説明

保存可能な食品、およびこれを用いた食品包装体ならびに食品の保存方法

【目的】それ自体を長期に保存可能な食品を提供し、それを同一包装内に包装して長期に保存可能な食品包装体を提供する。
【構成】魚肉あるいは澱粉加工品にイソチオシアン酸アリルを混合して保存可能な食品を得る。この食品を、他の食品と共に同一包装内に包装する。イソチオシアン酸アリルを混合した食品から同組成物のガスが徐々に揮散して、同一包装内の殺菌ないしは静菌がなされる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は食品の保存に関し、より詳しくは、日配弁当や持ち帰り食品、さらには鍋物セットなどの食品を包装した包装体、また、これらに使用される素材等の、食品の保存にするものである。
【0002】
【従来の技術】食品の保存、鮮度保持については従来から多くの方法が提案されているが、その基本となることは、食品に付着、混入している微生物を殺菌して存在量を可及的に少なくすること、あるいはその増殖を抑制することである。
【0003】この手段としては、レトルト殺菌などの加熱殺菌が主流であり、近年では加熱せずにきわめて高い圧力をかけて殺菌する方法が提案されている。また、殺菌能力のある添加物を食品に混合する方法も知られている。
【0004】他方、微生物の増殖抑制手段は、乾燥、冷却が有効であり、また、静菌能力のある添加物の使用が行われている。さらに、食品の置かれる雰囲気を調整すること、例えば酸素を吸収除去したり、炭酸ガス、アルコールなどを雰囲気に充満させる、いわゆる脱酸素剤や他の雰囲気調整剤が広く使用されている。
【0005】しかし、日配弁当や持ち帰り食品、さらには鍋物セットなどの食品を包装した包装体に対しては、上記方法のうち限られた手段しか適用できない。すなわち、加熱や高圧による方法は、対象が加工食品であれば可能であるが、生の畜肉や魚介類、生野菜等には適用できない。また、雰囲気調整剤は密封した容器での適用は有効であるものの、雰囲気調整剤自体は食品でなく、特に弁当などでは醤油やソースの包装体と誤って開封されたり、誤食される恐れがある。また、別体に製造された雰囲気調整剤に微生物が付着していた場合は却って食品を汚染してしまう恐れもある。さらに、雰囲気調整剤に含まれる水溶性成分などが食品に移行する恐れもあった。
【0006】他方、殺菌剤や静菌剤を食品自体に添加、付与することは、上記問題はないものの、従来の殺菌剤や静菌剤は合成物質が主流で、人体に対する安全性に疑問があり、できるだけ使用は避けたいとの要望が強い。
【0007】このような人体に対する安全性を考慮したものとして、植物などの自然物から抽出した物質を使用することが提案されている。例えば特公平3−12857号公報、特開平2−113876号公報には、イソチオシアン酸アリル等のイソチアン酸化合物などを、ゼオライトや粘土鉱物に担持させ、適当な包装材料で包装した鮮度保持剤が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記方法では、従来の脱酸素剤等の雰囲気調整剤と同様、鮮度保持剤に付着した微生物による食品の汚染が心配である。また、誤食の恐れも同様である。さらに、イソチオシアン酸アリルは、沸点が150℃であって常温でも揮散するため、ゼオライトや粘土鉱物に担持させる方法では製造が困難であり、さらに、その保存も困難であった。
【0009】そこで本発明は、上記イソチオシアン酸アリルを使用して、上記汚染や誤食の恐れのない、保存可能な食品、およびこれを用いた食品包装体ならびに食品の保存方法を提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、食品に、イソチオシアン酸アリルまたはイソチオシアン酸アリルを含む精油を混合したことを特徴とする、保存可能な食品であり、好ましい態様は、この食品が魚肉練り製品または澱粉加工品である。また、本発明の他の発明は、上記食品を同一包装内に配置したことを特徴とする、食品包装体である。さらに他の発明は、上記食品を同一包装内に配置することを特徴とする、食品の保存方法である。
【0011】
【作用】本発明では、イソチオシアン酸アリルを食品に混合させており、このイソチオシアン酸アリルが微生物に対して有効に働き、食品自体に混入、付着した微生物の増殖が抑えられる。
【0012】また、この食品を他の食品と同一の包装内に収納すると、イソチオシアン酸アリルを混合させた食品からイソチオシアン酸アリルがガスとして放出され、同一の包装内に収納された食品に付着した微生物の増殖が抑えられる。
【0013】
【実施例】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の第1の発明は、食品に、イソチオシアン酸アリルまたはイソチオシアン酸アリルを含む精油(以下、単にイソチオシアン酸アリルという)を混合したことを特徴とする、鮮度が保持された食品である。
【0014】本発明においてイソチオシアン酸アリルを混合する食品は、特に限定されないが、後述するように当該食品からイソチオシアン酸アリルがガスとして継続して放出されることが望ましく、イソチオシアン酸アリルを均一に混合できるものがよく、魚肉練り製品または澱粉加工品であることが望ましい。より具体的には、蒲鉾、竹輪、薩摩揚げ、はんぺん、つみれ、魚肉ソーセージ、竹輪麩、白玉、春雨、その他の麺類などの食品が例示できる。
【0015】イソチオシアン酸アリルの混合量は、0.05〜5.0重量%であることが望ましい。0.05重量%より少ないと鮮度保持効果が十分でなく、5.0重量%より多いとイソチオシアン酸アリル自体が持つ刺激臭や苦みが顕著となり、食品の食味が低下する。
【0016】イソチオシアン酸アリルの混合方法は任意であるが、前述のように食品に均一に混合できる方法が好ましい。より具体的には、原料段階で原料を混合するときに、該原料を低温に保ちながらイソチオシアン酸アリルを加え、混合する方法が好ましい。
【0017】本発明の他の発明は、上記イソチオシアン酸アリルを混合した食品を、他の食品とともに同一包装内に配置するものであり、これによりイソチオシアン酸アリルを混合した食品だけでなく、同一包装内にある食品の保存が可能となるものである。
【0018】包装の形態は任意であり、密閉された袋状容器やトレー状容器が特に好ましいが、弁当などのように比較的短期間で消費されるものであれば、密封は必ずしも必要とされない。
【0019】<実施例1>白身魚の冷凍擂り身100重量部に対し、澱粉5重量部、水10重量部、塩3重量部、イソチオシアン酸アリル0.3重量部をそれぞれ混合し、擂かい機により擂かい、混合した。これをポリ塩化ビニリデン製のチューブに充填し、開口部を結索して、10℃で8時間放置した後、水蒸気で30分加熱し、かまぼこを製造した。上記かまぼこを一切れが約5gとなるようにスライスし、この3枚を発泡スチロール製の弁当容器(外寸150×200×35mm)に、米飯150gおよび他の食材(一口カツ、鰺の塩焼き、たまご焼き、野菜(玉葱、オオバ)の天麩羅、キンピラゴボウ、タクアン)と一緒に収容し、発泡スチロール製の嵌合蓋で封止した(実施例)。
【0020】また、比較のため、上記かまぼこを入れない他は同様にして、比較例を作成した。上記実施例と比較例をそれぞれ25℃、24時間保存し、観察したところ、実施例のものは全く変化が見られなかったが、比較例はたまご焼きに「ネト」が発生していた。
【0021】
【発明の効果】本発明の保存可能な食品は、自然物からの抽出物質であるイソチオシアン酸アリルまたはイソチオシアン酸アリルを含む精油を使用するので、食品衛生上何ら心配なく、その保存効果も高いので食品自体の日持ちが良いものである。そして、本発明による食品からは徐々にイソチオシアン酸アリルがガスとなって放出されるので、同一包装内のイソチオシアン酸アリルが混合されていない他の食品も、同様に腐敗等が防止される。そのため、食品包装体全体としての安全性が高まり、従来に比べてきわめて長期に渡って流通させることができる。
【0022】また、食品自体にイソチオシアン酸アリル混合するという操作で可能なため、製造がきわめて容易である。
【0023】また、従来の脱酸素剤の包装材料のような、非食品を食品の包装内に存在させないことが可能となり、不要な汚染が防止でき、誤食といった問題が発生せず、また、ゴミも生じないという、実用上優れた効果を有するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】食品に、イソチオシアン酸アリルまたはイソチオシアン酸アリルを含む精油を混合したことを特徴とする、保存可能な食品。
【請求項2】食品が、魚肉練り製品または澱粉加工品であることを特徴とする、請求項1記載の保存可能な食品。
【請求項3】請求項1または請求項2に記載の食品を他の食品と同一包装内に配置したことを特徴とする、食品包装体。
【請求項4】請求項1または請求項2に記載の食品を他の食品と同一包装内に配置することを特徴とする、食品の保存方法。