説明

保存安定性に優れた粉末組成物

【課題】
香気、色調、混濁、特にフレーバーの保留性および安定性に優れ、嗜好性の高い香味及び外観を飲料、その他の食品に長期間安定に付与することのできる粉末組成物を提供すること。
【解決手段】
香料、色素および機能性物質から選択される少なくとも1種の成分と、セロビオースを含んでなる粉末組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料、色素、機能性物質などの保存安定性に優れ、各種の飲食品、化粧品などに配合した際に長期間安定に香気、香味、色調または各種の機能性を付与することのできる粉末素材に関する。さらに詳しくは、香料、色素および機能性物質から選択される少なくとも1種の成分と、セロビオースを含んでなる粉末組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料、その他の食品および化粧品などに好ましい香気、香味、色調を付与したり、例えば、脳機能改善作用やコレステロール低下作用などの生理活性作用を付与する目的で、油性着香料、油溶性色素類またはビタミン類などの機能性物質などの油性材料を、植物性天然ガム質溶液であるアラビアガム溶液あるいは化工でん粉、デキストリンのごとき乳化剤、賦形剤などと混合した後、噴霧乾燥して得られる粉末素材が一般的に使用されている。また、上記のような油性材料を、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどの合成界面活性剤、適当な賦形剤などを用いて混合または乳化し、噴霧乾燥する方法も行われている。
【0003】
しかしながら、香料、色素およびビタミン類等の機能性物質を乳化剤、賦形剤などの存在下に乳化し、この乳化混合物を、例えば、噴霧乾燥して得られる粉末素材は、香気、香味、色調、機能性物質の保存安定性の点で必ずしも満足できるものではない。
【0004】
これら従来型の粉末香料の問題点を解決する方法としては、例えば、香料、色素およびビタミン類等の機能性物質の保存安定性を改善することを目的として、香料などの可食性油性材料と水溶性大豆多糖類を含む乳化混合物を乾燥したものからなることを特徴とする水溶性粉末香料(特許文献1)、香料、トレハロース、乳化剤及び水を含む乳化混合物を乾燥することを特徴とする粉末香料の製造方法(特許文献2)、香料、色素および機能性物質から選択される少なくとも1種の成分と、トレハロースおよび水溶性ヘミセルロースを含んでなる粉末状混合物(特許文献3)、香料、乳化剤、水及びマルトースを含む乳化物を乾燥することを特徴とする粉末香料の製法(特許文献4)、香料、糖類、水及び脱塩乳化剤を含む乳化物を乾燥することを特徴とする粉末香料の製造方法(特許文献5)。香料と、乳化剤と賦形剤との混合物あるいは乳化性賦形剤と、パラチノースおよびラフィノースから選ばれる少なくとも一種とを含有する混合物を調製し、ついで該混合物を乾燥することを特徴とする粉末香料の製造方法(特許文献6)。香料、色素および機能性物質から選択される少なくとも1種の成分と、乳化剤および酵母細胞壁画分を含んでなる粉末状混合物(特許文献7)、油性物質、マルトシルトレハロース及び乳化剤を含むことを特徴とする粉末組成物(特許文献8)、油溶性成分と、乳化剤、マルトトリオース及び水を含む乳化混合物を乾燥することを特徴とする粉末製剤の製造方法(特許文献9)、少なくとも1種の機能性油性成分と、果糖単位を含むポリマーおよびオリゴマーから選択された少なくとも1種の水可溶性包括剤と、を含有するエマルション組成物を乾燥して得られた機能性油性材料の粉末組成物(特許文献10)などが提案されている。
【0005】
しかしながら、これらの粉末組成物は、香気、香味、色調、機能性物質の保存安定性の点で改善されているものの必ずしも満足できるものとは言えず、更なる技術の向上が求められていた。
【0006】
一方、セロビオースに関する従来提案としては、例えば、セロオリゴ糖を有効成分として含む生活習慣病改善剤、腸内細菌叢賦活剤、ピロリ菌増加抑制又は静菌剤、骨中カルシウム濃度増加剤、皮膚バリヤ機能改善剤、皮膚常在菌叢改善剤、澱粉老化防止剤、蛋白質変成防止剤(特許文献11)などが提案されているが、香料、色素および機能性物質から選択される少なくとも1種の成分と、セロビオースを含んでなる粉末組成物については、何等記載されていない。そして、これらの粉末組成物が吸湿性と保存安定性に優れていること並びに当該組成物を配合した飲食品、化粧品等の保存安定性及び吸湿性が改善されることは提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−107937号公報
【特許文献2】特開平9−107911号公報
【特許文献3】特開2000−217538号公報
【特許文献4】特開2001−61435号公報
【特許文献5】特開2001−64667号公報
【特許文献6】特開2001−186858号公報
【特許文献7】特開2004−166636号公報
【特許文献8】特開2005−73541号公報
【特許文献9】特開2006−87号公報
【特許文献10】特開2008−189611号公報
【特許文献11】WO2007/037249国際公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、香気、色調、混濁、特にフレーバーの保留性および安定性に優れ、嗜好性の高い香味及び外観または種々の生理効果などの機能性を飲料、その他の食品に長期間安定に付与することのできる粉末組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記のごとき欠点を有する従来の粉末香料について、その欠点を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、例えば、セルロースを酵素分解して得られる、グルコースがβ−1,4結合で2個結合した二糖、すなわちセロビオースを、従来型の粉末組成物製造の乳化の際に添加することにより、著しく吸湿性が改善された粉末組成物が得られ、当該組成物は香料、色素、機能性物質などの油性物質の保存安定性に優れていること、更にその粉末組成物は、各種の飲食品、化粧品などの香気、香味、色調、嗜好性、機能性などに悪影響を与えることなく、長期間安定に香気、香味、色調および/または機能性を飲食品や化粧品などに付与することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして本発明は、香料、色素および機能性物質から選択される少なくとも1種の成分と、セロビオースを含んでなる粉末組成物を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、粉末組成物の質量に基づいて、セロビオースを10質量%〜90質量%含有する前記の粉末組成物を提供するものである。
【0012】
さらに、本発明は、粉末組成物の質量に基づいて、セロビオースを10質量%〜90質量%、および、トレハロースを5質量%〜45質量%含有する前記の粉末組成物を提供するものである。
【0013】
さらに、本発明は、香料、色素および機能性物質から選択される少なくとも1種の成分と、セロビオース、乳化剤及び水を含む乳化混合物を乾燥することを特徴とする粉末組成物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の粉末組成物は、香料、色素または機能性物質などの保存安定性に優れ、各種の飲食品、化粧品などに利用することができ、これらの飲食品、化粧品などの香気、香味、色調、嗜好性になんら悪影響を与えることなく、長期間安定に香気、香味、色調および機能性を付与することができ、飲食品、化粧品等、広い分野への用途が開けるなど極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において使用することのできる香料、色素、機能性物質は通常は油性物質であることが多いが、特に制限されるものでなく、飲食品、化粧品等に通常用いられるものはいずれも使用可能である。香料としては、例えば、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツなどの柑橘類精油;花精油、ペパーミント油、スペアミント油、スパイス油などの植物精油;コーラナッツ、コーヒー、バニラ、ココア、紅茶、緑茶、ウーロン茶、香辛料などの粉砕物、エキストラクト類、オレオレジン類、エッセンス類、回収香;合成香料化合物、調合香料組成物及びこれらの任意の混合物などが挙げられる。
【0016】
また、本発明の色素としては、例えば、α−カロチン、β−カロチン、リコペン、パプリカ色素、アナトー色素、クロロフィル、クチナシ色素、ベニバナ色素、モナスカス色素、ビート色素、エルダベリー色素、マリーゴールド色素、コチニール色素などが挙げられる。
【0017】
更に、本発明における機能性物質とは、生体調節作用を有する物質を意味し、かかる機能性物質としては、例えば、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、DHAおよび/またはEPA含有魚油、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、月見草油、ボラージ油、レシチン、オクタコサノール、ローズマリー抽出物、セージ抽出物、γ−オリザノール、β−カロチン、パームカロチン、シソ油、キチン、キトサン、ローヤルゼリー、プロポリス;ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンKなどの油溶性ビタミン類およびその誘導体、コエンザイムQ10などを挙げることができる。
【0018】
セロビオースはグルコピラノースが2個β−1,4結合した構造を持つ二糖である。セロビオースは天然には松葉やトウモロコシの茎等に存在し、甘味を伴うが、ヒトによって分解されない。したがってセロビオースは、健康食品や糖尿病患者用食品の甘味料、あるいは化粧品原料、医薬品原料として有用であると考えられる。
【0019】
本発明で使用するセロビオースは純度の高いセロビオースを用いることもできるが、セロビオースを主成分として含有するセロオリゴ糖を用いてもよい。セロオリゴ糖はグルコピラノース単位が2〜6個程度、β−1,4結合した構造を持つオリゴ糖であり、セロビオース、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオースおよびセロヘキサオースからなる群より選択される主成分を、50質量%以上含有する。この主成分とその含有量としては、セロビオースを70質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上であれば、さらに好ましい。これは、上述のセロオリゴ糖主成分の中で、水に対する溶解度はセロビオースが最も高いことから、本発明の粉末組成物に最も適しているからである。
【0020】
また上述のセロオリゴ糖は、副成分としてグルコースを含有しても構わないが、吸湿やカロリーの問題から、含有量は10質量%以下であることが好ましい。
【0021】
本発明に使用するセロオリゴ糖の製造方法としては、特に規定するものではないが、安全性の点からは、セルロース系物質をセルラーゼで酵素分解して得られるものを使用するのが好ましい。
【0022】
ここで言うセルラーゼとは、セルロースを分解する酵素の総称であり、セルロースの分解活性を有する酵素が全て含まれる。セルラーゼ酵素源は、特に限定されるものではないが、例えば、セルラーゼ産生菌体、菌体の産生する酵素を精製したもの、精製酵素を添加剤等とともに製剤化したものなどがあげられる。またその剤形も、特に限定されるものではないが、例えば、液体、粉末、顆粒などがある。
【0023】
セルラーゼの起源についても、特に限定されるものではなく、公知のセルラーゼ産生微生物としては、Tricoderma属、Acremonium属、Aspergillus属、Bacillus属、Pseudomonas属、Penicillium属、Aeromonus属、Irpex属、Sporotrichum属、Humicola属、Cellovibrio属などがあるが、セルロースを分解する酵素であれば、上記公知の菌由来の酵素に限らず、新規の菌由来の酵素も、本発明でいうセルラーゼに含まれる。
【0024】
本発明の粉末組成物におけるセロビオースの配合比率は特に制限されるものではないが、一般には、粉末組成物の質量に基づいて、セロビオースを10質量%〜90質量%、好ましくは15質量%〜85質量%、より好ましくは20質量%〜80質量%にするのがよい。この配合比率にすることにより安定な乳化組成物が得られ、また、この乳化組成物を乾燥することにより、香料、色素、機能性物質などの油性物質の保存安定性に優れた粉末組成物及び吸湿性の改善された粉末組成物を得ることができる。
【0025】
また、本発明ではセロビオースに加えてトレハロースを使用することで、得られる粉末組成物中の香料、色素または機能性物質などの油性物質の保存安定性を向上させることができる。トレハロースの配合量としては一般には、粉末組成物の質量に基づいて、トレハロース5質量%〜45質量%、好ましくは10質量%〜40質量%であり、また、セロビオースとトレハロースの使用比率を8:1〜1:2程度とするのがよい。この配合比率にすることにより安定な乳化組成物が得られ、また、この乳化組成物を乾燥することにより、香料、色素または機能性物質などの油性物質の保存安定性に優れた粉末組成物及び吸湿性の改善された粉末組成物を得ることができる。
【0026】
本発明では香料、色素および機能性物質などの油性物質成分とセロビオース以外に、乳化を促進するため乳化剤を使用することができるが、使用する乳化剤は特に制限されるものではなく、従来から飲食品、化粧品等に用いられている各種の乳化剤が使用可能である。使用することのできる乳化剤としては、例えば、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、化工でん粉(酸分解澱粉、酸化澱粉、α化澱粉、グラフト化澱粉、カルボキシメチル基、ヒドロキシアルキル基等を導入したエーテル化澱粉、酢酸、リン酸等を反応させたエステル化澱粉、2ヶ所以上の澱粉の水酸基間に多官能基を結合させた架橋澱粉、湿熱処理澱粉等)、ソルビタン脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カッシアガム、トラガントガム、カラヤガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸及びその塩類、カラギーナン、ゼラチン、カゼイン等を挙げることができる。これら乳化剤の使用量は厳密に制限されるものではなく、用いる乳化剤の種類等に応じて広い範囲にわたり変えることができるが、通常、油性物質1質量部に対し約0.05質量部〜約50質量部、好ましくは約0.1質量部〜約20質量部の範囲内が適当である。
【0027】
本発明によれば、上記混合物には乳化に際して、必要に応じて、さらに、デキストリン、砂糖、乳糖、ブドウ糖、果糖、マルトース、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、水飴、還元水飴等の糖類、トウモロコシ、モチトウモロコシ、馬鈴薯、甘薯、小麦、米、もち米、タピオカ等由来の澱粉、増粘多糖類(寒天、ファーセレラン、ローカストビーンガム、タマリンドガム、タラガム、アラビノガラクタン、スクレログルカン、プルラン、デキストラン、ジェランガム、カードラン、ガテイガム、コンニャクマンナン、キシラン等)、さらに、キチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等を適宜配合することもできる。これらの使用量は粉末組成物に望まれる特性等に応じて適宜に選択することがきる。
【0028】
本発明の粉末組成物の調製法の好ましい一実施態様を示せば、例えば、まず水300質量部に前記した如き乳化剤20質量部とセロビオース60質量部を溶解させ、それに前記した如き香料、色素および機能性物質から選択される少なくとも1種の成分20質量部を添加し、ホモミキサー、コロイドミル、高圧ホモジナイザー等を用いて乳化処理を行い、得られる乳化混合物を真空乾燥、噴霧乾燥等の乾燥手段で乾燥することにより、フレーバーの保留性や安定性などに優れた粉末組成物を得ることができる。
【0029】
かくして、上述のようにして得られる粉末組成物は、例えば、飲料、粉末飲料、デザート、チューインガム、錠菓、スナック類、水産加工食品、畜肉加工食品、レトルト食品などの飲食品に利用することができる。これら飲食品に配合される粉末組成物の使用量は、飲食品の種類、形態などにより異なるが、一般的には飲食品1質量部に対して約0.001質量部〜約0.05質量部の範囲内で使用することができる。
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0030】
実施例1
水300gに化工澱粉(カプシュール:日本エヌエスシー株式会社製)20g及びセロビオース(松谷化学工業社製)60gを加えて溶解し、90℃で15分間加熱殺菌する。これを40℃に冷却し、レモンオイル(長谷川香料社製)20gを添加混合した後、TK−ホモミキサーを用いて7000rpm、10分間乳化した。この液をスプレードライヤーL−8i(大川原化工機社製)を使用して、入口温度140℃、出口温度75℃にて噴霧乾燥し、レモン粉末香料100g(本発明品1:セロビオース60%含有)を得た。
【0031】
実施例2
水200gに化工澱粉(カプシュール:日本エヌエスシー株式会社製)20g、セロビオース(松谷化学工業社製)30gおよびトレハロース(トレハ(登録商標):(株)林原商事社製)30gを加えて溶解し、90℃で15分間加熱殺菌する。これを40℃に冷却し、レモンオイル(長谷川香料社製)20gを添加混合した後、TK−ホモミキサーを用いて7000rpm、10分間乳化した。この液をスプレードライヤーL−8i(大川原化工機社製)を使用して、入口温度140℃、出口温度75℃にて噴霧乾燥し、レモン粉末香料100g(本発明品2:セロビオース30%およびトレハロース30%含有)を得た。
【0032】
比較例1
水120gに化工澱粉(カプシュール:日本エヌエスシー株式会社製)20gおよびデキストリン(パインデックスNo.1;松谷化学工業社製)60gを加えて溶解し、90℃で15分間加熱殺菌する。これを40℃に冷却し、レモンオイル(長谷川香料社製)20gを添加混合した後、TK−ホモミキサーを用いて7000rpm、10分間乳化した。この液をスプレードライヤーL−8i(大川原化工機社製)を使用して、入口温度140℃、出口温度75℃にて噴霧乾燥し、レモン粉末香料100g(比較品1:セロビオース含有せず)を得た。
【0033】
[粉末組成物の熱虐待試験と官能評価]
本発明品1、本発明品2および比較品1を、それぞれ10gずつ低密度ポリエチレン袋に入れ、遮光下で50℃、4週間保存し、熱虐待品とした。対照品として、本発明品1、本発明品2および比較品1を、それぞれ10gずつアルミ蒸着袋に入れ、−18℃で保存したものを用いた。それぞれの粉末を良く訓練された専門パネラーにより官能評価した。その結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1の結果より、セロビオースは、レモンオイル粉末の熱安定性に優れた効果を発揮し、極めて有用であることがわかる。
【0036】
実施例3
水300gに化工澱粉(カプシュール:日本エヌエスシー株式会社製)20g及びセロビオース(松谷化学工業社製)70gを加えて混合溶解し、90℃で15分間加熱殺菌する。これを50℃に冷却し、パプリカオイル(長谷川香料社製)10gを添加混合した後、TK−ホモミキサーを用いて7000rpm、10分間乳化した。この液をスプレードライヤーL−8i(大川原化工機社製)を使用して、入口温度140℃、出口温度75℃にて噴霧乾燥し、パプリカ色素粉末100g(本発明品3:セロビオース70%含有)を得た。
【0037】
実施例4
水200gに化工澱粉(カプシュール:日本エヌエスシー株式会社製)20g、セロビオース(松谷化学工業社製)35gおよびトレハロース(トレハ(登録商標):(株)林原商事社製)35gを加えて混合溶解し、90℃で15分間加熱殺菌した。これを50℃に冷却し、パプリカオイル(長谷川香料社製)10gを添加混合した後、TK−ホモミキサーを用いて7000rpm、10分間乳化した。この液をスプレードライヤーL−8i(大川原化工機社製)を使用して、入口温度140℃、出口温度75℃にて噴霧乾燥し、パプリカ色素粉末100g(本発明品4:セロビオース35%およびトレハロース35%含有)を得た。
【0038】
比較例2
水150gに化工澱粉(カプシュール:日本エヌエスシー株式会社製)20gおよびデキストリン(パインデックスNo.1;松谷化学工業社製)70gを加えて溶解し、90℃で15分間加熱殺菌する。これを50℃に冷却し、パプリカオイル(長谷川香料社製)10gを添加混合した後、TK−ホモミキサーを用いて7000rpm、10分間乳化した。この液をスプレードライヤーL−8i(大川原化工機社製)を使用して、入口温度140℃、出口温度75℃にて噴霧乾燥し、パプリカ色素粉末100g(比較品2:セロビオース含有せず)を得た。
【0039】
[粉末組成物の光虐待試験および色素量の残存量]
本発明品3、本発明品4および比較品2で調製したパプリカ色素粉末を、それぞれ10gずつ透明ガラス瓶に充填し、10000ルクス、20℃、2週間光虐待試験を行った。対照品として、本発明品3、本発明品4および比較品2を、それぞれ10gずつアルミ蒸着袋に入れ、−18℃で保存したものを用いた。それぞれの粉末約300mgを正確に量り、イオン交換水を加えて希釈し正確に100mlとし、この希釈液3mlを正確に量り、アセトンを加えて正確に100mlとする。この溶液をケイソウ土約2gをボディーフィードした濾紙(東洋濾紙No,2)にて濾過し、濾液を直ちに分光光度計を用いて波長450nm付近における極大吸収を測定し、色素量を求めた。虐待品の色素量と対照品の色素量の比を色素残存量(%)とした。結果を表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
表2の結果より、セロビオースは、パプリカ色素粉末の光保存安定性に優れた効果を発揮し、極めて有用であることがわかる。また、さらにトレハロースを配合した本発明品4は、パプリカ色素粉末の光保存安定性にさらに優れた効果を発揮した。
【0042】
実施例5
水100gに化工澱粉(カプシュール:日本エヌエスシー株式会社製)20g、デキストリン50g及びセロビオース20g(松谷化学工業社製)を加えて溶解し、85〜90℃で15分間加熱殺菌する。これを40℃に冷却し、DHA含有精製魚油10gを添加混合した後、TK−ホモミキサーを用いて7000rpm、10分間乳化した。この液をニロ社のモービルマイナー型スプレードライヤーを使用して、入口温度140℃、出口温度75℃にて噴霧乾燥し、DHA含有精製魚油粉末製剤100g(本発明品5:セロビオース20%含有)を得た。
【0043】
実施例6
水100gに化工澱粉(カプシュール:日本エヌエスシー株式会社製)20g、デキストリン50g、セロビオース10g(松谷化学工業社製)およびトレハロース(トレハ(登録商標):(株)林原商事社製)10gを加えて溶解し、85〜90℃で15分間加熱殺菌する。これを40℃に冷却し、DHA含有精製魚油10gを添加混合した後、TK−ホモミキサーを用いて7000rpm、10分間乳化した。この液をニロ社のモービルマイナー型スプレードライヤーを使用して、入口温度140℃、出口温度75℃にて噴霧乾燥し、DHA含有精製魚油粉末製剤100g(本発明品6:セロビオース10%およびトレハロース10%含有)を得た。
【0044】
比較例3
実施例5のセロビオースの代わりにデキストリン(DE10)を同量使用した他は、実施例5と同様に行いDHA含有精製魚油粉末100g(比較品3:セロビオース含有せず)を得た。
【0045】
実施例7
水150gにHLB15のショ糖脂肪酸エステル5g、デキストリン(DE10)45g及びセロビオース30gを加えて溶解し、85〜90℃で15分間加熱殺菌した。この溶液を約40℃に冷却し、γ−リノレン酸20gを添加混合した後、TK−ホモミキサーを用いて7000rpm、10分間乳化した。この液を実施例5と同様に噴霧乾燥してγ−リノレン酸含有粉末製剤100g(本発明品7:セロビオース30%含有)を得た。
【0046】
実施例8
水150gにHLB15のショ糖脂肪酸エステル5g、デキストリン(DE10)45g、セロビオース20gおよびトレハロース10gを加えて溶解し、85〜90℃で15分間加熱殺菌した。この溶液を約40℃に冷却し、γ−リノレン酸20gを添加混合した後、TK−ホモミキサーを用いて7000rpm、10分間乳化した。この液を実施例5と同様に噴霧乾燥してγ−リノレン酸含有粉末製剤100g(本発明品8:セロビオース20%およびトレハロース10%含有)を得た。
【0047】
比較例4
実施例7のセロビオースの代わりに砂糖を同量使用した他は、実施例6と同様の操作を行いγ−リノレン酸含有粉末100g(比較品4:セロビオース含有せず)を得た。
【0048】
[粉末飲料の調製および保存試験]
実施例5、実施例6、比較例3、実施例7、実施例8及び比較例4で得られた機能性物質含有製剤及び粉末を用いて、表3に示す処方に従って粉末飲料を調製した。粉末飲料50gをそれぞれポリ袋に入れ、37℃にて3ケ月、および6ヶ月間保存した。
【0049】
【表3】

【0050】
上述の3ケ月間保存した粉末飲料7gを水100gで希釈し、専門パネラー10名にて、香気香味の官能評価を行った。その結果、専門パネラーの全員が、本発明品5及び6を配合したNo.1及びNo.2ならびに本発明品7及び8を配合したNo.4及びNo.5は、ともに保存による劣化臭は認められず良好な香気香味を保持していると判定した。一方、比較品3及び4を配合したNo.3及びNo.6は、ともに保存による著しい劣化臭が認められると判定した。
【0051】
また、上述の6ケ月間保存した粉末飲料7gを水100gで希釈し、専門パネラー10名にて、香気香味の官能評価を行った。その結果、専門パネラーの全員が、本発明品6を配合したNo.2および本発明品8を配合したNo.5は、ともに保存による劣化臭は認められず良好な香気香味を保持しているが、本発明品5を配合したNo.1および本発明品7を配合したNo.4は、ともに保存によりわずかに劣化臭が認められると判定した。一方、比較品3及び比較品4を配合したNo.3及びNo.6は、ともに保存による著しい劣化臭が認められると判定した。
【0052】
このことから、セロビオースは、機能性物質の保存安定性に優れた効果を発揮し、また、セロビオースにトレハロースを配合すると、相乗的に機能性物質の保存安定性に優れた効果を発揮し、極めて有用であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料、色素および機能性物質から選択される少なくとも1種の成分と、セロビオースを含んでなる粉末組成物。
【請求項2】
粉末組成物の質量に基づいて、セロビオースを10質量%〜90質量%含有する請求項1記載の粉末組成物。
物。
【請求項3】
粉末組成物の質量に基づいて、セロビオースを10質量%〜90質量%、および、トレハロースを5質量%〜45質量%含有する請求項2記載の粉末組成物。
【請求項4】
香料、色素および機能性物質から選択される少なくとも1種の成分と、セロビオース、乳化剤及び水を含む乳化混合物を乾燥することを特徴とする粉末組成物の製造方法。

【公開番号】特開2011−26411(P2011−26411A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172375(P2009−172375)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000214537)長谷川香料株式会社 (176)
【Fターム(参考)】