係止装置
【課題】操作性を向上できる係止装置を得る。
【解決手段】デッキサイドトリム32に形成した軸部材導入路34に沿ってストッパピン26Aを後方へ直線状に移動すると、ストッパピン26Aがカム38の第1当接面42と摺動し、カム38が軸40を中心として上方へ揺動して、ストッパピン26Aが係止溝44に係止される。さらに、ストッパピン26Aを移動すると、ストッパピン26Aがカム38の第2当接面46と摺動し、カム38が軸40を中心として上方へ揺動して、ストッパピン26Aが離脱路50の入口部50Aに挿入される。次に、作業者がカバーを把持する力を弱める、又はカバーから手を離すと、トノカバーの巻取軸に設けられた巻取装置の付勢力によってカバーとともにストッパピン26Aが、軸部材導入路34に沿って前方へ直線状に引き戻されると共に、離脱路50の出口部50Bから抜け出る。
【解決手段】デッキサイドトリム32に形成した軸部材導入路34に沿ってストッパピン26Aを後方へ直線状に移動すると、ストッパピン26Aがカム38の第1当接面42と摺動し、カム38が軸40を中心として上方へ揺動して、ストッパピン26Aが係止溝44に係止される。さらに、ストッパピン26Aを移動すると、ストッパピン26Aがカム38の第2当接面46と摺動し、カム38が軸40を中心として上方へ揺動して、ストッパピン26Aが離脱路50の入口部50Aに挿入される。次に、作業者がカバーを把持する力を弱める、又はカバーから手を離すと、トノカバーの巻取軸に設けられた巻取装置の付勢力によってカバーとともにストッパピン26Aが、軸部材導入路34に沿って前方へ直線状に引き戻されると共に、離脱路50の出口部50Bから抜け出る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付勢力に抗して軸部材を係止位置に着脱可能に係止するための係止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、係止装置としては、例えば、特許文献1がある。この従来技術では、ストッパ溝機構によって、トノカバーの先端縁両側に設けられたストッパーピンを着脱可能に係止できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−23543号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、ストッパ溝機構が、ストッパーピンを係止する係止溝と、ストッパーピンを係止溝に導入する導入路と、ストッパーピンを係止溝から離脱させる離脱路と、を備えたジグザグ形状となっている。このため、ストッパーピンを係止溝に係止し、その後、係止溝から解除する場合に、ストッパーピンを導入路と離脱路とに沿ってジグザグに移動させる必要がある。この結果、操作が煩雑となり操作性がよくない。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、操作性を向上できる係止装置を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明の係止装置は、付勢力に抗して移動する軸部材を受け入れる直線状の軸部材導入路が形成された導入路形成部材と、前記導入路形成部材に隣接して配置され、前記軸部材導入路と交差する方向へ移動可能とされたカムと、前記カムに形成され、前記軸部材を係止位置に保持するための係止溝と、前記カムに形成され、前記軸部材導入路に侵入した前記軸部材と摺動することで、前記カムを移動し、前記軸部材を前記係止溝に案内する第1当接面と、前記カムに形成され、前記係止溝から抜け出した前記軸部材を受け入れる入口部と、前記軸部材を前記カムから分離させる出口部と、を備え、前記付勢力によって引き戻され前記軸部材導入路を逆走する前記軸部材が通過可能とされた離脱路と、前記カムに形成され、軸部材導入路に沿って前記係止溝から移動する前記軸部材と摺動することで、前記カムを移動し、前記軸部材を前記係止溝から前記離脱路の入口部に案内する第2当接面と、を有する。
【0007】
請求項1に記載の本発明の係止装置では、付勢力に抗して軸部材を、導入路形成部材に形成された直線状の軸部材導入路に挿入し、軸部材導入路に沿って移動すると、軸部材導入路に侵入した軸部材と、導入路形成部材に隣接して配置されたカムの第1当接面とが摺動する。これにより、軸部材導入路と交差する方向へ移動可能とされたカムが移動し、軸部材が係止溝に案内され、軸部材が係止溝に係止される。また、軸部材を係止溝から軸部材導入路に沿ってさらに移動すると、軸部材が第2当接面と摺動する。これにより、カムが移動し、軸部材が係止溝から離脱路の入口部に移動する。ここで、軸部材が付勢力によって引き戻されると、軸部材は軸部材導入路を逆走しつつ離脱路を通過して出口部から抜け、カムから離れる。このため、軸部材を係止溝に係止する操作と、係止溝から解除する操作が、双方とも軸部材導入路に沿った直線移動となるので、操作性が向上する。
【0008】
請求項2記載の本発明は請求項1に記載の係止装置において、前記カムは前記軸部材導入路の奥側を中心にして揺動可能とされており、前記カムの揺動中心と前記第1当接面との距離が、前記カムの揺動中心と前記第2当接面との距離より長く、前記軸部材が前記第2当接面と摺動して前記カムを揺動するために必要な力が、前記軸部材が前記第1当接面と摺動して前記カムを揺動するために必要な力より大きく設定されている。
【0009】
請求項2記載の本発明の係止装置では、係止溝から移動を開始した軸部材が第2当接面と摺動してカムを揺動する場合には、係止溝に向かって移動する軸部材が第1当接面と摺動してカムを揺動する場合に比べて大きな力が必要になる。この結果、軸部材が係止溝に係止されたか否かの判断を操作力の増加によって容易に判断可能となる。このため、軸部材を係止溝に確実に係止することができる。
【0010】
請求項3記載の本発明は請求項1または請求項2に記載の係止装置において、前記カムを前記係止溝が前記軸部材を係止する方向へ付勢するカム付勢手段を有する。
【0011】
請求項3記載の本発明の係止装置では、カムはカム付勢手段によって係止溝が軸部材を係止する方向へ付勢される。このため、軸部材が係止溝に確実に係止される。
【0012】
請求項4記載の本発明は請求項1〜3の何れか1項に記載の係止装置において、前記離脱路の出口部を塞ぐ位置に設けられ、前記軸部材導入路に侵入した前記軸部材と摺動することによって前記軸部材を前記第1当接面に案内すると共に、前記離脱路の入口部から出口部へ移動する前記軸部材と摺動することによって、前記離脱路の出口部を塞ぐ位置から前記離脱路の出口部を開く方向へ揺動する開閉部材を有する。
【0013】
請求項4記載の本発明の係止装置では、軸部材導入路に侵入した軸部材が、離脱路の出口部を塞ぐ位置に設けられた開閉部材と摺動することによって、軸部材が第1当接面に案内される。このため、軸部材導入路に侵入した軸部材が離脱路に入ることがなく、軸部材が係止溝に容易に係止される。また、離脱路の入口部から出口部へ移動する軸部材が開閉部材と摺動することによって、開閉部材が離脱路の出口部を塞ぐ位置から離脱路の出口部を開く方向へ揺動する。このため、軸部材が係止装置から確実に離脱する。
【0014】
請求項5記載の本発明は請求項4に記載の係止装置において、前記開閉部材を前記離脱路の出口部を閉じる方向へ付勢する開閉部材付勢手段を有する。
【0015】
請求項5記載の本発明の係止装置では、開閉部材付勢手段が開閉部材を離脱路の出口部を閉じる方向へ付勢するため、開閉部材によって離脱路の出口部が確実に閉じられる。
【0016】
請求項6記載の本発明は請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の係止装置において、前記軸部材は巻取り方向へ付勢されたシート状部材に設けられている。
【0017】
請求項6記載の本発明の係止装置では、巻取り方向へ付勢されたシート状部材を引き出す、または、収納する際に、軸部材導入路に沿った直線移動となるので、操作性が向上する。
【0018】
請求項7記載の本発明は請求項6に記載の係止装置において、前記軸部材が前記シート状部材の幅方向両端部にそれぞれ設けられており、前記導入路形成部材と前記カムとが前記各軸部材にそれぞれに対応して設けられている。
【0019】
請求項7記載の本発明の係止装置では、シート状部材の幅方向両端部にそれぞれ設けられた軸部材が、それぞれの軸部材に対応して設けられている導入路形成部材とカムとによって係止される。このため、横幅の広いシート状部材の幅方向両端部が容易に係止される。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の本発明の係止装置は、上記構成としたので、操作性を向上できる。
【0021】
請求項2に記載の本発明の係止装置は、上記構成としたので、軸部材を係止溝に確実に係止することができる。
【0022】
請求項3に記載の本発明の係止装置は、上記構成としたので、軸部材を係止溝に確実に係止することができる。
【0023】
請求項4に記載の本発明の係止装置は、上記構成としたので、軸部材を係止溝に容易に係止することができると共に、軸部材を係止装置から確実に離脱させることができる。
【0024】
請求項5に記載の本発明の係止装置は、上記構成としたので、開閉部材によって離脱路の出口部を確実に閉じることができる。
【0025】
請求項6に記載の本発明の係止装置は、上記構成としたので、巻取り方向へ付勢されたシート状部材を引き出したり、巻取り方向へ収納する際の操作性を向上できる。
【0026】
請求項7に記載の本発明の係止装置は、上記構成としたので、横幅の広いシート状部材の幅方向両端部を容易に係止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る係止装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る係止装置を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る係止装置が適用された自動車のトノカバーを示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る係止装置を示す側面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る係止装置の係止動作を説明する側面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る係止装置の係止動作を説明する側面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る係止装置の係止動作を説明する側面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る係止装置の係止状態を示す側面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る係止装置の係止解除動作を説明する側面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る係止装置の係止解除動作を説明する側面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る係止装置の係止解除動作を説明する側面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る係止装置の係止解除動作を説明する側面図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る係止装置の係止解除動作を説明する側面図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る係止装置の係止解除動作を説明する側面図である。
【図15】本発明の一実施形態に係る係止装置の係止解除動作を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の係止装置の一実施形態を図1〜図15に従って説明する。
なお、図中、同一又は対応する機能を有する部材(構成要素)には同じ符号を付して適宜説明を省略する。また、図に適宜示されている矢印FRは車両前方側、矢印UPは車両上方側、矢印INは車幅方向内側をそれぞれ示している。
【0029】
図3には、トノカバー10を備えた車両12が示されている。この車両12は2ボックスタイプのステーションワゴンであり、後部座席14とバックドア16との間のスペースがラッゲージルーム18として用いられている。このラッゲージルーム18には乗員の荷物20等が載置可能となっている。また、後部座席14のシートバックの上端部裏面側には、トノカバー10が配設されている。
【0030】
トノカバー10は、巻取軸22とシート状部材としてのカバー24とを備えている。カバー24の車両後方側端部には車幅方向に沿って、カバー24の幅より長い軸26が設けられている。軸26の幅方向両側部は、それぞれカバー24の幅方向両側部から突出しており、軸部材としての左右一対のストッパピン26Aなっている、また、ストッパピン26Aは、車両内側側壁28におけるバックドア16の近傍に配設された左右一対の係止装置30にそれぞれ係止可能となっている。
【0031】
トノカバー10の巻取軸22は、その軸方向が車両幅方向と一致するように配置されている。巻取軸22の内部には、トノカバー10の非使用時にカバー24を付勢力によって巻き取るための図示しない巻取装置が配設されている。従って、トノカバー10の使用時には、カバー24を巻取装置の付勢力に抗して車両後方(図3の矢印A方向)へ引き出し、ストッパピン26Aを係止装置30に係止するようになっている。
【0032】
図1及び図2に示されるように、本実施形態では、係止装置30における導入路形成部材がデッキサイドトリム32によって構成されている。なお、デッキサイドトリム32は車両のリヤサイドパネルの内側に配置され、車両内側側壁28(図3参照)を構成する内装材である。また、デッキサイドトリム32は車両前後方向に沿って配置される縦壁部32Aと、縦壁部32Aの車両後方側端から車幅方向外側へ湾曲された後壁部32Bと、を有している。デッキサイドトリム32の縦壁部32Aには車両前後方向に伸びる直線状の軸部材導入路34が形成されている。軸部材導入路34は、縦壁部32Aの上下方向中間部に形成されており、縦壁部32Aの前端に開口部34Aが形成され、縦壁部32Aの前後方向中間部が奥側端になる後端部34Bとなっている。なお、軸部材導入路34の幅は、ストッパピン26Aの軸径より僅かに大きく設定されており、ストッパピン26Aは軸部材導入路34に沿って車両前後方向へ移動可能となっている。
【0033】
図2に示すように、係止装置30は、デッキサイドトリム34の車幅方向外側面に沿って隣接して配設された厚板状のカム38を備えている。カム38は、後端下部38Aが車幅方向に沿って配置された軸40によって、デッキサイドトリム34の後端下部34Cに車両下方向(図2の矢印C方向)と車両上方向(図2矢印D方向)とへ揺動可能に軸支されている。従って、カム38は軸部材導入路34の奥側となる車両後方側に軸支され、軸部材導入路34と交差する方向へ揺動可能となっている。また、カム38の前端下部には、第1当接面42が形成されている。
【0034】
図4に示すように、第1当接面42はカム38の前端の上下方向中央部から後方下側に向かって僅かに前方側へ凸に湾曲した傾斜面となっており、傾斜角度はθ1となっている。カム38における第1当接面42の後方側には、係止溝44が形成されており、第1当接面42は、係止溝44の前方側(軸40と反対側)に形成されている。また、係止溝44はカム38の下端側が開口部となっており、開口部から前側上方に向かって傾斜した状態で伸びている。なお、図2に示すように、係止溝44の車幅方向外側端部は、カム38の車幅方向外側側壁部38Bで閉塞されている。
【0035】
従って、図6に示すように、ストッパピン26Aが軸部材導入路34に沿って車両前方から車両後方(図6の矢印A方向)へ向かって移動することで、ストッパピン26Aがカム38の第1当接面42と摺動し、カム38が軸40を中心として上方(図6の矢印D方向)へ揺動するようになっている。その後、図7に示すように、ストッパピン26Aが第1当接面42に下端に達し、下端を通過すると、図8に示すように、カム38が軸40を中心として下方(図8の矢印C方向)へ揺動し、ストッパピン26Aが係止溝44に係止されるようになっている。
【0036】
図4に示すように、カム38における係止溝44の後方側(軸40側)には、係止溝44の後壁部に連続して第2当接面46が形成されている。第2当接面46はカム38の後側下方に向かって傾斜しており、傾斜角度はθ2となっている。なお、本実施形態では、第1当接面42の傾斜角度はθ1と第2当接面46の傾斜角度θ2とが略等しくなっている(θ1≒θ2)。
【0037】
従って、図9に示すように、ストッパピン26Aが、係止溝44から軸部材導入路34に沿って車両後方(図9の矢印A方向)へ向かって移動することで、ストッパピン26Aがカム38の第2当接面46と摺動し、カム38が軸40を中心として上方(図9の矢印D方向)へ揺動するようになっている。
【0038】
なお、本実施形態では、第2当接面46が第1当接面42に対してカム38の揺動中心側に形成されており、カム38の揺動中心となる軸40と第2当接面46との距離が、軸40と第1当接面42との距離より短い。且つ、第1当接面42の傾斜角度はθ1と第2当接面46の傾斜角度θ2とが略等しくなっている(θ1≒θ2)。このため、ストッパピン26Aを第1当接面42に摺動させてカム38を上方に揺動するための操作力F1に比べて、ストッパピン26Aを第2当接面46に摺動させてカム38を上方に揺動するための操作力F2が大きくなる(F1<F2)。
【0039】
図2に示すように、カム38における第2当接面46の後方側(軸40側)には、離脱路50の入口部50Aが形成されている。離脱路50は、カム38の下端の前後方向中央部に形成された入口部50Aから、カム38の前方上側に向かって僅かに上方側へ凸に湾曲した傾斜溝となっており、離脱路50の出口部50Bは、カム38の第1当接面42の上方に形成されている。また、離脱路50は、ストッパピン26Aが通過可能となっており、入口部50Aから出口部50Bに向かって溝幅W1が徐々に狭くなっている。なお、図2に示すように、離脱路50の車幅方向外側端部はカム38の車幅方向外側側壁部38Bで閉塞されている。
【0040】
従って、図9に示すように、ストッパピン26Aが、係止溝44から軸部材導入路34に沿って車両後方(図9の矢印A方向)へ向かって移動することで、カム38が軸40を中心として上方(図9の矢印D方向)へ揺動するようになっている。その後、図10に示すように、ストッパピン26Aが第2当接面46に下端に達し、下端を通過すると、図11に示すように、ストッパピン26Aが離脱路50の入口部50Aに挿入され、カム38は軸40を中心として下方(図11の矢印C方向)へ揺動するようになっている。また、この状態で、作業者がカバー24の後端を把持する力を弱める、又はカバー24から手を離すと、トノカバー10の巻取軸22に設けられた巻取装置の付勢力によって、カバー24とともにストッパピン26Aが、前方(図11の矢印B方向)へ引き戻されるようになっている。
【0041】
従って、図12及び図13に示すように、ストッパピン26Aは、軸部材導入路34に沿って車両前方(図12及び図13の矢印B方向)へ移動しつつ、離脱路50内を入口部50Aから出口部50Bに向かって移動するようになっている。このとき、ストッパピン26Aが離脱路50の前壁部50Cと摺動することで、カム38は、軸40を中心として下方(図12及び図13の矢印C方向)へ揺動するようになっている。
【0042】
図1及び図2に示すように、軸40にはカム付勢手段としてのコイルスプリング52が設けられている。コイルスプリング52は、カム38を下方(図1及び図2の矢印C方向)へ付勢している。なお、デッキサイドトリム34には、ストッパ54が突出形成されており、カム38はストッパ54に当接することで、コイルスプリング52の付勢力に抗して図1に示す基準位置に停止するようになっている。
【0043】
従って、ストッパピン26Aが第1当接面42と摺動する際には、コイルスプリング52の付勢力に抗してカムが上方(図1及び図2の矢印D方向)へ揺動するようになっている。また、ストッパピン26Aが第2当接面46と摺動する際にも、コイルスプリング52の付勢力に抗してカムが上方(図1及び図2の矢印D方向)へ揺動するようになっている。
【0044】
図1及び図2に示すように、離脱路50の出口部50Bには、出口部50Bを塞ぐ位置に開閉部材としてのフラップ60が設けられている。フラップ60は上端部60Aが軸62によって、カム38の前端上部に車両後方(図1及び図2の矢印E方向)と車両前方(図1及び図2の矢印F向)とへ揺動可能に軸支されている。また、フラップ60の下端部60Bは、第1当接面42の上端に後方へ向かって形成された凹部64に係止可能とされている。
【0045】
図4に示すように、フラップ60の下端部60Bが凹部64に係止された閉止位置で、フラップ60の前面60Cは後方下側に向かって傾斜しており、第1当接面42に連続している。
【0046】
従って、図5に示すように、ストッパピン26Aが、軸部材導入路34に挿入され、軸部材導入路34に沿って車両後方(図5の矢印A方向)へ向かって移動を開始すると、ストッパピン26Aがフラップ60の前面60Cと摺動し、カム38が軸40を中心として上方(図5の矢印D方向)へ揺動するようになっている。その後、図6に示すように、ストッパピン26Aはカム38の第1当接面42と摺動するようになっている。
【0047】
図1及び図2に示すように、フラップ60の軸62には、開閉部材付勢手段としてのコイルスプリング68が設けられている。コイルスプリング68は、フラップ60を後方(図1及び図2の矢印E方向)へ付勢している。なお、フラップ60は下端部60Bが凹部64に当接することで、コイルスプリング68の付勢力に抗して図1に示す閉止位置に停止するようになっている。
【0048】
従って、図13及び図14に示すように、ストッパピン26Aが離脱路50の出口部50Bに達すると、ストッパピン26Aがフラップ60の後面60Dと摺動し、フラップ60をコイルスプリング68の付勢力に抗して、軸62を中心に前方(図13及び図14の矢印F方向)へ揺動するようになっている。このため、ストッパピン26Aが離脱路50の出口部50Bから抜け出ることができるようになっている。なお、図15に示すように、ストッパピン26Aがフラップ60から離れると、コイルスプリング68の付勢力によって、フラップ60は後方(図15の矢印E方向)へ揺動して閉止位置に戻るようになっている。
【0049】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用と効果について説明する。
(トノカバー10を使用位置に引き出す場合)
【0050】
図3に示すように、本実施形態では、トノカバー10を使用位置に引き出す場合には、作業者がカバー24の後端部を把持してカバー24を巻取装置の付勢力に抗して引き出し、ストッパピン26Aを係止装置30に係止する。この際、図5に示すように、ストッパピン26Aを、デッキサイドトリム32の軸部材導入路34に挿入し、直線状の軸部材導入路34に沿って車両後方(図5の矢印A方向)へ移動する。これにより、ストッパピン26Aはフラップ60の前面60Cと摺動し、カム38がコイルスプリング52の付勢力に抗して軸40を中心として上方(図5の矢印D方向)へ揺動する。その後、図6に示すように、ストッパピン26Aがカム38の第1当接面42と摺動し、カム38がコイルスプリング52の付勢力に抗して軸40を中心としてさらに上方(図6の矢印D方向)へ揺動する。
【0051】
さらに、ストッパピン26Aを直線状の軸部材導入路34に沿って車両後方へ移動すると、図7に示すように、ストッパピン26Aが第1当接面42の下端に達する。そして、ストッパピン26Aが第1当接面42の下端を通過すると、図8に示すように、カム38が軸40を中心として下方(図8の矢印D方向)へ揺動し、係止溝44に係止される。このため、ストッパピン26Aを軸部材導入路34に沿って車両後方へ直線状に移動することで、ストッパピン26Aが係止溝44に容易且つ確実に係止される。
【0052】
(トノカバー10を格納位置に戻す場合)
次に、トノカバー10を格納位置に戻す場合には、ストッパピン26Aが、係止装置30のカム38の係止溝44に係止されている図8に示す状態で、作業者がカバー24の後端部を把持してカバー24を巻取装置の付勢力に抗して引き出す方向(車両後方)へ移動する。これにより、図9に示すように、ストッパピン26Aが、係止溝44から軸部材導入路34に沿って車両後方(図9の矢印A方向)へ向かって移動する。このため、ストッパピン26Aがカム38の第2当接面46と摺動し、カム38が軸40を中心として上方(図9の矢印D方向)へ揺動する。その後、図10に示すように、ストッパピン26Aが第2当接面46に下端に達し、下端を通過すると、図11に示すように、ストッパピン26Aが離脱路50の入口部50Aに挿入され、カム38は軸40を中心として下方(図11の矢印C方向)へ揺動する。
【0053】
この状態で、作業者がカバー24の後端を把持する力を弱める、又はカバー24から手を離すと、トノカバー10の巻取軸22に設けられた巻取装置の付勢力によって、カバー24とともにストッパピン26Aが、前方(図11の矢印B方向)へ引き戻される。このため、図12に示すように、ストッパピン26Aは直線状の軸部材導入路34に沿って車両前方(図12の矢印B方向)へ移動しつつ、離脱路50の内部を出口部50Bに向かって移動する。また、ストッパピン26Aが離脱路50の前壁部50Cと摺動することで、カム38は下方(図12の矢印C方向)へ揺動する。なお、コイルスプリング52の付勢力によっても、カム38は下方(図12の矢印C方向)へ揺動する。
【0054】
次に、図13に示すように、ストッパピン26Aが離脱路50の出口部50Bに達すると、ストッパピン26Aがフラップ60の後面60Dと摺動し、図14に示すように、フラップ60をコイルスプリング68の付勢力に抗して、軸62を中心に前方(図14の矢印F方向)へ揺動する。このため、図15に示すように、ストッパピン26Aが、離脱路50の出口部50Bとデッキサイドトリム32の軸部材導入路34とから抜け出し、係止装置30から離れ、カバー24が付勢力によって巻取軸22に巻き取られる。また、ストッパピン26Aがフラップ60の後面60Dから離れると、コイルスプリング68の付勢力によって、フラップ60は後方(図15の矢印E方向)へ揺動して閉止位置に戻る。
【0055】
以上のように、本実施形態では、ストッパピン26Aを係止装置30のカム38の係止溝44へ係止する操作と、ストッパピン26Aを係止溝44から解除し、係止装置30から離脱させる操作が、双方ともデッキサイドトリム32の軸部材導入路34に沿った直線移動となる。このため、ジグザグに移動させる従来構造の係止装置に比べて操作性が向上する。この結果、トノカバー10のカバー24を引き出す、または、収納する際の操作性が向上する。
【0056】
また、本実施形態では、第2当接面46が第1当接面42に対してカム38の揺動中心側に形成されており、カム38の揺動中心となる軸40と第2当接面46との距離が、軸40と第1当接面42との距離より短くなっている。且つ、第1当接面42の傾斜角度はθ1と第2当接面46の傾斜角度θ2とが略等しくなっている(θ1≒θ2)。このため、ストッパピン26Aを第1当接面42に摺動させてカム38を上方に揺動するための操作力F1に比べて、ストッパピン26Aを第2当接面46に摺動させてカム38を上方に揺動するための操作力F2が大きくなる(F1<F2)。即ち、係止溝44から移動を開始したストッパピン26Aが第2当接面46と摺動してカム38を上方へ揺動する場合には、係止溝44に向かって移動するストッパピン26Aが第1当接面42と摺動してカム38を上方へ揺動する場合に比べて大きな操作力が必要になる。この結果、ストッパピン26Aが係止溝44に係止されたか否かの判断を操作力の増加によって容易に判断できるので、ストッパピン26Aを係止溝44に確実に係止することが可能になる。
【0057】
また、本実施形態では、カム38がコイルスプリング52によって係止溝44がストッパピン26Aを係止する方向へ付勢されている。このため、ストッパピン26Aを係止溝44に確実に係止させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、ストッパピン26Aが離脱路50の出口部50Bを塞ぐ位置に設けられたフラップ60の前面60Cと摺動することによって、カム38の第1当接面42に案内される。このため、ストッパピン26Aが離脱路50に入ることがなく、係止溝44に容易かつ確実に案内される。また、フラップ60の後面60Dが離脱路50に沿って移動するストッパピン26Aと摺動することによって、フラップ60が離脱路50の出口部50Bを塞ぐ閉止位置から離脱路50の出口部50を開く開放位置へ揺動する。このため、ストッパピン26Aを係止装置30から確実に離脱させることができる。
【0059】
また、本実施形態では、コイルスプリング68がフラップ60を離脱路50の出口部50Bを閉じる方向へ付勢している。このため、フラップ60によって離脱路50の出口部50Bを確実に閉じることができる。
【0060】
また、本実施形態では、ストッパピン26Aがカバー24の車幅方向両端部にそれぞれ設けられており、これら一対のストッパピン26Aにそれぞれ対応して左右の係止装置30が設けられている。このため、横幅の広いトノカバー10のカバー24の幅方向両端部を容易に係止することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、カム付勢手段としてのコイルスプリング52によってカム38を付勢し、開閉部材付勢手段としてのコイルスプリング68によってフラップ60を付勢している。このため、ストッパピン26Aの移動方向(軸部材導入路34の方向)が車両前後方向以外、例えば、上下方向等の構成においてもカム38及びフラップ60が確実に作動する。
【0062】
(その他の実施形態)
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、カム付勢手段としてのコイルスプリング52によって、カム38を付勢したが、これに代えて、コイルスプリング以外の板ばね等の他のカム付勢手段によって、カム38を付勢する構成としてもよい。また、カム付勢手段を除き、自重によりカム38が下方へ揺動する構成としてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、開閉部材付勢手段としてのコイルスプリング68によって、フラップ60を付勢したが、これに代えて、コイルスプリング以外の板ばね等の他の開閉部材付勢手段によって、フラップ60を付勢する構成としてもよい。また、開閉部材付勢手段を除き、自重によりフラップ60揺動する構成としてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、導入路形成部材としてのデッキサイドトリム32に軸部材導入路34を形成したが、これに代えて、リヤサイドパネル等の他の導入路形成部材に軸部材導入路34を形成した構成としてもよい。また、カム38をデッキサイドトリム32に代えてリヤサイドパネル等の他の部材に軸支した構成としてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、軸部材としての左右一対のストッパピン26Aを左右一対の係止装置30にそれぞれ係止する構成としたが、左右何れか一方のストッパピン26Aのみを左右何れか一方のみの係止装置30に係止する構成としてもよい。また、軸部材はストッパピン26Aに限定されず、軸部材導入路34を通過可能、係止溝44に係止可能、且つ離脱路50を通過可能であれば、軸形状の他の軸部材であってもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、離脱路50の出口部50Bに開閉部材としてのフラップ60を設けたが、開閉部材はフラップ60に限定されず、弾性変形可能な板ばねが離脱路50の出口部50Bを直接開閉する等の他の開閉部材としてもよい。また、離脱路50の出口部50Bに開閉部材を設けない構成とすることも可能である。なお、離脱路50の出口部50Bに開閉部材を設けない構成とした場合には、ストッパピン26Aを軸部材導入路34に挿入した際に、カム38を手動により上方へ僅かに揺動して、ストッパピン26Aがカム38の第1当接面42と摺動するようにすればよい。
【0067】
また、上記実施形態では、第1当接面42の傾斜角度はθ1と、第2当接面46の傾斜角度はθ2とを略同じ(θ1≒θ2)としたが、これに代えて、第2当接面46の傾斜角度θ2を第1当接面42の傾斜角度θ1に比べて大きくして(θ1<θ2)もよい。この場合には、ストッパピン26Aを第1当接面42に摺動させてカム38を上方に揺動するための操作力F1に比べて、ストッパピン26Aを第2当接面46に摺動させてカム38を上方に揺動するための操作力F2がさらに大きくなる(F1<F2)。この結果、ストッパピン26Aが係止溝44に係止されたか否かの判断を操作力の増加によってさらに容易に判断可能となる。
【0068】
また、上記実施形態では、カム38が軸40を中心に上下方向へ揺動する構成としたが、これに代えて、カム38がガイドレール等のガイド部材によって上下方向へ平行移動することで、ストッパピン26Aがカム38の第1当接面42と摺動し、係止溝44に係合し、且つ第2当接面46と摺動する構成としてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、シート状部材としてのトノカバー10のカバー24を係止するために本発明の係止装置30を適用したが、本発明の係止装置30は、トノカバー10のカバー24以外のウインドシールドカーテン等の他のシート状部材にも適用可能である。また、本発明の係止装置30は、車両以外に、住宅等に使用されるカーテン等のシート状部材にも適用可能である。さらに、本発明の係止装置30は、シート状部材以外にも適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 トノカバー
22 巻取軸
24 カバー(シート状部材)
26 軸
26A ストッパピン(軸部材)
30 係止装置
32 デッキサイドトリム(導入路形成部材)
34 軸部材導入路
38 カム
40 軸
42 第1当接面
44 係止溝
46 第2当接面
50 離脱路
52 コイルスプリング(カム付勢手段)
60 フラップ(開閉部材)
62 軸
68 コイルスプリング(開閉部材付勢手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、付勢力に抗して軸部材を係止位置に着脱可能に係止するための係止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、係止装置としては、例えば、特許文献1がある。この従来技術では、ストッパ溝機構によって、トノカバーの先端縁両側に設けられたストッパーピンを着脱可能に係止できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−23543号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、ストッパ溝機構が、ストッパーピンを係止する係止溝と、ストッパーピンを係止溝に導入する導入路と、ストッパーピンを係止溝から離脱させる離脱路と、を備えたジグザグ形状となっている。このため、ストッパーピンを係止溝に係止し、その後、係止溝から解除する場合に、ストッパーピンを導入路と離脱路とに沿ってジグザグに移動させる必要がある。この結果、操作が煩雑となり操作性がよくない。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、操作性を向上できる係止装置を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明の係止装置は、付勢力に抗して移動する軸部材を受け入れる直線状の軸部材導入路が形成された導入路形成部材と、前記導入路形成部材に隣接して配置され、前記軸部材導入路と交差する方向へ移動可能とされたカムと、前記カムに形成され、前記軸部材を係止位置に保持するための係止溝と、前記カムに形成され、前記軸部材導入路に侵入した前記軸部材と摺動することで、前記カムを移動し、前記軸部材を前記係止溝に案内する第1当接面と、前記カムに形成され、前記係止溝から抜け出した前記軸部材を受け入れる入口部と、前記軸部材を前記カムから分離させる出口部と、を備え、前記付勢力によって引き戻され前記軸部材導入路を逆走する前記軸部材が通過可能とされた離脱路と、前記カムに形成され、軸部材導入路に沿って前記係止溝から移動する前記軸部材と摺動することで、前記カムを移動し、前記軸部材を前記係止溝から前記離脱路の入口部に案内する第2当接面と、を有する。
【0007】
請求項1に記載の本発明の係止装置では、付勢力に抗して軸部材を、導入路形成部材に形成された直線状の軸部材導入路に挿入し、軸部材導入路に沿って移動すると、軸部材導入路に侵入した軸部材と、導入路形成部材に隣接して配置されたカムの第1当接面とが摺動する。これにより、軸部材導入路と交差する方向へ移動可能とされたカムが移動し、軸部材が係止溝に案内され、軸部材が係止溝に係止される。また、軸部材を係止溝から軸部材導入路に沿ってさらに移動すると、軸部材が第2当接面と摺動する。これにより、カムが移動し、軸部材が係止溝から離脱路の入口部に移動する。ここで、軸部材が付勢力によって引き戻されると、軸部材は軸部材導入路を逆走しつつ離脱路を通過して出口部から抜け、カムから離れる。このため、軸部材を係止溝に係止する操作と、係止溝から解除する操作が、双方とも軸部材導入路に沿った直線移動となるので、操作性が向上する。
【0008】
請求項2記載の本発明は請求項1に記載の係止装置において、前記カムは前記軸部材導入路の奥側を中心にして揺動可能とされており、前記カムの揺動中心と前記第1当接面との距離が、前記カムの揺動中心と前記第2当接面との距離より長く、前記軸部材が前記第2当接面と摺動して前記カムを揺動するために必要な力が、前記軸部材が前記第1当接面と摺動して前記カムを揺動するために必要な力より大きく設定されている。
【0009】
請求項2記載の本発明の係止装置では、係止溝から移動を開始した軸部材が第2当接面と摺動してカムを揺動する場合には、係止溝に向かって移動する軸部材が第1当接面と摺動してカムを揺動する場合に比べて大きな力が必要になる。この結果、軸部材が係止溝に係止されたか否かの判断を操作力の増加によって容易に判断可能となる。このため、軸部材を係止溝に確実に係止することができる。
【0010】
請求項3記載の本発明は請求項1または請求項2に記載の係止装置において、前記カムを前記係止溝が前記軸部材を係止する方向へ付勢するカム付勢手段を有する。
【0011】
請求項3記載の本発明の係止装置では、カムはカム付勢手段によって係止溝が軸部材を係止する方向へ付勢される。このため、軸部材が係止溝に確実に係止される。
【0012】
請求項4記載の本発明は請求項1〜3の何れか1項に記載の係止装置において、前記離脱路の出口部を塞ぐ位置に設けられ、前記軸部材導入路に侵入した前記軸部材と摺動することによって前記軸部材を前記第1当接面に案内すると共に、前記離脱路の入口部から出口部へ移動する前記軸部材と摺動することによって、前記離脱路の出口部を塞ぐ位置から前記離脱路の出口部を開く方向へ揺動する開閉部材を有する。
【0013】
請求項4記載の本発明の係止装置では、軸部材導入路に侵入した軸部材が、離脱路の出口部を塞ぐ位置に設けられた開閉部材と摺動することによって、軸部材が第1当接面に案内される。このため、軸部材導入路に侵入した軸部材が離脱路に入ることがなく、軸部材が係止溝に容易に係止される。また、離脱路の入口部から出口部へ移動する軸部材が開閉部材と摺動することによって、開閉部材が離脱路の出口部を塞ぐ位置から離脱路の出口部を開く方向へ揺動する。このため、軸部材が係止装置から確実に離脱する。
【0014】
請求項5記載の本発明は請求項4に記載の係止装置において、前記開閉部材を前記離脱路の出口部を閉じる方向へ付勢する開閉部材付勢手段を有する。
【0015】
請求項5記載の本発明の係止装置では、開閉部材付勢手段が開閉部材を離脱路の出口部を閉じる方向へ付勢するため、開閉部材によって離脱路の出口部が確実に閉じられる。
【0016】
請求項6記載の本発明は請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の係止装置において、前記軸部材は巻取り方向へ付勢されたシート状部材に設けられている。
【0017】
請求項6記載の本発明の係止装置では、巻取り方向へ付勢されたシート状部材を引き出す、または、収納する際に、軸部材導入路に沿った直線移動となるので、操作性が向上する。
【0018】
請求項7記載の本発明は請求項6に記載の係止装置において、前記軸部材が前記シート状部材の幅方向両端部にそれぞれ設けられており、前記導入路形成部材と前記カムとが前記各軸部材にそれぞれに対応して設けられている。
【0019】
請求項7記載の本発明の係止装置では、シート状部材の幅方向両端部にそれぞれ設けられた軸部材が、それぞれの軸部材に対応して設けられている導入路形成部材とカムとによって係止される。このため、横幅の広いシート状部材の幅方向両端部が容易に係止される。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の本発明の係止装置は、上記構成としたので、操作性を向上できる。
【0021】
請求項2に記載の本発明の係止装置は、上記構成としたので、軸部材を係止溝に確実に係止することができる。
【0022】
請求項3に記載の本発明の係止装置は、上記構成としたので、軸部材を係止溝に確実に係止することができる。
【0023】
請求項4に記載の本発明の係止装置は、上記構成としたので、軸部材を係止溝に容易に係止することができると共に、軸部材を係止装置から確実に離脱させることができる。
【0024】
請求項5に記載の本発明の係止装置は、上記構成としたので、開閉部材によって離脱路の出口部を確実に閉じることができる。
【0025】
請求項6に記載の本発明の係止装置は、上記構成としたので、巻取り方向へ付勢されたシート状部材を引き出したり、巻取り方向へ収納する際の操作性を向上できる。
【0026】
請求項7に記載の本発明の係止装置は、上記構成としたので、横幅の広いシート状部材の幅方向両端部を容易に係止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る係止装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る係止装置を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る係止装置が適用された自動車のトノカバーを示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る係止装置を示す側面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る係止装置の係止動作を説明する側面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る係止装置の係止動作を説明する側面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る係止装置の係止動作を説明する側面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る係止装置の係止状態を示す側面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る係止装置の係止解除動作を説明する側面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る係止装置の係止解除動作を説明する側面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る係止装置の係止解除動作を説明する側面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る係止装置の係止解除動作を説明する側面図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る係止装置の係止解除動作を説明する側面図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る係止装置の係止解除動作を説明する側面図である。
【図15】本発明の一実施形態に係る係止装置の係止解除動作を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の係止装置の一実施形態を図1〜図15に従って説明する。
なお、図中、同一又は対応する機能を有する部材(構成要素)には同じ符号を付して適宜説明を省略する。また、図に適宜示されている矢印FRは車両前方側、矢印UPは車両上方側、矢印INは車幅方向内側をそれぞれ示している。
【0029】
図3には、トノカバー10を備えた車両12が示されている。この車両12は2ボックスタイプのステーションワゴンであり、後部座席14とバックドア16との間のスペースがラッゲージルーム18として用いられている。このラッゲージルーム18には乗員の荷物20等が載置可能となっている。また、後部座席14のシートバックの上端部裏面側には、トノカバー10が配設されている。
【0030】
トノカバー10は、巻取軸22とシート状部材としてのカバー24とを備えている。カバー24の車両後方側端部には車幅方向に沿って、カバー24の幅より長い軸26が設けられている。軸26の幅方向両側部は、それぞれカバー24の幅方向両側部から突出しており、軸部材としての左右一対のストッパピン26Aなっている、また、ストッパピン26Aは、車両内側側壁28におけるバックドア16の近傍に配設された左右一対の係止装置30にそれぞれ係止可能となっている。
【0031】
トノカバー10の巻取軸22は、その軸方向が車両幅方向と一致するように配置されている。巻取軸22の内部には、トノカバー10の非使用時にカバー24を付勢力によって巻き取るための図示しない巻取装置が配設されている。従って、トノカバー10の使用時には、カバー24を巻取装置の付勢力に抗して車両後方(図3の矢印A方向)へ引き出し、ストッパピン26Aを係止装置30に係止するようになっている。
【0032】
図1及び図2に示されるように、本実施形態では、係止装置30における導入路形成部材がデッキサイドトリム32によって構成されている。なお、デッキサイドトリム32は車両のリヤサイドパネルの内側に配置され、車両内側側壁28(図3参照)を構成する内装材である。また、デッキサイドトリム32は車両前後方向に沿って配置される縦壁部32Aと、縦壁部32Aの車両後方側端から車幅方向外側へ湾曲された後壁部32Bと、を有している。デッキサイドトリム32の縦壁部32Aには車両前後方向に伸びる直線状の軸部材導入路34が形成されている。軸部材導入路34は、縦壁部32Aの上下方向中間部に形成されており、縦壁部32Aの前端に開口部34Aが形成され、縦壁部32Aの前後方向中間部が奥側端になる後端部34Bとなっている。なお、軸部材導入路34の幅は、ストッパピン26Aの軸径より僅かに大きく設定されており、ストッパピン26Aは軸部材導入路34に沿って車両前後方向へ移動可能となっている。
【0033】
図2に示すように、係止装置30は、デッキサイドトリム34の車幅方向外側面に沿って隣接して配設された厚板状のカム38を備えている。カム38は、後端下部38Aが車幅方向に沿って配置された軸40によって、デッキサイドトリム34の後端下部34Cに車両下方向(図2の矢印C方向)と車両上方向(図2矢印D方向)とへ揺動可能に軸支されている。従って、カム38は軸部材導入路34の奥側となる車両後方側に軸支され、軸部材導入路34と交差する方向へ揺動可能となっている。また、カム38の前端下部には、第1当接面42が形成されている。
【0034】
図4に示すように、第1当接面42はカム38の前端の上下方向中央部から後方下側に向かって僅かに前方側へ凸に湾曲した傾斜面となっており、傾斜角度はθ1となっている。カム38における第1当接面42の後方側には、係止溝44が形成されており、第1当接面42は、係止溝44の前方側(軸40と反対側)に形成されている。また、係止溝44はカム38の下端側が開口部となっており、開口部から前側上方に向かって傾斜した状態で伸びている。なお、図2に示すように、係止溝44の車幅方向外側端部は、カム38の車幅方向外側側壁部38Bで閉塞されている。
【0035】
従って、図6に示すように、ストッパピン26Aが軸部材導入路34に沿って車両前方から車両後方(図6の矢印A方向)へ向かって移動することで、ストッパピン26Aがカム38の第1当接面42と摺動し、カム38が軸40を中心として上方(図6の矢印D方向)へ揺動するようになっている。その後、図7に示すように、ストッパピン26Aが第1当接面42に下端に達し、下端を通過すると、図8に示すように、カム38が軸40を中心として下方(図8の矢印C方向)へ揺動し、ストッパピン26Aが係止溝44に係止されるようになっている。
【0036】
図4に示すように、カム38における係止溝44の後方側(軸40側)には、係止溝44の後壁部に連続して第2当接面46が形成されている。第2当接面46はカム38の後側下方に向かって傾斜しており、傾斜角度はθ2となっている。なお、本実施形態では、第1当接面42の傾斜角度はθ1と第2当接面46の傾斜角度θ2とが略等しくなっている(θ1≒θ2)。
【0037】
従って、図9に示すように、ストッパピン26Aが、係止溝44から軸部材導入路34に沿って車両後方(図9の矢印A方向)へ向かって移動することで、ストッパピン26Aがカム38の第2当接面46と摺動し、カム38が軸40を中心として上方(図9の矢印D方向)へ揺動するようになっている。
【0038】
なお、本実施形態では、第2当接面46が第1当接面42に対してカム38の揺動中心側に形成されており、カム38の揺動中心となる軸40と第2当接面46との距離が、軸40と第1当接面42との距離より短い。且つ、第1当接面42の傾斜角度はθ1と第2当接面46の傾斜角度θ2とが略等しくなっている(θ1≒θ2)。このため、ストッパピン26Aを第1当接面42に摺動させてカム38を上方に揺動するための操作力F1に比べて、ストッパピン26Aを第2当接面46に摺動させてカム38を上方に揺動するための操作力F2が大きくなる(F1<F2)。
【0039】
図2に示すように、カム38における第2当接面46の後方側(軸40側)には、離脱路50の入口部50Aが形成されている。離脱路50は、カム38の下端の前後方向中央部に形成された入口部50Aから、カム38の前方上側に向かって僅かに上方側へ凸に湾曲した傾斜溝となっており、離脱路50の出口部50Bは、カム38の第1当接面42の上方に形成されている。また、離脱路50は、ストッパピン26Aが通過可能となっており、入口部50Aから出口部50Bに向かって溝幅W1が徐々に狭くなっている。なお、図2に示すように、離脱路50の車幅方向外側端部はカム38の車幅方向外側側壁部38Bで閉塞されている。
【0040】
従って、図9に示すように、ストッパピン26Aが、係止溝44から軸部材導入路34に沿って車両後方(図9の矢印A方向)へ向かって移動することで、カム38が軸40を中心として上方(図9の矢印D方向)へ揺動するようになっている。その後、図10に示すように、ストッパピン26Aが第2当接面46に下端に達し、下端を通過すると、図11に示すように、ストッパピン26Aが離脱路50の入口部50Aに挿入され、カム38は軸40を中心として下方(図11の矢印C方向)へ揺動するようになっている。また、この状態で、作業者がカバー24の後端を把持する力を弱める、又はカバー24から手を離すと、トノカバー10の巻取軸22に設けられた巻取装置の付勢力によって、カバー24とともにストッパピン26Aが、前方(図11の矢印B方向)へ引き戻されるようになっている。
【0041】
従って、図12及び図13に示すように、ストッパピン26Aは、軸部材導入路34に沿って車両前方(図12及び図13の矢印B方向)へ移動しつつ、離脱路50内を入口部50Aから出口部50Bに向かって移動するようになっている。このとき、ストッパピン26Aが離脱路50の前壁部50Cと摺動することで、カム38は、軸40を中心として下方(図12及び図13の矢印C方向)へ揺動するようになっている。
【0042】
図1及び図2に示すように、軸40にはカム付勢手段としてのコイルスプリング52が設けられている。コイルスプリング52は、カム38を下方(図1及び図2の矢印C方向)へ付勢している。なお、デッキサイドトリム34には、ストッパ54が突出形成されており、カム38はストッパ54に当接することで、コイルスプリング52の付勢力に抗して図1に示す基準位置に停止するようになっている。
【0043】
従って、ストッパピン26Aが第1当接面42と摺動する際には、コイルスプリング52の付勢力に抗してカムが上方(図1及び図2の矢印D方向)へ揺動するようになっている。また、ストッパピン26Aが第2当接面46と摺動する際にも、コイルスプリング52の付勢力に抗してカムが上方(図1及び図2の矢印D方向)へ揺動するようになっている。
【0044】
図1及び図2に示すように、離脱路50の出口部50Bには、出口部50Bを塞ぐ位置に開閉部材としてのフラップ60が設けられている。フラップ60は上端部60Aが軸62によって、カム38の前端上部に車両後方(図1及び図2の矢印E方向)と車両前方(図1及び図2の矢印F向)とへ揺動可能に軸支されている。また、フラップ60の下端部60Bは、第1当接面42の上端に後方へ向かって形成された凹部64に係止可能とされている。
【0045】
図4に示すように、フラップ60の下端部60Bが凹部64に係止された閉止位置で、フラップ60の前面60Cは後方下側に向かって傾斜しており、第1当接面42に連続している。
【0046】
従って、図5に示すように、ストッパピン26Aが、軸部材導入路34に挿入され、軸部材導入路34に沿って車両後方(図5の矢印A方向)へ向かって移動を開始すると、ストッパピン26Aがフラップ60の前面60Cと摺動し、カム38が軸40を中心として上方(図5の矢印D方向)へ揺動するようになっている。その後、図6に示すように、ストッパピン26Aはカム38の第1当接面42と摺動するようになっている。
【0047】
図1及び図2に示すように、フラップ60の軸62には、開閉部材付勢手段としてのコイルスプリング68が設けられている。コイルスプリング68は、フラップ60を後方(図1及び図2の矢印E方向)へ付勢している。なお、フラップ60は下端部60Bが凹部64に当接することで、コイルスプリング68の付勢力に抗して図1に示す閉止位置に停止するようになっている。
【0048】
従って、図13及び図14に示すように、ストッパピン26Aが離脱路50の出口部50Bに達すると、ストッパピン26Aがフラップ60の後面60Dと摺動し、フラップ60をコイルスプリング68の付勢力に抗して、軸62を中心に前方(図13及び図14の矢印F方向)へ揺動するようになっている。このため、ストッパピン26Aが離脱路50の出口部50Bから抜け出ることができるようになっている。なお、図15に示すように、ストッパピン26Aがフラップ60から離れると、コイルスプリング68の付勢力によって、フラップ60は後方(図15の矢印E方向)へ揺動して閉止位置に戻るようになっている。
【0049】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用と効果について説明する。
(トノカバー10を使用位置に引き出す場合)
【0050】
図3に示すように、本実施形態では、トノカバー10を使用位置に引き出す場合には、作業者がカバー24の後端部を把持してカバー24を巻取装置の付勢力に抗して引き出し、ストッパピン26Aを係止装置30に係止する。この際、図5に示すように、ストッパピン26Aを、デッキサイドトリム32の軸部材導入路34に挿入し、直線状の軸部材導入路34に沿って車両後方(図5の矢印A方向)へ移動する。これにより、ストッパピン26Aはフラップ60の前面60Cと摺動し、カム38がコイルスプリング52の付勢力に抗して軸40を中心として上方(図5の矢印D方向)へ揺動する。その後、図6に示すように、ストッパピン26Aがカム38の第1当接面42と摺動し、カム38がコイルスプリング52の付勢力に抗して軸40を中心としてさらに上方(図6の矢印D方向)へ揺動する。
【0051】
さらに、ストッパピン26Aを直線状の軸部材導入路34に沿って車両後方へ移動すると、図7に示すように、ストッパピン26Aが第1当接面42の下端に達する。そして、ストッパピン26Aが第1当接面42の下端を通過すると、図8に示すように、カム38が軸40を中心として下方(図8の矢印D方向)へ揺動し、係止溝44に係止される。このため、ストッパピン26Aを軸部材導入路34に沿って車両後方へ直線状に移動することで、ストッパピン26Aが係止溝44に容易且つ確実に係止される。
【0052】
(トノカバー10を格納位置に戻す場合)
次に、トノカバー10を格納位置に戻す場合には、ストッパピン26Aが、係止装置30のカム38の係止溝44に係止されている図8に示す状態で、作業者がカバー24の後端部を把持してカバー24を巻取装置の付勢力に抗して引き出す方向(車両後方)へ移動する。これにより、図9に示すように、ストッパピン26Aが、係止溝44から軸部材導入路34に沿って車両後方(図9の矢印A方向)へ向かって移動する。このため、ストッパピン26Aがカム38の第2当接面46と摺動し、カム38が軸40を中心として上方(図9の矢印D方向)へ揺動する。その後、図10に示すように、ストッパピン26Aが第2当接面46に下端に達し、下端を通過すると、図11に示すように、ストッパピン26Aが離脱路50の入口部50Aに挿入され、カム38は軸40を中心として下方(図11の矢印C方向)へ揺動する。
【0053】
この状態で、作業者がカバー24の後端を把持する力を弱める、又はカバー24から手を離すと、トノカバー10の巻取軸22に設けられた巻取装置の付勢力によって、カバー24とともにストッパピン26Aが、前方(図11の矢印B方向)へ引き戻される。このため、図12に示すように、ストッパピン26Aは直線状の軸部材導入路34に沿って車両前方(図12の矢印B方向)へ移動しつつ、離脱路50の内部を出口部50Bに向かって移動する。また、ストッパピン26Aが離脱路50の前壁部50Cと摺動することで、カム38は下方(図12の矢印C方向)へ揺動する。なお、コイルスプリング52の付勢力によっても、カム38は下方(図12の矢印C方向)へ揺動する。
【0054】
次に、図13に示すように、ストッパピン26Aが離脱路50の出口部50Bに達すると、ストッパピン26Aがフラップ60の後面60Dと摺動し、図14に示すように、フラップ60をコイルスプリング68の付勢力に抗して、軸62を中心に前方(図14の矢印F方向)へ揺動する。このため、図15に示すように、ストッパピン26Aが、離脱路50の出口部50Bとデッキサイドトリム32の軸部材導入路34とから抜け出し、係止装置30から離れ、カバー24が付勢力によって巻取軸22に巻き取られる。また、ストッパピン26Aがフラップ60の後面60Dから離れると、コイルスプリング68の付勢力によって、フラップ60は後方(図15の矢印E方向)へ揺動して閉止位置に戻る。
【0055】
以上のように、本実施形態では、ストッパピン26Aを係止装置30のカム38の係止溝44へ係止する操作と、ストッパピン26Aを係止溝44から解除し、係止装置30から離脱させる操作が、双方ともデッキサイドトリム32の軸部材導入路34に沿った直線移動となる。このため、ジグザグに移動させる従来構造の係止装置に比べて操作性が向上する。この結果、トノカバー10のカバー24を引き出す、または、収納する際の操作性が向上する。
【0056】
また、本実施形態では、第2当接面46が第1当接面42に対してカム38の揺動中心側に形成されており、カム38の揺動中心となる軸40と第2当接面46との距離が、軸40と第1当接面42との距離より短くなっている。且つ、第1当接面42の傾斜角度はθ1と第2当接面46の傾斜角度θ2とが略等しくなっている(θ1≒θ2)。このため、ストッパピン26Aを第1当接面42に摺動させてカム38を上方に揺動するための操作力F1に比べて、ストッパピン26Aを第2当接面46に摺動させてカム38を上方に揺動するための操作力F2が大きくなる(F1<F2)。即ち、係止溝44から移動を開始したストッパピン26Aが第2当接面46と摺動してカム38を上方へ揺動する場合には、係止溝44に向かって移動するストッパピン26Aが第1当接面42と摺動してカム38を上方へ揺動する場合に比べて大きな操作力が必要になる。この結果、ストッパピン26Aが係止溝44に係止されたか否かの判断を操作力の増加によって容易に判断できるので、ストッパピン26Aを係止溝44に確実に係止することが可能になる。
【0057】
また、本実施形態では、カム38がコイルスプリング52によって係止溝44がストッパピン26Aを係止する方向へ付勢されている。このため、ストッパピン26Aを係止溝44に確実に係止させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、ストッパピン26Aが離脱路50の出口部50Bを塞ぐ位置に設けられたフラップ60の前面60Cと摺動することによって、カム38の第1当接面42に案内される。このため、ストッパピン26Aが離脱路50に入ることがなく、係止溝44に容易かつ確実に案内される。また、フラップ60の後面60Dが離脱路50に沿って移動するストッパピン26Aと摺動することによって、フラップ60が離脱路50の出口部50Bを塞ぐ閉止位置から離脱路50の出口部50を開く開放位置へ揺動する。このため、ストッパピン26Aを係止装置30から確実に離脱させることができる。
【0059】
また、本実施形態では、コイルスプリング68がフラップ60を離脱路50の出口部50Bを閉じる方向へ付勢している。このため、フラップ60によって離脱路50の出口部50Bを確実に閉じることができる。
【0060】
また、本実施形態では、ストッパピン26Aがカバー24の車幅方向両端部にそれぞれ設けられており、これら一対のストッパピン26Aにそれぞれ対応して左右の係止装置30が設けられている。このため、横幅の広いトノカバー10のカバー24の幅方向両端部を容易に係止することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、カム付勢手段としてのコイルスプリング52によってカム38を付勢し、開閉部材付勢手段としてのコイルスプリング68によってフラップ60を付勢している。このため、ストッパピン26Aの移動方向(軸部材導入路34の方向)が車両前後方向以外、例えば、上下方向等の構成においてもカム38及びフラップ60が確実に作動する。
【0062】
(その他の実施形態)
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、カム付勢手段としてのコイルスプリング52によって、カム38を付勢したが、これに代えて、コイルスプリング以外の板ばね等の他のカム付勢手段によって、カム38を付勢する構成としてもよい。また、カム付勢手段を除き、自重によりカム38が下方へ揺動する構成としてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、開閉部材付勢手段としてのコイルスプリング68によって、フラップ60を付勢したが、これに代えて、コイルスプリング以外の板ばね等の他の開閉部材付勢手段によって、フラップ60を付勢する構成としてもよい。また、開閉部材付勢手段を除き、自重によりフラップ60揺動する構成としてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、導入路形成部材としてのデッキサイドトリム32に軸部材導入路34を形成したが、これに代えて、リヤサイドパネル等の他の導入路形成部材に軸部材導入路34を形成した構成としてもよい。また、カム38をデッキサイドトリム32に代えてリヤサイドパネル等の他の部材に軸支した構成としてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、軸部材としての左右一対のストッパピン26Aを左右一対の係止装置30にそれぞれ係止する構成としたが、左右何れか一方のストッパピン26Aのみを左右何れか一方のみの係止装置30に係止する構成としてもよい。また、軸部材はストッパピン26Aに限定されず、軸部材導入路34を通過可能、係止溝44に係止可能、且つ離脱路50を通過可能であれば、軸形状の他の軸部材であってもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、離脱路50の出口部50Bに開閉部材としてのフラップ60を設けたが、開閉部材はフラップ60に限定されず、弾性変形可能な板ばねが離脱路50の出口部50Bを直接開閉する等の他の開閉部材としてもよい。また、離脱路50の出口部50Bに開閉部材を設けない構成とすることも可能である。なお、離脱路50の出口部50Bに開閉部材を設けない構成とした場合には、ストッパピン26Aを軸部材導入路34に挿入した際に、カム38を手動により上方へ僅かに揺動して、ストッパピン26Aがカム38の第1当接面42と摺動するようにすればよい。
【0067】
また、上記実施形態では、第1当接面42の傾斜角度はθ1と、第2当接面46の傾斜角度はθ2とを略同じ(θ1≒θ2)としたが、これに代えて、第2当接面46の傾斜角度θ2を第1当接面42の傾斜角度θ1に比べて大きくして(θ1<θ2)もよい。この場合には、ストッパピン26Aを第1当接面42に摺動させてカム38を上方に揺動するための操作力F1に比べて、ストッパピン26Aを第2当接面46に摺動させてカム38を上方に揺動するための操作力F2がさらに大きくなる(F1<F2)。この結果、ストッパピン26Aが係止溝44に係止されたか否かの判断を操作力の増加によってさらに容易に判断可能となる。
【0068】
また、上記実施形態では、カム38が軸40を中心に上下方向へ揺動する構成としたが、これに代えて、カム38がガイドレール等のガイド部材によって上下方向へ平行移動することで、ストッパピン26Aがカム38の第1当接面42と摺動し、係止溝44に係合し、且つ第2当接面46と摺動する構成としてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、シート状部材としてのトノカバー10のカバー24を係止するために本発明の係止装置30を適用したが、本発明の係止装置30は、トノカバー10のカバー24以外のウインドシールドカーテン等の他のシート状部材にも適用可能である。また、本発明の係止装置30は、車両以外に、住宅等に使用されるカーテン等のシート状部材にも適用可能である。さらに、本発明の係止装置30は、シート状部材以外にも適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 トノカバー
22 巻取軸
24 カバー(シート状部材)
26 軸
26A ストッパピン(軸部材)
30 係止装置
32 デッキサイドトリム(導入路形成部材)
34 軸部材導入路
38 カム
40 軸
42 第1当接面
44 係止溝
46 第2当接面
50 離脱路
52 コイルスプリング(カム付勢手段)
60 フラップ(開閉部材)
62 軸
68 コイルスプリング(開閉部材付勢手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付勢力に抗して移動する軸部材を受け入れる直線状の軸部材導入路が形成された導入路形成部材と、
前記導入路形成部材に隣接して配置され、前記軸部材導入路と交差する方向へ移動可能とされたカムと、
前記カムに形成され、前記軸部材を係止位置に保持するための係止溝と、
前記カムに形成され、前記軸部材導入路に侵入した前記軸部材と摺動することで、前記カムを移動し、前記軸部材を前記係止溝に案内する第1当接面と、
前記カムに形成され、前記係止溝から抜け出した前記軸部材を受け入れる入口部と、前記軸部材を前記カムから分離させる出口部と、を備え、前記付勢力によって引き戻され前記軸部材導入路を逆走する前記軸部材が通過可能とされた離脱路と、
前記カムに形成され、軸部材導入路に沿って前記係止溝から移動する前記軸部材と摺動することで、前記カムを移動し、前記軸部材を前記係止溝から前記離脱路の入口部に案内する第2当接面と、
を有する係止装置。
【請求項2】
前記カムは前記軸部材導入路の奥を揺動中心にして揺動可能とされており、前記カムの揺動中心と前記第1当接面との距離が、前記カムの揺動中心と前記第2当接面との距離より長く、前記軸部材が前記第2当接面と摺動して前記カムを揺動するために必要な力が、前記軸部材が前記第1当接面と摺動して前記カムを揺動するために必要な力より大きく設定されている請求項1に記載の係止装置。
【請求項3】
前記カムを前記係止溝が前記軸部材を係止する方向へ付勢するカム付勢手段を有する請求項1または請求項2に記載の係止装置。
【請求項4】
前記離脱路の出口部を塞ぐ位置に設けられ、前記軸部材導入路に侵入した前記軸部材と摺動することによって前記軸部材を前記第1当接面に案内すると共に、前記離脱路の入口部から出口部へ移動する前記軸部材と摺動することによって、前記離脱路の出口部を塞ぐ位置から前記離脱路の出口部を開く方向へ揺動する開閉部材を有する請求項1〜3の何れか1項に記載の係止装置。
【請求項5】
前記開閉部材を前記離脱路の出口部を閉じる方向へ付勢する開閉部材付勢手段を有する請求項4に記載の係止装置。
【請求項6】
前記軸部材は巻取り方向へ付勢されたシート状部材に設けられている請求項1〜5の何れか1項に記載の係止装置。
【請求項7】
前記軸部材が前記シート状部材の幅方向両端部にそれぞれ設けられており、前記導入路形成部材と前記カムとが前記各軸部材にそれぞれに対応して設けられている請求項6に記載の係止装置。
【請求項1】
付勢力に抗して移動する軸部材を受け入れる直線状の軸部材導入路が形成された導入路形成部材と、
前記導入路形成部材に隣接して配置され、前記軸部材導入路と交差する方向へ移動可能とされたカムと、
前記カムに形成され、前記軸部材を係止位置に保持するための係止溝と、
前記カムに形成され、前記軸部材導入路に侵入した前記軸部材と摺動することで、前記カムを移動し、前記軸部材を前記係止溝に案内する第1当接面と、
前記カムに形成され、前記係止溝から抜け出した前記軸部材を受け入れる入口部と、前記軸部材を前記カムから分離させる出口部と、を備え、前記付勢力によって引き戻され前記軸部材導入路を逆走する前記軸部材が通過可能とされた離脱路と、
前記カムに形成され、軸部材導入路に沿って前記係止溝から移動する前記軸部材と摺動することで、前記カムを移動し、前記軸部材を前記係止溝から前記離脱路の入口部に案内する第2当接面と、
を有する係止装置。
【請求項2】
前記カムは前記軸部材導入路の奥を揺動中心にして揺動可能とされており、前記カムの揺動中心と前記第1当接面との距離が、前記カムの揺動中心と前記第2当接面との距離より長く、前記軸部材が前記第2当接面と摺動して前記カムを揺動するために必要な力が、前記軸部材が前記第1当接面と摺動して前記カムを揺動するために必要な力より大きく設定されている請求項1に記載の係止装置。
【請求項3】
前記カムを前記係止溝が前記軸部材を係止する方向へ付勢するカム付勢手段を有する請求項1または請求項2に記載の係止装置。
【請求項4】
前記離脱路の出口部を塞ぐ位置に設けられ、前記軸部材導入路に侵入した前記軸部材と摺動することによって前記軸部材を前記第1当接面に案内すると共に、前記離脱路の入口部から出口部へ移動する前記軸部材と摺動することによって、前記離脱路の出口部を塞ぐ位置から前記離脱路の出口部を開く方向へ揺動する開閉部材を有する請求項1〜3の何れか1項に記載の係止装置。
【請求項5】
前記開閉部材を前記離脱路の出口部を閉じる方向へ付勢する開閉部材付勢手段を有する請求項4に記載の係止装置。
【請求項6】
前記軸部材は巻取り方向へ付勢されたシート状部材に設けられている請求項1〜5の何れか1項に記載の係止装置。
【請求項7】
前記軸部材が前記シート状部材の幅方向両端部にそれぞれ設けられており、前記導入路形成部材と前記カムとが前記各軸部材にそれぞれに対応して設けられている請求項6に記載の係止装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−11310(P2013−11310A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144554(P2011−144554)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]