説明

保冷容器

【課題】保冷材と共に被冷却物を収容して当該被冷却物の温度を所定範囲に保持する保冷容器であって、比較的軽量で携行し易く、耐久性に優れ、被冷却物や保冷材の出し入れが極めて容易であり、しかも、被冷却物の温度を長時間に渡って一定に保持し得る保冷容器を提供する。
【解決手段】保冷容器は、柔軟な構造を有する可搬式の外箱1と、断熱性を有する内箱2とを備え、内箱2は、内箱本体20の外側面側に隙間を設けて外箱1の中に位置決めされた状態に配置される。内箱本体20内には、当該内箱本体の中心線に沿って筒状体を立設した構造の仕切部材が配置されており、外箱1の蓋11及び内箱2の蓋21を開けた状態において、筒状体の内部に被冷却物を上方から直接出し入れ可能で且つ筒状体の外周部に保冷材を上方から直接出し入れ可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷容器に関するものであり、詳しくは、温度管理が必要な検体、医薬品、薬剤、試薬などの保管や輸送に使用される保冷容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療機関、検査機関、研究機関において、検体や医薬品、化学品や試薬などを保管、輸送する場合には、ドライアイスや蓄冷材などの保冷材と共に被冷却物を保冷容器に収容することにより、長時間に渡って被冷却物の温度を保持するようにしている。
【0003】
上記のような保冷容器としては、例えば、真空断熱構造の金属製容器本体と、シート状の気泡性緩衝材が内面に装着された蓋体とを備え、蓋体を閉めた際に気泡性緩衝材により適度な密閉状態を維持するようにした輸送容器が提案されている。そして、斯かる容器を使用する場合は、被冷却物として例えば冷凍医薬品が収納された小箱を容器本体に収め、小箱の上部にドライアイスを積み重ねている(特許文献1)。
【0004】
また、同様の目的で使用する保冷容器として、発泡ポリスチレン製の内箱に被冷却物を収納し、同様の材料からなる箱体(外箱)に内箱と共に蓄冷材を収容するようにした定温保管容器が提案されている。そして、斯かる容器においては、内箱の外周側全体に亘って潜熱型の蓄冷材を配置し、かつ、蓄冷材を凝固状態と溶融状態の2種類の態様で使用することにより、精密な温度管理を行うようにしている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3071064号公報
【特許文献2】特開2011−51632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、真空断熱構造の容器は、断熱性に優れている反面、携行するには重量が大きすぎると言う問題がある。一方、発泡ポリスチレン製の容器は、外部からの衝撃で破損し易く、繰り返して使用するには耐久性に欠けると言う問題がある。そして、従来の保冷容器は、何れも、被冷却物が収容された内箱(小箱)と保冷材とを容器本体(外箱)に収容するに当たり、これらを適切な位置に配置する必要があり、被冷却物や保冷材の出し入れに手間が掛かり、取り扱い難いと言う問題がある。
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的軽量で携行し易く、耐久性に優れ、被冷却物や保冷材の出し入れが極めて容易であり、しかも、被冷却物の温度を長時間に渡って一定に保持し得る保冷容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の保冷箱においては、柔軟な構造を有する外箱と、断熱性を有する内箱とからなる二重箱構造を採用し、かつ、外箱内に隙間を設けて内箱を配置することにより、外部からの衝撃に対する内箱の損傷を防止すると共に、内箱の回りの空気層により断熱性を更に高め、そして、内箱の内箱本体内に特定構造の仕切部材を配置し、当該仕切部材によって被冷却物収容領域と保冷材収容領域を形成することにより、外箱の蓋および内箱の蓋を開け、被冷却物および保冷材をそれぞれに直接出し入れできるようにした。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、保冷材と共に被冷却物を収容して当該被冷却物の温度を所定範囲に保持する保冷容器であって、有底筒状の外箱本体の上端に蓋を設けてなり且つ柔軟な構造を有する可搬式の外箱と、有底筒状の内箱本体の上端に蓋を装着してなり且つ断熱性を有する内箱とを備え、前記内箱は、前記内箱本体の外側面側に隙間を設けて前記外箱の中に位置決めされた状態に配置され、前記内箱本体内には、当該内箱本体の中心線に沿って筒状体を立設した構造の仕切部材が配置されており、前記外箱の蓋および前記内箱の蓋を開けた状態において、前記筒状体の内部に被冷却物を上方から直接出し入れ可能で且つ前記筒状体の外周部に保冷材を上方から直接出し入れ可能に構成されていることを特徴とする保冷容器に存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る保冷容器によれば、断熱性を有する内箱が外箱内に配置された二重箱構造により、断熱性能および耐衝撃性能を高めることができ、また、外箱の蓋および内箱の蓋を開けることにより、被冷却物および保冷材を直接出し入れできるため、取り扱いが極めて容易である。そして、仕切部材によって内箱本体内を被冷却物収容領域と保冷材収容領域に区画し、被冷却物の周囲を保冷材で囲むことができるため、長時間に渡って被冷却物の温度を一定に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る保冷容器の主要部の構成を示す展開斜視図である。
【図2】本発明に係る保冷容器の内箱の内部構造を示す展開斜視図である。
【図3】本発明に係る保冷容器の保冷性能を示すグラフである(測定例1)。
【図4】本発明に係る保冷容器の保冷性能を示すグラフである(測定例2)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る保冷容器の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の保冷容器は、図2に示すように、保冷材4と共に被冷却物5を収容して当該被冷却物の温度を所定範囲に保持する容器であり、検体、医薬品、化学品、試薬などの保管、輸送に使用される。被冷却物5である検体、医薬品などは、外気を遮蔽するためにフィルム等の包装材料で包装されていてもよいし、また、汚染や過冷却を防止するために専用の小容器に収容されていてもよい。
【0013】
本発明において使用される保冷材4としては、ドライアイスや蓄冷材が挙げられるが、これらは被冷却物の管理温度に応じて適宜選択される。蓄冷材は、プラスの温度閾で比較的長時間に渡って被冷却物5の温度を管理するのに好適である。融点が0℃の蓄冷材としては、高吸水性ポリマーや防腐剤、安定剤を水に添加したものが挙げられる。融点が0℃以下の蓄冷材としては、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化カリウム等の無機塩を水に溶解させたものが挙げられる。また、融点が0℃よりも高い蓄冷材としては、テトラn−ブチルアンモニウム(TBAB)、n−テトラデカン(n−パラフィン系)、カプリン酸(脂肪酸)、チオ硫酸ナトリウム(無機水和物)等を水に溶解させたものが挙げられる。
【0014】
本発明の保冷容器は、図1に示すように、耐衝撃性および断熱性を高めるため、二重箱構造に構成されており、有底筒状の外箱本体10の上端に蓋11を設けてなり且つ柔軟な構造を有する可搬式の外箱1と、有底筒状の内箱本体20の上端に蓋21を装着してなり且つ断熱性を有する内箱2とを備えている。
【0015】
外箱1は、厚さ3〜8mm程度の発泡ポリウレタン等の発泡樹脂シートの両面を撥水性シートで被覆してなるマット状の素材で構成されている。具体的には、外箱1は、発泡ポリウレタンシートを布状の素材に挟み込んで縫製したものである。外箱1の表面に使用される布状の素材としては、例えば、ナイロン、ポリエステル等の生地に撥水加工を施したものが挙げられる。
【0016】
外箱本体10は、底面形状が例えば正方形で且つ上端が開口された四角筒状に形成されており、蓋は、外箱本体10の開口部を覆う正方形に形成されている。蓋11の一辺部は外箱本体10に縫い付けられ、他の3辺部には耳片が張り出されている。そして、これら耳片の内側と外箱本体10の上端外周部には面ファスナーが取り付けられ、蓋11を閉めた際に耳片が外箱本体10に貼り付くようになされている。外箱1の外形寸法は、水平断面視した場合の一辺が300〜400mm程度、高さが300〜400mm程度に設計されている。また、簡単に持ち運びできるように、持ち手または肩紐が外箱本体10に取り付けられている。図1中の符号14は肩紐を示している。
【0017】
内箱2は、断熱性と耐衝撃性を高めるため、金属板と発泡樹脂を積層した複合材で構成されている。具体的には、図2に示すように、内箱2の内箱本体20は、厚さ0.5〜2mm程度のステンレス板で各形成された直径および高さの異なる有底円筒状の外缶と内缶とを入れ子状態に重ね、その隙間に例えばウレタンを注入、発泡させて構成されている。上記のように内箱本体20の表面を金属で構成した場合には、被冷却物5を入れ替えるたびに洗浄することもできる。
【0018】
また、内箱2の蓋21は、内箱本体20と同様に、金属板と発泡樹脂を積層した複合材で構成されている。具体的には、平面形状が円形で且つ外周部に立ち下がり部分を有する逆浅皿状に形成された天板部と、平面形状が円形で且つ上端外周部に鍔を有する浅皿状に形成された裏板部とを重ね合わせ、その隙間に例えばウレタンを注入、発泡させて構成されている。すなわち、蓋21は、短軸二段円柱状に形成され、下端側の小径部は、内箱本体20の開口部に勘合するように設計されている。
【0019】
内箱本体20の外径は240〜300mm程度、内箱本体20の内径は210〜270mm程度、内箱本体20の断熱材(発泡ウレタン)の厚さは10〜20mm程度であり、内箱本体20の高さは240〜300mm程度である。内箱2の蓋21の厚さは70〜80mm程度であり、後述する板状の断熱材23を内箱本体20の上部に別途配置しない場合は、前記の蓋21の厚さは40〜60mm程度である。また、内箱本体20の外周面および蓋21の外周部には、当該蓋を気密に閉じるため、留め具24が取り付けられている。更に、外箱1に対して内箱2を容易に出し入れできるように、内箱本体20には、持ち手25が取り付けられている。
【0020】
また、内箱2の蓋21には、庫内温度を管理するための温度計7が取り付けられている。斯かる温度計7としては、白金測温抵抗体、熱電対、サーミスタ等をセンサーに使用し、液晶画面に測定温度を表示するものであれば、各種の温度計が使用できる。蓋21に埋め込める大きさの温度計7としては、例えば、株式会社ティアンドデイ社製のデータロガー「TR−71Ui」(商品名)が挙げられる。
【0021】
図1に示すように、上記の内箱2は、内箱本体20の外側面側に隙間を設けて前述の外箱1の中に位置決めされた状態に配置されている。具体的には、外箱本体10内の底部および上端部には、発泡ウレタン又は発泡ポリスチレンからなり且つ平面形状が外箱本体10に勘合する形状、換言すれば、平面形状が正方形に形成された支持板12、13が配置されている。外箱本体10内の底部に配置される支持板12には、内箱2の底部が嵌合する円形の窪み12cが当該支持板の上面に設けられている。また、外箱本体10内の上端部に配置される支持板13には、内箱2の上端部(蓋21の部分)が嵌合する円形の窪み13cが当該支持板の下面に設けられている。
【0022】
上下の支持板12、13の厚さは60〜80mm程度、窪み12c、13cの深さは40〜60mm程度である。すなわち、内箱2は、外箱1の内部に配置した場合、上下の支持板12、13で挟み込まれることにより、遊動することなく当該外箱内部の中央に位置決めされようになされている。なお、操作性を高めるため、外箱本体10内の上端部に配置される支持板13は、外箱1の蓋11の裏面に面ファスナー等で予め貼着されていてもよい。
【0023】
本発明の保冷容器においては、取扱い性を高め且つ被冷却物の温度を一定に保持するため、図2に示すように、内箱本体20内には、当該内箱本体の中心線に沿って筒状体を立設した構造の仕切部材3が配置されている。斯かる仕切部材3は、内箱本体20内を被冷却物収容領域と保冷材収容領域に区画するものであり、ポリエチレン、ポロプロピレン等を射出成型することにより、例えば、扁平な有底円筒状容器である外側円筒部30の中心に筒状体としての内側円筒部31を突設した構造の二重有底円筒状に形成されている。
【0024】
内箱2に仕切部材3を配置した状態においては、当該仕切部材の内側円筒部31の内部が被冷却物収容領域とされ、外側円筒部30と内側円筒部31との間隙が保冷材収容領域とされる。仕切部材3は、その厚さが0.5〜2mm程度、高さが100〜140mm程度であり、外側円筒部30の外径は210〜270mm程度、内側円筒部31の外径は50〜130mm程度である。本発明の保冷容器は、上記のような仕切部材3が内箱2に配置されていることにより、外箱1の蓋11及び内箱2の蓋21を開けた状態において、内側円筒部31(筒状体)の内部に被冷却物5を上方から直接出し入れ可能で且つ内側円筒部31(筒状体)の外周部に保冷材4を上方から直接出し入れ可能に構成されている。なお、仕切部材3は、円盤の中心に当該円盤の中心線に沿わせて円筒体を配置した構造のものでもよい。
【0025】
また、本発明の保冷容器においては、内箱2の断熱性能を一層高めるため、図2に示すように、内箱本体20内の底部および上端部には、発泡ポリスチレン等の発泡樹脂からなり且つ外箱本体10の断面部に嵌合する板状の断熱材22、23が配置されている。すなわち、内箱2においては、内箱本体20内の底部に断熱材22が配置され、当該断熱材の上に前述の仕切部材3が配置され、当該仕切部材の上部に断熱材23が配置されている。上記の断熱材22,23は、図に例示するように円板状に形成され、その厚さを10〜30mm程度に設計されている。なお、操作性を高めるため、仕切部材3の上部に配置される断熱材23は、蓋21の裏面に面ファスナー等で予め貼着されていてもよい。また、上記の断熱材23を使用せずに、内箱2の蓋21の内側の円板状の樹脂成形体の厚さを厚く設計することもできる。
【0026】
本発明の保冷容器を使用する場合は、先ず、外箱1の蓋11を開け、外箱本体10の上部にある支持板13を取り出した後、内箱2の蓋21を開け、内箱本体20内の上部の断熱材23を取り出す。次いで、保冷材4として、予め冷却または凍結された蓄冷材を内箱2内の仕切部材3に沿わせて装填する。具体的には、仕切部材3で区画された保冷材収容領域、換言すれば、内側円筒部31(筒状体)の外周部に蓄冷材を配置する。
【0027】
使用する蓄冷材の種類、量およびその配置方法は、被冷却物5の保持すべき温度に応じて適宜選択できる。例えば、融点の異なる2種または3種の蓄冷材を使用し、融点の低い蓄冷材を外側に配置してもよい。図2では、保冷材4として、融点の異なる3種の蓄冷材をそれぞれ環状に配列する例を示している。なお、内箱2への蓄冷材の装填に当たっては、冷却前の蓄冷材を仕切部材3に収容し、当該仕切部材ごと冷蔵庫や冷凍庫に収容して蓄冷材を冷却または凍結し、使用する際に仕切部材3ごと内箱本体20に収容するようにしてもよい。
【0028】
内箱2に蓄冷材を装填した後は、仕切部材3で区画された被冷却物収容領域、換言すれば、内側円筒部31(筒状体)の内部に被冷却物5を収容する。そして、内箱本体20内の上部に再び断熱材23を配置した後、内箱2の内箱21を閉め、次いで、外箱本体10の上部に支持板13を配置して内箱2の上端部を固定した後、外箱1の蓋11を閉じる。上記のようにして被冷却物5を保管または運搬した後、被冷却物5を取り出す場合には、外箱1の蓋11を開け、支持板13を取り出した後、内箱2の蓋21を開け、上部の断熱材23を取り出すことにより、仕切部材3の内側円筒部31(筒状体)から簡単に被冷却物5を取り出すことができる。
【0029】
上記のように、本発明の保冷容器においては、柔軟な構造を有する外箱1と、断熱性を有する内箱2とからなる二重箱構造を採用し、かつ、外箱1内に隙間を設けて内箱2を配置することにより、外部からの衝撃に対する内箱2の損傷を防止すると共に、内箱2の回りの空気層により断熱性を更に高めている。そして、内箱2の内箱本体20内に特定の構造の仕切部材3を配置し、当該仕切部材によって被冷却物収容領域と保冷材収容領域を形成することにより、外箱1の蓋11及び内箱2の蓋21を開け、被冷却物5及び保冷材4をそれぞれに直接出し入れする。
【0030】
すなわち、本発明の保冷容器によれば、断熱性を有する内箱2が外箱1内に配置された二重箱構造により、断熱性能および耐衝撃性能を高めることができ、また、外箱1の蓋11及び内箱2の蓋21を開けることにより、被冷却物5及び保冷材4を直接出し入れできるため、取り扱いが極めて容易である。そして、仕切部材3によって内箱本体20内を被冷却物収容領域と保冷材収容領域に区画し、被冷却物5の周囲を保冷材4で囲むことができるため、長時間に渡って被冷却物5の温度を一定に保持することができる。
【実施例】
【0031】
本発明の保冷容器について、保冷材と共に被冷却物5を収容して当該被冷却物の温度変化を測定することにより、その保冷性能を確認した。保冷容器は、次表に示す仕様で製作した。
【0032】
【表1】

【0033】
被冷却物5の試料として、直径37mm・高さ80mmの瓶3本にそれぞれ水50ミリリットルを入れ、これらの瓶をポリ袋に収容し、更にポリ袋の外側をアルミホイルで包んだものを使用した。保冷材4は、4℃タイプ(融解温度4℃)の蓄冷材、および、0℃タイプ(融解温度0℃)の蓄冷材の2種類を準備した。各蓄冷材は、水とTPABからなる液状組成物を袋に充填したものであり、包装状態の1個の蓄冷材は、幅60×長さ120×厚さ20(mm)、重量90gであった。
【0034】
測定例1:
室温が25℃に設定された室内に外箱1及び内箱2を開放状態で2時間以上放置した。被冷却物5は、アルミホイルの内側(図2の符号6で示す位置)に温度センサーを取り付けた後、当該被冷却物の温度が一定となるまで、庫内温度3℃に設定した冷蔵庫で十分に冷却した。また、4℃タイプの蓄冷材22個を庫内温度−20℃の冷凍庫で一旦凍結させた後、これを庫内温度3℃に設定した冷蔵庫に移して12時間以上保管した。
【0035】
測定においては、室温25℃の室内に保冷容器を置き、上記の22個の4℃タイプの蓄冷材を仕切部材3の内側円筒部31の外周部に2〜3重に重ねた状態で環状に配置し、また、仕切部材3の内側円筒部31に上記の被冷却物5を装填し、内箱2の蓋21、外箱1の蓋11を直ちに閉じた。そして、被冷却物5に取り付けた温度センサーで温度変化を確認したところ、図3のグラフに示すような温度推移が見られ、被冷却物5の2つの測定点の温度が6℃以上になるまでの所要時間は、17時間、19時間であった。
【0036】
測定例2:
保冷材4として、4℃タイプの蓄冷材12個、0℃タイプの蓄冷材10個を使用した。4℃タイプの蓄冷材12個については、庫内温度−20℃の冷凍庫で一旦凍結させた後、これを庫内温度3℃に設定した冷蔵庫に移して12時間以上保管した。一方、0℃タイプの蓄冷材10個については、庫内温度−20℃の冷凍庫で一旦凍結させた後、これを庫内温度0℃に設定した他の冷蔵庫に移して1時間以上保管した。
【0037】
測定においては、蓄冷材を仕切部材3の内側円筒部31の外周部に環状に配置するに当たり、4℃タイプの蓄冷材を内側に配置し、0℃タイプの蓄冷材を外側に配置した。その他の条件は、測定例1と同様とし、そして、測定例1と同様に被冷却物5に取り付けた温度センサーで温度変化を確認したところ、図4のグラフに示すような温度推移が見られ、被冷却物5の2つの測定点の温度が6℃以上になるまでの所要時間は、何れも20時間以上であった。なお、測定例2のように、内箱2において4℃タイプの蓄冷材を内側に配置し、0℃タイプの蓄冷材を外側に配置することにより、被冷却物5に対する一層高い保冷効果が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0038】
1 :外箱
10:外箱本体
11:蓋
12:支持板
12c:窪み
13:支持板
13c:窪み
14:肩紐
2 :内箱
20:内箱本体
21:蓋
22:断熱材
23:断熱材
24:留め具
25:持ち手
3 :仕切部材
30:外側円筒部
31:内側円筒部(筒状体)
4 :保冷材
5 :被冷却物
6 :温度測定点
7 :温度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保冷材と共に被冷却物を収容して当該被冷却物の温度を所定範囲に保持する保冷容器であって、有底筒状の外箱本体の上端に蓋を設けてなり且つ柔軟な構造を有する可搬式の外箱と、有底筒状の内箱本体の上端に蓋を装着してなり且つ断熱性を有する内箱とを備え、前記内箱は、前記内箱本体の外側面側に隙間を設けて前記外箱の中に位置決めされた状態に配置され、前記内箱本体内には、当該内箱本体の中心線に沿って筒状体を立設した構造の仕切部材が配置されており、前記外箱の蓋および前記内箱の蓋を開けた状態において、前記筒状体の内部に被冷却物を上方から直接出し入れ可能で且つ前記筒状体の外周部に保冷材を上方から直接出し入れ可能に構成されていることを特徴とする保冷容器。
【請求項2】
外箱を構成する軟弾性素材が、発泡樹脂シートの両面を撥水性シートで被覆してなるマット状の素材である請求項1に記載の保冷容器。
【請求項3】
内箱を構成する断熱性素材が、金属板と発泡樹脂を積層した複合材であり、内箱の少なくとも外表面が、金属板で構成されている請求項1又は2に記載の保冷容器。
【請求項4】
内箱本体内の底部および上端部には、発泡樹脂からなる板状の断熱材が配置されている請求項1〜3の何れかに記載の保冷容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−103747(P2013−103747A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249312(P2011−249312)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(591107034)日本液炭株式会社 (17)
【Fターム(参考)】