説明

保冷容器

【課題】木箱のような外観形状を維持しつつ、梱包作業を容易に行える保冷容器を提供する。
【解決手段】発泡合成樹脂製の保冷容器であって、上面が開口する箱状の容器本体10と、該容器本体10の上面開口部10Aを開閉するように容器本体10に対して着脱自在に取り付けられる上蓋20とを備えた保冷容器において、前記上蓋20が、間隔を置いて平行に並べられた多数の長細い短冊状部分22と、これら短冊状部分22を連結して該短冊状部分22を一体化するための連結部分21とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡合成樹脂製の保冷容器であって、上面が開口する箱状の容器本体と、該容器本体の上面開口部を開閉するように容器本体に対して着脱自在に取り付けられる上蓋とを備えた保冷容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、魚(例えば塩鯖)を木箱に収納して目的地まで輸送することが行われている。この木箱は、4つの側板部からなる平面視が長方形の枠体及びこの枠体の対向する2つの側板部の下端に掛け渡され互いに間隔を置いて平行に並べた状態で前記側板部に釘打ちすることにより連結される多数の長細い短冊状板材からなる本体部と、この本体部の上端に載置される蓋とからなっている。この蓋は、互いに間隔をおいて平行に並べられた多数の長細い短冊状板材と、該多数の短冊状板材を連結すべく短冊状板材と直交する向きに配置された複数の板材とから構成されている。
【0003】
かかる木箱に魚を収納して出荷する場合には、まず、本体部の底部を構成する短冊状板材同士間の隙間を埋めるとともにそれら短冊状板材に魚が直接当たることがないように、発泡シートを本体部の底部に敷く。続いて、魚から発生するドリップが外部に漏れ出すことがないように発泡シートの上にビニールシートを敷く。この状態で魚を収納し、その後、魚から発生するドリップを吸い取るための紙パーチと呼ばれる紙製の吸収材を魚の上から覆い被せる。それから、木製の蓋との緩衝材としての発泡シートで吸収材の上を覆う。この状態で蓋をした後、バンドを掛け回して出荷する。
【0004】
上記木箱の場合には、魚を密閉状態で収納するため、或いは、魚が硬い短冊状板材で損傷するのを防ぐために、発泡シートを魚の上下に敷くと共に、ビニールシートで魚を覆う(包む)という作業が必要になる。従って、魚の梱包作業が手間のかかる煩わしい作業になるという不都合があった。
【0005】
上記梱包作業が容易に行えるように、発泡合成樹脂製の保冷容器が提案されている。この保冷容器は、長方形状の底壁及び底壁の外周縁から上方へ連設されて周囲に起立する4つの側壁からなる容器本体と、容器本体の上面開口部を開閉するように容器本体に対して着脱自在に取り付けられる蓋体とから構成されている。蓋体は、底壁とほぼ同じ大きさの平板部と、この平板部の外周縁から下方へ垂下して容器本体の被嵌合部に嵌合可能な嵌合部を有するスカート部とからなっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−68349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の保冷容器では、魚の下に配置される発泡シート及びビニールシートを敷く作業及び魚の上に発泡シートを覆い被せる作業を不要にすることができるため、梱包作業を容易に行える利点がある。しかし、保冷容器の外観形状が木箱のような優れたデザイン性を持つものでないため、木箱から発泡合成樹脂製の保冷容器へ全面的に切り替えることができないものであった。
【0008】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、木箱のような外観形状を維持しつつ、梱包作業を容易に行える保冷容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る保冷容器は、発泡合成樹脂製の保冷容器であって、上面が開口する箱状の容器本体と、該容器本体の上面開口部を開閉するように容器本体に対して着脱自在に取り付けられる上蓋とを備えた保冷容器において、前記上蓋が、間隔を置いて平行に並べられた多数の長細い短冊状部分と、これら短冊状部分を連結して一体化するための連結部分とから構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、発泡合成樹脂製の保冷容器であるため、魚を容器本体内に発泡シートを敷かなくても傷つけることなく収納(収容)することができる。容器本体に魚を収納した後は、上蓋を容器本体に取り付けることによって、上蓋がクッション材になるため、木箱のように魚の上に被せる発泡シートは必要としない。尚、魚から発生するドリップを吸収する吸収材は、必要に応じて容器本体内に入れることになる。ここで、前記保冷容器の上蓋が、間隔を置いて平行に並べられた多数の長細い短冊状部分と、これら短冊状部分を連結して一体化するための連結部分とから構成されていることから、木箱の蓋に非常に似通った外観形状になり、優れたデザイン性を確保することができる。
【0011】
また、本発明に係る保冷容器においては、前記連結部分の外縁は、前記多数の短冊状部分の外縁よりも内側に位置しており、前記容器本体に前記上蓋を取り付けた状態において、前記連結部分が前記容器本体の上面開口部に入り込み、前記連結部分の外縁よりも外側に位置する短冊状部分の外縁部分が前記容器本体の周縁の上面に当接する構成であってもよい。
【0012】
かかる構成によれば、容器本体に上蓋を取り付けた状態で、連結部分が上面開口部に入り込み、短冊状部分の外縁部分が容器本体の周縁の上面に当接して、容器本体への上蓋の取り付け(嵌め込み)が容易に完了する。
【0013】
また、本発明に係る保冷容器においては、前記短冊状部分の表面に木目の模様を形成するためのシボ加工が施されていることが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、短冊状部分の表面に、木目の模様を形成しておけば、木の風合いを持たせることができ、よりデザイン性に優れた上蓋に構成することができる。
【0015】
また、本発明に係る保冷容器においては、前記容器本体及び前記上蓋の発泡倍率を30倍〜50倍に設定していることが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、容器本体及び上蓋を、30倍〜50倍の低発泡倍率に設定しておけば、保冷容器の強度を確保することができながらも薄型化を図ることができ、より一層木の風合いを持たせてデザイン性に優れた上蓋に構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上の如く、本発明によれば、発泡合成樹脂製の保冷容器でありながら、多数の長細い短冊状部分を備えた上蓋を設けることによって、木箱のような外観形状を維持できて優れたデザイン性を確保することができ、梱包作業を容易に行える保冷容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の保冷容器の全体斜視図である。
【図2】同保冷容器の分解斜視図である。
【図3】同保冷容器の上蓋を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【図4】同保冷容器の容器本体を示す平面図である。
【図5】同保冷容器の容器本体を示す図であって、(a)は縦断側面図、(b)は縦断正面図、(c)は排水孔の構造を示す縦断面図である。
【図6】同保冷容器の容器本体の3つを積み重ねて上蓋をしてバンドを掛け回した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る保冷容器の実施形態について、図1〜図6を参酌して説明する。
【0020】
該保冷容器1は、図1及び図2に示すように、例えば数匹(例えば6匹)の塩鯖(図示せず)を上端の上面開口部10Aから収容することができる箱型状の発泡合成樹脂でなる容器本体10と、この容器本体10の上面開口部10Aを閉じるための発泡合成樹脂でなる上蓋20とから構成されている。尚、発泡合成樹脂としては、特に限定されないが、例えば発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン等の各種発泡合成樹脂が利用できる。発砲倍率としては、40倍としているが、30倍から50倍までの間の任意の値が強度を確保しながら薄型化を図ることができるだけでなく、木目の風合いを持たせることができる点で好ましい。また、図1及び図2に示す保冷容器は、鯖、鰹、ハマチなどの中型魚を対象としている容器であるが、ブリやマグロなどの大型魚の他、鯵、鰯などの小型魚を収納できる大きさの容器であってもよい。
【0021】
容器本体10は、図1、図2、図4及び図5(a),(b)に示すように、平面視略長方形状に形成され、塩鯖(以下、魚という)を載置する載置面11Aを備えた底部11と、底部11の一対の長辺である左右幅方向両縁部に上方に向けて立設された左右一対の側壁12,12と、底部11の一対の短辺である前後方向の縁部から上方に向けて立設された前後一対の側壁13,13とを備えている。これら4つの側壁12,12、13,13の上端に、魚を出し入れするための前記上面開口部10Aが形成されている。
【0022】
前記左右一対の側壁12,12は、前記底部11に相当する部分がその上側の上側部分12Bよりも内部に奥まった(引っ込んだ)外面になる下側部分12Aを備えており、上側部分12Bと下側部分12Aとの境界に段差を形成している。また、前後一対の側壁13,13は、底部11に相当する部分がその上側の上側部分13Bよりも奥まった(引っ込んだ)外面になる下側部分13Aを備えており、上側部分13Bと下側部分13Aとの境界に段差を形成している。下側部分13Aは、凸部13aと凹部13bとを左右方向に交互に形成した凹凸部から構成されている。しかも、それら下側部分12B,13Bの上端の上下高さを一致させることによって、下側部分12B,13Bが周方向において連続した周壁部を形成することができ、木で作った木箱を連想させるような木の風合いをより一層持たせることができ、デザイン性に優れた容器本体10にすることができる。
【0023】
また、左右一対の側壁(長辺側の側壁)12,12は、図4に示すように、前後方向中央部の厚みD1が前後方向両端部の厚みD2,D2よりも厚くなるように内面が前後方向中央部側ほど内側に盛り上がるように形成されており、保冷容器1を多数(例えば、3個以上)積み上げた場合でも、下側の保冷容器1の側壁12,12が、積み上げられた多数の保冷容器1から加わる重みによって潰れることや変形することを回避することができる。
【0024】
底部11の下面(底面)の外周縁には、下方へ突出する複数(図では10個)の長方形の突起11Bが所定間隔を置いて形成されている。それら突起11Bは、底部11の四隅付近にそれぞれ2個の突起11B,11Bが形成され、底部11の2つの長辺部分の長手方向ほぼ中央部にそれぞれ1個の突起11Bが形成されている。尚、突起11Bの形状及び大きさは自由に変更することができる。
【0025】
また、底部11は、図5(a),(b)に示すように、左右方向両端から左右方向中央部に向かうほど高くなるテーパー面11T1,11T2が形成されるとともに、前後方向両端から前後方向中央部に向かうほど高くなるテーパー面11T3,11T4が形成されている。従って、魚から発生するドリップや氷が解けた水は、底部11のテーパー面11T1,11T2、11T3,11T4による案内作用により、載置面11Aの四隅に移動案内される。その後、後述する排出口15に移動案内されて、外部へ排出される。
【0026】
容器本体10の側壁12,12、13,13の四隅のそれぞれには、図2、図4及び図5(c)に示すように、それら側壁12,12、13,13よりも厚みを有する壁部16が形成され、その壁部16に上下方向に貫通する通水孔14が形成されている。この通水孔14は、下方側ほど径が小さくなるテーパー状の開口部14Aと、開口部14Aの下端から上下方向ほぼ中央部に向かって径が小さくなる上側テーパー部14Bと、上下方向ほぼ中央部から下方側ほど径が大きくなる下側テーパー部14Cとを備えている。前記壁部16は、通水孔14が形成される関係上、所定の強度を確保するために隣り合う側壁12,13同士を斜めに連結して形成されている。このように形成することによって、容器本体10のコーナー部が内側に張り出して厚みを有する壁部16を構成することができる。尚、壁部16の突出端面16Aは、フラット面になっている。
【0027】
また、底部11の載置面11Aの四隅のそれぞれには、前記通水孔14側へドリップや水を案内するための傾斜面11Kが形成されるとともに、傾斜面11Kにて案内されたドリップや水を通水孔14と連通する排出空間14Dを通して外部へ排出するための排出口15が、容器本体10の四隅にそれぞれ形成された壁部16の下端に形成されている。
【0028】
排出口15は、図2に示すように、横長の長方形状に形成され、その左右幅の大きさは、前記壁部16の左右幅の大きさよりも小さくなっており、排出口15の形成に伴う容器本体10の強度低下を抑制できるようにしている。
【0029】
また、図2及び図5(a),(c)に示すように、壁部16の左右幅方向両端のそれぞれとこれに左右方向で隣り合う側壁12又は13との繋ぎ部分(図2に太い線で示している)17及び4つの側壁12,12、13,13の内側下端と底部11の外周縁の内側との繋ぎ部分(図2に太い線で示している)18を、曲率半径がR3で描かれる円弧面(外側に凸となる円弧面、図5(c)参照)に形成して、容器本体10の強度アップを図っている。
【0030】
上蓋20は、図3(a),(b),(c)に示すように、容器本体10の上面開口部10Aにスムーズに入り込むように該上面開口部10Aよりも少し小さな寸法のほぼ長方形状の平坦部21(連結部分に相当する)と、該平坦部21から上方に突出した多数(図では5つ)の長細い短冊状部分22とからなっている。どの短冊状部分22も、同じ形状で同じ大きさ(上下方向の厚みも同一の厚み)に構成され、平坦部21の外縁が5つの短冊状部分22の外縁よりも内側に位置している。つまり、平坦部21の長辺方向(前後方向)両端が、5つの短冊状部分22の長手方向両端よりも内側に位置し、平坦部21の短辺方向(左右方向)両端が、左右方向両端に位置する短冊状部分22,22の左右方向外側端よりも内側に位置している。尚、平坦部21と上面開口部10Aとの間の隙間が大きくなればなるほど、平坦部21が上面開口部10に入り易くなる反面、密閉度が低下するため、隙間の大きさは適宜考慮しながら設定する。また、密閉状態を実現するために前記隙間のない状態(平坦部21と上面開口部10Aとが嵌合する状態)に平坦部21の寸法を設定してもよい。
【0031】
平坦部21は、長方形の板状体の四隅に斜めにカットされた直線カット部21Kを備えた形状になっている。また、平坦部21は、すべての短冊状部分22をそれらの下側で連結して該短冊状部分22を一体化するための連結部分を構成している。
【0032】
5つの短冊状部分22のそれぞれは、その長手方向が平坦部21の長辺方向に沿うように配置され、かつ、互いに隣り合う短冊状部分22,22同士の間隔が等間隔になるように並行に配置されている。
【0033】
また、図3(a)に示すように、両端に配置された2つの短冊状部分22,22の間に位置する3つの短冊状部分22…のそれぞれは、平坦部21の上面21Aから上方へ突出する第1上側部分22Aと、該第1上側部分22Aの長手方向両端から前後方向外側に延びて平坦部21から食み出た第1端部分22B,22Bとからなっている。各第1端部分22Bは、平坦部21の短辺側の側面21Bの上側箇所からも前後方向外側に延びている。従って、図3(c)の拡大図に示すように、第1端部分22Bの上下方向の厚みF1が、第1上側部分22Aの上下方向の厚みF2に対してほぼ2倍の厚みになっている。このように第1端部分22B,22Bの厚みのみを厚くすることによって、上蓋20を閉じたときの外観上の見栄えが悪化することなく、上蓋20の厚みF3をできる限り薄型化することができる。ここでは、第1端部分22B,22Bの上下方向の厚みF1が第1上側部分22Aの厚みF2に対してほぼ2倍の厚みになっているが、どのような値に設定してもよい。
【0034】
さらにまた、両端に配置された短冊状部分22,22のうちの図3の下側(左側)の短冊状部分22は、平坦部21の上面21Aから上方へ突出する第2上側部分22Cと、第2上側部分22Cから平坦部21の外延から外側へ食み出た延長部分22Dとからなっている。延長部分22Dは、第2上側部分22Cの左右方向両端から左右方向外側に延びる第2延長部分22aと、第2延長部分22aの長手方向両端及び第2上側部分22Cの長手方向両端から長手方向外側に延びる第2端部分22b,22bとからなっている。第2延長部分22a及び第2端部分22b,22bは、前記第1端部分22Bと同様に、平坦部21の上側箇所からも延びている。従って、第2延長部分22a及び第2端部分22b,22bの上下方向の厚みが、第2上側部分22Cの厚みに対してほぼ2倍の厚みになっている。このように第2延長部分22a及び第2端部分22b,22bの厚みのみを厚くすることによって、上蓋20を閉じたときの外観上の見栄えが悪化することなく、上蓋20の厚みをできる限り薄型化することができる。ここでは、第2延長部分22a及び第2端部分22b,22bの上下方向の厚みが第2上側部分22Cの厚みに対してほぼ2倍の厚みになっているが、どのような値に設定してもよい。
【0035】
図1、図2および図3(a),(b)に示すように、前記短冊状部分22のうちの左右両端に位置する2つの短冊状部分22,22の左右方向外側の側面の前後方向前側と後側の2箇所の上端角部のそれぞれに、保冷容器1に掛け回されるバンドBが入り込んで位置決めされる凹部22Hが形成されている。
【0036】
前記5つの短冊状部分22の平坦部21から立ち上がる対向する一対の側面22F,22G(特に、図3(c)の拡大図参照)のそれぞれが、上端側ほど左右方向内側に位置するテーパー面に形成されている。このようにテーパー面を形成する構成にしておけば、成形後に金型を離間させたときに、成形品が離型しやすいといった利点がある。尚、図3(c)の拡大図では、テーパー面をわかり易くするために角度を大きくした図として描いているが、実際には小さな角度のテーパー面になっている。
【0037】
前記構成の上蓋20を見れば、左右方向で隣り合う短冊状部分22,22間に一段低くなった溝部分19が形成されている。この溝部分19に指を突っ込むことで掛け回されたバンドBを容易に掴むことができる。前記溝部分19は、平坦部21の上面21Aと短冊状部分22,22の平坦部21から立ち上がる左右一対の側面22F,22Gとで形成されている。
【0038】
上記構成の上蓋20を容器本体10へ取り付けるに伴って、平坦部(連結部分)21が容器本体10の上面開口部10Aに入り込み、平坦部(連結部分)21から外側に延びている短冊状部分22の両端及び左右方向両端に位置する短冊状部分22の左右外側端部が容器本体10の周縁の上面10B(図2及び図4参照)に当接することによって、上蓋20の容器本体10への取り付けが完了する。このとき、平坦部(連結部分)21が容器本体10の上面開口部10Aに入り込んでいるため、上蓋20が容器本体10に対して前後方向及び左右方向に移動することがないように位置決めされた状態になっている。前記上蓋20を容器本体10へ取り付けた状態では、上蓋20の短冊状部分22の長手方向両端面が容器本体10の前後の側壁13,13の外面と面一状になっている。また、左右方向両端部に位置する上蓋20の短冊状部分22,22の左右方向外側端面が左右の側壁12,12の外面と面一状になっている。
【0039】
魚を前記構成の保冷容器1に収納して出荷する直前の状態にするための手順を説明する。まず、第1の容器本体10に予定数(数匹)の魚を収納する。続いて、上蓋20をしないで、もう一つの別の第2の容器本体10に予定数(数匹)の魚を収納し、先の第1の容器本体10の上端に第2の容器本体10を積み重ねる。このとき、第1の容器本体10の上端内面に、第2の容器本体10の底部11の下面の外周縁に設けた複数(図では10個)の長方形の突起11Bが当接することによって、第1の容器本体10に対して第2の容器本体10を前後方向及び左右方向のいずれの方向にも位置決めした状態で積み重ねた状態にすることができる。また、魚に第2の容器本体10の底面が触れることがないようにしたい場合には、第1の容器本体10に収納された魚の上に発泡シートを敷くことになる。引き続き、第2の容器本体10に上蓋20をしないで、もう一つの別の第3の容器本体10に予定数(数匹)の魚を収納し、先の第2の容器本体10の上端に第3の容器本体10を積み重ねて上蓋20をする。このとき、前記と同様に、第2の容器本体10の上端内面に、第3の容器本体10の底部11の下面の外周縁に設けた複数(図では10個)の長方形の突起11Bが当接することによって、第2の容器本体10に対して第3の容器本体10を前後方向及び左右方向のいずれの方向にも位置決めした状態で積み重ねた状態にすることができる。また、魚に第3の容器本体10の底面が触れることがないようにしたい場合には、第2の容器本体10に収納された魚の上に発泡シートを敷くことになる。
【0040】
3つの容器本体10を積み重ねて一番上の第3の容器本体10に上蓋20が取り付けられた状態において、2本のバンドBを巻き付けて3つの容器本体10を一体化する(図6参照)。このとき、第1の容器本体10の底面と床面との間に突起11Bの高さ分の隙間が形成されていることから、バンドBを掛けやすい利点がある。また、冷凍庫や冷蔵庫で保管する場合でも、第1の容器本体10の底面の突起11Bと床面との間で水が凍結した場合でも、容器本体10を床面から容易に剥がすことができる。また、バンドBを掛けた状態において左右方向で隣り合う短冊状部分22,22間に一段低くなった溝部分19が形成されていることから、この溝部分19に指を突っ込むことによりバンドBを容易に掴むことができ、3つの容器本体10をバンドB,Bを掴んで容易に持ち運ぶことができる。尚、積み重ねられた最上部に位置する容器本体10内のドリップや水は、2段目の容器本体10の通水孔14を通して1段目の容器本体10の通水孔14に案内された後、外部へ排出される。
【0041】
前記のように、保冷容器1を、発泡合成樹脂製の容器本体10と上蓋20とで構成することによって、魚を容器本体10内に発泡シートを敷かなくても傷つけることなく収納(収容)することができる。容器本体10に魚を収納した後に、上蓋20を容器本体10に取り付ける場合には、上蓋20がクッション材になるため、木箱のように魚の上に被せる発泡シートを不要にできる。そして、保冷容器1の上蓋20が、間隔を置いて平行に並べられた多数の長細い短冊状部分22と、これら短冊状部分22を連結して該短冊状部分22を一体化するための平坦部(連結部分)21とから構成されていることから、木箱の蓋に非常に似通った外観形状になり、優れたデザイン性を確保することができる。また、容器本体10に、下側部分12Aや凹凸部13Aを設けることによって、更に容器本体10を木箱に非常に似通った外観形状にすることができ、より一層優れたデザイン性を確保することができる。
【0042】
図6に示すように、5つすべての短冊状部分22の表面に、木目の模様を形成するためのシボ加工が施されている。図6では、5つの短冊状部分22に形成した木目の模様をすべて同じ模様にしているが、異なる木目の模様に形成してもよい。また、短冊状部分22の表面以外の部分、例えば短冊状部分22の4つの周側面にも、木目の模様を形成するためのシボ加工を施してもよいし、平坦部(連結部分)21の上面21Aにもシボ加工を施してもよい。また、左右の側壁12,12及び前後の側壁13,13の一部または全部に木目の模様を形成するためのシボ加工を施してもよい。
【0043】
前記保冷容器を木の色に着色することによって、より一層木に似た雰囲気を出させることができる。着色する色としては、茶色、濃茶色、薄茶色、黄土色など適宜選択して使用する。保冷容器を木の色に着色するには、例えば染料を含浸させて着色された発泡合成樹脂粒子を用いて保冷容器を形成することが考えられる。この場合には、同じ色の発泡合成樹脂粒子を用いて成形することになるが、着色ムラや発泡時の発泡合成樹脂粒子毎の発泡度合いの違いなどにより、保冷容器全体を均一に着色することが難しく、部分的に色合いが異なることが多いものの、木の風合いをより一層持たせることができる効果を奏する。
【0044】
尚、本発明に係る保冷容器は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0045】
前記実施形態では、3つの容器本体10を積み重ねてバンドBにより一体化して出荷するようにしたが、2つの容器本体10又は4つ以上の容器本体10を積み重ねてバンドBにより一体化して出荷してもよいし、場合によっては、1つの保冷容器1にバンドBを掛けて上蓋20を容器本体10に固定して出荷してもよい。また、1つの保冷容器1を出荷する場合には、バンドではなく、上蓋20と容器本体10との凹凸嵌合構造によって上蓋20を容器本体10に固定して出荷するようにしてもよい。
【0046】
また、前記実施形態では、連結部分21が容器本体10の上面開口部10Aを覆う面積の平板部から構成したが、連結部分21が、多数の短冊状部分をそれらの長手方向と直交する方向に延びる複数の短冊状部分により連結された構成であってもよい。
【0047】
また、前記実施形態では、連結部分21が容器本体10の上面開口部10Aに入り込み、短冊状部分22が容器本体10の周縁の上面に当接する構成であったが、連結部分21が容器本体10の上面開口部10Aに入り込まず、容器本体10の周縁の上面に当接する構成であってもよい。
【0048】
また、前記実施形態では、魚から発生するドリップや氷が解けた水などを保冷容器の外部へ排水できる構成としたが、外部へ排水できない保冷容器であってもよい。この場合、ドリップや氷が解けた水などを吸収する吸収シートを保冷容器内に設けて実施してもよい。
【0049】
また、前記実施形態では、どの短冊状部分22も形状及び大きさを同じにしたが、形状及び大きさが異なる短冊状部分から構成してもよい。また、隣り合う短冊状部分22,22同士の間隔も異なる間隔であっても構わない。
【0050】
また、前記実施形態では、短冊状部分22と平坦部(連結部分)21とを一体成形した場合を示したが、短冊状部分22と平坦部(連結部分)21とを別々に成形し、それらを接着剤などにより一体化して上蓋20を構成してもよい。
【0051】
また、前記実施形態では、短冊状部分22の平坦部(連結部分)21から食み出た部分の下面を平坦部(連結部分)21の上面21Aよりも低くすることによって、上蓋20全体の上下方向の厚みを薄くしながらも、食み出た部分の上下方向の厚みのみを厚くできる構成としたが、食み出た部分の下面が平坦部(連結部分)21の上面21Aと同一レベルになるように短冊状部分22を構成して実施することもできる。
【符号の説明】
【0052】
1…保冷容器、10…容器本体、10…上面開口部、10B…上面、11…底部、11A…載置面、11B…突起、11K…傾斜面、11T1,11T2,11T3,11T4…テーパー面、12…側壁、12A…下側部分、13…側壁、13A…凹凸部、13a…凸部、13b…凹部、14…通水孔、14A…開口部、14B…上側テーパー部、14C…下側テーパー部、14D…排出空間、15…排出口、16…壁部、16A…突出端面、17,18…繋ぎ部分、19…溝部分、20…上蓋、21…平坦部(連結部分)、21A…上面、21B…側面、21K…直線カット部、22…短冊状部分、22A…第1上側部分、22B…第1端部分、22C…第2上側部分、22D…延長部分、22a…第2延長部分、22b…第2端部分、22H…凹部、22F,22G…側面、22e…貫通孔、B…バンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡合成樹脂製の保冷容器であって、上面が開口する箱状の容器本体と、該容器本体の上面開口部を開閉するように容器本体に対して着脱自在に取り付けられる上蓋とを備えた保冷容器において、
前記上蓋が、間隔を置いて平行に並べられた多数の長細い短冊状部分と、これら短冊状部分を連結して一体化するための連結部分とから構成されていることを特徴とする保冷容器。
【請求項2】
前記連結部分の外縁は、前記多数の短冊状部分の外縁よりも内側に位置しており、前記容器本体に前記上蓋を取り付けた状態において、前記連結部分が前記容器本体の上面開口部に入り込み、前記連結部分の外縁よりも外側に位置する短冊状部分の外縁部分が前記容器本体の周縁の上面に当接することを特徴とする請求項1に記載の保冷容器。
【請求項3】
前記短冊状部分の表面に木目の模様を形成するためのシボ加工が施されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の保冷容器。
【請求項4】
前記容器本体及び前記上蓋の発泡倍率を30倍〜50倍に設定していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の保冷容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−67410(P2013−67410A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207609(P2011−207609)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【出願人】(000158943)株式会社積水技研 (35)
【Fターム(参考)】