説明

保冷マット

【課題】保冷マットに収納される保冷パックが、蓄冷剤に偏りがなく、使用感が良好な保冷マットの提供を目的とする。
【解決手段】表地13と裏地15からなるマット11に形成したポケット17に保冷パック31を収納した保冷マット10において、保冷パック31を樹脂フィルムの袋33に蓄冷剤35が充填されたものとすると共に、蓄冷剤35を、ゲル状のカルボキシメチルセルロースを含むもので構成し、保冷マット10を布団や枕等に載置してルームエアコンで保冷パック31の蓄冷剤35を冷却した後に使用することにより、あるいは予め保冷パック31を冷蔵庫で冷却した後に使用することにより保冷パック31による冷感を体感できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷パックが収納された保冷マットに関し、特には枕や布団等の表面に載置される保冷マットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、布等からなるシート材に袋を設けて前記袋に保冷パックを収納した冷感マットが提案されている。保冷パックは冷媒が封入されたものからなり、予め冷蔵庫や冷凍庫に入れて冷却して用いられる。保冷パックに収納される冷媒は、硫酸ナトリウムの水和物や塩素酸リチウムの水和物などと無機粒子との混合物が用いられる。
【0003】
また、枕カバーに多数の袋を形成し、その袋に冷却パックを収納した冷却枕が提案されている。冷却パックは蓄冷剤が収納され、予め冷蔵庫や冷凍庫に入れて冷却して用いられる。
【0004】
また、保冷パックや冷却パック内に収納される冷媒や蓄冷剤を凍った際に硬くならないものにして、使用時のゴツゴツ感を減少させることが提案されている。しかし、従来の硬くならない冷媒や蓄冷剤は、流動性があるため、自重によって、あるいは保冷パックや冷却パックの使用時に体重等の荷重が加わることによって、保冷パックや冷却パック内の冷媒や蓄冷剤に偏りが発生する。蓄冷剤の偏りが発生した場合、保冷パックや冷却パックの一部で蓄冷剤の量が減り、その部分で冷感が得難くなったり底付き感が発生したりして使用感が損なわれるようになる。特に、保冷パックや冷却パックの数を減らして保冷パックや冷却パックの取り扱いを簡略にするには、保冷パックや冷却パックのサイズを大にしなければならず、その場合、保冷パックや冷却パック内における冷媒や保冷剤の偏りが一層生じやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−144036号公報
【特許文献2】特開2006−25956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、保冷パック内で蓄冷剤の偏りがなく、使用感が良好な保冷マットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、ポケットが形成されたマットと、前記ポケットに収納された保冷パックとよりなる保冷マットにおいて、前記保冷パックは、樹脂フィルムの袋に蓄冷剤が充填されたものからなり、前記蓄冷剤がカルボキシメチルセルロースを含むゲル状のものからなることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記蓄冷剤の融解温度が−10℃〜0℃であることを特徴とする。前記蓄冷剤の融解温度とは、凍結された蓄冷剤が融解するときに周囲から熱を奪う(融解潜熱)時の温度をいう。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記マットの表地が綿平織りからなり、裏地がダブルラッセルからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、カルボキシメチルセルロースを含むゲル状の蓄冷剤は、粘度が高く、流動性が無いため、保冷マットを枕や布団等の上に載置して使用した際に、保冷パック内の蓄冷剤が自重や体重によって偏らず、使用感が損なわれることがない。特に保冷パックのサイズを大きくしても、保冷パック内で蓄冷剤の偏りがないため、良好な使用感が得られる。
【0011】
請求項2の発明によれば、蓄冷剤の融解温度が−10℃〜0℃であるため、使用時にひんやり感を長く持続させることができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、マットの裏地にダブルラッセルを使用したことによってマットの通気性が良好になり、蓄冷剤を冷蔵庫で冷やした場合でも、使用時に結露が少なく黴が発生するおそれが少なくなる。さらに、保冷マットの使用時に身体とは反対側となるマットの裏側がダブルラッセルとなっているため、ダブルラッセルと身体が触れることがなく、感触に劣る問題もない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例に係る保冷マットの表面図である。
【図2】図1に示した保冷マットの裏面図である。
【図3】図1の3A−3A断面図及び3B−3B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1から図3に示す保冷マット10は、マット11と保冷パック31とよりなり、布団表面に載置可能なサイズからなる。なお、前記保冷マット10は、枕の表面に載置可能なサイズとすることにより枕用とすることができる。
【0015】
前記マット11は、表地13と裏地15を縫製して複数のポケット(袋部)17を前記表地13と前記裏地15間に形成したものである。符号19は縫合部を示す。前記表地13は保冷マット10の使用時に身体側とされ、一方、前記裏地15は身体とは反対側の布団側あるいは枕側等とされる。前記表地13及び裏地15は適宜の材質からなる。特に前記表地13を綿平織りとすると共に前記裏地15をダブルラッセルとするのが好ましい。このように前記裏地15を表地13よりも目付けを多くして、かつ通気性を高いものとすることにより、空気層を多く持ち、(裏地がより断熱効果を有し)、前記表地13を綿平織りとすることにより、前記保冷マット10の使用時における感触が良好となる。また、前記裏地15の厚みを表地13よりも厚くして、通気性を高いものとすることにより、黴の発生を抑えることができ、特に、前記裏地15をダブルラッセルとすることによりマット裏側の通気性が良好となり、前記表地13と前記裏地15間のポケット17に収納された保冷パック31が冷却されたものであっても、前記保冷パック31の表面で結露を生じにくく、また結露により黴が発生するおそれもない。
【0016】
図示の例では、前記ポケット17は6個形成され、各ポケット17の一端が保冷パック収納及び取り出し口18として開口している。さらに、前記保冷パック収納及び取り出し口18には、前記裏地15の一部で形成された蓋片14が設けられ、前記ポケット17に前記保冷パック31を収納した後、前記保冷パック31の後端を前記蓋片14の内側に差し込むことにより、前記保冷パック31がポケット17から出にくくなるように構成されている。
【0017】
前記保冷パック31は、樹脂フィルムの袋33に蓄冷剤35が充填されたものからなる。前記袋33は、一層または二層で構成された樹脂フィルムで形成され、蓄冷剤35が収納された後、ウェルダー加工やヒートシール加工等により蓄冷剤充填口が封止されている。前記袋33の素材は、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル、ポリアミド樹脂(ナイロン)、ポリエチレン等、冷却によっても柔軟性の損なわれないものであればよく、適宜選択される。さらに、シリカやアルミニウム等を蒸着した蒸着フィルムは、蓄冷剤中の水分の揮発を防いで蓄冷剤の使用可能期間を長くすることができるため、前記袋33として好ましい材質である。前記袋33を構成するフィルムの厚みは50〜150μm程度が好ましい。50μmよりも薄いと破れる恐れがある。
【0018】
蓄冷剤35は、冷却状態においても可撓性を有するゲル状のものからなり、水、アルコール、カルボキシメチルセルロース等を含むものであり、それらが均一に攪拌分散されて前記袋33に充填されている。なお、前記保冷パック31は、前記保冷マット10が布団や枕等に載置された状態でエアコンにより冷却されることにより、あるいは前記保冷マット10から取り出されて家庭用冷蔵庫に収納されることにより予め冷却されて使用される。前記保冷パック31を冷蔵庫で冷却する場合、例えば、就寝より1〜3時間前に保冷パック31を冷蔵庫の冷凍庫に収容し、就寝時に冷蔵庫から取り出して保冷マット10に収容すればよい。前記蓄冷剤35の融解温度は、保冷マットの使用時に使用者に与える冷感を良好にするために−10〜0℃に設定され、前記温度範囲の冷却によっても可撓性を有するように、水、アルコール、カルボキシメチルセルロースの量が決められている。
【0019】
蓄冷剤35に含まれる水は融解潜熱が大きいため、大なる冷却効果が得られる。
また、蓄冷剤35に含まれるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール等のモノアルコール、またはプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが挙げられる。前記アルコールは、寒剤としての効果もあるので、前記蓄冷剤の望む融点(融解温度)に合わせて選択されるが、特に、本発明では、前記保冷パック31を冷却した状態でも蓄冷剤35が可撓性のある柔らかくすることができる−20℃以下の凝固点を有する多価アルコールを使用することができる。さらに、前記多価アルコールの中でも、プロピレングリコールは凝固点が−59℃であって、通常の家庭用冷蔵庫における冷凍庫の冷却温度よりも充分低い凝固点(−59℃)を有し、しかもカルボキシメチルセルロースとの相溶性も良いため、冷却状態でも可撓性を有する柔らかい蓄冷剤35を得るのに好適である。前記アルコールの量は、水100重量部に対して0〜60重量部の範囲とすることができる。なお、前記蓄冷剤35はアルコールを含まないものとしてもよい。
【0020】
前記カルボキシメチルセルロース(CMC)は蓄冷剤をゲル状とするものであり、前記保冷マット10の使用時の触感を良好とする必要があるため、水100重量部に対して0.5〜10重量部が好ましく、特に、2〜7重量部が使用時の感触を良好とするため好ましい。カルボキシメチルセルロースが2重量部未満の場合、前記蓄冷剤35が前記袋33内で容易に移動する状態となり、保冷パック31を長手方向に垂直に立てると蓄冷剤35が偏る(移動する)ようになるため、使用時に自重や使用者の体重等で蓄冷剤35の偏りを生じるようになる。一方、カルボキシメチルセルロースが7重量部を超える場合、前記蓄冷剤35が硬くなりすぎ、使用感に劣るようになる。
【0021】
また、前記蓄冷剤をゼリー状にする架橋剤として、多価金属塩を用いることができる。この多価金属塩としては、2価又は3価のものが用いられ、カリミョウバン,硫酸アルミニウム,酢酸アルミニウム,水酸化アルミニウム,硫酸第一鉄,塩化第一鉄,硫酸亜鉛,塩化バリウム,硝酸クロム,酢酸鉛,塩化第二銅,塩化スズ,硝酸銀等が挙げられる。これらのうち、カリミョウバンを添加することが、前記保冷マット10の使用時の触感を良好とすることができるため好ましい。カリミョウバンを添加する場合には、カルボキシメチルセルロース(CMC)の添加量にもよるが、蓄冷剤の偏りの防止、底付き感の防止のため、カリミョウバンの量は水100重量部に対して0〜0.6重量部とするのが好ましい。0.6重量部を超えると、カルボキシメチルセルロース(CMC)がゲル化状態とならず水を取り込みにくくなり離水する。特に、水100重量部に対してカルボキシメチルセルロース(CMC)を2〜7重量部、カリミョウバンの量を0〜0.6重量部とすれば、蓄冷剤35に偏りが生じることがなく、底付き感を防止でき、前記保冷マット10の使用時の触感を良好とすることができる。
【実施例】
【0022】
前記表地13及び前記裏地15を以下に示す実施例1,2の材質とし、前記表地13の平面サイズを830mm×860mm、前記裏地15(重ね部、重ね部下布部を含む)の平面サイズを830mm×860mm、前記マット11の平面サイズを830mm×860mm、前記ポケット17の平面サイズを270mm×420mm、個数を6個として、図1から図3に示した構成のマット11を縫製によりそれぞれ形成した。また、材質ポリエチレンフィルム(厚み70μm)とナイロンフィルム(厚み15μm)の積層フィルムから、平面サイズ265mm×415mmの前記袋33を形成し、水100g、プロピレングリコール35g、カルボキシメチルセルロース5g、カリミョウバン0.1gの割合からなるゲル状の蓄冷剤を700g、袋33の蓄冷剤充填口から収納し、ウェルダー加工により蓄冷剤充填口を封印して保冷パック31を、所要数形成した。なお、同サイズの袋33に蓄冷剤を800g収容する場合もある。
【0023】
・実施例1
表地:200本ブロード(綿100%、平織り、糸番手40/40、1インチ当たりの糸の本数;縦133本/横72本、目付120g/m、厚み0.6mm、通気性12.4cm/cm/s)
裏地:ダブルラッセル(ポリエステル100%、目付210g/m、厚み3.0mm通気性559cm/cm/s)
・実施例2
表地:200本ブロード(綿100%、平織り、糸番手40/40、1インチ当たりの糸の本数:縦133本/横72本、目付120g/m、厚み0.6mm、通気性12.4cm/cm/s)
裏地:ポリエステル65%、綿35%の混合生地(ツイル生地(綾織り)、糸番手20/20、1インチ当たりの糸の本数:縦108本/横58本、目付250g/m、厚み0.8mm、通気性23.4cm/cm/s)
なお、厚みの測定は、ダイヤルゲージ(Mitutoyo社製)、type IDC−1012MC、φ=50mmを用いて行った。また、通気性の測定は、JIS L 1096 通気性A法(フラジール形法)により行った。
【0024】
実施例1,2のマットに形成されているポケットに前記保冷パックを収納して実施例1,2の保冷マットとした。実施例1,2の保冷マットを、外気温30℃の日に室内にセットしたベッドの布団上に、裏地を布団側として載置し、その状態でルームエアコンを25℃にセットして2時間放置した後にルームエアコンの電源を切り、その後に被験者が保冷マット上に横たわって、使用感を確かめる確認テストを行った。その結果、保冷マットにより心地よい冷感を数時間感じることができた。その際、保冷パック内の蓄冷剤に偏りがなく、使用感が良好であった。
【0025】
また、実施例1,2の保冷マットから保冷パックを取り出し、家庭用冷蔵庫の冷凍室で2時間冷却した。その後に冷蔵庫から保冷パックを取り出しでマットのポケットに収納し、前記と同様にベッドの布団上に載置して使用感を確かめる確認テストを行った。その結果、保冷マットにより心地よい冷感を、さらに長い時間感じることができた。しかも、保冷パックは硬くなく、しかも蓄冷剤の偏りがなく、使用感が良好なものであった。
【符号の説明】
【0026】
10 保冷マット
11 マット
13 表地
15 裏地
17 ポケット
31 保冷パック
33 樹脂フィルムの袋
35 蓄冷剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポケットが形成されたマットと、前記ポケットに収納された保冷パックとよりなる保冷マットにおいて、
前記保冷パックは、樹脂フィルムの袋に蓄冷剤が充填されたものからなり、
前記蓄冷剤がカルボキシメチルセルロースを含むゲル状のものからなることを特徴とする保冷マット。
【請求項2】
前記蓄冷剤の凍結温度が−10℃〜0℃であることを特徴とする請求項1の保冷マット。
【請求項3】
前記マットの表地が綿平織りからなり、裏地がダブルラッセルからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の保冷マット。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−268875(P2010−268875A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121629(P2009−121629)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(501318556)株式会社イノアックリビング (10)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】