説明

保冷剤

【課題】 常温で長期間保存してもゲルの保水性の低下が極めて少なく、またゲルの形状が変化することもない保存安定性に優れた吸収ゲルを与える保冷剤を提供する。
【解決手段】 水溶性ビニルモノマー(a1)および/または加水分解により水溶性となる加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)からなる吸収性樹脂(X)を含有し、下記の(1)および(2)をともに満足してなる保冷剤。
(1)(X)中の未反応のビニルモノマーの含有量が、(X)の重量に基づいて200ppm以下であること。
(2)イオン交換水100重量部に(X)1重量部を加えてなる吸収ゲルの25℃、120時間静置後の粘度保持率が75%以上であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷剤に関する。さらに詳しくは保存安定性に優れる保冷剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、保冷剤としては、カルボキシレートを含む高分子電解質である高吸水性高分子(例えば、特許文献1参照)からなる保冷剤が知られている。なお、ここおよび以下において保冷剤とは粉末形態のものを指し、該保冷剤が水を吸収した吸水ゲル(吸収ゲルまたは単にゲルということがある)を収納袋等に充填したものは保冷材と称することとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−223190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記保冷剤は、水を吸収させて保冷材を製造後、冷凍させるまでの間に室温で長期間保存した場合、保水性の低下によりゲルの形状が変化して、ゲルの保存安定性の点において充分満足できるものではなかった。
本発明は、室温で長期間保存しても保水性の低下(離液ということがある)が極めて少なく、またゲルの形状が変化することもなく保存安定性に優れた吸収ゲルが得られる、保冷剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、水溶性ビニルモノマー(a1)および/または加水分解により水溶性となる加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)からなる吸収性樹脂(X)を含有し、下記の(1)および(2)をともに満足してなる保冷剤である。
(1)(X)中の未反応のビニルモノマーの含有量が、(X)の重量に基づいて200ppm以下であること。
(2)イオン交換水100重量部に(X)1重量部を加えてなる吸収ゲルの25℃、120時間静置後の粘度保持率が75%以上であること。
【発明の効果】
【0006】
本発明の保冷剤に水を吸収させてなる吸水ゲル(保冷材)は、室温での長期間の保存安定性に優れ、経時変化を起こして離液したり、ゲルの形状が変化したりすることがない、という効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明における架橋重合体(A)は、水溶性ビニルモノマー(a1)および/または加水分解により水溶性となる加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とする重合体である。
[水溶性ビニルモノマー(a1)]
本発明において、水溶性ビニルモノマーとは、25℃の水100gに対する溶解度が少なくとも100(g/水100g)であるビニルモノマーを意味するものとする。
水溶性ビニルモノマー(a1)としては特に限定はないが、例えば、特開2005−075982号公報に記載の水溶性ビニルモノマー(カルボキシル基、スルホ基、水酸基、アミノ基、アンモニウム基、リン酸誘導体基およびアクリルアミド誘導体基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有するビニルモノマー等)が挙げられる。
【0008】
カルボキシル基を有するビニルモノマー(a11)としては、不飽和モノカルボン酸[炭素数(以下Cと略記)3〜10、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸];不飽和ジカルボン酸(C4〜30、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸);不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(C1〜8)エステル(C5〜30、例えばマレイン酸モノブチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸エチルカルビトールモノエステル、フマル酸のエチルカルビトールモノエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸グリコールモノエステル)等が挙げられる。
また、(a11)としては、上記の他にこれらの塩も使用できる。塩としては、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)塩、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等)塩、オニウム塩等が挙げられる。
【0009】
スルホ基を有するビニルモノマー(a12)としては、脂肪族および芳香族ビニルスルホン酸[C2〜30、例えばビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、α−メチルスチレンスルホン酸];(メタ)アクリロキシアルキルスルホン酸[C4〜30、例えば(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、3−(メタ)アクリロキシエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミノ−2−メチルプロパンスルホン酸、3−(メタ)アクリルアミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸];アルキル(C3〜18)(メタ)アリルスルホコハク酸エステル[C10〜24、例えばプロピル(メタ)アリルスルホコハク酸エステル]、およびこれらの塩[前記(a11)における塩に同じ。]等が挙げられる。
【0010】
水酸基を有するビニルモノマー(a13)としては、1価エチレン性不飽和アルコール[C3〜6、例えば(メタ)アリルアルコール];2〜6価のポリオール{C2〜20、例えばアルキレングリコール[エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール(以下それぞれEG、PG、DEG、TEGと略記)等]、グリセリン(以下GRと略記)、ポリオキシアルキレン(アルキレンはC2〜4)グリコール〔分子量106以上かつ数平均分子量[以下Mnと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]2,000以下〕}の(メタ)アクリレート[TEG(メタ)アクリレート、ポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)(ランダムおよび/またはブロック)グリコール(Mn200〜2,000)モノ(メタ)アリルエーテル等]等が挙げられる。
【0011】
アミノ基を有するビニルモノマー(a14)としては、アミノアルキル不飽和カルボン酸エステル[C5〜15、例えばアミノエチル(メタ)アクリレート];ジアルキル(C1〜8)アミノアルキル(C2〜10)不飽和カルボン酸エステル[C6〜24、例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルフマレート];ジヒドロキシアルキル(C1〜8)アミノアルキル(C2〜10)不飽和カルボン酸エステル[C7〜24、例えばジ(ヒドロキシメチル)アミノエチル(メタ)アクリレート];モルホリノアルキル(アルキルはC1〜8)不飽和カルボン酸エステル[C8〜20、例えばモルホリノエチル(メタ)アクリレート];アミノアルキル(C2〜10)不飽和カルボン酸アミド[C5〜18、例えばアミノエチル(メタ)アクリルアミド、アミノプロピル(メタ)アクリルアミド];ジアルキル(C1〜8)アミノアルキル(C2〜10)不飽和カルボン酸アミド[C7〜30、例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド];ジヒドロキシアルキル(C1〜8)アミノアルキル(C2〜10)不飽和カルボン酸アミド[C7〜30、例えばジ(ヒドロキシメチル)アミノエチル(メタ)アクリル酸アミド];モルホリノアルキル(アルキルはC1〜8)不飽和カルボン酸アミド[C8〜20、例えばモルホリノエチル(メタ)アクリル酸アミド];複素環式ビニル化合物(C7〜12、例えば2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール等);ジアリルアミン等が挙げられる。
【0012】
アンモニウム基を有するビニルモノマー(a15)としては、前記のアミノ基を有するビニルモノマー(a14)を酸[無機酸(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、過臭素酸等)、有機酸(C1〜4、例えばギ酸、酢酸、プロパン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸)等]で中和した中和塩;(a14)をアルキル化剤[ハロゲン化アルキル(C1〜8、例えばメチルクロライド、ベンジルクロライド)、アルキル硫酸(C2〜8、例えばジメチル硫酸、ジエチル硫酸)、アルキル炭酸(C2〜8、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート)、アルキレンオキシド(C2〜3、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド)]等を用いて4級化した第4級アンモニウム塩[トリメチルアンモニオエチル(メタ)アクリレート・クロライド、メチルジエチルアンモニオエチル(メタ)アクリレート・メトサルフェート、トリメチルアンモニオエチル(メタ)アクリルアミド・クロライドおよびジエチルベンジルアンモニオエチル(メタ)アクリルアミド・クロライド等]等が挙げられる。
【0013】
リン酸誘導体基を有するビニルモノマー(a16)としては、(メタ)アクリロキシアルカン(アルカンはC2〜6)リン酸モノエステル[(メタ)アクリロキシエタンリン酸モノエステル等]、(メタ)アクリロキシアルカン(アルカンはC2〜6)のリン酸ジエステル[ビス(2−アクリロキシエタン)リン酸ジエステル等]、(メタ)アクリロキシアルカン(アルカンはC2〜6)ホスホン酸[2−(メタ)アクリロキシエタンホスホン酸等]、およびこれらの塩[前記(a11)における塩に同じ。]等が挙げられる。
【0014】
アクリルアミド誘導体基を有するビニルモノマー(a17)としては、C3〜20、例えば(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(C1〜8)(メタ)アクリルアミド[N−メチルアクリルアミド等]、N,N−ジアルキル(C1〜8)(メタ)アクリルアミド[N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、等]、N−ヒドロキシアルキル(C1〜8)(メタ)アクリルアミド[N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等];N,N−ジヒドロキシアルキル(C1〜8)(メタ)アクリルアミド[N,N−ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等]、ビニルラクタム[N−ビニルピロリドン等]等が挙げられる。
【0015】
これらのうち、吸収能等の観点から好ましいのは、アニオン性ビニルモノマー[(a11)、(a12)、(a16)]、さらに好ましいのはC3〜30の不飽和カルボン酸(塩)〔不飽和モノカルボン酸(塩)[(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸およびこれらの塩等];不飽和ジカルボン酸(塩)(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸およびこれらの塩等);および前記不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(C1〜8)エステル(マレイン酸モノブチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸のエチルカルビトールモノエステル、フマル酸のエチルカルビトールモノエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸グリコールモノエステル等)等〕、とくに好ましいのは不飽和モノカルボン酸(塩)、最も好ましいのはアクリル酸(塩)である。
なお、本発明において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸および/またはメタアクリル酸を意味し、「酸(塩)」とは「酸」および/または「酸塩」を意味するものとする。
【0016】
前記(a11)、(a12)、(a16)等のアニオン性ビニルモノマーにおけるオニウム塩としては、特開2003−251178号公報、特開2005−95357号公報等に記載されているもの等が挙げられ、オニウムカチオンとしては第4級アンモニウムカチオン(I)、第3級ホスホニウムカチオン(II)、第4級ホスホニウムカチオン(III)、第3級オキソニウムカチオン(IV)、アルキルピリジニウムカチオン(V)、第4級アンモニウムカチオン(I)を除くアンモニウムカチオン(VI)等が挙げられる(以下カチオンという用語は省略)。
【0017】
第4級アンモニウム(I)としては、アルキルおよび/またはアルケニル基を有するC4〜30またはそれ以上の脂肪族第4級アンモニウム(I1)、C9〜30またはそれ以上の芳香族第4級アンモニウム(I2)、C6〜30またはそれ以上の脂環式第4級アンモニウム(I3)、C6〜30またはそれ以上のイミダゾリニウム(I4)、C5〜30またはそれ以上のイミダゾリウム(I5)、C6〜30またはそれ以上のテトラヒドロピリミジニウム(置換基が結合してビシクロ環を形成していてもよい)(I6)、C6〜30またはそれ以上のジヒドロピリミジニウム(I7)およびC8〜30またはそれ以上のイミダゾリニウム骨格を有するグアニジウム(I8)等が挙げられる。
【0018】
(I1)としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、ジメチルプロピルアンモニウム等;
(I2)としては、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム等;
(I3)としては、N,N−ジメチルピロリジニウム、N,N−ジエチルピロリジニウム、N,Nジメチルモルホリニウム等;
【0019】
(I4)としては、1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム等;
(I5)としては、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム等;
(I6)としては、1,3−ジメチルテトラヒドロピリジニウム、1,2,3−トリメチルテトラヒドロピリジニウム、1,2,3,4−テトラメチルテトラヒドロピリジニウム等;
【0020】
(I7)としては、1,3−ジメチル−2,4−もしくは−2,6−ジヒドロピリミジニウム[これらを1,3−ジメチル−2,4,(6)−ジヒドロピリミジニウムと表記し、以下同様の表現を用いる。];1,2,3−トリメチル−2,4,(6)−ジヒドロピリミジニウム、1,2,3,4−テトラメチル−2,4,(6)−ジヒドロピリミジニウム等;
(I8)としては、2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム等が挙げられる。
【0021】
第3級ホスホニウムカチオン(II)としては、アルキルおよび/またはアルケニル基を有するC1〜30またはそれ以上の脂肪族第3級ホスホニウム(II−1)、C6〜30またはそれ以上の芳香族第3級ホスホニウム(II−2)、C3〜30またはそれ以上の脂環式第3級ホスホニウム(II−3)等が挙げられる。
(II−1)としては、トリメチルスルホニウム、トリエチルスルホニウム、エチルジメチルスルホニウム、ジエチルメチルスルホニウム等が挙げられる。
(II−2)としては、フェニルジメチルスルホニウム、フェニルエチルメチルスルホニウム、フェニルメチルベンジルスルホニウム等が挙げられる。
(II−3)としては、メチルチオラニウム、フェニルチオラニウム、メチルチアニウム等が挙げられる。
【0022】
第4級ホスホニウムカチオン(III)としては、アルキルおよび/またはアルケニル基を有するC1〜30またはそれ以上の脂肪族第4級ホスホニウム(III−1)、C6〜30またはそれ以上の芳香族第4級ホスホニウム(III−2)、C3〜30またはそれ以上の脂環式第4級ホスホニウム(III−3)等が挙げられる。
【0023】
(III−1)としては、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラプロピルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、メチルトリエチルホスホニウム、メチルトリプロピルホスホニウム、メチルトリブチルホスホニウム、ジメチルジエチルホスホニウム、ジメチルジプロピルホスホニウム、ジメチルジブチルホスホニウム、トリメチルエチルホスホニウム、トリメチルプロピルホスホニウム、トリメチルブチルホスホニウム等;
(III−2)としては、トリフェニルメチルホスホニウム、ジフェニルジメチルホスホニウム、トリフェニルベンジルホスホニウム等;
(III−3)としては、1,1−ジメチルホスホラニウム、1−メチル−1−エチルホスホラニウム、1,1−ジエチルホスホラニウム、1,1−ジメチルホスホリナニウム、1−メチル−1−エチルホスホリナニウム、1,1−ジエチルホスホリナニウム、1,1−ペンタエチレンホスホリナニウム等が挙げられる。
【0024】
第3級オキソニウムカチオン(IV)としては、アルキルおよび/またはアルケニル基を有するC1〜30またはそれ以上の脂肪族第3級オキソニウム(IV−1)、C6〜30またはそれ以上の芳香族第3級オキソニウム(IV−2)、C3〜30またはそれ以上の脂環式第3級オキソニウム(IV−3)が挙げられる。
【0025】
(IV−1)としては、トリメチルオキソニウム、トリエチルオキソニウム、エチルジメチルオキソニウム、ジエチルメチルオキソニウム等;
(IV−2)としては、フェニルジメチルオキソニウム、フェニルエチルメチルオキソニウム、フェニルメチルベンジルオキソニウム等;
(IV−3)としては、メチルオキソラニウム、フェニルオキソラニウム、メチルオキサニウム等が挙げられる。
【0026】
アルキルピリジニウムカチオン(V)としては、C1〜30またはそれ以上のアルキルおよび/またはアルケニル基を有するアルキルピリジニウム(V−1)、C6〜30またはそれ以上の芳香族系ピリジニウム(V−2)が挙げられる。
(V−1)としては、メチルピリジニウム、エチルピリジニウム、セチルピリジニウム、ジエチルメチルピリジニウム等;
(V−2)としては、フェニルピリジニウム、ベンジルピリジニウム等が挙げられる。
【0027】
第4級アンモニウムカチオンを除くアンモニウムカチオン(VI)としては、第3級アンモニウム(VI1)、第2級アンモニウム(VI2)、第1級アンモニウム(VI3)およびアンモニウムカチオン(VI4)等が挙げられる。
【0028】
(VI1)としては、アルキルアンモニウム(トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム等)、アルカノールアンモニウム(トリメタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム等)およびピリジニウム等;
(VI2)としては、アルキルアンモニウム(ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム等)およびアルカノールアンモニウム(ジメタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム等)等;
(VI3)としては、アルキルアンモニウム(モノメチルアンモニウム、モノエチルアンモニウム等)およびアルカノールアンモニウム(モノメタノールアンモニウム、モノエタノールアンモニウム等)等が挙げられる。
【0029】
これらのうちで、好ましいのは第4級アンモニウム(I)、さらに好ましいのは(I1)、(I4)および(I5)である。これらオニウムカチオンは、1種または2種以上を併用してもよい。
【0030】
[加水分解性ビニルモノマー(a2)]
加水分解により水溶性となる加水分解性ビニルモノマー(a2)には、少なくとも1個の加水分解性基[1,3−オキソ−2−オキサプロピレン(−CO−O−CO−)基、アシル基、シアノ基等]を有するビニルモノマー等が含まれる。
【0031】
1,3−オキソ−2−オキサプロピレン基を有するビニルモノマー(a21)としては、C4〜20の不飽和カルボン酸無水物、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等;
【0032】
アシル基を有するビニルモノマー(a22)としては、不飽和カルボン酸アルキル(アルキル基はC1〜50)エステル[C4〜60、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート]、およびカルボン酸の不飽和アルコール(C2〜3)カルボン酸エステル[C4〜20、例えば酢酸ビニル、酢酸(メタ)アリル]等;
【0033】
シアノ基を有するビニルモノマー(a23)としては、C3〜15、例えば(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレンが挙げられる。
これらの加水分解性ビニルモノマー(a2)の加水分解は、(a2)の重合中、重合後のいずれでもよく、通常は加水分解によってアルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)塩を形成し水溶性ビニルモノマー(a1)を生じる。
【0034】
上記水溶性ビニルモノマー(a1)および加水分解性ビニルモノマー(a2)のうち、吸収能の観点から好ましいのは(a1)である。
(a1)、(a2)はそれぞれ単独で使用しても、これらを併用してもよく、さらに、(a1)、(a2)それぞれを2種以上併用してもよい。
吸収能の観点から好ましいのは、(a1)の単独使用さらに好ましいのは1種類の(a1)の単独使用である。
(a1)と(a2)を併用する場合は、これらのモル比は、吸収能および吸収速度の観点から好ましくは75/25以上、さらに好ましくは85/15以上、とくに好ましくは90/10以上である。
【0035】
[(a1)、(a2)以外のその他のビニルモノマー(a3)]
本発明における架橋重合体(A)の構成単位としては、前記(a1)および/または(a2)の他に、必要によりその他のビニルモノマー(a3)を含有させることができる。
(a3)としては、25℃の水100gに対する溶解度が100(g/水100g)未満のビニルモノマー、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン等が挙げられる。
(a3)の含有量は、(A)の重量に基づいて、通常5%以下、吸収速度の観点から好ましくは3%以下、さらに好ましくは1.5%以下である。
【0036】
[内部架橋剤(b)]
内部架橋剤(b)には、重合性二重結合を少なくとも2個有し、(a1)と反応性の官能基を有さないもの(b1)、重合性二重結合を少なくとも1個有し、(a1)と反応性の官能基を少なくとも1個有するもの(b2)、および重合性二重結合を有さず、(a1)と反応性の官能基を少なくとも2個有するもの(b3)が含まれる。
ここにおいて、内部架橋剤とは、架橋重合体(A)の形成時における構成単位としての架橋剤を示す。
【0037】
上記重合性二重結合としては、アクリロイル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基等が挙げられる。カルボキシル基と反応性の官能基とは、カルボキシル基と反応してエステル結合やアミド結合を形成する官能基のことであり、水酸基、エポキシ基およびアミノ基等が挙げられる。
【0038】
内部架橋剤(b1)としては、少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有するもの(b11)、少なくとも2個のビニルエーテル基を有するもの(b12)および少なくとも2個のアリルエーテル基を有するもの(b13)等が挙げられる。これらの(b1)は単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。
【0039】
内部架橋剤(b11)としては、C4〜80、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、EGジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(以下TMPと略記)トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(以下PEと略記)テトラ(メタ)アクリレートおよびポリGR(重合度3〜13)ポリ(メタ)アクリレート等の、分子内に2〜10(好ましくは2〜3)個の(メタ)アクリロイル基を有する共重合性のものが挙げられる。
【0040】
(b11)のうち、後述する吸収性樹脂(X)の吸収能の観点から好ましいのはN,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、EGジ(メタ)アクリレート、TMPトリ(メタ)アクリレート、PEトリ(メタ)アクリレート、さらに好ましいのはN,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、EGジ(メタ)アクリレート、TMPトリ(メタ)アクリレート、とくに好ましいのはN,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、TMPトリ(メタ)アクリレートである。
【0041】
内部架橋剤(b12)としては、C6〜100、例えばEGジビニルエーテル、1,4−ブタンジオール(以下BDと略記)ジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオール(以下HDと略記)ジビニルエーテル、ポリエチレングリコール(以下PEGと略記)ジビニルエーテル(重合度2〜5)、ビスフェノールAジビニルエーテル、およびポリGR(重合度3〜13)ポリビニルエーテル等の、分子内に2〜10(好ましくは2〜3)個のビニルエーテル基を有する共重合性のものが挙げられる。
【0042】
(b12)のうち、後述する吸収性樹脂(X)の吸収能の観点から好ましいのはEGジビニルエーテル、1,4−BDジビニルエーテル、1,6−HDジビニルエーテル、PEG(重合度2〜5)ジビニルエーテル、さらに好ましいのはEGジビニルエーテル、1,4−BDジビニルエーテル、PEG(重合度2〜5)ジビニルエーテル、とくに好ましいのはEGジビニルエーテル、PEG(重合度2〜5)ジビニルエーテルである。
【0043】
内部架橋剤(b13)としては、分子内にアリルエーテル基を2個有するもの(b131)、分子内にアリルエーテル基を3〜10個有するもの(b132)等が挙げられる。
【0044】
(b131)としては、C6以上かつMn4,000以下、例えばジアリルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジアリルエーテル、アルキレン(C2〜5)グリコールジアリルエーテル、およびPEG(Mn100〜4,000)ジアリルエーテル等が挙げられる。
(b132)としては、TMPトリアリルエーテル、GRトリアリルエーテル、PEテトラアリルエーテルおよびテトラアリルオキシエタン等が挙げられる。
【0045】
重合性二重結合を少なくとも1個有しカルボキシル基と反応性の官能基を少なくとも1個有する内部架橋剤(b2)としては、特開平1−103615号公報および特開2000−26510号公報等に記載されているものが使用でき、非イオン性基を有するもの(b21)およびカチオン性基を有するもの(b22)等が挙げられる。これらの内部架橋剤は単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。
【0046】
非イオン性基を有する内部架橋剤(b21)としては、分子内にアリルエーテル基を1個以上有しかつ水酸基を1〜5個有するもの(b211)、分子内にアリルエーテル基を3〜10個有しかつ水酸基を1〜3個有するもの(b212)、分子内に(メタ)アクリロイル基を1個以上有しかつ水酸基を1個以上有するもの(b213)、および分子内に(メタ)アクリロイル基を1個以上有しかつエポキシ基を1個以上有するもの(b214)等が挙げられる。
【0047】
(b211)としては、C8〜40、例えばGRジアリルエーテル、TMPジアリルエーテル、PEジアリルエーテル、ポリGR(重合度2〜5)ジアリルエーテル等;
(b212)としては、C9〜100、例えばPEトリアリルエーテル、ジGRトリアリルエーテル、ソルビトール(以下SOと略記)トリアリルエーテル、ポリGR(重合度3〜13)ポリアリルエーテル等;
(b213)としては、C4〜10、例えばN−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等;
(b214)としては、C6〜20、例えばグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
カチオン性基を有する内部架橋剤(b22)としては、C7〜20、例えば第4級アンモニウム塩を有するもの[N,N,N−トリメチル−N−(メタ)アクリロイロキシエチルアンモニウム塩(炭酸塩、カルボン酸塩等)、N,N,N−トリエチル−N−(メタ)アクリロイロキシエチルアンモニウム塩(炭酸塩、カルボン酸塩等)等]、第3級アミノ基を有するもの[(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル等]等が挙げられる。
【0049】
内部架橋剤(b2)のうち、後述する吸収性樹脂(X)の吸収能の観点から好ましいのは(b21)、さらに好ましいのは(b211)、(b212)、とくに好ましいのはアリル基を3〜5個有しかつ水酸基を1〜3個有するもの、最も好ましいのはPEトリアリルエーテル、SOトリアリルエーテルである。
【0050】
重合性二重結合を有さずカルボキシル基と反応性の官能基を少なくとも2個有する内部架橋剤(b3)としては、特開平1−103615号公報および特開2000−26510号公報等に記載されているものが使用できる。
(b3)としては例えば、多価(2〜10またはそれ以上)グリシジル化合物(b31)、多価(2〜3またはそれ以上)イソシアネート(b32)、多価(2〜10またはそれ以上)アミン(b33)および多価(2〜10またはそれ以上)アルコール(b34)が挙げられる。これらの内部架橋剤は単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。
【0051】
多価グリシジル化合物(b31)としては、C4以上かつMn4,000以下、例えばEGジグリシジルエーテル、GRジグリシジルエーテル、SOポリグリシジルエーテル、PEG(Mn100〜4,000)ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール(以下PPGと略記)(Mn100〜4,000)ジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0052】
多価イソシアネート(b32)としては、C(NCO基中の炭素を除く)2〜12、例えば脂肪族ポリイソシアネート(以下PIと略記)[C2〜12、例えばエチレンジイソシアネート(ジイソシアネートは以下DIと略記)、ヘキサメチレンDI(HDI)等]、脂環含有PI[C4〜15、例えばイソホロンDI(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンDI(HMDI)等]、芳香脂肪族PI[C8〜12、例えばキシリレンジイソシアネート(XDI)等]、芳香族PI[2,4−および/または2,6−トリレンDI(TDI)、4,4’−および/または2,4’−ジフェニルメタンDI(MDI)等]、およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0053】
多価アミン(b33)としては、C2〜20、例えばエチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが挙げられる。
【0054】
多価アルコール(b34)としては、C3〜100、例えば(ポリ)アルキレングリコール、PG、GR、SO、ジエチレングリコール、TEG、テトラエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジPG、1,4−BD、1,5−ペンタンジオール、1,6−HD等が挙げられる。
【0055】
内部架橋剤(b3)のうち、後述する吸収性樹脂(X)の吸収能の観点から好ましいのは多価グリシジル化合物(b31)、さらに好ましいのはEGジグリシジルエーテルである。
(b3)を使用する場合は、通常(b3)添加後任意の段階で、好ましくは100〜230℃、さらに好ましくは120〜160℃に加熱し架橋反応を進行させる。また、(b3)は2種以上併用してもよい。
【0056】
内部架橋剤(b)のうち、後述する吸収性樹脂(X)の吸収能の観点から好ましいのは、(b1)、(b3)、さらに好ましいのは(b1)のうちの(b11)、(b13)、および(b3)である。これらの内部架橋剤は単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。
【0057】
[架橋重合体(A)]
架橋重合体(A)は、前記の水溶性ビニルモノマー(a1)および/または加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とする重合体である。
(A)を構成する(a1)および/または(a2)の含有量は、吸収性樹脂(X)の吸収能および保水性の観点から、(A)の重量に基づいて、好ましくは99.0〜99.95%、さらに好ましくは99.2〜99.90%、とくに好ましくは99.4〜99.85%;(b)の含有量は、保水性および(X)の吸収能の観点から、(A)の重量に基づいて、好ましくは0.05〜1.0%、さらに好ましくは0.1〜0.8%、とくに好ましくは0.15〜0.6%である。
【0058】
架橋重合体(A)は、水溶性ビニルモノマー(a1)および/または加水分解により水溶性となる加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とし、さらに必要により(a1)、(a2)以外のその他のビニルモノマー(a3)を加えて重合させることにより得られる。
重合方法としては種々の重合方法が適用でき、該重合方法としては例えば水溶液重合、懸濁重合、塊状重合、逆相懸濁重合および乳化重合の各方法が挙げられる。
これらの重合方法では、種々の重合開始剤、連鎖移動剤および溶媒等が使用できる。
【0059】
これらの重合方法のうち、本発明の吸収性樹脂(X)の吸収能の観点から好ましいのは水溶液重合、懸濁重合、逆相懸濁重合および乳化重合、さらに好ましいのは水溶液重合、逆相懸濁重合および乳化重合、(A)の高分子量化の観点からとくに好ましいのは水溶液重合である。
【0060】
上記水溶液重合法は、従来公知の方法でよく、例えばラジカル重合開始剤を用いて重合させる方法が挙げられる。以下は水溶液重合法の場合について説明する。
【0061】
水溶液重合法において、ラジカル重合開始剤を用いて重合させる場合、該開始剤としては、アゾ化合物[アゾビスイソバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド等]、無機過酸化物[過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等]、有機過酸化物[ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等]、レドックス開始剤[還元剤(アルカリ金属塩の亜硫酸塩もしくは重亜硫酸塩、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸アンモニウム、L−アスコルビン酸等)と過酸化物(アルカリ金属塩の過硫酸塩、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水等)との組み合わせ]等が挙げられる。これらの開始剤は2種類以上を併用してもよい。
【0062】
開始剤の使用量は、とくに限定はないが、原料モノマー[(a1)、(a2)、および必要により(a3)]と内部架橋剤(b)の合計重量に基づいて、重合の反応速度および重合度の観点から、好ましくは0.000001〜3.0%、さらに好ましくは0.000003〜0.5%である。
【0063】
重合温度は、使用する開始剤の種類等によっても異なるが、重合の反応速度および重合度の観点から好ましくは−10〜100℃、さらに好ましくは−5〜80℃である。
【0064】
重合に際して(a1)および/または加水分解により水溶性となる(a2)全体の中和度は、所定量の(b)がモノマー水溶液に完全に溶解できるのであれば特に限定はないが、(b)が水溶性に乏しい場合、または、とくに(a1)および/または(a2)の水溶液に対する(b)の溶解度が極めて低く所定量の(b)を添加しても(b)がモノマー水溶液から分離し所定の架橋が行えない場合があるため、重合に際し(a1)および/または(a2)の中和度をまず0〜30モル%として重合させ、必要により重合後にさらに中和するのが好ましく、未中和の状態で重合させた後、必要により重合後に中和するのがさらに好ましい。
また、(a1)および/または(a2)は、中和度以外について同一条件で重合させた場合、中和度が低い方が重合度が上がりやすいため、(A)の重合度を大きくするためにも、中和度が低い状態で重合させた方が好ましい。
(a1)および/または(a2)を中和する場合、アルカリ(c)を添加、混合することにより中和物が得られる。(c)としては、アルカリ金属(Na、K等)水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、オニウムカチオンの水酸化物およびオニウムカチオンの炭酸塩等が挙げられる。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等;アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等;オニウムカチオンの水酸化物としては、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド等;および、オニウムカチオンの炭酸塩としては、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムモノメチル炭酸塩等が挙げられる。
【0065】
架橋重合体(A)の製造においては、内部架橋剤(b)を使用しないこと以外は全く同じ重合条件で製造した場合のポリマーの平均重合度が、好ましくは5,000〜1,000,000、さらに好ましくは10,000〜1,000,000となる重合条件(開始剤種類、開始剤量、モノマーの重合濃度、重合温度および溶存酸素量等)で重合することが好ましい。
該平均重合度が、上記の範囲となる条件で、適量の内部架橋剤(b)を使用して架橋重合体(A)を製造すると、該(A)を含有してなる吸収性樹脂(X)に優れた吸収能を付与させることができる。上記平均重合度はGPC法にて測定することができる。
【0066】
水溶液重合による架橋重合体(A)は、水を含むゲル(含水ゲル)として得られる。含水ゲルは、必要により中和、および破断した上で、通常乾燥され、その後粉末状にして吸収性樹脂として使用される。
含水ゲルの中和を行う場合には、(A)の含水ゲルにアルカリ(c)を混合して、含水ゲルの中和物を得ることができる。具体的には、(A)の含水ゲルを約1cm3以下の小片に細断し、これに(c)の粉末または水溶液を添加し混合して中和される。
この中和工程で得られる含水ゲルの中和度は、人体の皮膚に対する吸収性樹脂(X)の安全性および含水ゲルの粘着性低減の観点から好ましくは、(A)中のカルボキシル基の60〜80モル%、さらに好ましくは65〜78モル%である。
【0067】
(A)の含水ゲルの小片とアルカリ(c)との混合装置としては、従来この工程で用いられるカッター刃を備えた、縦切り型および横切り型スリッター、回転刃を備えたカッター式の破断機、所定の口径の目皿と回転刃を備えたミートチョッパー等が使用できる。
混合する際の温度としては、従来この工程で行われる範囲でよく、好ましくは10〜80℃である。また、混合するシア(せん断力)も、従来公知の方法におけるシアと同様でよく、機器の回転数は、好ましくは20〜100rpmである。
【0068】
含水ゲルの破断を行う場合も、前記のスリッター、破断機、ミートチョッパー等が使用でき、破断する際の温度、混合シアおよび機器の回転数の好ましい範囲も前記と同様である。
【0069】
含水ゲルの乾燥方法として、含水ゲルをミートチョッパーやカッター式の粗砕機でゲルをある程度細分化(細分化のレベルは0.5〜20mm角程度)あるいはヌードル化し、必要によりアルカリ金属水酸化物(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等)等を添加して含水ゲルの中和を行った後、透気乾燥(パンチングメタルやスクリーン上に含水ゲルを積層し、強制的に50〜200℃の熱風を通気させて乾燥する等)や通気乾燥(含水ゲルを容器中に入れ、熱風を通気・循環させ乾燥、ロータリーキルンのような機械でさらにゲルを細分化しながら乾燥する)等の方法が挙げられる。これらのうち、透気乾燥が短時間で効率的な乾燥が行えるため好ましい。
【0070】
含水ゲルの他の乾燥方法としては、例えば、ドラムドライヤー上に含水ゲルを圧縮延伸して乾燥する接触乾燥法等が挙げられるが、含水ゲルは熱伝導性が悪いため、乾燥を行うためにドラムドライヤー上に含水ゲルの薄膜を作成する必要がある。
【0071】
含水ゲル乾燥時の乾燥温度としては、使用する乾燥機や乾燥時間等により種々異なるが、好ましくは、50〜180℃、より好ましくは80〜150℃である。乾燥温度が、180℃以下であると乾燥時の熱によりポリマーが架橋しにくく、熱架橋により架橋度が上がりすぎることがなく、吸収性樹脂(X)の吸収能が低下することがない。また、50℃以上であると乾燥に長時間を要さず効率的である。乾燥時間に関しても、使用する乾燥機の機種および乾燥温度等により異なるが、好ましくは5〜300分、さらに好ましくは5〜120分である。
【0072】
本発明において、(A)の含水ゲルの砕断時および乾燥時の(A)の含水ゲル同士の付着および混合装置、乾燥機等への(A)の含水ゲルの付着を防ぐ目的で、必要により種々の離型剤を混合してもよい。
離型剤としては、無機粉末[炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、表面を疎水化処理した二酸化ケイ素、酸化チタンなど]、天然物由来の粉末[小麦粉、米粉、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等]、合成高分子の粉末[ポリビニルアルコール、ポリエステル、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂等]、アニオン性界面活性剤 [ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリルオキシポリエチレンオキシ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ラウロイルザルコシンナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸モノナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム等]、非イオン性界面活性剤[1:1型ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリルジメチルアミンオキシド、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ノニルフェノールポリオキシエチレン、オクチルフェノールポリオキシエチレン、ドデシルフェノールポリオキシエチレン等]、カチオン性界面活性剤[塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等]、両性活性剤[ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等]、高分子型界面活性剤[カチオン化セルロース、ポリアクリル酸ナトリウム等]、公知のシリコン界面活性剤およびフッ素界面活性剤等が挙げられる。これらのうち離型効果の観点から好ましいのは、無機粉末、アニオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤である。
【0073】
離型剤の添加量は、離型剤が粉末状の場合、(A)の重量に基づいて、通常50%以下、離型効果および吸収性樹脂(X)の発塵性低減、吸収能の観点から好ましくは0.001〜40%、さらに好ましくは0.01〜30%である。該粉末状の離型剤を用いた場合、ゲル砕断後の任意の段階で過剰の離型剤を分離、回収してもよい。
離型剤が液状の場合の添加量は、(A)の重量に基づいて、通常5%以下、離型効果および吸収性樹脂(X)の吸収能の観点から好ましくは0.0001〜4%、さらに好ましくは0.001〜3%である。
【0074】
得られた架橋重合体(A)の乾燥物は、必要により粉砕して粉末化される。粉砕方法としては、通常の方法でよく、例えば衝撃粉砕機(ピンミル、カッターミル、スキレルミル、ACMパルペライザー等)や空気粉砕機(ジェット粉砕機等)で行うことができる。
上記で得られる粉末状の架橋重合体(A)を構成する粒子の重量平均粒子径は、作業性および吸収能の観点から好ましくは0.01〜1mm、さらに好ましくは0.15〜0.85mmであり、粉末状の(X)の90重量%以上の粒子の粒子径が0.15〜0.85mmの範囲にあることがとくに好ましい。
【0075】
前記粉末状の架橋重合体(A)は、(A)中の官能基と反応性を有する官能基を少なくとも2個有する表面架橋剤(d)を加えて、さらに架橋させてもよい。その方法としては、例えば、(A)に(d)を添加、混合し、加熱して架橋させ、必要により粉砕して、さらに架橋された粉末状の架橋重合体(A)を得る方法が挙げられる。
本発明においては、表面架橋前の(A)と、表面架橋後の架橋重合体を、いずれも架橋重合体(A)と称することとする。
なお、ここにおいて表面架橋剤(d)とは、前記の内部架橋剤(b)が架橋重合体(A)の形成時の構成単位としての架橋剤であるのに対し、形成された(A)に後添加してさらに(A)を架橋するための架橋剤を指す。
【0076】
表面架橋剤(d)としては、特開平1−103615号公報に記載されているものが使用できる。例えば、エポキシ基、水酸基、アミノ基およびイソシアナート基からなる群より選ばれる官能基を少なくとも2個有する(d1)およびイオン架橋を形成しうる多価金属化合物(d2)が挙げられる。
【0077】
(d1)としては、ポリエポキシドもしくはポリグリシジルエーテル(d11)、ポリオール(d12)、(ポリ)アルキレンポリアミン(d13)等が挙げられる。
(d11)としては、C4〜50、例えばEGジグリシジルエーテル、プロピレングリコール(以下PGと略記)ジグリシジルエーテル、GR−1,3−ジグリシジルエーテル、PEGジグリシジルエーテル、ビスフェノールA−エピクロルヒドリン型エポキシ樹脂;
ポリオール(d12)としては、C2〜20の多価(2価〜6価またはそれ以上)アルコール、例えばEG、PG、GR、PE;
(ポリ)アルキレンポリアミン(d13)としては、C2〜10、例えばエチレンジアミンが挙げられる。
【0078】
(d2)としては、例えば、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)、亜鉛、アルミニウム、チタン等の、水酸化物、ハロゲン化物、塩(硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩等)等が挙げられる。具体例としては、塩化カルシウム、ジ酢酸亜鉛、硫酸アルミニウム等が挙げられる。
【0079】
これらの(d)のうち好ましいのは、ポリエポキシドもしくはポリグリシジルエーテル(d11)およびイオン架橋を形成しうる多価金属化合物(d2)である。
【0080】
表面架橋剤(d)の添加量は、架橋重合体(A)の重量に基づいて、通常5%以下、保水性および吸収性樹脂(X)の吸収能の観点から好ましくは0.005〜3%、さらに好ましくは0.01〜2%、とくに好ましくは0.05〜1%である。
【0081】
該(A)を表面架橋剤(d)でさらに架橋させる方法としては、例えば、粉末状の(A)に(d)を添加、混合し、必要により加熱して架橋させる方法が挙げられる。
【0082】
表面架橋剤(d)の添加、混合は、必要なら水溶液にして添加し、通常ニーダー、万能混合機等の混錬機で行われる。加熱する方法は、100〜230℃の温度の熱風で加熱する方法、100〜230℃に加熱されたドラムドライヤー等の使用による薄膜乾燥法、減圧乾燥法、凍結乾燥法等通常の方法でよい。また表面架橋該さらに架橋して得られた(A)を含有してなる吸収性樹脂(X)は、必要により篩別、粉砕して粒度調整を行う。粉砕方法についても特に限定はなく、前述した粉砕方法と同様である。
【0083】
[吸収性樹脂(X)]
本発明における吸収性樹脂(X)は、前記架橋重合体(A)を含有してなり、下記の(1)および(2)をともに満足してなるものである。
(1)(X)中の未反応のビニルモノマーの含有量が、(X)の重量に基づいて200ppm以下であること。
(2)イオン交換水100重量部に(X)1重量部を加えてなる吸収ゲルの25℃、120時間静置後の粘度保持率が75%以上であること。
【0084】
吸収性樹脂(X)が満足する上記(1)におけるビニルモノマーの含有量は、200ppm以下、好ましくは150ppm以下、さらに好ましくは120ppm以下、とくに好ましくは100ppm以下、最も好ましくは60ppm以下である。該含有量が、200ppmを超えると(X)が水等を吸収したゲルが経時的に離液(吸収ゲルが吸収した水等を放出すること)したり、ゲル形状が変化しやすくなる、ゲル強度が低下する等、ゲルの保存安定性が悪くなる。
【0085】
<未反応のビニルモノマーの含有量測定方法>
300mlのビーカーに、吸収性樹脂(X)測定試料1gおよび0.9重量%食塩水249gを入れて、20〜30℃で3時間撹拌した後、不溶解分をろ別してろ液を得る。ろ液を高速液体クロマトグラフィー法(下記の条件)により既知濃度のビニルモノマーを用いて作成した検量線を使用して、未反応のビニルモノマーの含有量を求める。
(測定条件)
カラム :SCR−101H[長さ0.3m×内径7.9mm、(株)島津製作所製])
展開溶液 :0.015重量%リン酸水溶液
流速 :0.5ml/min
サンプル注入量:100μl
検出器 :UV検出器、波長195nm
カラム温度:40℃
【0086】
本発明の吸収性樹脂(X)中の未反応のビニルモノマーの含有量を、(X)の重量に基づいて200ppm以下とする方法としては、特開平1−62317号公報に記載の還元性物質や特開平8−157737号公報に記載の水溶性チオール化合物等を水溶液または水分散体として、(X)を構成する架橋重合体(A)に添加、混合する方法が挙げられる。これらの方法は1種類の方法のみでもよいし、2種類以上の方法を併用してもよい。残存モノマー低減効果の観点から好ましいのは還元性物質を添加、混合する方法である。
【0087】
還元性物質としては、無機塩[亜硫酸塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム等)、重亜硫酸塩(重亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸ソーダ等)、第一鉄塩(塩化第一鉄、硫酸第一鉄等)、第一銅塩(塩化第一銅、硫酸第一銅等)等]、有機酸(アスコルビン酸等)、アミン[アンモニア、モノエタノールアミン等]、還元糖(グルコース等)等が挙げられる。
これらのうち、残存モノマー低減効果の観点から好ましいのは、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、アスコルビン酸、とくに好ましいのは亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸である。
【0088】
水溶性チオール化合物としては、ピロペリット酸ジメルカプトエチルエステルナトリウム塩、トリメリット酸モノメルカプトエチルエステルナトリウム塩、メルカプトエチルエーテルフェニルスルホン酸ナトリウム、メルカプトプロピオン酸ナトリウムメルカプトエチルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
これらのうち、残存モノマー低減効果の観点から好ましいのは、ピロペリット酸ジメルカプトエチルエステルナトリウム塩、トリメリット酸モノメルカプトエチルエステルナトリウム塩である。
【0089】
還元性物質および/または水溶性チオール化合物の添加量は、吸収ゲルの保存安定性および保冷剤の吸収能の観点から、(A)の重量に基づいて好ましくは1〜10%、さらに好ましくは2〜8%、とくに好ましくは3〜5%である。
【0090】
還元性物質および/または水溶性チオール化合物の添加のタイミングは、架橋重合体(A)の製造後に添加、混合する他に、前記(A)の製造時、(A)の含水ゲルにアルカリ(c)を混合して、含水ゲルの中和物を得る工程で添加、混合することもできる。これらのうちの一方だけのタイミングで添加してもよいし、また両方のタイミングで添加してもいずれでもよいが、(X)中の未反応の、ビニルモノマーおよび架橋剤の合計含有量を効率的に低減する観点から好ましいのは、含水ゲルの中和物を得る工程での添加、さらに好ましいのは両方のタイミングでの添加である。
【0091】
吸収性樹脂(X)が満足する前記(2)におけるゲルの粘度保持率は75%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。ゲルの粘度保持率が75%未満では、ゲルは保水性に欠け、保存安定性が悪化する。該ゲルの粘度保持率は以下の方法で測定できる。
前記(2)におけるイオン交換水とは、電気伝導率(μS/cm)が0.35以下である水を意味し、以下においても同様である。
【0092】
<ゲルの粘度保持率の測定方法>
イオン交換水100重量部に吸収性樹脂(X)粉末1重量部を添加し、ゲルが壊れないように手で軽く撹拌して均一なゲルを形成させる。該ゲルについて粘度計[型番「TVB−10H」、東機産業(株)製。ロータ「H7」、回転数100rpm]を用いて粘度を測定する。粘度がほぼ一定になったことを確認し該粘度を吸水直後のゲルの粘度(V1)とする。
次に、密栓式のガラス容器に、該ゲル90重量部を入れ、25℃で120時間静置する。該静置後のゲルについて、上記と同様にして粘度を測定し、該粘度を上記条件で静置後のゲルの粘度(V2)とし、次式からゲルの粘度保持率を算出する。

ゲルの粘度保持率(%)= [(V2)/(V1)]×100
【0093】
本発明における吸収性樹脂(X)は、通常粉末状の形態で使用される。該粉末を構成する粒子の重量平均粒子径は、吸収ゲルの保存安定性および(X)の吸収能、吸収ゲルの良好な外観の観点から好ましくは0.01〜1mm、さらに好ましくは0.15〜0.85mmであり、粉末状の(X)の90重量%以上の粒子の粒子径が0.15〜0.85mmの範囲にあることがとくに好ましい。
【0094】
(X)の重量平均粒子径は、通常の方法、例えばロータップ試験篩振とう機およびJIS標準ふるい(JIS Z8801−1:2000)を用いて、「ペリーズ・ケミカル・エンジニアーズ・ハンドブック第6版」(マックグローヒル・ブック・カンバニー刊行、1984、21頁)に記載の方法で測定される。
すなわち、JIS標準ふるいを、上から、2.80mm、2.00mm、1.40mm、1.00mm、850μm、710μm、500μm、355μm、250μmおよび150μm、並びに受け皿の順に組み合わせる。最上段のふるいに吸収性樹脂(X)の粉末約50gを入れ、ロータップ試験篩振とう機で5分間振とうさせる。各ふるいおよび受け皿上の測定粒子の重量を秤量し、その合計を100重量%として各ふるい上の粒子の重量分率を求め、この値を対数確率紙[横軸がふるいの目開き(粒子径)、縦軸が重量分率]にプロットした後、各点を結ぶ線を引き、重量分率が50重量%に対応する粒子径を求め、これを重量平均粒子径とする。
【0095】
(X)の重量平均粒子径の調整方法は、前記架橋重合体(A)の粉砕方法において粉砕条件を調整することで、容易に調整できる。
【0096】
[保冷剤]
本発明の保冷剤は、前記吸収性樹脂(X)を含有してなる。
該保冷剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により、さらに防腐剤(e1)および凝固点降下剤(e2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤(e)を含有させることができる。
【0097】
防腐剤(e1)としては、デヒドロ酢酸Na等が挙げられる。
【0098】
凝固点降下剤(e2)としては、アルコール[1価(エタノール等)、多価(EG、PG、DEG、GR等)等]、無機塩(塩化ナトリウム等)等が挙げられる。これらのうち保水剤の吸収能の観点から好ましくはPGおよびGRである。
【0099】
(e)の使用量は、吸収性樹脂(X)の重量に基づいて、(e1)は通常30%以下、添加効果および保冷剤の吸収能の観点から好ましくは5〜15%、さらに好ましくは8〜12%;(e2)は通常30倍以下、添加効果および保冷剤の吸収能の観点から好ましくは10〜25倍、さらに好ましくは15〜22倍である。
【0100】
(e)全体の使用量は、(X)の重量に基づいて、通常30倍以下、添加効果および保冷剤の吸収能の観点から好ましくは5%以上25倍以下、さらに好ましくは8%以上〜22倍以下である。
【0101】
本発明の保冷剤は、前記の吸収性樹脂(X)を含有してなるが、必要により添加剤(e)を含有させる場合は、(X)と(e)を混合することにより製造できる。該混合方法としては、プロペラ回転式の撹拌装置[型番「FW−5T」、(株)安川電気製等]等の混合装置を用いる方法が挙げられる。
【0102】
[保冷材]
本発明の保冷材は、前記保冷剤に水を吸収させ膨潤させたゲルを収納袋に充填して得られる。水としては、イオン交換水、純水、水道水等、いずれの水であってもとくに限定なく使用することができる。
水の使用量は、保冷剤の重量に基づいて、保水性および保形性の観点から好ましくは50〜300倍、さらに好ましくは100〜200倍である。
収納袋の素材としては、通常の冷凍冷蔵庫温度(−15〜−25℃)で硬化せず、従来から気密性の包材として用いられている高分子フィルム素材が使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステルおよびポリ塩化ビニル樹脂等からなる素材が挙げられる。これらのうち、密封加工性の観点から好ましいのはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルからなる素材である。
【実施例】
【0103】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下において部は重量部、%は重量%を表す。
【0104】
実施例1
断熱重合反応容器に、アクリル酸300部、PEトリアリルエーテル1部およびイオン交換水660部を仕込み撹拌混合してアクリル酸水溶液を調製し、液温を4℃に調整した。該水溶液中に窒素を通じ水溶液中の溶存酸素量を0.1ppm以下とした。次に、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド][商品名「VA−086」、和光純薬工業(株)製]の2%水溶液4.65部、1%過酸化水素水1.23部、L−アスコルビン酸の1%水溶液4.65部および硫酸鉄(II)7水和物の0.1%水溶液0.45部を加えて撹拌混合し、重合反応が開始するまで水溶液中への窒素通気を継続した。重合反応が開始し、アクリル酸水溶液の粘度が上昇し始めたのを確認後、窒素通気を停止して6時間重合させ、架橋重合体(A−1)の含水ゲルを得た。重合反応中の最高到達温度は98℃であった。
【0105】
次に、(A−1)の含水ゲルを反応容器から取り出し、小型ミートチョッパー[ローヤル(株)製]を用いて室温下、回転刃の回転数60rpmで太さ3〜10mm、長さ5〜20cmのヌードル状になるように細分化した後、水酸化ナトリウム(試薬特級)の48%水溶液250部を加え、前記小型ミートチョッパーを用い同一条件で混練し(A−1)中のカルボキシル基を中和した(中和度72モル%)。 さらに、亜硫酸ナトリウムの10%水溶液120部[(A−1)の重量に基づいて4%]を加え、前記小型ミートチョッパーを用い同一条件で均一混錬してヌードル状の含水ゲルを得た。
得られた太さ3〜10mm、長さ5〜20cmのヌードル状含水ゲルを、目開き850μmのSUS製のスクリ−ンの上に、厚さ5cmで積層し、小型透気乾燥機[(株)八光電機製作所製]を用い、供給風温160℃、風速1.5m/秒の条件下で、40分間含水ゲルに透気して、含水ゲルを加熱乾燥し、水分含量約4%の乾燥物を得た。
該乾燥物を家庭用ミキサーを用いて粉砕し、JIS標準ふるいを用いて0.15〜0.85mm(100メッシュ〜18メッシュ)の粒子径のものを採取して、重量平均粒子径0.4mmの樹脂粉末を得た。
該樹脂粉末100部をナウター式混合機[ホソカワミクロン(株)製]に仕込み、室温、50rpmの条件で撹拌しながら、EGジグリシジルエーテル0.05部、PG1.28部、水2.67部からなる溶液を添加混合し、該混合物をトレーに積層して、循風乾燥機[型番「SPHH−200」、タバイエスペック(株)製]中で、140℃、40分間加熱反応させて、吸収性樹脂(X−1)を含有してなる保冷剤(R−1)を得た。
【0106】
実施例2
実施例1において、亜硫酸ナトリウムの10%水溶液120部を同60部[(A−1)の重量に基づいて2%]、用いるJIS標準ふるいを調整して(以下同じ)粉砕後の樹脂粉末の重量平均粒子径を0.4mm、EGジグリシジルエーテル0.05部を同0.1部としたこと以外は実施例1と同様にして、吸収性樹脂(X−2)を含有してなる保冷剤(R−2)を得た。
【0107】
実施例3
実施例1において、亜硫酸ナトリウムの10%水溶液120部を同300部[(A−1)の重量に基づいて10%]、粉砕後の樹脂粉末の重量平均粒子径を2.4mmとしたこと以外は実施例1と同様にして、吸収性樹脂(X−3)を含有してなる保冷剤(R−3)を得た。
【0108】
実施例4
実施例1において、PEトリアリルエーテル1部を同1.35部として架橋重合体(A−2)の含水ゲルを得て、亜硫酸ナトリウムの10%水溶液120部を同90部[(A−2)の重量に基づいて3%]、粉砕後の樹脂粉末の重量平均粒子径を0.8mm、EGジグリシジルエーテル0.05部を同0.1部としたこと以外は実施例1と同様にして、吸収性樹脂(X−4)を含有してなる保冷剤(R−4)を得た。
【0109】
実施例5
実施例1において、PEトリアリルエーテル1部を同0.6部として架橋重合体(A−3)の含水ゲルを得て、亜硫酸ナトリウムの10%水溶液120部[(A−3)の重量に基づいて4%]を加え、粉砕後の樹脂粉末の重量平均粒子径を2.8mmとしたこと以外は実施例1と同様にして、吸収性樹脂(X−5)を含有してなる保冷剤(R−5)を得た。
【0110】
比較例1
実施例1において、亜硫酸ナトリウムの10%水溶液120部を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、吸収性樹脂(比X−1)を含有してなる保冷剤(比R−1)を得た。
【0111】
比較例2
実施例1において、PEトリアリルエーテル1部を同0.45部として架橋重合体(比A−1)の含水ゲルを得て、亜硫酸ナトリウムの10%水溶液120部を同30部[(比A−1)の重量に対して1%]、粉砕後の樹脂粉末の重量平均粒子径を0.38mmとしたこと以外は実施例1と同様にして樹脂粉末を得、さらに該樹脂粉末をEGジグリシジルエーテルでの処理をしないものとして、吸収性樹脂(比X−2)を含有してなる保冷剤(比R−2)を得た。
【0112】
吸収性樹脂(X−1)〜(X−5)、(比X−1)〜(比X−2)について、未反応のビニルモノマーの含有量を前記の方法に従って測定した。結果を表1に示す。
また、表2の配合組成に従って、ゲルを作成し、前記の方法に従ってゲルの粘度保持率を測定し、離液有無、ゲル形状の変化有無を評価した。用いた防腐剤、凝固点降下剤は次のとおりである。結果を表2に示す。
【0113】
防腐剤 (e1−1):デヒドロ酢酸Na[上野製薬(株)製]
凝固点降下剤(e2−1):プロピレングリコール
【0114】
【表1】

【0115】
【表2】

【0116】
表1の結果から、本発明における吸収性樹脂[(X−1)〜(X−5)]は、比較のもの[(比X−1)〜(比X−2)]に比べて、未反応のビニルモノマー含有量が極めて少ないことがわかる。
また、表2の結果から、本発明の保冷剤[(R−1)〜(R−5)]は、比較のもの[(比R−1)〜(比R−2)]に比べて優れたゲル粘度保持率を有し、また、経時的な離液や、ゲル形状の変化もないことから、保冷剤にとくに求められる保存安定性に極めて優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の保冷剤に水を吸収させて得られるゲルは保水性および保存安定性に優れ、経時的な離液や、ゲル形状の変化がないことから、製造後に常温での在庫が求められる保冷材として、保冷材のまとめ作り、および店頭での長期間にわたる保冷材の陳列等に幅広く対応することができ極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ビニルモノマー(a1)および/または加水分解により水溶性となる加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)からなる吸収性樹脂(X)を含有し、下記の(1)および(2)をともに満足してなる保冷剤。
(1)(X)中の未反応のビニルモノマーの含有量が、(X)の重量に基づいて200ppm以下であること。
(2)イオン交換水100重量部に(X)1重量部を加えてなる吸収ゲルの25℃、120時間静置後の粘度保持率が75%以上であること。
【請求項2】
さらに、防腐剤および凝固点降下剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有させてなる請求項1記載の保水剤。
【請求項3】
請求項1または2記載の保冷剤の吸水ゲルを収納袋に充填してなる保冷材。

【公開番号】特開2010−235873(P2010−235873A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87621(P2009−87621)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】