説明

係止ボルトおよび限界停止部を有する開口を閉鎖する装置、および対応する自動車

【課題】大きな減速中に、簡単かつ効果的に、可動部分を確実に阻止するかまたは安全に停止させる閉鎖装置を提供することになる。
【解決手段】本発明は、自動車の本体に形成された開口用の閉鎖装置に関するものである。この装置は、静止構造体と、該静止構造体に形成された開口の閉位置と最大開位置との間で、該静止構造体に対して移動可能である少なくとも1つのパネルと、を備えている。該可動パネルは、該静止構造体に設けられた少なくとも1つの相補的な係止要素と協働することが可能な少なくとも1つのボルトを保持している。本発明によれば、該ボルトまたは該ボルトの少なくとも1つは、該静止構造体に設けられた限界停止部と協働する横方向接触面を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、自動車の開口の分野である。さらに詳細には、本発明は、車両の本体または車両のドアに形成された開口を閉鎖する装置であって、これらの装置に形成された開口を開閉することができる移動可能な摺動部を備えている装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術の解決策
従来は、自動車、多用途車、大型トラック、バス、または鉄道車両のいずれであれ、車両の開口を閉鎖するために、窓ガラスが付設され、この窓ガラスは、接続フレームによって保持されている。後者の接続フレームは、内側部および外側部を有し、これらの内側部および外側部は、ガラスの縁と本体に形成された開口の縁とをシール片と一緒に同時に挟むようになっている。
【0003】
ドア窓を開閉する最も一般的に普及している技術は、ドア窓をドアのシェルまたはトリムに出入りさせることによって、ドア窓をそれ自身の面内において垂直に移動可能とすることである。フレーム内に形成されたトラックに沿って水平に摺動するパネルも知られている。
【0004】
他の技術が、この特許出願の特許権者によって提案されている。この技術は、特に、欧州特許出願公開第0778168号および第0857844号に記載されている。これらの文献に記載されている閉鎖装置(以下、「面一開口部(flush opening)」と呼ぶ)は、静止アセンブリと、この静止アセンブリに対して移動可能な部分とを備えている。可動部は、作用要素を介して、静止アセンブリに接続されている。これらの作用要素は、必要な移動性を確実なものとし、車両の内部に向かって回転される静止部分の面に付設されている。
【0005】
このような「面一開口部」は、車両の本体にこの目的のために画定されたハウジングの内側に、外部から、一体に、車両とは別に、付設されている。この「面一開口部」は、欧州特許出願公開第1022172号に記載された技術によれば、特に接着によって、ドアの下部に強固に固定されてもよい。
【0006】
美学的な見地から、「面一開口部」は、外側から見たとき、フレームが必要とされないという事実によって、本体と面一な滑らかな概観を有している。
【0007】
透明なパネルから概して構成される可動部の摺動を確実にするために、案内装置が設けられている。この案内装置として、例えば、可動パネルによって閉鎖される開口の両側において、開口の静止アセンブリ(または静止構造体)に静止して取り付けられる第1の案内トラックおよび第2の案内トラックが挙げられる。可動パネルは、例えば、摺動面内において、1つ(またはいくつかの)開位置と、開口の視界を遮らない位置以外の中間的な隙間位置との間で、長手方向に沿って摺動するように、トラックに取り付けられている。
【0008】
本発明は、さらに詳細には、「面一開口部」と呼ばれるこの種の閉鎖装置、その変形例およびその改良例に関するものである。しかし、本発明は、さらに広義には、静止アセンブリの面と平行な面内における開位置と中間的な隙間位置との間の(y軸上の)運動とこの平行な面内における(x軸上の)運動とを、開閉運動として含むあらゆる閉鎖装置にも適用されるのみならず、さらに一般的に、少なくとも1つのボルトを備える閉鎖システムからなるどのような形式の開口にも適用されるものである。
【0009】
先行技術の欠点
可動パネルを閉位置、および適切であれば、選択された開位置に係止するいくつかの解決策が提案されている。可動パネルを係止するために、支持体および/または案内要素の1つに形成された留め部(keeper)と協働する少なくとも1つのボルトを設けることが、いくらか知られている。可動パネルを上部および下部に効果的に係止するために、2つのボルトが設けられることもある
【0010】
安全上の理由から、「面一開口部」は、閉鎖し得る開口の上流部を超えて可動部が摺動するのを阻止する停止要素を備えなければならない。周知の方法では、可動部のフレームと一体のフィンガー部が、静止部、例えば、支持体および/または案内要素の近傍に設けられた限界停止部に当接するようにしている。この手法によって、特に、大きい減速中、例えば、緊急時のブレーキまたは事故中に生じる大きな減速中に、可動部が支持体および/または案内要素から外れるのを阻止し、これによって、車両の乗客の安全を効果的に確保することができる。
【0011】
一方、この手法は、比較的設計が複雑でかつ煩雑である。特に、この手法は、比較的大きな断面積を有する摺動部のフレームを必要とし、その結果、開口の視界を遮る部分、すなわち、開口の窓領域を縮小することになる。
【0012】
さらに、可動パネルを解除するように、掴み手段をボルトに作用させることが可能である。安全上の理由と同じように、標準的な規定、特に、規格ECE21は、剛性のある掴み要素がある値にわたって閉鎖要素に重なってはならないことを要求している。これによって、このような要素の設計の可能性が大きく制限され、特に、人間工学的な問題が生じることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、特に、先行技術のこれらの欠点を軽減することにある。
【0014】
さらに詳細には、本発明の1つの目的は、特に大きな減速中に、簡単かつ効果的に、閉鎖装置の可動部分を確実に阻止するかまたは安全に停止することを可能にするこのような技術を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、空間を節約し、開口の視界を遮らない部分を拡大するのに寄与するこのような技術を提供することにある。
【0016】
また、本発明は、摺動部を閉位置、開位置、および中間的な開位置に効果的に係止するのを確実にすることが可能であるこのような技術を提供する目的も有している。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の他の目的は、摺動部の解除を可能にする掴み手段の設計を容易にすることが可能であるこのような技術を提供することにある。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、信頼性が高く、簡単で、かつ安価なこのような技術を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これらの目的および後で明らかになる他の目的は、自動車の本体に形成された開口を閉鎖する装置によって達成することにある。この装置は、静止構造体と、前記静止構造体に形成された開口の閉位置と最大開位置との間で、前記静止構造体に対して移動可能である少なくとも1つのパネルと、を備えている。前記可動パネルは、前記静止構造体にこの目的で設けられた少なくとも1つの相補的な係止要素と協働することが可能な少なくとも1つのボルトを保持している。
【0020】
本発明によれば、前記ボルトまたは前記ボルトの少なくとも1つは、例えば、前記可動パネルが前記最大開位置にあるとき、前記静止構造体に設けられた限界停止部と協働する横方向接触面を有している。
【0021】
従って、本発明は、可動パネルを閉位置、開位置、および適切であれば、中間位置に係止することを可能とする機能のみならず、例えば、大きな減速中に、可動パネルが閉鎖され得る開口を超えて摺動できないように、限界停止部と当接する安全停止機能をも含む二重機能をもたらす1つまたは複数のボルトを設置することからなる完全に新規な独創性のある手法に基づいている。
【0022】
このように、本可動パネルは、可動パネルを静止部に接合する支持体および/または案内要素から外れることがない。これによって、乗客の安全性が向上することになる。
【0023】
この手法によれば、先行技術において設けられているように特定のフィンガー部を可動パネルのフレームに設ける必要がなく、1つまたは複数のボルトが、係止機能と安全停止機能とをもたらすという点において、閉鎖装置の設計を簡素化することができる。
【0024】
この手法は、フィンガー部がフレームに存在しないことによって、大きな断面積を有する可動パネルのフレームを必要としないので、フレームの全体的な寸法を縮小し、その結果、開口の視界を遮らない部分を可能な限り大きくすることができる。
【0025】
1つの有利な特性によれば、本発明による装置は、前記静止構造体と一体の少なくとも1つの案内トラックを備え、前記ボルトまたは前記ボルトの少なくとも1つは、前記1つまたは複数のトラックの摺動部内において案内されるようになっている。
【0026】
従って、本発明によるボルトは、可動パネルの係止および安全停止を確実なものにすることができるのみならず、簡単かつ効果的に、静止部と一体のトラックに沿った案内を確実なものにすることができる。
【0027】
前記ボルトまたは前記ボルトの少なくとも1つは、好ましくは、前記摺動部の1つと接触するように意図された変形可能および/または弾性を有する要素を保持している。
【0028】
このような変形可能および/または弾性を有する要素の設置によって、特に、可動パネルの摺動および/または係止による騒音を抑制することができる。さらに、この手法によれば、例えば、案内トラックの位置合せの不備によって可動パネルに対して生じ得る遊びを許容することができる。
【0029】
前記ボルトは、好ましくは、少なくとも部分的に被覆成形されている。
【0030】
これは、可動パネルの摺動および/または可動パネルの係止中にトラックへの1つまたは複数のボルトの衝突によって、可動パネルの作動中に生じる騒音を低減するのにも寄与することができる。
【0031】
本発明による装置は、有利には、前記ボルトまたは前記ボルトの各々に堅く固定された掴み手段を備え、この掴み手段は、以下の少なくとも2つの位置、すなわち、
−前記1つまたは複数のボルトが前記1つまたは複数の相補的な係止要素と協働する係止位置と、
−前記1つまたは複数のボルトが前記1つまたは複数の相補的な係止要素と協働しない解除位置と、
の間で移動可能となっている。
【0032】
ボルトの設置によって、可動パネルを上側位置および/または下側位置に簡単かつ効果的に係止するのを確実にすることができる。掴み手段を用いることによって、さらに装置の作動を容易にすることができる。
【0033】
本発明の好ましい手法によれば、前記ボルトまたは前記ボルトの少なくとも1つと関連する少なくとも1つのハンドルを含み、前記1つまたは複数のハンドルは、実質的に柔軟なカバーによって少なくとも部分的に被覆された剛性のある構造要素を備えている。
【0034】
このようなハンドルの設置は、本発明による装置の人間工学的な品質を改良するのに寄与することになる。
【0035】
前記構造要素は、有利には、ショアA硬度50よりも高い硬度を有する第1の材料から作製され、前記カバーは、ショアA硬度50よりも低い硬度を有する第2の材料から作製されている。
【0036】
この手法によって、ハンドルの掴み領域の寸法を大きくすることが可能となる。実際、標準的な規定、特に、規格ECE21は、ショアA硬度50よりも高い硬度を有する材料から作製されるハンドル形成部が、可動パネルによって形成された面に25mmを超えて延びてはならないことを要求している。
【0037】
従って、ハンドルの構造部をショアA硬度50よりも低い硬度を有する柔軟なカバーによって被覆成形することによって、規格ECE21に準じながら、ハンドルの設計にさらなる自由度をもたらすことが可能となる。この手法によれば、特に、25mmを超える長さ、例えば、35mmの長さを有する掴み領域を与えることによって、ハンドルの人間工学の品質を改良することができる。
【0038】
前記カバーは、好ましくは、前記剛性のある構造要素に鋳込成形されるかまたは被覆成形されている。
【0039】
従って、本発明による2つの材料からなるハンドルの製造は、容易でかつ安価である。
【0040】
前記剛性のある構造要素は、好ましくは、25mm以下の長さにわたって、前記可動パネルによって画定された面と実質的に直交して延在している。
【0041】
この特徴によって、特に、規格ECE21に準じることが確実になる。
【0042】
本発明の他の有利な特性によれば、前記1つまたは複数のハンドルは、可動パネルの摺動軸と実質的に直交する軸に沿って摺動することができる。
【0043】
従って、1つまたは複数のボルトの移動を容易に制御することが可能となる。
【0044】
本発明による装置は、好ましくは、前記可動パネルの両側に分配された2つのボルトと、前記ボルトの1つと各々関連する2つのハンドルと、を備えている。
【0045】
この手法は、可動パネルを上部および下部の両方に効果的かつ簡単に係止することを確実にすることができる。
【0046】
2つのハンドルの設置によって、装置の人間工学的な品質が高められる。この人間工学的な品質は、2つのハンドルを互いに反対側に配置し、ユーザはこれらのハンドルを2本の指の間に挟むことができるようにすることによって、特に改良されることになる。
【0047】
本発明は、本発明による少なくとも1つの閉鎖装置を備える自動車にも対処している。
【0048】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面に基づいて、説明のための非制限的な単一の例として挙げられる好ましい実施形態の以下の説明を読めば、さらに明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本発明の原理
本発明の一般原理は、1つまたは複数の二重機能ボルトの設置に基づいている。これらのボルトは、静止部に設けられた相補的な係止要素と協働して、摺動パネルを閉位置、開位置、および中間位置に係止することを確実にし、さらに、特に移動端における可動パネルの安全停止機能を確実にすることが可能である。従って、ボルトが静止部にこの目的で一体に設けられた停止要素または限界停止要素と当接すると、車両が大きな減速を受けた場合でも、ボルトによって、可動パネルが摺動するのが阻止され、さらに可動パネルが閉鎖する開口を超えて摺動するのが防止されることが確実になる。
【0050】
この手法によって、特に、車両の乗客の安全を確実なものとするために、例えば、緊急ブレーキまたは衝撃によって生じる大きな減速中に、可動パネルが、可動パネルを静止部に接合する支持体および/または案内トラックから外れるのを防ぐことができる。
【0051】
本発明による閉鎖装置の例示的な構成
一般構造
図1は、本発明による車両の本体に形成された開口用の閉鎖装置の例示的な実施形態を示している。
【0052】
このような閉鎖装置は、静止アセンブリ(静止構造体、静止部)11を備えており、この静止アセンブリ11には、可動パネル12が取り付けられている。可動パネル12は、静止アセンブリ11の上部および下部に取り付けられたトラック13,14に沿って摺動することが可能である。これらトラック13,14は、車両の内部に向かって回転する静止アセンブリ11の面に付設されている。案内トラック13,14は、案内領域131,141を有している。これらの案内領域131,141の機能については、以下に説明する。
【0053】
図1に示される可動パネル12は、閉位置にある。この閉位置では、可動パネル12は、静止アセンブリ11に形成された開口21を完全に閉鎖している。この開口21は、図2において、さらに明瞭に示されている。
【0054】
可動パネル12と一体の2つの解除ハンドル15によって、可動パネル12を確実に解除することが可能になると共に、可動パネル12を確実に案内トラック13,14に沿って摺動させることが可能になる。
【0055】
図2は、図1に示される閉鎖装置の分解図を示している。
【0056】
2つのボルト22,23は、可動パネル12の両側に分配されている。これらのボルト22,23は、2つの位置、すなわち、
−ボルト22,23が、案内トラック13,14内に形成された相補的な係止要素と協働し、可動パネル12を閉位置または所定の中間位置に保持し、可動パネル12が摺動するのを阻止する係止位置と、
−ボルト22,23が、相補的な係止要素と協働せずに、可動パネル12の摺動を可能とする解除位置と、
を取ることが可能である。
【0057】
相補的な係止要素は、例えば、案内トラック13,14に形成された留め部(図示せず)とすることができる。トラック13,14の各々において、いくつかの留め部を中間的な閉位置に対応して分配させてもよいことを理解されたい。
【0058】
この特定の実施形態では、トラック13,14に形成された留め部が可動パネル12用の安全停止手段も構成している。従って、ボルト22,23が係止位置にある場合、車両が大きい減速を受けたとき、可動パネル12は、摺動するのが阻止され、適所に効果的に保持され、乗客の安全を高めることが可能となっている。
【0059】
ボルト22,23の各々は、接続手段を介してハンドル15に接続されている。これらの接続手段は、例えば、ロッド24,25とすることが可能である。これらロッド24,25の各々は、ボルト22,23の1つに接続された一端と、ハンドル15に接続された他端とを有している。
【0060】
ハンドル15は、可動パネル12の摺動軸と実質的に直交する軸に沿って、摺動することが可能となっている。ハンドル15は、さらに互いに向き合って配置され、これによって、可動パネル12を解除するために、ユーザは、2本の指の間に2つのハンドル15を挟むことが可能になる。この手法によれば、ユーザに著しい使い勝手の良さがもたらされ、装置に著しい人間工学的な品質が与えられることになる。
【0061】
戻り手段が、ボルトをそれらの係止位置に戻すように付勢している。これらの戻り手段は、ボルト22,23、ロッド24,25、および/またはハンドル15に均等に作用することが可能となっている。特に、この戻り手段の例として、ボルト22,23がそれらの係止位置からそれらの解除位置に移行したときに圧縮される圧縮バネが挙げられる。
【0062】
ボルトの機能
係止−解除
ボルト22,23は、可動パネル12の係止機能を確実なものとしている。
【0063】
前述したように、ボルト22,23は、解除位置と係止位置との間で移動可能である。係止位置では、ボルト22,23は、戻り手段の影響によって戻され、静止アセンブリ(静止部)11と一体の相補的な係止要素と協働して、可動パネル12を係止している。
【0064】
可動パネル12を摺動させるために、ユーザは、ハンドルを互いに近づけるように力を加えることによって、ハンドル15に同時に作用することが可能となっている。ロッド24,25によって引っ張られたボルト22,23は、トラック13,14内に形成された留め部から外れることになる。その結果、可動パネル12は、解除され、ユーザによって加えられた力の影響を受けて、可動パネル12の摺動軸と実質的に平行な軸に沿って、開口21を開けるかまたは閉じるかかに応じて、1つの方向または他の方向において、トラック13,14に沿って自在に摺動できることになる。
【0065】
ユーザは、可動パネル12を閉位置、開位置、または中間的な開位置に摺動させることが可能である。いったん可動パネル12が所望の位置に着くと、ユーザは、ハンドル15を放し、これによって、ボルト22,23が、戻り手段の影響によってそれらの係止位置に戻り、可動パネル12を係止し、その移動を阻止することが可能となる。
【0066】
摺動中の案内
前述したように、ボルト22,23は、可動パネル12の係止機能を確実なものとすることができる。
【0067】
ボルト22,23は、可動パネル12を案内する第3の機能をさらに確実なものとすることが可能である。この目的のために、ボルト22,23は、解除位置にあるときに、案内レール13,14に形成された案内領域131,141と協働している。
【0068】
このために、ボルト22,23は、案内シューと結合されてもよい。例えば、図3aおよび図3bに示されるように、ボルト22,23は、トラック13,14の案内領域131,141と接触することができる摩擦領域31によって、実質的に「T字状」の形状を有している。有利には、摩擦領域31は、実質的に変形可能かつ弾性的であり、トラック13,14に対して生じ得る遊びおよび位置合せの不備を補償し、これによって、ある程度の摺動の柔軟性を確実に得ることが可能となる。
【0069】
このような弾性的摩擦領域31の設置によって、可動パネル12の摺動中に生じる騒音を未然に防ぐかまたは少なくとも抑制することがさらに可能になる。また、摩擦領域31とリブ32(この機能については、後で詳細に説明する)との間に位置する領域を、例えば、エラストマー系に属する他の種類の変形可能な材料によって、完全に被覆成形することも可能である。この被覆成形によって、システムの係止中の騒音(ボルトがトラックを叩く音)の強度を変えることが可能となる。これは、被覆成形部の硬度に基づく。実際、開口を操作するとき、周辺部分(例えば、本体、トリム、など)の幾何学的な形状に依存して、音響増幅効果を生じることがある。この被覆成形によって、この問題を軽減させることができる。
【0070】
安全停止
本発明によれば、ボルト22,23は、可動パネル12が大きな減速の影響によって閉鎖する開口21を超えて摺動するのを阻止し、案内レール13,14から外れないようにすることを可能にする安全停止機能をさらに確実なものとすることが可能である。
【0071】
この目的のために、可動パネルが閉位置にあるとき、各ボルト22,23は、トラック13,14に設けられた停止手段の1つと協働している。
【0072】
この特定の実施形態では、トラック13,14内に配置された留め部は、停止手段を構成している。従って、可動パネル12が閉位置に係止されると、各ボルト22,23は、トラック13,14内の留め部と協働することになる。その結果、大きい減速が生じた場合でも、可動パネル12は、開口21を超えて摺動せず、すなわち、トラック13,14から外れず、適所に固定された状態で保持されることになる。
【0073】
同様に、可動パネル12は、大きな減速中に、可動パネル12が係止される位置(閉位置、開位置、中間位置)にかかわらず、適所に固定された状態で保持されることになる。
【0074】
他の実施形態では、片方または両方のボルト22,23は、前記可動パネル12が前記最大の開位置にあるとき、前記静止構造体11、例えば、案内トラック13,14内に設けられた限界停止部と協働する横方向接触面を有することが可能である。この場合、開口21が完全に開けられたときにのみ、可動パネル12の安全停止が生じることになる。
【0075】
これを達成するために、ボルト22,23は、大きな減速中に、可動パネル12によって生じる力に対向するように設計された特定の構造を有している。ボルトの断面積および厚みが、適宜に計算されている。同様に、ボルトは、その頑丈さを補強するように分配された一定の数のリブ32を有している。
【0076】
ボルト22,23の特定の構造およびその構造がもたらすボルト22,23の頑丈さによって、図4に示されるような先行技術によって提案されているような可動パネルのフレーム42への停止フィンガー部41の設置を回避することができる。
【0077】
この新規の独創性のある手法は、フレームに停止フィンガー部が存在しないことによって、図4において要素43によって概略的に示される可動パネルを係止するシステムを矢印Aの方向にずらすことが可能になるという事実によって、可動パネルのフレームの全体的な寸法を縮小することができる。
【0078】
従って、本発明は、先行技術の技術において設置されていたものよりも実質的に小さい断面積の可動パネル12のフレーム51を設置することができる。
【0079】
これは、先行技術の閉鎖装置と本発明の装置とをそれぞれ示す図4と図5とを比較すると、さらに明らかである。本発明による技術によれば、可動パネルのフレームの幅を先行技術による値「X」から本発明による小さい値「x」に変更することができる。この(X−x)の差は、約14.5mmである。さらに、図6に示されるように、可動パネルのフレームのフィンガー部42を単になくすという事実によって、フレームの幅を略12.7mmの長さBに短縮することができる(図6参照)。
【0080】
これによって、フレームの全体的な寸法を短縮し、その結果、可動パネル12が開位置にあるときに開口の視界が遮られない部分、すなわち、開口21の閉塞されない表面積を大きくすることができる。
【0081】
また、本発明による手法は、閉鎖装置を構成する要素の数を制限し、または少なくとも閉鎖装置の製造に必要な工程の数を制限するという事実によって、閉鎖装置の設計を簡素化することもできる。
【0082】
ハンドル
図7は、本発明による閉鎖装置に設置されるハンドル15の部分断面図を示している。
【0083】
このハンドル15は、剛性材料から作製される構造要素71を備えている。この構造要素71は、ハンドル15の強度および剛性を単独で確保するインサート材を構成している。この構造要素71は、好ましくは、ショウA硬度50以上の硬度を有するプラスチック材料から作製されている。
【0084】
構造要素71は、カバー72によって被覆されている。カバー72は、好ましくは、ショアA硬度50未満の硬度を有するプラスチック材料から作製されている。カバー72は、有利には、エラストマーからなっているとよい。
【0085】
カバー72は、好ましくは、鋳込み成形、またはインサート材への被覆成形によって、得られることになる。
【0086】
このようなハンドル構造体の設置によって、ハンドル構造体の設計における可能性を著しく拡張するのを助長している。実際、一部の標準的な規定、特に、規格ECE21は、可動パネルの解除を可能にするショアA硬度50よりも高い硬度を有する掴み手段が、可動パネルのフレームによって支持される窓の表面にある寸法「d」を越えて重なってはならないことを要求している。この値は、この場合、25mmに設定されている。従って、ショアA硬度50よりも高い硬度を有するインサート材の上にショアA硬度50未満の硬度を有するカバーを設置することによって、掴み手段の全体的な重なりの長さをより大きな寸法「D」、例えば、略10mmに変更し、その結果、ユーザが作用し得る掴み領域「P」の大きさを増すことが可能となる。
【0087】
従って、この手法は、標準的な規定に従って、改良された掴みをもたらし、取扱いを容易にし、その結果、本発明による閉鎖装置の可動パネルを作動させるために設置されたハンドルの人間工学的な品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明による開口の閉鎖装置の例示的な実施形態を示す概略図である。
【図2】図1に示される装置の分解図である。
【図3】図3aおよび図3bは、本発明による装置に用いられるボルトの例を示す概略図である。
【図4】摺動パネルのフレームにフィンガー部を設置する先行技術を示す概略図である。
【図5】摺動パネルのフレームが停止フィンガー部を備えない本発明による技術を示す概略図である。
【図6】摺動パネルのフレームにフィンガー部を設置する先行技術を示す概略図である。
【図7】本発明の実施形態による装置に設置された解除ハンドルの部分断面図である。
【符号の説明】
【0089】
11 静止アセンブリ(静止構造体)
12 可動パネル
13,14 トラック
15 解除ハンドル
21 開口
22,23 ボルト
24,25 ロッド
31 摩擦領域
32 リブ
41 フィンガー部
42 フレーム
43 要素
51 フレーム
71 構造要素
72 カバー
131,141 案内領域
B 長さ
P 掴み領域
X 幅
x 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の本体に形成された開口用の閉鎖装置であって、静止構造体(11)と、前記静止構造体(11)に形成された開口(21)の閉位置と最大開位置との間で、前記静止構造(11)に対して移動可能である少なくとも1つのパネル(12)と、を備え、前記可動パネル(12)が、前記静止構造体(11)に設けられた少なくとも1つの相補的な係止要素と協働することが可能な少なくとも1つのボルト(22,23)を保持している、閉鎖装置において、
前記ボルト(22,23)または前記ボルト(22,23)の少なくとも1つが、前記静止構造体(11)に設けられた限界停止部と協働する横方向接触面を有していることを特徴とする閉鎖装置。
【請求項2】
前記静止構造体(11)と一体の少なくとも1つの案内トラック(13,14)を備え、前記ボルト(22,23)または前記ボルト(22,23)の少なくとも1つが、前記1つまたは複数のトラック(13,14)の摺動部(131,141)内において案内されていることを特徴とする、請求項1に記載の閉鎖装置。
【請求項3】
前記ボルト(22,23)または前記ボルト(22,23)の少なくとも1つが、前記摺動部(131,141)の1つと接触するようになっている変形可能および/または弾性を有する要素(31)を保持していることを特徴とする、請求項2に記載の閉鎖装置。
【請求項4】
前記ボルト(22,23)または前記ボルト(22,23)の少なくとも1つが、実質的に柔軟な材料によって少なくとも部分的に被覆成形されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の閉鎖装置。
【請求項5】
前記ボルト(22,23)または前記ボルト(22,23)の各々に強固に固定された掴み手段を備え、前記掴み手段が、少なくとも2つの位置、すなわち、
−前記1つまたは複数のボルト(22,23)が前記1つまたは複数の相補的な係止要素と協働する係止位置と、
−前記1つまたは複数のボルト(22,23)が前記1つまたは複数の相補的な係止要素と協働しない解除位置と、
の間で移動可能であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の閉鎖装置。
【請求項6】
前記掴み手段は、前記ボルト(22,23)または前記ボルト(22,23)の少なくとも1つと関連する少なくとも1つのハンドル(15)を含み、前記1つまたは複数のハンドル(15)が、実質的に柔軟なカバー(72)によって少なくとも部分的に覆われた剛性のある構造要素(71)を備えていることを特徴とする、請求項5に記載の閉鎖装置。
【請求項7】
前記構造要素(71)は、ショアA硬度50よりも高い硬度を有する第1の材料から作製され、前記カバー(72)は、ショアA硬度50よりも低い硬度を有する第2の材料から作製されていることを特徴とする、請求項6に記載の閉鎖装置。
【請求項8】
前記カバー(72)が、前記剛性のある構造要素(71)上に鋳込み成形されているかまたは被覆成形されていることを特徴とする、請求項6あるいは7に記載の閉鎖装置。
【請求項9】
前記剛性のある構造要素(71)が、前記可動パネル(12)によって画定された面と実質的に直交し、25mm未満の距離にわたって延在していることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一項に記載の閉鎖装置。
【請求項10】
前記1つまたは複数のハンドル(15)が、前記可動パネル(12)の摺動軸と実質的に直交する軸に沿って摺動することが可能となっていることを特徴とする、請求項6〜9のいずれか一項に記載の閉鎖装置。
【請求項11】
前記可動パネル(12)の両側に分配された2つのボルト(22,23)と、前記ボルト(22,23)の1つと各々関連する2つのハンドル(15)とを備えていることを特徴とする、請求項6〜10のいずれか一項に記載の閉鎖装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の少なくとも1つの閉鎖装置を備えていることを特徴とする自動車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−114840(P2008−114840A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−284721(P2007−284721)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(507242400)ワゴン・ソシエテ・パ・アクシオンス・シンプリフィエ (3)
【Fターム(参考)】