係合の位置確定機能付き面係合具
【課題】 対向する二枚の面ファスナーを衣服等の重ね合わせ部の基材に固着して用い、指先の感覚によるブラインドタッチで容易にこれら面ファスナーの正確な位置確定ができ、押圧固定できる新規の係合具を開発する。面ファスナーに位置確定の付加価値をつけ、利用頻度を高めて指先操作が不自由な人たちの衣服の脱着操作を容易にする。
【解決手段】 剛性に富む薄いプラスチック基板に対向して用いる二枚の面ファスナーをそれぞれ固着し、この面ファスナーに近接する位置に穴部を打ち抜きで設けた凹形係合片と、突起部を設けた凸形係止片を形成する。この穴部は開いた唇状で、両端を絞った大き目の穴とし、これに対応する突起部は前記唇状の穴の上端または下端の近くにラフな突き立てによって挿入でき、そのあと深く挿入すると穴の最大長さ部に到達し、自動的に勘合する。この状態を維持しながら二枚の係止片を平行になるように押圧すると面ファスナーが正確な位置関係を維持して係合する。
【解決手段】 剛性に富む薄いプラスチック基板に対向して用いる二枚の面ファスナーをそれぞれ固着し、この面ファスナーに近接する位置に穴部を打ち抜きで設けた凹形係合片と、突起部を設けた凸形係止片を形成する。この穴部は開いた唇状で、両端を絞った大き目の穴とし、これに対応する突起部は前記唇状の穴の上端または下端の近くにラフな突き立てによって挿入でき、そのあと深く挿入すると穴の最大長さ部に到達し、自動的に勘合する。この状態を維持しながら二枚の係止片を平行になるように押圧すると面ファスナーが正確な位置関係を維持して係合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服の布地等の二枚の基材に取り付けてそれらの重ね合わせ部において、簡便に固着できる係合具を指先の感覚で確実にかつ容易に位置合わせができるようにする小型面ファスナーに関するもので、プラスチック製基板に面ファスナー部と切り込み部を設けた凹部係合片とプラスチック製基板に面ファスナー部と突起部を設けた凸部係合片とで構成する係合具およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二枚の基材の重なり部において結合する手段として従来から行われているものとして、脱着が容易なものとしてはボタンとボタンホールからなる通常のボタン方式がある。この手法は18世紀の中ごろに英国で開発されたとされている。それより幾分早い時期にボタン状の突起物と細紐で係合する比較的ルーズなボタン紐方式がある。これは18世紀初期に日本でも武士の衣装に実施された手法である。これは結合がルーズであるため主として荷重のかかる縦方向の係合に用いられた。
【0003】
これらの結合手段が開発された後、しばらくして超小型の金属製のスナップホックが実用化された。しかし、位置決めの困難さがあり、普及しなかった。この後、20世紀に至って面ファスナーが開発され、比較的ラフな位置決めでやや大きめのサイズを二枚の基材に固着することで使用可能になる条件で用いられてきている。
【0004】
また日本では近年開発された結合手段として、金属爪形片と太糸の組み合わせでの引っ掛け式である「コハゼ」法がある。これは現在では足袋の踵部の留めにのみ用いられている。この限定的使用は作業の困難さと位置決めの不確実さが問題として残っているためである。具体的には足袋の重ね部において上側の布地端に縫いつけた金属小片を下側の布地端に形成した太糸の係止部を抱き込む形で踵部の布地を固定するが、両者とも小さな部材であり、ブラインドタッチでの位置確認が困難であること、この重ね部の押さえを十分に行わねばならないこと、さらには両者の係合がタイトに行われなければ、使用中に外れる可能性があることが挙げられる。
【0005】
結合素材として最も開発の余地のあるものは面ファスナーである。この素材は不満足ながらも衣服等にも取り付けられている実績がある。この面ファスナーの使用される場面の一つは、位置確定の不確実性が顕在化しない面ファスナー同士の移動距離の短い手袋や胸元上部の係合である。係合のずれが目立ちにくいところでの使用である。これらの場合は比較的小片での使用である。もう一つの場面は、大きく開くかばんの蓋部、および枕カバー等の係合で、この係合ではずれがあってもそれほど目立たない。二枚の基材の重なり部に固着する面ファスナーは一方の面ファスナーが小さい場合でも対向して用いる面ファスナーは1辺が数センチ以上と大きいサイズであることが多い。
【0006】
着たときの感覚が重要で、かつ見栄えが気になる衣服等においては係合の位置ずれが問題になり、面ファスナーを用いにくい状況がある。またこの面ファスナーを衣服等に用いた場合の問題として存在した剥離時のメリメリという耳障りな音の問題があった。しかし、この問題についてはメーカーによる改良が進み、減音面ファスナーとして発売され、解消してきている。この新規素材の押圧による簡便な係合技法の開発が改めて注目されてきている。
【0007】
面ファスナーを取り付けた基材同士を位置確定した上で係合させる方法が米国特許に唯一公開されている。この方法によれば帯状の基板の端部に設けた差込穴と差込突起との関係を用いて先端の位置確定を行ってから近接部分に取り付けた面ファスナーを押圧して基板同士を脱着容易に固着できる。この方法は、基板同士の係合を目的にした発明であること、その基板の先端における挿入固定の作業が困難であることが問題点としてある。開示されている方法では、穴と突起の関係は目視でこれらの位置関係を確認しながら挿入固定を完了させる必要がある。開示されている穴と突起の形状を見ると、溝形状の穴の中央に半円部を設けて溝の一部が広くなっている。この形状には折り曲げた突起の差込固定を容易にする効果はない。罫入れを伴う打ち抜き加工での細い溝のカス落としを容易にするためのものと判断される。
【0008】
この発明の後は世界的にも結合の確実さと操作の容易さ、および位置確定の容易さを兼ね備えたユニバーサルデザイン的な係合手段は出現していない。
近年に至って世界的な傾向であるが、高齢者の増加に伴って(視覚障害者を含む身障者も対象になる)指先の不自由な人の衣服の前立ての結合を容易にしてほしいというユニバーサルデザイン的要求が生じている。この要求に基づいて各種の開発が行われている。
このような技術開発の停滞状況において、加工コストの高価になるジッパーが注目されているが、前立ての下端部でのチャック固定部の挿入が困難であり続け、根本的な解決には至っていない。また最近、開発商品のニュースが流れたが、これは2010年9月にイオンから新しい衣類の留め手段を取り付けたカーディガンとして発売された。これは従来からあるボタン方式ではあるが、ボタンホールを斜めに配置して留めの作業性を改善したものであった。このようにユニバーサルデザイン的結合手段の開発が希求されている。
【0009】
【特許文献1】 米国特許3873051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、衣服の前立てのように目視で位置関係を正確に確認できないところでの基材の重合を確実に、かつ簡便に行えるようにする、勘合による位置確定機能付き小型面ファスナーの提供を目的とする。具体的にはプラスチック薄板の基板を打ち抜いた小型の凹形係止片と凸形係止片に係合手段として面ファスナーを固着し、これに近接する部分に穴または突起の勘合手段を別個に形成しておき、ラフなブラインドタッチによる挿入による位置確定ができるようにする。この勘合状態を保持しながら両係止片を平行に押圧することで、二枚の基材の脱着を正確にかつ簡便に行える面ファスナー付きの小型係合具、およびその製造方法を提供するものである。
日本を含む先進国、および新興国において高齢化社会が進展し、特に日本においては65歳以上の高齢者の占める割合が23%を越えてきている。このような社会にあって指先の細かい操作が不自由になった人、視覚障害者等の障害者が用いる衣服には、ボタン、ジッパーに代わる安価でかつ簡便な操作によって正確な位置での基材の係合が可能になる面ファスナー応用品の開発が急務になっている。特に介護の分野では社会的ともいえるニーズがある。
【0011】
2010年現在、一般家庭および介護老人施設等で、面ファスナーを衣服に取り付けて脱着することが行われている。「丸型マジック」と称して直径22mmの丸型に打ち抜いた対の面ファスナーがセットされて販売されている。これを衣服に取り付けた場合、両方の面ファスナーの位置確認は指先確認が不十分な、いわば適当にラフに確認を行って押圧している。柔らかい面ファスナーの取り付け位置を指先で確認できるように、目印として衣服の表地の上に飾りボタンを取り付けることも一般的に行われる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の問題点を解決するもので、係合の位置確定機能付き面係合具である。
ここでは係合手段として面ファスナーを用いる場合を主に説明する。面係合具の位置合わせに関する技術として開示されている米国特許の手段は、先述した問題点としてあげたように、衣服に用いた場合には従来から行われているボタン式と同様、正確な目視による位置確認が前提となるものである。衣服の場合には、目の真下での操作になり、この位置関係の正確な確認は困難になる。それに加えて、基材に穴あけ加工は実際上不可能であるという制約がある。
下記の発明内容の面係合具を用いることで、片手でも二枚の基材を押さえながらの正確な重ね位置でのブラインドタッチによる係合ができる。
【0013】
請求項1に係る発明は、二枚の基材の重なり部の一方に固着して用いる凹形係止片であって、基板の切り欠け部近傍に面係合手段を配置した前記凹形係止片と、これに対応する基材の重なり部で対向して固着して用いる凸形係止片であって、前記面係合手段と係合する面係合手段を基板の前記切り欠け部と勘合する突起部近傍に配置した、前記凸形係止片で構成する面係合具で、前記凸形係止片の切り欠け部は上縁部と下縁部を有し、少なくともその一方は上縁部と下縁部の交点まで末広がりに形成されていることを特徴とする一対の小型面係合具に関する。
【0014】
請求項2に係る発明は、前記突起部は前記切り欠け部内に収まる形状にしたことを特徴とする請求項1に記載の一対の小型面係合具に関する。
【0015】
請求項3に係る発明は、前記切り欠け部の上縁部と下縁部は略円弧で形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の一対の小型面係合具に関する。
【0016】
請求項4に係る発明は、前記切り欠け部を有する係止片の切り欠け部に前記凸形係止片の突起が挿入されて形成される勘合状態を保ったまま、係止片を傾けて面係合手段同士を押圧したときに、前記勘合状態が解除されることを特徴とする請求項1乃至3に記載の一対の小型面係合具に関する。
【0017】
請求項5に係る発明は、前記凹形係止片の切り欠け部に前記凸形係止片の突起が挿入されて形成される勘合状態を保ったまま、係止片を傾けて面係合手段同士を押圧したときに、前記勘合状態が解除されることのないことを特徴とする請求項1または3に記載の一対の小型面係合具に関する。
【0018】
請求項6に係る発明は、前記基材と固着する前記凸形係止片の切り欠け部の先端周縁部は固着していないことを特徴とする請求項1乃至5に記載の一対の小型面係合具に関する。
【0019】
請求項7に係る発明は、前記基材と固着する前記凸形係止片の突起部は固着していないことを特徴とする請求項1乃至6に記載の一対の小型面係合具に関する。
【0020】
請求項8に係る発明は、前記小型面係合具の面係合手段を面ファスナーとしたことを特徴とする請求項1乃至7に記載の一対の小型面係合具に関する。
【0021】
請求項9に係る発明は、前記小型面係合具において、面係合手段をスナップホックとしたことを特徴とする請求項1乃至7に記載の一対の小型面係合具に関する。
【0022】
請求項10に係る発明は、前記切り欠け部または前記突起部を隣接させて同一基板内に配置して用いる面係止片、または前記切り欠け部または前記突起部を別個の基板に配置して隣接させて用いる面係止片であって、隣接する切り欠け部相互または突起部相互の大きさ、または形状を違えて配置したことを特徴とする請求項1乃至9に記載の一対の小型面係合具に関する。
【0023】
請求項11に係る発明は、二枚の基材の重なり部で係合させる面係合手段と切り欠け部からなる凹形係止片と、面係合手段と突起部からなる凸形係止片で構成され、基材に配置されるこれら一対の小型面係合具であって、前記凹形係止片の切り欠け部を下側になる基材の端部に向けて配し、また凸形係止片の係合手段を上側になる基材の端部に向けて配してあることを特徴とする一対の小型面係合具に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
前記プラスチック基板に面ファスナーを固着し、それに近接した部分に自動的に位置確定できる形状の切り欠け部を設けた凹形係止片を形成する。この切り込みは通常、上下の円弧を対称に結合した唇状の打ち抜き穴とする。この凹形係止片と対向して用いる凸形係止片は、前記面ファスナーと係合する機能のある面ファスナーをプラスチック基板に固着し、これに近接する部分に上記穴と挿入することで自動的に勘合する形状の突起を有する凸形係止片で構成する。
これら凹部係止片と凸形係止片を重合して係合しておきたい二枚の基材の端部に固着しておき、広げた状態の基材同士をラフな勘合部での挿入による自動位置確定によって、これに続く押圧によってずれの生じない係合を完成させるものである。
面ファスナーは簡単な押圧によって十分か強度を有する係合を行うことができる優れた素材である。しかし、−旦係合させると、この係合関係を解除するのにかなりの力を要することから、一回の係合操作によって二枚の基材同士を正確な位置関係で確実な面ファスナーの係合を完了させなければならない。
【0025】
以下本発明の代表的な位置確定機能付き小型面ファスナーの形態を図面に基づいて説明する。図1と図3は本発明に係る面ファスナーを両面粘着テープでプラスチック基板に固着し、その近傍に切り込みの穴を形成した凹形係止片である。ここで用いる切り欠けには穴形状も含まれる。図1の右図は工業用ミシンによる基材との糸の縫い付けパターンの例である。図2は同プラスチック基板に対向して係合する面ファスナーと上記穴と勘合できる形状の突起を設けた凸形係止片である。その右図は工業用ミシンによる基材との糸の縫いパターンの例である。図6は両係止片の断面図で、基板と面ファスナーが粘着材によって積層されていることを示す。この積層物から係止片の形状に製作するためには、薄いプラスチック板に面ファスナーを帯状に固着しておき、これを所望の勘合形状に打ち抜く、または溶断する加工を行う。この製造法については後述する。
【0026】
まず係止片の詳細な構成について説明する。図1と図2で示している基板と面ファスナーの固着は通常、面ファスナーが基板上に余裕代を持たせて収まるようにした縫い付け法で製作する。この固着法は二種類の形態に分類される。図1と図2に示す方法はラベル的に面ファスナーを基板に貼り付けることになるものである。面ファスナーの周辺にスペースを設けた形態であるが、別の形態として打ち抜きのエッジと面ファスナーの3辺のエッジが同一になる形態がある。後者の場合は、帯状の連続面ファスナーを基板成形に用いることになる。どちらも粘着材加工とミシン加工ができる。係止片加工としては粘着材加工による面ファスナー固着の方が容易である。欠点は粘着材が針に絡みつくためにこの部分でのミシン縫いが不適になることである。
面ファスナーがその一部分で基板と固着する方法も採用できる(図なし)。この場合、基板の硬い部分と面ファスナーの柔らかい部分が係止片内に存在することになる。この構造でも穴部と突起部の勘合に基板材料の特性である滑り性と剛性を利用でき、採用できる。
【0027】
次に形成した係止片と基材との固着法を説明する。この固着には3種類ある。その一つは、打ち抜きによって所望の形状に形成した両係止片を衣服の前立ての重ね合わせ部に工業用ミシンの糸で縫いつけるもの。二番目は粘着材法で強力な粘着材をつけた両面テープの離型紙をはずして係止片を基材に固着するもの。三番目は高周波ウェルディングである。この方法は適用できる基材の素材に限界がある。本発明の場合は、粘着材による固着法が適当である。この方法は一般的であり、説明は割愛する。
【0028】
縫い付け法は衣類に面ファスナーを取り付ける際によく用いられる方法である。まず凹形係止片の余白代と基材とで行う縫い付け法について説明する。この基本は基板上の面ファスナーの周囲においてのみ基板と基材の固着を行うものである。剥離の力のかかる領域である面ファスナーを安定固着するだけでなく、面ファスナーの余白部以外の穴の先端エリアにも縫い付けを行うと、勘合時の基板下の布地の動きが規制されることになる。つまり挿入する突起の突き当てによる布地のたるみが生じにくくなる。プラスチック板の穴の切り口の滑りやすさを発揮させるために、この突起が穴に挿入しやすいように凹形係止片の背面の生地が撓むことが望ましい。図1に示す縫い付けは、中間的な凹形係止片と基材とで行う縫い付け法を示している。
比較的柔らかいパジャマ生地や背広地では穴周辺において突起の先端を突き立てての通常の穴への挿入を行うと、布地に撓みが生じやすい。しかし、防寒服のような厚手の布地ではこのたわみが生じにくく、この場合には突起部の挿入を容易にするために、穴下の生地に切り込みが有効になる。
【0029】
次に凸形係止片と基材とで行う縫い付け法について説明する。図2は凸形係止片の縫い付け例である。請求項7の記述に関係するが、この係止片の突起部は指先で把持して立てた状態で穴との勘合を行うために、この部分をフリーにする必要がある。縫い付けによってこの部分の動きが規制されることのないように、縫い付けを面ファスナー周囲に限定することになる。
【0030】
係止片の形状について説明する。図1と図2に示している係止片の外形は角型にしている。そして4コーナーには面取りアールを設けている。角型の長所は、係止片の基材への取り付けの際に、基材端部に対する角度認識が容易になることが挙げられる。係止片の面ファスナー側の切断ラインに対して穴部の両端および突起部の根元の位置が平行になるようにデザインしておけばよい。そして、できるだけコーナーに丸みを持たせておくと洗濯時に基板のエッジが布地を傷める危険性を軽減できる。
これらの輪郭形状は任意にデザインできる。丸型、矩形が基本になり、衣料デザイン上好ましいといえる。図7乃至図9の両係止片はボタンに似せた丸型にしたもので示している。これらの形状とサイズは用いる対象の基材と係合強度等のデザインの考え方によって異なる。丸型は端部が使用状態において幾分浮きやすくなるからである。これらのファクターによって面ファスナーの面積および形状、取り付け個数等の設計条件が決定される。基材への係合具の取り付け位置を検討する際には、面ファスナー側の切断端は直線にしておくと目視判断に便利になる。
【0031】
係合具のサイズを決める際には、指先で把持する作業になる凸形係止片が先に規定されることになる。持ちやすいサイズとし、面ファスナー部を角型とした場合には15mm×10mm角以上で、好ましくは30mm×20mm程度の面積が必要になる。
【0032】
次に凹形係止片の穴の形状とサイズについて説明する。まず基本形として、先端が略円弧状になっている突起部の挿入を受ける穴部について説明する。図1に示すような広い口を持つ略円弧の合わせ形にする。この形状は両円弧の交点に向かって末広がりになる。この穴サイズは係止片の大きさにもよるが、穴の最大長さ(上縁部と下縁部の交点間の距離)は10mmから40mm程度、好ましくは15mmから25mmの範囲で、幅は最大部で5mmから30mm程度で、好ましくは8mmから15mmの範囲にする。この唇状の穴形状にすることで円弧状の突起先端部の挿入が容易になり、突起部の位置確定ができる。つまり穴の場所を選ばずに突起の先端の挿入ができるようになる。
【0033】
次に面ファスナー具の自動的な位置確定法を説明する。上記の挿入位置を特定しないラフな挿入作業が行われても、つまり穴の上縁部または下縁部の頂部付近に突起部の先端が挿入されても、プラスチック基板の特性が関係して穴の切り口の傾斜に沿って滑りが生じ、突起部の根元まで穴の最大長さのところへ導かれる。突起部の先端に続いて突起部の根元まで深く差し込むにつれて、穴の最大長さのところまで突起部が挿入される。それ以上の挿入はできなくなり、穴の両端の切り込み部で勘合し、突起の根元が固定される。これによって、差込む突起部の方向が規定される。当然ながら穴の最大長さが長くなればなるほど、係食具の位置確定機能の精度は向上する。
【0034】
位置確定機能の精度が向上している係合具において、予め係合の面ファスナーの位置を合わせておき、最も深く挿入を行った時点で二枚の面ファスナーが合致するようにデザインしておけば、必ずこの挿入によって係合手段である面ファスナーの位置が合うことになる。
【0035】
この面ファスナーの位置確定を安定的に行えるように工夫しておく必要がある。凸形係止片の突起を立てて指先感覚での凹形係止片の穴挿入をする際に、把持状態での突起部の傾斜が不十分であると面ファスナー同士のエッジで部分的な係合が生じる危険性がある。勘合による位置確定の際に想定外の係合が起こるのを阻止する必要がある。対策として穴の下縁部に接する位置に面ファスナーがない状態にするために、穴と面ファスナーとの距離を1mm乃至3mmあけておく。
【0036】
これ以外にも穴と突起の勘合が得られる形状設計が可能である。図1の穴の上縁の形状(4)に差し込み突起の先端形状(8)を合わせる形状に設計しておけば、穴の最大長さに到達する深さまで突起部を挿入しない状態、勘合初期の途中までの挿入によっても勘合状態が得られる。この場合には、挿入の際の突起はやや寝かせて傾斜させておく。この斜め勘合状態を保持したまま係止片同士を平行にまで傾けて係合させれば、係合手段の位置ずれが殆ど生じない。
【0037】
位置確定前に両係止片同士の面ファスナー端部での係合が起こらないようにする別の方法として、この係合が懸念される部分を溶断加工時の熱溶融処理によって係合素子を破壊する方法である。この熱溶融処理は後処理として単独で行うこともできる。この方法をとれば面ファスナーを係止片全体に固着した後、係合させない部分を面ファスナー部に形成することができる。
【0038】
次に衣服の前立てにおける例を図7乃至9で説明する。布地Bの端部と布地Aの端部の重ね部において、図7に示すように布地Bには凹形係止片の穴の方を布地端に向けて固着し、Aには凸形係止片の面ファスナーの方を布地端に向けて固着しておく。最初の係合作業は、まず図7のように重ね部の上側になるAにある凸形係止片の面ファスナー部を親指と人差し指ではさみ、他の指はB布地の重ねのところを押さえつける。
【0039】
図8は凸形係止片の面ファスナー部を挟んだ指で操作し、対向する係止片の面ファスナーを勘合させる作業を継続させて係合する図である。この凸形係止片の面ファスナー部を挟んだ指で操作して、この指先にある突起部を凹形係止片の穴部に指先感覚で導く。穴に突起が滑りながら最大長さ部まで挿入したかどうかはやや硬めの基板同士の当たり具合の変化で感知できる。またストレートにこの部分の穴へ突起が入った場合には、穴と突起の根元のエッジ当たりでわかる。
【0040】
図9は勘合を深く進め、凸形係止片を徐々に倒し、完全に平行になるまで係合手段を押圧した図である。穴の中で突起部の回転滑りが生じ、自動的に両係止片は平行状態で重なる。そして穴の上端円弧と突起の先端円弧の形状が一致するようにしてあれば、両係止片を押圧する段階で、当初の勘合状態は解除され、両者は平行状態に重なって係合する。慣れれば面ファスナー部を把持する片手で二枚の基材の係合を完了させることができる。
【0041】
面ファスナー具の基材への固着法を説明する。前以て凹形係止片と凸形係止片を勘合させて正規の位置関係で係合しておき、これを二枚の基材の重なり部の内側に配置する。まず前者の背面離型紙をはずして基材の内側になる一方に固着する。次に後者の離型紙をはずして重なる方の基材を押圧して固着する。これで係合具の係合強さより係合具背面の粘着材の固着強さがはるかに高ければ、安定して繰り返しの係合・剥離に耐えることができる。
糸による縫い付け法は係合具の基材上における位置決めの後の係合具の固定が幾分困難になる。目立つ色の糸による目印的な仮の縫い付け等が必要になる。一つの方法は、予め型紙を用いて取り付け位置をマーキングしておくものである。両係止片の基材への縫い付けが終了したら、目印糸を外す。
この基材の重なり部での係合具の位置決めの後の固着を簡便に行う上では、高周波ウェルディング法が優れている。
【0042】
上記基材への係合具の固着の際には、係合具の向きが重要になる。指先での係止片の扱いを考慮するのが良い。衣服の場合には体に対して垂直な前立ての端部に対して動かしやすい角度で若干傾斜させておく。
【0043】
上記の自動位置確定になる勘合を得るための係止片の穴形状のバリエーションを図4に示す。また凸形係止片の突起形状のバリエーションを図5に示している。上記説明では同一円弧を両係止片に設けることを基本に説明してきた。ここではこの同一関係を崩す穴と突起の勘合形状になる種々の形状を示す。
図4には直線を穴の一部に用いる形状(d)、または穴の中央側に出っ張るカーブを用いる形状(a)、またややルーズな勘合になるが長楕円形状(b)や穴のエッジに相手の突起が入り込みやすいように割りを入れているもの(a参照)等を示している。十分な末広がりの開口部とこれと対応して根元で固定される突起部の組み合わせであれば、位置確認機能が生じ、任意の穴形状にデザインできる。
【0044】
図5には凸形係止片の突起形状をいくつか示している。深く突起部を穴部に挿入した勘合によって位置確定ができるようにしておけば、突起の先端と穴の上端の形状を合わせておく必要はない。挿入のある段階で勘合が起こり、その後穴部の最大長さ部に突起部の根元が移動できる形状であればよい。穴部の上縁が円弧であっても突起部の先端に直線部を設けた形状の採用は可能である(a,c)。
【0045】
請求項5に関する説明を行う。穴のエッジと突起のエッジの関係で重なり部が生じるデザインにすると、両係止片を傾けて平行関係に近づくにつれてかみ合わせ状態になる。この状態でさらに完全に平行になると穴部と面ファスナー部とで係合が起こる。この二箇所での係合によって基材同士の係合は強化される。この穴部での係合はプラスチック薄板の特長によって、指先でこの部分にひねりを入れると容易に係合は解除される。したがって、位置確定ができる勘合をこの状態を基本にデザインすることもできる。
【0046】
ここまでは穴部が一つで突起部が一つの勘合関係を示してきた。次に係止片にこれらを複数設ける例を示す。図10は穴部を上下に二段に配置した凹形係止片と、選択した穴に挿入する突起部を一つ設ける凸形係止片を示している。これは二種類の係合位置を選択できるもので、服地等の勘合において係合具のタイト度を調整することができる。位置確認の前の選択間違いを指先の操作で感知できるように、穴のエッジの形状を二種類にしておくと良い。 この組み合わせ使用では凹形係止片の面ファスナーの大きさを上下方向に対して大きめに設定しておく。
【0047】
図11は穴を横方向に二個並べる例である。この場合には凸形係止片の突起も二個になる。この場合も誤選択操作による位置確定ミスを防止するために穴の大きさを違えておき、挿入位置の間違いを容易に指先で無理な挿入と検知できるようにしておくと良い。この場合の面ファスナーは横長になり、自動的位置確定がより確実になる。また係合強度も増すことになる。
この誤選択操作による位置確定ミスを防止する方法は、個別の穴部1個の係止片を多数並べて使用する際にも同様の効果を発揮する。
【0048】
ここで小型面ファスナー具を製造するために用いる材料の詳細を説明する。不可欠な材料は面ファスナーとプラスチック薄板である。これらを所定位置で固着して打ち抜き用のラミネート材を得る。
面ファスナーは普及タイプのフックとループ型係合素子を編み織り法でベース状に構成したもので、二種類の形状の面ファスナーを対向して用いるものである。またはきのこ状の形状に代表される1種類の係合素子を対向して用いるもの、またはフックとループが同一面ファスナー面に混在しているもの等を使用できる。これ等の他に減音タイプとして二枚の面ファスナーを剥離する際に発生するバリバリという音を抑えるタイプが開発されてきている。本発明の衣服に面ファスナーを用いる場合には、このタイプが適する。
面ファスナーの種類には規制されず、基板に固着できるものであれば使用可能である。
【0049】
プラスチック基板には粘着両面テープを裏面に固着するタイプ、工業用ミシンで糸を縫いつけるタイプ、高周波ウェルディング法等の取り付け法に適合する素材を用いる。縫いつけ固着には針の通りが良いものが必須条件になり、厚さと硬さに限度があり、汎用樹脂であればPP,PVDC,PET等がコストの面で対象になる。0.2mmから2mmまでの厚さのシートを用いる。好ましい範囲は0.5mmから1.0mmである。粘着固着法であればもう少し厚いものでも使用可能になる。
また低発泡シートとしての発泡PPシートは勘合時の感覚を得やすくする厚さを得る上で好ましい。特殊なシートとして樹脂処理した板紙や各種フィルムのラミネートシートを用いることもできる。コストより装飾性を重要視すると、光沢のある金属シート、および石板等も係合時の剛性と切り口の滑り性に優れていれば素材の対象になる。これには輪郭形成ができる線材も含まれる。
【0050】
製造方法を基材に粘着材で面ファスナーを固着する小型面ファスナーの場合について説明する。図12に示す角型の小型面ファスナー具を6個取りで打ち抜く例で説明する。離型紙を残して打ち抜き、6個付きの製品として袋に入れて販売することとする。6個の面ファスナー具の周辺にトリム代を設ける配置図を作成し、図12のように2丁取りの配置で、打ち抜きは凹形係止片と凸形係止片を組み合わせた抜き型で打ち抜く。
【0051】
工程は図13に示すように連続シートを用いる製造ができるように各種装置を配置する。この小型面ファスナー具の製造には一般的なラミネートと打ち抜きの連続工程または分割工程を当てはめることができる。最上流にはプラスチック薄板のロール(12)がスタンドにかけられ、基板の薄板が繰り出される。次に基材に小型面ファスナー具を固着するための粘着材をつけるための両面粘着テープのロール(13)から同テープが引き出され、圧ロールを通ってプラスチック薄板のシートにラミネートされる。次に面ファスナーのロール(14)から細幅の面ファスナーのテープが繰り出されて先のラミネートシートに圧着される。この面ファスナーには離型紙が付いていて、これを剥離し、巻き取りながら面ファスナーをラミネートシートに移載する。両面粘着テープを用いずに、粘着材をロール塗布して乾燥する装置を組み込むことも可能である。
【0052】
圧着・送りロール(15)を経て、また送り量と位置の検知器(16)を経て3層にラミネートされたシートはコントロールされ、打ち抜き機(17)に供給される。この工程図ではこの打ち抜き機は間欠的打ち抜きになるダイプレスにしている。次は打ち抜かれたシートはカス部と製品を分離するトリミング装置(18)に入る。この装置には押さえゴムとはみ出し冶具を組み込んだ木型を取り付ける。
次に打ち抜かれた係止片はここで押し出されてバケットに打ち落とされ、製品バケット(19)に堆積する。製品以外の残りの部分を巻き取りロールに巻き取る。この巻取りの代わりに上下回転刃で裁断しながら小片としてバケットにまとめることもできる。
【0053】
ここで示した間欠の平抜き方式に換えてロータリー式の連続装置で金型を用いて打ち抜くこともできる。またトリミング装置も陥没・飛び出し方式のピン回転式で行うことができる。標準規格品として量産品製造ができる条件があれば、生産効率の良い設備にすることができる。
【0054】
上記の説明は、面ファスナーを剛性に優れた基板に固着し、この基板の一部に勘合用の穴または突起を設けたものについてであったが、この面ファスナーの代替物として係合機能を有する金属製または樹脂製の雄雌型のスナップホックを用いることができる。このホックは通常ボタンより小さめのサイズで用いるのが一般であり、指先で扱いにくいサイズあり、かつ位置決めが困難な機構になっている。この欠点のために使用は限定的であり普及していない。しかし、本発明の勘合手段を用いる係合法を組み合わせると、これらの欠点は解消できる。ホック群をプラスチック製基板に組み入れた形状にする(図なし)。ホックを3個千鳥状に基板に固着して用いることが容易にできるようになる。この方式を組み入れたホックは雄雌ホックの位置確定が確実に簡便にできるので、複数のホックをまとめて同時に手の平を用いてずれの不安なく行える。このホックの基板への固着は融着または一体成型で行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、面ファスナーに代表される係合手段を固着した硬い二種類の係止片の小片を柔らかい布地等の基材に固着しておくことで、指先感覚で大まかな係合具の位置を確認でき、次に凹部係止片の一部に設けた切り欠け部と対向して用いる凸部係合片に設けた突起部を勘合させて正確な位置確定を行い、この状態で面ファスナーを押圧することによってブラインドタッチで相互の位置ずれを気にすることなく、片手でも係止片同士を係合させることができる。
この機能を付けることによって手先が不自由な高齢者、または身障者の脱着を容易にする衣服を製造することができる。
また、この面ファスナー付きの係合具を用いることによって、ファッション性の求められる衣服のデザインにおいても一般的に用いるボタンやジッパー以外の選択肢を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】 本発明に係る小型面ファスナー具の凹形係止片の基本形状図である。右図はミシン糸で基材に固着した図である。
【図2】 本発明に係る小型面ファスナー具の凸形係止片の基本形状図である。右図はミシン糸で基材に固着した図である。
【図3】 勘合する切り欠け凹部を基板の一部に設けている凹形係合片の平面図である。
【図4】 凹形係止片の穴形状のバリエーション例を示す図である。(a)の9は基板の穴端部にしなりをつける割りである。
【図5】 凸形係止片の突起形状のバリエーション例を示す図である。
【図6】 両面粘着シートを重合した状態の凹形係止片と凸形係止片の面ファスナー部での断面図である。
【図7】 丸型面ファスナー具を衣服の前立てに用いた場合の係合作業の初期操作図である。
【図8】 丸型面ファスナー具を衣服の前立てに用いた場合の係合作業の継続する穴と突起の勘合操作図である。
【図9】 丸型面ファスナー具を衣服の前立てに用いた場合の係合作業の最終押圧操作図である。(指先の図は省略)
【図10】 勘合する穴部が上下に二個配置されている凹形係止片の平面図とこれに対向して用いる凸形係合片の平面図である。
【図11】 勘合する穴部が横方向に二個配置されている凹形係止片の平面図とこれに対向して用いる凸形係合片の平面図である。
【図12】 凹形係止片6個と凸形係止片6個を取り合わせする面ファスナーのラミネート材における配置図である。
【図13】 両面粘着テープを係止片の裏面に取り付ける例の製造方法の例を示す工程図である。
【符号の説明】
【0057】
1 凹形係止片
2 面ファスナー
3 切り欠け部
4 切り欠け部の上縁部
5 基板
6 糸
7 凸形係止片
8 突起部の上縁部
9 割り
10 粘着材
11 離型紙
12 プラスチック基材のロール
13 両面粘着テープのロール
14 両面粘着テープ付きの面ファスナーのロール
15 送りロール
16 送り量・位置の検知装置
17 ダイプレス
18 ストリッピング装置
19 製品バケット
20 トリム部の巻き取りロール
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服の布地等の二枚の基材に取り付けてそれらの重ね合わせ部において、簡便に固着できる係合具を指先の感覚で確実にかつ容易に位置合わせができるようにする小型面ファスナーに関するもので、プラスチック製基板に面ファスナー部と切り込み部を設けた凹部係合片とプラスチック製基板に面ファスナー部と突起部を設けた凸部係合片とで構成する係合具およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二枚の基材の重なり部において結合する手段として従来から行われているものとして、脱着が容易なものとしてはボタンとボタンホールからなる通常のボタン方式がある。この手法は18世紀の中ごろに英国で開発されたとされている。それより幾分早い時期にボタン状の突起物と細紐で係合する比較的ルーズなボタン紐方式がある。これは18世紀初期に日本でも武士の衣装に実施された手法である。これは結合がルーズであるため主として荷重のかかる縦方向の係合に用いられた。
【0003】
これらの結合手段が開発された後、しばらくして超小型の金属製のスナップホックが実用化された。しかし、位置決めの困難さがあり、普及しなかった。この後、20世紀に至って面ファスナーが開発され、比較的ラフな位置決めでやや大きめのサイズを二枚の基材に固着することで使用可能になる条件で用いられてきている。
【0004】
また日本では近年開発された結合手段として、金属爪形片と太糸の組み合わせでの引っ掛け式である「コハゼ」法がある。これは現在では足袋の踵部の留めにのみ用いられている。この限定的使用は作業の困難さと位置決めの不確実さが問題として残っているためである。具体的には足袋の重ね部において上側の布地端に縫いつけた金属小片を下側の布地端に形成した太糸の係止部を抱き込む形で踵部の布地を固定するが、両者とも小さな部材であり、ブラインドタッチでの位置確認が困難であること、この重ね部の押さえを十分に行わねばならないこと、さらには両者の係合がタイトに行われなければ、使用中に外れる可能性があることが挙げられる。
【0005】
結合素材として最も開発の余地のあるものは面ファスナーである。この素材は不満足ながらも衣服等にも取り付けられている実績がある。この面ファスナーの使用される場面の一つは、位置確定の不確実性が顕在化しない面ファスナー同士の移動距離の短い手袋や胸元上部の係合である。係合のずれが目立ちにくいところでの使用である。これらの場合は比較的小片での使用である。もう一つの場面は、大きく開くかばんの蓋部、および枕カバー等の係合で、この係合ではずれがあってもそれほど目立たない。二枚の基材の重なり部に固着する面ファスナーは一方の面ファスナーが小さい場合でも対向して用いる面ファスナーは1辺が数センチ以上と大きいサイズであることが多い。
【0006】
着たときの感覚が重要で、かつ見栄えが気になる衣服等においては係合の位置ずれが問題になり、面ファスナーを用いにくい状況がある。またこの面ファスナーを衣服等に用いた場合の問題として存在した剥離時のメリメリという耳障りな音の問題があった。しかし、この問題についてはメーカーによる改良が進み、減音面ファスナーとして発売され、解消してきている。この新規素材の押圧による簡便な係合技法の開発が改めて注目されてきている。
【0007】
面ファスナーを取り付けた基材同士を位置確定した上で係合させる方法が米国特許に唯一公開されている。この方法によれば帯状の基板の端部に設けた差込穴と差込突起との関係を用いて先端の位置確定を行ってから近接部分に取り付けた面ファスナーを押圧して基板同士を脱着容易に固着できる。この方法は、基板同士の係合を目的にした発明であること、その基板の先端における挿入固定の作業が困難であることが問題点としてある。開示されている方法では、穴と突起の関係は目視でこれらの位置関係を確認しながら挿入固定を完了させる必要がある。開示されている穴と突起の形状を見ると、溝形状の穴の中央に半円部を設けて溝の一部が広くなっている。この形状には折り曲げた突起の差込固定を容易にする効果はない。罫入れを伴う打ち抜き加工での細い溝のカス落としを容易にするためのものと判断される。
【0008】
この発明の後は世界的にも結合の確実さと操作の容易さ、および位置確定の容易さを兼ね備えたユニバーサルデザイン的な係合手段は出現していない。
近年に至って世界的な傾向であるが、高齢者の増加に伴って(視覚障害者を含む身障者も対象になる)指先の不自由な人の衣服の前立ての結合を容易にしてほしいというユニバーサルデザイン的要求が生じている。この要求に基づいて各種の開発が行われている。
このような技術開発の停滞状況において、加工コストの高価になるジッパーが注目されているが、前立ての下端部でのチャック固定部の挿入が困難であり続け、根本的な解決には至っていない。また最近、開発商品のニュースが流れたが、これは2010年9月にイオンから新しい衣類の留め手段を取り付けたカーディガンとして発売された。これは従来からあるボタン方式ではあるが、ボタンホールを斜めに配置して留めの作業性を改善したものであった。このようにユニバーサルデザイン的結合手段の開発が希求されている。
【0009】
【特許文献1】 米国特許3873051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、衣服の前立てのように目視で位置関係を正確に確認できないところでの基材の重合を確実に、かつ簡便に行えるようにする、勘合による位置確定機能付き小型面ファスナーの提供を目的とする。具体的にはプラスチック薄板の基板を打ち抜いた小型の凹形係止片と凸形係止片に係合手段として面ファスナーを固着し、これに近接する部分に穴または突起の勘合手段を別個に形成しておき、ラフなブラインドタッチによる挿入による位置確定ができるようにする。この勘合状態を保持しながら両係止片を平行に押圧することで、二枚の基材の脱着を正確にかつ簡便に行える面ファスナー付きの小型係合具、およびその製造方法を提供するものである。
日本を含む先進国、および新興国において高齢化社会が進展し、特に日本においては65歳以上の高齢者の占める割合が23%を越えてきている。このような社会にあって指先の細かい操作が不自由になった人、視覚障害者等の障害者が用いる衣服には、ボタン、ジッパーに代わる安価でかつ簡便な操作によって正確な位置での基材の係合が可能になる面ファスナー応用品の開発が急務になっている。特に介護の分野では社会的ともいえるニーズがある。
【0011】
2010年現在、一般家庭および介護老人施設等で、面ファスナーを衣服に取り付けて脱着することが行われている。「丸型マジック」と称して直径22mmの丸型に打ち抜いた対の面ファスナーがセットされて販売されている。これを衣服に取り付けた場合、両方の面ファスナーの位置確認は指先確認が不十分な、いわば適当にラフに確認を行って押圧している。柔らかい面ファスナーの取り付け位置を指先で確認できるように、目印として衣服の表地の上に飾りボタンを取り付けることも一般的に行われる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の問題点を解決するもので、係合の位置確定機能付き面係合具である。
ここでは係合手段として面ファスナーを用いる場合を主に説明する。面係合具の位置合わせに関する技術として開示されている米国特許の手段は、先述した問題点としてあげたように、衣服に用いた場合には従来から行われているボタン式と同様、正確な目視による位置確認が前提となるものである。衣服の場合には、目の真下での操作になり、この位置関係の正確な確認は困難になる。それに加えて、基材に穴あけ加工は実際上不可能であるという制約がある。
下記の発明内容の面係合具を用いることで、片手でも二枚の基材を押さえながらの正確な重ね位置でのブラインドタッチによる係合ができる。
【0013】
請求項1に係る発明は、二枚の基材の重なり部の一方に固着して用いる凹形係止片であって、基板の切り欠け部近傍に面係合手段を配置した前記凹形係止片と、これに対応する基材の重なり部で対向して固着して用いる凸形係止片であって、前記面係合手段と係合する面係合手段を基板の前記切り欠け部と勘合する突起部近傍に配置した、前記凸形係止片で構成する面係合具で、前記凸形係止片の切り欠け部は上縁部と下縁部を有し、少なくともその一方は上縁部と下縁部の交点まで末広がりに形成されていることを特徴とする一対の小型面係合具に関する。
【0014】
請求項2に係る発明は、前記突起部は前記切り欠け部内に収まる形状にしたことを特徴とする請求項1に記載の一対の小型面係合具に関する。
【0015】
請求項3に係る発明は、前記切り欠け部の上縁部と下縁部は略円弧で形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の一対の小型面係合具に関する。
【0016】
請求項4に係る発明は、前記切り欠け部を有する係止片の切り欠け部に前記凸形係止片の突起が挿入されて形成される勘合状態を保ったまま、係止片を傾けて面係合手段同士を押圧したときに、前記勘合状態が解除されることを特徴とする請求項1乃至3に記載の一対の小型面係合具に関する。
【0017】
請求項5に係る発明は、前記凹形係止片の切り欠け部に前記凸形係止片の突起が挿入されて形成される勘合状態を保ったまま、係止片を傾けて面係合手段同士を押圧したときに、前記勘合状態が解除されることのないことを特徴とする請求項1または3に記載の一対の小型面係合具に関する。
【0018】
請求項6に係る発明は、前記基材と固着する前記凸形係止片の切り欠け部の先端周縁部は固着していないことを特徴とする請求項1乃至5に記載の一対の小型面係合具に関する。
【0019】
請求項7に係る発明は、前記基材と固着する前記凸形係止片の突起部は固着していないことを特徴とする請求項1乃至6に記載の一対の小型面係合具に関する。
【0020】
請求項8に係る発明は、前記小型面係合具の面係合手段を面ファスナーとしたことを特徴とする請求項1乃至7に記載の一対の小型面係合具に関する。
【0021】
請求項9に係る発明は、前記小型面係合具において、面係合手段をスナップホックとしたことを特徴とする請求項1乃至7に記載の一対の小型面係合具に関する。
【0022】
請求項10に係る発明は、前記切り欠け部または前記突起部を隣接させて同一基板内に配置して用いる面係止片、または前記切り欠け部または前記突起部を別個の基板に配置して隣接させて用いる面係止片であって、隣接する切り欠け部相互または突起部相互の大きさ、または形状を違えて配置したことを特徴とする請求項1乃至9に記載の一対の小型面係合具に関する。
【0023】
請求項11に係る発明は、二枚の基材の重なり部で係合させる面係合手段と切り欠け部からなる凹形係止片と、面係合手段と突起部からなる凸形係止片で構成され、基材に配置されるこれら一対の小型面係合具であって、前記凹形係止片の切り欠け部を下側になる基材の端部に向けて配し、また凸形係止片の係合手段を上側になる基材の端部に向けて配してあることを特徴とする一対の小型面係合具に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
前記プラスチック基板に面ファスナーを固着し、それに近接した部分に自動的に位置確定できる形状の切り欠け部を設けた凹形係止片を形成する。この切り込みは通常、上下の円弧を対称に結合した唇状の打ち抜き穴とする。この凹形係止片と対向して用いる凸形係止片は、前記面ファスナーと係合する機能のある面ファスナーをプラスチック基板に固着し、これに近接する部分に上記穴と挿入することで自動的に勘合する形状の突起を有する凸形係止片で構成する。
これら凹部係止片と凸形係止片を重合して係合しておきたい二枚の基材の端部に固着しておき、広げた状態の基材同士をラフな勘合部での挿入による自動位置確定によって、これに続く押圧によってずれの生じない係合を完成させるものである。
面ファスナーは簡単な押圧によって十分か強度を有する係合を行うことができる優れた素材である。しかし、−旦係合させると、この係合関係を解除するのにかなりの力を要することから、一回の係合操作によって二枚の基材同士を正確な位置関係で確実な面ファスナーの係合を完了させなければならない。
【0025】
以下本発明の代表的な位置確定機能付き小型面ファスナーの形態を図面に基づいて説明する。図1と図3は本発明に係る面ファスナーを両面粘着テープでプラスチック基板に固着し、その近傍に切り込みの穴を形成した凹形係止片である。ここで用いる切り欠けには穴形状も含まれる。図1の右図は工業用ミシンによる基材との糸の縫い付けパターンの例である。図2は同プラスチック基板に対向して係合する面ファスナーと上記穴と勘合できる形状の突起を設けた凸形係止片である。その右図は工業用ミシンによる基材との糸の縫いパターンの例である。図6は両係止片の断面図で、基板と面ファスナーが粘着材によって積層されていることを示す。この積層物から係止片の形状に製作するためには、薄いプラスチック板に面ファスナーを帯状に固着しておき、これを所望の勘合形状に打ち抜く、または溶断する加工を行う。この製造法については後述する。
【0026】
まず係止片の詳細な構成について説明する。図1と図2で示している基板と面ファスナーの固着は通常、面ファスナーが基板上に余裕代を持たせて収まるようにした縫い付け法で製作する。この固着法は二種類の形態に分類される。図1と図2に示す方法はラベル的に面ファスナーを基板に貼り付けることになるものである。面ファスナーの周辺にスペースを設けた形態であるが、別の形態として打ち抜きのエッジと面ファスナーの3辺のエッジが同一になる形態がある。後者の場合は、帯状の連続面ファスナーを基板成形に用いることになる。どちらも粘着材加工とミシン加工ができる。係止片加工としては粘着材加工による面ファスナー固着の方が容易である。欠点は粘着材が針に絡みつくためにこの部分でのミシン縫いが不適になることである。
面ファスナーがその一部分で基板と固着する方法も採用できる(図なし)。この場合、基板の硬い部分と面ファスナーの柔らかい部分が係止片内に存在することになる。この構造でも穴部と突起部の勘合に基板材料の特性である滑り性と剛性を利用でき、採用できる。
【0027】
次に形成した係止片と基材との固着法を説明する。この固着には3種類ある。その一つは、打ち抜きによって所望の形状に形成した両係止片を衣服の前立ての重ね合わせ部に工業用ミシンの糸で縫いつけるもの。二番目は粘着材法で強力な粘着材をつけた両面テープの離型紙をはずして係止片を基材に固着するもの。三番目は高周波ウェルディングである。この方法は適用できる基材の素材に限界がある。本発明の場合は、粘着材による固着法が適当である。この方法は一般的であり、説明は割愛する。
【0028】
縫い付け法は衣類に面ファスナーを取り付ける際によく用いられる方法である。まず凹形係止片の余白代と基材とで行う縫い付け法について説明する。この基本は基板上の面ファスナーの周囲においてのみ基板と基材の固着を行うものである。剥離の力のかかる領域である面ファスナーを安定固着するだけでなく、面ファスナーの余白部以外の穴の先端エリアにも縫い付けを行うと、勘合時の基板下の布地の動きが規制されることになる。つまり挿入する突起の突き当てによる布地のたるみが生じにくくなる。プラスチック板の穴の切り口の滑りやすさを発揮させるために、この突起が穴に挿入しやすいように凹形係止片の背面の生地が撓むことが望ましい。図1に示す縫い付けは、中間的な凹形係止片と基材とで行う縫い付け法を示している。
比較的柔らかいパジャマ生地や背広地では穴周辺において突起の先端を突き立てての通常の穴への挿入を行うと、布地に撓みが生じやすい。しかし、防寒服のような厚手の布地ではこのたわみが生じにくく、この場合には突起部の挿入を容易にするために、穴下の生地に切り込みが有効になる。
【0029】
次に凸形係止片と基材とで行う縫い付け法について説明する。図2は凸形係止片の縫い付け例である。請求項7の記述に関係するが、この係止片の突起部は指先で把持して立てた状態で穴との勘合を行うために、この部分をフリーにする必要がある。縫い付けによってこの部分の動きが規制されることのないように、縫い付けを面ファスナー周囲に限定することになる。
【0030】
係止片の形状について説明する。図1と図2に示している係止片の外形は角型にしている。そして4コーナーには面取りアールを設けている。角型の長所は、係止片の基材への取り付けの際に、基材端部に対する角度認識が容易になることが挙げられる。係止片の面ファスナー側の切断ラインに対して穴部の両端および突起部の根元の位置が平行になるようにデザインしておけばよい。そして、できるだけコーナーに丸みを持たせておくと洗濯時に基板のエッジが布地を傷める危険性を軽減できる。
これらの輪郭形状は任意にデザインできる。丸型、矩形が基本になり、衣料デザイン上好ましいといえる。図7乃至図9の両係止片はボタンに似せた丸型にしたもので示している。これらの形状とサイズは用いる対象の基材と係合強度等のデザインの考え方によって異なる。丸型は端部が使用状態において幾分浮きやすくなるからである。これらのファクターによって面ファスナーの面積および形状、取り付け個数等の設計条件が決定される。基材への係合具の取り付け位置を検討する際には、面ファスナー側の切断端は直線にしておくと目視判断に便利になる。
【0031】
係合具のサイズを決める際には、指先で把持する作業になる凸形係止片が先に規定されることになる。持ちやすいサイズとし、面ファスナー部を角型とした場合には15mm×10mm角以上で、好ましくは30mm×20mm程度の面積が必要になる。
【0032】
次に凹形係止片の穴の形状とサイズについて説明する。まず基本形として、先端が略円弧状になっている突起部の挿入を受ける穴部について説明する。図1に示すような広い口を持つ略円弧の合わせ形にする。この形状は両円弧の交点に向かって末広がりになる。この穴サイズは係止片の大きさにもよるが、穴の最大長さ(上縁部と下縁部の交点間の距離)は10mmから40mm程度、好ましくは15mmから25mmの範囲で、幅は最大部で5mmから30mm程度で、好ましくは8mmから15mmの範囲にする。この唇状の穴形状にすることで円弧状の突起先端部の挿入が容易になり、突起部の位置確定ができる。つまり穴の場所を選ばずに突起の先端の挿入ができるようになる。
【0033】
次に面ファスナー具の自動的な位置確定法を説明する。上記の挿入位置を特定しないラフな挿入作業が行われても、つまり穴の上縁部または下縁部の頂部付近に突起部の先端が挿入されても、プラスチック基板の特性が関係して穴の切り口の傾斜に沿って滑りが生じ、突起部の根元まで穴の最大長さのところへ導かれる。突起部の先端に続いて突起部の根元まで深く差し込むにつれて、穴の最大長さのところまで突起部が挿入される。それ以上の挿入はできなくなり、穴の両端の切り込み部で勘合し、突起の根元が固定される。これによって、差込む突起部の方向が規定される。当然ながら穴の最大長さが長くなればなるほど、係食具の位置確定機能の精度は向上する。
【0034】
位置確定機能の精度が向上している係合具において、予め係合の面ファスナーの位置を合わせておき、最も深く挿入を行った時点で二枚の面ファスナーが合致するようにデザインしておけば、必ずこの挿入によって係合手段である面ファスナーの位置が合うことになる。
【0035】
この面ファスナーの位置確定を安定的に行えるように工夫しておく必要がある。凸形係止片の突起を立てて指先感覚での凹形係止片の穴挿入をする際に、把持状態での突起部の傾斜が不十分であると面ファスナー同士のエッジで部分的な係合が生じる危険性がある。勘合による位置確定の際に想定外の係合が起こるのを阻止する必要がある。対策として穴の下縁部に接する位置に面ファスナーがない状態にするために、穴と面ファスナーとの距離を1mm乃至3mmあけておく。
【0036】
これ以外にも穴と突起の勘合が得られる形状設計が可能である。図1の穴の上縁の形状(4)に差し込み突起の先端形状(8)を合わせる形状に設計しておけば、穴の最大長さに到達する深さまで突起部を挿入しない状態、勘合初期の途中までの挿入によっても勘合状態が得られる。この場合には、挿入の際の突起はやや寝かせて傾斜させておく。この斜め勘合状態を保持したまま係止片同士を平行にまで傾けて係合させれば、係合手段の位置ずれが殆ど生じない。
【0037】
位置確定前に両係止片同士の面ファスナー端部での係合が起こらないようにする別の方法として、この係合が懸念される部分を溶断加工時の熱溶融処理によって係合素子を破壊する方法である。この熱溶融処理は後処理として単独で行うこともできる。この方法をとれば面ファスナーを係止片全体に固着した後、係合させない部分を面ファスナー部に形成することができる。
【0038】
次に衣服の前立てにおける例を図7乃至9で説明する。布地Bの端部と布地Aの端部の重ね部において、図7に示すように布地Bには凹形係止片の穴の方を布地端に向けて固着し、Aには凸形係止片の面ファスナーの方を布地端に向けて固着しておく。最初の係合作業は、まず図7のように重ね部の上側になるAにある凸形係止片の面ファスナー部を親指と人差し指ではさみ、他の指はB布地の重ねのところを押さえつける。
【0039】
図8は凸形係止片の面ファスナー部を挟んだ指で操作し、対向する係止片の面ファスナーを勘合させる作業を継続させて係合する図である。この凸形係止片の面ファスナー部を挟んだ指で操作して、この指先にある突起部を凹形係止片の穴部に指先感覚で導く。穴に突起が滑りながら最大長さ部まで挿入したかどうかはやや硬めの基板同士の当たり具合の変化で感知できる。またストレートにこの部分の穴へ突起が入った場合には、穴と突起の根元のエッジ当たりでわかる。
【0040】
図9は勘合を深く進め、凸形係止片を徐々に倒し、完全に平行になるまで係合手段を押圧した図である。穴の中で突起部の回転滑りが生じ、自動的に両係止片は平行状態で重なる。そして穴の上端円弧と突起の先端円弧の形状が一致するようにしてあれば、両係止片を押圧する段階で、当初の勘合状態は解除され、両者は平行状態に重なって係合する。慣れれば面ファスナー部を把持する片手で二枚の基材の係合を完了させることができる。
【0041】
面ファスナー具の基材への固着法を説明する。前以て凹形係止片と凸形係止片を勘合させて正規の位置関係で係合しておき、これを二枚の基材の重なり部の内側に配置する。まず前者の背面離型紙をはずして基材の内側になる一方に固着する。次に後者の離型紙をはずして重なる方の基材を押圧して固着する。これで係合具の係合強さより係合具背面の粘着材の固着強さがはるかに高ければ、安定して繰り返しの係合・剥離に耐えることができる。
糸による縫い付け法は係合具の基材上における位置決めの後の係合具の固定が幾分困難になる。目立つ色の糸による目印的な仮の縫い付け等が必要になる。一つの方法は、予め型紙を用いて取り付け位置をマーキングしておくものである。両係止片の基材への縫い付けが終了したら、目印糸を外す。
この基材の重なり部での係合具の位置決めの後の固着を簡便に行う上では、高周波ウェルディング法が優れている。
【0042】
上記基材への係合具の固着の際には、係合具の向きが重要になる。指先での係止片の扱いを考慮するのが良い。衣服の場合には体に対して垂直な前立ての端部に対して動かしやすい角度で若干傾斜させておく。
【0043】
上記の自動位置確定になる勘合を得るための係止片の穴形状のバリエーションを図4に示す。また凸形係止片の突起形状のバリエーションを図5に示している。上記説明では同一円弧を両係止片に設けることを基本に説明してきた。ここではこの同一関係を崩す穴と突起の勘合形状になる種々の形状を示す。
図4には直線を穴の一部に用いる形状(d)、または穴の中央側に出っ張るカーブを用いる形状(a)、またややルーズな勘合になるが長楕円形状(b)や穴のエッジに相手の突起が入り込みやすいように割りを入れているもの(a参照)等を示している。十分な末広がりの開口部とこれと対応して根元で固定される突起部の組み合わせであれば、位置確認機能が生じ、任意の穴形状にデザインできる。
【0044】
図5には凸形係止片の突起形状をいくつか示している。深く突起部を穴部に挿入した勘合によって位置確定ができるようにしておけば、突起の先端と穴の上端の形状を合わせておく必要はない。挿入のある段階で勘合が起こり、その後穴部の最大長さ部に突起部の根元が移動できる形状であればよい。穴部の上縁が円弧であっても突起部の先端に直線部を設けた形状の採用は可能である(a,c)。
【0045】
請求項5に関する説明を行う。穴のエッジと突起のエッジの関係で重なり部が生じるデザインにすると、両係止片を傾けて平行関係に近づくにつれてかみ合わせ状態になる。この状態でさらに完全に平行になると穴部と面ファスナー部とで係合が起こる。この二箇所での係合によって基材同士の係合は強化される。この穴部での係合はプラスチック薄板の特長によって、指先でこの部分にひねりを入れると容易に係合は解除される。したがって、位置確定ができる勘合をこの状態を基本にデザインすることもできる。
【0046】
ここまでは穴部が一つで突起部が一つの勘合関係を示してきた。次に係止片にこれらを複数設ける例を示す。図10は穴部を上下に二段に配置した凹形係止片と、選択した穴に挿入する突起部を一つ設ける凸形係止片を示している。これは二種類の係合位置を選択できるもので、服地等の勘合において係合具のタイト度を調整することができる。位置確認の前の選択間違いを指先の操作で感知できるように、穴のエッジの形状を二種類にしておくと良い。 この組み合わせ使用では凹形係止片の面ファスナーの大きさを上下方向に対して大きめに設定しておく。
【0047】
図11は穴を横方向に二個並べる例である。この場合には凸形係止片の突起も二個になる。この場合も誤選択操作による位置確定ミスを防止するために穴の大きさを違えておき、挿入位置の間違いを容易に指先で無理な挿入と検知できるようにしておくと良い。この場合の面ファスナーは横長になり、自動的位置確定がより確実になる。また係合強度も増すことになる。
この誤選択操作による位置確定ミスを防止する方法は、個別の穴部1個の係止片を多数並べて使用する際にも同様の効果を発揮する。
【0048】
ここで小型面ファスナー具を製造するために用いる材料の詳細を説明する。不可欠な材料は面ファスナーとプラスチック薄板である。これらを所定位置で固着して打ち抜き用のラミネート材を得る。
面ファスナーは普及タイプのフックとループ型係合素子を編み織り法でベース状に構成したもので、二種類の形状の面ファスナーを対向して用いるものである。またはきのこ状の形状に代表される1種類の係合素子を対向して用いるもの、またはフックとループが同一面ファスナー面に混在しているもの等を使用できる。これ等の他に減音タイプとして二枚の面ファスナーを剥離する際に発生するバリバリという音を抑えるタイプが開発されてきている。本発明の衣服に面ファスナーを用いる場合には、このタイプが適する。
面ファスナーの種類には規制されず、基板に固着できるものであれば使用可能である。
【0049】
プラスチック基板には粘着両面テープを裏面に固着するタイプ、工業用ミシンで糸を縫いつけるタイプ、高周波ウェルディング法等の取り付け法に適合する素材を用いる。縫いつけ固着には針の通りが良いものが必須条件になり、厚さと硬さに限度があり、汎用樹脂であればPP,PVDC,PET等がコストの面で対象になる。0.2mmから2mmまでの厚さのシートを用いる。好ましい範囲は0.5mmから1.0mmである。粘着固着法であればもう少し厚いものでも使用可能になる。
また低発泡シートとしての発泡PPシートは勘合時の感覚を得やすくする厚さを得る上で好ましい。特殊なシートとして樹脂処理した板紙や各種フィルムのラミネートシートを用いることもできる。コストより装飾性を重要視すると、光沢のある金属シート、および石板等も係合時の剛性と切り口の滑り性に優れていれば素材の対象になる。これには輪郭形成ができる線材も含まれる。
【0050】
製造方法を基材に粘着材で面ファスナーを固着する小型面ファスナーの場合について説明する。図12に示す角型の小型面ファスナー具を6個取りで打ち抜く例で説明する。離型紙を残して打ち抜き、6個付きの製品として袋に入れて販売することとする。6個の面ファスナー具の周辺にトリム代を設ける配置図を作成し、図12のように2丁取りの配置で、打ち抜きは凹形係止片と凸形係止片を組み合わせた抜き型で打ち抜く。
【0051】
工程は図13に示すように連続シートを用いる製造ができるように各種装置を配置する。この小型面ファスナー具の製造には一般的なラミネートと打ち抜きの連続工程または分割工程を当てはめることができる。最上流にはプラスチック薄板のロール(12)がスタンドにかけられ、基板の薄板が繰り出される。次に基材に小型面ファスナー具を固着するための粘着材をつけるための両面粘着テープのロール(13)から同テープが引き出され、圧ロールを通ってプラスチック薄板のシートにラミネートされる。次に面ファスナーのロール(14)から細幅の面ファスナーのテープが繰り出されて先のラミネートシートに圧着される。この面ファスナーには離型紙が付いていて、これを剥離し、巻き取りながら面ファスナーをラミネートシートに移載する。両面粘着テープを用いずに、粘着材をロール塗布して乾燥する装置を組み込むことも可能である。
【0052】
圧着・送りロール(15)を経て、また送り量と位置の検知器(16)を経て3層にラミネートされたシートはコントロールされ、打ち抜き機(17)に供給される。この工程図ではこの打ち抜き機は間欠的打ち抜きになるダイプレスにしている。次は打ち抜かれたシートはカス部と製品を分離するトリミング装置(18)に入る。この装置には押さえゴムとはみ出し冶具を組み込んだ木型を取り付ける。
次に打ち抜かれた係止片はここで押し出されてバケットに打ち落とされ、製品バケット(19)に堆積する。製品以外の残りの部分を巻き取りロールに巻き取る。この巻取りの代わりに上下回転刃で裁断しながら小片としてバケットにまとめることもできる。
【0053】
ここで示した間欠の平抜き方式に換えてロータリー式の連続装置で金型を用いて打ち抜くこともできる。またトリミング装置も陥没・飛び出し方式のピン回転式で行うことができる。標準規格品として量産品製造ができる条件があれば、生産効率の良い設備にすることができる。
【0054】
上記の説明は、面ファスナーを剛性に優れた基板に固着し、この基板の一部に勘合用の穴または突起を設けたものについてであったが、この面ファスナーの代替物として係合機能を有する金属製または樹脂製の雄雌型のスナップホックを用いることができる。このホックは通常ボタンより小さめのサイズで用いるのが一般であり、指先で扱いにくいサイズあり、かつ位置決めが困難な機構になっている。この欠点のために使用は限定的であり普及していない。しかし、本発明の勘合手段を用いる係合法を組み合わせると、これらの欠点は解消できる。ホック群をプラスチック製基板に組み入れた形状にする(図なし)。ホックを3個千鳥状に基板に固着して用いることが容易にできるようになる。この方式を組み入れたホックは雄雌ホックの位置確定が確実に簡便にできるので、複数のホックをまとめて同時に手の平を用いてずれの不安なく行える。このホックの基板への固着は融着または一体成型で行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、面ファスナーに代表される係合手段を固着した硬い二種類の係止片の小片を柔らかい布地等の基材に固着しておくことで、指先感覚で大まかな係合具の位置を確認でき、次に凹部係止片の一部に設けた切り欠け部と対向して用いる凸部係合片に設けた突起部を勘合させて正確な位置確定を行い、この状態で面ファスナーを押圧することによってブラインドタッチで相互の位置ずれを気にすることなく、片手でも係止片同士を係合させることができる。
この機能を付けることによって手先が不自由な高齢者、または身障者の脱着を容易にする衣服を製造することができる。
また、この面ファスナー付きの係合具を用いることによって、ファッション性の求められる衣服のデザインにおいても一般的に用いるボタンやジッパー以外の選択肢を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】 本発明に係る小型面ファスナー具の凹形係止片の基本形状図である。右図はミシン糸で基材に固着した図である。
【図2】 本発明に係る小型面ファスナー具の凸形係止片の基本形状図である。右図はミシン糸で基材に固着した図である。
【図3】 勘合する切り欠け凹部を基板の一部に設けている凹形係合片の平面図である。
【図4】 凹形係止片の穴形状のバリエーション例を示す図である。(a)の9は基板の穴端部にしなりをつける割りである。
【図5】 凸形係止片の突起形状のバリエーション例を示す図である。
【図6】 両面粘着シートを重合した状態の凹形係止片と凸形係止片の面ファスナー部での断面図である。
【図7】 丸型面ファスナー具を衣服の前立てに用いた場合の係合作業の初期操作図である。
【図8】 丸型面ファスナー具を衣服の前立てに用いた場合の係合作業の継続する穴と突起の勘合操作図である。
【図9】 丸型面ファスナー具を衣服の前立てに用いた場合の係合作業の最終押圧操作図である。(指先の図は省略)
【図10】 勘合する穴部が上下に二個配置されている凹形係止片の平面図とこれに対向して用いる凸形係合片の平面図である。
【図11】 勘合する穴部が横方向に二個配置されている凹形係止片の平面図とこれに対向して用いる凸形係合片の平面図である。
【図12】 凹形係止片6個と凸形係止片6個を取り合わせする面ファスナーのラミネート材における配置図である。
【図13】 両面粘着テープを係止片の裏面に取り付ける例の製造方法の例を示す工程図である。
【符号の説明】
【0057】
1 凹形係止片
2 面ファスナー
3 切り欠け部
4 切り欠け部の上縁部
5 基板
6 糸
7 凸形係止片
8 突起部の上縁部
9 割り
10 粘着材
11 離型紙
12 プラスチック基材のロール
13 両面粘着テープのロール
14 両面粘着テープ付きの面ファスナーのロール
15 送りロール
16 送り量・位置の検知装置
17 ダイプレス
18 ストリッピング装置
19 製品バケット
20 トリム部の巻き取りロール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚の基材の重なり部の一方に固着して用いる凹形係止片であって、面係合手段を固着した基板に切り欠け部を設けた前記凹形係止片と、これに対応する基材の重なり部で対向して固着して用いる凸形係止片であって、前記面係合手段と係合する面係合手段を固着した基板に前記切り欠け部と勘合する突起部を設けた前記凸形係止片で構成する面係合具で、前記凹形係止片の切り欠け部は上縁部と下縁部で構成され、少なくともその一方は上縁部と下縁部の交点まで末広がりに形成されていることを特徴とする一対の小型面係合具。
【請求項2】
前記突起部は前記切り欠け部内に収まる形状にしたことを特徴とする請求項1に記載の一対の小型面係合具。
【請求項3】
前記切り欠け部の上縁部と下縁部は略円弧で形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の一対の小型面係合具。
【請求項4】
前記凹形係止片の切り欠け部に前記凸形係止片の突起が挿入されて形成される勘合状態を保ったまま、係止片を傾けて面係合手段同士を押圧したときに、前記勘合状態が解除されることを特徴とする請求項1乃至3に記載の一対の小型面係合具。
【請求項5】
前記凹形係止片の切り欠け部に前記凸形係止片の突起が挿入されて形成される勘合状態を保ったまま、係止片を傾けて面係合手段同士を押圧したときに、前記勘合状態が解除されることのないことを特徴とする請求項1または3に記載の一対の小型面係合具。
【請求項6】
前記基材と固着する前記凹形係止片の切り欠け部の先端周縁部は固着していないことを特徴とする請求項1乃至5に記載の一対の小型面係合具。
【請求項7】
前記基材と固着する前記凸形係止片の突起部は固着していないことを特徴とする請求項1乃至6に記載の一対の小型面係合具。
【請求項8】
前記小型面係合具の面係合手段を面ファスナーとしたことを特徴とする請求項1乃至7に記載の一対の小型面係合具。
【請求項9】
前記小型面係合具において、面係合手段をスナップホックとしたことを特徴とする請求項1乃至7に記載の一対の小型面係合具。
【請求項10】
前記切り欠け部または前記突起部を隣接させて同一基板内に配置して用いる面係止片、または前記切り欠け部または前記突起部を別個の基板に配置して隣接させて用いる面係止片であって、隣接する切り欠け部相互または突起部相互の大きさ、または形状を違えて配置したことを特徴とする請求項1乃至9に記載の一対の小型面係合具。
【請求項11】
二枚の基材の重なり部で係合させる面係合手段と切り欠け部からなる凹形係止片と、面係合手段と突起部からなる凸形係止片で構成され、基材に配置されるこれら一対の小型面係合具であって、前記凹形係止片の切り欠け部を下側になる基材の端部に向けて配し、また凸形係止片の係合手段を上側になる基材の端部に向けて配してあることを特徴とする一対の面係合具。
【請求項12】
二枚の基材の重なり部の一方に固着して用いる基板付き凹形係止片であって、切り欠け部を二個設けた該基板に面係合手段を配置した凹形係止片であって、基材の重なり部でこの凹形係止片に対応して用いる、該切り欠け部と勘合する突起部および該面係合手段と係合する面係合手段を相手側基板に配置した凸形係止片を係合させて用いることを特徴とする凹形係止片。
【請求項13】
二枚の基材の重なり部の一方に固着して用いる基板付き凹形係止片であって、切り欠け部を設けた該基板に面係合手段を配置した凹形係止片であって、基材の重なり部でこの凹形係止片に対応して用いる、該切り欠け部と勘合する突起部および該面係合手段と係合する面係合手段を相手側基板に配置した凸形係止片を係合させる凹形係止片であって、前記凹形係止片の切り欠け部は上縁部と下縁部を有し、その一方で前記突起部と勘合することを特徴とする凹形係止片。
【請求項14】
前記凹形係止片の切り欠け部は上縁部と下縁部を有し、少なくともその一方は上縁部と下縁部の交点まで末広がりに形成されていることを特徴とする請求項12又は13に記載の凹形係止片。
【請求項15】
前記凹形係止片の切り欠け部は上縁部と下縁部を有し、前記切り欠け部の上縁部と下縁部は略円弧で形成されることを特徴とする請求項12乃至14に記載の凹形面係止片。
【請求項16】
二枚の基材の重なり部の一方に固着して用いる基板付き凹形係止片であって、切り欠け部を設けた該基板に面係合手段を配置した凹形係止片であって、基材の重なり部でこの凹形係止片に対応して用いる、該切り欠け部と勘合する突起部および該面係合手段と係合する面係合手段を相手側基板に配置した凸形係止片を係合させて用いる凹形係止片であって、前記凹形係止片の切り欠け部に前記凸形係止片の突起が挿入されて形成される勘合状態を保ったまま、係止片を傾けて面係合手段同士を押圧したときに、前記勘合状態が解除されることのないことを特徴とする凹形係止片。
【請求項17】
二枚の基材の重なり部の一方に固着して用いる基板付き凸形係止片であって、突起部を設けた該基板に面係合手段を配置した凸形係止片であって、基材の重なり部でこの凸形係止片に対応して用いる、該突起部と勘合する切り欠け部および該面係合手段と係合する面係合手段を相手側基板に配置した凹形係止片を係合させる凸形係止片であって、前記突起部は前記切り欠け部内に収まる形状にしたことを特徴とする凸形係止片。
【請求項1】
二枚の基材の重なり部の一方に固着して用いる凹形係止片であって、面係合手段を固着した基板に切り欠け部を設けた前記凹形係止片と、これに対応する基材の重なり部で対向して固着して用いる凸形係止片であって、前記面係合手段と係合する面係合手段を固着した基板に前記切り欠け部と勘合する突起部を設けた前記凸形係止片で構成する面係合具で、前記凹形係止片の切り欠け部は上縁部と下縁部で構成され、少なくともその一方は上縁部と下縁部の交点まで末広がりに形成されていることを特徴とする一対の小型面係合具。
【請求項2】
前記突起部は前記切り欠け部内に収まる形状にしたことを特徴とする請求項1に記載の一対の小型面係合具。
【請求項3】
前記切り欠け部の上縁部と下縁部は略円弧で形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の一対の小型面係合具。
【請求項4】
前記凹形係止片の切り欠け部に前記凸形係止片の突起が挿入されて形成される勘合状態を保ったまま、係止片を傾けて面係合手段同士を押圧したときに、前記勘合状態が解除されることを特徴とする請求項1乃至3に記載の一対の小型面係合具。
【請求項5】
前記凹形係止片の切り欠け部に前記凸形係止片の突起が挿入されて形成される勘合状態を保ったまま、係止片を傾けて面係合手段同士を押圧したときに、前記勘合状態が解除されることのないことを特徴とする請求項1または3に記載の一対の小型面係合具。
【請求項6】
前記基材と固着する前記凹形係止片の切り欠け部の先端周縁部は固着していないことを特徴とする請求項1乃至5に記載の一対の小型面係合具。
【請求項7】
前記基材と固着する前記凸形係止片の突起部は固着していないことを特徴とする請求項1乃至6に記載の一対の小型面係合具。
【請求項8】
前記小型面係合具の面係合手段を面ファスナーとしたことを特徴とする請求項1乃至7に記載の一対の小型面係合具。
【請求項9】
前記小型面係合具において、面係合手段をスナップホックとしたことを特徴とする請求項1乃至7に記載の一対の小型面係合具。
【請求項10】
前記切り欠け部または前記突起部を隣接させて同一基板内に配置して用いる面係止片、または前記切り欠け部または前記突起部を別個の基板に配置して隣接させて用いる面係止片であって、隣接する切り欠け部相互または突起部相互の大きさ、または形状を違えて配置したことを特徴とする請求項1乃至9に記載の一対の小型面係合具。
【請求項11】
二枚の基材の重なり部で係合させる面係合手段と切り欠け部からなる凹形係止片と、面係合手段と突起部からなる凸形係止片で構成され、基材に配置されるこれら一対の小型面係合具であって、前記凹形係止片の切り欠け部を下側になる基材の端部に向けて配し、また凸形係止片の係合手段を上側になる基材の端部に向けて配してあることを特徴とする一対の面係合具。
【請求項12】
二枚の基材の重なり部の一方に固着して用いる基板付き凹形係止片であって、切り欠け部を二個設けた該基板に面係合手段を配置した凹形係止片であって、基材の重なり部でこの凹形係止片に対応して用いる、該切り欠け部と勘合する突起部および該面係合手段と係合する面係合手段を相手側基板に配置した凸形係止片を係合させて用いることを特徴とする凹形係止片。
【請求項13】
二枚の基材の重なり部の一方に固着して用いる基板付き凹形係止片であって、切り欠け部を設けた該基板に面係合手段を配置した凹形係止片であって、基材の重なり部でこの凹形係止片に対応して用いる、該切り欠け部と勘合する突起部および該面係合手段と係合する面係合手段を相手側基板に配置した凸形係止片を係合させる凹形係止片であって、前記凹形係止片の切り欠け部は上縁部と下縁部を有し、その一方で前記突起部と勘合することを特徴とする凹形係止片。
【請求項14】
前記凹形係止片の切り欠け部は上縁部と下縁部を有し、少なくともその一方は上縁部と下縁部の交点まで末広がりに形成されていることを特徴とする請求項12又は13に記載の凹形係止片。
【請求項15】
前記凹形係止片の切り欠け部は上縁部と下縁部を有し、前記切り欠け部の上縁部と下縁部は略円弧で形成されることを特徴とする請求項12乃至14に記載の凹形面係止片。
【請求項16】
二枚の基材の重なり部の一方に固着して用いる基板付き凹形係止片であって、切り欠け部を設けた該基板に面係合手段を配置した凹形係止片であって、基材の重なり部でこの凹形係止片に対応して用いる、該切り欠け部と勘合する突起部および該面係合手段と係合する面係合手段を相手側基板に配置した凸形係止片を係合させて用いる凹形係止片であって、前記凹形係止片の切り欠け部に前記凸形係止片の突起が挿入されて形成される勘合状態を保ったまま、係止片を傾けて面係合手段同士を押圧したときに、前記勘合状態が解除されることのないことを特徴とする凹形係止片。
【請求項17】
二枚の基材の重なり部の一方に固着して用いる基板付き凸形係止片であって、突起部を設けた該基板に面係合手段を配置した凸形係止片であって、基材の重なり部でこの凸形係止片に対応して用いる、該突起部と勘合する切り欠け部および該面係合手段と係合する面係合手段を相手側基板に配置した凹形係止片を係合させる凸形係止片であって、前記突起部は前記切り欠け部内に収まる形状にしたことを特徴とする凸形係止片。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−75859(P2012−75859A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165994(P2011−165994)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【分割の表示】特願2010−236870(P2010−236870)の分割
【原出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(503356967)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【分割の表示】特願2010−236870(P2010−236870)の分割
【原出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(503356967)
【Fターム(参考)】
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