説明

保守作業訓練システム

【課題】分散型計算機制御システムの保守作業の訓練を行う際に、ヒューマンエラーに起因した障害に関する訓練を行うことができ、ヒューマンエラー防止のためのガイダンスを作成できる、保守作業訓練システムを提供する。
【解決手段】訓練者の操作を受け付けるマンマシン処理部12と、プラント機器の操作に対する応動を模擬するプラント状態模擬処理部13と、計算機や計算機に接続する装置の運転モード変更操作に対する応動を模擬する装置動作模擬処理部14と、ヒューマンエラーに起因する障害を模擬的に発生させる模擬障害発生処理部15と、訓練結果を評価し、ガイダンスを作成する訓練結果評価処理部17とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電力系統を監視制御する多重系の分散型計算機制御システムを保守する保守員を訓練する際に用いる、保守作業訓練システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の保守作業訓練システムでは、作業の対象となる装置の動作やプラントの動特性を計算機などによるシミュレーションによって模擬し、それに対して人間が作業するという形態が一般的であるため、作業の対象となる計算機制御システムを構成する計算機などの装置やプラントの模擬装置を用いて、保守作業の訓練を行っていた。
【0003】
また、電力系統の監視制御や発電プラントなどの運転を行う計算機制御システムには、プラントなどの運転員の訓練を行うために、プラントの状態や事故の状況などを模擬する訓練用シミュレータ装置と、シミュレータを用いて訓練を行うための訓練機能を備えている。
【0004】
ところで、近年、電力系統やプラントなどの監視制御を行う計算機制御システムが分散システムに移行し、複数の2重系計算機や3重系計算機などで構成される分散型計算機制御システムが既に稼動している。それらの分散型計算機制御システムの保守においては、各装置の運転モードを変更し、通常の監視制御機能を維持しつつ、作業可能なモードにした計算機に対して保守作業を行っている。ところが、運転モード変更作業に伴う障害やヒューマンエラーなどによる障害が発生することがあり、その障害が電力系統などの監視制御機能を喪失するような重大障害に及ぶこともあるため、それらを回避する作業手順を立案した上で、本来の保守作業を行う必要がある。
【0005】
計算機制御システムの運転モードには、一般に次のような運転モードがある。
(1)使用モード
通常の運転状態。プラントの実際の情報をオンラインで収集し、リアルタイムに監視制御の処理を行う。
(2)待機モード
使用モードの計算機のバックアップ運転を行う状態。情報はオンラインで収集し、使用モードと同一の状態で稼動しており、使用モードの計算機に異常が発生した場合は、即座にバックアップして監視制御の処理を開始する。
(3)試験モード
オフラインの状態で、プログラムなどの試験を行う状態。
(4)停止モード
計算機が停止した状態。
【0006】
これらの計算機の運転モードは、通常はプラントの運転員が管理し、モード変更操作も行うが、計算機システムのメンテナンス作業などの際には、計算機システムの保守員もモード変更の操作を行うことがある。モード変更操作は、監視制御を行うサーバ計算機だけでなく、プラントの情報を収集する情報伝送系の計算機や装置、監視制御以外の機能を実行する計算機や周辺装置などの運転モードや運転状態との関係にも注意する必要があるため、プラントの運転と同様に十分な訓練が必要となる。
【0007】
特許文献1には、実運用で発生した故障情報を履歴として登録しておき、その故障情報を基に通信装置の模擬故障を発生させ、復旧操作の訓練を行う通信装置保守訓練システムの例についての開示がある。
【0008】
また、特許文献2には、訓練者毎の訓練履歴情報を保存しておき、それまでの評価に応じた問題を選択し、その訓練者の訓練結果を基準値と比較して定量的に評価する、訓練装置における評価システムの例についての開示がある。
【特許文献1】特開平11−239196号広報
【特許文献2】特開平5−72961号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、2重系や3重系の計算機システムから構成される分散型計算機制御システムでは、プラントの運転と同様に、計算機の運転モード変更に伴う操作についても十分な訓練が必要であるが、従来の保守訓練システムでは、障害の原因追及や障害発生時の対応を訓練することを目的とし、障害を模擬的に発生させるものであり、ヒューマンエラーに起因した障害を発生させ、訓練するものではない。
【0010】
また、計算機制御システムが備えている訓練用シミュレータ装置や訓練機能でも、主にプラントなどの運転や障害発生時の対応を訓練することを目的とするため、プラントの動作やプラントに発生する障害を模擬的に発生させるものであり、計算機システムそのものの動作やシステム障害などについては考慮されていない。また、運転モード変更などの際に発生することが多い、ヒューマンエラーに起因する障害についても、特に考慮されていない。
【0011】
更に、訓練結果の評価についても、予め想定された標準的な操作を評価基準として、訓練者の操作と比較して評価するため、訓練者の行った操作に起因するヒューマンエラーを防止するためのガイダンスを提供するものではない。
【0012】
本発明の目的は、2重系などの分散型計算機制御システムの保守作業の訓練を行う際に、複数装置の運転モードの組合せなどによって起こるヒューマンエラーに起因した障害に関する訓練を行うことができ、ヒューマンエラー防止のためのガイダンスを作成できる、保守作業訓練システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するために、訓練者によって機器・装置の操作を行うマンマシン処理部、プラント機器の操作に対する応動を模擬するプラント状態模擬処理部、計算機や計算機に接続する装置の運転モード変更操作に対する応動を模擬する装置動作模擬処理部、ヒューマンエラーに起因する障害を模擬的に発生させる模擬障害発生処理部、訓練結果を評価し、ガイダンスを作成する訓練結果評価処理部を設ける。
【0014】
このように、装置動作模擬処理部及び模擬障害発生処理部を備えることで、プラントの運転操作だけでなく、計算機制御システムそのものの操作を習得することができ、ヒューマンエラーに関する訓練も行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、保守作業訓練時において、訓練者が過去のヒューマンエラーの事例を体得しながら保守訓練を実施することができる。
【0016】
また、訓練者の操作に応じたヒューマンエラー防止のためのガイダンスを作成することができるため、訓練をより効果的に実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態を、図1〜図10を参照して説明する。
【0018】
図1は、本例のシステム構成例を示している。本例の保守作業訓練システム1には、マンマシンインターフェース11を備えており、訓練者はこのマンマシンインターフェース11を用いてシステムの画面を確認し、操作指示を行う。本例の保守作業訓練システム1は、マンマシンインターフェース11に画面を表示し、訓練者からの操作入力を取得するマンマシン処理部12と、プラントの状態を模擬するプラント状態模擬処理部13、計算機などの装置の動作を模擬する装置動作模擬処理部14、訓練対象の監視制御システムの障害や、プラントなどの機器の障害を模擬する模擬障害発生処理部15、監視制御システムのシステム内時刻を変更する時刻加速処理部16、訓練結果の評価を行い、ガイダンスを作成する訓練結果評価処理部17から構成する。また、本例には、機器の操作時間を格納する操作時間テーブル18、プラントの機器状態や計測値を格納するプラント状態テーブル19、計算機などの装置の運転状態を格納する装置状態テーブル20、障害発生の条件と障害内容を格納する障害発生条件テーブル21、訓練の状況を格納する障害発生評価テーブル22、訓練結果を格納するための訓練結果テーブル23を備えている。
【0019】
本例を用いて、通常のプラントなどの機器の運転操作を模擬する場合について説明する。マンマシンインターフェース11には、マンマシン処理部12によりプラントや電力系統の監視画面が表示される。訓練者は、マンマシンインターフェース11に表示された監視画面から機器の操作を行い、マンマシン処理部12がその操作情報を取得してプラント状態模擬処理部13へ受け渡す。プラント状態模擬処理部13は、受け渡された操作情報を基にプラント状態テーブル19の内容を書き換え、操作内容に応じた機器の応動を作成してマンマシン処理部12へ渡し、表示状態を更新する。
【0020】
ここで、プラント状態テーブル19は、プラントの機器の状態や、運転状態などの情報を格納しておくものである。例えば、監視対象が電力系統の場合、電力系統を構成するしゃ断機や断路器などの開閉器の入り/切り状態や電圧の有無、電圧値、電流値、潮流値などの計測情報を格納しておく。マンマシン処理部12は、プラント状態テーブル19の内容を参照して電力系統やプラントなどの状態を画面表示する。
【0021】
次に、計算機などの装置の操作を模擬する場合について説明する。マンマシンインターフェース11には、マンマシン処理部12により計算機の運転状態を表すシステム構成画面が表示される。訓練者は、マンマシンインターフェース11に表示されたシステム構成画面から、計算機などの装置の運転モード変更操作を行い、マンマシン処理部12がその操作情報を取得して装置動作模擬処理部14へ受け渡す。装置動作模擬処理部14は、受け渡された操作情報を基に、装置状態テーブル20の内容を書き換え、操作内容に応じた装置の動作応動を作成してマンマシン処理部12へ渡し、表示状態を更新する。
【0022】
ここで、装置状態テーブル20は、計算機制御システムを構成する計算機や周辺装置の運転状態などの情報を格納しておくものである。例えば、サーバ計算機の運転モードや、周辺装置の稼動状況、装置の故障情報などを格納しておく。
【0023】
次に、本例を用いてプラントや計算機などに障害が発生した状態を模擬する場合について説明する。訓練者が、マンマシン処理部12によりマンマシンインターフェース11に表示された画面から、機器または装置の操作を行うと、ヒューマンエラーに応じた障害を発生させるために模擬障害発生処理部15が起動される。模擬障害発生処理部15は、障害発生条件テーブル21の内容を参照し、訓練者の操作内容やその時の機器や装置の状態などが障害発生の条件と一致する場合には、障害発生条件テーブル21に登録されている障害を発生させ、発生した障害を障害発生評価テーブル22に格納する。
【0024】
また、計算機などの装置の操作にあたっては、操作する時刻によって障害が発生することがある。例えば、電力系統などの監視制御システムでは、系統の状態を記録するために、毎正時に系統の各機器の状態情報や、計測値などの数値情報を収集して格納する。そのため、正時前後に誤って通信装置の運転モードを停止に変更すると、その情報収集が不可となる障害が発生し、データの欠損や不整合などが発生することがある。このような、時刻に依存する障害を発生しやすくするために時刻加速処理部16を設け、システム内時刻を加速する。時刻の加速方法としては、例えば、正時5分前にシステム内時刻を変更し、正時前5分から、正時後5分までの間、1分を15秒に短縮してシステム内時刻を進めるなどの方法がある。こうすることによって、訓練者が時刻に関する障害を起こす確立を上げ、訓練をより効果的に行うことができる。
【0025】
訓練終了後、訓練結果評価処理部17は、障害発生評価テーブル22や操作時間テーブル18の内容を基に訓練内容の評価を行い、その評価結果を訓練結果テーブル23に格納する。訓練者は訓練結果テーブル23の内容からマンマシンインターフェース11に表示されるガイダンスを参照して、運転技術の向上を図る。
【0026】
図2は、上述したマンマシン処理部12の概略処理例を示すフローチャートである。最初に、訓練開始に伴う初期入力かを判断し(ステップS201)、初期入力の場合は、訓練者に氏名を入力させて、訓練結果テーブル23に格納した後、障害発生評価テーブル22と操作時間テーブル18を初期化する(ステップS202)。次に、誤操作を起こさないように、プラントの機器操作や装置の運転モード変更操作などの前にプラント状態やシステムの状態を関係する画面で確認したかを判断し(ステップS203)、操作前状態を確認した場合は、「操作前確認有」を障害発生評価テーブル22へ格納する(ステップS204)。次に訓練者の操作を判断し(ステップS205)、操作対象である機器または装置を「選択」した場合は、操作時間の計測を開始するとともに操作回数を記憶する(ステップS206)。操作対象機器または装置を「制御」した場合は、操作時間の計測を停止し、操作対象機器の「選択」操作から「制御」操作までの時間を計測して平均操作時間を算出後、平均操作時間を操作時間テーブル18に格納する(ステップS207)。この平均操作時間は、訓練結果評価処理部17で評価を行う際のパラメータとして使用する。次に、操作対象がプラント機器か装置かを判断し(ステップS208)、プラント機器であれば、プラント状態模擬処理部13の処理を起動し(ステップS209)、装置であれば、装置動作模擬処理部14の処理を起動する(ステップS210)。機器または装置を操作した後、関係する画面で操作後状態を確認したかを判断し(ステップS211)、操作後状態を確認した場合は、「操作後確認有」を障害発生評価テーブル22へ格納する(ステップS212)。最後に、操作誤りによる障害を模擬的に発生させるため、模擬障害発生処理部15の処理を起動する。なお、プラント状態模擬処理、装置動作模擬処理、模擬障害発生処理の詳細については、後述する。
【0027】
図3は、プラント状態模擬処理部13の概略処理例を示すフローチャートである。マンマシン処理においてプラント機器を選択した場合、まず、機器操作が可能か否かの条件をチェックする(ステップS301)。操作条件とは、例えば、電力系統の機器の場合、開閉器やしゃ断機などの入り/切りを操作する場合に、充電部を接地するなどの操作はできないため、操作条件として機器の現在状態と操作内容とを判定する。このような操作条件は、予め操作対象の機器について定義しておく。操作条件の判定の結果、条件不一致であれば、エラーメッセージを出力し(ステップS302)、操作誤りの回数を操作時間テーブル18に加算して格納し(ステップS303)、処理を終了する。
【0028】
ステップS301の操作条件の判定の結果、操作条件に一致した場合は、操作内容が機器の選択要求か否かを判定し(ステップS304)、選択要求であれば、選択完了応動を生成し、マンマシン処理部12へ渡す(ステップS305)。同様に、操作内容が機器の「入」操作要求の場合(ステップS306)は、「入」操作応動を生成し(ステップS307)、「切」操作要求の場合(ステップS308)は、「切」操作応動を生成する(ステップS309)。次に、操作内容が機器の調整制御要求の場合(ステップS310)は、機器の動作結果に応じた計測値を変化させる制御応動を生成し、マンマシン処理部12へ渡す(ステップS311)。調整制御とは、変圧器のタップの上げ下げの制御などのことで、指定された操作量に従って操作対象の機器の数値を変更する。また、制御応動としては、調整制御の値に応じて関連する計測値の値を変化させる。変圧器のタップの調整の場合は、タップ位置の値を指定の値に変更した上で、電圧などの数値を変更する。最後に、機器の選択復帰要求かを判定し(ステップS312)、選択復帰要求に対しては、選択復帰応動を生成し、マンマシン処理部12へ渡す(ステップS313)。
【0029】
図4は、装置動作模擬処理部14の概略処理例を示すフローチャートである。装置動作模擬とは、計算機制御システムを構成する計算機などの装置の動作、例えば、運転モードの状態を模擬するものである。マンマシン処理において装置を選択した場合、まず、操作内容が装置の運転モード遷移要求か否かを判定し(ステップS401)、運転モード遷移要求でない場合は処理を終了する。装置の運転モード遷移要求の場合は、合理性をチェックする(ステップS402)。合理性チェックとは、操作された計算機の運転モード変更の内容が、モード変更可能な内容か否かをチェックすることである。例えば、計算機の運転モードを変更する場合、使用系が必ず存在するように変更するが、2重系計算機システムで1系使用、2系試験のような場合は、2系は待機モードではないため、使用系のバックアップはできない。このような場合は、1系を他のモードに変更することはできない。合理性チェックの結果、エラーであればエラーメッセージを出力し(ステップS403)、操作誤りの回数を操作時間テーブル18に加算して格納する(ステップS404)。合理性チェックの結果、エラーがなければ、操作内容に対応した装置の運転モードを変更して装置状態テーブル20へ格納し、装置の動作応動を生成してマンマシン処理部12へ渡す(ステップS405)。次に、相手系の装置のモード変更要否を判断する(ステップS406)。例えば、2重系計算機システムにおいて、1系と2系の使用モードの切替え操作を行う場合、操作前に1系使用、2系待機で、2系を使用へモード遷移する場合は、相手系である1系の装置のモードを使用から待機へ変更する必要がある。このように、相手系の装置モードの変更が必要な場合は、相手系装置モードの応動を生成する(ステップS407)。
【0030】
図5は、模擬障害発生処理部15の概略処理例を示すフローチャートである。マンマシン処理部12から起動された模擬障害発生処理部15は、ヒューマンエラーに対応する障害を模擬的に発生させる。まず、マンマシン処理部12で入力された機器、装置の状態やそれに関連する機器、装置などの状態を基に、障害発生条件テーブル21の内容と比較し、条件が一致しているか否かを判定する(ステップS501)。判定の結果、条件が一致している場合は、模擬障害を発生させる(ステップS502)。障害を発生させた場合は、障害発生評価テーブル22に「障害検出有」を格納する。ステップS501の条件判定において、条件が一致していない場合は、障害発生評価テーブル22に「障害検出無」を格納する。
【0031】
図6は、訓練結果評価処理部17の概略処理例を示すフローチャートである。訓練終了後、マンマシン処理部12から起動され、訓練結果の評価を行う。まず、評価結果の集計処理を行う(ステップS601)。評価結果集計処理では、障害発生評価テーブル22の障害パターン毎に設定した係数と障害検出有無から、次式により得点を算出する。
【0032】
[数1]
得点=100−Σ(障害検出有無×係数)
【0033】
ここで、障害検出有無は、「障害検出有」は“1”、「障害検出無」は”0”で表す。次に、得点に対応する評価結果、及び障害発生評価テーブル22を参照し、検出した障害に対応するヒューマンエラー防止のための診断内容を取得して編集し、評価結果として出力する(ステップS602)。また、操作時間テーブルの平均操作時間が標準操作時間より短く、かつ操作誤り回数が0より大きい場合には、操作時間に対する評価結果も出力する。これらの評価結果は、マンマシン処理部12へ渡し、訓練者に提示する。最後に、訓練者氏名、訓練日、得点、平均操作時間、操作誤り回数等の結果を訓練結果テーブル23へ格納する(ステップS603)。
【0034】
上記説明のように、訓練者は、本例の保守作業訓練システム1のマンマシン処理部12によりマンマシンインターフェース11に表示された画面から、機器または装置の操作を行うことで、計算機制御システムの操作の訓練ができる。また、操作内容に応じたヒューマンエラーによる障害を発生させることができるため、ヒューマンエラーに起因した障害に関する訓練を行うことができる。また、訓練終了後、訓練者の訓練内容に関する評価を行い、その評価結果を提示することができる。
【0035】
次に、本例で用いた操作時間テーブル18、障害発生条件テーブル21、障害発生評価テーブル22、訓練結果テーブル23の内容について、図7〜図10を参照して説明する。
【0036】
図7は、障害発生条件テーブル21に登録されている情報の項目と内容の一例を示した図である。障害発生条件テーブル21には、例えば障害のパターン毎に、計算機などの装置の運転モード、故障中の機器または装置、操作時刻などの障害が発生するための条件を示す情報と、その条件に一致した場合に発生する障害内容を示す情報とを登録する。例えば、図7に示すパターン1では、操作時刻がある特定の時刻t、例えばt=正時とした場合、正時の前後一定時間以内に操作したという条件を示し、その場合はデータ欠損という障害が発生する、ということを示している。これらの情報は、監視制御システムの設計上、発生する可能性のある障害内容を抽出して登録する他、過去に発生した実際の障害内容を収集して登録しておくことができる。本例で示した障害発生条件の他に、操作対象の機器または装置とその操作内容とを登録しておくこともできる。そうすることによって、訓練者の操作が要因となって発生するヒューマンエラーによる障害も条件として登録できる。
【0037】
また、同じ計算機制御システムでも、製作された時期や制御対象のプラントや電力系統などの種類によって、システムの動作が異なる場合がある。そのような場合についても対応できるように、対象となる計算機制御システムを識別する情報を障害発生条件と一緒に登録しておくこともできる。訓練開始時に、訓練対象の計算機制御システムを選択するように構成すれば、そのシステム固有の障害内容に対する訓練も可能となる。
【0038】
図8は、障害発生評価テーブル22に登録する情報の項目と内容の一例を示した図である。障害発生評価テーブル22には、図7に示した障害発生条件テーブル21の障害パターンが実際の訓練時に発生したか否か、及びその時の操作状況などを登録しておく。例えば、障害パターン毎に、障害検出有無、訓練結果評価時に使用する係数、操作前確認の有無、操作後確認の有無などの情報を登録する。図8では、障害検出有無や操作前後の確認有無として、「有り」の場合は“1”を、「無し」の場合は“0”を登録するようにしている。また、障害が発生した場合に出力するガイダンスの内容を、診断内容として登録しておく。例えば、パターン1の障害が発生した場合、「正時付近では操作してはいけません。操作前及び操作後の確認を行い、時刻を確認すること。」などのガイダンスを登録しておく。
【0039】
図9は、操作時間テーブル18に登録する情報の項目と内容の一例を示した図である。操作時間テーブル18には、機器操作と装置操作に分けて、予め標準操作時間を登録しておく。更に、訓練中には訓練者の操作の都度、その操作時間を計測して平均操作時間を算出し、登録する。また、操作誤りの回数も登録しておく。これらの情報は、訓練結果評価処理にて参照し、訓練者へのガイダンスを出力する。例えば、平均操作時間が標準操作時間より短く、操作誤りが発生していた場合、「操作時の確認が不十分です。誤操作が発生しないよう注意すること。」などのガイダンスを出力する。なお、本例では、操作時間テーブルの平均操作時間が標準操作時間より短く、かつ操作誤り回数が0より大きい場合にガイダンスを出力するように構成しているが、操作時間の長さや、操作誤りの回数などによってガイダンスの内容を複数用意しておき、それぞれの条件に従ってガイダンスを出力するように構成してもよい。
【0040】
図10は、訓練結果テーブル23に登録する情報の項目と内容の一例を示した図である。訓練結果テーブル23には、訓練者毎にその訓練の結果を登録する。登録する情報は、例えば、訓練者名、訓練日、訓練結果評価処理にて算出した得点、平均機器操作時間、平均装置操作時間、操作誤り回数などである。この他に、訓練結果で出力したガイダンスを登録しておくようにしてもよい。ガイダンスを登録しておくことで、訓練終了時だけでなく、後から訓練の結果を確認することもできる。また、同じ訓練者の訓練結果を訓練日順に履歴として保存しておくように構成してもよい。訓練結果の履歴が参照できることにより、訓練内容の習得状況が分かり、次に訓練する際の参考にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施の形態によるシステム構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態によるマンマシン処理例を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施の形態によるプラント状態模擬処理例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施の形態による装置動作模擬処理例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施の形態による模擬障害発生処理例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施の形態による訓練結果評価処理例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施の形態による障害発生条件テーブルの格納情報の項目と内容の例を示す説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態による障害発生評価テーブルの格納情報の項目と内容の例を示す説明図である。
【図9】本発明の一実施の形態による操作時間テーブルの格納情報の項目と内容の例を示す説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態による訓練結果テーブルの格納情報の項目と内容の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1…保守作業訓練システム、11…マンマシンインターフェース、12…マンマシン処理部、13…プラント状態模擬処理部、14…装置動作模擬処理部、15…模擬障害発生処理部、16…時刻加速処理部、17…訓練結果評価処理部、18…操作時間テーブル、19…プラント状態テーブル、20…装置状態テーブル、21…障害発生条件テーブル、22…障害発生評価テーブル、23…訓練結果テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型計算機制御システムの保守作業の訓練を行う保守作業訓練システムにおいて、
訓練者の操作を受け付けるマンマシン処理部と、
プラント機器の操作に対する応動を模擬するプラント状態模擬処理部と、
計算機制御システムの計算機又は計算機に接続する装置の運転モード変更操作に対する応動を模擬する装置動作模擬処理部と、
プラント機器又はシステムの装置に関する障害を模擬的に発生させる模擬障害発生処理部と、
訓練結果を評価し、ガイダンスを作成する訓練結果評価処理部とを備えた保守作業訓練システム。
【請求項2】
請求項1記載の保守作業訓練システムにおいて、
訓練時に発生させる障害の発生条件と障害内容を登録した障害発生条件テーブルを備え、
前記障害発生条件テーブルに、過去に発生したヒューマンエラーに起因する障害の発生条件と障害内容を登録することで、前記模擬障害発生処理部が過去のヒューマンエラーの事例を発生させることを特徴とする、保守作業訓練システム。
【請求項3】
請求項2記載の保守作業訓練システムにおいて、
障害内容に応じた診断内容を登録した障害発生評価テーブルを備えることにより、前記訓練結果評価処理部において、ヒューマンエラー防止のためのガイダンスを作成することを特徴とする、保守作業訓練システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−140272(P2007−140272A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−335891(P2005−335891)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(390023928)日立エンジニアリング株式会社 (134)