説明

便採取装置

【課題】 排泄時の全ての便を衛生的に採取することが可能であって、尿と分離して便のみを収容することができる便採取具を提供すること。
【解決手段】 洋式便器の便座の前方に尿を便器内に排泄する空間を有して装着される、略リング状に形成された装着部材と、前記装着部材に一体的に形成され、前記装着部材を前記便座に装着した状態で、前記便座に対して前記装着部材を係止する係止部と、柔軟性のある袋であって、袋の開口部を前記装着部材の内周に沿って装着する便採取袋と、を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便を採取する便採取具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術としては、特許文献1、特許文献2に記載の技術が開示されている。特許文献1には、洋式トイレの便採取時に用いる便採取テープを便座に貼り付ける検便採取具が開示されている。特許文献2には、洋風大便器に装着する便器用使捨て排便パックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−085520号公報
【特許文献2】特開2000−201857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、薬や健康食品等の開発において、便の一部ではなく排泄時の全ての便を採取して検査を行うことが求められている。
しかしながら、特許文献1に記載の検便採取具は便の一部しか採取できず、この検便採取具自体で採取した便を収容することはできず、別途便を収容するために器具が必要となる。
特許文献2に記載の便器用使捨て排便パックは排泄時の全ての便を採取することができるし、採取した便を収容することもできるが、採取した便に尿が混入してしまうため便のみを採取することができなかった。
【0005】
本発明は上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、排泄時の全ての便を衛生的に採取することが可能であって、尿と分離して便のみを収容することができる便採取具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明においては、洋式便器の便座の前方に尿を便器内に排泄する空間を有して装着される、略リング状に形成された装着部材と、前記装着部材に一体的に形成され、前記装着部材を前記便座に装着した状態で、前記便座に対して前記装着部材を係止する係止部と、柔軟性のある袋であって、袋の開口部を前記装着部材の内周に沿って装着する便採取袋と、を設けた。
【発明の効果】
【0007】
よって、排泄時の全ての便を衛生的に採取することが可能であって、尿と分離して便のみを収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の装着部材の構成図である。
【図2】実施例1の便採取袋の構成図である。
【図3】実施例1の運搬袋の構成図である。
【図4】実施例1のクリップの構成図である。
【図5】実施例1の便採取装置の送付方法を説明する図である。
【図6】実施例1の便採取袋を装着部材に装着する方法について説明する図である。
【図7】実施例1の装着部材を洋式トイレの便座に装着する方法について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の便採取装置を実現する最良の形態を、実施例1に基づいて説明する。
【0010】
[実施例1]
実施例1の便採取装置の構成について説明する。
【0011】
〔各部材の構成〕
図1は、装着部材1の構成図である。装着部材1は略楕円形をし、内部に貫通孔2をリング状部材である。この装着部材1には長径方向に突出した係止部3が一体的に形成されている。装着部材1および係止部3は樹脂で形成されている。
【0012】
図2は、便採取袋4の構成図である。便採取袋4は柔軟性があり、空気を通さない非水溶性の素材で形成されている。便採取袋4の開口部の外周は装着部材1および係止部3の外周よりも大きく形成されている。この便採取袋4は、開口部付近に第1ファスナ5を有し、第1ファスナ5よりも内側に第2ファスナ6を有している。第1ファスナ5と第2ファスナ6との距離は、便採取袋4の開口部を装着部材1の開口部2から外周にかけてひと巻きするのに必要な程度に設定する。なお、それ以上に距離を設定しても良い。第2ファスナ6より内側の容積は、1回の排泄時に排泄される全ての便を収容するのに十分な容積を確保して形成されている。
【0013】
図3は、運搬袋7の構成図である。運搬袋7は空気を通さず、不透明な素材で形成されている。この運搬袋7は開口部付近にファスナ8を有し、ファスナ8の内側の容積は、便を採取後の便採取袋4を収容するのに十分な容積を確保している。また、運搬袋7には図外の脱酸素剤が取り付けられており、便を採取後、この脱酸素剤と共にファスナ8により封止することで、便の酸化等を抑制する。
【0014】
図4は、クリップ12の構成図である。クリップ12は、一枚の細長の金属性または樹脂製の板から形成されており、一端側が開口し上板12aと下板12bとの間でものを挟みこめるように形成されている。
【0015】
〔便採取袋の装着方法〕
図5は、便採取装置の送付方法を説明する図である。送付時には便採取袋4に装着部材1を面ファスナ10により固定して送付する。便を採取する際には、面ファスナ10を剥がし便採取袋4から装着部材1を外して、次に説明するように便採取袋4を装着部材1に装着する。
【0016】
図6は、便採取袋4を装着部材1に装着する方法について説明する図である。便採取袋4を装着部材1の貫通孔2に挿入し、この便採取袋4の開口部を装着部材1の外周側に巻き込んで、便採取袋4を装着部材1に装着する。また、装着部材1に便採取袋4を装着した後に、便採取袋4の上から係止部3をクリップ12で挟んでいる。
【0017】
〔装着部材の装着方法〕
図7は、装着部材1を洋式トイレの便座9に装着する方法について説明する図である。図7は説明のため便採取袋4を取り付けていない状態で示している。装着部材1は、便座9の後方に配置し、係止部3を便座9に係止して装着する。装着部材1の前方は、便座9の貫通孔11の前後方向に対して3分の1程度の空間を確保し、尿が直接便器内に排泄されるようにしている。
【0018】
〔便採取方法〕
排泄を行う際には、肛門が装着部材1の貫通孔2内に位置するように着座する。排泄を行うと大便は便採取袋4に採取され、尿は便器内に排泄される。排泄後、装着部材1に巻き付けていた便採取袋4を取り外し、開口部を元の状態に戻してから第1ファスナ5と第2ファスナ6により密閉する。その後、運搬袋7に便採取袋4を収容して、脱酸素剤と共に運搬袋7のファスナ8により密閉する。
【0019】
〔作用〕
実施例1の便採取装置の作用について説明する。
近年、薬や健康食品等の開発において、便の一部ではなく排泄時の全ての便を採取して検査を行うことが求められている。
従来の検便用の便採取装置は便の一部しか採取することができず、上記のような要求を満たすことができなかった。
【0020】
排泄時の全ての便を採取するものとして、災害時等に水を使えない場合に洋式便器に装着される簡易トイレがある。しかしながら、このような簡易トイレにあっては便と尿が混在した状態で採取するため、便のみを採取することができなかった。
【0021】
また排泄時の全ての便を採取するために、プラスチック製容器等に採取する方法が用いられている。しかし、排泄時に便が飛散してしまう問題があった。また検査に際し、採取した便を均一にするために攪拌する必要があるが、便をプラスチック製容器等に採取した後に、棒などを用いて便の攪拌を行っていたが、均一になるまで攪拌することが困難であった。
【0022】
そこで実施例1の便採取装置においては、洋式便器の便座の前方に尿を便器内に排泄する空間を有して装着される、略リング状に形成された装着部材1と、装着部材1に一体的に形成され、装着部材1を便座9に装着した状態で、便座9に対して装着部材1を係止する係止部3と、柔軟性のある袋であって、袋の開口部を装着部材1の内周に沿って装着する便採取袋4とを設けた。
【0023】
この構成により、装着部材1は洋式便器の便座の前方に尿を便器内に排泄する空間を有して装着されるため、便に尿が混入することなく便のみを採取することができる。また、係止部3により便座9に装着部材1を安定して装着することができる。また便採取袋4は柔軟性のある袋であるため、便採取後に便採取袋4の上から手で便を攪拌することが可能となるため、便を均一に攪拌することを容易にすることができる。また便採取袋4は柔軟性のある袋であるため、便採取時の便の飛散を抑制することができる。
【0024】
また便を便採取袋4に採取した状態で、保存、運搬を行う必要があるが、その際に便の臭いが周囲に拡散するおそれがあった。また腸内は嫌気状態であり、便を良好な状態で保存するためには嫌気状態を確保する必要があった。
そこで実施例1の便採取装置においては、便採取袋4を、空気を通さない素材で形成することとした。
この構成により、便の臭いが周囲に拡散することを防止することができる。また腸内と同様に嫌気状態を保つことができ、便の保存状態を良好に保つことができる。また、脱酸素剤を袋内に一緒に封入することで、便の酸化を抑制することができる。
【0025】
更に実施例1の便採取装置においては、便採取袋4の開口部付近に第1ファスナ5と、開口部より内側に第2ファスナ6の2箇所に設けた。
【0026】
この構成により、万が一、一方のファスナが開封したとしても、他方のファスナにより密閉状態を保つことができるため、便の臭いが周囲に拡散することを防止することができる。また腸内と同様に嫌気状態を保つことができ、便の保存状態を良好に保つことができる。
【0027】
また採取した便が便採取袋4の開口部付近に付着すると、便採取袋4を密閉するなどの作業の際に、便が外部に漏れる、手に付着するといった問題があった。
そこで実施例1の便採取装置においては、便採取袋4は、装着部材1の内周側から外周側に巻き込んで、装着部材1に装着するようにした。
この構成により、便採取後に装着部材1から便採取袋4を取り外すと、採取した便と開口部との間に距離があるため、便が外部に漏れることや手に付着することがなく衛生的に作業を行うことができる。
【0028】
また排泄中に人が座り直す場合や排泄された便の重みによって、便採取袋4が装着部材1から外れる恐れがあった。
そこで実施例1の便採取装置においては、便搾取袋4を装着部材1に装着した後、係止部3を便採取袋4の上からクリップ12で留めた。
よって、便採取袋4が装着部材1から外れることを防止することができる。
【0029】
また採取した便が外部に見えると、運搬時に周囲の人に不快感を与えるおそれや、運搬を行う人自身にも恥辱を与えるおそれがあった。
そこで実施例1の便採取装置においては、便採取袋4を収容する不透明な袋である運搬袋7を設けた。
この構成により、外部からは採取した便が見えないため、運搬時に周囲の人に不快感を与えることや、運搬を行う人に恥辱を与えることを防止することができる。また便採取袋4と運搬袋7とにより袋が二重となっているため、強度を確保するとともに臭いの拡散を防止することができる。
【0030】
〔実施例1の効果〕
次に実施例1の効果について以下に列記する。
【0031】
(1)洋式便器の便座9の前方に尿を便器内に排泄する空間を有して装着される、略リング状に形成された装着部材1と、装着部材1に一体的に形成され、装着部材1を便座9に装着した状態で、便座9に対して装着部材1を係止する係止部3と、柔軟性のある袋であって、袋の開口部を装着部材の内周に沿って装着する便採取袋4とを設けた。
【0032】
よって、便に尿が混入することなく便のみを採取することができる。また、便座9に装着部材1を安定して装着することができる。また、便採取後に便採取袋4の上から手で便を攪拌することが可能となるため、便を均一に攪拌することを容易にすることができる。また、便採取時の便の飛散を抑制することができる。
【0033】
(2)便採取袋4を、空気を通さない素材で形成した。
よって、便の臭いが周囲に拡散することを防止することができる。また腸内と同様に嫌気状態を保つことができ、便の保存状態を良好に保つことができる。
【0034】
(3)便採取袋4を、開口部と開口部より内側との2箇所に第1ファスナ5、第2ファスナ6を設けた。
よって、一方のファスナが開封したとしても、他方のファスナにより密閉状態を保つことができるため、便の臭いが周囲に拡散することを防止することができる。また腸内と同様に嫌気状態を保つことができ、便の保存状態を良好に保つことができる。
【0035】
(4)便採取袋4は、装着部材1の内周側から外周側に巻き込んで、装着部材1に装着した。
よって、便採取後に装着部材1から便採取袋4を取り外すと、採取した便と開口部との間に距離があるため、便が外部に漏れることや手に付着することがなく衛生的に作業を行うことができる。
【0036】
(5)便搾取袋4を装着部材1に装着した後、係止部3を便採取袋4の上からクリップ12で留めた。
よって、便採取袋4が装着部材1から外れることを防止することができる。
【0037】
(6)便採取袋4を収容する不透明な袋である運搬袋7を設けた。
よって、外部からは採取した便が見えないため、運搬時に周囲の人に不快感を与えることや、運搬を行う人に恥辱を与えることを防止することができる。また便採取袋4と運搬袋7とにより袋が二重となっているため、強度を確保するとともに臭いの拡散を防止することができる。
【0038】
[他の実施例]
以上、本発明を実施するための最良の形態を、実施例1に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は、実施例1に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0039】
例えば、実施例1の便採取装置では係止部3を装着部材1には長径方向に突出させて形成したが、係止部3は装着部材1を便座9に係止させることができれば良く、特に限定しない。
また便採取袋4の素材は透明でも不透明でも良く特に限定しない。
また、実施例1では便を検査機関に引き渡すための便採取装置について説明したが、携帯用の簡易トイレとして本発明の便採取装置を使用してもよいことは言うまでもない。近年、森林奥地等への自然体験ツアー(エコツアー等)では、環境保護の観点から、尿については自然に戻し、便については持ち帰るという考えがある。この考えに従えば、本発明の便採取装置の利用は最適であり、新たなニーズに応えることができる。このときは、脱酸素剤に換えて、脱臭剤を付属させることが有益である。
【符号の説明】
【0040】
1 装着部材
2 貫通孔
3 係止部
4 便採取袋
4 便採取袋
5 第1ファスナ
6 第2ファスナ
7 運搬袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋式便器の便座の前方に尿を便器内に排泄する空間を有して装着される、略リング状に形成された装着部材と、
前記装着部材に一体的に形成され、前記装着部材を前記便座に装着した状態で、前記便座に対して前記装着部材を係止する係止部と、
柔軟性のある袋であって、袋の開口部を前記装着部材の内周に沿って装着する便採取袋と、
を設けたことを特徴とする便採取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の便採取装置において、
前記便採取袋は、空気を通さない素材で形成されていることを特徴とする便採取装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の便採取装置において、
前記便採取袋は、開口部と開口部より内側との2箇所にファスナを設けたことを特徴とする便採取装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の便採取装置において、
前記便採取袋は、前記装着部材の内周側から外周側に巻き込んで、前記装着部材に装着することを特徴とする便採取装置。
【請求項5】
請求項4に記載の便採取装置において、
前記便搾取袋を前記装着部材に装着した後、前記係止部を前記便採取袋の上からクリップで留めたことを特徴とする便採取装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の便採取装置において、
前記便採取袋を収容する不透明な袋である運搬袋を設けたことを特徴とする弁採取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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