説明

保守計画システム、保守計画方法及び画像形成装置

【課題】画像形成装置について精度の高い保守を実行することのできる保守計画システム、保守計画方法及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置201の使用実績情報と、消耗品の使用実績情報とを取得する使用実績取得部207と、消耗品の使用実績情報の履歴に基づいて当該消耗品の故障確率分布を推定する故障確率分布推定部204と、画像形成装置の使用実績情報の履歴に基づいて一日当りのカウンタ値であるカウンタ進度を取得するカウンタ進度取得部207と、消耗品毎の故障確率分布とカウンタ進度とに基づいて次回交換時期と交換する消耗品を提示する保守計画部206とを備え、画像形成装置の使用実績情報は、画像形成回数に対応したカウンタ値及び該カウンタ値の取得日付を含み、消耗品の使用実績情報は、該消耗品の交換時におけるカウンタ値及び該消耗品の交換理由がライフ到達によるか否かを示すライフ情報を含む保守計画システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の部品からなる製品の故障時期、各部品の劣化度を推定し、保守計画に反映する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の保守計画は、サービスマン個人の経験と勘に基づいて作成されていた。このため、製品が利用できなくなることにより生じるユ一ザの損害のリスクと、保守に要するコストのバランスを取ることができなかった。
【0003】
すなわち、故障の可能性が高くなった部品を寿命到達前に交換して、製品故障のリスクを少なくしようとすると、必要以上に交換作業が発生し、保守のコストが増加する。逆に、部品を寿命に到達するまで使い切ることで保守コストを下げようとすると、故障してから部品を交換するため、ダウンタイムが長くなり、製品が使用できないことにより生じるユーザの損害が大きくなるというトレードオフの関係にある。
【0004】
そこで、合理的な保守計画を立案するため、コストとリスクを元に保守計画を立案する技術が開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−152017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術では、現状の保全方式及び他の保全方式について、現実的にリスク及びコストを算出することが可能となる。そして、この技術によって例えば、各設備について保全方式毎のトータルコストを算出することができ、どの保全方式を採用するべきかを判断することができるとされている。
【0006】
ところで、保守対象である画像形成装置は、日本国内に広く設置されているため、地域毎に専門のサービスマンが保全を担当している。そして、サービスマンは定期的に顧客を訪問して部品の点検・交換などの保守作業を実行している。交換される部品は必ずしも故障したものではなく、次回の訪問日までに寿命がくると想定されたものも含まれる。また、訪問日までに故障が発生して交換された部品については、次回の訪問日では交換の必要がない。
従って、画像形成装置についての保守計画の作成においては、サービスマンによるこのような保守作業の形態を組み込まなければならず、また対象とする画像形成装置についての保守実績をリアルタイムで取り込み反映しなければならない。
【0007】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであって、画像形成装置について精度の高い保守を実行することのできる保守計画システム、保守計画方法を提供すること、あるいは精度の高い保守を実現できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、画像を形成するとともに外部装置との間で情報を授受する画像形成装置の保守計画を作成する保守計画システムであって、前記画像形成装置の使用実績情報と、消耗品の使用実績情報とを取得する使用実績取得部と、前記消耗品の使用実績情報の履歴に基づいて当該消耗品の故障確率分布を推定する故障確率分布推定部と、前記画像形成装置の使用実績情報の履歴に基づいて一日当りのカウンタ値であるカウンタ進度を取得するカウンタ進度取得部と、前記消耗品毎の故障確率分布と前記カウンタ進度とに基づいて次回交換時期と交換する消耗品を提示する保守計画部とを備え、前記画像形成装置の使用実績情報は、画像形成回数に対応したカウンタ値及び該カウンタ値の取得日付を含み、前記消耗品の使用実績情報は、該消耗品の交換時における前記カウンタ値及び該消耗品の交換理由がライフ到達によるか否かを示すライフ情報を含む保守計画システムである。
【0009】
また本発明は、画像を形成するとともに外部装置との間で情報を授受する画像形成装置の保守計画を作成する保守計画方法であって、前記画像形成装置の使用実績情報と、消耗品の使用実績情報とを取得する使用実績取得ステップと、前記消耗品の使用実績情報の履歴に基づいて当該消耗品の故障確率分布を推定する故障確率分布推定ステップと、前記画像形成装置の使用実績情報の履歴に基づいて一日当りのカウンタ値であるカウンタ進度を取得するカウンタ進度取得ステップと、前記消耗品毎の故障確率分布と前記カウンタ進度とに基づいて次回交換時期と交換する消耗品を提示する保守計画ステップとを備え、前記画像形成装置の使用実績情報は、画像形成回数に対応したカウンタ値及び該カウンタ値の取得日付を含み、前記消耗品の使用実績情報は、該消耗品の交換時における前記カウンタ値及び該消耗品の交換理由がライフ到達によるか否かを示すライフ情報を含むこと
を特徴とする保守計画方法である。
【0010】
また本発明は、画像を形成するとともに外部装置との間で情報を授受する画像形成装置であって、前記画像形成装置の使用実績情報と、消耗品の使用実績情報とを記憶する記憶部と、前記画像形成装置の前記使用実績情報と前記消耗品の前記使用実績情報とを、前記画像形成装置の保守計画を作成する保守計画システムに送信する情報送信部とを備え、前記画像形成装置の使用実績情報は、画像形成回数に対応したカウンタ値及び該カウンタ値の取得日付を含み、前記消耗品の使用実績情報は、該消耗品の交換時における前記カウンタ値及び該消耗品の交換理由がライフ到達によるか否かを示すライフ情報を含む画像形成装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の保守計画システム、保守計画方法及び画像形成装置によれば、画像形成装置について精度の高い保守を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について画像処理装置(MFP: Multi Function Periphera1)201を例として説明する。このMFPは、本発明に係る保守計画方法が適用される画像形成装置に対応する。
MFP201は、指定された解像度・用紙サイズで画像をスキャンして読み取りコピーするだけでなく、FAXによる画像受信機能、Eメールによる画像受信機能、ネットワークによる印刷画像受信機能など、様々なオフィス機器の機能を総合的に活用するためのデジタル複合機のことである。
【0013】
図1は、MFP201のコピー機能の構成を示すブロック図である。
MFP201は、制御部101、感光体ドラム102、帯電器103、走査露光部104、現像器105、転写チャージャ106、剥離チャージャ107、クリーナ108、給紙部109、用紙搬送部110、定着器111、排紙部112及び排紙トレイ114を備えている。
【0014】
感光体ドラム102は、副走査方向(感光体ドラム102の周方向)に回転する。感光体ドラム102の周辺近傍には、帯電器103が配置される。帯電器103は、感光体ドラム102の表面を均一に帯電する。走査露光部104は、走査露光部104内の半導体レーザを走査しながら画像信号に応じて発光/消灯する。この半導体レーザから出射されるレーザ光は、ポリゴンミラーなどの偏向器によって主走査方向(感光体ドラム102の回転軸方向)に走査する光となる。そしてレンズ等の光学系によって、レーザ光は感光体ドラム102上に照射される。帯電した感光体ドラム102にレーザ光が照射されると、照射された部位の電位が低下し、静電潜像が形成される。
【0015】
現像器105は、現像剤を感光体ドラム102に塗布することで、感光体ドラム102上にトナー像を形成する。一方、画像形成装置100の底部には用紙トレイ113が設けられている。給紙ローラ115は、用紙トレイ113内の用紙130を1枚ずつ分離して、給紙部109に送り出す。給紙部109は、感光体ドラム102の転写位置まで用紙130を供給する。転写チャージャ106は、供給される用紙130にトナー像を転写する。剥離チャージャ107は、感光体ドラム102から用紙130を剥離する。
【0016】
トナー像が転写された用紙130は、用紙搬送部110によって搬送される。定着器111は、トナー像を用紙130に定着させる。排紙部112は、排紙トレイ114に画像が印刷された用紙130を排出する。
また、用紙130へトナー像の転写が終了した後、感光体ドラム102上の残留トナーはクリーナ108によって取り除かれる。感光体ドラム102は、初期状態に復帰し、次の画像形成の待機状態となる。
以上のプロセス動作を繰り返すことにより、画像形成動作が連続して行われる。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態に係る保守計画システムの概要を示すシステム構成図である。図2では、本実施の形態による保守計画システムによりユーザのもとに設置されているMFP201の保守計画を作成し、サービスマン202が当該保守計画に従って保守業務を行なう例を示している。
【0018】
従来の保守方法には、定期保守(PM: Preventive Maintenance)と突発保守(EM: Emergency Maintenance)がある。PMでは、MFP毎に設定された定期的なタイミングでサービスマン202が保守対象であるMFP201を訪れて当該MFP201の消耗品交換や清掃、動作確認をしていた。また、EMでは、偶発的に故障が発生した場合に、ユーザからのサービスコールを受けてMFP201の修理に出かけていた。
【0019】
PM作業に関しては、1台のMFP201に対して複数の消耗品が存在するため、PM時に全ての消耗品が劣化している訳ではない。まだ寿命に達していない消耗品を交換してしまうとロスが生じる。また、偶発的に故障が発生した場合に故障した一部の消耗品のみをその時に交換してしまうと、交換した消耗品についてはPMのサイクルから交換時期のずれが生じてしまう。
【0020】
このような状況で、PMやEMで客先を訪れた場合に、どの部品を交換し、どの部品を使い続けるかを判断することは困難である。
即ち、サービスマン202は、設定されたPMサイクルを基本とするものの、経験に基づいて個別に各消耗品の交換時期の調整を行い、ロスを減らそうとする。しかし、むやみに交換時期を遅らせて消耗品の使用時間を延ばすことによるコスト削減を計ると、逆に消耗品の故障リスクが高くなり、MFPが使用できないことによるユーザの損害が生じてしまう。また、消耗品個々に交換時期を変えてしまうと訪問回数が増加して反対にメンテナンスコストがかかってしまうことも考えられる。
【0021】
そこで、本実施の形態による保守計画システム1は、消耗品に対しては、PMサイクルのみで交換するのではなく、よりキメ細かい保全計画を作成する。即ち、「いつ客先を訪問するか」を示す「訪問間隔」と、客先訪問時に「どの部品を交換するべきか」を示す「交換間隔」の2つの指標を設定する。そして、「訪問間隔」に従ってPMで客先を訪問するとともに、PMやEMで客先を訪れた場合に、PMやEMの対象となった部品以外の部品に対して、「交換間隔」に従って交換の有無を決定する。これによって、保守のコストと故障のリスクを最適化する。
【0022】
図2に示す保守方法を詳細に説明する。1つのサービスセンタ203を拠点に、複数のサービスマン202が複数のユーザのもとに設置されている複数のMFP201の保守を行う。
【0023】
サービスマン202は作業終了時に、MFP201の通信手段207を介して保守計画システム1に保守履歴データを送信する。従来の通信機能を有しないMFP201に対しては、サービスマン202はサービスセンタ203に戻ってから、保守業務の報告としてまとめられた作業記録から、保守計画システム1に保守履歴データを入力する。これらの保守履歴データは記憶手段205に記憶される。
【0024】
また、MFP201は、設定されている定期通信時刻(例えば、毎日10時)になると、使用状況に関するデータを保守計画システム1に通信する。これら使用状況に関するデータは記憶手段205に記憶される。
保守計画システム1では、故障履歴解析手段204が、過去の保守履歴データをもとに各消耗品毎に故障率分布を算出し、その故障率分布に基づいて故障予測を行う。保守計画手段206が、通信手段207を介して収集したMFP201の使用状況に関するデータから次回の訪問時期及びその時に交換する消耗品のリストを算出する。
【0025】
図3は、保守計画システム1を含むサービスセンタ側システムの構成を示す図である。
サービスセンタ203には、ルータ11、ファイアウォール12が設けられて、保全計画システムに対する不正なアクセスを排除している。ファイアウォール12の後の非武装地帯には保守計画システム1が接続されている。
【0026】
保守計画システム1には、CPU20、プログラムメモリ21、通信手段22、記憶装置23、入力装置24及び出力装置25が設けられている。
CPU20は、保守計画システム1の動作を統括して制御する。プログラムメモリ21には、保守計画システム1で動作するプログラムが格納されている。例えば、故障履歴解析手段204、保守計画手段206などが格納されている。通信手段22は、インターネット10を介してMFP201との間で情報を授受するためのインターフェースである。記憶装置23には、保守履歴に関するデータ、使用状況に関するデータを格納した記憶手段205が設けられている。入力装置24は、保守計画システム1に指示またはデータを入力するためのキーボード、マウスなどの入力手段である。出力装置25は、情報を提示するための表示装置である。
【0027】
続いて、図2を参照しつつ、保守計画システム1を構成する各手段の機能について説明する。なお、保守計画手段206には、更に訪問間隔算出手段、交換間隔算出手段、組合せ算出手段、間隔情報取得手段、保守計画算出手段などの機能が設けられている。
【0028】
故障履歴解析手段204は、MFP201に対して行った保守作業に関する履歴情報としての保守履歴データに基づいて各消耗品についての故障率分布を算出する。上述のように、MFP201に対して行った保守作業に関する履歴情報は、MFP201からの通信により、あるいは保守作業を行なったサービスマン202によって入力されることにより、記憶手段205に記憶されている。
【0029】
保守計画手段(訪問間隔算出手段)206は、各消耗品の故障率分布に基づいて、保守作業のために訪問するべき時間間隔を規定する「訪問間隔」を各消耗品についてランダムに算出する。また、保守計画手段(交換間隔算出手段)206は、各消耗品の故障率分布に基づいて、交換するべき時間間隔を規定する「交換間隔」を各消耗品についてランダムに算出する。
【0030】
なお、ここでの「消耗品」としては、例えば感光体ドラム102、帯電チャージャワイヤ、定着ローラおよび転写ベルト等が挙げられるが、本実施の形態では「消耗品」としてそれぞれが異なる機能を有する複数の消耗部品が一体的にユニット化されたカートリッジをも含むものとする。
【0031】
ここで、保守計画手段(訪問間隔算出手段および交換間隔算出手段)206は、各消耗品の故障確率分布に基づいて、該故障確率が所定の確率以上であると予測される間隔の近傍の値を算出する。なお、各消耗品について保守計画手段(訪問間隔算出手段)206にて算出される訪問間隔は、保守計画手段(交換間隔算出手段)206にて算出される交換間隔よりも長い間隔に設定されている。
【0032】
保守計画手段(組合せ算出手段)206は、保守計画手段(訪問間隔算出手段および交換間隔算出手段)206にて算出される訪問間隔及び交換間隔に基づいて、モンテカルロ法もしくは遺伝的アルゴリズムを用いた探索処理を行う。この探索処理により、保守作業のために訪問を行うべき時間間隔と該訪問時に交換すべき消耗品の組合せの内、所定のコストが最小となる訪問間隔と交換間隔の組合せを算出する。
【0033】
なお、ここでの「所定のコスト」とは、サービスマンによる保守作業にかかる人件費、消耗品の材料費およびユーザが保守対象である機器を使用できないことにより生じる損失額の合計である。
【0034】
保守計画手段(間隔情報取得手段)206は、保守計画手段(組合せ算出手段)206にて算出された情報である「訪問間隔」と該訪問間隔に対応付けられている「交換間隔」との組合せに関する情報を取得する。
【0035】
一方、MFP201の通信手段207は、現在のトータルカウンタ値、各消耗品の現在のカウンタ値などを取得して保守計画システム1に送信する。ここでのカウンタ値とは、MFP201におけるシート処理枚数、例えば原稿をスキャンした枚数や、印刷した枚数などのように、MFP201に装着される各消耗品の劣化度を把握するのに有効である利用実績値を意味している。送信された各カウンタ値は、記憶手段205に格納される。
【0036】
保守計画手段(保守計画算出手段)206は、保守計画手段(間隔情報取得手段)206が取得した組合せに関する情報、および通信手段207を介して取得したMFP201のカウンタ値に基づいて、次回訪問すべきタイミングと該タイミングにおいて交換すべき消耗品のリストを算出する。
【0037】
図4は、本実施の形態による保守計画システム1にて利用されるデータのフォーマットと、各データテーブルの関係を示す図である。
本システムで使用するデータテーブルには、「ユーザ」テーブル301、「サポートセンタ」テーブル302、「機種」テーブル303、「機体」テーブル304、「消耗品」テーブル305、「ユーザ/機体対応」テーブル306、「保守履歴」テーブル307、「消耗品状態」テーブル308及び「カウンタ履歴」テーブル309が備えられている。
【0038】
「ユーザ」テーブル301には、各ユーザに対する定数が設定されている。「サポートセンタ」テーブル302には、サポートセンタ203に対する定数が設定されている。「機種」テーブル303には、機種に対する定数が設定されている。「機体」テーブル304には、各機体に対する定数や使用状況から算出される変数が設定される。「消耗品」テーブル305には、消耗品に対する定数や市場データから算出される故障率用変数が設定される。「ユーザ/機体対応」テーブル306には、ユーザが所有する機体とユーザとの対応が示される。「保守履歴」テーブル307には、サービスマンの保守作業履歴が記録される。「消耗品状態」テーブル308には、各消耗品の状態が設定される。「カウンタ履歴」テーブル309には、各機体のカウンタ履歴が記録される。
【0039】
図中の矢印は、矢印の元の属性を矢印の先の属性に設定することを示す。矢印の先の属性の「.」の前は参照元のテーブル名、「.」の後は参照元の属性名を示す。例えば、「保守履歴」テーブル307の「機体.ID」は、「機体」テーブル304の「ID」を表す。
【0040】
サービスマン202は保守業務を行った時に、MFP201のメモリに設定されているデータを更新する。
図5は、MFP201のメモリに保持する情報を示す図である。サービスマン202は、交換対象となった消耗品に対して、MFP201のメモリに設定されている現在の使用カウンタ値を「前回交換カウント」にセットし、使用カウンタ値を0にリセットする。交換の理由が、壊れて交換した場合は、MFP201のメモリに設定されている「ライフ到達」に「×」をセットし、壊れてはいないが設定ライフに到達したため交換した場合は、「ライフ到達」に「○」をセットする。
【0041】
MFP201は、通信手段207を有し、インターネットや公衆電話回線を通して、保守計画システム1と接続されている。サービスマン202は作業終了時に、保守計画システム1へのデータ送信処理を実行する。データを受信したサービスセンタ側では、記憶手段205に記憶している「保守履歴」テーブル307を更新する。
【0042】
従来の通信機能を有しないMFP201に対しては、サービスマン202はサービスセンタ203に戻ってからデータを入力する。サービスマン202は、保守業務の報告としてまとめられた作業記録から、「保守履歴」テーブル307のフォーマットに従い、サービスセンタ203に備えられた入力装置24を用いて、記憶手段205の「保守履歴」テーブル307を更新する。
【0043】
また、MFP201は、定期通信時刻(例えば、毎日10時)になると、保守計画システム1との通信を行う。MFP201は、当該通信時に、MFP201のID番号と、現在の日時、現在のトータルカウンタ値、各消耗品の現在のカウンタ値等を保守計画システム1に対して送信する。保守計画システム1は、MFP201から受信した情報を、記憶手段205に記憶されている「カウンタ履歴」テーブル309に反映させる。その後、MFP201は、通信のステータスや追加情報を確認して保守計画システム1との通信を終了する。
【0044】
図6は、上述のようにして内容が更新された「保守履歴」テーブル307の一例を示す図である。
なお、「保守履歴」テーブル307の「カウンタ」とは、A4のコピー/プリントを1、A3のコピー/プリントを2として、A4サイズで何枚の出力が行われたかを示すカウンタ値である。「カウンタ履歴」テーブル309の「トータルカウンタ値」も同様な値である。
【0045】
故障履歴解析手段204は、「保守履歴」テーブル307をもとに、各消耗品の故障率分布の推定を行う。故障分布解析では、式(1)に示すワイブル分布(m:形状パラメータ、η:尺度パラメータ)へのフィッテイングを行う。
F(t)=1−e{−(t/η)^m} ・・・式(1)
以下、図6を参照しつつ機種Aの消耗品である感光体ドラム102の故障分布解析方法を説明する。
故障履歴解析手段204は、感光体ドラム102の故障率分布を求めるために、記憶手段205から読み込んだ「保守履歴」テーブル307から、「故障間隔」と「ライフ到達」を参照する。
ところで通信手段を有しない従来機の保守履歴に対しては、「故障間隔」は未設定である。このときは感光体ドラム102に関するデータを抽出し、故障間隔を算出する。即ち、「保守履歴」テーブル307の中から「機種.名称」が「機種A」であり、「消耗品.略称」が「感光体ドラム」の全タプルと、「機種.名称」が「機種A」であり、「消耗品・略称」が「PM全交換」の全タプルを抽出し、前回交換時のカウンタ値との差から故障間隔を算出する。
【0046】
なお、「保守履歴」テーブル307の右端「ライフ到達」が「×」の項目は、感光体ドラム102がPM到達前に故障したときのデータであり、「○」の項目は、故障せずにPMに到達したために交換してしまったときのデータである。このように故障前に交換が行われたデータ(○の項目)を含むデータを「打ち切りデータ」と言う。「打ち切りデータ」を含むデータの解析手法として累積ハザード法が知られている。累積ハザード法を用いて算出された各タプルの故障間隔をもとに、ワイブル分布の形状パラメータmと尺度パラメータηを推定する。そして、「消耗品」テーブル305の故障分布関連変数を更新する。図7は、「消耗品」テーブル305の一例を示す図である。
故障履歴解析手段204は、「消耗品」テーブル305の「機種.名称」と「略称」が、「機種A」と「感光体ドラム」に合致するタプルを抽出し、「故障分布パラメータ1」に形状パラメータmを「故障分布パラメータ2」に尺度パラメータηを代入する。「故障分布分類」には、ワイブル分布に相当する定数(=0)を設定する。消耗品毎にこの計算を行い、記憶手段205の「消耗品」テーブル305を更新する。
【0047】
図8は、「カウンタ履歴」テーブル309の一例を示す図である。図9は、「機体」テーブル304の一例を示す図である。
【0048】
故障履歴解析手段204は、「カウンタ履歴」テーブル309をもとに、機体毎に1日当たりのコピー枚数の進度分布を算出する。即ち、「カウンタ履歴」テーブル309から「機体.ID」が同じタプルを抽出する。そして、「カウンタ取得日」の差(日数)と「トータルカウンタ」の変化量をもとに、一日あたりのカウンタ変化量(進度)の平均値と分散を算出する。そして、「機体」テーブル304の「カウンタ進度平均」には算出したカウンタ進度の平均値を代入し、「カウンタ進度分散」には算出したカウンタ進度の分散を代入する。
【0049】
次に、故障履歴解析手段204は、「カウンタ履歴」テーブル309から「機体.ID」が同じタプルを抽出する。そして抽出された全タプルから最新の「カウンタ取得日」を持つタプルを特定する。特定されたタプルの「カウンタ取得日」を「機体」テーブル304の「カウンタ取得日」に代入し、特定されたタプルの「トータルカウンタ」値を「機体」テーブル304の「トータルカウンタ」に代入する。
【0050】
図10は、「消耗品状態」テーブル308のデータの一例を示す図である。
故障履歴解析手段204は、「保守履歴」テーブル307から「機体.ID」が同じタプルを抽出する。更に抽出されたタプルの内、「消耗品.略称」が該当消耗品であるタプル、あるいは、「PM全交換」または「セットアップ」と記載されているタプルを抽出する。そして、最新の「訪問日」をもつタプルを特定する。特定されたタプルの「訪問日」を「消耗品状態」テーブル308の「カウンタ取得日」に代入し、「カウンタ」には0を設定する。
【0051】
次に、保守計画手段206の動作について説明する。
保守計画手段206は、「戦略策定モード」と、「訪問日提示モード」とを備えている。「戦略策定モード」は、ある一定量の保守履歴データが記憶手段205に追加登録された場合や、月に一度等の定期的なタイミングで最適な保守計画の作成を実行するモードである。「訪問日提示モード」は、サービスマン202が作成された保守計画の内容を確認するモードである。サービスマン202は、ほぼ毎日このモードを使用する。
【0052】
まず、「戦略策定モード」について説明する。
保守計画手段206は、各機体に対し、消耗品毎に「訪問間隔」と「交換間隔」を算出し設定する。サービスマン202はこの「訪問間隔」と「交換間隔」をもとに保守作業を行う。
即ち、サービスマン202は保守対象の機体であるMFP201に対して、一つでも消耗品が「訪問間隔」に達した場合に、当該機器の訪問を行なう。そして、サービスマン202は、この訪問時に「交換間隔」に達している全ての消耗品の交換を行なう。
【0053】
続いて、「訪問間隔」と「交換間隔」の算出方法について詳しく説明する。
【0054】
保守計画手段206は、「サポートセンタ」テーブル302の「シミュレーション期間」に設定された期間に含まれる複数の「訪問間隔」と「交換間隔」との組み合わせを設定する。そしてこれらの組合わせデータを用いて保守作業シミュレーションを行い、生じるコストができる限り小さくなるような「訪問間隔」と「交換間隔」を算出する。算出方法としては、例えば、モンテカルロ法や遺伝的アルゴリズムのような発見的手法を利用する。即ち、ランダムに「訪問間隔」と「交換間隔」を設定し、保守作業シミュレーションを繰り返してコスト計算を行い、その中でコストが最小となった「訪問間隔」と「交換間隔」を採用する。
【0055】
ここで言うコストとは、サービスマンの修理にかかる人件費、交換した消耗品の材料費、予期せぬ機体故障によりユーザが機体を使えないことにより生じる損失、即ち、ダウンタイム損失の合計を指す。また、シミュレーション期間の設定値は、機体の平均故障時間よりも十分に長い期間が設定されていることが望ましい。但し、シミュレーション期間が長いと、それに対応して計算時間も長くなる。
【0056】
モンテカルロ法を用いて保守作業シミュレーションを行った例を示す。
【0057】
図11は、シミュレーションに用いたサンプルを示す図である。これらのサンプルは、「機体.ID」が「100213」の機体に対する保守計画戦略サンプルである。保守計画戦略サンプルとは、「訪問間隔」と「交換間隔」を各消耗品に対して組合せたサンプルをいう。ここでは、ランダムに2000通りの保守計画戦略サンプルを作成している。なおサンプルは基本的にはランダムに発生させたものであるが、無駄なサンプルを作成しないように、各消耗品の故障確率分布等から経験的に予想される訪問間隔、交換間隔の近傍で発生させる方が望ましい。この2000通りの保守計画戦略サンプルを用いて、それぞれ保守作業シミュレーションを行い、コストが最小のサンプルを求める。
【0058】
次に、図11に示す保守計画戦略サンプルを用いた保守作業シミュレーションについて説明する。図12は、保守作業シミュレーションの概略の手順を示すフローチャートである。
【0059】
保守計画手段206は、「機体.ID」が「100213」である「機体」テーブル304を検索して、その「機体」テーブル304の「機種.名称」を抽出する。そして、抽出した「機種.名称」を備える「消耗品」テーブル305を全て抽出する。
【0060】
ステップS901において、保守計画手段206は、「消耗品」テーブル305の「故障分布分類」、「故障分布パラメータ1」、「故障分布パラメータ2」で表される故障確率に基づいて乱数を発生させ、各消耗品の次回故障時間を算出する。ステップS902において、算出された次回故障時間の中で最も短いものを次回故障発生時間候補とする。
【0061】
一方、保守計画手段206は、「機体」テーブル304の「ID」と「消耗品状態」テーブル308の「機体.ID」照合する。合致する「機体.ID」を持つ「消耗品状態」テーブル308を全て抽出し、サービスマンの次回訪問予定を算出する。
【0062】
即ち、ステップS903において、抽出されたそれぞれの消耗品に対して、「消耗品状態」テーブル308に設定されている「訪問間隔」を参照する。ステップS904において、最も短いものを次回訪問時間候補とする。
【0063】
ステップS905において、故障確率に基づいて算出された次回故障発生時間候補と、「消耗品状態」テーブル308から求められた次回訪問時間候補とを比較してイベントを確定する。
【0064】
ステップS905でYesの場合、即ち、次回故障時間候補が次回訪問時間候補よりも短い場合、訪問前に故障が発生するため、ステップS906において、故障発生イベントとして次回故障時間候補を経過時間とする。ステップS907において、交換する消耗品を確定し、発生するコストを算出する。
【0065】
コストは以下のように算出する。故障が発生した消耗品以外の全消耗品について、「消耗品状態」テーブル308の「交換間隔」を参照する。そして、「交換間隔」が、次回故障交換時間候補よりも短い消耗品を、交換消耗品として設定する。このときのコストは、式(2)で表される。
【0066】
コスト=人件費+材料費+ダウンタイム損失 ・・・式(2)
但し、
人件費=(「ユーザ.移動時間」+Σ交換消耗品の「消耗品.交換時間」)×サービスマン単価
材料費=Σ交換消耗品の「消耗品.単価」
ダウンタイム損失=「ユーザ.移動時間」×「機体.ダウンタイム損失単価」
なお、「ユーザ.移動時間」はサポートセンタ203からユーザ所在地までの移動時間を示す。
【0067】
ステップS905でNoの場合、即ち、次回故障時間候補が次回訪問時間候補以上の場合、訪問前に故障が発生していないため、ステップS908において、事前保守イベントとして次回訪問時間候補を経過時間とする。ステップS909において、交換する消耗品を確定し、発生するコストを算出する。
【0068】
コストは以下のように算出する。訪問間隔に達したため事前保守を行う消耗品以外の全消耗品について、「消耗品状態」テーブル308の「交換間隔」を参照する。そして、「交換間隔」が、次回訪問時間候補よりも短い消耗品を、交換消耗品として設定する。このときのコストは、式(3)で表される。
【0069】
コスト=人件費+材料費+ダウンタイム損失 ・・・式(3)
但し、
人件費=(「ユーザ.移動時間」+Σ交換消耗品の「消耗品.交換時間」)×サービスマン単価
材料費=Σ交換消耗品の「消耗品.単価」
ダウンタイム損失=0
ここで、ダウンタイムは予期せぬ故障が発生した時からサービスマン202が駆けつけるまでの時間としている。サービスマン202が故障を復旧するための作業時間は上述のダウンタイムには含めていない。サービスマン202は、ユーザとの合意のもとにユーザが機体を未使用時に故障復旧作業を行っていると考えられるからである。
【0070】
ステップS910において、交換した消耗品に対しては、新たに次回故障時間を算出し、交換していない消耗品に対しては、算出済みの次回故障時間と訪問間隔から経過時間をそれぞれ引いた値で、次回故障時間と訪問間隔を更新する。ステップS911において、同様に次回故障時間候補と次回訪問時間候補を確定する。ステップS912でNoの場合、即ち、シミュレーション期間に経過時間が達していないときは、上述のイベントの確定、交換消耗品の確定、コストの算出を繰り返す。そして、ステップS912でYesの場合、即ち、シミュレーション期間に経過時間が達したときは、保守作業シミュレーションを終了する。
【0071】
上述のシミュレーションを1セットとして、図11に示す全ての保守計画戦略サンプルに対してシミユレーションを行う。図13は、各サンプルに対するシミュレーション結果を示す図である。算出されるコストが最も小さい保守計画戦略サンプルを最適戦略として採用する。この例では、112番目のサンプルが1カウントあたりのコストが最小であり、最適戦略として採用される。そして最適戦略の「訪問間隔」と「交換間隔」を、各消耗品について「消耗品状態」テーブル308の「訪問間隔」と「交換間隔」に設定する。
【0072】
また、MFP201は定期通信時に追加情報として「消耗品状態」テーブル308の「訪問間隔」と「交換間隔」をダウンロードし、自らのメモリに設定する。従って、MFP201は、適宜自らの表示パネルに最適戦略である「訪問間隔」、「交換間隔」をユーザに提示することができる。図14は、MFP201のメモリに保持する情報の一例を示す図である。
【0073】
続いて、「訪問日提示モード」について説明する。「訪問日提示モード」では、サービスマン202が、日常的に次回の訪問日、即ち、機器の訪問タイミングを確認する場合を想定している。
【0074】
上述した「戦略策定モード」により、予め望ましい「訪問間隔」と「交換間隔」が設定されている。サービスマン202は、担当の機体の「機体.ID」をサービスセンタ203における不図示の操作入力部から入力することにより次回の訪問日を確認する。
【0075】
図15は、訪問日提示モードの概略の処理手順を示すフローチャートである。
保守計画手段206は、「機体」テーブル304の「ID」と「消耗品状態」テーブル308の「機体.ID」を照合する。合致する「機体.ID」を持つ「消耗品状態」テーブル308を全て抽出し、「カウンタ取得日」、「カウンタ」、「訪問間隔」、「交換間隔」を参照する。また、「機体」テーブル304から「カウンタ進度平均」を参照する。
【0076】
ステップS701において、保守計画手段206は、各消耗品について、次回の訪問予定日を算出する。次回の訪問予定日は、式(4)で表される。
訪問予定日=カウンタ取得日+(訪問間隔−カウンタ)/カウンタ進度平均
・・・式(4)
ステップS702において、各消耗品の訪問予定日のうち最短のものを、訪問日として確定する。ステップS703において、最短の訪問予定日を与える消耗品以外の消耗品に対して、交換予定日を算出する。交換予定日は、式(5)で表される。
交換予定日=カウンタ取得日+(交換間隔−カウンタ)/カウンタ進度平均
・・・式(5)
ステップS704において、訪問日よりも交換予定日が短い消耗品を交換消耗品として確定する。ステップS705において、訪問日とともに交換する消耗品を出力装置25にて提示する。図16に訪問時提示モードでの出力結果の例を示す。
【0077】
なお、上述のような処理の他、「機体」テーブル304の「カウンタ進度分散」を利用して、式(4)、式(5)の「カウンタ進度平均」を区間で表現し、訪問日を期間で推定することも可能である。
【0078】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0079】
本実施の形態は、上述した第1の実施の形態の変形例であり、その基本的なシステム構成は同じである。以下、第1の実施の形態にてすでに説明した部分と同一の部分には同一符号を付し、説明は割愛する。
【0080】
本実施の形態では、保守対象である機器としてのMFP201は、感光体ドラム102、帯電器103、クリーナ108および現像器105等が一体的にユニット化されたカートリッジを備えており、当該カードリッジは本体から着脱可能となっている。
【0081】
このような各種部品を一体化したカートリッジでは、当該カートリッジを構成するどれか1つの部品が壊れると交換の必要が発生する。
【0082】
そこで「戦略策定モード」では、「消耗品状態」テーブル308に設定されている「訪問間隔」及び「交換間隔」は、カートリッジを構成する部品に対して全て同じ値を設定した上で、算出されるコストができる限り小さくなるように設定される。
【0083】
カートリッジは、着脱が容易なため、ユーザでも交換が可能であり、このような交換が容易な消耗品の交換は、保守業務のコストや効率化の観点から、できるかぎりユーザ側で行なわれることが好ましい。
【0084】
図17は、本実施の形態における「訪問日提示モード」の概略の処理手順を示すフローチャートである。なお、同図に示すフローチャートにおけるステップS601〜S604の処理は、第1の実施の形態にて図15で示したステップS701〜S704の処理と同様であるため、ステップS605以降の処理について説明する。
【0085】
ステップS604において、保守計画手段206により保守対象である機器の訪問日に交換すべき消耗品が確定されると、ステップS605において、交換すべき消耗品のリストの中にカートリッジの構成部品が含まれているか否かを判定する。
【0086】
ステップS605でNoの場合、即ち、当該訪問日に交換すべき消耗品のリストにカートリッジの構成部品が含まれていない場合、ステップS608において、確定された訪問日と当該訪問日に交換すべき消耗品のリストを出力装置25に出力する。
【0087】
ステップS605でYesの場合、即ち、訪問日に交換すべき消耗品のリストにカートリッジの構成部品が含まれている場合、ステップS606において、確定された訪問日が予め設定されている日数よりも前であるかどうかを調べる。
【0088】
ステップS606でYesの場合、即ち、確定された訪問日が予め設定されている日数よりも前である場合、ステップS607において、その訪問日を「カートリッジ交換日」として、「カートリッジ交換日」を記憶手段205に登録する。
【0089】
MFP201は定期通信時に追加情報として記憶手段205に格納されている「カートリッジ交換日」の情報をダウンロードし、カートリッジ交換のメッセージをMFP201に備えられている不図示のコントロールパネル上に表示する。
【0090】
これにより、ユーザ側で交換可能な消耗品についてはサービスマン202が訪問することなく、ユーザ側で交換作業を行い、ユーザ側での交換が困難な消耗品についてはサービスマン202が訪問するようにすることができ、保守作業の作業効率の向上を図ることができる。
【0091】
本実施の形態では装置内部に発明を実施する機能が予め記録されている場合で説明をしたが、これに限らず同様の機能をネットワークから装置にダウンロードしても良いし、同様の機能を記録媒体に記憶させたものを装置にインストールしてもよい。記録媒体としては、CD−ROM等プログラムを記憶でき、かつ装置が読み取り可能な記録媒体であれば、その形態は何れの形態であっても良い。またこのように予めインストールやダウンロードにより得る機能は装置内部のオペレーティング・システム(OS)等と共働してその機能を実現させるものであってもよい。
【0092】
以上、本実施の形態によれば、消耗品個々に、「訪問間隔」と「交換間隔」の2つの判断基準を設定することで、サービスマンが「いつ訪問すべきか」「どの消耗品を交換すべきか」を把握することができる。また、「戦略策定モード」を用いて望ましい訪問間隔と交換間隔(戦略)を予め算出しておき、通常は、「訪問日提示モード」を用いて確定済みの戦略を元に次回の訪問日を算出するので、計算にかかるコストを低減させることができる。また、保守対象である機器の使用状況を通信手段を用いてリアルタイムに収集することができるため、機器を訪問する日の予測の確度が大幅に向上する。また消耗品の交換がライフ到達によるものかどうかを記録できるため、故障確率分布を正確に推定することができる。
【0093】
本発明を特定の態様により詳細に説明したが、本発明の精神および範囲を逸脱しないかぎり、様々な変更および改質がなされ得ることは、当業者には自明であろう。以上に詳述したように本発明によれば、保守業務に関するコストを低減すると共に、製品のダウンタイムも低減することができる技術を提供することができる。
【0094】
なお、上述の実施の形態で説明した各機能は、ハードウエアを用いて構成しても良く、また、ソフトウエアを用いて各機能を記載したプログラムをコンピュータに読み込ませて実現しても良い。また、各機能は、適宜ソフトウエア、ハードウエアのいずれかを選択して構成するものであっても良い。
【0095】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】MFPのコピー機能の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施の形態に係る保守計画システムの概要を示すシステム構成図。
【図3】保守計画システムを含むサービスセンタ側システムの構成を示す図。
【図4】保守計画システムにて利用されるデータのフォーマットと、各データテーブルの関係を示す図。
【図5】MFPのメモリに保持する情報を示す図。
【図6】「保守履歴」テーブルの一例を示す図。
【図7】「消耗品」テーブルの一例を示す図。
【図8】「カウンタ履歴」テーブルの一例を示す図。
【図9】「機体」テーブルの一例を示す図。
【図10】「消耗品状態」テーブルのデータの一例を示す図。
【図11】シミュレーションに用いたサンプルを示す図。
【図12】保守作業シミュレーションの概略の手続きを示すフローチャート。
【図13】各サンプルに対するシミュレーション結果を示す図。
【図14】MFPのメモリに保持する情報の一例を示す図。
【図15】「訪問日提示モード」の概略の処理手順を示すフローチャート。
【図16】「訪問時提示モード」での出力結果を示す図。
【図17】「訪問日提示モード」の概略の処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0097】
1…保守計画システム、10…インターネット、22…通信手段、201…MFP、204…故障履歴解析手段、204…故障確率分布推定部、206…保守計画部、207…通信手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を形成するとともに外部装置との間で情報を授受する画像形成装置の保守計画を作成する保守計画システムであって、
前記画像形成装置の使用実績情報と、消耗品の使用実績情報とを取得する使用実績取得部と、
前記消耗品の使用実績情報の履歴に基づいて当該消耗品の故障確率分布を推定する故障確率分布推定部と、
前記画像形成装置の使用実績情報の履歴に基づいて一日当りのカウンタ値であるカウンタ進度を取得するカウンタ進度取得部と、
前記消耗品毎の故障確率分布と前記カウンタ進度とに基づいて次回交換時期と交換する消耗品を提示する保守計画部とを備え、
前記画像形成装置の使用実績情報は、画像形成回数に対応したカウンタ値及び該カウンタ値の取得日付を含み、
前記消耗品の使用実績情報は、該消耗品の交換時における前記カウンタ値及び該消耗品の交換理由がライフ到達によるか否かを示すライフ情報を含むこと
を特徴とする保守計画システム。
【請求項2】
各消耗品についての保守作業のために訪問するべき時間間隔を表す訪問間隔と各消耗品についての交換を行うべき時間間隔を表す交換間隔とを組み合わせた間隔情報を取得する間隔情報取得部と、
前記消耗品毎の故障確率分布と前記カウンタ進度とに基づいて各消耗品について次回故障発生時期を求める故障発生時期算出部と、
各消耗品についての前記次回故障発生時期と前記間隔情報とから前記画像形成装置に関して発生するコストを算出するコスト算出部と、
算出されたコストの内、最も小さいコストを与える前記訪問間隔と前記交換間隔との組み合わせを最適な間隔情報として選択する選択部と、
前記選択された間隔情報に基づいて、次回交換時期と交換する消耗品とを提示する提示部を備えたこと
を特徴とする請求項1に記載の保守計画システム。
【請求項3】
前記故障発生時期算出部は、前記各消耗品の故障確率に基づいて各消耗品の次回故障時間を算出し、算出した次回故障時間の中で最も短い時間と前記カウンタ進度とから次回故障発生時期を求めることを特徴とする請求項2に記載の保守計画システム。
【請求項4】
前記コストは、サービスマンによる保守作業にかかる人件費、消耗品の材料費およびユーザが前記画像形成装置を使用できないことにより生じる損失額の合計であることを特徴とする請求項2に記載の保守計画システム。
【請求項5】
前記コスト算出部は、前記訪問間隔および前記交換間隔に基づいて、モンテカルロ法もしくは遺伝的アルゴリズムを用いた探索処理を行うことにより、前記コストが最小となる前記訪問間隔と前記交換間隔の組合せを求める請求項2に記載の保守計画システム。
【請求項6】
各消耗品について前記訪問間隔は、前記交換間隔よりも長い間隔に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の保守計画システム。
【請求項7】
前記訪問間隔及び前記交換間隔は、各消耗品の故障確率分布に基づいて、該故障確率が所定の確率以上であると予測される間隔の近傍の値であることを特徴とする請求項2に記載の保守計画システム。
【請求項8】
前記消耗品は、それぞれが異なる機能を有する複数の消耗部品が一体的にユニット化されたカートリッジを含むことを特徴とする請求項1に記載の保守計画システム。
【請求項9】
画像を形成するとともに外部装置との間で情報を授受する画像形成装置の保守計画を作成する保守計画方法であって、
前記画像形成装置の使用実績情報と、消耗品の使用実績情報とを取得する使用実績取得ステップと、
前記消耗品の使用実績情報の履歴に基づいて当該消耗品の故障確率分布を推定する故障確率分布推定ステップと、
前記画像形成装置の使用実績情報の履歴に基づいて一日当りのカウンタ値であるカウンタ進度を取得するカウンタ進度取得ステップと、
前記消耗品毎の故障確率分布と前記カウンタ進度とに基づいて次回交換時期と交換する消耗品を提示する保守計画ステップとを備え、
前記画像形成装置の使用実績情報は、画像形成回数に対応したカウンタ値及び該カウンタ値の取得日付を含み、
前記消耗品の使用実績情報は、該消耗品の交換時における前記カウンタ値及び該消耗品の交換理由がライフ到達によるか否かを示すライフ情報を含むこと
を特徴とする保守計画方法。
【請求項10】
各消耗品についての保守作業のために訪問するべき時間間隔を表す訪問間隔と各消耗品についての交換を行うべき時間間隔を表す交換間隔とを組み合わせた間隔情報を取得する間隔情報取得ステップと、
前記消耗品毎の故障確率分布と前記カウンタ進度とに基づいて各消耗品について次回故障発生時期を求める故障発生時期算出ステップと、
各消耗品についての前記次回故障発生時期と前記間隔情報とから前記画像形成装置に関して発生するコストを算出するコスト算出ステップと、
算出されたコストの内、最も小さいコストを与える前記訪問間隔と前記交換間隔との組み合わせを最適な間隔情報として選択する選択ステップと、
前記選択された間隔情報に基づいて、次回交換時期と交換する消耗品とを提示する提示ステップを備えこと
を特徴とする請求項9に記載の保守計画方法。
【請求項11】
前記故障発生時期算出ステップは、前記各消耗品の故障確率に基づいて各消耗品の次回故障時間を算出し、算出した次回故障時間の中で最も短い時間と前記カウンタ進度とから次回故障発生時期を求めることを特徴とする請求項10に記載の保守計画方法。
【請求項12】
前記コストは、サービスマンによる保守作業にかかる人件費、消耗品の材料費およびユーザが前記画像形成装置を使用できないことにより生じる損失額の合計であることを特徴とする請求項10に記載の保守計画方法。
【請求項13】
前記コスト算出ステップは、前記訪問間隔および前記交換間隔に基づいて、モンテカルロ法もしくは遺伝的アルゴリズムを用いた探索処理を行うことにより、前記コストが最小となる前記訪問間隔と前記交換間隔の組合せを求めることを特徴とする請求項10に記載の保守計画方法。
【請求項14】
各消耗品について前記訪問間隔は、前記交換間隔よりも長い間隔に設定されていることを特徴とする請求項10に記載の保守計画方法。
【請求項15】
前記訪問間隔及び前記交換間隔は、各消耗品の故障確率分布に基づいて、該故障確率が所定の確率以上であると予測される間隔の近傍の値であることを特徴とする請求項10に記載の保守計画方法。
【請求項16】
前記消耗品は、それぞれが異なる機能を有する複数の消耗部品が一体的にユニット化されたカートリッジを含むことを特徴とする請求項9に記載の保守計画方法。
【請求項17】
画像を形成するとともに外部装置との間で情報を授受する画像形成装置であって、
前記画像形成装置の使用実績情報と、消耗品の使用実績情報とを記憶する記憶部と、
前記画像形成装置の前記使用実績情報と前記消耗品の前記使用実績情報とを、前記画像形成装置の保守計画を作成する保守計画システムに送信する情報送信部とを備え、
前記画像形成装置の使用実績情報は、画像形成回数に対応したカウンタ値及び該カウンタ値の取得日付を含み、
前記消耗品の使用実績情報は、該消耗品の交換時における前記カウンタ値及び該消耗品の交換理由がライフ到達によるか否かを示すライフ情報を含むこと
を特徴とする画像形成装置。
【請求項18】
各消耗品についての保守作業のために訪問するべき時間間隔を表す訪問間隔と各消耗品についての交換を行うべき時間間隔を表す交換間隔とを示す2つの指標を記憶する指標記憶部と、
前記保守計画システムから、前記訪問間隔と前記交換間隔とを示す2つの指標を受信する情報受信部とを更に有することを特徴とする請求項17に記載の画像形成装置。
【請求項19】
前記消耗品は、それぞれが異なる機能を有する複数の消耗部品が一体的にユニット化されたカートリッジを含み、
前記情報受信部は、前記カートリッジの交換予定日に関する情報を前記保守計画システムから更に受信し、
前記受信した情報から前記カートリッジの交換予定日を提示する表示部を更に備えたことを特徴とする請求項18に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−65824(P2008−65824A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229446(P2007−229446)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】