説明

保存安定性に優れるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物およびその製造方法

【課題】 保存安定性の向上したエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物及びその製法の提供。
【解決手段】 ポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物に、下記一般式(I)で表されるリン化合物(I)を添加する。


[式中、aは1又は2、Aは、非置換アルキル基であるか又は水酸基、カルボニル基、ホスホニル基、メチルカルボキシル基、エチルカルボキシル基及びメチルホスホニル基から選ばれる基で置換されたアルキル基(aが1のとき)或いはアルキレン基又は式:−CH2−N(R1)−CH2−(式中でR1はメチルホスホニル基を示す)で表される基(aが2のとき)である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期保存後も粘度の増加がないかまたは小さく、しかも反応性能などの物性変化のない保存安定性に優れるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させて得られるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物は、1分子中にカチオン重合性または付加反応性のエポキシ基とラジカル重合性の(メタ)アクリレート基を有し、重合性、硬化性(架橋性)に優れ、またその重合・硬化物はエポキシ化合物(エポキシ樹脂)に由来する優れた耐熱性、耐薬品性、密着性、機械的特性、電気特性を備え、しかも(メタ)アクリレート基に由来する高い反応性を有している。
そのため、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物は、カチオン重合開始剤およびラジカル重合開始剤を添加し、必要に応じて、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物以外の他の重合性化合物(反応性化合物)、例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物以外のエポキシ化合物、ラジカル重合性化合物などの1種または2種以上を更に配合して、半導体やその他の電子部品の封止剤、液晶表示装置の枠シール剤、レジスト材料、接着剤、コーティング剤、構造用材料などの種々の用途に用いられている。
【0003】
しかし、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物は、保存安定性に劣っており、時間の経過に伴って、粘度の増加、重合・硬化性能の低下などが生じやすい。
トリフェニルホスフィン、トリフェニルアンチモン、トリフェニルビスマスなどの3価の有機VB族化合物触媒を用いてエポキシ化合物とカルボン酸を反応させてエポキシエステル樹脂を合成し、ついで当該エポキシエステル樹脂に多塩基酸無水物を反応させてエポキシ基とカルボキシル基を有するカルボン酸変性エポキシエステル樹脂を製造するに当たって、生成したカルボン酸変性エポキシエステル樹脂の保存安定性を向上させるために、エポキシエステル樹脂の合成後にまたはカルボン酸変性エポキシエステル樹脂の製造後に、酸化を行って触媒を不活化することが提案されている(特許文献1)。
しかしながら、この従来技術による場合は、カルボン酸変性エポキシエステル樹脂の保存安定性を向上させるために、エポキシエステル樹脂の合成後またはカルボン酸変性エポキシエステル樹脂の製造後に酸化処理を行って有機VB族化合物触媒を不活性にするという手間のかかる触媒の失活処理を行う必要があるため、工程的に繁雑であり、有利な方法ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−330456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させて得られるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の保存安定性を、酸化処理などの手間のかかる処理工程を行わずに、簡単に向上させ得る技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成すべく本発明者らは研究を重ねてきた。その結果、2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させて製造したエポキシ基と(メタ)アクリル酸エステル基の両方を有するエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物に、特定のリン化合物を添加すると、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の保存安定性が向上し、長期保存後も粘度の上昇がなく、しかもエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の反応性能(重合性能、硬化性能、架橋性能)などの低下が生じないことを見出した。
また、本発明者らは、当該保存安定性の向上技術は、4級オニウム塩、3級アミンおよび3級ホスフィンから選ばれる少なくとも1種の酸付加触媒の存在下に、2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させて得られるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物に対して特に有効であることを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1) 2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させて製造したエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物に、下記の一般式(I)で表されるリン化合物(I);
【0008】
【化1】

[式中、aは1または2であり、Aは、非置換のアルキル基または水酸基、カルボニル基、ホスホニル基、メチルカルボキシル基、エチルカルボキシル基およびメチルホスホニル基から選ばれる1つ以上の基で置換されたアルキル基(aが1のとき)であるか或いはアルキレン基または式:−CH2−N(R1)−CH2−(式中でR1はメチルホスホニル基を示す)で表される基(aが2のとき)である。]
を添加したことを特徴とする、保存安定性に優れるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物である。
【0009】
そして、本発明は、
(2) 上記の一般式(I)で表されるリン化合物(I)が、下記の一般式(Ia)で表されるリン化合物(Ia)および下記の一般式(Ib)で表されるリン化合物(Ib)のうちの少なくとも1種である前記(1)のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物である。
【0010】
【化2】

(式中、R2、R3およびR4はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボニル基、ホスホニル基、メチルカルボキシル基、エチルカルボキシル基またはメチルホスホニル基であり、R5はメチルホスホニル基である。)
【0011】
また、本発明は、
(3) リン化合物(I)の配合量が、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の質量に基づいて、0.001〜1.0質量%である前記(1)または(2)のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物;
(4) 2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させて得られるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物が、4級オニウム塩、3級アミンおよび3級ホスフィンから選ばれる少なくとも1種の酸付加触媒を用いて製造したものである前記(1)〜(3)のいずれかのエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物;および、
(5) 2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させて得られるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物が、2個以上のグルシジル基を有するエポキシ化合物の一部のグリシジル基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させて得られるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物である前記(1)〜(4)のいずれかのエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物;
である。
【0012】
さらに、本発明は、
(6) 2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基と、アクリル酸および/またはメタクリル酸を、酸付加触媒の存在下で反応させてエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を製造した後、当該エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物に下記の一般式(I)で表されるリン化合物;
【0013】
【化3】

[式中、aは1または2であり、Aは、非置換のアルキル基または水酸基、カルボニル基、ホスホニル基、メチルカルボキシル基、エチルカルボキシル基およびメチルホスホニル基から選ばれる1つ以上の基で置換されたアルキル基(aが1のとき)であるか或いはアルキレン基または式:−CH2−N(R1)−CH2−(式中、R1はメチルホスホニル基を示す)で表される基(aが2のとき)である。]
を添加することを特徴とする、保存安定性に優れるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の製造方法である。
【0014】
そして、本発明は、
(7) 上記の一般式(I)で表されるリン化合物が、下記の一般式(Ia)で表されるリン化合物および下記の一般式(Ib)で表されるリン化合物のうちの少なくとも1種である前記(6)の製造方法である。
【0015】
【化4】

(式中、R2、R3およびR4はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボニル基、ホスホニル基、メチルカルボキシル基、エチルカルボキシル基またはメチルホスホニル基であり、R5はメチルホスホニル基である。)
【0016】
また、本発明は、
(8) 酸付加触媒が、4級オニウム塩、3級アミンおよび3級ホスフィンから選ばれる少なくとも1種である前記(6)また(7)の製造方法;
(9) リン化合物の添加量が、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の質量に基づいて、0.001〜1.0質量%である前記(6)〜(8)のいずれかの製造方法;および、
(10) 2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物が、2個以上のグルシジル基を有するエポキシ化合物である前記(6)〜(9)のいずれかの製造方法;
である。
【発明の効果】
【0017】
本発明による場合は、酸化処理などの繁雑で手間のかかる処理を行うことなく、リン化合物(I)を添加するという極めて簡便な方法で、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の保存安定性を向上させることができる。
リン化合物(I)を添加してなる本発明のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物は、保存安定性に優れており、長期間保存しても、粘度の増加、反応性能(重合性能、硬化特性、架橋性能など)の低下などの物性の低下が生じない。
そのため、リン化合物(I)を添加してなる本発明のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物は、カチオン重合開始剤およびラジカル重合開始剤を添加し、また必要に応じて、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物以外の他の重合性化合物(反応性化合物)、例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物以外のエポキシ化合物、ラジカル重合性化合物などの1種または2種以上を更に配合して、例えば、半導体やその他の電子部品の封止剤、液晶表示装置の枠シール剤、レジスト材料、接着剤、コーティング剤、構造用材料などの種々の用途に有効に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明は、保存安定性の向上した、2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物(以下単に「ポリエポキシ化合物」ということがある)の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させて得られるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物およびその製造方法である。
本発明のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の製造に用いるポリエポキシ化合物としては、2個以上のエポキシ基を有する化合物であればいずれでもよく、例えば、2個以上のグリシジル基を有する化合物、2個以上の脂環族エポキシ基(シクロヘキセン環などのような不飽和脂肪族環の不飽和基部分の酸化によって形成されるエポキシ基)を有する化合物、グリシジル基と脂環族エポキシ基を合計で2個以上有する化合物などを挙げることができる。
そのうちでも、本発明のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物は、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物の一部のグリシジル基にアクリル酸およびメタクリル酸の一方または両方を反応させて得られるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
【0019】
本発明のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の製造に用い得るポリエポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;臭素化エポキシ樹脂(テトラブロモビスフェノールとエピクロロヒドリンとの反応、またはテトラブロモビスフェノールおよびビスフェノールの混合物とエピクロロヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂);トリシクロデカンジメタノールのジグリシジルエステル、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエステルなどの脂環族ポリアルコールのポリグリシジルエステル;グリシジルエステル型樹脂(ポリカルボン酸とエピクロロヒドリンとの反応生成物をNaOHなどのアルカリを用いて脱塩酸して得られるエポキシ樹脂);グリシジルアミン型樹脂(アミン類またはアミノフェノールにエピクロロヒドリンを反応させて得られるエポキシ樹脂);ヒンダトイン型エポキシ樹脂(ヒンダトインにエピクロロヒドリンを反応させて得られるエポキシ樹脂);水素化ビスフェノール型エポキシ樹脂(水素化したビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどにエピクロロヒドリンを反応させて得られる生成物をNaOHなどのアルカリを用いて脱塩酸して得られるエポキシ樹脂)などを挙げることができる。
【0020】
本発明のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物は、上記したポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基に、アクリル酸を単独で反応させたものであってもよいし、メタクリル酸を単独で反応させたものであってもよいし、またはアクリル酸とメタクリル酸の両方を反応させたものであってもよい。
ポリエポキシ化合物とアクリル酸および/またはメタクリル酸の使用割合は、エポキシ基の残留しているエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を得るという点から、ポリエポキシ化合物のエポキシ基1当量に対して、アクリル酸および/またはメタクリル酸(アクリル酸とメタクリル酸の両方を用いる場合は両者の合計)を1当量未満の量で用いることが必要である。
生成するエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物のエポキシ基の特性と(メタ)アクリル基の特性を両立させるという点から、ポリエポキシ化合物のエポキシ基1当量に対して、アクリル酸および/またはメタクリル酸を0.3〜0.7当量の量で用いることが好ましい。
【0021】
ポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基と、アクリル酸および/またはメタクリル酸との反応は、触媒を用いずに行ってもよいが、反応速度を速くできることから、酸付加触媒を用いて行うことが好ましい。
酸付加反応触媒としては、4級オニウム塩、3級アミンおよび3級ホスフィンが好ましく用いられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
4級オニウム塩の具体例としては、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニムブロマイドなどを挙げることができる。
3級アミンの具体例としては、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン;ジメチルベンジルアミン、ジエチルベンジルアミンなどのジアルキルアリールアミン;トリエタノールアミンなどを挙げることができる。
3級ホスフィンの具体例としては、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリトリルホスフィンなどのトリアリールホスフィン;トリシクロヘキシルホスフィンなどのトリシクロアルキルホスフィン;トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィンなどトリアルキルホスフィンなどを挙げることができる。
上記した酸付加反応触媒は単独で用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。
そのうちでも、酸付加触媒としては、反応活性、ハロゲンが敬遠される点から、トリフェニルホスフィンが好ましく用いられる。
【0022】
ポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基と、アクリル酸および/またはメタクリル酸との反応を、酸付加反応触媒を用いて行う場合は、酸付加触媒の使用量は、アクリル酸および/またはメタクリル酸(アクリル酸とメタクリル酸の両方を用いる場合は両者の合計)1モルに対して、0.0001〜1.0モルであることが好ましく、0.001〜0.1モルであることがより好ましい。
【0023】
また、ポリエポキシ化合物にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させるに当たっては、重合禁止剤を添加してもまたは添加しなくてもいずれでもよく、重合禁止剤を添加した場合には、反応により生成するエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の重合を防ぐことができる。
その際の重合禁止剤としては、限定されるものではないが、例えば、ヒドロキノン、p−メトキシフェノール、p−ゼンゾキノン、フェノチアジン、ジブチルヒドロキシトルエンなどを挙げることができる。重合禁止剤は1種類のみを使用してもよいし、または2種以上を併用してもよい。
重合禁止剤を添加する場合は、アクリル酸および/またはメタクリル酸(アクリル酸とメタクリル酸の両方を用いる場合は両者の合計)1モルに対して、重合禁止剤を0.0005〜0.005モルの割合で添加することが好ましく、0.001〜0.005モルの割合で添加することがより好ましい。
【0024】
ポリエポキシ化合物とアクリル酸および/またはメタクリル酸との反応は、溶媒を用いずに行ってもよいが、反応を円滑に行う点から、不活性な有機溶媒中で行うことが好ましい。
その際に用いる有機溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0025】
ポリエポキシ化合物にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させる際の温度としては、反応の促進、副生物の生成抑制などの点から、50〜150℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。
また、反応時間は、通常、4〜20時間が好ましく、6〜12時間が好ましい。
【0026】
上記した反応によって、エポキシ基と、アクリル酸エステル基および/またはメタクリル酸エステル基を有するエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物が得られる。
本発明では、当該エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物に、下記の一般式(I)で表されるリン化合物(I)を添加する。
【0027】
【化5】

[式中、aは1または2であり、Aは、非置換のアルキル基または水酸基、カルボニル基、ホスホニル基、メチルカルボキシル基、エチルカルボキシル基およびメチルホスホニル基から選ばれる1つ以上の基で置換されたアルキル基(aが1のとき)であるか或いはアルキレン基または式:−CH2−N(R1)−CH2−(式中でR1はメチルホスホニル基を示す)で表される基(aが2のとき)である。]
【0028】
上記の一般式(I)において、Aは、炭素数1〜20の置換されていないアルキル基(置換されていない鎖状または分岐状のアルキル基)または水酸基、カルボニル基、ホスホニル基、メチルカルボキシル基、エチルカルボキシル基およびメチルホスホニル基から選ばれる1つ以上の基で置換された炭素数1〜20の鎖状または分岐状のアルキル基(aが1のとき)であるか、或いは炭素数2〜10のアルキレン基または式:−CH2−N(R1)−CH2−(式中でR1はメチルホスホニル基を示す)で表される基(aが2のとき)であることが、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の保存安定性の向上効果、リン化合物(I)の入手容易性などの点から好ましい。
【0029】
そのうちでも、リン化合物(I)は、下記の一般式(Ia)で表されるリン化合物(Ia)および下記の一般式(Ib)で表されるリン化合物(Ib)のうちの少なくとも1種であることが、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の保存安定性の向上効果がより大きくなることからより好ましい。
【0030】
【化6】

(式中、R2、R3およびR4はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボニル基、ホスホニル基、メチルカルボキシル基、エチルカルボキシル基またはメチルホスホニル基であり、R5はメチルホスホニル基である。)
【0031】
上記の一般式(Ia)で表されるリン化合物(Ia)の具体例としては、何ら限定されるものではないか、以下の化学式(Ia−1)〜(Ia−10)に示すリン化合物を挙げることができる。
【0032】
【化7】

【0033】
また、上記の一般式(Ib)で表されるリン化合物(Ib)の具体例としては、下記の化学式(Ib−1)で表されるリン化合物を挙げることができる。
【0034】
【化8】

【0035】
リン化合物(I)の添加量は、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物1モルに対して、0.1×10-3〜5.0×10-3モルであることが好ましく、1.0×10-3〜3.0×10-3モルであることがより好ましい。
リン化合物(I)の添加量が少なすぎると、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の保存安定性の向上効果が低くなり、一方リン化合物(I)の添加量が多すぎると反応性が低下する。
【0036】
ポリエポキシ化合物にアクリル酸および/またはメタクリル酸を有機溶媒中で反応させてエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を製造した場合には、反応に生成したエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を有機溶媒に溶解した状態でそのまま各種用途に使用するかまたは反応により生成したエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を溶媒溶液から回収(分離)して使用するかは、その後の用途などに応じて適宜選択することができる。
そのため、リン化合物(I)を添加するに当たっては、ポリエポキシ化合物とアクリル酸および/またはメタクリル酸との反応により生成したエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の有機溶媒溶液にリン化合物(I)をそのまま直接添加してもよいし、或いはエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の有機溶媒溶液からエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を分離回収し、当該回収したエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物にリン化合物(I)を添加してもよい。
【0037】
リン化合物(I)を添加した、保存安定性に優れる本発明のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物は、カチオン重合開始剤およびラジカル重合開始剤を添加して、また必要に応じて、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物以外の他の重合性化合物(反応性化合物)、例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物以外のエポキシ化合物、ラジカル重合性化合物などの1種または2種以上を更に配合して、例えば、半導体やその他の電子部品の封止剤、液晶表示装置の枠シール剤、レジスト材料、接着剤、コーティング剤、構造用材料などとして有効に使用することができる。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例、比較例などによって本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
以下の例中、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の粘度を次のようにして測定した。
【0039】
(1)エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の粘度の測定法:
以下の実施例または比較例で得られたエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の製造直後の粘度およびそれを温度70℃で1週間保存したときの粘度を、JIS K7117−2に準じて、測定試料の温度制御が可能な恒温水槽を付属した円錐−平板型回転粘度計(コーン・プレート型粘度計)を使用して測定し[粘度測定時のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の温度は40℃]、3回測定してその平均値を採って粘度とした。
【0040】
《実施例1》
(1) 反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成イーマテリアルズ社製「AER250」、エポキシ当量=186)100質量部、アクリル酸19.4質量部およびメトキノン(重合禁止剤)0.1質量部を仕込み、90℃に加熱撹拌して均一な混合溶液にした後、トリフェニルホスフィン0.1質量部を添加して、同温度で6時間反応させて、エポキシ基含有アクリレート化合物(エポキシ基の一部がアクリル酸エステル化したビスフェノールA型エポキシ化合物;生成量119.4質量部)を調製した。
(2) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物119.4質量部に、ヒドロキシエチリデンジホスホニックアシッド[上記の化学式(Ia−8)で表されるリン化合物](キレスト社製「PH−210」)[以下「リン化合物(Ia−8)」という]0.1質量部を添加して、リン化合物(Ia−8)を含有するエポキシ基含有アクリレート化合物を製造した。
(3) 上記(2)で得られた、リン化合物(Ia−8)を添加した直後のエポキシ基含有アクリレート化合物の粘度を上記した方法で測定したところ、20000mPa・sであった(測定温度40℃)。
(4) 上記(2)で得られた、リン化合物(Ia−8)を添加したエポキシ基含有アクリレート化合物を、温度70℃で1週間保存し、当該1週間保存後の粘度を上記した方法で測定したところ、35000mPa・sであった(測定温度40℃)。
【0041】
《実施例2》
(1) 実施例1の(1)と同じ操作を行って、エポキシ基含有アクリレート化合物(エポキシ基の一部がアクリル酸エステル化したビスフェノールA型エポキシ化合物;生成量119.4質量部)を調製した。
(2) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物119.4質量部に、ニトロトリス(メチレンホスホニックアシッド)[上記の化学式(Ib−1)で表されるリン化合物](キレスト社製「PH−320」)[以下、「リン化合物(Ib−1)」という]0.1質量部を添加して、リン化合物(Ib−1)を含有するエポキシ基含有アクリレート化合物を製造した。
(3) 上記(2)で得られた、リン化合物(Ib−1)を添加した直後のエポキシ基含有アクリレート化合物の粘度を上記した方法で測定したところ、20000mPa・sであった(測定温度40℃)。
(4) 上記(2)で得られた、リン化合物(Ib−1)を添加したエポキシ基含有アクリレート化合物を、温度70℃で1週間保存し、当該1週間保存後の粘度を上記した方法で測定したところ、35000mPa・sであった(測定温度40℃)。
【0042】
《実施例3》
(1) 実施例1の(1)と同じ操作を行って、エポキシ基含有アクリレート化合物(エポキシ基の一部がアクリル酸エステル化したビスフェノールA型エポキシ化合物;生成量119.4質量部)を調製した。
(2) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物119.4質量部に、ホスホノブタントリカルボニックアシッド[上記の化学式(Ia−10)で表されるリン化合物](キレスト社製「PH−430」)[以下、「リン化合物(Ia−10)」という]0.1質量部を添加して、リン化合物(Ia−10)を含有するエポキシ基含有アクリレート化合物を製造した。
(3) 上記(2)で得られた、リン化合物(Ia−10)を添加した直後のエポキシ基含有アクリレート化合物の粘度を上記した方法で測定したところ、20000mPa・sであった(測定温度40℃)。
(4) 上記(2)で得られた、リン化合物(Ia−10)を添加したエポキシ基含有アクリレート化合物を、温度70℃で1週間保存し、当該1週間保存後の粘度を上記した方法で測定したところ、35000mPa・sであった(測定温度40℃)。
【0043】
《比較例1》
(1) 実施例1の(1)と同じ操作を行って、エポキシ基含有アクリレート化合物(エポキシ基の一部がアクリル酸エステル化したビスフェノールA型エポキシ化合物;生成量119.4質量部)を調製した。
(2) 上記(1)で得られた、リン化合物(I)を添加していないエポキシ基含有アクリレート化合物の製造直後の粘度を上記した方法で測定したところ、20000mPa・sであった(測定温度40℃)。
(3) 上記(1)で得られた、リン化合物(I)を添加していないエポキシ基含有アクリレート化合物を、温度70℃で1週間保存する実験を行ったところ、3日目にゲル化した。
【0044】
《比較例2》
(1) 上記の実施例1の(1)と同じ操作を行って、エポキシ基含有アクリレート化合物(エポキシ基の一部がアクリル酸エステル化したビスフェノールA型エポキシ化合物;生成量119.4質量部)を調製した。
(2) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物119.4質量部に、エチレンジアミンテトラカルボン酸(キレスト社製「キレスト110」)0.1質量部を添加して、エチレンジアミンテトラカルボン酸を含有するエポキシ基含有アクリレート化合物を製造した。
(3) 上記(2)で得られた、エチレンジアミンテトラカルボン酸を添加した直後のエポキシ基含有アクリレート化合物の粘度を上記した方法で測定したところ、20000mPa・sであった(測定温度40℃)。
(4) 上記(2)で得られた、エチレンジアミンテトラカルボン酸を添加したエポキシ基含有アクリレート化合物を、温度70℃で1週間保存する実験を行ったところ、3日目にゲル化した。
【0045】
《比較例3》
(1) 上記の実施例1の(1)と同じ操作を行って、エポキシ基含有アクリレート化合物(エポキシ基の一部がアクリル酸エステル化したビスフェノールA型エポキシ化合物;生成量119.4質量部)を調製した。
(2) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物119.4質量部に、下記の化学式(II)で表されるエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホニックアシッド)(キレスト社製「キレスト540」)0.1質量部を添加して、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホニックアシッド)[以下、「リン化合物(II)」という]を含有するエポキシ基含有アクリレート化合物を製造した。
【0046】
【化9】

【0047】
(3) 上記(2)で得られた、リン化合物(II)を添加した直後のエポキシ基含有アクリレート化合物の粘度を上記した方法で測定したところ、20000mPa・sであった(測定温度40℃)。
(4) 上記(2)で得られた、リン化合物(II)を添加したエポキシ基含有アクリレート化合物を、温度70℃で1週間保存する実験を行ったところ、3日目にゲル化した。
【0048】
《実施例4》
(1) 反応容器に、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC社製「EXA−830CRP」、エポキシ当量=159)100質量部、アクリル酸22.6質量部およびメトキノン0.1質量部を仕込み、90℃に加熱し撹拌して均一な混合溶液にした後、トリフェニルホスフィン0.1質量部を添加して、同温度で6時間反応させて、エポキシ基含有アクリレート化合物(エポキシ基の一部がアクリル酸エステル化したビスフェノールF型エポキシ化合物;生成量122.6質量部)を調製した。
(2) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物122.6質量部に、ヒドロキシエチリデンジホスホニックアシッド[上記した化学式(Ia−8)で表されるリン化合物](キレスト社製「PH−210」)[以下、リン化合物(Ia−8)」という]0.1質量部を添加して、リン化合物(Ia−8)を含有するエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を製造した。
(3) 上記(2)で得られた、リン化合物(Ia−8)を添加した直後のエポキシ基含有アクリレート化合物の粘度を上記した方法で測定したところ、4000mPa・sであった(測定温度40℃)。
(4) 上記(2)で得られた、リン化合物(Ia−8)を添加したエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を、温度70℃で1週間保存し、当該1週間保存後の粘度を上記した方法で測定したところ、5000mPa・sであった(測定温度40℃)。
【0049】
《比較例4》
(1) 実施例4の(1)と同じ操作を行って、エポキシ基含有アクリレート化合物(エポキシ基の一部がアクリル酸エステル化したビスフェノールF型エポキシ化合物;生成量122.6質量部)を調製した。
(2) 上記(1)で得られた、リン化合物(I)を添加していないエポキシ基含有アクリレート化合物の製造直後の粘度を上記した方法で測定したところ、4000mPa・sであった(測定温度40℃)。
(3) 上記(1)で得られた、リン化合物(I)を添加していないエポキシ基含有アクリレート化合物を、温度70℃で1週間保存する実験を行ったところ、3日目にゲル化した。
【0050】
上記の実施例1〜4および比較例1〜4の結果をまとめると、下記の表1に示すとおりである。
【0051】
【表1】

【0052】
上記の表1の結果にみるように、実施例1〜4では、ポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸を反応させて得られたエポキシ基含有アクリレート化合物に、リン化合物(I)の範疇に包含されるリン化合物(Ia−8)(ヒドロキシエチリデンジホスホニックアシッド)、リン化合物(Ib−1)[ニトロトリス(メチレンホスホニックアシッド)]またはリン化合物(Ia−10)(ホスホノブタントリカルボニックアシッド)を添加したことにより、ポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸を反応させて得られたエポキシ基含有アクリレート化合物は、70℃で1週間保存した後でも粘度の上昇が小さく、保存安定性に優れている。
一方、比較例1および比較例4では、リン化合物(I)を添加しなかったことにより、ポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸を反応させて得られたエポキシ基含有アクリレート化合物は、70℃で保存したときに3日目にゲル化し、保存安定性に劣っている。
また、比較例2では、リン化合物(I)の範疇に含まれないエチレンジアミンテトラカルボン酸を添加したことにより、そして比較例3ではリン化合物(I)の範疇に含まれないリン化合物(II)[エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホニックアシッド)]を添加したことにより、ポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸を反応させて得られたエポキシ基含有アクリレート化合物は、70℃で保存したときに3日目にゲル化し、保存安定性に劣っている。
【産業上の利用可能性】
【0053】
リン化合物(I)を添加した本発明のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物は、保存安定性に優れていて、長期間保存しても、粘度の増加がないかまたは少なく、しかも当初の反応性能(重合性能、硬化性能、架橋性能など)がそのまま良好に維持されるので、本発明のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物にカチオン重合開始剤およびラジカル重合開始剤を添加し、また必要に応じて、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物以外の他の重合性化合物(反応性化合物)、例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物以外のエポキシ化合物、ラジカル重合性化合物などの1種または2種以上を更に配合して、例えば、半導体やその他の電子部品の封止剤、液晶表示装置の枠シール剤、レジスト材料、接着剤、コーティング剤、構造用材料などとして有効に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させて製造したエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物に、下記の一般式(I)で表されるリン化合物(I);
【化1】

[式中、aは1または2であり、Aは、非置換のアルキル基または水酸基、カルボニル基、ホスホニル基、メチルカルボキシル基、エチルカルボキシル基およびメチルホスホニル基から選ばれる1つ以上の基で置換されたアルキル基(aが1のとき)であるか或いはアルキレン基または式:−CH2−N(R1)−CH2−(式中でR1はメチルホスホニル基を示す)で表される基(aが2のとき)である。]
を添加したことを特徴とする、保存安定性に優れるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物。
【請求項2】
上記の一般式(I)で表されるリン化合物(I)が、下記の一般式(Ia)で表されるリン化合物(Ia)および下記の一般式(Ib)で表されるリン化合物(Ib)のうちの少なくとも1種である請求項1に記載のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物。
【化2】

(式中、R2、R3およびR4はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボニル基、ホスホニル基、メチルカルボキシル基、エチルカルボキシル基またはメチルホスホニル基であり、R5はメチルホスホニル基である。)
【請求項3】
リン化合物(I)の配合量が、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の質量に基づいて、0.001〜1.0質量%である請求項1または2に記載のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物。
【請求項4】
2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させて得られるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物が、4級オニウム塩、3級アミンおよび3級ホスフィンから選ばれる少なくとも1種の酸付加触媒を用いて製造したものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物。
【請求項5】
2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させて得られるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物が、2個以上のグルシジル基を有するエポキシ化合物の一部のグリシジル基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させて得られるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物。
【請求項6】
2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基と、アクリル酸および/またはメタクリル酸を、酸付加触媒の存在下で反応させてエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を製造した後、当該エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物に下記の一般式(I)で表されるリン化合物;
【化3】

[式中、aは1または2であり、Aは、非置換のアルキル基または水酸基、カルボニル基、ホスホニル基、メチルカルボキシル基、エチルカルボキシル基およびメチルホスホニル基から選ばれる1つ以上の基で置換されたアルキル基(aが1のとき)であるか或いはアルキレン基または式:−CH2−N(R1)−CH2−(式中でR1はメチルホスホニル基を示す)で表される基(aが2のとき)である。]
を添加することを特徴とする、保存安定性に優れるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【請求項7】
上記の一般式(I)で表されるリン化合物が、下記の一般式(Ia)で表されるリン化合物および下記の一般式(Ib)で表されるリン化合物のうちの少なくとも1種である請求項6に記載の製造方法。
【化4】

(式中、R2、R3およびR4はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボニル基、ホスホニル基、メチルカルボキシル基、エチルカルボキシル基またはメチルホスホニル基であり、R5はメチルホスホニル基である。)
【請求項8】
酸付加触媒が、4級オニウム塩、3級アミンおよび3級ホスフィンから選ばれる少なくとも1種である請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
リン化合物の添加量が、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の質量に基づいて、0.001〜1.0質量%である請求項6〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物が、2個以上のグルシジル基を有するエポキシ化合物である請求項6〜9のいずれか1項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2013−103950(P2013−103950A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246684(P2011−246684)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000190895)新中村化学工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】