説明

便通改善用組成物及びそれを含有する飲食品およびその使用方法

【課題】本発明の課題は、飲用に際しての不快感、味が悪いなどの従来技術の問題点を解決し、少量で優れた便通改善効果を発揮する便通改善用組成物を提供することである。
【解決手段】塩類と高分子化合物としてポリデキストロースおよび/または難消化性デキストリン、および/または糖質として難消化性還元糖を含有する組成物において前記組成物の膠質浸透圧が20〜100mmHgであり、かつ前記高分子化合物および前記糖質のエネルギー換算係数が0〜2kcal/gであることを特徴とする便通改善用組成物によって達成できる。また、飲用時に茶カテキンを含有させることで、自然に近い感覚で優れた便通改善効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便通改善用組成物に関する。詳しくは塩類と高分子化合物および/または糖質を含有する組成物において前記組成物の膠質浸透圧が20〜100mmHgであり、かつ前記高分子化合物および前記糖質のエネルギー換算係数が0〜2kcal/gであることを特徴とする便通改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
便秘は、欠食、水分の不足、食物繊維の少ない食事、運動不足、ストレスなどによって引き起こされる排便障害であり、腸管内のガス発生による腹部膨満や、腸管内容物が硬結することによる排便時の痛苦などの不快感を強く感じる。
【0003】
主に便秘の処置には、刺激性瀉下剤が使用されるが、繰り返し使用による習慣化や効果の鈍化が懸念され、近年では、食物繊維を中心とした高分子化合物が含まれる緩下剤が、自然に近い排便を促す事ができると提案されている。プランタゴオバタ種皮を主成分とする緩下剤(特許文献1)、水溶性食物繊維と糖アルコールからなる便秘改善剤(特許文献2)、水溶性繊維、不溶性繊維等からなる便秘改善薬(特許文献3)などである。
【0004】
食物繊維には、十分な量の水分と一緒に摂取すると、水分を吸収して膨潤し、便量の増加や、便を柔らかくする効果があるといわれている。
【0005】
また、別の便秘処置方法には、例えば大腸内視鏡検査等の腸管洗浄を目的として使用される腸管洗浄用組成物と類似の組成物を少量摂取する方法が提案されている。一例を挙げれば、平均分子量が7300〜9300の範囲にあるポリエチレングリコール(以下PEG)および電解質を含有する便秘用緩下剤(特許文献4)がある。
【0006】
PEGと電解質を含有する緩下剤は効果が早く得られ、電解質の変動も無く、腹痛などの症状も少なく安全に使用できることから有効な便秘改善方法と考えられるが、PEGの臭味は敬遠されるものであり、日常利用する飲食品としては適さない。
【0007】
便秘の改善には、悪玉菌である有害菌の増殖を抑制し、善玉菌である有用菌の増殖環境を維持するための腸内環境の改善も有効である。乳酸菌やビフィズス菌、オリゴ糖などを含有する飲食品の摂取による有用菌の増殖促進に加えて、腸管内容物を積極的に排除し有用菌優勢にする方法も提案されている(特許文献5)。
【0008】
しかしながら、上記のいずれの手法も飲用に際して十分満足のいく結果が得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平01−90130号公報
【特許文献2】特開2000−60487号公報
【特許文献3】特開2003−12537号公報
【特許文献4】特開2004−323479号公報
【特許文献5】WO2004−067037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、飲用に際しての不快感、味が悪いなどの従来技術の問題点を解決し、少量で優れた便通改善効果を発揮する便通改善用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記目的を達成するための研究を重ねた結果、塩類と高分子化合物および/または糖質を含有する組成物において前記組成物の膠質浸透圧が20〜100mmHgであり、かつ前記高分子化合物および前記糖質のエネルギー換算係数が0〜2kcal/gであることを特徴とする便通改善用組成物が、少量で優れた便通改善効果を発揮し、服用に容易な味を有することを見出し本発明の完成に至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
1)塩類と高分子化合物としてポリデキストロースおよび/または難消化性デキストリン、および/または糖質として難消化性還元糖を含有する組成物において、水に溶解した場合の前記組成物の膠質浸透圧が20〜100mmHgであり、かつ前記高分子および糖質のエネルギー換算係数が0、1又は2kcal/gであることを特徴とする便通改善用組成物、
2)高分子化合物および糖質がポリデキストロースと、難消化性還元糖の組み合わせであることを特徴とする1)に記載の便通改善用組成物、
3)高分子化合物および糖質が難消化性デキストリンと、難消化性還元糖の組み合わせであることを特徴とする1)に記載の便通改善用組成物、
4)難消化性還元糖が還元麦芽糖であることを特徴とする2)〜3)に記載の便通改善用組成物、
5)1)〜4)のいずれかに記載の便通改善用組成物を含有する飲食品、
6)1)〜4)のいずれかに記載の便通改善用組成物と、茶カテキンを含有することを特徴とする飲食品、
7)茶カテキンの含有量が、0.05%〜0.3%の範囲であることを特徴とする6)に記載の飲食品、
8)1)〜4)のいずれかに記載の便通改善用組成物を経口摂取することを特徴とする便通改善方法、
9)便通改善用組成物を、100〜800ml/日の範囲で経口摂取することを特徴とする8)に記載の便通改善方法、
10)5)〜7)のいずれかに記載の飲食品を、100〜800ml/日の範囲で摂取することを特徴とする便通改善方法
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の便通改善用組成物は、少量で優れた腸管内容物の排泄効果を発揮し、かつ不快な臭味を与えることなく便通を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の便通改善用組成物は、水分散液あるいは水溶液であり、粉末製剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤として調整し、これを水などで溶解して用いる事が出来る。また、ドリンク剤として調整し、そのまま用いることも出来る。
【0015】
本発明の塩類とは、水に溶解可能で、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、塩素イオン、炭酸水素イオン、硫酸イオン、燐酸水素イオン、クエン酸イオンの電解質を生じるものである。
【0016】
前記電解質は、ナトリウムイオン30〜150mEq/L、カリウムイオン3〜20mEq/L、硫酸イオン20〜100mEq/L、塩素イオン20〜70mEq/L、炭酸水素イオン 10〜30mEq/Lの場合であり、または、マグネシウムイオン 40〜270mEq/L、クエン酸イオン60〜400mEq/Lの組合せである場合が好ましい。
【0017】
前記電解質の組合せにおいて、ナトリウムイオン、カリウムイオン、塩素イオン、炭酸水素イオンは、腸管内で吸収あるいは分泌されるため、血清電解質バランスを維持するために含有させる必要がある。また、マグネシウムイオン、クエン酸イオン、硫酸イオンの多価イオンは、腸管から吸収されにくく、また腸管での電解質の吸収を抑制する働きがある。各種電解質の濃度範囲の下限および上限は、腸管内で吸収および分泌される電解質量を相殺し、あるいは、腸管内での電解質の吸収および分泌を調整して血清電解質バランスを維持するために必要な範囲である。
【0018】
本発明の高分子化合物および糖質は、腸管内細菌による代謝を受けてガス産生を起すことのないあるいは少ない難消化性物質である。高分子化合物の例として寒天、グアガム、セルロース、低分子アルギン酸ナトリウム、ジェランガム、グルコマンナン、ポリデキストロース、難消化性デキストリンなどの難消化性食物繊維があげられる。また糖質の例として難消化性オリゴ糖や糖アルコールなどの難消化性還元糖があげられる。特に高分子化合物がポリデキストロースおよび/または難消化性デキストリンであれば、飲用時に不快な粘性やにおいを感じることが無い等の好ましい結果をもたらす。また難消化性還元糖として還元麦芽糖を使用した場合には、飲用時に粘性の影響が小さいことに加え、溶解して使用する場合、一般的な高分子化合物を使用する場合と比較して簡易に溶解することができる。前記の効果に加えて、塩味と甘味のバランスが保たれた、飲用に適した味を有する。
【0019】
また、本発明における高分子化合物および糖質の添加量は、前記組成物の膠質浸透圧が20〜100mmHgの範囲となるように組合せて使用することが望ましい。
【0020】
生体において、前記膠質浸透圧とは、一般には体内のアルブミンなどの蛋白質濃度差によって生じる浸透圧であり、体液間の水分移動に関わる。便通改善用組成物の効果としては該組成物が腸管内を通過する際の腸管内での水分移動に大きな影響を及ぼすと考えられ、本発明においては、前記組成物の膠質浸透圧を腸管内での水分移動の指標とする。
【0021】
ここで膠質浸透圧の測定法に関して説明する。膠質浸透圧は、少なくともどちらか一方に膜非透過性の粒子(例えばコロイドなど)を含む2種類の溶液を隔てる半透膜に生ずる平衡圧である。例えば分子量30,000あるいは10,000以下で不透過性の半透膜を介して一方に生理食塩水、他方に血液等(本発明においては便通改善用組成物)を置くと、生理食塩水中の水分は血液中に引き付けられて行く。この結果、生理食塩水側は、血液側に対して陰圧となり平衡に達した時点で水の移動は停止する。この時生理食塩水側に発生する陰圧が、血液中の蛋白など高分子による膠質浸透圧として測定される。具体的な測定装置は、米国べスコール社製、4420型膠質浸透圧計などがある。
【0022】
前記膠質浸透圧が20mmHg以下となる場合は、体内に吸収される水分量が大きく十分な便通改善効果を得ることができず、100mmHg以上となる場合には体内から排出される水分量が大きくなるため、喉が渇くあるいは脱水症状を起こすなど安全性が劣る。
【0023】
また前記の高分子化合物および糖質は、エネルギー換算係数が0〜2kcal/gである難消化性食物繊維および難消化性糖質である。ここでエネルギー換算係数に関して簡単に説明する。アトウォーターは、飲食品全般に関するエネルギー換算係数を平均的に、蛋白質、脂質、糖質についてそれぞれ4,9,4kcal/gと定めたが、日本の栄養表示基準では、糖質に関して更に小腸までで消化吸収されるもの(消化性糖質)のエネルギー換算係数を4kcal/g、消化吸収されず大腸で腸内細菌による発酵分解を受けて短鎖脂肪酸となり、吸収されてエネルギーとして利用される難消化性糖質や食物繊維のエネルギー換算係数を発酵分解の難易度に応じてそれぞれ3,2,1,0kcal/gの4段階に設定している。従って本発明で使用する高分子化合物および糖質のエネルギー換算係数は0〜2kcal/gであり、腸管内での消化吸収や腸管内細菌による代謝を受け難い物質と言うことができる。エネルギー換算係数が2kcal/gを超える場合は、腸管内での消化吸収や腸管内細菌による代謝を受けることにより、浸透圧による腸管内容物の除去効果が失われ、腸内ガス発生等による腹部膨満感をもたらすなど使用感が劣る。
【0024】
本発明の便通改善用組成物および飲食品の粘度は、1〜500mPa・sを有し、この粘度の範囲で経口摂取することが好ましい。前記水分散液あるいは水溶液の粘度が500mPa・s以上の場合は、粘度が高く、前記水分散液あるいは水溶液を経口摂取することが困難である。
【0025】
本発明の便通改善用組成物および飲食品には、腸管内細菌による代謝を受けてガス産生を起すことのない、あるいは少ない、補助剤、増量剤を加えることができる。
【0026】
本発明の便通改善用組成物および飲食品には、腸管内細菌による代謝を受けてガス産生を起こすことのない、あるいは少ない香味料を加えることができる。
【0027】
本発明の便通改善用組成物は、茶カテキンを含有させて飲食品とすることができる。茶カテキンは、腸管細菌によるガス産生を抑制する目的で含有させる。前記茶カテキンの添加量は、0.05%〜0.3%の範囲であることが望ましい。添加量が0.05%より少ない場合、ガス産生を抑制する効果に乏しく、0.3%より多いと、茶カテキン特有の苦味を感じ、飲用時に不快感をもたらす。
【0028】
本発明の便通改善用組成物および飲食品は、上記の水性液状物、濃厚製剤、あるいは水性液状物を乾燥して得る粉末製剤、顆粒剤、細粒剤、錠剤、カプセル剤等としても調製したものを、使用時に水、蒸留水等で希釈・分散・溶解して用いても良い。
【0029】
本発明の便通改善用組成物および飲食品は、水性液状物の場合はそのまま用いてもよく、例えば、ガラスバイアル瓶や、プラスチックバッグ、ペットボトル等の合成樹脂製容器などに充填して製品とする。濃厚製剤の場合も水泳液状物の場合と同様の形態で製品とし、包装品1個が希釈により100〜300mlとして使用されるよう内容量を調整するのが好ましいが、これに限定されない。粉末製剤の形態では、簡易的に溶解できるように粒径調整した上で、機密性の高い容器に充填、密封されることが好ましい。包装品1個が水100〜300mlに溶解して使用されるよう内容量を調整するのが好ましい。
【0030】
本発明の便通改善用組成物および飲食品は、通常1日に100〜800ml/日を経口で摂取する。摂取量に応じて便通改善効果が現れる速さを調整することができる。
【0031】
本発明の便通改善用組成物および/または飲食品100〜300mlを1〜5日連続服用した場合には、便通を改善することができる。この場合は、排便がスムーズになり便通改善効果を得ることができる。
【0032】
また、即効性を求める場合には、本発明の便通改善用組成物および/または飲食品300〜800mlを、摂取前に6時間以上断食した後摂取する。1回の摂取においては、必要量の総量を一度に全て服用しても良いし、あるいは、少量ずつの摂取を時間差で繰り返し服用して総量を摂取しても良い。この場合は、腸管内容物は摂取から短時間で腹痛などを伴わない水様便として排泄される。
【0033】
一度の摂取量が100mlより少ない場合には便通改善効果を充分に得ることが出来ない。800ml以上飲用した場合には、安全性の問題や長時間に渡って水様便が排泄されるなど日常生活に支障をきたすと考えられる。
【0034】
以下に、本発明を、実施例および試験例にて詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0035】
[実施例1]
塩化ナトリウム0.41g、炭酸水素ナトリウム0.17g、硫酸ナトリウム1.138g、炭酸カリウム0.196g、ポリデキストロース15.0g、マルチトール(還元麦芽糖)20.0gを水分不透過性のフィルムに密封包装し、飲用時にこれを総量200mlとなるように水に溶解した。
【0036】
[実施例2]
塩化ナトリウム0.41g、炭酸水素ナトリウム0.17g、硫酸ナトリウム1.138g、炭酸カリウム0.196g、難消化性デキストリン12.0g、マルチトール(還元麦芽糖)24.0gを水分不透過性のフィルムに密封包装し、飲用時にこれを総量200mlとなるように水に溶解した。
【0037】
[比較例1]
塩化ナトリウム0.41g、炭酸水素ナトリウム0.17g、硫酸ナトリウム1.138g、炭酸カリウム0.196gを水分不透過性のフィルムに密封包装し、飲用時にこれを総量200mlとなるように水に溶解した。
【0038】
[比較例2]
卵白アルブミンを12.0g加え、ポリデキストロースまたは難消化性デキストリン、マルチトール(還元麦芽糖)を添加しなかったこと以外は実施例1〜2と同様にして調整した。
【0039】
[比較例3]
ポリエチレングリコール(平均分子量;2600〜3800)を14g加え、ポリデキストロースまたは難消化性デキストリン、マルチトール(還元麦芽糖)を添加しなかったこと以外は実施例1〜2と同様にして調整した。
【0040】
[比較例4]
塩化ナトリウム0.41g、炭酸水素ナトリウム0.17g、硫酸ナトリウム1.138g、炭酸カリウム0.196g、ポリデキストロース24.0g、マルチトール(還元麦芽糖)48.0gを水分不透過性のフィルムに密封包装し、飲用時にこれを総量200mlとなるように水に溶解した。
【0041】
実施例1〜2および比較例1〜4までの調製液の粘度を調べた。評価結果を表1に示した。粘度は、ブルックフィールド型回転粘度計により25℃における回転粘度を測定した。
【0042】
実施例1〜2および比較例1〜4までの調製液の膠質浸透圧を調べ、測定結果を表1に示した。膠質浸透圧は、べスコール社製の膠質浸透圧計4420型により測定した。使用した標準メンブレンは分画分子量10000であり、標準液には生理食塩水を用いた。
【0043】
また、実施例1〜3および比較例1〜4で使用した高分子化合物および難消化性糖質のエネルギー換算係数を表1に示した。実施例1〜3および比較例2および4は、日本栄養表示基準およびアトウォーター法によるエネルギー換算係数である。
【0044】
【表1】

【0045】
[試験例1]
健常な成人志願者3名を対象に、実施例1〜2および比較例1〜4の飲用試験を実施した。いずれも起床後に200ml飲用させた以外は通常通り生活させ、翌日の排便状況および使用感を調べた。結果を表2に示した。
【0046】
【表2】

※1 ○:良い・飲みやすい
×:悪い・飲みづらい
【0047】
実施例1〜2および比較例1〜4の健常者の飲用試験による排便状況および味・匂い・粘性による飲み易さを比較した。実施例1〜2は味・匂い・飲みやすさの面でバランスがとれており、かつ排便量が増加する効果が見られた。比較例1は味が塩辛く、かつ高分子化合物を含まないために排便状況に改善がみられなかった。比較例2は飲みやすいが特有の匂いがあり、かつ卵白アルブミンのエネルギー換算係数が高いために腸管内で分解されてガスが発生し、飲用後にお腹がゴロゴロした上、排便状況の改善も見られなかった。比較例3は排便量の増加はあったが、腹痛やのどの渇きが認められた。比較例4は排便量の増加はあり、味・匂い・飲み安さの面でバランスが取れていたが、排尿がなく極度の喉の乾きが認められた。以上の結果から、実施例1〜2が比較例1〜4と比較して飲用に適しており、かつ排便状況を改善できることは明らかである。
【0048】
[試験例2]
便秘の程度の異なる成人志願者9名を対象に、就寝前に実施例1を100ml飲用させた以外は通常通り生活させ、翌日の排便状況を調べた。1日目で効果が表れなかった被験者に関しては、3日間までも同様に実施例1を100ml飲用させ、摂取翌日の排便状況も調べた。
【0049】
被験者の飲用前の便秘の程度、性別、年齢、および使用後の効果、コンプライアンス、使用感を表3に示した。
【0050】
【表3】

*1 便秘の程度
軽症:2〜3日に1回
中等症:3〜5日に1回
重症:5日以上に1回
*2 効果1 実施例1を飲用した翌日の排便状況
A:排便量が多く、排便後にすっきりする
B:排便が有るが、量が少ない、あるいはすっきりしない
C:排便無し
*3 効果2 実施例1を2日間飲用後、翌日の排便状況
*4 効果3 実施例1を3日間飲用後、翌日の排便状況
【0051】
実施例1の便通改善用組成物を100ml摂取した場合の、摂取前の便秘の程度による便通改善効果を比較した結果、表3にあるように軽症については5例中5例が1日目において著効であった。中等症については2例中1例が著効であり、1例が2日間連続して摂取することにより著効となった。重症については、2日間連続して摂取することにより、2例中1例が著効、3日間連続して摂取により2例中1例が著効となった。安全性については9例中9例が問題無であった。以上の結果から、本発明の腸内環境改善用組成物を100ml飲用した場合の便通改善効果は明らかである。更に、連続服用により、重症の場合でも便通改善効果を十分に得ることができる。
【0052】
[試験例3]
便秘の程度の異なる成人志願者12名を対象に、就寝前に実施例1を200ml飲用させた以外は通常通り生活させ、翌日の排便状況を調べた。その2週間後、同じ被験者において実施例1の便通改善用組成物200mlに茶カテキン0.2gを添加して飲用させ、同様の試験を行った。
【0053】
被験者の飲用前の便秘の程度、性別、年齢、および使用後の効果、使用感を表4に示した。
【0054】
【表4】

*1 便秘の程度
軽:2〜3日に1回
中:3〜5日に1回
重:5日以上に1回
*2 効果 実施例1を飲用した翌日の排便状況
A:排便量が多く、排便後にすっきりする
B:排便が有るが、量が少ない、あるいはすっきりしない
C:排便無し
【0055】
実施例1の便通改善用組成物を200ml摂取した場合の、摂取前の便秘の程度による便通改善効果を比較した結果、表4にあるように12例中9例が翌日に良好な効果を示した。一方、12例中5例に使用の際膨満感などの不快な症状が見られた。2週間後に行った実施例1の便通改善用組成物を200mlにカテキンを0.2g添加して摂取した場合には、添加しなかった場合と比較し、より自然に近い使用感が得られた。特に、カテキンを添加しなかった場合に不快な症状が見られた被験者も、膨満感やガスの発生がなく、良好な結果が得られた。
【0056】
以上の結果から、本発明の腸内環境改善用組成物を200ml飲用した場合の便通改善効果は明らかである。更に、カテキンの添加により、使用時の不快な症状が発生せず、自然に近い感覚で便通改善効果を得ることができる。
【0057】
[試験例4]
健常な男性志願者3名を対象に、起床後、採便・採尿を行ったのち、10時から12時の間に実施例2の便通改善用組成物を10分間おきに200mlずつ計400ml飲用させた。試験開始前日から試験終了までの間、被験者はアルコール、カフェイン、電解質を含む飲料の摂取を禁止した。試験当日の朝食および昼食は絶食とした。15時以降は食事の摂取は可とした。
【0058】
飲用から試験終了までの各被験者の糞便の状況(目視)、尿検査(pH、糖、蛋白、ケトン体、ビリルビン、潜血、亜硝酸塩、ウロビリノーゲン:尿検査用試験紙)、自覚症状(排便回数)、味、コンプライアンスを表5に示した。
【0059】
【表5】

【0060】
[試験例5]
摂取量を800mlとした以外は試験例4と同様にして実施例の排便効果を調べた。結果を表6に示した。
【0061】
【表6】

【0062】
試験例4より、実施例2の便通改善用組成物を400ml摂取した場合、排便回数は平均2.7回であり、著しい排便効果が得られることが分かった。試験例5より、実施例2の便通改善用組成物を800ml摂取した場合にも、安全性に問題なく著しい排便効果が得られることが分かった。味は普通または良いであった。安全性は臨床上問題となる異常は無かった。加えて、糞便中の大腸菌群数で約数千分の1以下に低下させることができ、排泄腸管内細菌の除去効果を期待できる。以上の結果から、本発明の便通改善用組成物を400ml〜800ml飲用した場合には、即効性の便通改善効果が得られることは明らかである。
【0063】
以上の結果から、本発明の便通改善用組成物が、臭味、飲用感に優れ便通改善効果があることは明らかである。また、本発明の便通改善用組成物を100ml飲用した場合には、重症、中等症、軽症のいずれの便秘に対しても、安全性に問題なく、腹痛などの症状も見られず、極めて有効な便通改善効果が得られることが明らかである。さらに、本発明の便通改善用組成物を400ml〜800ml飲用した場合には、安全性に問題なく、摂取時の味およびコンプライアンスに優れ、即効性の排便促進効果が得られることが明らかである。尚本発明は味よく、軽症から重症の便秘に有効で安全性に優れ、量を調整する事により即効性が期待できることより、高齢者、肝硬変、妊婦、経産婦、薬物による便秘、人工透析による便秘など、及び習慣性の慢性便秘、及び腸内容物、及び腸内細菌の除去、解毒などに使用できるがこれに限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩類と高分子化合物としてポリデキストロースおよび/または難消化性デキストリン、および/または糖質として難消化性還元糖を含有する組成物において、前記組成物を水に溶解した場合の膠質浸透圧が20〜100mmHgであり、かつ前記高分子化合物および前記糖質のエネルギー換算係数が0、1又は2kcal/gであることを特徴とする便通改善用組成物。
【請求項2】
高分子化合物および糖質がポリデキストロースと、難消化性還元糖の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の便通改善用組成物。
【請求項3】
高分子化合物および糖質が難消化性デキストリンと、難消化性還元糖の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の便通改善用組成物。
【請求項4】
難消化性還元糖が還元麦芽糖であることを特徴とする請求項2〜3に記載の便通改善用組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の便通改善用組成物を含有する飲食品。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の便通改善用組成物と、茶カテキンを含有することを特徴とする飲食品。
【請求項7】
茶カテキンの含有量が、0.05%〜0.3%の範囲であることを特徴とする請求項6に記載の飲食品。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の便通改善用組成物を経口摂取することを特徴とする便通改善方法。
【請求項9】
便通改善用組成物を、100〜800ml/日の範囲で経口摂取することを特徴とする請求項8に記載の便通改善方法。
【請求項10】
請求項5〜7のいずれかに記載の飲食品を、100〜800ml/日の範囲で摂取することを特徴とする便通改善方法。


【公開番号】特開2012−102036(P2012−102036A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250982(P2010−250982)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【出願人】(505361864)有限会社リーベンス (3)
【Fターム(参考)】