促進耐候性試験装置内のキセノンランプ用電源
【課題】耐候性試験装置内において、太陽光への曝露を正確にシミュレーションするため、前記耐候性試験装置にキセノンランプ等の高輝度ランプの放射照度素スペクトルを制御する電源を提供する。
【解決手段】太陽光の一日の周期を完全にシミュレーションし、紫外線出力を改善し、赤外線を低減させ、キセノンランプの劣化を補償するため、キセノンランプからの放射スペクトルを制御するために損失を最小限に抑えて放射照度スペクトル型の高周波正弦波電流をキセノンランプに供給する装置に関し、また、制御可能なキセノンランプの放射スペクトルを得るための切替型出力電圧及び電流を操作するため波型整形を用いる。
【解決手段】太陽光の一日の周期を完全にシミュレーションし、紫外線出力を改善し、赤外線を低減させ、キセノンランプの劣化を補償するため、キセノンランプからの放射スペクトルを制御するために損失を最小限に抑えて放射照度スペクトル型の高周波正弦波電流をキセノンランプに供給する装置に関し、また、制御可能なキセノンランプの放射スペクトルを得るための切替型出力電圧及び電流を操作するため波型整形を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2011年11月17日に出願された米国仮出願第61/561,157号に基づく利益と優先権を主張する非仮出願であり、その内容全体を参考として本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
本開示は、耐候性試験装置内のランプへ電力供給するための電源に関する。耐候性試験装置は環境要素への長期曝露をシミュレーションするのに使用されている。このような環境要素の一例が太陽光である。太陽光への曝露を正確にシミュレーションするため、耐候性試験装置にキセノンランプ等の高輝度ランプを使用してもよい。本開示は、キセノンランプからの放射スペクトルを制御するために損失を最小限に抑えて放射照度スペクトル型の高周波正弦波電流をキセノンランプに供給する装置に関し、また、制御可能なキセノンランプの放射スペクトルを得るための切替型出力電圧及び電流を操作するため波型整形を用いることに関する。結果として、前記放射スペクトルの紫外線部分内のキセノンランプの出力を改善し、スペクトルの赤外線部分内の望ましくない放射を減らすと同様、太陽放射のシミュレーションをより良く行うために、前記キセノンランプの放射スペクトルは、耐候性試験中により精密に制御される。本開示のシステムはさらに、前記ランプがエネルギー消費の少ないイグナイターを必要とするように、前記ランプの点灯前段階で供給されたエネルギーを蓄えるための点灯補助用蓄電機能を備えている。{せいげんは でんりゅう}
【0003】
従来の耐候性試験装置および方法はいかなる放射スペクトルも制御せず、本明細書で開示されている様式や方法で前記キセノンランプの放射スペクトルを制御するためのいかなる機構も備えていないため、結果として、本明細書で開示されているものほど正確ではない。さらに、既存のキセノンランプ電力供給技術は、嵩が高く重い線周波電力のバラスティングを提供することのみに基づいており、限られた制御を行うために多くの機能を必要とし、またユニバーサル対応の電子式力率改善を提供する機能性を備えていない。
【0004】
ある公知の従来装置は、キセノンランプ操作において、単にデューティー比の調整を行うためにパルス直流式を使用する。このような装置は、非常に急激な電流の上昇を生じさせることで、カソードを破壊し、キセノンランプの寿命を縮める可能性があるので不利益である。また、この従来方法では太陽の1日の周期を正確にシミュレーションすることができない。
【0005】
一般的に、高輝度放電ランプ用のアークランプ式交流出力電源はランプへの電流および/又は電力を調整するのみであった。また、ランプ電流量の低減制御を可能にすることで限られた調光が提供されていた。典型的には、電源は、力率補正器、降圧型コンバーター、および低周波交流インバーターの三段式に構成されていた。さらに、ランプを始動させるために全電源の定格出力と同等の電力を消費するイグナイターが別に必要であった。放射照度制御は考慮されないようにするため、存在しなかった。
【0006】
従って、ガス放電ランプを使用する装置及び太陽光またはその他の複数の放射照度スペクトルのシミュレーションが必要な装置には改良された電源が必要である。このような必要性には、促進耐候性試験装置などの装置において使用する際により正確に太陽の1日の周期をシミュレーションするため、ランプの放射照度スペクトルを制御する能力が含まれる。
【0007】
さらに、公知の電源を備えたガス放電ランプを使用する装置は、ランプの点灯中に高パルスのエネルギーを送ることができるシステムを必要とする。また、公知の電源の電流制御機構は急激な電流サージ又はスパイクを引き起こし、ガス放電ランプの信頼性および寿命に悪影響を及ぼす。従って、装置の稼動費を低減し、イグナイター選択の自由度が改善されるように、少ない消費電力での点灯を可能にするシステムを備えた改良型電源が必要となる。
【発明の概要】
【0008】
一般的に、本開示の一態様では、太陽の1日の周期を完全にシミュレーションし、紫外線出力を改善し、また赤外線放射を低減させるためにキセノンランプの放射スペクトルおよび強度の両方を制御できる電源を備えた促進耐候性試験装置を含むことができる。一実施形態では、電源はキセノンランプへ供給される波形に定義された制御可能な出力を得るための高周波インバーターを含むことができる。これによりスペクトル整形ランプの放射照度、キセノンランプへ直接供給する電流源としての共振回路を開発し、また同時に、確実なアークランプ式点灯及びエネルギー消費の少ないイグナイターを用いてより低い点灯電圧で設定を行うための高電力、高電圧のキセノンランプのバックアップを開発することを可能にする。結果として、本実施形態は、局地的におよび/又は遠隔的に、さらにはインターネットを介してコンピューターによる監視及び制御が可能になるのと同様、高周波電力変換技術および波形操作の使用によって、よりコンパクトで安価なものとなる。
【0009】
本開示の別の態様において、ランプの点灯を補助するのに有利に設定されたランプ点灯前の環境を作り出すため近共振高周波スイッチングを使用することを含むことができる促進耐候性試験装置を含めてもよい。公知のイグナイターの大きさおよびエネルギー所要量は、複数の実施形態の高電圧及び蓄積エネルギーのバックアップによるその他の前記した非実用的なランプ点灯方法を使用するのと同様に本開示の態様を使用することで低減することができる。本開示により、安価で長寿命の可能性を有する点灯タイプをより自由に選択することができる。
【0010】
本開示の別の態様において、ランプの放射照度スペクトルを制御するシグナルを送ることができるスペクトル整形要素を含む電源が提供されている。
【0011】
本開示の別の態様において、ランプに高電圧を印加し、ランプ点灯及び操作の補助に使用するバックアップエネルギーの蓄積を行うための事前調整要素を備えた電源が提供されている。
【0012】
さらに本開示の別の態様において、太陽光の1日の周期をシミュレーションするようなランプの放射照度スペクトルを制御することができる電源を備えた耐候性試験装置が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本開示の電源の一実施形態を示す図である。
【0014】
【図2】本開示の電源の別の実施形態を示す図である。
【0015】
【図3】本開示の電源の別の実施形態を示す図である。
【0016】
【図4】本開示の電源の別の実施形態を示す図である。
【0017】
【図5】本開示の電源の別の実施形態を示す図である。
【0018】
【図6】本開示のランプと電源の操作方法を示すフローチャートである。
【0019】
【図7】本開示の電源実施形態の一つを使用した時の点灯前段階の電圧分析結果の一例を示す図である。
【0020】
【図8】本開示の電源実施形態の一つを使用して生じた放射照度スペクトル整形出力の一例を示す図である。
【0021】
【図9】本開示の電源例を含む耐候性試験装置例の側断面図である。
【0022】
【図10】本開示の電源出力制御の一実施形態を示す図である。
【0023】
【図11】本開示の電源出力制御の別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の開示全体は、本明細書記載の発明を実施するための形態を、添付図面、図面の解説、要約書、技術背景、技術分野、および関連の見出しと併せて参照することにより最も理解されよう。異なった図面上に見られる同一の参照番号は同一の要素又は機能的に同等な要素を特定するものである。要約書に記載された要素は言及されていないが、発明を実施するための形態及び関連開示の要素に関連して言及している。
【0025】
本開示は本明細書に記載された装置の特定の細部に限定するものではなく、その他の改良例や出願も考慮することができる。本明細書開示の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、装置、機器又は方法に追加変更を行うことができる。従って、本開示における主題は狭義ではなく、実例として解釈されるべきものである。
【0026】
本開示の一実施形態において、図9に示すように模擬太陽光を発生させるためのシステムを備えた耐候性試験装置が提供されている。模擬太陽光を発生させる前記システムは、耐候性試験装置(82)のハウジング(90)内に位置し、ラック(92)上の試料と相互通信するよう機能する。模擬太陽光を発生させる前記システムは、図8に示す実施形態又は本明細書に参考文献として記載された米国特許第4,957,011号、第5,226,318号、第5,503,032号に開示されている耐候性試験システムなどの様々な種類の耐候性試験装置又は試験装置と相互通信を行うことができる。模擬太陽光を発生させるシステム例には電源(86)およびランプ(10)が備えられている。この例においては、ランプ(10)は耐候性試験装置(82)のラック(92)内に垂直に配向されたキセノンランプである。この構成例では、電源(86)は耐候性試験装置(82)の内部に位置しているが、前記耐候性試験装置内の試料に曝される要素から保護されるようにラック(92)及び試験槽の外部に位置している。
【0027】
この実施例におけるランプ(10)はキセノンランプである。但し、本明細書に記載された電源(86)の実施形態を含む本開示を用いてその他のガス放電ランプを使用することもできる。キセノンランプは、キセノンランプの太陽光シミュレーション能力について本明細書に開示されている文脈において有用である。また一方で、その他のガス放電ランプの点灯及び放射照度スペクトル整形に関しては、本開示の教義を用いてその他のランプを使用することができる。
【0028】
図1は電源(86)の実施形態を示すものである。一般的に、基本概念は、交流キセノン式ランプ用の高周波スイッチングインバーター電源のパルス幅変調を介して得られる波形整形出力である。これにより、(高周波成分に対応する)低周波成分の出力電流スペクトルを増加させることが可能になる。一実施形態においては、D級増幅器として装置を扱うこともできる。
【0029】
図1に示す実施形態において、高い力率と低電流全高調波歪みを維持しながら非常に広範囲にわたる入力電圧で作動することができる力率補正器(1)を、三相交流電源が稼動させる。力率補正器(1)が位相シフト・フルブリッジ・インバーター(2)に直流電圧及び電流の形で出力電力を供給する。
【0030】
位相シフト・フルブリッジ・インバーター(2)は力率補正器(1)からの電力およびフィードバック制御回路(6)からの信号制御を受け取る。位相シフト・フルブリッジ・インバーター(2)は一次巻線(4)を介して主変圧器(3)に電力を送る。主変圧器(3)の一次巻線(4)は位相シフト・フルブリッジ・インバーター(2)をロードする。メインの二次巻線(8)は直列共振回路(9)に電力を送る。補助的二次巻線(5)はフィードバック制御回路(6)への電圧フィードバック信号源であり、主変圧器(3)を介して送られた電力の状態を感知し、必要な制御を行う。
【0031】
フィードバック制御回路(6)は、全システムの出力電力の出力制御及び規制に必要な情報を提供しながら、位相シフト・フルブリッジ・インバーター(2)に信号を送る。フィードバック制御回路(6)はまたスペクトル整形回路(7)から信号を受け取る。フィードバック制御回路(6)は主変圧器(3)の二次巻線(5)及び電流センス回路(17)を介して電圧を感知する。スペクトル整形回路(7)は特定の波形構成をフィードバック制御回路(6)に送り、また状況によっては、発生し得る追加出力のスペクトル整形を選択できるようにすることで、フィードバックループ電流のユーザー入力制御を可能にする。
【0032】
直列共振回路(9)は通常の動作中にキセノンランプ(10)に電力を送る。直列共振回路(9)はまた、イグナイター変圧器の二次巻線(14)及び(15)を介してパルスイグナイターへのエネルギー支援を開始し、キセノンランプ(10)を通してベース電圧を作り出すことにより、ランプの起動を補助し、アーク点灯が確立されるとすぐに維持エネルギーを供給する。直列共振回路(9)はイグナイター変圧器(11)、二次巻線(14)及び(15)、及び電流センス回路(17)を通ってキセノンランプ(10)に連結している。イグナイター変圧器(11)の一次巻線(12)及び(13)は、パルスイグナイター(16)によって稼働され、パルスイグナイター(16)は、ロードされていない直列共振回路(9)からランプ起動の点灯前及び点灯段階中に信号を受け取る。パルスイグナイター(16)はイグナイター変圧器(11)の一次巻線(12)及び(13)にパルスを送り、イグナイター変圧器(11)の二次巻線(14)及び(15)上に十分に高い電圧を発生させ、交流アークがランプカソード間を流れるように誘導することでランプを点灯させる。パルスイグナイター(16)は力率補正器(1)から最大限に安定させるための出力を得る。起点がキセノンランプ(10)の電流発生に更なる電気抵抗をかけず、パルスイグナイター(16)起動時にランプ(10) を通して高差動電圧を生成させるように、二次巻線(14)及び(15)を巻いてもよい。
【0033】
電流センス回路(17)は、電源が位相シフト・フルブリッジ・インバーター(2)を介した電力出力を管理又は補正できるようなランプ(10)の状態を示すフィードバック制御回路にフィードバック信号を送るように構成されている。 一実施形態において、図1に示す電流センス回路(17)は、イグナイター変圧器(11)の二次巻線(14)及び(15)と直列共振回路(9)との間で直列に配置されている。
【0034】
別の実施形態においては、図5に示すように、電流センス回路には受光器(26)に接続された光センサー(24)を備えてもよく、受光器(26)は同様にフィードバック制御回路(6)に接続されており、放射照度スペクトル整形を補助するのと同様に放射照度の安定化及び劣化補償を補助することができる。光センサー(24)及び受光器(26)に加えて、又はそれらの代わりに、電圧及び電流の調整、モニター、又は制御を補助するために電流センサーを使用することができる。
【0035】
電源(86)内の電流の変調は、本開示の放射照度スペクトル整形を達成するため、様々な方法を用いて行うことができる。図10は電源出力制御の一実施形態を示すものである。この実施形態では、誤差増幅器(104)は出力電圧/電流を基準信号と比較し、コンバーター(102)を制御することで、出力電圧/電流が所定の形を取るように修正され、ランプ(10)が予め定められた再現性のある放射照度スペクトルを生成する。
【0036】
図11は電源出力制御の別の実施形態を示すものである。この実施形態では、変調信号が抵抗器(108)を介してフィードバックループに取り込まれる。この方法で誤差増幅器(104)の基準信号は原形を保ち、変調信号はコンバーター(102)を介して出力電流/電圧を制御することができる。変調信号を変化させることで、出力信号も変化し、ランプ(10)の電流がRMS値より非常に高くなったり、またある時には非常に低くなったりすることがある。この技術により、UV出力を増加し、赤外線出力を抑えるためにランプ(10)の放射照度スペクトル出力を変化させることができる。
【0037】
図8は、本開示の電源の一実施例と併せて使用した時のランプ(10)の放射照度出力の一例を示す図表である。上述のとおり、スペクトルのUV領域内の放射照度スペクトル領域は増加するが、赤外線領域内の放射照度スペクトル領域は減少する。
【0038】
本開示の別の態様において、電源には点灯補助機能のついた点灯システム及びイグナイター要素が備わっている。図1に示すように、点灯補助には直列共振回路(9)が含まれている。点灯前段階で、直列共振回路(9)は、エネルギー消費の少ないイグナイターでランプ(10)を点灯できるようにランプ(10)に供給できるバックアップエネルギーの蓄積を促進する。
【0039】
図1に示す本開示の一実施形態の操作において、要望通りに点灯及び稼動させるため、キセノンランプ(10)をランプ自体の出力に接続してもよい。そこにかかる電力は、キセノンランプ(10)がまだ冷たい場合は点灯前段階であり、直列共振回路(9)に負荷をかけない。これは、キセノンランプ(10)を通る電圧が数キロボルトの大きさに達する時のことであり、予備電離ストリーマを形成させ、ランプの非常に高い電気抵抗を下げ始めることを可能にする。また、直列共振回路(9)、イグナイター変圧器(11)及びパルスイグナイター(16)との間でシンクロナイズされた点灯プロセスのバックアップに使用するためのエネルギーを、直列共振回路(9)が数ジュール蓄え、点灯が起こる瞬間まで維持する時のことを示す。
【0040】
点灯時には、キセノンランプ(10)内のアークはイグナイター変圧器(11)を通じてキセノンランプ(10)まで連結されたパルスイグナイター(16)からの高電圧パルスを用いて生成される。アークが発生すると、ランプの電気抵抗が急激に低下し、パルスイグナイター(16)からの点灯パルスはもはや必要ではなくなる。キセノンランプ(10)はこの時、点灯アークを維持し、出力電圧をランプの通常必要量に減らし、一定のランプ電流を設定しながら、イグナイター変圧器(11)の二次巻線(14)と(15)を介して直列共振回路(9)のエネルギーを分路する。
【0041】
キセノンランプ(10)を通る電流量を決定する主な要素は、主変圧器(3)の二次巻線(8)から送られる出力電圧と周波数、直列共振回路(9)の同調周波数を決定するインダクタ及びコンデンサ素子(記載はしていないが、当業者には公知である)、及び直列共振回路(9)内のインダクタ素子のインダクタンス値である。
【0042】
ユーザー入力による設定選択によって決定された通りにキセノンランプ(10)の放射照度スペクトルを調整するために、スペクトル整形回路(7)を使用してもよい。これはスペクトル整形回路(7)内の波形発生器を用いて行われ、フィードバック制御回路(6)を介してフィードバック信号発信に作用し、キセノンランプ(10)の出力電流エンベロープの調整又は整形を行う。キセノンランプを流れる電流エンベロープ全体の整形を制御することによって、ランプの放射照度スペクトル制御はこの時抑制される。従って、スペクトル整形回路(7)内で発生した信号波形の形を変更又は整えることで、キセノンランプ(10)の放射照度スペクトルを要求値又は要求域内に調整することができる。上記調整時の放射照度スペクトルの変動は、分光放射計又はスペクトル分析器の適切な範囲内での使用によりモニター及び確認することができる。
【0043】
本開示の電源のその他の実施形態には点灯システムと点灯補助の代替構造、及びイグナイター要素が含まれる。図2に示す一実施例では、点灯システムには低電力、高電圧のイグナイターによって駆動する高電圧(HV)ワイヤー(18)が備わっている。ここでキセノンランプ(10)は電流センス回路(17)を通り、直列共振回路(9)に戻るように連結されている。高電圧イグナイター(22)はまた、キセノンランプの底部への接続によって参照されており、力率補正器(1)からの信号を受け取り、HVワイヤー(18)上において高電圧を発生させるように設計されているが、この高電圧はランプ点灯前から点灯に移行する間に共振回路(9)の励起エンベロープ内の一つのポイントで同時に発生するように調整されている。一実施例において、HVワイヤー(18)はランプの周りを非常に大きなピッチで巻いた薄いニッケルワイヤーであってもよい。
【0044】
図3に示す本開示の電源の別の実施形態において、点灯システムにはアークイグナイター(30)によって作動する静電気アーク端子(19)が備えられている。ここで、力率補正器(1)はアークイグナイター(30)に信号を送り、キセノンランプ(10)の電流は、アークイグナイター(30)に必要とされるランプの参照接続を介さずに電流センス回路(17)を通り、直列共振回路(9)に戻るようにしっかりと結合されている。再度および直列共振回路(9)の点灯前蓄積の間に、アーク端子(19)間でのランプとの静電気放電を通じて点灯が開始される。
【0045】
図4に示す本開示の電源のまた別の実施形態において、点灯システムにはランプに向けられたUV放射源(20)が備わっている。ここで、力率補正器(1)はUVイグナイター(40)に信号を送り、UVイグナイター(40)から放出されたUV放射源(20)がキセノンランプ(10)を励起する。ここでのメカニズムは、UV放射という形でエネルギーを加えることで、キセノンランプ(10)を励起し、点灯するまでの間に直列共振回路(9)がキセノンランプ(10)を通して急送した数キロボルトでランプの点灯が十分に可能となることである。一実施例では、外部放射線源からのUV放射のパルスを短時間ランプ(10)に加えることでUV点灯が実現する。UV放射の外部放射線源の例として、UVレーザー、コンパクトUV-VISファイバー光源又はその他の適切なUV光源が挙げられる。
【0046】
図7の画像は点灯するまでの間に電源から供給されるバックアップエネルギーの蓄積を示すものである。図7はオペレーションの点灯前段階に発生した電圧プロフィールの一例を示すものである。このような点灯前段階では、ランプ(10)を通る電圧は数キロボルトの大きさで流れることができる。前記電源の実施形態のいずれかを用いたランプ(10)の点灯操作は、図6に示すフローチャートを使用して行うことができる。点灯に成功すると、ユーザーに要求された放射照度スペクトルを達成するようにランプ(10)を操作することができる。
【0047】
前述の詳細説明は本開示の実施例及び実施形態にすぎず、本開示の精神と範囲から逸脱することなく、本明細書の記載に従うことで開示されている実施形態への様々な変更を行うことができる。よって、前述の説明は開示範囲を制限するものではなく、過度の負担を伴うことなく発明を実施するために、当業者へ十分な開示を行うためのものである。
【技術分野】
【0001】
本出願は2011年11月17日に出願された米国仮出願第61/561,157号に基づく利益と優先権を主張する非仮出願であり、その内容全体を参考として本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
本開示は、耐候性試験装置内のランプへ電力供給するための電源に関する。耐候性試験装置は環境要素への長期曝露をシミュレーションするのに使用されている。このような環境要素の一例が太陽光である。太陽光への曝露を正確にシミュレーションするため、耐候性試験装置にキセノンランプ等の高輝度ランプを使用してもよい。本開示は、キセノンランプからの放射スペクトルを制御するために損失を最小限に抑えて放射照度スペクトル型の高周波正弦波電流をキセノンランプに供給する装置に関し、また、制御可能なキセノンランプの放射スペクトルを得るための切替型出力電圧及び電流を操作するため波型整形を用いることに関する。結果として、前記放射スペクトルの紫外線部分内のキセノンランプの出力を改善し、スペクトルの赤外線部分内の望ましくない放射を減らすと同様、太陽放射のシミュレーションをより良く行うために、前記キセノンランプの放射スペクトルは、耐候性試験中により精密に制御される。本開示のシステムはさらに、前記ランプがエネルギー消費の少ないイグナイターを必要とするように、前記ランプの点灯前段階で供給されたエネルギーを蓄えるための点灯補助用蓄電機能を備えている。{せいげんは でんりゅう}
【0003】
従来の耐候性試験装置および方法はいかなる放射スペクトルも制御せず、本明細書で開示されている様式や方法で前記キセノンランプの放射スペクトルを制御するためのいかなる機構も備えていないため、結果として、本明細書で開示されているものほど正確ではない。さらに、既存のキセノンランプ電力供給技術は、嵩が高く重い線周波電力のバラスティングを提供することのみに基づいており、限られた制御を行うために多くの機能を必要とし、またユニバーサル対応の電子式力率改善を提供する機能性を備えていない。
【0004】
ある公知の従来装置は、キセノンランプ操作において、単にデューティー比の調整を行うためにパルス直流式を使用する。このような装置は、非常に急激な電流の上昇を生じさせることで、カソードを破壊し、キセノンランプの寿命を縮める可能性があるので不利益である。また、この従来方法では太陽の1日の周期を正確にシミュレーションすることができない。
【0005】
一般的に、高輝度放電ランプ用のアークランプ式交流出力電源はランプへの電流および/又は電力を調整するのみであった。また、ランプ電流量の低減制御を可能にすることで限られた調光が提供されていた。典型的には、電源は、力率補正器、降圧型コンバーター、および低周波交流インバーターの三段式に構成されていた。さらに、ランプを始動させるために全電源の定格出力と同等の電力を消費するイグナイターが別に必要であった。放射照度制御は考慮されないようにするため、存在しなかった。
【0006】
従って、ガス放電ランプを使用する装置及び太陽光またはその他の複数の放射照度スペクトルのシミュレーションが必要な装置には改良された電源が必要である。このような必要性には、促進耐候性試験装置などの装置において使用する際により正確に太陽の1日の周期をシミュレーションするため、ランプの放射照度スペクトルを制御する能力が含まれる。
【0007】
さらに、公知の電源を備えたガス放電ランプを使用する装置は、ランプの点灯中に高パルスのエネルギーを送ることができるシステムを必要とする。また、公知の電源の電流制御機構は急激な電流サージ又はスパイクを引き起こし、ガス放電ランプの信頼性および寿命に悪影響を及ぼす。従って、装置の稼動費を低減し、イグナイター選択の自由度が改善されるように、少ない消費電力での点灯を可能にするシステムを備えた改良型電源が必要となる。
【発明の概要】
【0008】
一般的に、本開示の一態様では、太陽の1日の周期を完全にシミュレーションし、紫外線出力を改善し、また赤外線放射を低減させるためにキセノンランプの放射スペクトルおよび強度の両方を制御できる電源を備えた促進耐候性試験装置を含むことができる。一実施形態では、電源はキセノンランプへ供給される波形に定義された制御可能な出力を得るための高周波インバーターを含むことができる。これによりスペクトル整形ランプの放射照度、キセノンランプへ直接供給する電流源としての共振回路を開発し、また同時に、確実なアークランプ式点灯及びエネルギー消費の少ないイグナイターを用いてより低い点灯電圧で設定を行うための高電力、高電圧のキセノンランプのバックアップを開発することを可能にする。結果として、本実施形態は、局地的におよび/又は遠隔的に、さらにはインターネットを介してコンピューターによる監視及び制御が可能になるのと同様、高周波電力変換技術および波形操作の使用によって、よりコンパクトで安価なものとなる。
【0009】
本開示の別の態様において、ランプの点灯を補助するのに有利に設定されたランプ点灯前の環境を作り出すため近共振高周波スイッチングを使用することを含むことができる促進耐候性試験装置を含めてもよい。公知のイグナイターの大きさおよびエネルギー所要量は、複数の実施形態の高電圧及び蓄積エネルギーのバックアップによるその他の前記した非実用的なランプ点灯方法を使用するのと同様に本開示の態様を使用することで低減することができる。本開示により、安価で長寿命の可能性を有する点灯タイプをより自由に選択することができる。
【0010】
本開示の別の態様において、ランプの放射照度スペクトルを制御するシグナルを送ることができるスペクトル整形要素を含む電源が提供されている。
【0011】
本開示の別の態様において、ランプに高電圧を印加し、ランプ点灯及び操作の補助に使用するバックアップエネルギーの蓄積を行うための事前調整要素を備えた電源が提供されている。
【0012】
さらに本開示の別の態様において、太陽光の1日の周期をシミュレーションするようなランプの放射照度スペクトルを制御することができる電源を備えた耐候性試験装置が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本開示の電源の一実施形態を示す図である。
【0014】
【図2】本開示の電源の別の実施形態を示す図である。
【0015】
【図3】本開示の電源の別の実施形態を示す図である。
【0016】
【図4】本開示の電源の別の実施形態を示す図である。
【0017】
【図5】本開示の電源の別の実施形態を示す図である。
【0018】
【図6】本開示のランプと電源の操作方法を示すフローチャートである。
【0019】
【図7】本開示の電源実施形態の一つを使用した時の点灯前段階の電圧分析結果の一例を示す図である。
【0020】
【図8】本開示の電源実施形態の一つを使用して生じた放射照度スペクトル整形出力の一例を示す図である。
【0021】
【図9】本開示の電源例を含む耐候性試験装置例の側断面図である。
【0022】
【図10】本開示の電源出力制御の一実施形態を示す図である。
【0023】
【図11】本開示の電源出力制御の別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の開示全体は、本明細書記載の発明を実施するための形態を、添付図面、図面の解説、要約書、技術背景、技術分野、および関連の見出しと併せて参照することにより最も理解されよう。異なった図面上に見られる同一の参照番号は同一の要素又は機能的に同等な要素を特定するものである。要約書に記載された要素は言及されていないが、発明を実施するための形態及び関連開示の要素に関連して言及している。
【0025】
本開示は本明細書に記載された装置の特定の細部に限定するものではなく、その他の改良例や出願も考慮することができる。本明細書開示の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、装置、機器又は方法に追加変更を行うことができる。従って、本開示における主題は狭義ではなく、実例として解釈されるべきものである。
【0026】
本開示の一実施形態において、図9に示すように模擬太陽光を発生させるためのシステムを備えた耐候性試験装置が提供されている。模擬太陽光を発生させる前記システムは、耐候性試験装置(82)のハウジング(90)内に位置し、ラック(92)上の試料と相互通信するよう機能する。模擬太陽光を発生させる前記システムは、図8に示す実施形態又は本明細書に参考文献として記載された米国特許第4,957,011号、第5,226,318号、第5,503,032号に開示されている耐候性試験システムなどの様々な種類の耐候性試験装置又は試験装置と相互通信を行うことができる。模擬太陽光を発生させるシステム例には電源(86)およびランプ(10)が備えられている。この例においては、ランプ(10)は耐候性試験装置(82)のラック(92)内に垂直に配向されたキセノンランプである。この構成例では、電源(86)は耐候性試験装置(82)の内部に位置しているが、前記耐候性試験装置内の試料に曝される要素から保護されるようにラック(92)及び試験槽の外部に位置している。
【0027】
この実施例におけるランプ(10)はキセノンランプである。但し、本明細書に記載された電源(86)の実施形態を含む本開示を用いてその他のガス放電ランプを使用することもできる。キセノンランプは、キセノンランプの太陽光シミュレーション能力について本明細書に開示されている文脈において有用である。また一方で、その他のガス放電ランプの点灯及び放射照度スペクトル整形に関しては、本開示の教義を用いてその他のランプを使用することができる。
【0028】
図1は電源(86)の実施形態を示すものである。一般的に、基本概念は、交流キセノン式ランプ用の高周波スイッチングインバーター電源のパルス幅変調を介して得られる波形整形出力である。これにより、(高周波成分に対応する)低周波成分の出力電流スペクトルを増加させることが可能になる。一実施形態においては、D級増幅器として装置を扱うこともできる。
【0029】
図1に示す実施形態において、高い力率と低電流全高調波歪みを維持しながら非常に広範囲にわたる入力電圧で作動することができる力率補正器(1)を、三相交流電源が稼動させる。力率補正器(1)が位相シフト・フルブリッジ・インバーター(2)に直流電圧及び電流の形で出力電力を供給する。
【0030】
位相シフト・フルブリッジ・インバーター(2)は力率補正器(1)からの電力およびフィードバック制御回路(6)からの信号制御を受け取る。位相シフト・フルブリッジ・インバーター(2)は一次巻線(4)を介して主変圧器(3)に電力を送る。主変圧器(3)の一次巻線(4)は位相シフト・フルブリッジ・インバーター(2)をロードする。メインの二次巻線(8)は直列共振回路(9)に電力を送る。補助的二次巻線(5)はフィードバック制御回路(6)への電圧フィードバック信号源であり、主変圧器(3)を介して送られた電力の状態を感知し、必要な制御を行う。
【0031】
フィードバック制御回路(6)は、全システムの出力電力の出力制御及び規制に必要な情報を提供しながら、位相シフト・フルブリッジ・インバーター(2)に信号を送る。フィードバック制御回路(6)はまたスペクトル整形回路(7)から信号を受け取る。フィードバック制御回路(6)は主変圧器(3)の二次巻線(5)及び電流センス回路(17)を介して電圧を感知する。スペクトル整形回路(7)は特定の波形構成をフィードバック制御回路(6)に送り、また状況によっては、発生し得る追加出力のスペクトル整形を選択できるようにすることで、フィードバックループ電流のユーザー入力制御を可能にする。
【0032】
直列共振回路(9)は通常の動作中にキセノンランプ(10)に電力を送る。直列共振回路(9)はまた、イグナイター変圧器の二次巻線(14)及び(15)を介してパルスイグナイターへのエネルギー支援を開始し、キセノンランプ(10)を通してベース電圧を作り出すことにより、ランプの起動を補助し、アーク点灯が確立されるとすぐに維持エネルギーを供給する。直列共振回路(9)はイグナイター変圧器(11)、二次巻線(14)及び(15)、及び電流センス回路(17)を通ってキセノンランプ(10)に連結している。イグナイター変圧器(11)の一次巻線(12)及び(13)は、パルスイグナイター(16)によって稼働され、パルスイグナイター(16)は、ロードされていない直列共振回路(9)からランプ起動の点灯前及び点灯段階中に信号を受け取る。パルスイグナイター(16)はイグナイター変圧器(11)の一次巻線(12)及び(13)にパルスを送り、イグナイター変圧器(11)の二次巻線(14)及び(15)上に十分に高い電圧を発生させ、交流アークがランプカソード間を流れるように誘導することでランプを点灯させる。パルスイグナイター(16)は力率補正器(1)から最大限に安定させるための出力を得る。起点がキセノンランプ(10)の電流発生に更なる電気抵抗をかけず、パルスイグナイター(16)起動時にランプ(10) を通して高差動電圧を生成させるように、二次巻線(14)及び(15)を巻いてもよい。
【0033】
電流センス回路(17)は、電源が位相シフト・フルブリッジ・インバーター(2)を介した電力出力を管理又は補正できるようなランプ(10)の状態を示すフィードバック制御回路にフィードバック信号を送るように構成されている。 一実施形態において、図1に示す電流センス回路(17)は、イグナイター変圧器(11)の二次巻線(14)及び(15)と直列共振回路(9)との間で直列に配置されている。
【0034】
別の実施形態においては、図5に示すように、電流センス回路には受光器(26)に接続された光センサー(24)を備えてもよく、受光器(26)は同様にフィードバック制御回路(6)に接続されており、放射照度スペクトル整形を補助するのと同様に放射照度の安定化及び劣化補償を補助することができる。光センサー(24)及び受光器(26)に加えて、又はそれらの代わりに、電圧及び電流の調整、モニター、又は制御を補助するために電流センサーを使用することができる。
【0035】
電源(86)内の電流の変調は、本開示の放射照度スペクトル整形を達成するため、様々な方法を用いて行うことができる。図10は電源出力制御の一実施形態を示すものである。この実施形態では、誤差増幅器(104)は出力電圧/電流を基準信号と比較し、コンバーター(102)を制御することで、出力電圧/電流が所定の形を取るように修正され、ランプ(10)が予め定められた再現性のある放射照度スペクトルを生成する。
【0036】
図11は電源出力制御の別の実施形態を示すものである。この実施形態では、変調信号が抵抗器(108)を介してフィードバックループに取り込まれる。この方法で誤差増幅器(104)の基準信号は原形を保ち、変調信号はコンバーター(102)を介して出力電流/電圧を制御することができる。変調信号を変化させることで、出力信号も変化し、ランプ(10)の電流がRMS値より非常に高くなったり、またある時には非常に低くなったりすることがある。この技術により、UV出力を増加し、赤外線出力を抑えるためにランプ(10)の放射照度スペクトル出力を変化させることができる。
【0037】
図8は、本開示の電源の一実施例と併せて使用した時のランプ(10)の放射照度出力の一例を示す図表である。上述のとおり、スペクトルのUV領域内の放射照度スペクトル領域は増加するが、赤外線領域内の放射照度スペクトル領域は減少する。
【0038】
本開示の別の態様において、電源には点灯補助機能のついた点灯システム及びイグナイター要素が備わっている。図1に示すように、点灯補助には直列共振回路(9)が含まれている。点灯前段階で、直列共振回路(9)は、エネルギー消費の少ないイグナイターでランプ(10)を点灯できるようにランプ(10)に供給できるバックアップエネルギーの蓄積を促進する。
【0039】
図1に示す本開示の一実施形態の操作において、要望通りに点灯及び稼動させるため、キセノンランプ(10)をランプ自体の出力に接続してもよい。そこにかかる電力は、キセノンランプ(10)がまだ冷たい場合は点灯前段階であり、直列共振回路(9)に負荷をかけない。これは、キセノンランプ(10)を通る電圧が数キロボルトの大きさに達する時のことであり、予備電離ストリーマを形成させ、ランプの非常に高い電気抵抗を下げ始めることを可能にする。また、直列共振回路(9)、イグナイター変圧器(11)及びパルスイグナイター(16)との間でシンクロナイズされた点灯プロセスのバックアップに使用するためのエネルギーを、直列共振回路(9)が数ジュール蓄え、点灯が起こる瞬間まで維持する時のことを示す。
【0040】
点灯時には、キセノンランプ(10)内のアークはイグナイター変圧器(11)を通じてキセノンランプ(10)まで連結されたパルスイグナイター(16)からの高電圧パルスを用いて生成される。アークが発生すると、ランプの電気抵抗が急激に低下し、パルスイグナイター(16)からの点灯パルスはもはや必要ではなくなる。キセノンランプ(10)はこの時、点灯アークを維持し、出力電圧をランプの通常必要量に減らし、一定のランプ電流を設定しながら、イグナイター変圧器(11)の二次巻線(14)と(15)を介して直列共振回路(9)のエネルギーを分路する。
【0041】
キセノンランプ(10)を通る電流量を決定する主な要素は、主変圧器(3)の二次巻線(8)から送られる出力電圧と周波数、直列共振回路(9)の同調周波数を決定するインダクタ及びコンデンサ素子(記載はしていないが、当業者には公知である)、及び直列共振回路(9)内のインダクタ素子のインダクタンス値である。
【0042】
ユーザー入力による設定選択によって決定された通りにキセノンランプ(10)の放射照度スペクトルを調整するために、スペクトル整形回路(7)を使用してもよい。これはスペクトル整形回路(7)内の波形発生器を用いて行われ、フィードバック制御回路(6)を介してフィードバック信号発信に作用し、キセノンランプ(10)の出力電流エンベロープの調整又は整形を行う。キセノンランプを流れる電流エンベロープ全体の整形を制御することによって、ランプの放射照度スペクトル制御はこの時抑制される。従って、スペクトル整形回路(7)内で発生した信号波形の形を変更又は整えることで、キセノンランプ(10)の放射照度スペクトルを要求値又は要求域内に調整することができる。上記調整時の放射照度スペクトルの変動は、分光放射計又はスペクトル分析器の適切な範囲内での使用によりモニター及び確認することができる。
【0043】
本開示の電源のその他の実施形態には点灯システムと点灯補助の代替構造、及びイグナイター要素が含まれる。図2に示す一実施例では、点灯システムには低電力、高電圧のイグナイターによって駆動する高電圧(HV)ワイヤー(18)が備わっている。ここでキセノンランプ(10)は電流センス回路(17)を通り、直列共振回路(9)に戻るように連結されている。高電圧イグナイター(22)はまた、キセノンランプの底部への接続によって参照されており、力率補正器(1)からの信号を受け取り、HVワイヤー(18)上において高電圧を発生させるように設計されているが、この高電圧はランプ点灯前から点灯に移行する間に共振回路(9)の励起エンベロープ内の一つのポイントで同時に発生するように調整されている。一実施例において、HVワイヤー(18)はランプの周りを非常に大きなピッチで巻いた薄いニッケルワイヤーであってもよい。
【0044】
図3に示す本開示の電源の別の実施形態において、点灯システムにはアークイグナイター(30)によって作動する静電気アーク端子(19)が備えられている。ここで、力率補正器(1)はアークイグナイター(30)に信号を送り、キセノンランプ(10)の電流は、アークイグナイター(30)に必要とされるランプの参照接続を介さずに電流センス回路(17)を通り、直列共振回路(9)に戻るようにしっかりと結合されている。再度および直列共振回路(9)の点灯前蓄積の間に、アーク端子(19)間でのランプとの静電気放電を通じて点灯が開始される。
【0045】
図4に示す本開示の電源のまた別の実施形態において、点灯システムにはランプに向けられたUV放射源(20)が備わっている。ここで、力率補正器(1)はUVイグナイター(40)に信号を送り、UVイグナイター(40)から放出されたUV放射源(20)がキセノンランプ(10)を励起する。ここでのメカニズムは、UV放射という形でエネルギーを加えることで、キセノンランプ(10)を励起し、点灯するまでの間に直列共振回路(9)がキセノンランプ(10)を通して急送した数キロボルトでランプの点灯が十分に可能となることである。一実施例では、外部放射線源からのUV放射のパルスを短時間ランプ(10)に加えることでUV点灯が実現する。UV放射の外部放射線源の例として、UVレーザー、コンパクトUV-VISファイバー光源又はその他の適切なUV光源が挙げられる。
【0046】
図7の画像は点灯するまでの間に電源から供給されるバックアップエネルギーの蓄積を示すものである。図7はオペレーションの点灯前段階に発生した電圧プロフィールの一例を示すものである。このような点灯前段階では、ランプ(10)を通る電圧は数キロボルトの大きさで流れることができる。前記電源の実施形態のいずれかを用いたランプ(10)の点灯操作は、図6に示すフローチャートを使用して行うことができる。点灯に成功すると、ユーザーに要求された放射照度スペクトルを達成するようにランプ(10)を操作することができる。
【0047】
前述の詳細説明は本開示の実施例及び実施形態にすぎず、本開示の精神と範囲から逸脱することなく、本明細書の記載に従うことで開示されている実施形態への様々な変更を行うことができる。よって、前述の説明は開示範囲を制限するものではなく、過度の負担を伴うことなく発明を実施するために、当業者へ十分な開示を行うためのものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプ操作のための電源を備える耐候性試験装置であって、前記電源は、
ランプの動作状態についてフィードバック制御回路に信号を送る働きをする電流センス回路と、
ランプの動作状態を改善するための信号を送る働きをするフィードバック制御回路と、
フィードバック制御回路に動作可能に接続され、ランプの放射照度スペクトルを制御できるような変調信号を送る働きをするスペクトル整形回路
を備えた放射照度スペクトル整形要素と、
ランプに動作可能に接続され、高電圧でランプの事前調整を行い、ランプ点灯補助のためのバックアップエネルギーの蓄積を行うように構成された直列共振回路を備えた点灯システムと、
ランプに動作可能に接続され、ランプ点灯の働きをするイグナイターを備える
ことを特徴とする耐候性試験装置。
【請求項2】
耐候性試験装置内のランプ操作のための電源であって、
ランプの動作状態についてフィードバック制御回路に信号を送る働きをする電流センス回路と、
ランプの動作状態を改善するための信号を送る働きをするフィードバック制御回路と、
フィードバック制御回路に動作可能に接続され、ランプの放射照度スペクトルが制御できるような変調信号を送る働きをするスペクトル整形回路を備える
ことを特徴とする電源。
【請求項3】
変調信号なしの場合と比較した時、変調信号ありの場合では、ランプの放射照度スペクトルの紫外線出力は増加し、赤外線出力は減少する
ことを特徴とする請求項2に記載の電源。
【請求項4】
電流センス回路は光センサーと受光器をさらに備える
ことを特徴とする請求項2に記載の電源。
【請求項5】
ランプに動作可能に接続され、高電圧で前記ランプの事前調整を行い、前記ランプ点灯補助のためのバックアップエネルギーの蓄積を生成するように構成された直列共振回路と、
前記ランプに動作可能に接続され、前記ランプを点灯させる働きを行うイグナイターを備えた点灯システムを備える
ことを特徴とする耐候性試験装置内のランプ操作のための電源。
【請求項6】
前記直列共振回路が高電圧での前記ランプの事前調整を行わず、バックアップエネルギーの蓄積を生成する場合、前記ランプは前記イグナイターに対して前記ランプを点灯させるため第一エネルギー準位を発生するよう要求し、前記直列共振回路が高電圧で前記ランプの事前調整を行い、前記バックアップエネルギー蓄積を生成する場合、前記ランプは第二エネルギー準位を発生するよう要求する(第一エネルギー準位は第二エネルギー準位より高いものとする。)
ことを特徴とする請求項5に記載の電源。
【請求項7】
前記イグナイターが高電圧ワイヤーである
ことを特徴とする請求項5に記載の電源。
【請求項8】
前記イグナイターが、前記ランプ点灯のための静電気放電を行うアークイグナイターである
ことを特徴とする請求項5に記載の電源。
【請求項9】
前記イグナイターが、前記ランプ点灯のための紫外線を放射するUVイグナイターである
ことを特徴とする請求項5に記載の電源。
【請求項10】
耐候性試験装置内で使用するランプを操作するための方法であって、前記ランプを点灯するためのエネルギー準位を事前調整が起こらない状態から下げることができるような直列共振回路からの高電圧を用いて前記ランプの事前調整を行い、
イグナイターを用いて前記ランプを点灯させる
ことを特徴とする方法
【請求項11】
前記イグナイターが高電圧ワイヤーである
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記イグナイターが前記ランプを点灯させるための静電気放電を発生させるアークイグナイターである
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記イグナイターが前記ランプを点灯させるための紫外線を放射するUVイグナイターである
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
耐候性試験装置内のランプを操作するための方法であって、
前記ランプの動作状態を制御する電源を持ったランプを操作し、
予め定義された放射照度スペクトルが発生するようランプの動作状態を改善するスペクトル整形信号を導入する
ことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記スペクトル整形信号が、前記ランプの紫外線出力を増加させ、赤外線出力を低減させるように構成された整形波形電流である
ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項1】
ランプ操作のための電源を備える耐候性試験装置であって、前記電源は、
ランプの動作状態についてフィードバック制御回路に信号を送る働きをする電流センス回路と、
ランプの動作状態を改善するための信号を送る働きをするフィードバック制御回路と、
フィードバック制御回路に動作可能に接続され、ランプの放射照度スペクトルを制御できるような変調信号を送る働きをするスペクトル整形回路
を備えた放射照度スペクトル整形要素と、
ランプに動作可能に接続され、高電圧でランプの事前調整を行い、ランプ点灯補助のためのバックアップエネルギーの蓄積を行うように構成された直列共振回路を備えた点灯システムと、
ランプに動作可能に接続され、ランプ点灯の働きをするイグナイターを備える
ことを特徴とする耐候性試験装置。
【請求項2】
耐候性試験装置内のランプ操作のための電源であって、
ランプの動作状態についてフィードバック制御回路に信号を送る働きをする電流センス回路と、
ランプの動作状態を改善するための信号を送る働きをするフィードバック制御回路と、
フィードバック制御回路に動作可能に接続され、ランプの放射照度スペクトルが制御できるような変調信号を送る働きをするスペクトル整形回路を備える
ことを特徴とする電源。
【請求項3】
変調信号なしの場合と比較した時、変調信号ありの場合では、ランプの放射照度スペクトルの紫外線出力は増加し、赤外線出力は減少する
ことを特徴とする請求項2に記載の電源。
【請求項4】
電流センス回路は光センサーと受光器をさらに備える
ことを特徴とする請求項2に記載の電源。
【請求項5】
ランプに動作可能に接続され、高電圧で前記ランプの事前調整を行い、前記ランプ点灯補助のためのバックアップエネルギーの蓄積を生成するように構成された直列共振回路と、
前記ランプに動作可能に接続され、前記ランプを点灯させる働きを行うイグナイターを備えた点灯システムを備える
ことを特徴とする耐候性試験装置内のランプ操作のための電源。
【請求項6】
前記直列共振回路が高電圧での前記ランプの事前調整を行わず、バックアップエネルギーの蓄積を生成する場合、前記ランプは前記イグナイターに対して前記ランプを点灯させるため第一エネルギー準位を発生するよう要求し、前記直列共振回路が高電圧で前記ランプの事前調整を行い、前記バックアップエネルギー蓄積を生成する場合、前記ランプは第二エネルギー準位を発生するよう要求する(第一エネルギー準位は第二エネルギー準位より高いものとする。)
ことを特徴とする請求項5に記載の電源。
【請求項7】
前記イグナイターが高電圧ワイヤーである
ことを特徴とする請求項5に記載の電源。
【請求項8】
前記イグナイターが、前記ランプ点灯のための静電気放電を行うアークイグナイターである
ことを特徴とする請求項5に記載の電源。
【請求項9】
前記イグナイターが、前記ランプ点灯のための紫外線を放射するUVイグナイターである
ことを特徴とする請求項5に記載の電源。
【請求項10】
耐候性試験装置内で使用するランプを操作するための方法であって、前記ランプを点灯するためのエネルギー準位を事前調整が起こらない状態から下げることができるような直列共振回路からの高電圧を用いて前記ランプの事前調整を行い、
イグナイターを用いて前記ランプを点灯させる
ことを特徴とする方法
【請求項11】
前記イグナイターが高電圧ワイヤーである
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記イグナイターが前記ランプを点灯させるための静電気放電を発生させるアークイグナイターである
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記イグナイターが前記ランプを点灯させるための紫外線を放射するUVイグナイターである
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
耐候性試験装置内のランプを操作するための方法であって、
前記ランプの動作状態を制御する電源を持ったランプを操作し、
予め定義された放射照度スペクトルが発生するようランプの動作状態を改善するスペクトル整形信号を導入する
ことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記スペクトル整形信号が、前記ランプの紫外線出力を増加させ、赤外線出力を低減させるように構成された整形波形電流である
ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−108981(P2013−108981A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−252061(P2012−252061)
【出願日】平成24年11月16日(2012.11.16)
【出願人】(502117583)アトラス・マテリアル・テスティング・テクノロジー・エル・エル・シー (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−252061(P2012−252061)
【出願日】平成24年11月16日(2012.11.16)
【出願人】(502117583)アトラス・マテリアル・テスティング・テクノロジー・エル・エル・シー (10)
【Fターム(参考)】
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