説明

保存安定な食料品およびその調製方法

低pH高水分の保存安定な食料品およびその製造方法が提供される。この食料品は、pH4.6、好ましくは4.3以下の最終製品を得るために、酸性の電気透析組成物、食用無機酸またはその混合物によって酸性化される。低pH食料品は、食料品1,000グラムあたり全有機酸含量が0.12モル以下であり、165°F(73.89℃)の温度に加熱し、低温殺菌する。新規または改良した保存安定な酸味のない食品成分および製品ならびにそれらの調製方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定な食品組成物およびその調製法に関する。より詳細には、食料品は、保存性が高まり、味および官能性が許容できる低pH食料品を得るのに効果的な量の、電気透析組成物および/または無機酸によって調製される。本発明の食品組成物は、実質的に有機酸を含有しないことが好ましい。
【背景技術】
【0002】
食品加工において、所望の製品安定性を得るためpH調整を必要とすることが多い。食品酸味料(乳酸など)を直接添加することによって、このような酸性化食品は必然的に味が非常に(しばしば悪い方に)変化する。低pH製品は、望ましくない沈殿物を生じる場合もあり、それによって食品の官能性を損ない、さらなる加工をより困難にする。
【0003】
食品への食品酸味料の添加に代わる方法としては、電気分解および/または電気透析により生成した組成物を使用することである。電気透析(ED)は、溶解塩または他の天然不純物を、ある水溶液から別の水溶液に分離することに関連して使用される。このような溶解塩または他の不純物の分離は、カソード(負電位電極)およびアノード(正電位電極)の間に生じた印加電界の影響下で半透性のイオン選択性膜を通るイオン移動によって起こる。分離が1価イオンまたは多価イオンの陽イオンおよび/または陰イオン間で行われることが望ましいかどうかによって、この膜は1価または多価イオンの選択性を持つことができる。この分離工程により、塩または不純物の濃縮流(濃縮液またはかん水として知られる)と、塩または不純物の枯渇流(希釈液として知られる)となる。濃縮流および希釈液流は、アノードおよびカソード間に配置されかつ交互に置かれた陽イオン選択膜および陰イオン選択膜によって分離された電気透析装置内の液室を流れる。アノード電極およびカソード電極に隣接した最も外側の室には、再循環している電極洗浄溶液が流れており、カソード電極およびアノード電極を清浄に維持する。
【0004】
低価格高品質の乳製品は、保存安定な形態ではほとんど得られない。レトルト処理または無菌包装などの高価な方法は、保存安定な乳製品を調製するために使用されてきた。しかし、このような方法は非常に費用がかかる。他の方法では、湿潤剤(例えば、グリセロール)および保存料(例えば、高塩分、ソルビン酸)の使用に主として依存する中間水分保持技術を用いるが、これによって高固形分で低質の製品(例えば、ゴムまたはキャンディのような食感、許容できない味)となる。保存安定な乳製品を得るために有機酸で酸性化を行うことは、(1)カゼインの等電沈殿によるざらざらした食感、乳濁液の分解など(2)最も重大なものとして、許容できない酸味を伴う恐れがあるという問題をもたらす。
【0005】
新鮮な魚は、あまり保存安定でない傾向があり、通常は直ちに使わなければならない。ある種の魚、特に例えば、アラスカアブラガレイ(Arrowtooth Flounder)およびパシフィックホワイティング(Pacific Whiting)の場合は、蛋白分解酵素の活性により、筋肉構造の軟化および分解が起こる。これおよび他の不都合な酵素活性によって、そうでなければ売り物になる魚をマーケットから排除する結果となる場合が多い。より低いpH範囲に酸性化することは、蛋白分解酵素を不活性化することが見出されてきた。しかし、食品酸味料による酸性化は、望ましくない異臭および不快な酸味をもたらす。
【0006】
【非特許文献1】S. Rantakokko, S. Mustonen, M. Yritys, and T. Vartiainen. Ion Chromatographic Method for the Determination of Selected Inorganic Anions and Organic Acids from Raw and Drinking Waters Using Suppressor Current Switching to Reduce The Background Noise from Journal of Liquid Chromatography and Related Technology (2004); 27, 821-842
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は一般に、酸味を与えずに、または食料品の官能性に悪い影響を与えずに、保存性を高めるのに効果的な食料品を酸性化する方法に関する。食料品酸性化は、膜電気透析および/または無機酸の添加により行われる。酸性膜電気透析組成物(ED)および/または無機酸の使用は、食料品に許容できない酸味をもたらす場合がある有機酸を添加せずにpHを下げるのに効果的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
爽快な味の酸性ED組成物は、食品のpHを下げるために調製し使用することができる。非毒性無機酸の使用は、食品酸味料の食品への添加に代わる別の方法である。無機酸には、塩酸、硫酸、酸性硫酸金属塩などが挙げられる。しかし、このような食品酸味料に代わるこのような方法を使用するだけでは、得られた低pH(4.2以下)食品の知覚される酸味は必ずしも除去または有意に低下せず、許容できる製品が得られない。(消費される)所与の製品中の総有機酸を低濃度に維持することは、許容できる製品を得るために重要である。配合食料製品が許容できる製品となるためには、最終製品の有機物含有量を下げるために効果的な成分選択と配合を行うことが必要である。
【0009】
1つの態様によれば、保存安定な食料品および保存安定な食料品を調製するための方法が提供される。この方法は、最終pH4.6以下の食料品を得るために効果的な量で、食料品をED組成物、食用無機酸またはそれらの混合物で調製することを含み、他の態様では、pHは4.3以下、さらに他の態様ではpHは4.2以下である。
【0010】
本方法は、低い有機酸含量(すなわち本質的に有機酸非含有)を維持することにより、通常低pH食品に付随する酸味がなく、保存安定な食料品を得るために効果的である。この食料品は、全有機酸含量が食料品1000グラムあたり約0.12モル以下であり、好ましくは全有機酸含量は1000グラムあたり約0.06モル以下であり、Awが約0.75以上であり、他の態様では約0.85以上であり、さらに他の態様では約0.90以上となる。加工食品の場合、これは成分選択および/または成分変更によってもたらすことができる。有機酸が食料品に加えられないことがさらに好ましい。この方法によって調製できる食料品には、ソース、グレイビー、スプレッド、ディップ、ドレッシング、サラダ、野菜、澱粉(米、じゃがいも、パスタ、ヌードルなど)、肉、海産物、穀類、焼き菓子、フィリング、トッピング、焼き菓子、菓子、飲料、デザート、スナックおよびそれらの混合物が挙げられる。微生物学的安定性のある酸性化食料品を得るために、酸性化と組み合わせて165°F(73.89℃)以上の温度に加熱することによって低温殺菌することもできる。
【0011】
他の態様では、保存安定な乳製品および保存安定な乳製品を調製するための方法が提供される。この方法は、pH4.3以下、他の態様ではpH3.5以下をもたらすために効果的な量で、約2から約12重量パーセントのホエー蛋白質濃縮粉末を、ED組成物(すなわちED水)または無機酸溶液あるいはそれらの混合物とブレンドすることを含む。保存安定な低pH組織化ホエー蛋白質ベースは、酸性ホエー蛋白質ベースを混合し、約5から約20分間約180°F(82.22℃)から約205°F(96.11℃)で加熱することにより調製でき、それにより、食感が生じ、低粘度のホエー蛋白溶液が濃厚なゲルに変換される。消泡剤を加熱の前に添加することができる。この低pH(すなわち4.0以下)の保存安定な組織化ホエー蛋白質ベースは、酸味のない乳製品を調製するために使用することができる。この乳製品は、完成した乳製品100グラムあたり約0.12モル以下の全有機酸含量を有する。
【0012】
この組織化ホエー蛋白質ベースは、さらにpH4.6以下をもたらすために効果的な量の追加のホエー蛋白質の濃縮物およびベース(必要な場合)とブレンドしてもよい。この態様において、約0から約8重量パーセントの追加のホエー蛋白質濃縮物を組織化ホエー蛋白質ベースとブレンドし、低温殺菌し添加したWPCの溶解を助けるために、このブレンドを少なくとも約1分間約175°F(79.44℃)から約205°F(96.11℃)で加熱する。この組織化されかつpH調整済みの(すなわち4.6以下)ベースは、冷凍条件下で保存し、酸味のない乳製品を調製するためにさらに使用できる。
【0013】
他の態様では、不快な酸味をもたらさない、魚の構造的一体性および保存期間を増加させるための方法が提供される。pH4.5以下、他の態様ではpH4.0以下をもたらすのに効果的な量で、魚をED組成物、食用無機酸またはそれらの混合物と接触させる。使用できる無機酸には、塩酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウムおよびそれらの混合物が挙げられる。ED組成物および/または無機酸を魚に注射および/または注入することができる。処理済の魚は、梱包し、冷凍または冷蔵して流通させることができる。あるいは、処理済の魚は、調理して(例えば網焼きして)、次いで梱包して流通させることができる。この方法で処理後、調理した魚は、通常魚の低pHに付随する酸味または異臭がなく、著しく改善した食感を有する。さらに、調理した魚の切り身は、身がしまり薄層状の食感が保たれる。
【0014】
他の態様では、保存安定なクリームチーズまたはクリームチーズ様製品を調製するための方法が提供される。この方法は、まず乳製混合物をpH4.4以上まで、好ましくは4.8以上まで発酵させることを含む。次いでこの発酵した混合物を、酸性ED組成物、無機酸またはそれらの混合物で、pH4.3以下、好ましくは4.2以下に酸性化する。クリームチーズまたはクリームチーズ様製品は、165°F(73.89℃)以上の温度に加熱し、得られた製品は、製品1000グラムあたり約0.22モル以下の全有機酸含量を有する。あるいは、乳製混合物は、発酵させずに、ED組成物、無機酸およびそれらの混合物で直接pH4.3以下に酸性化してもよい。さらなる代わりの実施形態では、乳製混合物を、発酵させずに、酸性ED組成物、無機酸またはそれらの混合物および少なくとも1種類の有機酸でpH4.3以下に酸性化してもよい。使用することのできる有機酸には、乳酸、酢酸およびそれらの混合物が挙げられる。保存安定なクリームチーズまたはクリームチーズ様製品は、さらに加えられた着色剤、香味料、栄養素、抗酸化剤、ハーブ、スパイス、果物、野菜、海産物(サケ)、木の実および/または他の食品添加物を含んでもよい。
【0015】
他の態様では、高水分量の乳および乳製品およびその製造方法が提供される。この方法は、酸性ED組成物、無機酸またはそれらの混合物で、乳、乳誘導物またはそれらの混合物をpH4.6以下に酸性化し、酸性化混合物を得ることを含む。少なくとも1種類の親水コロイド安定剤をこの酸性化混合物に添加する。得られた乳または乳製品は、含水率が45重量%以上、水分活量は0.9以上、全有機酸含量は前記製品1000グラムあたり約0.2モル以下である。乳または乳製品には、さらに着色剤、香味料、栄養素、抗酸化剤、ハーブ、スパイス、果物、野菜、海産物(サケ)、木の実および/または他の食品添加物を含んでもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
保存安定で酸味のない食料品は、酸性ED組成物、食用無機酸またはそれらの混合物による酸性化と、全有機酸含量を最小限に抑えることとによって調製することができる。下記で論じるように、水溶液を供給流として用い、膜電気透析を用いて処理し、ED組成物を形成する。ED組成物は、製品の配合および/または調製に使用することができる。本明細書において使用されるED組成物および無機酸は、ヒトが摂取するのに適切である。本明細書において用いられているように、「ヒトが摂取するのに適切である」とは、有害または未承認の化学物質または混入物質および不快な風味または味がないことを意味する。
【0017】
ED組成物は、広範囲の保存安定な食料製品の調製に使用することができる。「保存安定な食料製品」とは一般に、周囲条件下で貯蔵した保存食料製品が摂取しても安全であることを意味する。「保存寿命」とは、周囲条件下での貯蔵における保存寿命を意味する。製品の保存寿命は、製品の官能性または食感品質によって決まる。製品安定性は、安全性または微生物学的安定性によって決まる。低温流通・保存システムを使用した場合は、「保存寿命」および「製品安定性」は延長することができる。重要な態様において、冷蔵保存された製品は約1から6カ月の保存寿命となり、周囲条件で安定な製品は約6から9カ月の保存寿命が可能となる。
【0018】
食用無機酸
本発明で使用できる食用無機酸には、塩酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウムおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0019】
全有機酸含量
食料製品中の全有機酸含量は知覚される酸味強度に影響を与えることができる。保存食品中の「有機酸」は主に、それだけに限らないが、酢酸、アジピン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、リン酸および酒石酸を含めた、添加した食用の食品酸味料に由来する。食品成分中の天然有機酸も、知覚される酸味の一因となるであろう。したがって、「全有機酸含量」は今後、前述のすべての食品酸味料およびすべての天然有機酸(シュウ酸、コハク酸、アスコルビン酸、クロロゲン酸などの前述しなかったものも含む)の総量を意味する。有機酸プロファイルは、適切な分析方法を用いて容易に得ることができる(例えば、非特許文献1参照)。それぞれの有機酸含量を測定、加算し、「モル/完成した食料品1000グラム」で都合よく表現される「全有機酸含量」を得ることができる。
【0020】
水溶液
酸性ED組成物を製造するためにED方法で処理することができる水性供給液には、天然水源から得られる湧水、井戸水、都市用水、海水などのミネラルまたはイオンが豊富な任意の水溶液および/または汚染物および過剰な塩素化(例えば約2ppm超の遊離塩素)を含まない人工的にイオンを豊富にした水が含まれる。ED処理のための水性供給液は、約0.1から約200mS/cmの当初の導電率をもたらすのに効果的な、約0.0001Nから約1.8Nの総陽イオン濃度または総陰イオン濃度を有するべきである。本明細書で使用する場合、「総陽イオン濃度」または「個々の陽イオン濃度」とは、任意の陽イオン(Na+、K+、Ca++、Mg++など)濃度から水素イオン濃度を除いた濃度を意味する。「総陰イオン濃度」または「個々の陰イオン濃度」とは、任意の陰イオン(Cl-、F-、SO4-2、PO4-3など)濃度からヒドロキシルイオン濃度を除いた濃度を意味する。イオン濃度は、例えば、選択した陽イオンのための誘導結合プラズマ原子発光分光法および選択した陰イオンのためのイオンクロマトグラフィーなどの、当分野で公知の技術を使用して決定できる。
【0021】
重要な態様において、EDで処理される水性供給液は、約1.0から約30mS/cmの当初の導電率をもたらすのに効果的な約0.002Nから約1.0Nの総陽イオン濃度または総陰イオン濃度を有してもよい。例えば、EDで処理される水溶液は、少なくとも下記の1種類を含んでもよい。
陽イオン濃度(N)
カルシウム 0〜0.2
マグネシウム 0〜0.002
カリウム 0〜0.01
ナトリウム 0〜1.7
陰イオン
炭酸水素 0〜0.07
塩化物 0〜1.7
硫酸 0〜0.01
【0022】
すべてのイオン濃度は、総イオン濃度が約0.002Nから約1.0Nでなくてはならないので、ゼロにはなりえない。他の非毒性で食用イオンも、含めることができる。
【0023】
膜電気透析
図1および図2に示すように、膜電気透析は、バイポーラ膜および陰イオンまたは陽イオン膜を使用して行うことができる。この膜は、カソードおよびアノード間に配置され、電界の影響を受ける。この膜は、区切られた室を形成し、この室を流れる物質は別々に集められる。イオン選択性膜を備える電気透析装置の一例は、EUR6(Eurodia Industrie、Wissous、Franceで入手可能)である。適切な膜は、例えば、Tokuyama(Japan)で入手可能である。バイポーラ膜は、結合した陽イオン膜および陰イオン膜を備える。
【0024】
1つの態様によれば、水溶液をイオン選択性膜と接触させる。水溶液をイオン選択性膜上に流すことにより、バッチ式、半連続式または連続式で水溶液を処理できる。電気透析される溶液が所望のpHおよびイオン濃度となるのに効果的な時間の間、アノードおよびカソード間に電位を与える。バッチ式における処理時間および半連続式または連続式における流量は、使用されるイオン選択性膜の数および印加される電位量の関数である。したがって、得られたED溶液をモニターし、さらに所望のpHおよびイオン濃度が得られるまで処理することができる。一般に、約0.1から約10ボルトの電位が、各セル内のアノードおよびカソード電極間で生じる。
【0025】
図1および図2に示すように、水溶液を、バイポーラ膜の両側に陽イオン膜を含む少なくとも一枚のバイポーラ膜と、好ましくは複数のバイポーラ膜と接触させることによって、水溶液のpHを約0から約7のpH範囲に調整することができる。バイポーラ膜の左の室からの物質は、次の使用のために収集される。バイポーラ膜の右の室から収集した物質は、必要なだけ膜に戻して再循環させるか、第2の膜電気透析で循環させ、pHが約0から約7、好ましくは約1から約5の水溶液を得ることができる。バイポーラ膜の左の室からの物質は、膜に戻して再循環させることもできる。アノードおよびカソードに隣接した室からの物質は、膜に戻して再循環できる。
【0026】
電気透析組成物
膜電気透析による処理の後、pHが変化したED組成物の総陽イオン濃度または総陰イオン濃度は約1.0N未満、任意の個々のイオン濃度は約0.6N未満、遊離塩素含有量は2ppm未満である。好ましい実施形態では、ED組成物の総陽イオン濃度または陰イオン濃度は約0.5N未満、個々の陽イオンまたは陰イオン濃度は0.3N未満、遊離塩素含有量は1ppm未満である。例えば、電気透析組成物は、下記の少なくとも1種類を含有する。
濃度(N)
陽イオン
カルシウム 0〜0.1
マグネシウム 0〜0.001
カリウム 0〜0.005
ナトリウム 0〜0.9
陰イオン
炭酸水素 0〜0.04
塩化物 0〜0.9
硫酸 0〜0.005
【0027】
他の非毒性で食用イオンも、主としてそれぞれのイオンの味の影響によって限られて存在することができる。
【0028】
膜電気透析による処理の後で、ED組成物は、約1から約5の範囲のpHを有するであろう。処理済溶液の遊離塩素含有量は1ppm未満であり、不快な味および/または臭いを有さない。
【0029】
保存安定な食料品の調製
他の重要な態様では、ED組成物、食用無機酸またはそれらの混合物は、配合食品の保存のために有用である。より詳細には、ED組成物を、通常配合成分中にある水と完全にまたは部分的に置換することによって、食料製品中に配合できる。多成分製品中のソース、グレイビー、スプレッド、ディップ、ドレッシング、サラダ、野菜、澱粉(米、じゃがいも、パスタ、ヌードルなど)、肉、海産物、穀類、焼き菓子、パン菓子のフィリング、菓子のフィリング、飲料、デザート、スナックおよびそれらの混合物などの保存安定な配合食料製品は、所定のpHのED組成物、無機酸またはそれらの混合物の一定量を、酸性化食料製品を得るのに効果的な食品配合成分と直接混合することによって調製する。この場合の一定量とは、最終製品のpHが約4.6未満、好ましくは約4.2未満となるのに十分な量である。
【0030】
任意選択の態様では、酸性化食料製品を、次いで耐熱性の密封可能な容器内に入れる。密封容器内で食料製品を低温殺菌するのに効果的な温度および時間で食品を熱処理した後に、この容器を密封する。必要な低温殺菌のステップは、酸性化食料製品の容器への簡単なホットフィルによって実現できる。熱処理した食品を冷却し、その温度を約25℃未満にすることが、一般に望ましい。保存食料製品は、一般に食品酸味料の使用に付随する不快な酸味または異臭を有さず、周囲条件下で少なくとも6カ月間安定であるが、一般にはほぼ9から12カ月間安定である(すなわち、有機酸)。
【0031】
一般に、保存安定な食料品は、pH約1.0から約3.0のED組成物を使用して調製される。このED組成物は、食品自体の調製に組み込んでもよいし、またはED組成物を食料品の調理に使用してもよい。酢などの少量の従来の食品酸味料は、全有機酸含量が完成食料製品1000グラムあたり0.12モルを超えない限り、好ましくは製品1000グラムあたり0.04モル未満である限り、主として風味および/または味のために依然として使用できる。通常酸味があると予想される食料品(例えば、発酵乳製品、果物風味の製品)の場合は、最終食料品中の全有機酸含量を最終食料品1000グラムあたり0.22モル未満に維持できる限りは、ED組成物、無機酸またはそれらの混合物によって食料品を完全または部分的に酸性化することによって、pH4.3以下にさらに酸性化した後のこのような食料品の酸味を有意に低下させることができる。
【0032】
低pH(例えば、4.2以下)および熱処理(例えば、低温殺菌)製品において、塩またはナトリウム含有量は、もはや保存性を確保する要因ではないので、任意の程度の減塩(例えば、無塩、甘塩)が可能である。したがって、本発明は、栄養的に改善した製品を提供するためにも用いることができる。
【0033】
保存安定な乳製品の調製
保存安定な乳製品は、約2から約12重量パーセントのホエー蛋白質濃縮粉末を、pH4.3以下、好ましくは3.5以下をもたらすための量のED組成物とブレンドすることにより調製できる。スイートホエー由来の任意の乾燥または液体スイートホエー蛋白質濃縮物(例えばFirst District、MNのFDA53)を使用できる。有機酸含量が低いホエー蛋白質濃縮物またはホエー蛋白質単離物が最も望ましい。乾燥ホエー蛋白質濃縮物は、様々な蛋白質含有量のものが市販されている。乾燥ホエー蛋白質粉末を使用する時は、空気混和を避けるため穏やかな撹拌のみによって(Groenケトル)、最初に粉末を温水(約30から50℃)と穏やかに混合する。ホエー蛋白質を完全に可溶化してホエー蛋白溶液とするために、追加の混合または剪断を必要に応じて行うことができる。
【0034】
最終製品が液体油を含有する場合は、泡立ちを最小限にするために、最終製品配合物からの油の一部をホエー蛋白質スラリーに添加してもよい。場合により、選択した消泡剤(例えば、Trans−220K、Trans−Chemco,Inc.、WI)を使用してもよい。ホエー蛋白溶液は、約180F°(82.22℃)から205°F(96.11℃)の温度に加熱し、約5から20分間保持することにより組織化させる。加熱中に濃厚なゲル様の組織化ホエー蛋白質スラリーが形成され、それは直接使用でき、または乳製品蛋白質成分として食品に混合して使用することができる。この組織化ホエー蛋白質スラリーは、低pHの食料製品中で物理的に安定しており(沈殿する恐れがない)、そのままで容易に使用できるか、あるいは非組織化ホエー蛋白質および/または一般に高pHの他の食品成分中にブレンドすることによって、一般にそのままのpHよりも高い目標pH(例えば、pH=4.0)までさらに中和されることができる。前記より好ましくない場合では、低pHで保存安定な乳製品を次いで調製する前に、pH標準化のために食用の塩基(例えば、水酸化ナトリウム)を添加することができる。
【0035】
完成したソース中の蛋白質含有量が同量となるように、ホエー蛋白質単離物(WPI)を、市販のホエー蛋白質濃縮物(WPC)と置き換えることによって、同様のソースを得ることができるが、相当に酸味が強まり、より許容できないソースとなった。これは明らかにWPC中の高濃度の有機酸(主に、クエン酸およびリン酸)による。対照的に、このような有機酸は、WPI製造中には通常は除去されてきている。同様に、乳酸およびリン酸を添加した他のチーズ風味を使用したが、得られたソースは、より酸味が強くなり許容できないものとなった。
【0036】
保存安定な魚の調製
新鮮な魚、特に高い蛋白分解酵素活性を有する魚は、pH4.5以下、好ましくは4.0以下をもたらすのに効果的な量の、ED組成物、無機酸またはそれらの混合物と接触させてもよい。処理できる魚の例には、アラスカアブラガレイ(Arrowtooth Flounder)、パシフィックホワイティング(Pacific Whiting)、メンハーデン、鰯、ツバメコノシロ、マグロなどが含まれる。注入または注射によって、魚をED組成物および/または無機酸と接触してもよい。例えば、魚の切り身を酸性溶液に浸し、溶液が切り身に十分に浸透するように約30分間真空状態(5分間オンの後に30秒間のオフ)にすることによって、注入を行うことができる。注射は、多重針注射器を使用して、魚の切り身の重さに基づいて約10から20重量パーセントの量の酸性溶液を直接各切り身に注射することによって行う。
【0037】
クリームチーズの調製
保存安定なクリームチーズ、クリームチーズ製品または乳製品は、冷蔵による流通が不足または存在しない世界の新興経済地域にとって非常に望ましい。通常のクリームチーズ製品のpHは、およそpH4.7から5.0であり、この場合、最低5カ月の保存寿命を確保するために冷蔵貯蔵を必要とする。発酵によってさらにpHが下がると(例えば、4.6未満)、乳酸の形成によってますます酸味強度が知覚されることとなった。クリームチーズの場合は、ある程度の酸味は許容され、このような製品(すなわち発酵製品)の典型的な風味プロファイルには必要とされることが多い。しかし、製品のpHが約4.3未満に低下すると、製品は許容できないほど酸味が強くなる。したがって、酸味を抑えた低pH(4.3以下)のクリームチーズ、クリームチーズ様製品または乳製品が望ましい。真に保存安定な本物のクリームチーズは実際には存在しないが、周囲条件で安定なクリームチーズスナック製品を製造する試みにおいて、従来技術では主として製品のpHを4.6未満に維持し、Awを約0.9未満に制御するために湿潤剤(例えば、グリセロール)を含む保存料を使用する手法をとってきた。このような手法は食品由来病原菌に対する製品の安全性を高めるが、製品の風味、味(特に、ポリオールによる不快な酸味および異味)、食感ならびに/または安定性を低下させることが多い。さらに、このような手法は、出発物質として通常は最終製品の約50重量%のすでに調理済みのクリームチーズを使用することが通常必要である。これは完成酸性化製品を調製するために追加の作業および処理ステップを必要とし、したがって既存のクリームチーズ製法に適合させることは困難である。本発明は、特に酸味の影響がほとんどないかまたはまったくないpH低下剤の選択的使用により酸味の問題を大幅に軽減するだけでなく、通常のクリームチーズ製法を用いて製造した真に(周囲条件で)保存安定な、高品質で本物のクリームチーズ/乳製品組成物を提供する。さらに本発明は、クリーミーな口あたりを犠牲にせず、あるいは糊状またはゴム状の不快な食感を生じないで安定剤系を調節することにより、周囲条件の貯蔵温度でクリームチーズの(乳濁液分解、シネレシスなどに対する)身のしまり具合および物理的安定性も改善する。従来技術とは異なり、本発明は、クリームチーズの米国商品規格の条件を満たすように製造することができる。
【0038】
1つの態様によれば、これらに限定されないが、クリームチーズ、乳製品スプレッド/ディップ、乳製品デザートおよび乳製品飲料などの、高品質、高水分(例えば、Aw>0.9)で、保存安定なクリームチーズまたは乳製品組成物が提供される。例えば、最終製品のpHが4.3以下、好ましくは約4.2以下の保存安定なクリームチーズまたはクリームチーズ製品は、このような製品の低pHと一般に付随する不快な酸味を引き出すことなく、直接従来のクリームチーズ製法で製造される。本発明の製品は、実質的にシネレシスがなく(例えば、周囲温度で6カ月後に2%未満)、室温での降伏応力が少なくとも500パスカル、好ましくは1,000から2,000パスカルのクリーミーな食感を有し、化学的および/または生物的保存料および/またはAwを低下させる湿潤剤(例えば、ポリオール)を必要とせずに周囲条件下での貯蔵において微生物学的に安定である。本発明の製品を調製するために、当技術分野で周知の様々な製造工程を用いることができる。このような適用できる製法には、これだけには限らないが、従来の凝乳製法および今後の無ホエー製法が含まれる。例えば、前者は、まず乳製混合物をpH約4.6以上、好ましくは4.9以上に発酵させて、十分なクリームチーズまたは発酵乳香味料を作り、次いで食用グレードの酸、好ましくは酸味が低い酸(塩酸、硫酸など)、それらの酸性金属塩、低pHの電気透析(ED)水性組成物およびそれらの組合せを使用して追加の直接的酸性化を行い、pHが4.3未満の最終製品を得る。発酵乳香味料が必要ない場合は、発酵ステップは省略してもよく、直接的酸性化を用いる。保存性を確保するために、最終的な加熱/低温殺菌ステップが必要である。本発明においては、目標pH(<4.3)および望ましい程度の酸味および風味プロファイルが実現されている限りは、任意の食用酸またはそれらの食用酸の塩および前述のpH低下剤の任意の組合せを用いてもよいが、本発明においては、好ましくは塩酸などの承認された食用グレードの酸および硫酸水素ナトリウムなどの食用グレードの酸性塩、ならびに酸味のないED組成物が、主たるpH低下剤として使用される。本発明で使用される金属酸塩には、これだけには限らないが、硫酸、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩を含む。製品の目標pHでの望ましい酸味は、完成保存製品中の酸味のないpH低下剤(例えば、塩酸)および酸味のある食用酸(例えば、乳酸)の率を制御することにより注意深く達成される。香味調節剤として本発明において使用することもできる乳酸以外の他の酸味のある食用酸には、これだけには限らないが、アジピン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、乳酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸、リン酸および酒石酸が含まれる。本発明の製品を製造する手法および方法は、酸味のないpH低下剤を使用してさらに製品pHを下げることによって(例えば、4.6未満に)、クリームチーズ(およそのpH4.7から5.0)などの冷蔵した乳製品組成物の保存寿命を伸ばすためにも用いることができる。本発明の製品はさらに、バランスのとれたクリームチーズ風味のプロファイルおよび許容できる身の締まり/物理的安定性のための安定剤系、味調節剤ならびに天然香味料および/または人工香味料の選択的使用に特徴づけられる。少なくとも1種類の(または複数を組み合わせた)アニオン性安定剤ガムを、0.1%以上の総濃度で使用する。このようなアニオン性ガムには、これだけには限らないが、キサンタン、カラギーナン、ペクチンおよび寒天が含まれる。場合により、全体的な風味プロファイルおよび安定性を向上させるために、天然香味料および/または人工香味料ならびにビタミンE/EDTAなどの食用グレードの抗酸化剤を添加することができる。
【0039】
乳および乳製品を主成分とする製品
新鮮または本物の乳から作った製品は、世界中で消費者から高く評価されている。現在ある高乳を主成分とするスナックは、一般に利便性および携帯性が低く(例えば、アイスクリームサンドイッチ)および/または保存料が多く含まれている(例えば、塩、糖、湿潤剤、抗真菌剤)。保存安定で高水分の、乳または乳製品を主成分とするスナックが、冷蔵および/または冷凍流通が不足あるいは存在しない世界の新興経済地域にとって非常に望ましい。高水分であることは、製品の品質を高め(例えば、クリーミーな食感)、配合コストを下げることも潜在的に可能である。本発明は、「新鮮な乳で作った」という品質説明が望ましい場合は、特に適切である。発酵、新規な酸性化およびそれらの組合せによりpHを下げることにより、約4.3未満のpHにおいてでさえ、大部分の食料製品において望ましい酸味強度を制御、放出できるため、製品の安全性をもたらす。保存安定なスナック、特に、主要な相が、望ましい官能性および必要な取扱適性/加工特性(例えば、成形および整形のための)を有する、高水分でクリーミーな乳/乳製品を主成分とする組成物である多相的スナックを作るために、本発明は、新規な酸性化および保存技術を用いかつ発展させる。製品は、非常に高水分(Aw>>0.9)、高乳(または乳固形分)、高品質、良好な加工性および保存性(周囲条件下での貯蔵でさえも)を含む望ましい特性をもたらす。
【0040】
クリーミーで保存安定で高水分量の乳または乳製品を主成分とする食料製品またはスナックが提供される。このスナックは、乳または乳製品を含有する成分のみであるか、または穀類(例えば、クッキー)、菓子(例えば、チョコレート)などでできた副次的な部分で囲まれ、挟まれるなどされた主要な部分として多相的製品中に乳または乳製品を含有する成分を有する。乳/乳製品成分は、少なくとも約45重量%の含水率、少なくとも約0.90の水分活量、約4.6未満、好ましくは約4.2以下のpHであり、主として、熱処理し、ED組成物、無機酸またはそれらの混合物で酸性化した、乳(液体/乾燥、新鮮乳/濃縮乳など)および乳誘導物(ホエー、ホエー蛋白質濃縮物、ホエー蛋白質単離物、カゼイン塩、チーズ凝乳、バター、バターミルク、クリーム、乳脂肪など)を含む。前記乳/乳製品成分は、望ましい加工性(例えば、整形)をもたらすために少なくとも1種類の親水コロイド安定剤(例えば、ゼラチン、カラギーナン)も含む。場合により、香味剤、着色剤、ミネラル、栄養素および/または他の機能性成分を添加してもよい。この乳/乳製品成分は、乳製混合物の混合、低温殺菌、均質化、その後の任意選択の発酵ステップにより調製し、酸性化、加熱、均質化および曝気(任意選択)し、次いで冷却されしだい適切なモールド/型に充填/成形する。モールドおよび酵母制御のために、調整気相包装または保存料(例えば、ソルビン酸カリウム)も使用してもよい。多相的製品において、副次的な部分、通常は脂質連続相コーディング(例えば、チョコレート)または場合により脂質を含有するコーティングでコートした焼いた穀物製品(例えば、クッキー)が施される。副次的成分のpHは約5.0以下であるべきであり、主要成分(例えば、乳または乳製品フィリング)のpHと一致することがさらに好ましい。このスナックは、酸味が少なく、安全で、少なくとも約30日以上(例えば、冷蔵貯蔵条件下では4カ月)安定している。
【0041】
(実施例)
【実施例1】
【0042】
塩酸により酸性化した保存安定なパスタ
乾燥パスタ(Rotini)1部を、まず耐熱性でヒートシール可能な袋に入れた。pHが1.7、1.65、1.6および1.55の熱い(約80℃)HCl溶液1.4部を、乾燥パスタを入れた各袋に加えた。袋を密封し、さらに水中で約95から100℃で約12分間調理した。調理したパスタの最終pHは、それぞれ4.3、4.1、3.9および3.2であった。製品のどれもが、調理済みパスタ1000グラムあたり0.04モル未満の全有機化合物含量であり、許容できない酸味を示さなかった。
【実施例2】
【0043】
ED組成物により酸性化した低塩で保存安定なチーズ風味のソース
低pHで保存安定な、蛋白質を主成分とするチーズ風味ソースを下記の配合で作製した。
5.5% ホエー蛋白質単離物(蛋白質80%)
43.5% ED組成物(0.1NのHClとして酸性化能を標準化する)
1.6% krafen(市販のスイートホエー粉末)
0.2% 顆粒状糖
0.2% 塩
4% コーンシロップ固形物
0.2% ガム(キサンタンガムおよびイナゴマメガム)
0.12% 二酸化チタン
0.17% チーズ香味料
0.48% 乳化剤(Emplex)
0.09% 色素
7.8% 野菜(菜種)油
36.14% 水道水
【0044】
ホエー蛋白質単離物を、ED組成物に加え、180°F(82.22℃)超で5から15分間または濃厚になるまで調理した。ブレンド前の乾燥成分および油をベースとする成分を別々に加えた。泡を抑えるために少量の油を加えた。次いで、他のすべての成分を調理した酸性化ホエー蛋白質スラリーに混合し、165°F(73.89℃)超で2分間加熱した。必要であれば、ソースを濃厚にするために少量のデンプンを加えることができた。次いで、熱いチーズソースを1200psi(8.27×106Pa)でホモジナイザーにかけ、ガラスジャーまたはプラスチック袋に満たし、次いで室温まで冷却した。これによってpHが約4.0の不快な酸味がない滑らかなチーズ風味のソースができた。
【0045】
完成したソース中の蛋白質含有量が同量となるように、ホエー蛋白質単離物(WPI)を市販のホエー蛋白質濃縮物(WPC)と置き換えることによって作製した同様のソースは、相当に酸味が強く許容できなかった。これは明らかにWPC中の高濃度の有機酸(主にクエン酸およびリン酸)のためである。対照的に、このような有機酸は通常はWPIの製造中には除去されていた。同様に、ED組成物の代わりに乳酸およびリン酸を加えた他のチーズ風味ソースを調製した。得られたソースは、非常に酸味が強く全体的に許容できなかった。
【実施例3】
【0046】
硫酸水素ナトリウムにより酸性化した薄塩の保存安定なソース
下記で示す配合に基づいて、まず乳化剤(Emplex)を、着色剤および香味料を含んだ油をベースとする成分とブレンドすることによって、低pHで保存安定なデンプンを主成分とするチーズ風味のソースを調製した。残りのすべての乾燥成分を、高剪断ミキサーで水および硫酸水素ナトリウム溶液(水道水中1.38%)とブレンドした。事前にブレンドしておいた、油をベースとする成分を加え、十分に混合した。その混合物を蒸気二重釜に移し、常時撹拌しながら185°F(85.00℃)で調理した。ソースを500psi(3.45×106Pa)から2000psi(1.38×107Pa)で均質化し、ジャーに満たした。高品質(クリーミーな食感、酸味のない味)で保存安定で(pH=3.62)、高水分(71%)で低塩(750mgまたは50%減少)のチーズ風味のソースが得られた。最終製品は、主に高塩分によって保存される典型的な保存安定なチーズソースと比較して、優れた質で50%減塩の、周囲貯蔵条件下で保存安定なものであった。
【0047】
チーズ風味のソースの配合
56% 水
15.3% 硫酸水素ナトリウム溶液
11% 増量剤
9% バター脂肪またはバターオイル
4.75% デンプン
1.25% チーズパウダー
1.3% 塩
0.5% 乳化剤(Emplex)
0.3% ガム(キサンタンおよびイナゴマメガム)
0.20% 二酸化チタン
0.20% 着色剤
0.13% 香味料系
【実施例4】
【0048】
塩酸により酸性化した保存安定なアルフレドソース
ED組成物(1Nまたは6.25NのHClで標準化することによって、0.1NのHClとして酸性化能を標準化する)15%、デンプン3.7%、コーンシロップ固形物10%、塩0.7%、二酸化チタン0.2%、乳化剤0.5%、ガム0.2%、香味料0.04%、バター6.4%、野菜油2.7%、スパイス0.1%、チーズパウダー1.25%、残りの部分は通常の水道水を用いて、pH1.0までの低pHで保存安定なアルフレドソースを作製した。乾燥成分および油をベースとする成分を別々に事前にブレンドした。すべての成分を高剪断ミキサーで混合した。ソースを180°F(82.22℃)で2分間または濃厚になるまで調理した。次いで、熱いソースを1200psi(8.27×106Pa)でホモジナイザーにかけ、ガラスジャーまたはプラスチック袋に満たし、次いで室温まで冷却した。これによってpH約4.1の不快な酸味がなく、ナトリウム含有量が非常に低い、保存安定ななめらかでクリーミーなアルフレドソースが得られた。
【実施例5】
【0049】
ED組成物により酸性化した保存安定な組織化乳製品ベースおよびそれから調製したチョコレート風味飲料
pHが3.35から3.5のED組成物の市販のWPC(First District、MNのFDA53)溶液を約185°F(85.00℃)に加熱し、約5分加熱を続けることによって、低pHで保存安定な組織化ホエー蛋白質濃縮物(tWPC)スラリーを調製した。成分の残りを加え、この混合物を(約185°F(85.00℃)に)加熱し、研究室の高剪断ミキサー(Tekmar)で約1分間均質化した。期待したクリーミーな食感となったが、許容できない味(過度の酸味)となった。下記の4種類の試料を15%スクロースとpH4.19で比較することによって、酸味の元をさらに調べた。(1)2.85%カカオパウダー(D11−S)、(2)6.65%Krafen、(3)2.85%D11−Sおよび6.65%Krafen、(4)2.85%D11−S、6.65%Karfen、0.16%バニラエッセンス。それらの味から、知覚される酸味は乳成分およびカカオパウダー(天然に有機酸に富んだ発酵成分)の両方によるものであることが確認された。ホエー蛋白質濃縮物(FDA53)の濃度上昇も、実施的に知覚される酸味の元となった。
【0050】
【表1】

【実施例6】
【0051】
チョコレート風味の改善した乳製品飲料
低pHで保存安定なチョコレート飲料を、高クエン酸および高リン酸のWP50をWPC80(Leprinoから)に替え、カカオパウダー(D11S)を天然カカオ香味料、天然色素および苦味化合物(ナリンゲン)に替えることによって調製した(実施例5に関連して)。tWPCの濃厚なスラリーを、pH3.35から3.5のED水のWPC80溶液を加熱することによって調製したが、WPC80をFDA53の替わりに使用した。チョコレート風味飲料のために用いた調製方法は、実施例5と同じであった。完成飲料中の減少した有機酸含量によって、酸味が(実施例5より)少ない飲料が得られた。わずかに柑橘類のような風味が、柑橘類からの苦味化合物であるナリンゲンから認められた。
【0052】
【表2】

【実施例7】
【0053】
チョコレート風味のさらに改善した乳製品飲料
低pHで保存安定なチョコレート飲料を、WPC80(Leprinoから)をWPI(BiPro)に替え、カカオパウダーをカカオ香味料に替えることにより調製した。僅かに異なる天然色素および人工着色料、ならびにカカオからの苦味化合物(テオブロミン)を使用した。pH約3.5のED水のWPI溶液を加熱することにより、tWPCの濃厚なスラリーを調製した。チョコレート風味飲料のために用いた調製方法は、実施例5と同様であった。WPIは、WPC80より高蛋白で灰分(ならびにクエン酸およびリン酸)をより少なく含有するため、得られた飲料は、本質的に酸味がなく、味は非常に許容できるものであった。この実施例は実施例5および6と共に、酸味のある有機酸は、可溶性の形態のその金属塩(例えば、クエン酸カルシウム)を含めて、低pHでの知覚された酸味の原因であることを示している。実施例5から7にかけて酸味が低下したことは、高有機酸成分(例えばチョコレート風味のD11Sおよび色素入りホエー粉末)をWPC50と替え、次いでWPC80と替え、次いでホエー蛋白質単離物/BiProと替えることによって、完成飲料中の有機酸含量が最小化することによって示された。完成した食料製品中の総有機酸を制御することによって、望まれない酸味を効率的に減少および/または除去する。
【0054】
【表3】

【実施例8】
【0055】
保存安定なチーズ風味のソースに対する酸性化方法および全有機酸含量の影響
2種類の低pHで保存安定な、蛋白質を主成分としたチーズソースを、実施例2の方法に従って調製し、単一の酸性化剤として乳酸およびED組成物をそれぞれ比較することによって、酸性化方法によって知覚される酸味強度への影響を示した。第3の試料(試料3)も、(ED組成物を含めた)試料2と同一の全体組成を有し、同一配合を用いて作製したが、FDA製の市販のホエー蛋白質濃縮物であるFDA−53だけを、Danisco製のホエー蛋白質単離物であるBiProに替えた。BiProは、乳酸、クエン酸およびリン酸濃度が有意に低い。この試料(試料3)は、成分(FDA−53対Bipro)および酸性化技術(従来の乳酸対ED組成物)による酸味への複合的な影響の定量化を可能にする。7人の訓練を受けた官能検査パネラーが3種類の試料すべての相対的酸味を15点の基準で評価した。センサーデータは、3種類の試料間で著しい違いを示した。試料1は、試料2および試料3より、それぞれ約2.3倍と4.8倍酸味が強かった。試料1は、試料3より約2.3倍および4.8倍酸味が強い。(1)ED組成物の使用は、従来の酸性化(試料1)より優れていること、および(2)酸味のない酸性化方法(試料2)を使用するだけでは、有機酸およびその塩に富む特定の成分(例えば、FDA−53)を含有する配合食品には十分ではない場合があることは明らかである。したがって、本発明によると、保存安定な低pH配合食品中の総有機酸(その塩を含めて)は、不快な高酸味がないことを確保するために、約0.12モル/1000グラム未満(好ましくは、0.6モル/100グラム未満)に維持しなくてはならない。クロマトグラフ分析によると、試料1は、試料2および試料3よりそれぞれ2.3倍および7.3倍の総有機酸を有する。
【0056】
【表4】

【実施例9】
【0057】
酸性化チョコレート風味飲料における酸味の官能比較
従来の方法により(乳酸で)酸性化したココア飲料(対照)より優れた品質(例えば、酸味の減少)を示すために、追加の低pHで保存安定なチョコレート風味の乳製品飲料を調製した。本発明の試料は、下記に概説した配合および手順に従って調製した。本発明のチョコレート風味飲料は、実施例8で説明したものと同一であった。ホットココア飲料粉末(Baker’s、Kraft Foods)を容器の指示に従って戻すことによって対照試料を調製した。28グラムのミックスを容器に入れた。熱水(870g)を加え、十分に撹拌した。混合物を室温まで冷却し、次いで88%乳酸で最終pH4.1まで滴定した。2種類の試料は、脂肪、蛋白質、糖中において、同一の全体組成および同一の含水率を有した。
【0058】
正式に訓練された7人の官能検査パネラーが、両試料を評価し、本発明の試料が対照より酸味が有意に少ない(2.5分の1)と判定した。本発明の製品は、pH4.1の乳製品では異例な望ましいクリーミーで、なめらかなで豊かな口あたりも示した。この実施例により、対照のココア飲料中のカカオパウダー(発酵成分)およびホエー粉末(乳酸、クエン酸およびリン酸に富む)などの高有機酸含有成分は、知覚された酸味の原因であることをさらに示した。このような成分を除去することによって、酸味が有意に低い許容できる製品が製造できる。本発明の実施例は、(1)酸性のチョコレート風味の製品は可能であること、(2)製品pHを4.2未満に下げることによって、保存安定な乳製品に必要とされる、熱劣化の減少による潜在的な品質/栄養の向上を伴う高価なレトルト処理に替わりに、単純なホットフィル処理を使用できることも示す。
【実施例10】
【0059】
保存安定な低pH乳製品ベース
保存安定な低pH(<4.2)で口あたりのよい乳製品ベースを調製した。ホエー蛋白質濃縮物(FDA53)約1部を、二重釜内でEWA1.1(pH約1.1のED組成物)約3部と併せ、まずFDA53粉末に混ぜ入れ、次いでTekmarで剪断し、FDA53を完全に分散させた。スラリーのpHが約3.5であることを確認するために点検する。必要に応じて追加のEWAl.1でpHを調節するが、FDA53と全水分の比を、1対約3に維持する。少量の(約0.5部未満)の溶解したパーム核油(PKO)をFDA53スラリーに加え、泡立ちを抑える。穏やかに混合しながら約200°F(93.33℃)まで加熱し、さらに12分間200°F(93.33℃)に維持し、組織化させる。熱い混合物を容器に注ぐ。満たした容器を密封する。場合によって、室温に冷却したあと、冷蔵庫で保存する。完成した組織化WPC(tWPC)は半不透明で濃厚(またはゲル様)である。重要なことに、前記食感系は、pH<4.2で、酸味強度が弱く食感がなめらかである。
【実施例11】
【0060】
保存安定な非香味付け乳製品ベース
保存安定で酸性(pH=4.1)で甘く、非香味付け乳製品ベースを下記の手順に従って調製した。
成分 %
tWPC 60.00
脱イオン水 18.20
FDA53 3.00
スクロース 17.00
LBG 0.20
XG 0.05
Emplex 0.30
PKO 1.10
TiO2 0.15
合計 100.00
【0061】
すべての乾燥成分は、Emplexを除いて事前に共にブレンドした。PKOをEmplexと事前にブレンドし、加熱して分散させた。二重釜内でtWPCを水、PKO/Emplexおよび乾燥ブレンドと混合した。pHを追加のFDA53で約4.10から4.15に標準化した。pH調節前と調節中にTekmarで均質化した。式量の均衡を脱イオン水で行った。この混合物を約175°F(79.44℃)から185°F(85.00℃)で穏やかに混合し、約2分間保持した。5000psi(3.45×107Pa)/1000psi(6.89×106Pa)で均質化した。次いで完成混合物を容器に充填し、直ちに容器内に密封した。場合により、試料を室温まで冷却した後で冷蔵庫に保存してもよい。最も重要なことに、完成したベースは、pH4.2未満で格別にクリーミーな食感で許容できる程度の酸味であった。
【実施例12】
【0062】
魚の切り身の調製
パシフィックアラスカアブラガレイ(arrowhead flounder)の切り身を、約20%の重量増加をするのに効果的な一連の水溶液および真空下に置いた。使用した注入液および注入を受けた魚の切り身の最終pHを下記の表に示す。注入は真空下(5分間継続/30秒間中断)で30分間行った。処理した魚の切り身は、まず約60℃で約30分、次いでさらに約90℃で約30分調理することによる2段階の調理方法で調理した。
【0063】
【表5】

【0064】
結果は、ED組成物(試料A)および1Nの塩酸溶液(試料B)を注入した魚の切り身は、対照の蒸溜水(試料C)よりも明らかに優れた筋肉構造の一体性および締まった/薄層状の食感を示したことを明らかに示している。注入を受けたすべての切り身は、不快な異臭または不快な酸味がなかった。
【実施例13】
【0065】
保存安定なクリームチーズ
研究室で低pH(目標pH4.15)のクリームチーズの3種類の異なるセットを調製するために、脂肪33%の脂肪分の高い30#ブロッククリームチーズおよび脂肪18%の試験設備で製造した低脂肪クリームチーズを使用した。pH調節は、混合加熱および均質化前に乳酸またはHClで行った。対照試料は、追加のpH調節なしに通常のpH(約7.0)であった。調製手順は下記のとおりである。
1.クリームチーズ(1200gm/各種)をStephanクッカーで溶かす。
2.温度(〜100°F(37.78℃))を測る。
3.乳酸または6.25NのHClを使用してpH4.15となるまで、このより低い温度(例えば、100°F(37.78℃))でpHを調節する(このステップは対照の場合は省略した)。
4.クリームチーズを176°F(80.00℃)で2分間再加熱する。
5.試料を5000psi(3.45×107Pa)/500psi(3.45×106Pa)で均質化する。
5.クリームチーズを8oz(226.80g)のカップに満たす。
【0066】
【表6】

【0067】
官能検査では、両方の低pH製品が、酸味が強くクリーミーな特徴にかけていることを示した。HCl酸性化試料は、知覚された酸味がより低いために、乳酸酸性化試料より極めて好まれた。
【実施例14】
【0068】
保存安定なソフトクリームチーズ
選択した酸の味の影響を比較するために、脂肪28%の普通の市販のソフトクリームチーズを使用した。乳酸およびリン酸試料は許容できると考えられたが、味覚検査パネラーはHCl酸性化試料の方を好んだ。調製手順は下記のとおりである。
1.クリームチーズ(1814gm/各種)をStephanクッカーで溶かす。
2.温度(〜100°F(37.78℃))を測る。
3.指定された酸(すなわちHCl、ラクトビオン酸、リン酸、乳酸)をpH4.15となるまで、このより低い温度(すなわち100°F(37.78℃))でpHを調節する。
4.クリームチーズを176°F(80.00℃)まで2分間再加熱する。
5.試料を5000psi(3.45×107Pa)/500psi(3.45×106Pa)で均質化する。
6.クリームチーズを8oz(226.80g)のカップに満たす。
【0069】
【表7】

【実施例15】
【0070】
無ホエー製法で調製した保存安定なクリームチーズ
脂肪27%の保存安定/低pHの高脂肪分の許容できるソフトクリームチーズを、事前に作ったクリームチーズを使用せずに、無ホエーで商業的に実現可能な方法で直接作製できる。実験の詳細(手順、配合および結果)を下記に概略する。
1.UF酸ホエーを、電子レンジで110°F(43.33℃)超に事前加熱する。
2.FDA−50をライトニングミキサー(lightening mixer)でスラリーに混合し、湿った混合物を作製する。
3.温かいPKO(〜110°F(43.33℃))を湿ったミックスに加え、ターボミキサーを使用して粗い乳濁液を作る。
4.酸(すなわち6.25NのHCL)を系に加え、湿ったミックスを電子レンジ内で140°F(60.00℃)に加熱する。
5.混合物を5000psi(3.45×107Pa)/500psi(3.45×106Pa)でホモジナイザーにかける。
6.塩/ソルビン酸/ガムを加える。混合物にゆっくりと加える。
7.混合物をStephanクッカーに入れ、均質化した混合物を、10分間200°F(93.33℃)に加熱する。
8.香味料(LNDT−5)を加え、最終的な温度を検査する。水分を検査し、熱水で調整する。
9.2段階ホモジナイザー(5000psi(3.45×107Pa)/500psi(3.45×106Pa))を使用して試料を均質化する。
10.試料(2/3ht.)を8oz(226.80g)のカップにホットフィルする。
【0071】
【表8】

【0072】
目標組成物#1:水分60%、脂肪27%、蛋白質5.45%、ラクトース5.09%。酸ホエー組成物:固体12.1%、脂肪2.75%、蛋白質3.7%、ラクトース4.3%。
【実施例16】
【0073】
従来の2日間製法から作製した保存安定なクリームチーズ
低pHで保存安定な酸味を抑えたクリームチーズを、従来の2日間処理方法で調製した。
【0074】
手順
1日目
混合物作製
【0075】
【表9】

【0076】
・ WPC53および液体をBreddoミキサーで混合する。
・ すべての成分をGroenケトル内で混合する。
・ ケトルの中身を120°F(48.89℃)に熱する。
・ 混合物をMicrothermicsに入れる。
・ Microthermicsを140°F(60.00℃)に予熱する。
・ 発酵物を撹拌しながら加える。
・ 冷却した混合物を牛乳缶に保存し、クリームチーズ試験設備に一晩置く。
・ pH4.9まで発酵させる。
【0077】
2日目
加工
【0078】
【表10】

【0079】
・ 凝乳および乾燥成分をBreddoで混合する。
・ 混合物を蒸気二重釜に移す。
・ pHを6.25NのHClで4.10±0.05に調節する。
【0080】
得られた試料は、73°F(22.78℃)で、pH4.13、降伏応力1,693パスカルであった。試料は、官能評価の専門家によって優れた風味および食感があり、不快な酸味がないと判断された。一方、対照(2日目に、6.25NのHClに代えて乳酸とする)と比べると、7人の訓練を受けた官能検査パネラーは、この試料は、通常の高pH(例えば、4.7)のクリームチーズ同様の酸味であり、対照の乳酸より約30%酸味が少ないと評価された。
【実施例17】
【0081】
高水分ミルクフィリング
高水分(>50%)、低pHで保存安定なミルクフィリングを、下記の手順および配合に従って調製した。
1.全乳およびMPC−70をライトニングミキサー(lightening mixer)を使用して混合する。
2.湿ったミックスの両方を165°F(73.89℃)に加熱する。
3.AMFを溶かし、165°F(73.89℃)に加熱する。
4.ターボミキサーを使用して、粗い乳濁液を作る。
5.3000psi(2.07×107Pa)/500psi(3.45×106Pa)で均質化する。
6.6.25NのHClを加え、pHを4.4/4.2に調節する。
7.事前にブレンドしたガムおよび糖を凝乳に加える。
8.それをサーモミキサー内で190°F(87.78℃)に加熱する。3分間保持する(全部で12〜13分)。
9.5000psi(3.45×107Pa)/500psi(3.45×106Pa)で均質化する。
10.試料をボウルに集める。
11.冷蔵庫に1時間または氷浴に50°F(10.00℃)未満となるまで保存する。
12.生成物をHobartで泡立てる(高速で1分間、2分間、3分間)。
13.嵩密度を測定する。
14.冷蔵庫で冷却する。
15.翌日、ミルクフィリングとしてスレート状に切る。
【0082】
【表11】

【実施例18】
【0083】
高水分で保存安定なミルクフィリング
高水分乳を、下記の配合および実施例17による手順に従って調製した。
【0084】
【表12】

【0085】
この製品は、優れた風味および食感で、不快な酸味がないと判断された。その全体的な品質は、特にクリーム性状がアイスクリームの質に近づく。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】pHを減少させる膜電気透析システムの一例を示す図である。
【図2】pHを減少させる膜電気透析システムの他の例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最終pHが4.6以下の食料品を得るために効果的な量の、酸性ED組成物、食用無機酸またはそれらの混合物を用いて食料品を調製するステップを含む、酸味がなく保存安定な高水分食料品を調製する方法であって、
前記食料品は、全有機酸含量が食料品1000グラムあたり0.12モル以下であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記食料品は、165°F(73.89℃)以上の温度に加熱されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記食料品は、Awが0.85以上であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記食料品は、Awが0.90以上であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記食料品は、ソース、グレイビー、スプレッド、ディップ、ドレッシング、サラダ、野菜、澱粉、肉、海産物、穀類、焼き菓子、フィリング、トッピング、焼き菓子、菓子、飲料、デザート、スナックおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記食料品は、最終pHが4.3以下であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記食料品は、最終pHが4.2以下であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記食料品は、全有機酸含量が食料品1000グラムあたり0.06モル以下であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記無機酸は、塩酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
最終pHが4.6以下の食料品を得るために効果的な量の、ED組成物、食用無機酸またはそれらの混合物を用いて前記食料品を調製するステップを含む方法により調製される保存安定な減塩食料品であって、
前記食料品は、全有機酸含量が食料品1000グラムあたり0.12モル以下であることを特徴とする食料品。
【請求項11】
前記食料品は、Awが0.75以上であることを特徴とする請求項10に記載の食料品。
【請求項12】
前記食料品は、Awが0.85以上であることを特徴とする請求項11に記載の食料品。
【請求項13】
前記食料品は、ソース、グレイビー、スプレッド、ディップ、ドレッシング、サラダ、野菜、澱粉、肉、海産物、スナックおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項10に記載の食料品。
【請求項14】
前記食料品は、最終pHが4.3以下であることを特徴とする請求項10に記載の食料品。
【請求項15】
前記食料品は、最終pHが4.2以下であることを特徴とする請求項14の記載の食料品。
【請求項16】
前記無機酸は、塩酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項10に記載の食料品。
【請求項17】
前記食料品は、低温殺菌するために165°F(73.89℃)以上の温度に加熱されることを特徴とする請求項10に記載の食料品。
【請求項18】
ホエー蛋白質濃縮粉末を、pH4.3以下をもたらすのに効果的な量のED組成物、食用無機酸またはその混合物とブレンドするステップを含む、保存安定な乳製品を調製するための方法であって、前記ブレンドは、組織化ホエー蛋白質ベースを得るのに効果的であり、前記乳製品は、完成した乳製品100グラムあたり0.12モル以下の全有機酸含量を有することを特徴とする方法。
【請求項19】
前記無機酸は、塩酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項18に記載の食料品。
【請求項20】
2から12重量パーセントのホエー蛋白質濃縮粉末は、ED組成物とブレンドされることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
ホエー蛋白質濃縮粉末は、pH3.5以下をもたらすために効果的な量のED組成物とブレンドされることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記ホエー蛋白質濃縮粉末・ED組成物ブレンドは、5から20分間180°F(82.22℃)から205°F(96.11℃)で加熱されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項23】
消泡剤は、加熱前に前記ホエー蛋白質濃縮粉末・ED組成物ブレンドに加えられることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項24】
追加のホエー蛋白質の濃縮物およびベースは、pH4.6以下をもたらすのに効果的な量の前記組織化ホエー蛋白質ベースとさらにブレンドされることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項25】
0から8重量パーセントの追加のホエー蛋白質濃縮物は、前記組織化ホエー蛋白質ベースとブレンドされることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
追加のホエー蛋白質濃縮物および組織化ホエー蛋白質スラリーの前記ブレンドは、少なくとも1分間175°F(79.44℃)から205°F(96.11℃)で加熱されることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項27】
ホエー蛋白質濃縮粉末を、pH4.3以下をもたらすのに効果的な量のED組成物、無機酸およびそれらの混合物とブレンドするステップを含む方法により調製される保存安定な乳製品であって、前記ブレンドが組織化ホエー蛋白質ベースを得るのに効果的であることを特徴とする乳製品。
【請求項28】
前記無機酸は、塩酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項27に記載の乳製品。
【請求項29】
2から12重量パーセントのホエー蛋白質濃縮粉末は、ED組成物とブレンドされることを特徴とする請求項27に記載の乳製品。
【請求項30】
ホエー蛋白質濃縮粉末は、pH3.5以下をもたらすのに効果的な量のED組成物とブレンドされることを特徴とする請求項27に記載の乳製品。
【請求項31】
前記ホエー蛋白質濃縮粉末・ED組成物ブレンドは、5から20分間180°F(82.22℃)から205°F(96.11℃)で加熱されることを特徴とする請求項27に記載の乳製品。
【請求項32】
消泡剤は、加熱前に前記ホエー蛋白質濃縮粉末・ED組成物ブレンドに加えられることを特徴とする請求項27に記載の乳製品。
【請求項33】
追加のホエー蛋白質の濃縮物およびベースは、pH4.6以下をもたらすのに効果的な量の前記組織化ホエー蛋白質とさらにブレンドされることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項34】
0から8重量パーセントの前記追加のホエー蛋白質濃縮物は、前記組織化ホエー蛋白質ベースとブレンドされることを特徴とする請求項33に記載の乳製品。
【請求項35】
追加のホエー蛋白質濃縮物および組織化ホエー蛋白質ベースの前記ブレンドは、少なくとも1分間175°F(79.44℃)から205°F(96.11℃)で加熱されることを特徴とする請求項34に記載の乳製品。
【請求項36】
魚を、pH4.5以下をもたらすのに効果的な量の酸性ED組成物、食用無機酸またはそれらの混合物と接触させるステップを含むことを特徴とする魚の構造的一体性および保存寿命を増すための方法。
【請求項37】
前記無機酸は、塩酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記pHは、4.0以下であることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記魚は、注入または注射によってED組成物、食用無機酸またはそれらの混合物と接触することを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項40】
保存安定なクリームチーズまたはクリームチーズ様製品を調製するための方法であって、
乳製混合物をpH4.4以上に発酵させるステップと、
酸性ED組成物、無機酸またはそれらの混合物と共にpH4.3以下に酸性化するステップと、
低温殺菌するために165°F(73.89℃)以上の温度に加熱するステップとを含み、
前記クリームチーズまたはクリームチーズ様製品は、全有機酸含量が製品1000グラムあたり0.22モル以下であることを特徴とする方法。
【請求項41】
前記乳製混合物は、pH4.8以上に発酵することを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記乳製混合物は、pH4.2以下に酸性化されることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記無機酸は、塩酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記乳製混合物は、発酵せずに、ED組成物、無機酸またはそれらの混合物でpH4.3以下に直接酸性化されることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記乳製混合物は、発酵せずに、ED組成物、無機酸またはそれらの混合物でpH4.3以下に直接酸性化されることを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記無機酸は、塩酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記乳製混合物は、発酵せずに、ED組成物、無機酸またはそれらの混合物、および少なくとも1種類の有機酸でpH4.3以下に酸性化されることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項48】
前記乳製混合物は、発酵せずに、ED組成物、無機酸またはそれらの混合物、および少なくとも1種類の有機酸でpH4.2以下に酸性化されることを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記無機酸が、塩酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記有機酸は、乳酸、酢酸およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記保存安定なクリームチーズまたはクリームチーズ様製品は、加えられた着色剤、香味料、栄養素、抗酸化剤、ハーブ、スパイス、海産物、果物、野菜、木の実および/または他の食品添加物をさらに含むことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項52】
高水分で保存安定な乳または乳製品もしくは乳組成物を調製する方法であって、
乳、乳誘導物またはそれらの混合物を、酸性ED組成物、無機酸またはそれらの混合物でpH4.6以下に酸性化して酸性化混合物とするステップと、
少なくとも1種類の親水コロイド安定剤を前記酸性化混合物に添加するステップとを含み、
前記乳製品は、含水率が45重量%以上、水分活量が0.9以上で、かつ全有機酸含量が前記製品1000グラムあたり約0.22モル以下であることを特徴とする方法。
【請求項53】
前記全有機酸含量は、前記製品1000グラムあたり約0.12モルであることを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記乳、乳誘導物またはそれらの混合物は、pH4.3以下に酸性化されることを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記乳、乳誘導物またはその混合物は、pH4.2以下に酸性化されることを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記乳は、新鮮乳、粉乳、濃縮乳およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項57】
前記乳誘導物がホエー、ホエー蛋白質濃縮物、チーズ凝乳、カゼイン塩、バター乳、クリーム、バター、乳脂肪およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項58】
前記無機酸は、塩酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項59】
前記乳または乳製品は、低温殺菌するために165°F(73.89℃)以上の温度に加熱されることを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項60】
前記乳または乳製品は、着色剤、香味料、栄養素、抗酸化剤、ハーブ、スパイス、果物、野菜、木の実および/または他の食品添加物をさらに含むことを特徴とする請求項52に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−514232(P2008−514232A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534747(P2007−534747)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/034942
【国際公開番号】WO2006/039372
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(501360131)クラフト・フーヅ・ホールディングス・インコーポレイテッド (49)
【氏名又は名称原語表記】KRAFT FOODS HOLDINGS, INC.
【住所又は居所原語表記】Three Lakes Drive, Northfield, Illinois 60093 United States of America
【Fターム(参考)】