く、また高い加工精度が不要なため、低コスト化が可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 便座
2 底板
3 着座面板
4 外周縁
5 溶着部
6 空間
7 障害壁
9 溶着ビート等(溶着ビート又は溶着ヒゲ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と、
前記底板に被せて振動溶着法により一体化する着座面板と、
前記底板と前記着座面板が合わさる外周縁と、
前記外周縁と間隔をおいた位置で前記底板及び前記着座面板が溶着して接合する溶着部と、
前記外周縁と前記溶着部の間に形成される空間と、を備える便座であって、
前記底板及び前記着座面板の少なくともいずれか一方に形成され、前記空間に位置し、前記底板及び前記着座面板の溶着の際に発生する溶着ビート又は溶着ヒゲが前記外周縁の外へ突出するのを防止する障害壁を設けたことを特徴とする便座。
【請求項2】
前記障害壁は、前記空間の前記溶着部と前記外周縁を結ぶ線上の位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の便座。
【請求項3】
前記障害壁は、前記底板の平面に突起した形状で設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の便座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−220954(P2010−220954A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74117(P2009−74117)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】