説明

保冷容器

【課題】積み上げ作業を容易に行うことができる保冷容器を提供する。
【解決手段】下側の保冷容器1に上側の保冷容器1を積み重ねるべく下側の保冷容器1に対して上側の保冷容器1を前後方向に摺動させる際に、前後方向に沿って上側の保冷容器を案内する案内手段を備え、案内手段は、容器本体10の底面又は前記上蓋の上面の一方に突設されると共に前後方向に沿って延設される前後方向凸部18Aと、容器本体10の底面又は前記上蓋の上面の他方に突設されると共に、案内の際に前後方向凸部18Aに対して前後方向に直交する幅方向の両側に位置するように設けられる幅方向凸部24,24,25,26とを備え、幅方向に複数設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚を保冷輸送する際に使用する保冷容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚を収容して目的地へ輸送するための保冷容器として、発泡合成樹脂で形成されたものが知られている。この保冷容器は、上面が開口する箱状の容器本体と、容器本体の開口を開閉するように容器本体に対して着脱自在に取り付けられる上蓋とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる保冷容器は、容器本体の開口から魚を収容して該開口を上蓋で閉塞することで、魚を保冷状態で収容することができる。そして、魚を収容した保冷容器は、複数個を上下に積み重ねた状態で輸送(例えば、空輸や陸送など)される。
【0004】
ここで、保冷容器には、輸送時に積み重ねた保冷容器が荷崩れしてしまわないように、前記積み重ね状態を保持する(具体的には、上下の保冷容器の相対位置を位置決めする)ことができる凹凸嵌合部が設けられている。この凹凸嵌合部は、上下方向に積み重ねたときに、下側の保冷容器の上蓋と上側の保冷容器の容器本体の底部が凹凸嵌合するように構成されており、凹部と該凹部に内嵌する凸部とを備えている。この凹部は、上蓋の上面に、該上面の外周部よりも径内側部分全体が下方に凹となるように形成されている。また、凸部は、容器本体の底面に、該底面の外周部よりも径内側部分全体が下方に凸となるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−151421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複数個の保冷容器を上下に積み重ねる際には、作業者は、上側になる保冷容器を下側になる保冷容器に対して摺動させる積み上げ作業を行っている。具体的には、作業者は、上側になる保冷容器の幅方向(左右方向)位置を下側になる保冷容器の幅方向位置に合わせて、該上側の保冷容器を前後方向(長手方向)に押して下側の保冷容器に対して摺動させる積み上げ作業を行っている。
【0007】
しかしながら、上記従来の保冷容器にあっては、前記積み上げ作業における摺動の最中に凹部が凸部を案内する機能を、前記凹凸嵌合部が有していない。そのため、上側の保冷容器が、正しい積み重ね位置、具体的には、下側の保冷容器の凹部に対して上側の保冷容器の凸部が内嵌する位置からずれてしまうことがある。そうすると、位置ずれした上側の保冷容器を、凸部が凹部に内嵌するように位置合せしなければならず、積み上げ作業が手間のかかる煩わしい作業になってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、積み上げ作業を容易に行うことができる保冷容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る保冷容器は、発泡合成樹脂製の保冷容器であって、上面が開口する箱状の容器本体と、該容器本体の上面開口部を開閉するように容器本体に対して着脱自在に取り付けられる上蓋とを備え、複数個を上下に積み重ね可能に構成されている保冷容器において、下側の保冷容器に上側の保冷容器を積み重ねるべく前記下側の保冷容器に対して前記上側の保冷容器を前後方向に摺動させる際に、該前後方向に沿って上側の保冷容器を案内する案内手段を備え、該案内手段は、前記容器本体の底面又は前記上蓋の上面の一方に突設されると共に前記前後方向に沿って延設される前後方向凸部と、前記容器本体の底面又は前記上蓋の上面の他方に突設されると共に、前記案内の際に前記前後方向凸部に対して前後方向に直交する幅方向の両側に位置するように設けられる幅方向凸部とを備え、前記幅方向に複数設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、下側の保冷容器に上側の保冷容器を積み重ねるべく下側の保冷容器に対して上側の保冷容器を前後方向に摺動させる(つまり、積み上げ作業を行う)と、上側の保冷容器が案内手段によって案内される。ここで、案内手段は、摺動方向である前後方向に延設される前後方向凸部と、該前後方向凸部の幅方向両側に位置するように設けられる幅方向凸部とを備えており、しかも幅方向に複数設けられている。よって、上側の保冷容器は、位置ずれすることなく確実に案内されて摺動し、正しい位置で下側の保冷容器の上に積み重ねられる。
【0011】
また、本発明に係る保冷容器においては、前記容器本体の底面又は前記上蓋の上面の一方には、複数の案内手段の各前後方向凸部を幅方向で連結する連結凸部が突設されており、全ての幅方向凸部のうち、幅方向の最も外側に配置される一対の幅方向凸部は、前記案内の際に全ての前後方向凸部よりも幅方向外側に位置する一対の外側突出部であり、該一対の外側突出部以外の幅方向凸部は、前記案内の際に前後方向凸部どうしの間に位置する内側突出部であり、前記容器本体の底面又は前記上蓋の上面の他方には、前記内側突出部に対して前後方向に離間して配置される離間突出部が突設され、前記連結凸部は、前記上下に積み重ねた状態において、前記内側突出部と前記離間突出部との間に嵌合するように構成してもよい。
【0012】
かかる構成によれば、保冷容器を上下に積み重ねた状態において、連結凸部が内側突出部と離間突出部との間に嵌合するので、下側の保冷容器に対する上側の保冷容器の位置ずれを効果的に抑制することができる。
【0013】
また、本発明に係る保冷容器においては、前記連結凸部は、前記摺動の保冷容器の移動摺動方向手前側のみに配置されて備えていてもよい。
【0014】
かかる構成によれば、連結凸部が摺動方向(積み上げ作業における摺動の方向)手前側のみに設けられているので、積み重ねた状態にある上側の保冷容器を降ろす場合に、該保冷容器の摺動方向手前側部分を持ち上げれば、内側突出部及び離間突出部と連結凸部との嵌合が簡単に解除できる。よって、積み重ねた状態にある上側の保冷容器を容易に降ろすことができる。
【0015】
また、本発明に係る保冷容器においては、前記容器本体を構成する幅方向両側壁には、前記摺動の摺動方向手前側の部分に取手が設けられていてもよい。
【0016】
かかる構成によれば、幅方向両側壁の摺動方向(積み上げ作業における摺動の方向)手前側の部分に取手が設けられているので、該取手を利用して保冷容器を摺動方向手前側へ容易迅速に引き寄せることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上の如く、本発明によれば、案内手段が、摺動方向である前後方向に延設される前後方向凸部と、該前後方向凸部の幅方向両側に位置するように設けられる幅方向凸部とを備えること、幅方向に複数設けられることによって、上側の保冷容器を、前後方向(摺動方向)に確実に案内して下側の保冷容器の上に積み重ねることができる結果、下側の保冷容器に対する上側の保冷容器の積み上げ作業を容易に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態に係る保冷容器の全体の縦断正面図である。
【図2】同保冷容器の容器本体を示す図であって、(a)は平面図、(b)は底面図である。
【図3】同保冷容器の容器本体を示す図であって、(a)は一部を断面にした正面図、(b)は一部を断面にした側面図である。
【図4】同保冷容器の上蓋を示す図であって、(a)は平面図、(b)は縦断正面図、(c)は底面図、(d)はそれの縦断側面図である。
【図5】同保冷容器を積み重ねる動作を示す説明図であって、(a)は保冷容器を積み重ねる直前の図、(b)は積み重ねた状態の図、(c)は積み重ねた状態の縦断側面図、(d)は積み重ねた状態の縦断正面図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る保冷容器を示す図であって、(a)は保冷容器を積み重ねる直前の図、(b)は保冷容器を積み重ねた状態の図である。
【図7】本発明の第三実施形態に係る保冷容器を示す図であって、(a)は保冷容器を積み重ねる直前の図、(b)は保冷容器を積み重ねた状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る保冷容器の第一乃至第三実施形態について、図1〜図7を参酌して説明する。
【0020】
<第一実施形態>
図1〜図5に、本発明の第一実施形態に係る保冷容器を示している。
該保冷容器1は、図1に示すように、例えばマグロ、ブリ等の大型魚Fを上端の上面開口部10Aから収容することができる箱型状の発泡合成樹脂でなる容器本体10と、この容器本体10の上面開口部10Aを閉じて密閉状態にするための発泡合成樹脂でなる上蓋20とから構成されている。尚、発泡合成樹脂としては、特に限定されないが、例えば発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン等の各種発泡合成樹脂が利用できる。発砲倍率としては、本第一実施形態では、60倍としているが、40倍から80倍までの間の任意の値が強度及びコストの点で好ましいが、50倍から70倍までの間の任意の値がより好ましい。また、大型魚は、30kgから150kgまでの重量の魚を対象としているが、その中でも50kgから100kgまでの重量の魚を主としている。尚、収容する魚は、大型魚でなく、中型魚や小型魚であってもよい。
【0021】
容器本体10は、図2(a),(b)及び図3(a),(b)に示すように、平面視略長方形状に形成され、大型魚を載置する載置面11Aを備えた底部11と、底部11の一対の長辺である幅方向両縁部に上方に向けて立設された一対の側壁12,12と、底部11の一対の短辺である前後の縁部から上方に向けて立設された前後一対の側壁13,13とを備え、これら4つの側壁12,13の上部に大型魚を出し入れするための前記上面開口部10Aが形成されて構成されている。
【0022】
ここで、容器本体10の内部構造について説明すれば、底部11と側壁12,12との間の稜部分に、下方に凹状になるよう湾曲した円弧状の傾斜面部14が前後の側壁13,13に近い前後の部分を除く所定の長さに亘って設けられている。
【0023】
傾斜面部14は、前後方向中央部分(底部11の長辺方向中央を中心として底部11の長辺寸法の約1/2から1/4程度の長さの部分)14aと、その中央部分14aの前後端に連設される前側部分14b及び後側部分14bとを備えている。中央部分14aは、大きな径(例えば、R50〜R200)を有する円弧面に形成され、前側部分14b及び後側部分14bは、中央部分14aの径よりも小さい径を有し、かつ、前後の側壁13,13に向かって次第に円弧の径が小さくなる先窄まりの円弧面に形成されている。
【0024】
また、幅方向一対の側壁12,12及び前後一対の側壁13,13の上端面、即ち、容器本体10の上端面には、内縁全周に亘って上向きに突出する嵌合用凸条15が設けられている。
【0025】
底部11は、その下面(外面)側に、周方向全周に渡って同一幅に形成された偏平面の外周凹部17と、外周凹部17の径内側にて下方(外方)に突設される凸部18と、凸部18の長手方向一端側(前後方向後端側)を残して長手方向他端側(前後方向前端側)に開放するように切り欠いた凹部19とを備えている。
【0026】
凸部18は、後述する上蓋20の凹条嵌合部20Aに嵌合(内嵌)可能に構成されており、具体的には、容器本体10の前後方向(長手方向)に沿って延びるように幅方向に所定間隔(後述の内側突出部25,25の長さ分)を置いて設けられ、先端が丸くなった先端湾曲面18aを有する一対の前後方向凸部18A,18Aと、これら一対の前後方向凸部18A,18Aを前後方向後端側(後述する、積み上げ作業における摺動方向手前側)において連結する連結凸部18Bとからなるコの字状凸部に構成されている。一対の前後方向凸部18A,18A及び連結凸部18Bは、同一突出量で同一幅に構成され、底面(下面)が扁平になっている。一対の前後方向凸部18A,18Aが連結凸部18Bにより幅方向で連結されることによって、保冷容器1の強度を高めている。
【0027】
容器本体10の底部11の外周凹部17の四隅それぞれには、保冷容器1を幅方向両側から両手で保持する(持ち上げる)ための保持部31が形成されている。保持部31は、外周凹部17の底面から更に上方に凹むように形成された幅方向一対の前側保持部31A,31Aと、同じく幅方向一対の後側保持部31B,31Bとから構成されている。また、図2(b)及び図3(a)に示すように、容器本体10の幅方向両側壁の前後方向後端部それぞれには、後側保持部31B,31Bから上方へ延設するように、上下方向に長く切欠いて形成された取手32が設けられている。尚、この取手32,32は、上下に積み重ねられた保冷容器1の上側の保冷容器1を下側の保冷容器1に対して摺動させて積み下ろす積み下ろし作業の際に、該上側の保冷容器1を前後方向後方側へ引き出すべく、作業者が手を掛けることができるように構成されている。この取手32,32は、容器本体10の高さ方向(上下方向)ほぼ半分の高さまで切欠き形成されるとともに、切り欠き部に入れた指が引っ掛かり易いように後方側に抉られた凹状に形成されている。
【0028】
上蓋20は、図4(a),(b),(c),(d)に示すように、容器本体10の上面開口部10Aを覆う平面視略長方形状の上部21と、該上部21の一対の長辺である幅方向両縁部から下方に向けて垂下された幅方向一対の側壁22,22と、上部21の一対の短辺である前後の縁部から下方に向けて垂下された前後一対の側壁23,23とを備え、底面(下面)側が開口した箱状に形成されている。これらの側壁22,22,23,23で形成される上蓋20の下端面には、外縁全周に亘って下向きに突出する嵌合用凸条16が設けられている。上蓋20は、嵌合用凸条16を容器本体10の嵌合用凸条15の外側に嵌合することによって、容器本体10の上面開口部10Aを閉塞するように構成されている。また、上蓋20の前後の側壁23,23の外面に、容器本体10に嵌合した上蓋20を容易に嵌合解除することができるように指を挿入可能な横長状の切欠き20Kが形成されている。
【0029】
また、上蓋20の上部21には、その上面側に、外周部分のうち幅方向両側部分に長手方向に沿って突設される一対の外側突出部24,24と、これら外側突出部24,24間に位置し前後両端に一対突設される内側突出部25,25と、これら内側突出部25,25に対して径内側(上蓋20の前後方向中央側)に所定距離だけ離間して突設される前後一対の離間突出部26,26と、外側突出部24,24及び内側突出部25,25よりも径内側に凹設される偏平面の凹条嵌合部20Aとを備えている。本第一実施形態では、幅方向一対の外側突出部24,24と前後一対の内側突出部25,25とで、後述する一対の前後方向凸部18A,18Aを幅方向両側からそれぞれ規制すべく、一対の前後方向凸部18A,18Aに対して幅方向の両側に位置するように上方に突出する複数の幅方向凸部を構成している。
【0030】
外側突出部24,24は、前記幅方向凸部の構成部材の中でも幅方向の最も外側に配置されている。また、外側突出部24,24は、上部21の前後方向全域に亘るように形成されている。内側突出部25,25は、上部21の幅方向両端部を除く中央領域にのみ形成されている。つまり、内側突出部25,25の幅方向両側には、外側突出部24,24の前端部(又は後端部)との間に形成されるガイド用凹部27が形成されている。よって、外側突出部24,24と内側突出部25,25とは連続しておらず、ガイド用凹部27が存在する4箇所にて途切れている。
【0031】
凹条嵌合部20Aは、上部21のうち、外側突出部24,24及び内側突出部25,25で囲まれる領域(径内側の領域)のほぼ全域に形成されている。凹条嵌合部20Aは、ガイド用凹部27に連続するように、該ガイド用凹部27の底面(下面)と面一になっている。つまり、上部21の上面は、凹条嵌合部20Aとガイド用凹部27とを合せた領域においてフラット面となっている。
【0032】
内側突出部25,25よりも前後方向中央側に位置する離間突出部26,26は、上部21の幅方向両端部を除いた中央領域にのみ形成されており、幅方向の長さ及び位置は、内側突出部25,25の幅方向の長さ及び位置と同じである。よって、凹条嵌合部20Aの偏平面のうち離間突出部26,26の幅方向両側部分は、前記ガイド用凹部27と同じ幅(つまり、凹条嵌合部20Aの他の部分よりも幅狭)になっている。
【0033】
ここで、前記一方の前後方向凸部18A(図5(a)における下側の前後方向凸部18A)と、これに対応する一方の外側突出部24(図5(a)における上側の外側突出部24)及び内側突出部25,25からなる幅方向凸部とから、第1案内手段29が構成されている。また、前記他方の前後方向凸部18A(図5(a)における上側の前後方向凸部18A)と、これに対応する一方の外側突出部24(図5(a)における下側の外側突出部24)及び内側突出部25,25からなる幅方向凸部とから、第2案内手段30が構成されている。第1及び第2案内手段29,30は、幅方向に並べて2つ設けられた案内手段であり、複数の保冷容器1,1を凹凸嵌合状態で上下に積み重ねるべく、下側の保冷容器1に対して上側の保冷容器1を前後方向に摺動させる際に、前後方向(長手方向)に沿って上側の保冷容器1を案内する手段である。ここでは、2つの案内手段29,30各々の内側突出部が、内側突出部25,25で兼用されているが、内側突出部25,25を幅方向で2分割し、該分割した各々を、2つの案内手段29,30に対応するそれぞれの内側突出部とすることもできる。
【0034】
かかる構成の保冷容器1にあっては、陸送するトラックの荷台へ複数積み重ねる時や、空輸用の航空コンテナへ複数積み重ねる時、つまり、積み上げ作業を行う際には、一対の前後方向凸部18A,18Aのうちの一方の前後方向凸部(図5(a)の下側の前後方向凸部)18Aが、上蓋20の一方の外側突出部(図5(a)の上側の外側突出部)24の内側面24aとこれに対向位置する内側突出部25,25の幅方向一端面25a,25aとで形成される前記ガイド用凹部27に入り込む。そして、他方の前後方向凸部(図5(a)の上側の前後方向凸部)18Aが、上蓋20の他方の外側突出部(図5(a)の上側の外側突出部)24の内側面24aとこれに対向位置する内側突出部25,25の幅方向他端面25b,25bとで形成される前記前記ガイド用凹部27に入り込む。このような状態で上側の保冷容器1が移動案内される。尚、本第一実施形態では、上側の保冷容器1の各前後方向凸部18Aは、下側の保冷容器1の外側突出部24の内側面24aと離間突出部26の幅方向端面26a(26b)との間の幅狭部にも入り込んでいて移動案内される。つまり、離間突出部26は、案内機能も兼ねている。
【0035】
そして、上側の保冷容器1の連結凸部18Bが後端(保冷容器手前側)に位置する内側突出部25に当接する又は当接する直前に、上側の保冷容器1の後端部を持ち上げて連結凸部18Bが内側突出部25を乗り越えるように、上側の保冷容器1を移動させる。
【0036】
そして、図5(b)に示すように、内側突出部25とこれよりも前方に位置する離間突出部26との間に連結凸部18Bが嵌合して下側の保冷容器1に対して上側の保冷容器1を位置決めした状態で積み重ねることができる。
【0037】
このように、上側の保冷容器1は、2つの案内手段29,30で上側の保冷容器1が移動案内されるので、位置ずれすることなく確実に案内されて摺動し、正しい位置で下側の保冷容器1の上に積み重ねられる。
【0038】
尚、図5(c),(d)に示すように、下側の保冷容器1に対して上側の保冷容器1を積み重ねた状態においては、凸部18の下面(底面)と上蓋20の上面20Sとが接触しない。よって、上側の保冷容器1の移動時には、上蓋20の一対の外側突出部24,24とこれに対応する容器本体10の底部の外周凹部17の幅方向両側部分17A,17Aとが接触し、他の部分は接触していない状態になる。
【0039】
積み重ねた上側の保冷容器1を下側の保冷容器1に対して積み下ろす場合(つまり、積み下ろし作業を行う場合)には、上側の保冷容器1の後側保持部31B,31Bや一対の取手32,32に手を入れて上側の保冷容器1の後端部を上方に持ち上げ、連結凸部18Bを内側突出部25と離間突出部26との間から離脱させる。この後、取手32,32に手を入れて上側の保冷容器1を手前側(前後方向後方側)に引っ張ることによって、上側の保冷容器1を容易に下ろすことができる。尚、前後一対の離間突出部26,26を設けることによって、容器本体10に対する上蓋20の前後の方向性を持たないように構成することができるだけでなく、上側の保冷容器1の前端部を前側の離間突出部26にて支持することができる。尚、離間突出部26は、手前側(後端側)にのみ設けておくこともできる。
【0040】
また、凸部18を前端が開放されたコの字形状に構成することによって、次のような利点がある。つまり凸部18が前側にも連結凸部(図示せず)を備えた環状に構成されている場合には、積み重ね状態において、前側の2つの突出部25,26の間に前側の連結凸部が嵌合しているから、上側の保冷容器1を引き出す際に、突出部25,26間に嵌合している前側の連結凸部を嵌合解除すべく上側の保冷容器1を大きく持ち上げる必要がある。これに対して、コの字形状の凸部18では、後側(保冷容器移動方向手前側)の突出部25,26の間に嵌合した連結凸部18Bを嵌合解除すべく少しだけ上側の保冷容器1を持ち上げるだけで済み、保冷容器1の引き出し作業を容易に行える。
【0041】
尚、上側の保冷容器1と下側の保冷容器1との接触部分の少なくともいずれか一方に、摩擦係数低減用のテープなどを貼り付けておけば、摩擦抵抗が小さくなり、保冷容器1の摺動操作力を小さく抑えることができる。テープは、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)テープから構成する他、各種の合成樹脂製のテープ等であってもよい。
【0042】
また、下側の保冷容器1の上に上側の保冷容器1を摺動させながら積み重ねるときには、図5(a)(c)に示すように、上蓋20の一対の外側突出部24,24とこれに対応する容器本体10の底部の外周縁の左右両側部分17A,17Aとが接触した状態になり、上側の保冷容器1の底面と下側の保冷容器1の上蓋20の上面とが摺接する面積を減らすことができる。このことから、下側の保冷容器1に対して上側の保冷容器1を摺動させる人為操作力を小さく抑えることができ、上側の保冷容器1を容易に移動させることができる利点がある。また、外側突出部24,24と内側突出部25,25との間が途切れてガイド用凹部27となっていることから、下側の保冷容器1に対して上側の保冷容器1を平行となる水平姿勢で移動させることができる。
【0043】
<第二実施形態>
次に、図5(a)で示した容器本体10の底面に備えた凸部18を、図6(a),(b)に示すような構成とした第二実施形態について説明する。尚、図6(a)の右側の容器本体10は、底面図で示されており、左側の保冷容器1の上蓋20に積み重ねる際には、上下を反対にした姿勢にする。
【0044】
本第二実施形態の保冷容器1は、前記第一実施形態における連結凸部を設けず、つまり、一対の前後方向凸部18A,18Aが互いに連結されずに所定間隔を置いて平行になるように構成されている。また、上蓋20の4つの外側辺20B,20C,20D,20Eからなる矩形状の外周凸部よりも径内部分が凹となるように凹条嵌合部20Aを形成し、その凹条嵌合部20Aに一対の前後方向凸部18A,18Aが嵌合(内嵌)することによって、積み重ね状態にある上下の保冷容器1が位置決めされる。また、前記上蓋20の凹条嵌合部20A内の前後方向三箇所(前端部、中央部、後端部)に、上方に突出し幅方向に延びる内側突出部41,42,43が形成されている。
【0045】
本第二実施形態では、前記一方(図6(a)の容器本体10の上側)の前後方向凸部18A(図6(a)の上側の前後方向凸部18A)と、これに対応する上蓋20の幅方向一端側の外側辺20C及び3つの内側突出部41,42,43からなる幅方向凸部とから、第1案内手段29が構成されている。また、前記他方の前後方向凸部18A(図6(a)の下側の前後方向凸部18A)と、これに対応する上蓋20の幅方向他端側の外側辺20B及び3つの内側突出部41,42,43からなる幅方向凸部とから、第2案内手段30が構成されている。
【0046】
従って、積み上げ作業を行う際には、一対の前後方向凸部18A,18Aうちの一方の前後方向凸部(図6(a)の下側の前後方向凸部)18Aが上蓋20の幅方向一端側の外側辺20Bの内側面20bとこれに対向位置する内側突出部41,42,43の幅方向一端面41a,42a,43aとで形成されるガイド用凹部27に入り込む。そして、他方の前後方向凸部(図6(a)の上側の前後方向凸部)18Aが上蓋20の他方の外側辺20Cの内側面20cとこれに対向位置する内側突出部41,42,43の幅方向一端面41b,42b,43bとで形成されるガイド用凹部27に入り込む。このような状態で上側の保冷容器1が移動案内される。
【0047】
また、下側の保冷容器1の上に上側の保冷容器1を摺動させながら積み重ねるときに、上蓋20の外周縁の幅方向外側辺20B,20Cとこれに対応する容器本体10の底部の外周凹部17の左右両側部分17A,17Aとが接触するとともに、幅方向一対の前後方向凸部18A,18Aの底面(下面)のみが、上蓋20の外周縁の後端部分20Eの上面に接触した状態になり、上側の保冷容器1の底面と下側の保冷容器1の上蓋20の上面とが摺接する面積を減らすことができる。このことから、下側の保冷容器1に対して上側の保冷容器1を摺動させる人為操作力を小さく抑えることができ、上側の保冷容器1を容易に移動させることができる。
【0048】
尚、本第二実施形態において、一対の前後方向凸部18A,18Aどうしを連結する前記連結凸部を設けることも可能である。この場合、外側辺20Eが前記離間突出部となり、積み重ね状態では、前記連結凸部は、後側の内側突出部41と外側辺20Eとの間に嵌合する。
【0049】
<第三実施形態>
次に、第三実施形態として、容器本体10の底面に3本の前後方向凸部18Aを設けたものを、図7(a),(b)を用いて説明する。尚、図7(a)の右側の容器本体10は、底面図で示されており、左側の保冷容器1の上蓋20に積み重ねる際には、上下を反対にした姿勢にする。本第三実施形態では、容器本体10の底面に、容器本体10の前後方向(長手方向)に延びる同一幅でかつ同一長さに構成された3つの前後方向凸部18A,18A,18Aが形成されている。また、上蓋20の4つの外側辺20B,20C,20D,20Eからなる矩形状の外周凸部よりも径内部分が凹となるように凹条嵌合部20Aを形成し、その凹条嵌合部20Aに前後方向凸部18A,18A,18Aが嵌合(内嵌)することによって、積み重ねた上下の保冷容器が位置決めされる。また、前記上蓋20の凹条嵌合部20A内には、幅方向に所定間隔を置いて対向させるとともに前後方向に3列並ぶように合計6個の内側突出部34,35,36,37,38,39が突出形成されている。
【0050】
本第三実施形態では、幅方向一端側の前後方向凸部18A(図7(a)の上側の前後方向凸部18A)と、これに対応する上蓋20の幅方向一端側の外側辺20C及び3つの内側突出部37,38,39からなる幅方向凸部とから、第1案内手段29が構成されている。また、幅方向中央に位置する前後方向凸部18A(図7(a)の中段の前後方向凸部18A)と、6個の内側突出部34,35,36,37,38,39からなる幅方向凸部とから、第2案内手段30が構成されている。また、幅方向他端側の前後方向凸部18A(図7(a)の下側の前後方向凸部18A)と、これに対応する上蓋20の幅方向一端側の外側辺20B及び3つの内側突出部34,35,36からなる幅方向凸部とから、第3案内手段40が構成されている。
【0051】
従って、積み上げ作業を行う際には、3つの前後方向凸部18A,18A,18Aうちの幅方向一端側の前後方向凸部(図7(a)の上側の前後方向凸部)18Aが、上蓋20の幅方向一端側の外側辺20Cの内側面20cとこれに対向位置する内側突出部37,38,39の幅方向一端面37a,38a,39aとで形成されるガイド用凹部27に入り込む。そして、幅方向中央に位置する前後方向凸部(図7(a)の中段の前後方向凸部)18Aが、6個の内側突出部34,35,36,37,38,39の互いに対向する端面34a,37b,35a,38b,36a,39bで形成されるガイド用凹部27に入り込む。更には、幅方向他端側の前後方向凸部(図7(a)の下側の前後方向凸部)18Aが上蓋20の他方の外側辺20Bの内側面20bとこれに対向位置する内側突出部34,35,36の幅方向一端面34b,35b,36bとの間に入り込む。このような状態で上側の保冷容器1が移動案内される。
【0052】
また、下側の保冷容器1の上に上側の保冷容器1を摺動させながら積み重ねるときに、上蓋20の外周縁の幅方向外側辺20B,20Cとこれに対応する容器本体10の底部の外周凹部17の左右両側部分17A,17Aとが接触するとともに、幅方向一対の前後方向凸部18A,18Aの底面(下面)のみが、上蓋20の外周縁の後端部分20Eの上面に接触した状態になり、上側の保冷容器1の底面と下側の保冷容器1の上蓋20の上面とが摺接する面積を減らすことができる。このことから、下側の保冷容器1に対して上側の保冷容器1を摺動させる人為操作力を小さく抑えることができ、上側の保冷容器1を容易に移動させることができる。
【0053】
尚、本第三実施形態において、3つの前後方向凸部18A,18A,18Aどうし、或いは、2つの前後方向凸部18A,18Aどうしを連結する前記連結凸部を設けることも可能である。この場合、外側辺20Eが前記離間突出部となり、積み重ね状態では、前記連結凸部は、内側突出部34,37と外側辺20Eとの間に嵌合する。
【0054】
尚、本発明に係る保冷容器は、上記第一乃至第三実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0055】
前記第一及び第二実施形態では、案内手段を幅方向に2つ設け、第三実施形態では、案内手段を幅方向に3つ設けたが、案内手段を幅方向に4つ以上設けて実施することもできる。
【0056】
前記第一乃至第三実施形態では、容器本体10の底面に前後方向凸部を突設し、上蓋20の上面に幅方向凸部を突設したが、容器本体10の底面に幅方向凸部を突設し、上蓋20の上面に前後方向凸部を突設して実施することもできる。
【符号の説明】
【0057】
1…保冷容器、10…容器本体、10A…上面開口部、11…底部、11A…載置面、12,13…側壁、14…傾斜面部、14a…中央部分、14b…前側部分、14b…後側部分、14b…前側部分、14b…後側部分、15…嵌合用凸条、16…嵌合用凸条、17…外周凹部、17A…左右両側部分、18…凸部、18A…前後方向凸部、18B…連結部、18a…先端湾曲面、19…凹部、20…上蓋、20A…凹条嵌合部、21…上部、22,23…側壁、24…外側突出部、24a…内側面、25…内側突出部、26…離間突出部、27…ガイド用凹部、29,30…案内手段、31…保持部、32…取手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡合成樹脂製の保冷容器であって、上面が開口する箱状の容器本体と、該容器本体の上面開口部を開閉するように容器本体に対して着脱自在に取り付けられる上蓋とを備え、複数個を上下に積み重ね可能に構成されている保冷容器において、
下側の保冷容器に上側の保冷容器を積み重ねるべく前記下側の保冷容器に対して前記上側の保冷容器を前後方向に摺動させる際に、該前後方向に沿って上側の保冷容器を案内する案内手段を備え、
該案内手段は、前記容器本体の底面又は前記上蓋の上面の一方に突設されると共に前記前後方向に沿って延設される前後方向凸部と、前記容器本体の底面又は前記上蓋の上面の他方に突設されると共に、前記案内の際に前記前後方向凸部に対して前後方向に直交する幅方向の両側に位置するように設けられる幅方向凸部とを備え、前記幅方向に複数設けられていることを特徴とする保冷容器。
【請求項2】
前記容器本体の底面又は前記上蓋の上面の一方には、複数の案内手段の各前後方向凸部を幅方向で連結する連結凸部が突設されており、
全ての幅方向凸部のうち、幅方向の最も外側に配置される一対の幅方向凸部は、前記案内の際に全ての前後方向凸部よりも幅方向外側に位置する一対の外側突出部であり、該一対の外側突出部以外の幅方向凸部は、前記案内の際に前後方向凸部どうしの間に位置する内側突出部であり、
前記容器本体の底面又は前記上蓋の上面の他方には、前記内側突出部に対して前後方向に離間して配置される離間突出部が突設され、
前記連結凸部は、前記上下に積み重ねた状態において、前記内側突出部と前記離間突出部との間に嵌合することを特徴とする請求項1に記載の保冷容器。
【請求項3】
前記連結凸部は、前記摺動の摺動方向手前側のみに配置されていることを特徴とする請求項2に記載の保冷容器。
【請求項4】
前記容器本体を構成する幅方向両側壁には、前記摺動の摺動方向手前側の部分に取手が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の保冷容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−49476(P2013−49476A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189350(P2011−189350)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】