説明

促進剤混合物及び使用方法

本発明は、酸化状態3でのアルミニウム、硫酸塩及びヘキサフルオロケイ酸を含有する、アルカリを有さない及びHFを有さない硬化促進剤混合物、該硬化促進剤の製造方法、及び基材をコンクリート又はモルタルで被覆するための該硬化促進剤の使用に関する。さらに本発明は、本発明による硬化促進剤を含有するコンクリート又はモルタル、及び硬化促進剤をコンクリート又はモルタルに適用することによって製造された硬化させた層に関する。本発明は、安定剤としてのヘキサフルオロケイ酸の使用も関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
明細書
本発明は、有利にはコンクリート又はモルタルのための、より有利には吹き付けコンクリート又は吹き付けモルタルのための、有利には粉末組成物として、より有利には水性混合物として、溶液として又は分散液として存在し、かつ以下
(a)酸化状態3でのアルミニウム、
(b)硫酸塩及び
(c)ヘキサフルオロケイ酸
を含有する、硬化促進剤に関する。
【0002】
本発明はさらに、本発明による硬化促進剤の製造方法に関し、その際硫酸アルミニウム及び/又はアルミニウムヒドロキシスルフェート、有利には硫酸アルミニウム及び/又はアルミニウムヒドロキシスルフェート及び水酸化アルミニウム、最も有利には硫酸アルミニウム及び水酸化アルミニウム、有利には非晶質の水酸化アルミニウム、ヘキサフルオロケイ酸、並びに場合によりアミンを、水と混合させる。水酸化アルミニウムを使用する場合に、非晶質の水酸化アルミニウムの使用が好ましい。本発明において、非晶質の水酸化アルミニウムは、一般に、水酸化アルミニウムの他の形と比較して、特に結晶質の水酸化アルミニウムと比較した場合に、好ましい。
【0003】
本発明は、コンクリート又はモルタル、有利には吹き付けコンクリート又は吹き付けモルタルを適用することによって製造される、コンクリート又はモルタル、有利には吹き付けコンクリート又は吹き付けモルタル及びそれらによって製造された硬化層を有する、基材、有利にはトンネル表面、鉱山表面、構造溝又はシャフトの被覆における、本発明による硬化促進剤の使用にも関し、その硬化は、本発明による硬化促進剤で実施される。硬化促進剤混合物のための安定剤としてのヘキサフルオロケイ酸の使用は、本発明の部分でもある。
【0004】
基材、例えばトンネルの岩石表面に適用されるコンクリート及びモルタルは、急速に(特に吹き付けられる場合に)凝固し、かつ硬化される必要があり、その結果それらの付着及び機械的強度、並びに従って人及び機械のための安全性を確実にする。この理由のために、急速硬化を確実にする硬化促進剤が、通常、吹き付けコンクリート又は吹き付けモルタルに添加される。
【0005】
硬化促進剤溶液は、WO 9818740、EP−A1878713、WO 03029163、EP−A 812 812、EP−A 1167317、KR−B−9606223、JP−A−2003246659及びJP−A−2003321263において記載されている。
【0006】
KR−B−9606223は、酸化ナトリウム及びアルカリ金属塩を含有する、アルカリフリーではない硬化促進剤におけるヘキサフルオロケイ酸塩(ヘキサフルオロケイ酸の塩)の使用を記載している。JP−A−2003321263は、第二のバインダーとしてフライアッシュを含有するコンクリートのための、ヘキサフルオロケイ酸塩(ヘキサフルオロケイ酸の塩)を含有する液体硬化促進剤混合物を記載している。JP−A−2003246659は、硬化促進剤混合物におけるヘキサフルオロケイ酸塩(ヘキサフルオロケイ酸の塩)の使用を記載している。本発明は、吹き付け中の粉塵、いわゆる跳ね返り(吹き付けられたコンクリートの一部が、通常、被覆されるべき表面から戻る)の発達及びアルカリ化合物による健康問題を低減する。
【0007】
従来の、吹き付けコンクリート及び他のセメント含有材料のための、アルカリを有さない硬化促進剤は、それらが急速な硬化及び比較的低い初期強度をもたらし、又は比較的高い初期強度との組合せでゆっくりな硬化を導くことを識別している。さらに、コンクリートにおける性能に関する前記の結果は、しばしばセメントタイプに依存して変動する。従って、工業において、世界基準に対するセメントの広い種類に適している、非常に頑丈な硬化促進剤混和材に関する要求は、高い。
【0008】
先行技術から出発して、本発明の目的は、良好な初期強度が最適化された硬化時間との組合せで許容される方法によって硬化促進剤を開発することであった。さらに、前記硬化促進剤は、水溶液の、又は分散液の良好な安定性を有するべきである。特に溶解させた又は懸濁させた構成成分の沈殿物は、欠点である。それというのも硬化促進剤の一定の質がそれらの状況下で確実させることが出来ないからである。不溶性材料が形成される場合に、一般に、例えば撹拌によって硬化促進剤を再度均一にすることが難しい。
【0009】
本発明の他の目的は、硬化促進剤混和材中でのフッ化水素酸(HF)の使用を妨げることである。HFは、非常に毒性があり、かつ研究室において及び生産中に非常に厳しい安全対策下でのみ取り扱われることができる。
【0010】
この目的は、a)酸化状態3でのアルミニウム、b)硫酸塩及びc)ヘキサフルオロケイ酸を含む硬化促進剤混合物、それらの製造のための方法、それらの使用、及びそれらで得られる製品によって達せられうる。
【0011】
本発明による硬化促進剤混合物は、粉末構成成分、溶液、分散液又は懸濁液であってよい。分散液又は溶液が特に好ましい。
【0012】
本発明による硬化促進剤は、有利には、硫酸アルミニウム及び/又はアルミニウムヒドロキシスルフェート、有利には硫酸アルミニウム及び/又はアルミニウムヒドロキシスルフェート及び水酸化アルミニウム、最も有利には硫酸アルミニウム及び水酸化アルミニウム(有利には非晶質の水酸化アルミニウム)、ヘキサフルオロケイ酸、並びに場合によりアミンと、水とを混合させることによって製造されうる。前記硬化促進剤混合物の製造は、有利には、40〜80℃の温度で、特に有利には50〜70℃の温度で実施される。水性硬化促進剤混合物に添加される硫酸アルミニウムは、従って、部分的に分散させた形で、及び部分的に溶解させた形で存在しうる。しばしば、硫酸アルミニウムの少なくとも一部は、アルミニウム錯体の形成で、分散液又は溶液の他の構成成分と(例えば有利には非晶質の水酸化アルミニウムと)反応する。従って、たいてい溶解させた硫酸アルミニウムの少なくとも一部は、それらの錯体構造の形で存在する。
【0013】
有利には、本発明の硬化促進剤は、アルカリを有さない。アルカリを有さない硬化促進剤の利点は、特に、吹き付け中の粉塵形成を比較的低く保つことができ、かつアルカリ化合物による作業者の健康に対する影響が全くネガティブではないことである。
【0014】
前記混合物中で(d)アミンを含有する硬化促進剤が好ましい。アミンのタイプは、特に制限されず、例えばアルキルアミン、芳香族アミン及び/又はアルカノールアミンを使用することができる。分枝鎖又は分枝鎖ではないアルキルアミンが好ましい。
【0015】
特に有利には、少なくとも1つのアルカノールアミンが、混合物中に存在してよい。ジエタノールアミン及び/又はトリエタノールアミンが、アミンとして特に好ましく、特に有利にはジエタノールアミンである。ジエタノールアミンは、特にヘキサフルオロケイ酸との組合せで、硬化促進剤組成物の安定性を促進する効果を有する。圧縮強度の発達も改良される。有利には、アミンの量は、それぞれの場合に水性混合物の全質量に対して、0.1〜19質量%、より有利には0.3〜6質量%かかるアミンの添加の効果は、圧縮強度の発達の改良である。
【0016】
さらに好ましい硬化促進剤は、アルキレンジアミン、有利にはエチレンジアミン及び/又はジアルキレントリアミン、有利にはジエチレントリアミンを含む。有利には、アルキレンジアミン、有利にはエチレンジアミン及び/又はジアルキレントリアミン、有利にはジエチレントリアミンの合計量は、それぞれの場合に水性混合物の全質量に対して、0.1〜10質量%、より有利には0.3〜6質量%である。前記アミンの添加の効果は、圧縮強度の発達の改良である。
【0017】
安定剤(e)は、本発明による硬化促進剤混合物中に、特に有利には水性硬化促進剤混和材中に存在しうる。本発明の一実施態様において、前記混合物は、安定剤(e)としてケイ酸マグネシウム、粘土鉱物、カオリン、リン酸、亜リン酸、有機カルボン酸及び/又はアロフェンを含む。
【0018】
前記安定剤は、本発明による硬化促進剤の、粒子の形成を阻害し、又は所望の粒子の沈澱を妨げることができる。特に有利には、本発明による分散液は、安定剤、有利には無機暗影剤を、水性混合物の全質量に対して0.1〜10質量%の割合で含む。さらに好ましい安定剤含有率は、それぞれの場合に硬化促進剤混合物の全質量に対して、0.2〜3質量%の範囲、及び特に0.3〜1.3質量%の範囲である。
【0019】
適した安定剤は、無機安定剤、例えば一定のケイ酸塩、粘土鉱物、カオリン、アロフェン及び非常に一般的に不活性チキソトロピー物質並びにリン酸、亜リン酸、並びに/又はあらゆる種類の有機カルボン酸である。有機カルボン酸に関する例は、アスパラギン酸である。
【0020】
好ましい安定剤は、ケイ酸マグネシウム、粘土硬質(例えばベントナイト)、リン酸、亜リン酸及び/又は前記で挙げられた酸の塩を含むあらゆる種類の有機カルボン酸である。海泡石が特に好ましく、特に有利にはSi12Mg830(OH)4(OH24及び/又はMg4Si615(OH)2である。
【0021】
海泡石は、実験式
Si12Mg830(OH)4(OH24・8H2
又はMg4Si615(OH)2・6H2
によって定義されうる水和珪酸マグネシウムを意味すると解されるべきである。
【0022】
前記海泡石は、有利には、酸素原子によってマグネシウム原子を含有する八面体の不連続中間層に結合される四面体シリカの2層からなる。この構造は、マイクロファイバー様の形態を海泡石粒子に付与する。本発明に適しており、かつ海泡石を含む無機安定剤の多数の適した製品は、Tolsa社製の例えば"Pangel"から市販されている。Pangelは、ファイバーバンドルをゆるめ、かつ粒子を破壊することなく粒子を分離することによって、海泡石から得られ、それらの形状を引き延ばしたレオロジー添加物である。
【0023】
ベントナイトに基づく安定剤の例は、Sued−Chemie社製のTixoton(登録商標)である。
【0024】
定義上、本発明に適した無機安定剤は、特に有利には、特に好ましい海泡石、例えば直接前記"Pangel"からの改質測定によって得られる製品を意味すると解されるべきでもあり、その際該改質測定は、少なくとも実質的に海泡石粒子の引き延ばされた形状を維持している。前記改質測定は、本記載内容において、有利には、海泡石それ自体の緩みに関連し、かつ海泡石粒子の検出のための測定を意味する。かかる改質測定の例は、海泡石それ自体の湿式研磨である。
【0025】
水性混合物中で、以下:
それぞれの場合に、水性混合物の合計質量に対して、
(a)有利には2.7〜10質量%、特に有利には4〜9質量%、及び殊に有利には5〜8質量%の酸化状態3でのアルミニウム
(b)有利には12〜34質量%、特に有利には14〜34質量%、殊に有利には16〜30質量%、及び最も有利には20〜30質量%の硫酸塩、
(c)有利には0.05〜20質量%、特に有利には0.1〜20質量%、特に0.2〜15質量%、殊に有利には0.3〜13質量%のヘキサフルオロケイ酸
を含む硬化促進剤が好ましい。
【0026】
水性混合物中で、以下:
それぞれの場合に、水性混合物の合計質量に対して、
(a)5〜8質量%の酸化状態3でのアルミニウム、
(b)16〜30質量%、有利には18〜30質量%の硫酸塩、
(c)0.2〜10質量%、特に有利には0.3〜8質量%のヘキサフルオロケイ酸
を含む硬化促進剤が、特に好ましい。
【0027】
質量データは、アルミニウムに関するアルミニウムイオンの質量に、硫酸塩に関する硫酸塩の質量に、及びヘキサフルオロケイ酸の質量に基づく。対イオンは、アルミニウム及び硫酸塩に関するそれらの質量データを考慮に入れない。
【0028】
本明細書において与えられる質量の割合が、他の点で挙げられていない場合に水性混和材に関連することが示されている。たいてい、硬化促進剤混合物の固体含有率は約30質量%〜70質量%であり、残りは有利には水である。最も有利には、硬化促進剤混合物の固体含有率は、40〜60質量%である。
【0029】
粉末組成物における種々の化合物(例えば、ヘキサフルオロケイ酸、硫酸塩、酸化状態3でのアルミニウム、アミン、安定剤...)の質量パーセントは、粉末組成物の合計質量に基づいて算出される。内容を簡単にするために、粉末組成物のための特定の質量%範囲は、これが多くの繰り返しを導くように数で明確に与えられない。水性混和材のために挙げられた全ての質量%の割合が粉末組成物のためのそれぞれの値を算出するために要因2によって増やされるべきである単純なルールを適用する(水性混合物の水含有率を補うものとして)。例えば"水性混合物の全質量に対して、酸化状態3でのアルミニウム2.7〜10質量%の"表記は、"粉末組成物の全質量に対して、酸化状態3でのアルミニウム5.4〜20質量%"と読む必要がある。
【0030】
記載されている好ましい量のデータを有する本発明による硬化促進剤は、該硬化促進剤が、最適化された(比較的短い)硬化時間との組合せで良好な初期強度の達成を可能にすることで識別され、その際同時に保存性が良好であり、かつ製造費用が有利である。
【0031】
生成物の保存性に関して、硬化促進剤中でのヘキサフルオロケイ酸の存在は、ヘキサフルオロケイ酸を有さない硬化促進剤と比較して、特に沈殿物の形成を防ぐことによってそれらの安定性を改良する。沈殿物は、取り扱うことが困難である。それというのも、例えば撹拌による均一化が、たいてい非常に困難であるからである。多くの場合ヘキサフルオロケイ酸によるフッ化水素酸の置換は、貯蔵安定性を改良する。時としてヘキサフルオロケイ酸を含有する本発明による硬化促進剤試料に関して、2つの液相の形成で層の分離を実施することができる。かかる場合に、単純な撹拌によって前記試料を均一化することは極めて簡単である。安定性の改良が、安定した硬化促進剤を得ることがたいてい難しい温度範囲である高い温度(30〜40℃)でも観察されたことが重要である。
【0032】
前記硬化促進剤混合物の製造は、ヘキサフルオロケイ酸の取り扱いが環境及び安全の側面に関して関心がない場合に、フッ化水素酸と比較して比較的便利であり、かつ安全である。ヘキサフルオロケイ酸は、例えば数ヵ国において水のフッ素添加のために使用される。木材保存剤としても使用されることが公知である。ヘキサフルオロケイ酸は、フッ化水素酸よりもほとんど毒性が少なく、かつ研究所及び生産において通常安全な予防策でのみ処理される必要がある。ヘキサフルオロケイ酸で処理する場合に、たいてい、HFの場合におけるような極めて安全な予防策(例えばフィルターでの特別なマスク、換気及び全体の保護)を適用する必要がない。
【0033】
セメント状組成物におけるヘキサフルオロケイ酸の効果は、特に、長江な圧縮強度の結果を観測することができ(HFと比較しても)、かつ同時に、フッ化水素酸と比較してより短い硬化時間で得ることができる。硬化促進剤混和材の分離に対する安定性も、ヘキサフルオロケイ酸を含む場合に改良する。
【0034】
前記硬化促進剤で良好なモルタルの結果を得る広範囲の種々のセメントは、特に本発明の重要な利点である。促進することが比較的簡単であり、かつ満足な結果が従来の硬化促進剤でも達せられるセメントであるだけではない。それらは特に、十分に効果的な硬化促進剤が現在までに公知ではない、不活発又は不適合なセメントでもある。
【0035】
有利には府松組成物として、より有利には溶液又は分散液のような水性混合物として存在する本発明による硬化促進剤は、酸化状態3でのアルミニウム、硫酸塩及びヘキサフルオロケイ酸を含む。この成分の組合せは、ヘキサフルオロケイ酸を含有しない硬化促進剤混和材と比較して、短い硬化時間及び硬化中の良好な強度発達を提供する。
【0036】
本発明による硬化促進剤に関して、著しく高い初期強度とともに急速な硬化を得ることができる(例えば吹付後6時間)。
【0037】
好ましい硬化促進剤は、水性混合物中で、(a)、(b)及び(c)に加えて:
(d)それぞれの場合に水性混合物の全質量に対して、0.1〜10質量%、有利には0.3〜6質量%、特に有利には0.4〜4.5質量%のアミン、有利にはアルカノールアミン、特に有利にはジエタノールアミン及び/又はトリエタノールアミン、最も有利にはジエタノールアミン
を含有するものである。
【0038】
本発明による硬化促進剤は、有利には、それぞれの場合に水性混合物の全質量に対して、0.05〜10質量%、有利には0.1〜10質量%、特に有利には0.2〜8質量%、有利には0.3〜8質量%のヘキサフルオロケイ酸の割合を有する。
【0039】
前記混合物は、有利には分散液又は溶液として存在してよい。分散液の中でも、安定剤を含む分散液が好ましい。
【0040】
本発明は、硫酸アルミニウム及び/又はアルミニウムヒドロキシスルフェート、有利には硫酸アルミニウム及び/又はアルミニウムヒドロキシスルフェート及び水酸化アルミニウム、最も有利には硫酸アルミニウム及び水酸化アルミニウム(有利には非晶質の水酸化アルミニウム)、ヘキサフルオロケイ酸、及び場合によりアミンを、水と混合させることを特徴とする、水性混合物として存在する、有利にはコンクリート又はモルタルのための、より有利には吹き付けコンクリート又は吹き付けモルタルのための硬化促進剤の製造のための方法にも関する。特に、最初に記載された本発明による硬化促進剤混合物は、本発明による方法によって製造される。
【0041】
本発明による方法を、
17〜37質量%。特に有利には22〜36質量%の硫酸アルミニウム、
0〜15質量%、特に有利には0.1〜14質量%の有利には非晶質水酸化アルミニウム、
0.1〜10質量%、0.4〜4.5質量%のアルカノールアミン、特に有利にはジエタノールアミン、
0.05〜20質量%、0.1〜20質量%、特に有利には0.2〜8質量%のヘキサフルオロケイ酸を、水と混合させる方法によって実施することができ、その際質量データは、液体硬化促進剤の全質量に基づく。
【0042】
製造中に、及び貯蔵中に、本発明による硬化促進剤は、有利には0〜5のpH、最も有利には2〜3.6のpHを示す。種々の成分を、激しく撹拌しながら、有利には、最初に導入される水、又は硬化促進剤成分の1つの最初に導入される溶液に添加することができる。溶液を得るために、前記方法を、有利には混合物を加熱しながら実施する。加熱及び続く冷却も、必要不可欠ではなく、その結果、エネルギー費用を提供することができ、かつ製造を簡略化する。しかしながら、40〜80℃の温度まで加熱することは、有利には、製造時間を減らし、かつ従って製造プラントの生産性を増やす。
【0043】
本発明は、さらに、コンクリート又はモルタルでの、有利には特にトンネル表面、鉱山表面、構造の溝及び軸における吹き付けコンクリート又は吹き付けモルタルでの基材の被覆における前記の硬化促進剤の使用に関する。
【0044】
本発明は、さらに、酸化状態3でのアルミニウム及び硫酸塩を含有する、硬化促進剤のための、有利には硬化促進剤混合物のためのヘキサフルオロケイ酸の使用に関する。本発明はさらに、酸化状態3でのアルミニウム、硫酸塩及び他の安定剤を含有する、硬化促進剤混合物のための安定剤としてのヘキサフルオロケイ酸の使用に関する。前記硬化促進剤混合物を安定化するために有用なヘキサフルオロケイ酸の量は、水性混合物の全質量に対して、0.05〜10質量%である。さらに好ましい安定剤含有率は、0.1〜3質量%の範囲、及び特に有利には0.2〜1.3質量%の範囲である。
【0045】
典型的に、本発明による硬化促進剤の5〜10kgは、セメント100kgあたりの構造部分で使用される。
【0046】
本発明は、本発明による硬化促進剤を含有する、セメント又はモルタル、有利には吹き付けセメント又は吹き付けモルタルにも関する。
【0047】
本発明は、さらに、コンクリート又はモルタル、有利には吹き付けセメント又は吹き付けモルタルを適用することによって製造されるセメント又はモルタルの硬化された層に関し、その硬化を、前記の硬化促進剤で実施する。
【0048】
本発明において、コンクリート及びモルタル、それぞれ吹き付けコンクリート及び吹き付けモルタルは、他のセメント状材料を含んでもよい。例えばセメントは、鉱山のためのグラウトを、及びセメント状モルタルは、コンクリートの保護のためのグラウトを基礎とする。
【0049】
実施例
以下で、本発明を、実施例に関してより詳細に説明する。
【0050】
本発明による硬化促進剤の例を、以下のように製造した:
冷水及び安定剤(必要であれば)の要求量を、電気熱版上でビーカー中に置き、そしてプロペラ攪拌機で激しく撹拌した。加熱している間、最初に硫酸アルミニウムを、そしてヘキサフルオロケイ酸、非晶質水酸化アルミニウムを、最後にジエタノールアミンを添加した。使用した原材料の含水率は、開始時点で要求された水を算出することで評価した。60℃に達した後に、該硬化促進剤を、さらに1〜2時間、この温度で撹拌し、そして数時間、撹拌を続けながら室温まで冷却した。該原材料の添加の順序は、均一な生成物を得るために要求される撹拌の時間に影響するが、しかし完全に反応させ、かつ正確に撹拌させた硬化促進剤の性質には影響しない。加熱なしに硬化促進剤を製造することもできるが、しかし製造時間は増える。
【0051】
本実施例において、以下の原材料を使用した:
− 水、
− 硫酸アルミニウム(a及びb)
(Al2(SO43・14.8 H2Oとして;これは、56.2質量%の硫酸アルミニウム含有率に対応する)、
− 非晶質水酸化アルミニウム(a):75±2% Al(OH)3
− ヘキサフルオロケイ酸(c):34%水溶液、
− ジエタノールアミン(d);:90%、
− Pangel S9(安定剤(e))、
− フッ化水素酸:40%水溶液、
− ヘキサフルオロケイ酸マグネシウム:ヘキサフルオロケイ酸マグネシウム六水和物tech.,min.99%。
【0052】
1.硬化促進剤組成物(表1−1)
本発明は、さらに、本発明による硬化促進剤及び対応する実施例に関して記載されている。すべての試験された調合物の組成物及び種々の温度での貯蔵安定性のデータを、表1−1において示す。さらに、いくつかの他の調合物に関する安定性のデータを、表1−2において示す。本発明による硬化促進剤(I)の実施例は、ヘキサフルオロケイ酸を含み、かつ比較例(C)は、該生成物を含まない。表1−1及び表1−2におけるすべての部は、質量によって表される。
【0053】
2.試験系(モルタル及びコンクリート)
2.1 モルタル試験系(表2)
表2は、表1−1の硬化促進剤のための試験系として使用した種々のセメントを有するモルタル組成物を示す。
【0054】
2.2 コンクリート試験系(表3)
前記硬化促進剤のコンクリート試験のために使用したコンクリート組成物を表3において示す。
【0055】
3.硬化促進剤試験法
3.1 モルタルにおける試験法
本発明による硬化促進剤及び比較例を、DIN EN 196−1及び−3によって、モルタルでの硬化時間及び圧縮強度に関して試験した。その結果を表4〜7において要約する。
【0056】
3.2 コンクリートにおける試験法
吹き付けコンクリート試験を、圧縮強度の発達に関して、本発明による硬化促進剤及び比較例を用いて、EFNARC European Specification for Sprayed Concrete 1999によって実施した。その結果を、表8において要約する。
【0057】
5.硬化促進剤試験結果
5.1 モルタルにおける硬化促進剤試験結果(表4〜7)
表4〜7は、種々のセメントを有する本発明による硬化促進剤及び比較例のモルタルの性能の結果を要約する。
【0058】
本発明による実施例の表4のE−1〜E−3において、著しい硬化時間の改良及び同時に満足のいく強度の改良は、比較例E−7〜E−9(ヘキサフルオロケイ酸を使用しない)と比較した場合に、モルタル系M−1に関して観察される。
【0059】
本発明による実施例E−4〜E−6は、比較例E−10〜E−12(ヘキサフルオロケイ酸を使用しない)と比較した場合に、種々の他のセメントに関するヘキサフルオロケイ酸のある効果を示す。
【0060】
表5における実施例E−13〜E−15において、6時間〜1日での著しい硬化時間の改良及び同時に満足のいく強度の改良(特に例えばE−14〜E−15)を、比較例E−21〜E−23(ヘキサフルオロケイ酸を使用しない)と比較した場合に、観察する。本発明による実施例E−16〜E−20において、著しい硬化時間の改良及び同時に満足のいく強度の改良を、比較例E−24〜E−28(ヘキサフルオロケイ酸を使用しない)と比較した場合に、種々のセメントに関して観察する。
【0061】
表6における実施例E−29〜E−31において、最初の及び採集の硬化時間の改良は、本発明に従わない実施例E−34と比較した圧縮強度における減少よりも、より著しい。
【0062】
実施例E−32及びE−33において、著しい硬化時間の改良及び同時に満足のいく強度の改良を、比較例E−35及びE−36(ヘキサフルオロケイ酸を使用しない)と比較した場合に、セメントの2つの異なるタイプに関して観察する。
【0063】
実施例E−37(ジエタノールアミンを使用しない)及びE−38(ジエタノールアミンを使用する)は、本発明による調合物におけるジエタノールアミンの効果を証明する。圧縮強度の発達の改良を観察する。
【0064】
表7の実施例は、ヘキサフルオロケイ酸及びフッ化水素酸のマグネシウム塩と比較して、ヘキサフルオロケイ酸の利点を示す。
【0065】
実施例E−39及びE−48、並びにE−40及びE−49において、調合物中のヘキサフルオロケイ酸の種類の量([SiF62-として算出する)は同一である一方で、ヘキサフルオロケイ酸の種類の源は異なる。E−39及びE−40において、前記源は、ヘキサフルオロケイ酸(H2SiF6)であり、かつE−48及びE−49においては、ヘキサフルオロケイ酸の塩(ヘキサフルオロケイ酸マグネシウム(MgSiF6))である。
【0066】
実施例E−39及びE−48、並びにE−40及びE−49の比較から、ヘキサフルオロケイ酸の使用が、ヘキサフルオロケイ酸のマグネシウム塩と比較して、より短い硬化時間、及びより良好な圧縮強度の発達をもたらすことを理解する。
【0067】
ヘキサフルオロケイ酸の効果を、実施例E−41〜E−47において(ヘキサフルオロケイ酸を使用する)、実施例E−50〜E−56を含むフッ化水素酸と比較して示す。
【0068】
これらの実施例は、ヘキサフルオロケイ酸が、フッ化水素酸での実施例と比較して、6時間及び1日での硬化時間及び圧縮強度に対する明確な効果を有することを示す。6時間での圧縮強度の著しい改良を、比較例E−50〜E−52(フッ化水素酸を使用する)と比較した場合に、実施例E−41〜E−43及びE−45(ヘキサフルオロケイ酸を使用する)に関して観察する。
【0069】
5.2 コンクリートにおける硬化促進剤試験結果
表8は、吹き付けコンクリート試験の結果を示す。
【0070】
コンクリート吹き付け実験において、6、15分、並びに1、4及び24時間後の圧縮強度発達の著しい改良を、比較例E−58(ヘキサフルオロケイ酸を使用しない)と比較した場合に、本発明による実施例E−57に関して観察した。
【0071】
表1−1における安定性のデータを、5〜40℃の温度で測定した。充填高さ55mmでの硬化促進剤溶液80mlを、ガラス容器中で貯蔵し、そして安定性を観察した。結果は、硬化促進剤におけるヘキサフルオロケイ酸が、ヘキサフルオロケイ酸を使用しない硬化促進剤と比較して安定性を改良したことを示す。さらに、多くの場合においてヘキサフルオロケイ酸によるフッ化水素酸の置き換えは、貯蔵安定性を改良する。安定性の改良を、安定な硬化促進剤を得ることが困難な場合に、40℃でも観察した。いくつかの追加の安定性データを、表1−2において与える。該データは、ヘキサフルオロケイ酸が硬化促進剤の安定性を著しく改良したことを示す。
【0072】
表1−1における2層(記号X)は、2つの液相が形成されたことを示す。これは、分離のそれほど厳しくないケースである。吹きに津な試料は、たいてい所望されないが、前記のような2相は、撹拌によって容易に均一化することができる。
【0073】
最後に、ヘキサフルオロケイ酸を使用する本発明による硬化促進剤の実施例は、硬化時間に対するこの新たな化合物の明確な効果、及び同時に種々のセメントのための強度発達の改良を証明する。ヘキサフルオロケイ酸のかかる効果を、モルタル及び吹き付けコンクリート試験双方に関して観察した。
【0074】
【表1−1】

【0075】
【表1−2】

【0076】
それぞれの時間後に与えられた値"沈殿物(体積%)"は、沈殿した体積の評価を示す。5未満の値は、実質的に安定な分散液とみなすべきである。
【0077】
【表2】

*流動化剤の投与量を、モルタル中でのセメントの量に関して算出した。
【0078】
【表3】

#流動化剤の投与量を、モルタル中でのセメントの量に関して算出した。
【0079】
【表4】

【0080】
【表5】

【0081】
【表6】

【0082】
【表7】

**調合物の投与量を、モルタル中でのセメントの量に関して重さをはかる。
【0083】
【表8】

##調合物の投与量を、モルタル中でのセメントの量に関して重さをはかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下、
(a)酸化状態3でのアルミニウム、
(b)硫酸塩及び
(c)ヘキサフルオロケイ酸
を含有する、硬化促進剤混合物。
【請求項2】
前記混合物が液体であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化促進剤混合物。
【請求項3】
前記混合物がアミン(d)を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の硬化促進剤混合物。
【請求項4】
前記混合物が、少なくとも1つのアルカノールアミンを含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の硬化促進剤混合物。
【請求項5】
前記混合物が、アルキレンジアミンを含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の硬化促進剤混合物。
【請求項6】
前記混合物が、安定剤(e)として、ケイ酸マグネシウム、粘土鉱物、カオリン、リン酸、亜リン酸、有機カルボン酸及び/又はアロフェンを含有することを特徴とする、請求項2から5までのいずれか1項に記載の硬化促進剤混合物。
【請求項7】
前記混合物が、それぞれの場合に水性混合物の全質量に対して、
(a)2.7〜10質量%の酸化状態3でのアルミニウム、
(b)12〜34質量%、有利には14〜34質量%の硫酸塩、
(c)0.05〜20質量%、有利には0.1〜20質量%のヘキサフルオロケイ酸
を含有することを特徴とする、請求項2から6までのいずれか1項に記載の硬化促進剤混合物。
【請求項8】
前記混合物が、それぞれの場合に水性混合物の全質量に対して、
(a)5〜9質量%の酸化状態3でのアルミニウム、
(b)16〜30質量%、有利には18〜30質量%の硫酸塩、
(c)0.2〜10質量%のヘキサフルオロケイ酸
を含有することを特徴とする、請求項2から7までのいずれか1項に記載の硬化促進剤混合物。
【請求項9】
前記ヘキサフルオロケイ酸が、水性混合物中で0.1〜10質量%の割合で存在することを特徴とする、請求項2から8までのいずれか1項に記載の硬化促進剤混合物。
【請求項10】
前記混合物が、溶液又は分散液の形で存在することを特徴とする、請求項2から9までのいずれか1項に記載の硬化促進剤混合物。
【請求項11】
以下、
(i)硫酸アルミニウム及び/又はアルミニウムヒドロキシスルフェート、場合により水酸化アルミニウムも、より有利には非晶質の水酸化アルミニウム、並びに
(ii)ヘキサフルオロケイ酸
を水と混合することを特徴とする、液体硬化促進剤の製造方法。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の混合物を製造することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
基材をコンクリート又はモルタルで被覆するための、請求項1から10までのいずれか1項に記載の硬化促進剤の使用。
【請求項14】
硬化促進剤混合物のための、有利には酸化状態3でのアルミニウム及び硫酸塩を含有する硬化促進剤混合物のための安定剤としての、ヘキサフルオロケイ酸の使用。
【請求項15】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の硬化促進剤を含有するコンクリート又はモルタル。
【請求項16】
コンクリート又はモルタルを適用することによって製造した硬化させた層であって、該硬化を請求項1から10までのいずれか1項に記載の硬化促進剤を使用して実施した、硬化させた層。

【公表番号】特表2012−510947(P2012−510947A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539020(P2011−539020)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066275
【国際公開番号】WO2010/063777
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(503343336)コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー (139)
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Albert−Frank−Strasse 32, D−83308 Trostberg, Germany
【Fターム(参考)】