説明

保冷容器及び保冷容器を収蔵したコンテナ

【課題】コンテナへの荷積み作業および荷降ろし作業がし易く、収蔵後のコンテナ内の過多なデッドスペースが生じないことから荷崩れを防止し得る保冷容器の提供。
【解決手段】大型魚を収容して保冷する略直方体形状の保冷容器20であって、飛行機の貨物室に格納されるコンテナ1の収蔵空間に、該収蔵空間を形成する底壁の幅方向に配列可能で且つ配列毎に高さ方向に段積み可能であり、前記収蔵空間に最大限だけ配列し配列毎に最大限だけ段積みした状態で、各配列を構成する段積み容器群の幅方向少なくとも一方側に手を挿入可能な隙間23、24、25が形成される構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグロ等の大型魚を保冷状態で収容して目的の場所まで輸送するのに用いる保冷容器、及び該保冷容器を収蔵したコンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の保冷容器として、下記特許文献1に示す技術が提案されている。該保冷容器は、容器本体と容器本体の上面の開口を覆う蓋とからなり、大型魚の大きさに応じた大きさの、直方体形状の箱である。
【0003】
ところで近年、例えば養殖の大型魚を全国的規模で目的場所まで輸送することが行われるようになった。そして、大型魚は目的地に到着するまで鮮度を維持する必要があり、したがって輸送はできるだけ短時間であることが好ましい。このため、目的地が遠隔地である場合には、空輸が多用される。
【0004】
大型魚を収容した保冷容器を空輸する場合、保冷容器は飛行機の貨物室に(着脱自在に)格納されるコンテナに収蔵される。そして、輸送コストを考慮すると、1つのコンテナにはできるだけ多くの保冷容器を収蔵することが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−151421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、飛行機の貨物室の断面形状は、飛行機の機体の断面形状に対応した形状(機体の断面形状に支配された形状)に形成されている。したがって、このような貨物室に搭載される前記コンテナの断面形状も、機体の断面形状に対応した形状である。
【0007】
しかしながら、保冷容器は直方体形状の箱である。したがって、コンテナの断面形状によっては、複数の保冷容器をコンテナ内へしっくり収蔵するよう荷積みする作業がむずかしく、保冷容器の荷降ろし作業もしにくい。また、コンテナの断面形状によっては、保冷容器収蔵後のコンテナ内に過多なデッドスペースが発生し、そうなると保冷容器が空輸中にコンテナ内で大きく動いて保冷容器が荷崩れすることがあった。
【0008】
そこで本発明は、上記問題に鑑み、コンテナへの荷積み作業および荷降ろし作業がし易く、収蔵後のコンテナ内の過多なデッドスペースが生じないことから荷崩れを防止し得る保冷容器、及び保冷容器を収蔵したコンテナの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、大型魚を収容して保冷する略直方体形状の保冷容器であって、飛行機の貨物室に格納されるコンテナの収蔵空間に、該収蔵空間を形成する底壁の幅方向に配列可能で且つ配列毎に高さ方向に段積み可能であり、前記収蔵空間に最大限だけ配列し配列毎に最大限だけ段積みした状態で、各配列を構成する段積み容器群の幅方向少なくとも一方側に手を挿入可能な隙間が形成されることを特徴としている。
【0010】
上記構成において、コンテナの収蔵空間を形成する底壁に配列する場合や、配列毎に段積みする場合に、収蔵空間に最大限だけ配列し配列毎に最大限だけ段積みした状態で容器群の幅方向両側に形成される隙間となる空間に手を挿入することで、作業者は保冷容器を収蔵し(荷積みし)、保冷容器が収蔵されている状態では隙間に手を入れて荷降ろしする。
【0011】
また、収蔵空間に最大限だけ配列し配列毎に最大限だけ段積みした状態で容器群の幅方向両側に手を挿入することができる隙間がある一方で、例えば1個あるいはそれ以上の保冷容器に相当するような過多なデッドスペースがないから、空輸中に保冷容器が位置ずれしても荷崩れしない。
【0012】
本発明の保冷容器では、底壁は下段壁と、該下段壁の幅方向両側のうちの少なくとも一方側にあって前記下段壁よりも高い位置で下段壁と平行に設けられる上段壁とを備え、前記下段壁及び上段壁の双方に段積みされる構成を採用することができる。
【0013】
上記構成の保冷容器によれば、段差のある下段壁と上段壁があるコンテナでも、下段壁と上段壁の双方に段積みすることで収蔵空間を効率的に利用する収蔵ができる。
【0014】
本発明のコンテナは、収蔵空間に、上記何れかの保冷容器を最大限だけ配列し配列毎に最大限だけ積み重ねて収蔵していることを特徴としている。このコンテナでは、容器群の幅方向少なくとも一方側に形成された隙間に手を挿入することで、作業者は保冷容器を荷降ろしする。
【0015】
また、このコンテナでは、収蔵空間に最大限だけ配列し配列毎に最大限だけ段積みした状態で容器群の幅方向少なくとも一方側に手を挿入することができる隙間が形成される一方で、例えば1個あるいはそれ以上の保冷容器に相当する過多なデッドスペースがないから、空輸中に保冷容器が位置ずれしても荷崩れしない。
【発明の効果】
【0016】
本発明の保冷容器は、飛行機の貨物室に格納されるコンテナの収蔵空間に最大限だけ配列し配列毎に最大限だけ段積みした状態で、各配列を構成する段積み容器群の幅方向少なくとも一方側に手を挿入可能な隙間が形成されるから、作業者は前記隙間となる空間に手を挿入することで保冷容器を収蔵空間に容易に荷積みすることができ、保冷容器が収蔵されている状態では隙間に手を入れることで容易に荷降ろしすることができ、また、過多なデッドスペースをなくして荷崩れを防止することができるという効果を奏する。
【0017】
本発明のコンテナは、収蔵空間に最大限だけ配列し配列毎に最大限だけ段積みした状態で、各配列を構成する段積み容器群の幅方向少なくとも一方側に手を挿入可能な隙間が形成される保冷容器を収蔵しているから、前記隙間に手を入れることで容易に保冷容器を荷降ろしすることができ、また、過多なデッドスペースがないから荷崩れを防止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態を表すコンテナの斜視図である。
【図2】同コンテナを飛行機の貨物室に格納した状態の正面図である。
【図3】同保冷容器の全体を表す縦断側面図である。
【図4】同保冷容器の本体を表し、(a)は長手方向の縦断面図、(b)は短手方向の縦断面図である。
【図5】同保冷容器の蓋を表し、短手方向の縦断面図である。
【図6】同保冷容器を表し、(a)は下段の保冷容器に上段の保冷容器を積み重ねる直前の平面図、(b)は下段と上段の保冷容器の低減手段の関係を表す平面図、(c)は容器本体の一部を省略した側面図である。
【図7】同下段の保冷容器と上段の保冷容器の段積み状態を現す短手方向の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の保冷容器及びコンテナの一実施形態を説明する。この実施形態における保冷容器にはマグロ等の大型魚が収納され、コンテナは複数の保冷容器を収蔵可能である。そしてコンテナは飛行機の貨物室に格納されて、目的の空港まで空輸される。
【0020】
まず、本発明の実施形態に係るコンテナの構成を、図1及び図2に基づいて説明する。コンテナ1は、飛行機の貨物室2に着脱自在に格納され、定まった規格サイズに形成されている。具体的な規格は、LD−3規格である。この場合のコンテナ1は、左右対称形状のものが貨物室2に左右に並べられて格納されるから、1つのコンテナ1の構成の説明をもって他のコンテナ1の説明を兼用する。
【0021】
コンテナ1は、前面が矩形の開口部とされたコンテナ本体(外筐)1Aを備えている。コンテナ本体1Aは、底壁(下段壁に相当する)3と、底壁3の幅方向左右端部からそれぞれ立ち上がる右側壁4及び左側壁5と、底壁3の後端部から立ち上がる後壁6と、底壁3と平行に配置された天壁7とから構成されている。
【0022】
左側壁5(一方の側壁)は、底壁3から上部ほど幅方向外側へ傾斜した傾斜壁部8と、傾斜壁部8の上端から垂直に立ち上がる縦壁部9とから一体的に形成されている。右側壁4(他方の側壁)は、底壁3から垂直に立ち上げられている。したがって、コンテナ1を正面視すると、底壁3と天壁7が平行で、縦壁部9と右側壁4が平行な五角形に観て取られる。底壁3は所定の高さを有して平坦に形成された矩形形状の上面3aが、後に詳述する保冷容器20を載置する部分である。なお、底壁3の前面に、図示しないフォーク・リフトの爪(フォーク)が挿入される挿入口3bが形成されている。
【0023】
傾斜壁部8と縦壁部9の境界部(底壁3から所定高さだけ上)に、底壁3と平行で幅方向に所定幅を有した段壁(上段壁に相当する)10が左側壁5に固定された形態で配設されている。段壁10は、傾斜壁部8を三角形の斜辺とすると、該三角形の垂辺に相当する幅に形成されている。そして、段壁10を前側で覆う被覆壁部11が開口部の一部(左側)に配設されている。被覆壁部11は段壁10の左右幅に等しい幅に形成されている。被覆壁部11によって開口部は正面視して矩形に形成されている。段壁10は、その上面が載置面11aであり、載置面11aは保冷容器20を載置するのに用いられる。
【0024】
前記保冷容器20を、図3ないし図7に基づいて説明する。保冷容器20は、養殖マグロ等の大型魚Fを収容して保冷した状態でコンテナ1の収蔵空間100に複数個収蔵され、空輸に供される。なお、大型魚Fは、30kgから150kgまでの重量の魚を対象としており、特に50kgから100kgまでの重量の大型魚Fが主な対象となる。
【0025】
収蔵空間100に収蔵される各保冷容器20は同一の構成であり、同一形状・同一サイズであるから、1個の保冷容器20の構成の説明をもって他の保冷容器20の説明に兼用する。
【0026】
保冷容器20は、容器本体21と容器本体21に着脱自在な蓋体22とからなる。保冷容器20は、容器本体21に蓋体22を装着した状態で直方体形状であり、図3及び図4に示すように、その長手寸法L1、短手寸法(幅)L2、丈寸法(高さ)L3は、コンテナ1の内部である収蔵空間100に複数個、整然と収蔵することのできる所定寸法に設定されている。具体的に長手寸法L1=1400mm,短手寸法L2=550mm,丈寸法L3=450mmに設定されている。
【0027】
保冷容器20の長手寸法L1は、コンテナ1の底壁3の上面3aの奥行き寸法に比べてわずかに小さく設定されている。保冷容器20の短手寸法L2は、n個の保冷容器20を底壁3の上面3aに幅方向に配列した状態で、隣り合う保冷容器20(後述する容器群)との間、及び保冷容器20と右側壁4との間のそれぞれに、作業者の手が挿入できる第一隙間23が形成可能に設定されている。
【0028】
しかも保冷容器20は、収蔵空間100にn+1個の配列をすることができない寸法に設定されている。換言すれば、第一隙間23の合計は、1個の保冷容器20の短手寸法L2より小さい値である。好ましくはL2/2より小さい値である。また、保冷容器20の短手寸法L2は、段壁10(載置面11a)の正面幅寸法に比べて大きく設定され、且つ大型魚Fを収納して載置面11aに載置した際に段壁10から崩れ落ちない値に設定されている。具体的には、保冷容器20の短手寸法L2は、段壁10の正面幅寸法との関係では、L2/2<段壁10の正面寸法<L2に設定されている。
【0029】
保冷容器20の丈寸法L3は、m個の保冷容器20をコンテナ1の底壁3の上面3aに段積みした状態で、最上段の保冷容器20の蓋体22の上面である蓋面22aから天壁7の間に第二隙間24が形成される値である。この第二隙間24は1個の保冷容器20の丈寸法L3より小さい値である。また、保冷容器20の丈寸法L3は、コンテナ1の底壁3の上面3aから段壁10の載置面11aまでの距離に比べて大きく設定されている。さらに、保冷容器20の丈寸法L3は、段壁10の載置面11aにm−1個の保冷容器20を段積み可能であり、段壁10に段積みされた最上段の保冷容器20の蓋体22の蓋面22aから天壁7の間に第三隙間25が形成される値である。この第三隙間25は1個の保冷容器20の丈寸法L3より小さい値であり、第二隙間24とは異なる値(第二隙間24より大きい)である。
【0030】
次に、保冷容器20の構成を具体的に説明する。前述したように、保冷容器20は、容器本体21と容器本体21に着脱自在な蓋体22とからなり、容器本体21及び蓋体22は何れも発泡合成樹脂よりなる。図3及び図4に示すように、容器本体21は、マグロ、ブリ等の大型魚Fを上面開口部から収容することができる箱型状に形成されている。容器本体21は、平面視(底面視も同様)略長方形状に形成され、大型魚Fを載せる載置面を備えた底部26と、底部26の一対の長辺である左右の縁部に上方に向けて立設された左右の側部27,27と、底部26の一対の短辺である前後の縁部から上方に向けて立設された前後の側部28,28とを備えている。
【0031】
これら4つの側部27,28の上部に大型魚Fを出し入れするための上面開口部が形成されている。前後の側部28,28の内面には、大型魚Fの頭部又は尾部が当たる部分に、発泡合成樹脂より硬質の板材で形成した補強板29が着脱可能に保持されている。補強板29は、前後の側部28,28の底部から上方の所定位置まで内方へ突出して形成された保持部30によって着脱可能に保持されている。左右の側部27,27及び前後の側部28,28の上端面、即ち、容器本体21の上端面には、内縁全周に亘って上向きに突出する嵌合枠31が形成されている。容器本体21の左右の側壁の前後方向一端寄りのそれぞれに、上下方向に長い切欠きRが形成されている(図6(c)参照)。
【0032】
容器本体21の底面に、周方向全周に沿って同一幅に形成された偏平面の外周凹部21Aが形成されている。また、外周凹部21Aの内側に、下方(外方)に突設される被案内突条35が形成されるとともに、被案内突条35の内側に、被案内突条35の長手方向一端側を残して長手方向他端側に開放するように切欠いた、凹部21Bが形成されている。この被案内突条35は、後述する蓋体22に形成された突出案内部34,34に幅方向内側で嵌合する部分である。被案内突条35は、容器本体21の長手方向に沿って同一幅で延びる左右一対の第一突起部36,36と、これら第一突起部36,36を一端どうしで連結する第二突起部37とからなり、凹部21Bが形成されることで、被案内突条35は平面視してコの字形状に構成されている(図6(a)参照)。そして、外周凹部21Aの上面と凹部21Bの上面とは面一(同じ高さ)である。なお、図6(a)は便宜上底面図を描いているだけで、実際に容器本体21を蓋体22に段積みする際には、容器本体21は上下を反対にする。
【0033】
第一突起部36,36の前端部は、容器本体21の前端部から後方に位置ずれして配置され、第一突起部36,36の後端部は容器本体21の後端面から前方に位置ずれして配置されている。被案内突条35の、容器本体21の底面からの突出高さは均一に設定されている。
【0034】
図5ないし図7に示すように、蓋体22は、底面(下面)が開口した箱状に形成され、下端面の外縁全周に亘って下向きに突出する被嵌合枠32が形成されている。蓋体22は、被嵌合枠32を容器本体21の嵌合枠31の外側に嵌合することによって、容器本体21に取り外し可能に取付けられる。蓋体22の蓋面22aの左右両側部分に、上方に突出する左右一対の前記突出案内部34,34が形成されている。
【0035】
蓋体22の蓋面22aに、1組の平行で同幅の保持突起40,40からなる突起群38,39が、前後に所定間隔だけ離間して配置されている。各突起群38,39における保持突起40,40どうしの離間間隔は、前記第二突起部37の前後幅よりわずかに大きく設定されている。そして、それぞれの突起群38,39において、前後方向外側に配置された保持突起40,40はその端面が、蓋体22の側面と面一となる位置に配置されている。
【0036】
各突起群38,39の、蓋面22aからの突出高さ(突出量)は、突出案内部34,34の、蓋面22aからの突出高さに比べて小さく設定されている。そして突出案内部34,34の突出高さは、被案内突条35の、容器本体21の底面からの突出高さに比べてわずかに大きく設定されている。なお、突起群38,39は前後一対で配置していることにより、容器本体21に対する蓋体22の前後の方向性が特定されない構成になっている。
【0037】
また、各突起群38,39(保持突起40)は、突出案内部34,34の間にあって、突出案内部34,34から所定間隔だけ左右方向に離間して配置されている。突出案内部34,34の内端面から突起群38,39の外端面までの離間間隔は、第一突起部36,36の左右幅よりわずかに大きく設定されている。
【0038】
保冷容器20は、下段の保冷容器20に対して上段の保冷容器20を摺動させて積むようにし、上段の保冷容器20を下段の保冷容器20に対して摺動させて降ろすようにする。
【0039】
上記構成の保冷容器20は、大型魚Fを収納した状態で、飛行機の貨物室2に格納されるコンテナ1の収蔵空間100に収蔵されるもので、収蔵空間100を形成する底壁3の幅方向に複数列配列され、且つ配列毎に高さ方向に複数段だけ段積みされる。すなわち、収蔵空間100に最大限だけ配列され、配列毎に最大限だけ段積みされた状態で、各配列を構成する段積みされた前記容器群の幅方向両側に、作業者の手を挿入可能な隙間を形成した状態で空輸に供される。この実施形態におけるコンテナ1は段壁10を備えているから、保冷容器20は段壁10にも段積みされる。
【0040】
以下、上記構成の保冷容器20を用いた空輸方法を具体的に説明する。保冷容器20に大型魚Fを収容してコンテナ1に収蔵するには、まず作業者は、段壁10の載置面11aに保冷容器20を載置し、この保冷容器20を下段の保冷容器20として、下段の保冷容器20に上段の保冷容器20を段積みすることで、第一容器群20Aとする(図1及び図2参照)。
【0041】
このとき作業者は、下段の保冷容器20に上段の保冷容器20を前後方向で略位置合わせをし、上段の保冷容器20を側方(左側壁5側)に押し遣ると、第一突起部36,36が突起群38,39と突出案内部34,34の間に挿入(嵌合)され、第二突起部37が突起群38の保持突起40,40の間に挿入(嵌合)されて、上段の保冷容器20が下段の保冷容器20に対して位置決め保持される。
【0042】
そして、前述したように、L2/2<段壁10の正面寸法<L2であるから、保冷容器20に大型魚Fを収納して載置面11aに載置した際に、段壁10から崩れ落ちない。そしてこの実施形態では、段壁10には、保冷容器20は2段(m個)だけ段積みでき、段壁10に2段だけ段積みした1列の第一容器群20Aができ、上段の保冷容器20の蓋体22と天壁7との間には、第三隙間25が形成される。
【0043】
なお、被覆壁部11は段壁10の左右幅に等しい幅に形成されており、保冷容器20の短手寸法L2は、段壁10の正面幅寸法に比べて大きく設定されているから、段壁10に保冷容器20を載置すると、各保冷容器20の一部(左側)が被覆壁部11によって覆われ、各保冷容器20の一部(右側)は被覆壁部11から露出する。
【0044】
作業者は、段壁10に保冷容器20を段積みした後は、底壁3の上面3aに保冷容器20を左右方向に配列する。そして、各列の下段の保冷容器20に、それぞれ保冷容器20を段積みすることで、第二容器群20B及び第三容器群20Cとする。この実施形態では、底壁3の上面3aに載置できる保冷容器20は2列(n個)であり、各列に3段(m+1個)の段積みが可能である。したがって保冷容器20は、コンテナ1の収蔵空間100には、段壁10に段積みされた保冷容器20と合わせて3列の配列ができ、収蔵空間100には、合計8個の保冷容器20が整然と収蔵できる。
【0045】
底壁3の上面3aに保冷容器20を配列し、各列の下段の保冷容器20にさらに保冷容器20を段積みするとき、作業者は、下段の保冷容器20の蓋体22の突出案内部34,34の上面に、上段の容器本体21の底面の外周凹部21A(その左右両側部分)が左右方向で一致するよう略位置合わせして、上段の保冷容器20前方に押し込むようにする。
【0046】
そして、突出案内部34,34の、蓋面22aからの突出高さは、容器本体21の底面からの被案内突条35の突出高さに比べてわずかに大きく設定され、外周凹部21Aの上面は凹部21Bの上面と面一であるから、上段の保冷容器20前方に押し込むと、外周凹部21Aの上面と突出案内部34,34とが摺接する。また、第一突起部36,36は突出案内部34,34と突起群38(39)との間に入って案内される一方で、第一突起部36,36と蓋面22aとは接触(摺接)せず、凹部21Bの上面と保持突起40,40の上面もまた、接触しない。(図7参照)。このように、前述の凹部21Bを形成していることで、下段の保冷容器20にさらに保冷容器20を段積みするために作業者が上段の保冷容器20前方に押し込む際に、下段の保冷容器20の蓋体22と上段の保冷容器20の容器本体21とが摺接する面積を、著しく減らしている。つまり、凹部21Bが摩擦を低減する摩擦低減手段となって、下段の保冷容器20に対して上段の保冷容器20を摺動させる人為操作力が小さくて済み、上段の保冷容器20を容易に移動させることができる。さらに作業者は、容器本体21に形成された切欠きRに手を掛けて、容器本体21を移動させることも可能である。
【0047】
そして、第一突起部36,36が突出案内部34,34と突起群38(39)との間に入ることで、下段の保冷容器20に対して上段の保冷容器20が左右方向で位置決め保持され、上段の保冷容器20を前方に押し遣ると、第二突起部37が突起群38の保持突起40,40間に挿入されて、上段の保冷容器20が下段の保冷容器20に対して前後方向に位置決め保持される。
【0048】
このようにして、底壁3の上面3aに、各列3段の保冷容器20からなる第二容器群20B及び第三容器群20Cが左右に並べられると、第二容器群20B及び第三容器群20Cの間には、作業者の手が挿入できる第一隙間23が形成される。また、第二容器群20B及び第三容器群20Cにおける最上段の保冷容器20の蓋面22aと天壁7との間には、1個の保冷容器20の丈寸法L3より小さい第二隙間24が形成される。
【0049】
また、保冷容器20のサイズは、収蔵空間100に最大限だけ配列し配列毎に最大限だけ段積みした状態で、各配列を構成する第一容器群20Aないし第三容器群20Cのそれぞれの幅方向両側に、作業者の手を挿入可能な第一隙間23が形成されるのであるから、収蔵空間100に保冷容器20を収蔵する作業中であっても、第一隙間23となる余裕空間が生じている。この第一隙間23は収蔵空間100に保冷容器20を収蔵する作業中であっても第一隙間23よりも狭くなることはない。このため作業者は、空間的余裕をもって保冷容器20を収蔵空間100に収蔵することができる。
【0050】
上記のようにしてコンテナ1の収蔵空間100に収蔵された保冷容器20は、コンテナ1の底壁3の挿入口3bにフォーク・リフトの爪が挿入されて、フォーク・リフト等により飛行機の貨物室2に格納され、目的の空港まで空輸される。
【0051】
段積みされた保冷容器20どうしは、特に左右方向の位置ずれを防止されている。仮に、空輸時の振動によって下段の保冷容器20に対して上段の保冷容器20が左右方向に位置ずれしたとしても、第一隙間23の合計は、1個の保冷容器20の短手寸法L2より小さい値であり、第二隙間24は1個の保冷容器20の丈寸法L3より小さい値であり、第三隙間25は1個の保冷容器20の丈寸法L3より小さい値であるから、大きく荷崩れしない。
【0052】
飛行機が目的の空港に到着すると、フォーク・リフト等によってコンテナ1は貨物室2から取り出され、各保冷容器20は作業者によって収蔵空間100から出される。この場合、保冷容器20は上段から順に取り出される。作業者が保冷容器20を収蔵空間100から取り出すには、容器本体21の切欠きRに手を掛けて引き出すようにするが、これに先立ち、上段の保冷容器20の後部をやや持ち上げるように試みる。そうすると、突起群39の保持突起40,40間に挿入されている第二突起部37が蓋体22の蓋面22aから浮き、上段の保冷容器20の下段の保冷容器20に対する位置決めが解除される。したがって、上段の保冷容器20を下段の保冷容器20に対して容易に引き出すことができる。
【0053】
そして、特に、隣り合う第二容器群20Bと第三容器群20Cの間、第三容器群20Cと右側壁4との間には第一隙間23が形成されており、作業者は第一隙間23に手を挿入できるから、第一隙間23を利用することで、第二容器群20Bあるいは第三容器群20Cから保冷容器20の荷降ろしを容易に行える。
【0054】
本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。その他、各部の具体的構成についても同様である。上記実施形態におけるコンテナ1の形状は、底壁3と天壁7が平行、縦壁部9と右側壁4が平行で、傾斜壁部8を備えた五角形の場合で説明した。しかしながら、コンテナ1はこの形状に限定されず、正面視して矩形(長方形、正方形)であってもよい。
【0055】
具体的には、段壁10、傾斜壁部8及び被覆壁部11を有さず、左右の側壁が平行な矩形であり、収蔵空間は直方体形状であるコンテナ(例えば、M−1規格、LD−4規格、LD−9規格)を利用することも可能である。この場合でも、保冷容器は、底壁の上面に左右に最大列に配列し最大に段積みした状態で、各容器群の左右両側に作業者の手が挿入でき、合計が1個の保冷容器の短手より小さい隙間が生じる寸法であればよい。また、最上段の保冷容器と天壁との間に、1個の保冷容器の丈寸法より小さい隙間があれば好ましい。
【0056】
さらに別の形状のコンテナを利用することも可能である(例えばLD−6規格、LD−8規格)。具体的には、段壁、傾斜壁部、被覆壁部を左右双方に備えた形状である。何れの形状のコンテナであっても、保冷容器は、底壁の上面に左右に最大列に配列し最大に段積みし、段壁に最大限に段積みした状態で、各容器群の左右両側に作業者の手が挿入でき、合計が1個の保冷容器の短手より小さい隙間が生じる寸法であればよい。また、最上段の保冷容器と天壁との間に、1個の保冷容器の丈寸法より小さい隙間があれば好ましい。
【0057】
上記実施形態では、第一容器群20A、第二容器群20B、及び第三容器群20Cのそれぞれの左右両側に作業者の手が挿入できる第一隙間23が形成される場合で説明したが、これら容器群の左右両側のうちの一方に作業者の手が充分に挿入できる第一隙間が形成されるようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態は、容器群として第一容器群20A、第二容器群20B、及び第三容器群20Cの3列で、2段あるいは3段の段積みの場合で説明したが、コンテナ(収蔵空間)のサイズに応じて、2列、あるいは4列以上で、2段、あるいは4段以上の容器群とすることも可能である。
【0059】
さらに、上記実施形態では、保冷容器に大型魚Fを収容して空輸する例を説明したが、これに限定されず、大型魚Fを収容していない状態の単なる保冷容器であっても、上記と同様の形態の収蔵ができる。
【符号の説明】
【0060】
1…コンテナ、2…貨物室、10…段壁、20…保冷容器、20A…第一容器群、20B…第二容器群、20C…第三容器群、21…容器本体、22…蓋体、23…第一隙間、24…第二隙間、25…第三隙間、100…収蔵空間、F…大型魚、L1…長手寸法、L2…短手寸法、L3…丈寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型魚を収容して保冷する略直方体形状の保冷容器であって、
飛行機の貨物室に格納されるコンテナの収蔵空間に、該収蔵空間を形成する底壁の幅方向に配列可能で且つ配列毎に高さ方向に段積み可能であり、
前記収蔵空間に最大限だけ配列し配列毎に最大限だけ段積みした状態で、各配列を構成する段積み容器群の幅方向少なくとも一方側に手を挿入可能な隙間が形成されることを特徴とする保冷容器。
【請求項2】
底壁は下段壁と、該下段壁の幅方向両側のうちの少なくとも一方側にあって前記下段壁よりも高い位置で下段壁と平行に設けられる上段壁とを備え、前記下段壁及び上段壁の双方に段積みされることを特徴とする請求項1記載の保冷容器。
【請求項3】
収蔵空間に、請求項1または請求項2記載の保冷容器を最大限だけ配列し配列毎に最大限だけ積み重ねて収蔵していることを特徴とするコンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−23254(P2013−23254A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160101(P2011−160101)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】