説明

保存性が優れた弁当

【課題】本発明の目的は、ご飯や惣菜の風味や外観を安定に保持でき、保存剤未添加であっても、優れた保存性を有する弁当を提供することである。
【解決手段】ご飯及び/又は惣菜を充填した弁当の内部雰囲気を窒素ガスに置換することによって、ご飯や惣菜の風味や外観を長期間維持することが可能になり、弁当の保存性を顕著に向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ご飯や惣菜の風味や外観を安定に保持でき、優れた保存性を有する弁当に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活習慣の変化や食生活の多様化により、コンビニエンスストアやスーパーで販売されている弁当の消費が急速に拡大している。また、弁当の商品開発にも枚挙にいとまがなく、消費者の嗜好性の多様性に追従し、更には消費者の新たな嗜好を先取りするように、様々な種類の弁当が商品化されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、店頭で陳列販売される弁当は、工場や厨房で製造された後に陳列されるまでの時間のみならず、陳列され実際に消費者に食されるまでの間、風味や外観を維持することが求められる。そのため、店頭で陳列販売される弁当には、できる限り品質が長期間維持されるように工夫を凝らしておく必要がある。
【0004】
そこで、従来、陳列販売されている弁当の保存性を高めるために、ご飯や惣菜に保存剤が添加されている。しかしながら、保存剤の添加は、ご飯や惣菜の本来の風味を損ねることがあり、呈味面で問題がある。更に、健康意識の高まりにより、食に対する高い安全性が求められており、保存剤を添加していない若しくはその添加量が少ない弁当が求められている。
【0005】
このような従来の技術を背景として、ご飯や惣菜本来の良好な風味を有する弁当、又は保存剤の添加量が少ない若しくは保存剤無添加の弁当において、優れた保存性を備えさせる技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−94815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記従来技術の課題を解決することを目的とする。即ち、本発明は、ご飯や惣菜の風味や外観を安定に保持でき、保存剤未添加であっても、優れた保存性を有する弁当を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、ご飯及び/又は惣菜を充填した弁当の内部雰囲気を窒素ガスに置換することによって、ご飯や惣菜の風味や外観を長期間維持することが可能になり、弁当の保存性を顕著に向上させることができることを見出した。更に、上記のように弁当の内部雰囲気を窒素ガスに置換することにより、ご飯や惣菜に保存剤を添加しなくても、優れた保存性を備えさせることができ、保存剤未添加の弁当を実現可能であることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に改良を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる弁当を提供する:
項1. ご飯及び/又は惣菜が充填された弁当において、弁当内部の雰囲気が窒素ガスを含む不活性ガスで置換され、弁当内部が密閉されていることを特徴とする、弁当。
項2. 少なくとも生野菜が充填されている、項1に記載の弁当。
項3. 充填されているご飯及び/又は惣菜が、全て保存剤未添加のもので構成されている、項1又は2に記載の弁当。
項4. ご飯及び/又は惣菜が弁当容器に入れられ、該弁当容器が透明の蓋体により密閉されている、項1乃至3のいずれかに記載の弁当。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、弁当の内部雰囲気を窒素ガスに置換するという簡便な方法により、弁当のご飯や惣菜の風味や外観を長期間安定に維持することが可能になり、店頭での陳列販売に十分耐え得る保存性を備えさせることができる。
【0011】
また、本発明によれば、保存剤を添加しなくても、優れた保存性を備えさせることができるので、ご飯及び/又は惣菜の全てを保存剤未添加にすることにより安全性の高い弁当を提供することもできる。
【0012】
更に、本発明の弁当によれば、生野菜の新鮮な食感を長期間安定に維持できるという利点もあり、しゃきしゃきとした生野菜本来の新鮮な食感を味わうことが可能になる。
【0013】
そして更に、本発明の弁当は、店頭で陳列販売されている従来の弁当に比べて、品質を長期間安定に維持できるので、廃棄ロスの削減、ひいては温暖ガス削減にも有効である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の弁当は、ご飯及び/又は惣菜が充填された弁当内部の雰囲気が不活性ガスで置換され、弁当内部が密閉されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の弁当には、ご飯及び惣菜の何れか一方のみが詰められているものであってもよく、またご飯及び惣菜の双方が詰め合わされているものであってもよい。
【0016】
本発明の弁当に使用される惣菜の種類については、特に制限されないが、例えば、焼き肉、ステーキ、トンカツ、ミンチカツ、照り焼きチキン、ハム等の肉加工製品;卵焼き、目玉焼き、ゆで卵等の卵加工食品;魚、貝、海藻等の海産類;うどん、そば、ラーメン、スパゲティー、ビーフン、パン、ピザ等の穀物加工食品;生野菜(キャベツ、レタス、白菜、ホウレンソウ、ブロッコリー、椎茸、エノキ、シメジ、玉葱、ニンジン等)、加熱加工野菜(野菜の煮物、温野菜、ポテトサラダ、バターコーン等)等の野菜類;みそ汁、ポタージュ等のスープ類;菓子類等が例示される。
【0017】
本発明では、生野菜の新鮮な食感を長期間安定に維持でき、従来の弁当では実現困難であった生野菜の鮮度の保持効果をも備えている。かかる効果に鑑みれば、本発明の弁当の好適な一実施形態として、惣菜として生野菜が含まれているものが例示される。
【0018】
また、本発明の弁当に含まれるご飯及び/又は惣菜には、食品に使用される保存剤を添加しなくても、優れた保存性を備えさせることができる。本発明の弁当に充填されるご飯及び/又は惣菜の全てを保存剤無添加のもので構成することもでき、これによって保存剤フリーで安全性の高い弁当を提供することができる。なお、ここで、保存剤とは、食品分野で保存性を向上させるために使用される添加剤であり、保存料、pH調整剤、酸味料等が含まれる。
【0019】
本発明の弁当に使用される弁当容器及びその蓋については、特に制限されないが、好ましくは合成樹脂製でガス不透過性のもの、更に好ましくは電子レンジ対応可能な合成樹脂製でガス不透過性のものが挙げられる。本発明に使用される弁当容器の素材として、好適には、発泡性樹脂の表面(ご飯及び/又は惣菜と接触する側)にガス不透過性層がコーティングされているものが例示される。
【0020】
本発明の弁当に使用される弁当容器は、充填するご飯や惣菜の種類や量に応じて、仕切が設けられて区画分けされていてもよい。
【0021】
また、本発明の弁当に使用される弁当容器の蓋の形状についても、特に制限されない。例えば、当該蓋は、フィルム状で弁当容器にヒートシールされるものであってもよく、またシート状で弁当容器の上部を覆い被せることができるものであってもよい。本発明の弁当は、店頭で陳列販売されるため、弁当内部が視認できるように、その蓋は透明な素材で構成されていることが望ましい。
【0022】
本発明の弁当は、内部雰囲気が不活性ガスで置換された状態で密封されている。本発明において、当該不活性ガスとしては、窒素ガスを含むものが使用される。具体的には、当該不活性ガスとして、窒素ガス単独(窒素ガスのみ)、窒素ガスと二酸化炭素の混合ガス、窒素ガスとエタノールガスの混合ガス等が挙げられる。これらの中で、製造簡便性や保存性の観点から、窒素ガス単独が望ましい。
【0023】
弁当の内部雰囲気を不活性ガスで置換する方法については、特に制限されず、当該技術分野で公知の方法が採用される。具体的には、(1)ご飯及び/又は惣菜を詰めた弁当容器
を、不活性ガス雰囲気の空間に移し、当該雰囲気下で蓋をして密閉する方法、(2)ご飯及
び/又は惣菜を詰めた弁当容器内に不活性ガス供給口を差し込んで弁当内に不活性ガスを供給した後に該不活性ガス供給口を抜き取った後に蓋をして密閉する方法、及び(3)不活
性ガス雰囲気の空間で、弁当容器にご飯及び/又は惣菜を詰め、これに蓋をして密閉する方法等が挙げられる。上記の方法の中でも、上記(1)の方法は、簡便に実施でき好適であ
る。上記(1)の方法は、より具体的には、以下の(1-1)〜(1-3)の手順で実施される。即ち
、(1-1)ご飯及び/又は惣菜を詰めた弁当容器を、不活性ガス雰囲気の作製可能なチャン
バー内に移す、(1-2)当該チャンバー内を真空若しくはそれに近い雰囲気にしした後に、
当該チャンバー内に不活性ガスを導入することにより、チャンバー内を不活性ガス雰囲気にする、(1-3)チャンバー内を不活性ガス雰囲気で維持した状態で、弁当容器に蓋をして
密閉する。
【0024】
また、弁当内部を密閉する方法についても、特に制限されず、当該技術分野で公知の方法が採用される。例えば、弁当容器の蓋として、フィルム状の蓋を使用する場合、当該フィルム状の蓋を弁当容器にヒートシールすることにより弁当内部を密閉できる。また、例えば、弁当容器の蓋として、フィルム状の蓋を使用する場合、シート状で弁当容器の上部を覆い被せるタイプの蓋を使用する場合、弁当容器と蓋の接触部をシールする、或いは弁当容器と蓋の外部をフィルムで覆うことにより、弁当内部を密閉できる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例及び試験例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1 米飯入り弁当
内部表面にガス不透過層がコーティングされている発泡性樹脂製の弁当容器(トレイ)に炊飯米を約170g盛り、これを不活性ガス雰囲気の作製可能なチャンバー内に移した。次いで、当該チャンバー内を減圧した後に、窒素ガスを導入して、チャンバー内を窒素ガス雰囲気にした。チャンバー内を窒素ガス雰囲気で維持した状態で、弁当容器にガス不透過性のフィルムでヒートシールすることにより密閉した。隠して、内部雰囲気が窒素ガスに置換され密閉された弁当(実施例1)を製造した。また、比較のために、内部雰囲気を窒素ガスに置換せずに、上記弁当容器に炊飯米を約170g盛った弁当(比較例1)を製造した。
【0026】
斯くして製造した弁当を18℃で3日間保存した後に、弁当の炊飯米の外観及び食感を
以下の判定基準に従って評点化した。なお、本評価は、6〜11人のパネラーにより実施した。
<外観>
3:比較例1と比べて、かなりつやがあり、白色を呈している
2:比較例1と比べて、つやがあり、白色を呈している
1:比較例1と比べて、色及びつやに差は認められない
<風味>
硬さ
3:比較例1と比べて、かなり柔らかい
2:比較例1と比べて、柔らかい
1:比較例1と比べて、硬さに差は認められない
粘り
3:比較例1と比べて、かなり粘りがある
2:比較例1と比べて、粘りがある
1:比較例1と比べて、粘りに差は認められない
食味
3:比較例1と比べて、かなり旨味を感じる
2:比較例1と比べて、旨味を感じる
1:比較例1と比べて、旨味に差は認められない
【0027】
得られた結果を表1に示す。この結果から、弁当内部の雰囲気を窒素ガスで置換した弁当(実施例1)では、弁当内部の雰囲気を窒素ガスで置換していない弁当(比較例1)に比して、外観及び風味が安定に維持され、保存安定性の点で顕著に優れていることが確認された。
【0028】
【表1】

【0029】
実施例2 生野菜及びハンバーグ入り弁当
内部表面にガス不透過層がコーティングされている発泡性樹脂製の弁当容器(トレイ)の仕切られた区画に、炊飯米を約170g、キャベツを約10g、及びハンバーグを約80gそれぞれ詰め、上記実施例1と同様の方法で弁当内部を窒素ガスに置換することにより、内部雰囲気が窒素ガスに置換され密閉された生野菜及びハンバーグ入り弁当(実施例2)を製造した。また、比較のため、内部雰囲気を窒素ガスで置換しないこと以外は、上記と同様の方法で、生野菜及びハンバーグ入り弁当(比較例2)を製造した。
【0030】
これらの弁当を20℃で3日間保存した後に、電子レンジで加温して食した。その結果、実施例1の弁当は、風味が良好であり、キャベツも新鮮でしゃきしゃきした食感が感じられた。一方、比較例2の弁当は、実施例1に比べて、風味が損なわれており、特にキャベツは新鮮さが失われ、ぱさぱさした食感が感じられた。
【0031】
実施例3 紅鮭及び照焼きチキン入り弁当
内部表面にガス不透過層がコーティングされている発泡性樹脂製の弁当容器(トレイ)
の仕切られた区画に、炊飯米、焼紅鮭、照焼きチキン、キャベツ、及びポテトサラダをそれぞれ適量詰め、上記実施例1と同様の方法で弁当内部を窒素ガスに置換することにより、内部雰囲気が窒素ガスに置換され密閉された紅鮭及び照焼きチキン入り弁当(実施例3)を製造した。
【0032】
実施例4 幕の内弁当
内部表面にガス不透過層がコーティングされている発泡性樹脂製の弁当容器(トレイ)の仕切られた区画に、炊飯米、焼サバ、エビ天、野菜の煮物、卵焼き、きんぴら、ポテトサラダ、及び漬物をそれぞれ適量詰め、上記実施例1と同様の方法で弁当内部を窒素ガスに置換することにより、内部雰囲気が窒素ガスに置換され密閉された幕の内弁当(実施例4)を製造した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ご飯が充填された弁当において、弁当内部の雰囲気が窒素ガスで置換され、弁当内部が密閉されていることを特徴とする、店頭で陳列販売される弁当。
【請求項2】
少なくとも生野菜が充填されている、請求項1に記載の店頭で陳列販売される弁当。
【請求項3】
ご飯及び惣菜が充填された弁当において、弁当内部の雰囲気が窒素ガスで置換され、弁当内部が密閉されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の店頭で陳列販売される弁当。
【請求項4】
充填されているご飯及び惣菜が、全て保存剤未添加のもので構成されている、請求項3に記載の店頭で陳列販売される弁当。
【請求項5】
該弁当容器が透明の蓋体により密閉されている、請求項1乃至4のいずれかに記載の店頭で陳列販売される弁当。

【公開番号】特開2012−29699(P2012−29699A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249394(P2011−249394)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【分割の表示】特願2007−118335(P2007−118335)の分割
【原出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(591105801)丸大食品株式会社 (19)
【Fターム(参考)】