説明

便蓋及び便器

【課題】比較的高いレベルに、且つ便鉢から後方へ離隔した位置に物品を載置することができる便蓋と、この便蓋を備えた便器を提供する。
【解決手段】便蓋4は、起立状態において下半側を占める下部5と、起立状態において上方側となる上部6との2体よりなり、該下部5と上部6とはヒンジ7によって回動可能に連結されている。上部6には、ヒンジ7の近傍に、左右方向に延在した、物品落下防止用の壁状部8が設けられている。便蓋4を起立させ、便蓋4が鉛直よりも後傾した状態となると、上部6が自重によって後方へ回動して略水平となる。この上部6の上面に物品を置くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便蓋に係り、特に起立させたときに物品を載置することができるよう構成された便蓋に関する。また、本発明は、この便蓋を備えた便器(洋風便器)に関する。
【背景技術】
【0002】
デパートなど公共的なトイレを使用する場合、買物袋、ハンドバッグ、財布などの物品を携帯してトイレブース内に入ることが多い。
【0003】
便器使用に際し、かかる物品を便器(洋風便器)の後部上面に載せることがあるが、起立させた便蓋の陰になるため、置き忘れてしまい易い。
【0004】
特開2003−93275には、便器後部上面の衛生洗浄装置の箱状ケーシングの上面に物品収納部を設けることが記載されている。
【特許文献1】特開2003−93275
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特開2003−93275の物品収納部は、その設置レベルが比較的低いため、便器を男子小用に用いた場合に飛沫がかかりやすい。
【0006】
本発明は、比較的高いレベルに、且つ便鉢から後方へ離隔した位置に物品を載置することができる便蓋と、この便蓋を備えた便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の便蓋は、便器に対し起倒回動可能に取り付けられる便蓋において、起立時に上部が後方へ回動して略水平姿勢をとり、その上に物品を裁置しうるよう構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の便蓋は、請求項1において、前記上部が便蓋の下部側に対しヒンジによって回動可能に連結されており、該ヒンジに、該上部の回動を減速するための機構が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の便蓋は、請求項1又は2において、略水平姿勢をとった前記上部から便鉢側へ物品が落下することを防止するための壁状部が該上部の該下部側に設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の便器は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の便蓋を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の便蓋及び便器にあっては、便蓋を起立させると、便蓋上部が後方へ回動して略水平となるので、この便蓋上部の上面に物品を載置することができる。この物品載置面は、特開2003−93275の収納部に比べ高位であり、且つ後方である。そのため、便器を男子小用に使用した際の飛沫などが該載置面にかかることがない。
【0012】
なお、この便蓋上部を回動可能に支持するヒンジに減速機構を組み込むことにより、便蓋上部が急激に回動して衝撃音が発生することを防止することができる。
【0013】
また、この便蓋上部に載置した物品が便鉢側へ落下することを防止するための壁状部を設けることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。第1図は実施の形態に係る便蓋を備えた便器の斜視図、第2図は第1図のII−II線断面図である。
【0015】
便器(洋風便器)1の後部上面に便座ボックス2が設置され、この便座ボックス2に対し便座3及び便蓋4が起倒方向回動可能に取り付けられている。便座3及び便蓋4は、便器1の便鉢1a側へ倒伏した状態と、鉛直よりも後傾姿勢となるように起立した状態とをとりうるように起倒方向回動可能となっている。なお、この回動は手動で行われてもよく、モータ等によって行われてもよい。
【0016】
この便蓋4は、起立状態において下半側を占める下部5と、起立状態において上方側となる上部6との2体よりなり、該下部5と上部6とはヒンジ7によって回動可能に連結されている。
【0017】
このヒンジ7は、便蓋4が便座3と共に便器1上に倒伏した状態(第1図(a))において便座3の中央孔3aに入り込む位置に設けられている。
【0018】
また、ヒンジ7は、便蓋4を起立させたときに上部6が略水平となった姿勢で停止するように回動範囲を規制するよう構成されている。
【0019】
このヒンジ7には、上部6が急激に回動することを防止するための減速機構が組み込まれている。この減速機構としては、摩擦減速機構やオイルダンパなど公知のヒンジ用減速機構を用いることができる。
【0020】
下部5の左右両サイドと、上部6の外周縁とには、便蓋4が便座3上に倒伏した状態において便座3の外周縁に沿って垂下する垂下壁5a,6aが立設されている。
【0021】
上部6には、ヒンジ7の近傍に、左右方向に延在した、物品落下防止用の壁状部8が設けられている。この壁状部8は、便蓋4が便座3と共に便器1上に倒伏した状態(第1図(a))において便座3の中央孔3aに入り込む位置に設けられている。
【0022】
このように構成された便蓋4付き便器1において、便蓋4を起立させ、便蓋4が鉛直よりも後傾した状態となると、上部6が自重によって後方へ回動し、第1図(b)及び第2図の通り略水平となる。このため、この上部6の上面に物品を置くことができる。
【0023】
この物品載置面は、便座ボックス2よりも十分に高位であり、しかも後方へ張り出したものとなるので、男子小用使用時の飛沫などがかかることはない。
【0024】
また、この載置面は便蓋4の陰にならず、便器使用者から丸見えとなるため、物品を置き忘れることがない。
【0025】
この実施の形態では、上部6に壁状部8が設けられているので、上部6上においた物品が便鉢1a側へ落下することが防止される。また、この実施の形態では、第1図(b)の状態において上部6の外周縁から垂下壁6aが上向きに立設された状態となるので、物品が上部6から側方や後方へ落下することも防止される。
【0026】
なお、壁状部8は、便座3の上面に当たらない程度の高さにて、第1図(b)の壁状部8よりも左右に長く延設されてもよい。
【0027】
また、第1図(b)及び第2図の状態において、上部6が後方へ若干下り勾配となるよう構成し、物品が便鉢側へ落下しにくくなるようにしてもよい。
【0028】
便蓋4を前方へ回動させると、上部6は鉛直よりも前傾状態となった時点以降、ヒンジ7回りに回動して第1図(a)の倒伏姿勢をとるようになる。
【0029】
便蓋4の倒伏方向への回動を手動で行うよう構成した場合、手又は指を便蓋4に掛け易くするために、第3図の如く上部6の側面から側方へ把手9を突設してもよい。
【0030】
上記実施の形態では、便蓋4を起立させると上部6の全体が後方へ回動するよう構成しているが、第4図の便蓋4Aのように、起立させたときに垂下壁6aよりも内側の便蓋上部6Aのみが後方へ回動するようにしてもよい。垂下壁6aは下部5の垂下壁5aと一連一体となっている。この場合も、アーチ状となった垂下壁6aを通して便器前方から便蓋上部6Aの物品が見えるので、物品を置き忘れることが防止される。第4図のその他の構成は第1,2図の便蓋6と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0031】
本発明において、上部6,6Aの前後寸法は100〜300mm程度であることが好ましい。
【0032】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の態様をもとりうる。例えば、第2図〜第4図の如く後方へ張り出した上部6,6Aを支えるように、支持部材(図示略)を便蓋や便器に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施の形態に係る便蓋を備えた便器の斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】別の実施の形態に係る便蓋の斜視図である。
【図4】さらに別の実施の形態に係る便蓋の斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1 便器
3 便座
4,4A 便蓋
5 下部
6,6A 上部
7 ヒンジ
8 壁状部
9 把手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器に対し起倒回動可能に取り付けられる便蓋において、
起立時に上部が後方へ回動して略水平姿勢をとり、その上に物品を裁置しうるよう構成されていることを特徴とする便蓋。
【請求項2】
請求項1において、前記上部が便蓋の下部側に対しヒンジによって回動可能に連結されており、
該ヒンジに、該上部の回動を減速するための機構が設けられていることを特徴とする便蓋。
【請求項3】
請求項1又は2において、略水平姿勢をとった前記上部から便鉢側へ物品が落下することを防止するための壁状部が該上部に設けられていることを特徴とする便蓋。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の便蓋を備えた便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−66292(P2009−66292A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239637(P2007−239637)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】