説明

保全検査業務支援システム、サーバおよびプログラム

【課題】鉄道構造物の保全検査業務を支援し、異常時に社会的影響を最小限に留めて、迅速な復旧を図る。
【解決手段】サーバ3は、センサから送信される情報に基づいて折返し区間ごとに区間損傷度を算出する損傷度算出プログラム31、折返し区間ごとに復旧優先度を算出する復旧優先度算出プログラム32、補修区間ごとに補修順位を算出する補修順位算出プログラム33、巡視区間の巡回順序を示す巡視経路を算出する巡視経路算出プログラム34、検査員による巡視の結果を受信し、区間損傷度を更新する損傷度更新プログラム35、地理情報システムで使われるデータを記憶する地理データベース36、鉄道構造物に関するデータを記憶する構造物情報データベース37、センサに関するデータを記憶するセンサデータベース38、異常時に保全検査業務を支援するための様々なデータを記憶する異常管理データベース39を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道構造物の保全業務および検査業務を支援する保全検査業務支援システム等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道構造物の保全業務には、構造物全体または部分の機能が大きく損なう前に修繕や取替えを行う予防修繕、構造物全体または部分の機能が低下して使用に支障することが判明された時点で補修を行う事後保全がある。
また、鉄道構造物の検査業務には、鉄道構造物の種別ごとに決められた周期によって行う定期検査、気温上昇時など必要に応じて行う随時検査、地震など異常時に緊急で行う異常時検査がある。
以下では、鉄道構造物の保全業務および検査業務を総称して、保全検査業務と呼ぶこととする。
【0003】
一般に、鉄道構造物の検査は多大な労力と時間がかかるところ、異常時検査では検査対象が大規模になる為、何らかの基準によって優先順位をつけることが望ましい。同様に、異常時において、補修を必要とする鉄道構造物の数が多い場合、何らかの基準によって優先順位をつけることが望ましい。
特許文献1では、センサからのデータによって得られる各下水道管の損傷度等を算出し、補修優先順位を決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−183274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、鉄道構造物の保全検査業務では、列車が運休することによる社会的影響を考慮して、優先順位を定める必要がある。ここで、社会的影響は、鉄道構造物の場合であれば、鉄道構造物の沿線を走行する列車の利用者数などに基づいて定量化される。
特許文献1では、各下水管が使用できないことによる社会的影響を考慮せずに補修優先順位を決定している為、特許文献1の技術を鉄道構造物の保全検査業務に適用することは適切ではない。
【0006】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、鉄道構造物の保全検査業務を支援し、異常時に社会的影響を最小限に留めて、迅速な復旧を図る保全検査業務支援システム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために第1の発明は、サーバと表示装置とから構成され、センサを利用して鉄道構造物の保全検査業務を支援する保全検査業務支援システムであって、前記サーバは、折り返し設備のある駅ごとに区分けされた鉄道路線の区間を折返し区間とし、前記折返し区間に紐付けて前記鉄道構造物の情報を記憶する鉄道構造物テーブルと、前記鉄道構造物に紐付けて前記センサの情報を記憶するセンサテーブルと、前記折返し区間ごとに運休時の影響度の情報を記憶する影響度テーブルと、前記センサから送信される情報に基づいて、前記折返し区間ごとに区間損傷度を算出する損傷度算出手段と、前記影響度テーブルに基づいて、前記折返し区間ごとに復旧優先度を算出する復旧優先度算出手段と、前記区間損傷度が補修を必要とする値の折返し区間を補修区間とし、前記復旧優先度および前記鉄道構造物テーブルに基づいて、前記補修区間ごとに補修順位を算出する補修順位算出手段と、前記区間損傷度が巡視を必要とする値の折返し区間を巡視区間とし、前記復旧優先度および前記鉄道構造物テーブルに基づいて、前記巡視区間の巡回順序を示す巡視経路を算出する巡視経路算出手段と、前記補修順位および前記巡視経路を前記表示装置に送信する送信手段と、を具備することを特徴とする保全検査業務支援システムである。
【0008】
第1の発明によって、鉄道構造物の保全検査業務を支援し、異常時に社会的影響を最小限に留めて、迅速な復旧を図ることができる。
特に、補修区間(補修を必要とする折返し区間)に対して補修順位を算出し、かつ巡視区間(検査員が巡回して目視による検査を行うことを必要とする折返し区間)に対して巡視経路を算出するので、保全業務と検査業務を一体的に支援することができる。
また、折返し区間(折り返し設備のある駅ごとに区分けされた鉄道路線の区間)ごとに、補修順位および巡視経路を算出するので、折返し運行を前提とした迅速な復旧を図ることができる。
【0009】
第1の発明は、前記巡視区間の巡視を行う検査員が待機する区所の情報を記憶する区所テーブル、を更に具備し、前記巡視経路算出手段は、前記区所ごとに前記巡視経路を算出することが望ましい。
これによって、実際の検査員の配置状況に応じて、適切な巡視経路を算出することができる。
【0010】
また、第1の発明は、前記検査員による巡視結果を受信し、前記区間損傷度を更新する損傷度更新手段、を更に具備することが望ましい。
これによって、検査員の巡視結果に基づく正確な補修順位に基づいて、各鉄道構造物の保全検査業務を遂行することができる。
【0011】
また、第1の発明では、前記巡視経路は、前記巡視区間同士を結ぶ道路を含むものであり、前記巡視経路算出手段は、更に、道路情報に基づいて前記巡視経路を算出することが望ましい。
これによって、巡視区間が隣接していない場合であっても、道路を含む巡視経路全体の経路情報を提供することができる。
【0012】
第2の発明は、センサを利用して鉄道構造物の保全検査業務を支援するサーバであって、折り返し設備のある駅ごとに区分けされた鉄道路線の区間を折返し区間とし、前記折返し区間に紐付けて前記鉄道構造物の情報を記憶する鉄道構造物テーブルと、前記鉄道構造物に紐付けて前記センサの情報を記憶するセンサテーブルと、前記折返し区間ごとに運休時の影響度の情報を記憶する影響度テーブルと、前記センサから送信される情報に基づいて、前記折返し区間ごとに区間損傷度を算出する損傷度算出手段と、前記影響度テーブルに基づいて、前記折返し区間ごとに復旧優先度を算出する復旧優先度算出手段と、前記区間損傷度が補修を必要とする値の折返し区間を補修区間とし、前記復旧優先度および前記鉄道構造物テーブルに基づいて、前記補修区間ごとに補修順位を算出する補修順位算出手段と、前記区間損傷度が巡視を必要とする値の折返し区間を巡視区間とし、前記復旧優先度および前記鉄道構造物テーブルに基づいて、前記巡視区間の巡回順序を示す巡視経路を算出する巡視経路算出手段と、を具備することを特徴とするサーバである。
【0013】
第3の発明は、コンピュータを第2の発明のサーバとして機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、鉄道構造物の保全検査業務を支援し、異常時に社会的影響を最小限に留めて、迅速な復旧を図る保全検査業務支援システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】保全検査業務支援システム1の概要を示す図
【図2】サーバ3(表示装置4)のハードウエア構成図
【図3】サーバ3のソフトウエア構成図
【図4】鉄道構造物テーブル41の一例を示す図
【図5】センサテーブル51の一例を示す図
【図6】算出結果テーブル61の一例を示す図
【図7】影響度テーブル71の一例を示す図
【図8】区所テーブル81の一例を示す図
【図9】損傷度算出処理の詳細を示すフローチャート
【図10】復旧優先度算出処理の詳細を示すフローチャート
【図11】補修順位算出処理の詳細を示すフローチャート
【図12】巡視経路算出処理の詳細を示すフローチャート
【図13】巡視経路の表示例を示す図
【図14】損傷度更新処理の詳細を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、保全検査業務支援システム1の概要を示す図である。図1に示すように、保全検査業務支援システム1は、センサネットワーク2、サーバ3、表示装置4から構成されている。センサネットワーク2、サーバ3、表示装置4は、ネットワーク5を介して接続される。
【0017】
センサネットワーク2は、センサ11a、センサ11b、センサ11c、無線装置12a、無線装置12b、車上装置13、中継基地局14、RFID(Radio Frequency IDentification)タグ15、読取装置16等から構成される。
【0018】
センサ11a、センサ11b、センサ11cは、鉄道構造物に設置され、各種の計測データを収集する。
無線装置12a、無線装置12bは、鉄道構造物に設置され、センサ11a、センサ11bとリード線などで接続される。
【0019】
無線装置12aは、無線通信(例えば、無線LAN(Local Area Network)、ZigBee、特定小電力無線通信等)を行い、中継基地局14と接続される。無線装置12bは、無線通信を行い、車上装置13と接続される。車上装置13は、列車内に設置され、無線通信を行い、中継基地局14と接続される。中継基地局14は、線路沿線に設置され、公衆通信網を利用した有線通信を行い、ネットワーク5を介してサーバ3と接続される。RFIDタグ15は、センサ11cとリード線などで接続される。RFIDタグ15は、読取装置16と近距離の無線通信を行う。読取装置16は、携帯電話網を利用した無線通信を行い、ネットワーク5を介してサーバ3と接続される。読取装置16を使用する場合、検査員がサーバ3に直接データを登録することも可能である。
【0020】
設置されるセンサは、対象とする鉄道構造物によって様々な種類がある。
例えば、ラーメン高架橋の場合、機械的センサを用いて、地震時に柱端部に生じる最大の柱の傾き(最大応答部材角)を測定することで、柱の損傷レベルを評価することが可能となる(特開2008−215962号公報)。
また、例えば、橋梁の場合、橋梁の異常な状態を検出可能なアンテナ部を備え、橋脚などに設置される無線タグを用いて、橋梁の異常な状態を検出することが可能となる(特開2007−271362号公報)。
また、例えば、トンネル、架線柱などの場合、歪ゲージを用いて、ひび割れを検知することが可能となる(特開2008−134117号公報)。
【0021】
その他、対象とする鉄道構造物に応じて、GPSセンサ(静的な変位の計測)、加速度センサ(たわみ、振幅の計測)、電位センサ(中性化、塩分量の計測)、温度センサ(火災の検知)、PHセンサ(中性化の計測)、水圧センサ(増水の検知)などが設置される。
【0022】
計測データの伝送経路は、センサが設置された環境によって様々である。
センサ11aは、センサ11aとリード線で接続される無線装置12aが中継基地局14と通信できる環境(線路沿線であって障害物が少ない環境)に設置された例である。この場合、計測データは、センサ11a、無線装置12a、中継基地局14、ネットワーク5、サーバ3の順に伝送される。
また、センサ11bは、センサ11bとリード線で接続される無線装置12bが中継基地局14と通信できない環境(トンネル内や障害物が多い環境)に設置された例である。この場合、計測データは、センサ11b、無線装置12b、車上装置13、中継基地局14、ネットワーク5、サーバ3の順に伝送される。
また、センサ11cは、対象の鉄道構造物が検査員による目視を要する例である。検査員が現地まで行くので、読取装置16を用いてRFIDタグ15に蓄積された計測データを読み取ることができる。この場合、計測データは、センサ11c、RFIDタグ15、読取装置16、ネットワーク5、サーバ3の順に伝送される。
尚、ネットワーク5は、検査員を介すことで不要とすることも可能である。
【0023】
サーバ3は、例えば、保全検査業務全般を指揮するための中央指令所などに設置される。サーバ3は、計測データを一元管理し、後述するように、異常時に保全検査業務を支援するための様々な処理を行う。
表示装置4は、中央指令所、および検査員が待機する区所などに設置される。表示装置4は、サーバ3から提供される情報を表示する。例えば、表示装置4は、地理情報システム(GIS:Geographic Information System)上における計測データや、保全検査業務に必要な各種の情報を表示する。
【0024】
図2は、サーバ3(表示装置4)のハードウエア構成図である。尚、図2のハードウエア構成は一例であり、用途、目的に応じて様々な構成を採ることが可能である。
【0025】
サーバ3(表示装置4)は、制御部21、記憶部22、メディア入出力部23、通信制御部24、入力部25、表示部26、周辺機器I/F部27等が、バス28を介して接続される。
【0026】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0027】
CPUは、記憶部22、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス28を介して接続された各装置を駆動制御し、サーバ3(表示装置4)が行う後述する処理を実現する。
ROMは、不揮発性メモリであり、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。
RAMは、揮発性メモリであり、記憶部22、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部21が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0028】
記憶部22は、HDD(ハードディスクドライブ)であり、制御部21が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OS(オペレーティングシステム)に相当する制御プログラムや、後述する処理をコンピュータに実行させるためのアプリケーションプログラムが格納されている。
これらの各プログラムコードは、制御部21により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて各種の手段として実行される。
【0029】
メディア入出力部23(ドライブ装置)は、データの入出力を行い、例えば、CDドライブ(−ROM、−R、−RW等)、DVDドライブ(−ROM、−R、−RW等)等のメディア入出力装置を有する。
通信制御部24は、通信制御装置、通信ポート等を有し、コンピュータとネットワーク間の通信を媒介する通信インタフェースであり、ネットワークを介して、他のコンピュータ間との通信制御を行う。ネットワークは、有線、無線を問わない。
【0030】
入力部25は、データの入力を行い、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置を有する。
入力部25を介して、コンピュータに対して、操作指示、動作指示、データ入力等を行うことができる。
表示部26は、CRTモニタ、液晶パネル等のディスプレイ装置、ディスプレイ装置と連携してコンピュータのビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)を有する。
【0031】
周辺機器I/F(インタフェース)部27は、コンピュータに周辺機器を接続させるためのポートであり、周辺機器I/F部27を介してコンピュータは周辺機器とのデータの送受信を行う。周辺機器I/F部27は、USBやIEEE1394やRS−232C等で構成されており、通常複数の周辺機器I/Fを有する。周辺機器との接続形態は有線、無線を問わない。
バス28は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
【0032】
図3は、サーバ3のソフトウエア構成図である。サーバ3の記憶部22には、損傷度算出プログラム31、復旧優先度算出プログラム32、補修順位算出プログラム33、巡視経路算出プログラム34、損傷度更新プログラム35等が制御部21によって実行可能な形式で記憶されている。サーバ3の制御部21は、これらのプログラムを実行することによってサーバ3の各手段となる。また、サーバ3の記憶部22には、地理データベース36、構造物情報データベース37、センサデータベース38、異常管理データベース39等が制御部21によってアクセス可能(読込および書込可能)な形式で記憶されている。
【0033】
ここで、本発明の実施の形態において用いる用語の意味を説明する。
折返し区間とは、折り返し設備のある駅ごとに区分けされた鉄道路線の区間を意味する。例えば、異常時に、隣接する折返し区間内に存在する一部の鉄道構造物が列車の運行に支障がある場合であっても、対象の折返し区間内に存在する全ての鉄道構造物が列車の運行に支障がない場合、折り返し設備を用いることで、対象の折返し区間内では列車の折り返し運行が可能である。
補修区間とは、補修を必要とする折返し区間を意味する。補修区間には、補修を要する鉄道構造物が少なくとも一つ存在する。
巡視区間とは、巡視(検査員が巡回して目視による検査を行うこと)を必要とする折返し区間を意味する。巡視区間には、巡視を要する鉄道構造物が少なくとも一つ存在する。
【0034】
地理データベース36は、地理情報システム(GIS)で使われるデータを記憶する。例えば、地理データベース36には、地図や空中写真などの図形データ、地物に関連する属性データ、利用される測地系、投影法、縮尺、精度などのメタデータなどが記憶される。
【0035】
構造物情報データベース37は、鉄道構造物に関するデータを記憶する。例えば、構造物情報データベース37には、図4を参照して後述する鉄道構造物テーブル41などが含まれる。
【0036】
センサデータベース38は、センサに関するデータを記憶する。例えば、センサデータベース38には、図5を参照して後述するセンサテーブル51などが含まれる。
【0037】
異常管理データベース39は、異常時に保全検査業務を支援するための様々なデータを記憶する。例えば、異常管理データベース39には、図6を参照して後述する算出結果テーブル61、図7を参照して後述する影響度テーブル71、図8を参照して後述する区所テーブル81などが含まれる。
【0038】
損傷度算出プログラム31は、センサから送信される情報に基づいて、折返し区間ごとに区間損傷度を算出する損傷度算出処理を実現するためのプログラムである。損傷度算出処理は、図9を参照して後述する。
【0039】
復旧優先度算出プログラム32は、影響度テーブル71に基づいて、折返し区間ごとに復旧優先度を算出する復旧優先度算出処理を実現するためのプログラムである。復旧優先度算出処理は、図10を参照して後述する。
【0040】
補修順位算出プログラム33は、復旧優先度算出処理によって算出された復旧優先度、および鉄道構造物テーブル41に基づいて、補修区間ごとに補修順位を算出する補修順位算出処理を実現するためのプログラムである。補修順位算出処理は、図11を参照して後述する。
【0041】
巡視経路算出プログラム34は、復旧優先度算出処理によって算出された復旧優先度、および鉄道構造物テーブル41に基づいて、巡視区間の巡回順序を示す巡視経路を算出する巡視経路算出処理を実現するためのプログラムである。巡視経路算出処理は、図12を参照して後述する。
【0042】
損傷度更新プログラム35は、検査員による巡視の結果を受信し、区間損傷度を更新する損傷度更新処理を実現するためのプログラムである。損傷度更新処理は、図14を参照して後述する。
【0043】
補修順位算出処理によって算出された補修順位、および巡視経路算出処理によって算出された巡視経路等は、サーバ3の通信制御部24によって表示装置4に送信され、表示装置4の表示部26に表示される。
【0044】
尚、図4には示していないが、サーバ3の記憶部22には、折返し区間に含まれる駅が識別可能な路線図データなども記憶されている。また、その他、保全検査業務に必要な各種データが記憶されている。
【0045】
図4は、鉄道構造物テーブル41の一例を示す図である。鉄道構造物テーブル41は、折返し区間に紐付けて鉄道構造物の情報を記憶する。鉄道構造物テーブル41には、構造物ID42、緯度・経度43、折返し区間ID44、重要度45、補修コスト46、構造物損傷度47などのデータが含まれる。
【0046】
構造物ID42は、鉄道構造物の識別番号である。
緯度・経度43は、地理情報システムにおける鉄道構造物の緯度と経度である。尚、鉄道構造物テーブル41には、緯度・経度43に代えて、あるいは緯度・経度43と合わせて、鉄道構造物が存在するキロ程(起点からの線路延長)の情報を記憶しても良い。
折返し区間ID44は、折返し区間の識別番号である。
重要度45は、鉄道構造物の重要点検の度合いを示す値である。例えば、過去に発生した異常時に損傷を受けた鉄道構造物などは、重要度45の値を高く設定する。
補修コスト46は、鉄道構造物の補修に要する時間、費用などを示す値である。補修コスト46は、例えば、補修に要する時間と費用を別々に数値化したものであっても良いし、所定の重み付けをすることで補修に要する時間と費用の両方を合わせて数値化したものであっても良い。
構造物損傷度47は、異常時に算出される鉄道構造物の損傷の度合いを示す値である。構造物損傷度47は、図9に示す損傷度算出処理によって算出される。
また、鉄道構造物テーブル41には、その他の鉄道構造物に関するデータが含まれる。
【0047】
図5は、センサテーブル51の一例を示す図である。センサテーブル51は、鉄道構造物に紐付けてセンサの情報を記憶する。センサテーブル51には、センサID52、構造物ID53、センサ種別54などのデータが含まれる。
【0048】
センサID52は、センサの識別番号である。
構造物ID53は、構造物ID42と同種のデータである。サーバ3は、構造物ID53とセンサID52とを紐付けて記憶することで、センサがどの鉄道構造物に設置されているかを管理することができる。
センサ種別54は、センサから送信される計測データの内容を特定するための種別である。センサ種別54は、例えば、GPSセンサであれば「01」、加速度センサであれば「02」、電位センサであれば「03」、温度センサであれば「04」などのように定義されたデータである。
また、センサテーブル51には、その他のセンサに関するデータが含まれる。
【0049】
図6は、算出結果テーブル61の一例を示す図である。算出結果テーブル61は、後述する処理による算出結果の情報を記憶する。算出結果テーブル61には、折返し区間ID62、復旧優先度63、区間損傷度64、補修順位65、巡視経路順位66などのデータが含まれる。
【0050】
折返し区間ID62は、折返し区間ID44と同種のデータである。サーバ3は、折返し区間ID62ごとに算出結果を記憶することで、折返し区間ごとに保全検査業務を支援するための情報を提供することができる。
復旧優先度63は、復旧優先度算出処理の算出結果である。復旧優先度63は、社会的影響が大きい折返し区間ほど高い値が設定される。
【0051】
区間損傷度64は、損傷度算出処理の算出結果である。区間損傷度64は、折返し区間に含まれる鉄道構造物の構造物損傷度47に応じて設定される。区間損傷度64が低い折返し区間は、優先して巡視を行う。これは、復旧に時間を要さない折返し区間を優先して復旧させる為である。
本発明の実施の形態では、区間損傷度64は、「小」、「中」、「大」の3段階で定義されるものとする。区間損傷度64の値が「小」の折返し区間は、巡視区間として扱われる。区間損傷度64の値が「中」の折返し区間は、補修区間として扱われる。区間損傷度64の値が「大」の折返し区間は、早期の復旧が困難と判断し、本発明の実施の形態では対象外とする。通常、早期の復旧が困難な区間に対しては、中長期的な復旧計画が立案される。
【0052】
補修順位65は、補修順位算出処理の算出結果である。補修順位65は、補修を行う順番を示すものである。
巡視経路順位66は、巡視経路算出処理の算出結果である。巡視経路順位66は、区所ごとの巡視経路の順番を示すものである。
また、算出結果テーブル61には、その他、後述する処理による算出結果のデータが含まれる。
【0053】
図7は、影響度テーブル71の一例を示す図である。影響度テーブル71は、折返し区間ごとに運休時の影響度の情報を記憶する。影響度テーブル71には、折返し区間ID72、乗換駅有無73、代替経路有無74、運休時損失75、運休時影響人数76などのデータが含まれる。
【0054】
折返し区間ID72は、折返し区間ID44と同種のデータである。サーバ3は、折返し区間ID72ごとに運休時の影響度の情報を記憶することで、折返し区間ごとに保全検査業務の優先順位を決定することができる。
乗換駅有無73は、対象の折返し区間に対して、乗り換えが可能な駅が存在するかどうかを示すものである。
代替経路有無74は、対象の折返し区間に対して、他の交通手段(他社の路線、バス等)による代替経路が存在するかどうかを示すものである。
運休時損失75は、対象の折返し区間が運休したときの損失額を示すもの(例えば、一日当たりの運賃収入など)である。
運休時影響人数76は、対象の折返し区間が運休したときの影響人数を示すもの(例えば、一日当たりの乗客数など)である。
また、影響度テーブル71には、その他、必要な社会的影響を示すデータが含まれる。
【0055】
図8は、区所テーブル81の一例を示す図である。区所テーブル81は、巡視区間の巡視を行う検査員が待機する区所の情報を記憶する。区所テーブル81には、区所ID82、緯度・経度83、検査員人数84などのデータが含まれる。
【0056】
区所ID82は、区所の識別番号である。
緯度・経度83は、地理情報システムにおける区所の緯度と経度である。尚、区所テーブル81には、緯度・経度83に代えて、あるいは緯度・経度83と合わせて、鉄道構造物が存在するキロ程(起点からの線路延長)の情報を記憶しても良い。
検査員人数84は、対象の区所に現在待機している検査員の人数である。
また、区所テーブル81には、その他の区所に関するデータが含まれる。
【0057】
図9は、損傷度算出処理の詳細を示すフローチャートである。図9に示すフローチャートは、地震などの異常が発生したときにサーバ3によって実行される。尚、サーバ3は、随時センサネットワーク2から計測データを受信し、記憶部22に最新の計測データを記憶しているものとする。
【0058】
図9に示すように、サーバ3の制御部21は、処理対象として、折返し区間を一つ選択する(S101)。次に、サーバ3の制御部21は、処理対象として、S101において選択した折返し区間内の構造物を一つ選択する(S102)。図4を参照して前述したように、鉄道構造物テーブル41は、折返し区間に紐付けて鉄道構造物の情報を記憶しているので、サーバ3の制御部21は、鉄道構造物テーブル41を検索することで、折返し区間内の構造物を特定することができる。
【0059】
次に、サーバ3の制御部21は、S102において選択した構造物に関する計測データを取得し、構造物損傷度を算出し、算出結果を鉄道構造物テーブル41の構造物損傷度47に記憶する(S103)。構造物損傷度は、計測データの内容に応じて(センサ種別54にて判別可能)、前述した特開2008−215962号公報、特開2007−271362号公報、特開2008−134117号公報等に記載の技術を適用することで算出することができる。
【0060】
本発明の実施の形態では、構造物損傷度は、例えば、区間損傷度と同様、「小」、「中」、「大」の3段階で定義する。構造物損傷度の値が「小」の構造物は、巡視による検査を行う。構造物損傷度の値が「中」の構造物は、補修を行う。構造物損傷度の値が「大」の構造物は、短時間での補修が困難と判断し、本発明の実施の形態では対象外とする。
【0061】
次に、サーバ3の制御部21は、S102において選択した構造物が、S101において選択した折返し区間に含まれる最後の構造物かどうかを確認する(S104)。最後の構造物ではない場合(S104のNo)、サーバ3の制御部21は、S102から繰り返す。最後の構造物の場合(S104のYes)、サーバ3の制御部21は、S105に進む。
【0062】
次に、サーバ3の制御部21は、S103において算出した構造物損傷度に基づいて、区間損傷度を算出し、算出結果を算出結果テーブル61の区間損傷度64に記憶する(S105)。
【0063】
サーバ3の制御部21は、例えば、S103において算出した構造物損傷度の全てが「小」の場合には区間損傷度に「小」を設定、構造物損傷度の少なくとも一つが「大」の場合には区間損傷度に「大」を設定、それ以外の場合には区間損傷度に「中」を設定する。
また、サーバ3の制御部21は、例えば、S103において算出した構造物損傷度の平均値などの各種の統計値に基づいて、区間損傷度を設定するようにしても良い。
【0064】
次に、サーバ3の制御部21は、S101において選択した折返し区間が、最後の折返し区間かどうかを確認する(S106)。最後の折返し区間ではない場合(S106のNo)、サーバ3の制御部21は、S101から繰り返す。最後の折返し区間の場合(S106のYes)、サーバ3の制御部21は、処理を終了する。
【0065】
図10は、復旧優先度算出処理の詳細を示すフローチャートである。図10に示すフローチャートは、地震などの異常が発生したときにサーバ3によって実行される。図9と図10に示す処理は、どちらを先に実行しても良く、また並列して行っても良い。
【0066】
図10に示すように、サーバ3の制御部21は、処理対象として、折返し区間を一つ選択する(S201)。次に、サーバ3の制御部21は、S201において選択した折返し区間に関する影響度(影響度テーブル71の情報)を取得し、復旧優先度を算出し、算出結果を算出結果テーブル61の復旧優先度63に記憶する(S202)。
【0067】
復旧優先度は、影響度テーブル71の乗換可否73、代替経路有無74、運休時損失75、運休時影響人数76等に基づいて算出する。例えば、乗り換えが可能な駅が存在する折返し区間、および他の交通手段(他社の路線、バス等)による代替経路が存在する折返し区間については、運休をしたとしても、乗客が移動不可能ではない為、復旧優先度を低く設定する。また、例えば、運休時に乗客が移動不可能になり、かつ影響人数が多い折返し区間については、復旧優先度の値を高く設定する。尚、復旧優先度の設定基準は、これらの例に限定されるものではなく、サーバ3の制御部21は、社会的影響を最小限に留めることができるように復旧優先度を設定する。
【0068】
次に、サーバ3の制御部21は、S201において選択した折返し区間が、最後の折返し区間かどうかを確認する(S203)。最後の折返し区間ではない場合(S203のNo)、サーバ3の制御部21は、S201から繰り返す。最後の折返し区間の場合(S203のYes)、サーバ3の制御部21は、処理を終了する。
【0069】
図11は、補修順位算出処理の詳細を示すフローチャートである。図11に示すフローチャートは、図9と図10の処理が終了した後、サーバ3によって実行される。
【0070】
サーバ3の制御部21は、算出結果テーブル61を検索し、補修区間を取得する(S301)。前述したように、補修区間は、区間損傷度64の値が「中」の折返し区間である。サーバ3の制御部21は、区間損傷度64の値が「中」であることを検索条件として算出結果テーブル61を検索し、補修区間を示す折返し区間ID62の集合を検索結果として取得し、RAMに記憶する。
【0071】
次に、サーバ3の制御部21は、S301において取得した折返し区間ID62の集合に対して補修順位を算出し、算出結果を算出結果テーブル61の補修順位65に記憶する(S302)。
【0072】
補修順位は、例えば、鉄道構造物テーブル41の補修コスト46を参照し、補修コスト46の昇順とする。また、例えば、復旧優先度が非常に高い補修区間(例えば、所定の閾値を設けて判定)については、補修順位の入れ替えを行う、または補修コスト46に関わらず、並行して作業を進めることを示す順位(例えば、「0」など)を設定する。尚、補修順位の設定基準は、これらの例に限定されるものではなく、サーバ3の制御部21は、社会的影響を最小限に留めながら、迅速に復旧できる折返し区間を優先して補修順位を設定する。
【0073】
次に、サーバ3の制御部21は、算出した補修順位のリスト(例えば、補修順位の昇順に補修区間を整列してリスト化したデータ)を中央指令所に設定されている表示装置4に送信する(S303)。中央指令所の表示装置4の制御部21は、受信した補修順位のリストを表示部26に表示する。これによって、鉄道構造物の損傷具合、運休時の社会的影響、および補修の容易さを考慮して算出された補修順位に基づいて、各鉄道構造物の保全業務を遂行することができる。特に、折返し区間ごとに補修順位が算出されるので、折返し運行を前提とした迅速な復旧を図ることができる。
【0074】
図12は、巡視経路算出処理の詳細を示すフローチャートである。図12に示すフローチャートは、図9と図10の処理が終了した後、サーバ3によって実行される。また、図11と図12に示す処理は、どちらを先に実行しても良く、また並列して行っても良い。
【0075】
サーバ3の制御部21は、算出結果テーブル61を検索し、巡視区間を取得する(S401)。前述したように、巡視区間は、区間損傷度64の値が「小」の折返し区間である。サーバ3の制御部21は、区間損傷度64の値が「小」であることを検索条件として算出結果テーブル61を検索し、巡視区間を示す折返し区間ID62の集合を検索結果として取得し、RAMに記憶する。
【0076】
次に、サーバ3の制御部21は、S401において取得した折返し区間ID62の集合に対して巡視経路を算出し、算出結果を算出結果テーブル61の巡視経路順位66に記憶する(S402)。
【0077】
最初に、サーバ3の制御部21は、区所テーブル81の緯度・経度83、検査員人数84などに基づいて、どの巡視区間をどの区所に担当させるのかを決定する。例えば、巡視区間が所定の半径内に存在することを前提として、検査員人数84に応じて分散して担当させる。また、例えば、検査に必要な人数に対して、検査員人数84が不足している区所に対しては巡視区間を担当させない。
次に、サーバ3の制御部21は、区所テーブル81の緯度・経度83、鉄道構造物テーブル41の重要度45、算出結果テーブル61の復旧優先度63に基づいて、区所ごとに、巡視区間の検査順序を決定する。例えば、重要度45を参照し、過去に損傷が発生した鉄道構造物がある巡視区間は優先的に巡視を行うように検査順序を決定する。また、例えば、復旧優先度63を参照し、復旧優先度が高い順に巡視を行うように検査順序を決定する。
隣接していない巡視区間を連続して検査する場合、サーバ3の制御部21は、巡視区間同士を結ぶ道路を含めた巡視経路を算出する。ここで、サーバ3の制御部21は、道路情報(渋滞、通行止めなどの情報)を考慮して巡視経路を算出する。
尚、巡視経路の算出基準は、これらの例に限定されるものではなく、サーバ3の制御部21は、社会的影響を最小限に留めながら、過去の経験、および現在の道路情報等を考慮して巡視経路を算出する。
【0078】
次に、サーバ3の制御部21は、算出した巡視経路を該当区所に設定されている表示装置4に送信する(S403)。区所の表示装置4の制御部21は、受信した補修順位のリストを表示部26に表示する。これによって、運休時の社会的影響、過去の経験、および現在の道路情報等を考慮して算出された巡視経路に基づいて、各鉄道構造物の検査業務を遂行することができる。特に、折返し区間ごとに巡視経路順位が算出されるので、折返し運行を前提とした迅速な復旧を図ることができる。
【0079】
図13は、巡視経路の表示例を示す図である。
図13に示す例では、W線のA駅からD駅までが折返し区間となっている。同様に、X線のA駅からE駅、Y線のG駅からH駅、Z線のF駅からA駅までが折返し区間となっている。
経路1は、区所を出発してW線のA駅からD駅までの検査を行う線路上の経路である。経路2は、W線のD駅からY線のG駅まで移動する道路上の経路である。経路3は、Y線のG駅からH駅までの検査を行う線路上の経路である。経路4は、Y線のH駅からZ線のF駅まで移動する道路上の経路である。経路5は、Z線のF駅からA駅までの検査を行う線路上の経路である。経路6は、X線のA駅からE駅までの検査を行う線路上の経路である。
【0080】
図14は、損傷度更新処理の詳細を示すフローチャートである。図14に示すフローチャートは、図12の処理が終了した後、検査員が巡視結果をサーバ3に送信したとき、サーバ3によって実行される。
【0081】
図14に示すように、サーバ3の制御部21は、検査員が備える携帯端末などから巡視結果を受信する(S501)。巡視結果は、例えば、構造物損傷度の値であっても良いし、センサでは計測できない各種のデータであっても良い。
【0082】
次に、サーバ3の制御部21は、巡視結果に基づいて、区間損傷度、補修順位、巡視経路を算出し、算出結果を算出結果テーブル61の区間損傷度64、補修順位65に記憶する(S502)。区間損傷度、補修順位、巡視経路は、図9のS105、図11のS302、図12のS402と同様である。
【0083】
次に、サーバ3の制御部21は、算出した補修順位のリストを中央指令所に設置されている表示装置4に送信する(S503)。中央指令所の表示装置4の制御部21は、受信した補修順位のリストを表示部26に表示する。これによって、検査員の巡視結果に基づく正確な補修順位に基づいて、中央指令所における各鉄道構造物の保全業務を遂行することができる。
【0084】
次に、サーバ3の制御部21は、算出した巡視経路を該当区所に設置されている表示装置4に送信する(S504)。区所の表示装置4の制御部21は、受信した補修順位のリストを表示部26に表示する。これによって、検査員の巡視結果に基づく正確な補修順位に基づいて、区所における各鉄道構造物の検査業務を遂行することができる。
【0085】
以上、本発明の実施の形態では、補修区間(補修を必要とする折返し区間)に対して補修順位を算出し、かつ巡視区間(検査員が巡回して目視による検査を行うことを必要とする折返し区間)に対して巡視経路を算出するので、保全業務と検査業務を一体的に支援することができる。
【0086】
また、折返し区間(折り返し設備のある駅ごとに区分けされた鉄道路線の区間)ごとに、補修順位および巡視経路を算出するので、折返し運行を前提とした迅速な復旧を図ることができる。
【0087】
また、社会的影響度の情報を記憶する影響度テーブル、補修コスト等を記憶する鉄道構造物テーブルを備えるので、運休時の社会的影響、および補修の容易さ等を考慮して算出された補修順位に基づいて、各鉄道構造物の保全業務を遂行することができる。
【0088】
また、社会的影響度の情報を記憶する影響度テーブル、過去の損傷履歴を示す重要度等を記憶する鉄道構造物テーブルを備えるので、運休時の社会的影響、および過去の経験等を考慮して算出された巡視経路に基づいて、各鉄道構造物の検査業務を遂行することができる。
【0089】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る保全検査業務支援システム等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0090】
1………保全検査業務支援システム
2………センサネットワーク
3………サーバ
4………表示装置
5………ネットワーク
31………損傷度算出プログラム
32………復旧優先度算出プログラム
33………補修順位算出プログラム
34………巡視経路算出プログラム
35………損傷度更新プログラム
36………地理データベース
37………構造物情報データベース
38………センサデータベース
39………異常管理データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバと表示装置とから構成され、センサを利用して鉄道構造物の保全検査業務を支援する保全検査業務支援システムであって、
前記サーバは、
折り返し設備のある駅ごとに区分けされた鉄道路線の区間を折返し区間とし、前記折返し区間に紐付けて前記鉄道構造物の情報を記憶する鉄道構造物テーブルと、
前記鉄道構造物に紐付けて前記センサの情報を記憶するセンサテーブルと、
前記折返し区間ごとに運休時の影響度の情報を記憶する影響度テーブルと、
前記センサから送信される情報に基づいて、前記折返し区間ごとに区間損傷度を算出する損傷度算出手段と、
前記影響度テーブルに基づいて、前記折返し区間ごとに復旧優先度を算出する復旧優先度算出手段と、
前記区間損傷度が補修を必要とする値の折返し区間を補修区間とし、前記復旧優先度および前記鉄道構造物テーブルに基づいて、前記補修区間ごとに補修順位を算出する補修順位算出手段と、
前記区間損傷度が巡視を必要とする値の折返し区間を巡視区間とし、前記復旧優先度および前記鉄道構造物テーブルに基づいて、前記巡視区間の巡回順序を示す巡視経路を算出する巡視経路算出手段と、
前記補修順位および前記巡視経路を前記表示装置に送信する送信手段と、
を具備することを特徴とする保全検査業務支援システム。
【請求項2】
前記巡視区間の巡視を行う検査員が待機する区所の情報を記憶する区所テーブル、を更に具備し、
前記巡視経路算出手段は、前記区所ごとに前記巡視経路を算出することを特徴とする請求項1に記載の保全検査業務支援システム。
【請求項3】
前記検査員による巡視結果を受信し、前記区間損傷度を更新する損傷度更新手段、
を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の保全検査業務支援システム。
【請求項4】
前記巡視経路は、前記巡視区間同士を結ぶ道路を含むものであり、
前記巡視経路算出手段は、更に、道路情報に基づいて前記巡視経路を算出することを特徴とする請求項1に記載の保全検査業務支援システム。
【請求項5】
センサを利用して鉄道構造物の保全検査業務を支援するサーバであって、
折り返し設備のある駅ごとに区分けされた鉄道路線の区間を折返し区間とし、前記折返し区間に紐付けて前記鉄道構造物の情報を記憶する鉄道構造物テーブルと、
前記鉄道構造物に紐付けて前記センサの情報を記憶するセンサテーブルと、
前記折返し区間ごとに運休時の影響度の情報を記憶する影響度テーブルと、
前記センサから送信される情報に基づいて、前記折返し区間ごとに区間損傷度を算出する損傷度算出手段と、
前記影響度テーブルに基づいて、前記折返し区間ごとに復旧優先度を算出する復旧優先度算出手段と、
前記区間損傷度が補修を必要とする値の折返し区間を補修区間とし、前記復旧優先度および前記鉄道構造物テーブルに基づいて、前記補修区間ごとに補修順位を算出する補修順位算出手段と、
前記区間損傷度が巡視を必要とする値の折返し区間を巡視区間とし、前記復旧優先度および前記鉄道構造物テーブルに基づいて、前記巡視区間の巡回順序を示す巡視経路を算出する巡視経路算出手段と、
を具備することを特徴とするサーバ。
【請求項6】
コンピュータを請求項5に記載のサーバとして機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−192110(P2011−192110A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58697(P2010−58697)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)