説明

便座

【課題】子供が利用するときに体の一部が便器側に落ち込むことを防止でき、しかも幼い子供が容易に着座できる便座を提供する。
【解決手段】環状又はU字状で中央に開口6を有する着座部1の少なくとも周方向の一部を膨張収縮可能な膨張収縮部2とする。この膨張収縮部2を径方向に膨張させてその内側部分を収縮状態よりも内側に位置させる手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便座に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な便座は環状又はU字状の着座部が大人に適したサイズとなっているため、幼い子供が着座部に着座した際に、着座部の中央の開口から体の一部が落ちる恐れがある。
【0003】
ここで、特許文献1には、U字状の着座部の周方向の両端部を近づけたり離したりすることで、着座部全体の横幅を利用者の体形に合わせて変更できるようにした便座が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−11791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、着座部が載置される便器のサイズは着座部のサイズに合うものである。このため、特許文献1の便座のように着座部の周方向の両端部を近づけて着座部全体の横幅を小さくした場合、着座部全体の横幅が便器の横幅よりも小さくなり、着座部の側面と便器の側面との間に段差が生じ、便器の上面が大きく露出する場合がある。そして、この便器の上面が小水等で汚れていると、着座部に着座する際に前記小水等が体に付く恐れがある。これを防ぐには便器の上面に体が触れないようにしながら、便器側面より内側に離れた着座部に着座する必要があり、幼い子供にとっては難しい動作となる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、子供が利用するときに体の一部が着座部の開口から落ち込むことを防止でき、しかも、着座部に子供が清潔且つ容易に着座できる便座を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の便座は、環状又はU字状で中央に開口を有する着座部の少なくとも周方向の一部を膨張収縮可能な膨張収縮部とし、この膨張収縮部を径方向に膨張させてその内側部分を収縮状態よりも内側に位置させる手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、前記膨張収縮部を弾性材料で形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明にあっては、子供が着座部に着座する際に、膨張収縮部を径方向に膨張させ、膨張収縮部の内側部分を収縮状態よりも内側に位置させることで、着座部の開口の面積を小さくできる。このため、子供が便座を利用するときに体の一部が着座部の開口から落ち込むことを防止できる。また、着座部の開口の面積を小さくする際には、膨張収縮部を径方向に膨張させるので、着座部の開口を小さくしたときにも着座部の外径を大きく保つことができる。このため、着座部を便器上に載置したときに、着座部の側面と便器の側面との間に段差が生じないようにでき且つ便器の上面が露出しないようにできる。従って、幼い子供も便器上に載置した着座部に容易且つ清潔に座ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の一例の便座を示し、(a)は膨張収縮部が収縮状態にあるときの便座の平面図であり、(b)は膨張収縮部が膨張状態にあるときの便座の平面図である。
【図2】(a)は図1(a)のA−A′断面図であり、(b)は図1(b)のB−B′断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。図1及び図2に示される本実施形態の便座は、一般的な便座と同様に洋式便器上に回動自在に支持され、横に倒して洋式便器の上面に載置した使用状態から起立させた非使用状態まで回動できるようになっている。なお、以下では特に記載する場合を除き横に倒した使用状態の便座について説明し、便器使用の際に便座に座った使用者の正面側を前方(図1(a)中矢印a)、前記使用者の背面側を後方(図1(a)中矢印b)として説明する。
【0012】
本実施形態の便座はその外郭をなす着座部1で主体が構成されている。着座部1は平面視で前後に長い楕円環状に形成され、その中央には開口6が形成され、また、中空になっている。着座部1は全体が伸縮性を有するゴムやシリコン等の弾性材料からなり、着座部1の周方向の一部を構成する後部を、図1中矢印cに示す径方向(平面視で着座部1の周方向に直交する方向)に膨張収縮可能な膨張収縮部2としている。膨張収縮部2は、例えば径方向の内側部分の伸縮性を径方向の外側部分よりも高める等、各部における伸縮性を異ならせることで、着座部1の径方向の内側に向けて膨張しやすく、径外方向を含めた他の方向には膨張し難くなっている。
【0013】
膨張収縮部2の内部には膨張収縮部2を着座部1の径方向に膨張収縮させる手段が設けられている。以下、この手段を膨張収縮手段と記載する。膨張収縮手段は、モーター3と、モーター3により回転駆動する送りねじ軸5と、送りねじ軸5がねじ込まれた移動部材4で構成され、移動部材4は着座部1の後端部に配置されている。図2(a)に示すように移動部材4の厚みは膨張収縮部2の厚みと略同じであり、また、前面は膨張収縮部2の前面部に沿うよう着座部1の周方向から見た断面で弧状に形成されている。
【0014】
図1(a)及び図2(a)に示す収縮状態にある膨張収縮部2を膨張収縮手段により膨張させるには、モーター3を駆動して送りねじ軸5を所定方向に回転し、送りねじ軸5により移動部材4を膨張収縮部2の上下の内面に沿って前方に移動させる。すると、この移動部材4は図1(b)及び図2(b)のように前面で膨張収縮部2の前面部を前方に押圧し、これによって図1(b)のように膨張収縮部2は着座部1の径方向の内側に向けて膨張し、着座部1の径方向における内側部分が収縮時よりも内側に配置される。この膨張状態では、膨張収縮部2の外側部分は収縮時と略同位置(同位置あるいはやや外側)に配置される。また、膨張収縮部2の幅(着座部1の径方向の寸法)が収縮状態より大きくなり、しかもこの膨張収縮部2の幅は、着座部1の後端部に位置する部分が最も大きくなり且つここから着座部1の周方向において離れる程徐々に小さくなる。そして、この着座部1の膨張時における着座部1内側の開口6は円形となってその開口面積は収縮時よりも小さくなる。
【0015】
図1(b)、図2(b)に示すように膨張状態にある膨張収縮部2を膨張収縮手段により収縮させるには、モーター3を駆動して送りねじ軸5を前記膨張時とは逆向きに回転し、送りねじ軸5により移動部材4を膨張収縮部2の上下の内面に沿って後方に移動させる。これにより膨張収縮部2は図1(a)、図2(a)のように自己の収縮力で収縮する。
【0016】
前記便座を大人が利用する場合、着座部1の膨張収縮部2を図1(a)や図2(a)に示す収縮状態とする。このように膨張収縮部2を収縮させた状態にある着座部1は外径、内径共に大人に適したサイズとなる。
【0017】
一方、子供が利用する場合、着座部1の膨張収縮部2を図1(b)や図2(b)に示す膨張状態とする。このように膨張収縮部2を膨張させた状態にある着座部1は開口6の面積が小さくなるため、子供が利用するときに体の一部が開口6から落ち込むことを防止できる。また、着座部1の外径は膨張収縮部2が収縮状態にあるときと略同じであるので、着座部1を便器上に載置したときに、着座部1の側面と便器の側面との間に段差が生じず且つ便器の上面が露出しないようにできる。すなわち、膨張収縮部2を径方向の内側部分が収縮状態よりも内側に位置するように径方向に膨張させるものであるので、既述のように開口6を小さくしたときにも着座部1の外径を大きく保つことができ、これにより幼い子供も便器上に載置した着座部1に容易且つ清潔に座ることができる。
【0018】
また、本実施形態では膨張収縮部2を伸縮性を有する弾性材料で形成してあるので、膨張収縮部2により利用者の臀部を柔らかく受け止めることができる。
【0019】
なお、本実施形態1では、着座部1の後部を膨張収縮部2としたが、前部や側部、あるいは着座部1の全体を径方向に膨張収縮可能な膨張収縮部とし、これを膨張収縮手段により径方向に膨張させて内側端部を収縮状態よりも内側に位置するようにしてもよい。すなわち、着座部1の少なくとも周方向の一部を膨張収縮部とすれば本実施形態と同様の効果が得られる。また、着座部1の全体を弾性材料で形成したが、膨張収縮部2を形成するにあたって、膨張収縮部2に対応する部分のみを弾性材料で形成したり、膨張収縮部2の一部のみを弾性材料で形成しても構わない。また、膨張収縮手段はモーター3により移動部材4を駆動するものに限られず、例えば水圧や空気圧を用いて移動部材4を駆動したり、水圧や空気圧を用いて直接膨張収縮部を膨張収縮させるものであってもよい。また、本実施形態の着座部1は平面視で環状に形成されているが、前方又は後方に開口したU字状に形成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 着座部
2 膨張収縮部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状又はU字状で中央に開口を有する着座部の少なくとも周方向の一部を膨張収縮可能な膨張収縮部とし、この膨張収縮部を径方向に膨張させてその内側部分を収縮状態よりも内側に位置させる手段を備えたことを特徴とする便座。
【請求項2】
前記膨張収縮部を弾性材料で形成したことを特徴とする請求項1に記載の便座。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−229570(P2011−229570A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100273(P2010−100273)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】