説明

保安装置

【課題】特殊信号発光器の故障を検出して事故を防止し得る保安装置を提供する。
【解決手段】故障検出部1は、特殊信号発光機10の灯器101の故障を検出する。停止信号出力部11は、故障が検出されたとき、列車30を停止させるための停止信号2を出力する。本発明に係る保安装置は、上述のように、故障検出部1により特殊信号発光機10の灯器101の故障を検出したとき、停止信号出力部11により、列車30を停止させるための停止信号S2を出力する。したがって、本発明によれば、特殊信号発光機10の故障検出を列車停止制御の契機とすることによって、特殊信号発光機10が発光しなくなったとき、列車30を強制的に停止させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊信号発光器の故障を検出する保安装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特殊信号発光機は、踏切支障報知装置、踏切障害物検知装置、限界支障報知装置、及び落石警報などの装置が動作したとき、停止信号を現示して、その危急を、接近中の列車の運転士に報知し、事故を防止するための信号装置である。例えば、踏切障害物検知装置に用いられる特殊信号発光機は、列車接近時に踏切道に取り残された人や車両が検出されたとき、列車を停止させるために、これを、複数の灯器を赤色で循環点灯させることによって列車に通知する。
【0003】
この特殊信号発光機に用いられている灯器は、LEDと電球の何れであっても、経年劣化、あるいは予期せぬ要因によって故障することがある。この場合、事故の防止手段が失われることになるので、安全な列車運行のため、特殊信号発光器の故障を検出して事故を防止する技術が求められている。
【0004】
信号装置の故障検出の技術に関し、例えば特許文献1では、自動閉そく装置において、三位式の信号機の灯器の断芯を検出したとき、該灯器の下位の灯器を点灯させる技術が開示されているが、この技術は、三位式の信号機と方式の異なる特殊信号発光機に適用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−104188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、特殊信号発光器の故障を検出して事故を防止し得る保安装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明に係る保安装置は、故障検出部と、停止信号出力部とを含む。
【0008】
前記故障検出部は、特殊信号発光機の灯器の故障を検出する。前記停止信号出力部は、前記故障が検出されたとき、列車を停止させるための停止信号を出力する。
【0009】
本発明に係る保安装置は、上述のように、故障検出部により特殊信号発光機の灯器の故障を検出したとき、停止信号出力部により、列車を停止させるための停止信号を出力する。
【0010】
したがって、本発明によれば、特殊信号発光機の故障検出を列車停止制御の契機とすることによって、特殊信号発光機が発光しなくなったとき、列車を強制的に停止させることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上述べたように、本発明によれば、特殊信号発光器の故障を検出して事故を防止し得る保安装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る保安装置の第1の実施形態の構成図である。
【図2】電球灯器の故障検出装置、及び特殊信号発光機の回路構成図である。
【図3】LED灯器の故障検出装置、及び特殊信号発光機の回路構成図である。
【図4】リレー装置の構成図である。
【図5】ATS−S装置による列車の距離−列車速度グラフである。
【図6】本発明に係る保安装置の第2の実施形態の構成図である。
【図7】符号処理器の構成図である。
【図8】ATS−P装置による速度照査パタンを示す距離−列車速度グラフである。
【図9】本発明に係る保安装置の第3の実施形態の構成図である。
【図10】ATC地上装置の構成図である。
【図11】ATC装置による列車の距離−列車速度グラフである。
【図12】本発明に係る保安装置の第4の実施形態の構成図である。
【図13】自動閉そく装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る保安装置は、上述した踏切支障報知装置、踏切障害物検知装置、限界支障報知装置、及び落石警報などの装置が動作したときに停止信号を現示する特殊信号発光機に適用されるものであって、故障検出部と、停止信号出力部とを含む。故障検出部は、特殊信号発光機の灯器の故障を検出し、停止信号出力部は、灯器の故障が検出されたとき、列車を停止させるための停止信号を出力する。
【0014】
本発明に係る保安装置は、このような構成により、特殊信号発光機の故障検出を列車停止制御の契機とすることによって、特殊信号発光機が発光しなくなったとき、列車を強制的に停止させるものであるが、さらなる特徴として、鉄道制御に関する種々の既存装置を利用して低コストに実現することができる。以下に、本発明に係る保安装置の具体的な構成について説明する。
【0015】
1.第1の実施形態
図1は、本発明に係る保安装置の第1の実施形態の構成図である。ここで、保安装置は、踏切障害物検知装置2に付随する特殊信号発光機10を適用対象としているが、これに限定されることはない。
【0016】
まず、踏切障害物検知装置2と特殊信号発光機10の一般的な動作について説明する。踏切障害物検知装置2は、列車接近時に踏切20の踏切道に取り残された車両や人を、光や磁気などの手段で検知するものである。踏切障害物検知装置2は、障害物を検知すると検知信号Sdを特殊信号発光機10に出力する。特殊信号発光機10は、LED、または電球からなる複数の灯器101を備え、検知信号Sdが入力されたとき、複数の灯器101を例えば循環点灯させ、これにより接近中の列車30の運転士に危険を通知するものである。
【0017】
本実施形態は、ATS−S装置を利用して実現した保安装置の例である。ATS−S装置は、列車30を、停止信号を現示する信号機110の手前の位置Pに自動的に停止させる装置である。
【0018】
ATS−S装置は、リレー装置11と、地上子12と、車上装置13とを含む。このうち、リレー装置11と地上子12は、列車30の軌道R沿いの地上に設置されており、一方、車上装置13は列車30に設置されている。
【0019】
ATS−S装置の一般的な動作を述べると、まず、信号機110が停止現示であるとき、リレー装置11が、これを示す検出信号Sgを受信して、地上子12を介して列車30に向けて停止信号S2を出力する。列車30では、車上装置13が車上子301を介して停止信号S2を受信する。車上装置13は、停止信号S2を受信すると、5秒以内に確認扱いが無い場合、列車30の制動装置302を制御して非常ブレーキをかける。
【0020】
本実施形態の特徴は、特殊信号発光機10の故障検出装置1が出力する故障検出信号S1を、上記のリレー装置11に入力して、車上装置13による列車停止制御の契機とした点にある。ここで、故障検出装置1は、少なくとも1個の灯器101の故障を検出したとき、故障検出信号S1をリレー装置11に出力するものである。
【0021】
図2は、電球灯器101の故障検出装置1、及び特殊信号発光機10の回路構成図であり、図3は、LED灯器101、及び特殊信号発光機10の故障検出装置1の回路構成図である。
【0022】
前者について説明すると、電球灯器101は、リレーの接点103を介して駆動電源102に接続され、点灯制御がなされる。電球灯器101には電流検出部104が直列接続されており、電球灯器101を流れる電流が検出される。電流検出部104は、電球灯器101が断芯したときに該電流値が実質的に0(A)となったことを検出して、検出信号S1を出力する。この電流検出部104は、スイッチや検出用抵抗器などを有する回路で構成され、故障検出装置1に設けられている。
【0023】
一方、後者について説明すると、LED灯器101は、リレーの接点103を介して駆動電源102に接続され、点灯制御がなされる。LED灯器101には、検出抵抗106が並列接続されるとともに、そのカソード側に電圧検出部107が接続されている。LED灯器101のカソード側の電圧は、LED灯器101がオープン故障した場合、駆動電源102の出力電圧値から、検出抵抗106による電圧降下分を差し引いた値となり、他方、LED灯器101が短絡故障した場合、駆動電源102の出力電圧値となる。電圧検出部107は、検出した電圧値が、上記の値となったことを検出して、検出信号S1を出力する。この電圧検出部107は、スイッチや比較器などを有する回路で構成され、故障検出装置1に設けられている。
【0024】
次に、図4を参照して、リレー装置11の構成を説明する。リレー装置11は、停止現示検知リレー(SGR)111と、故障検知リレー(S1R)112と、上記の停止信号S2を地上子12に出力するための停止信号出力部110とを含む。
【0025】
停止信号出力部110は、停止現示検知リレー(SGR)111の接点111aを介して停止信号S2を出力するように構成されている。また、停止現示検知リレー(SGR)111は、信号機110が停止現示であるときに動作する。したがって、停止信号出力部110は、信号機110が停止現示であるときに停止信号S2を出力することになる。
【0026】
この動作は、従来のATS−S装置の基本機能に従ったものであるが、本実施形態では、この動作に故障検知リレー(S1R)112の動作が組み込まれている。
【0027】
故障検知リレー(S1R)112は、故障検知装置1が上記の故障検出信号S1を出力したときに動作する。停止信号出力部110は、停止現示検知リレー(SGR)111の接点111aだけでなく、故障検知リレー(S1R)112の接点112aを介して停止信号S2を出力するようにも構成されている。したがって、停止信号出力部110は、特殊信号発光機10の灯器101が故障したときも停止信号S2を出力する。
【0028】
図5は、停止信号S2により車上装置13が、上述した列車停止制御を行ったときの列車30の距離−速度グラフである。車上装置13は、符号x1の位置で地上子12から停止信号S2を受信すると、その後の5秒以内に確認扱いが無い場合、符号x2の位置で非常ブレーキをかけるように制御する。これにより、列車30は、符号x2の位置を通過後、急激に減速し、信号機110、及び特殊信号発光機10の手前に設定された所定の停止位置Pに停車する。
【0029】
このように、本実施形態においては、保安装置の停止信号出力部としてATS−S装置のリレー装置11を利用して、停止信号を車上装置13に送信することによって、車上装置13の列車停止制御により、灯器101の故障に起因する踏切事故を防止することができる。
【0030】
2.第2の実施形態
図6は、本発明に係る保安装置の第2の実施形態の構成図である。ここで、保安装置は、踏切障害物検知装置2に付随する特殊信号発光機10を適用対象としているが、これに限定されることはない。また、既に述べた構成に関しては、その説明を省略する。
【0031】
本実施形態は、ATS−P装置を利用して実現した保安装置の例である。ATS−P装置は、トランスポンダ装置により、信号機110の現示に応じた停止位置までの距離情報を列車30に通知して、列車30を該停止位置に自動的に停止させる装置である。
【0032】
ATS−P装置は、車上装置23と、これと電文の送受信を行うトランスポンダ装置として、符号処理器(EC)21と、複数の有電源地上子(中継器(RP)を含むものとして記載)22とを含む。このうち、符号処理器21と地上子22は、列車30の軌道R沿いの地上に設置されており、一方、車上装置23は列車30に設置されている。
【0033】
符号処理器21は、接続器、並びに通信用電力ケーブルを介して、複数の有電源地上子22とマルチドロップ接続の形態で接続され、電文の送受信を行う。電文には、個々の地上子22に固有の識別情報領域が含まれているため、符号処理器21は、特定の地上子22に宛てた電文を送信できるし、受信した電文が、何れの地上子22から送信されたものであるかを特定することができる。なお、電文の送受信は、個別のポーリング方式で行われる。
【0034】
複数の地上子22は、それぞれ、各閉塞区間の信号機210の所定距離L(m)手前に設置されている。ここで、所定距離Lは、通常、600(m)である。
【0035】
本実施形態に係る保安装置は、図示されるように、列車30の進行方向Dで見て、特殊信号発光機10の手前の最も近い位置に植設された信号機210について、該信号機210の所定距離L(m)手前に設置された地上子22を、停止信号の送信に用いる。
【0036】
また、符号処理器21は、器具箱を介して信号機210と接続されている。この信号機210は、信号機210の現示状態を示す現示信号Sgを、符号処理器21に送信する。
【0037】
ATS−P装置の一般的な動作を述べると、まず、符号処理器21は、現示信号Sgを受信して、信号機210の現示状態に応じた距離情報を含む電文Mを、地上子22に出力する。距離情報は、信号機210が停止現示であればL(m)、注意現示であればL+α(m)、注意現示であればL+α+β(m)である。ここで、定数α、βは、それぞれ、当該閉塞区間と順次に隣接する閉塞区間の距離である。
【0038】
列車30では、車上装置23が、車上子301を介して地上子22から電文Mを受信する。車上装置13は、電文Mを受信すると、当該距離情報に従って速度照査パタンを作成し、速度発電機303から得た列車30の速度が、該パタンが示す速度を超えると、制動装置302を制御して常用ブレーキをかける。
【0039】
本実施形態の特徴は、特殊信号発光機10の故障検出装置1が出力する故障検出信号S1を、上記の符号処理器21に入力して、車上装置23による列車停止制御の契機とした点にある。故障検出装置1は、少なくとも1個の灯器101の故障を検出したとき、故障検出信号S1を符号処理器21に出力する。なお、故障検出装置1の構成は、既に述べたとおりである。
【0040】
図7は、符号処理器21の構成図である。符号処理器21は、進行現示検知リレー(SGGR)211と、注意現示検知リレー(SGYR)212と、停止現示検知リレー(SGRR)213と、故障検知リレー(S1R)214と、電文Mを地上子22に送信するための電文出力部210とを含む。
【0041】
進行現示検知リレー(SGGR)211、注意現示検知リレー(SGYR)212、及び停止現示検知リレー(SGRR)213は、現示信号Sgに従って、それぞれ、信号機210が進行現示、注意現示、及び停止現示であるときに動作する。そして、符号処理器21は、これらの現示検知リレー211〜213の接点211a〜213aを介して、該現示に対応する距離情報L+α+β,L+α,Lを取得し、該距離情報を含む電文Mを地上子22に送信する。
【0042】
この動作は、従来のATS−P装置の基本機能に従ったものであるが、本実施形態では、この動作に故障検知リレー(S1R)214の動作が組み込まれている。すなわち、故障検知信号S1が入力されたとき、故障検知リレー(S1R)214が動作し、電文出力部210は、当該接点214aを介して距離情報L+ΔLを取得する。ここで、ΔL(m)は、図6に示されるように、信号機210の位置と所定の停止位置Pの間の距離である。
【0043】
地上子22は、距離情報L,L+α,L+α+β,L+ΔLの何れかを含む電文Mを車上装置23に送信し、車上装置23は、この距離情報に従って、列車30を減速停止させるための速度照査パタンを作成する。
【0044】
図8は、距離情報L+ΔLの場合の速度照査パタンを示す距離−列車速度グラフである。この速度照査パタンは、実線で示されるように、距離情報L+ΔLに従って、所定の停止位置Pで列車30が停止するように作成されている。車上装置23は、図中の点線で示されるように、符号x3の位置で、速度発電機303から得た列車30の速度が、該パタンが示す速度を超えると、常用ブレーキをかけるように制御する。これにより、列車30は、符号x3の位置を通過後、減速し、特殊信号発光機10の手前に設定された所定の停止位置Pに停車する。
【0045】
このように、本実施形態においては、保安装置の停止信号出力部としてATS−P装置の符号処理器21を利用して、距離情報L+ΔLを含む電文Mを停止信号として車上装置23に送信することによって、車上装置23が列車停止制御を行い、灯器101の故障に起因する踏切事故を防止することができる。
【0046】
3.第3の実施形態
図9は、本発明に係る保安装置の第3の実施形態の構成図である。ここで、保安装置は、踏切障害物検知装置2に付随する特殊信号発光機10を適用対象としているが、これに限定されることはない。また、既に述べた構成に関しては、その説明を省略する。
【0047】
本実施形態は、これまで例示したATS装置ではなく、ATC装置を利用して実現した保安装置の例である。ATC装置は、先行列車との間隔、及び曲線、分岐器などの進路条件に応じて、列車30の許容運転速度を示す信号を車内に連続して現示し、その信号に従って、列車30の速度を自動作用により低下させる装置である。
【0048】
ATC装置は、ATC地上装置31と、車上装置32とを含む。ATC地上装置31は、各閉塞区間1T,2Tの軌道回路331,332と接続され、一般的に、軌道回路331,332から在線情報Spを取得するとともに、軌道回路331,332に対して、先行列車や進路条件などに応じた速度制御信号Svを出力する。
【0049】
車上装置32は、受電器320を介して、速度制御信号Svを受信し、これに該当する許容運転速度を車内に現示する。許容運転速度は、所定の停止位置に向けて、閉塞区間ごとに段階的に低下するように設定される。許容運転速度は、例えば、順次に隣接する閉塞区間ごとに、90(km/h)、65(km/h)、45(km/h)、0(km/h)となる。車上装置32は、速度発電機303から得た列車30の速度が、許容運転速度を超えると、制動装置302を制御して常用ブレーキをかける。
【0050】
本実施形態の特徴は、特殊信号発光機10の故障検出装置1が出力する故障検出信号S1を、上記のATC地上装置31に入力して、車上装置32による列車停止制御の契機とした点にある。故障検出装置1は、少なくとも1個の灯器101の故障を検出したとき、故障検出信号S1をATC地上装置31に出力する。なお、故障検出装置1の構成は、既に述べたとおりである。
【0051】
図10は、ATC地上装置31の構成図である。ATC地上装置31は、複数のリレーを含む条件リレー群311と、故障検知リレー(S1R)312と、ATC信号出力部313とを含んでいる。
【0052】
条件リレー群311は、連動装置などの外部装置330から入力される複数の信号に応じて動作する。ATC信号出力部313は、条件リレー群311の接点群311aを介して複数の論理条件v1〜vnが入力され、これに基づき、各閉塞区間1T〜nTの軌道回路に適当な速度制御信号Sv(1T)〜Sv(nT)を出力する。
【0053】
この動作は、従来のATC装置の基本機能に従ったものであるが、本実施形態では、この動作に故障検知リレー(S1R)312の動作が組み込まれている。すなわち、故障検知信号S1が入力されたとき、故障検知リレー(S1R)312が動作し、ATC信号出力部313は、故障検知リレー(S1R)312の接点312aを介して、論理条件vmが入力され、他の条件v1〜vnに関わらず、列車30を所定の停止位置Pで停止させるように、閉塞区間1T,2Tの軌道回路331,332に速度制御信号Sv(1T),Sv(2T)を出力する。ここで、閉塞区間2Tは、停止位置Pが存在する区間であり、閉塞区間1Tは、列車30の進行方向Dで見て、閉塞区間2Tの手前側に隣接する区間である。もっとも、ATC信号出力部313は、故障検知リレー(S1R)312の動作時、閉塞区間1T,2Tの軌道回路331,332だけではなく、停止位置Pより手前に存在する他の1以上の閉塞区間の各軌道回路に速度制御信号Svを送信してもかまわない。
【0054】
図11は、ATC装置による列車の距離−速度グラフである。車上装置32は、閉塞区間1Tの軌道回路331から、制限速度v(km/h)を示す速度制御信号Svを受信し、閉塞区間2Tの軌道回路332から、制限速度0(km/h)を示す速度制御信号Svを受信し、点線で示されるように、これに従った制限速度が車内に現示される。車上装置32は、実線で示されるように、制限速度に基づき、常用ブレーキをかけるように制御する。これにより、列車30は、閉塞区間1Tに進入後、減速し、特殊信号発光機10の手前に設定された所定の停止位置Pに停車する。
【0055】
このように、本実施形態においては、保安装置の停止信号出力部として、ATC地上装置31のATC信号出力部313を利用し、速度制御信号Svを停止信号として車上装置32に送信することによって、車上装置32が列車停止制御を行い、灯器101の故障に起因する踏切事故を防止することができる。
【0056】
4.第4の実施形態
図12は、本発明に係る保安装置の第4の実施形態の構成図である。ここで、保安装置は、踏切障害物検知装置2に付随する特殊信号発光機10を適用対象としているが、これに限定されることはない。また、既に述べた構成に関しては、その説明を省略する。
【0057】
本実施形態は、自動閉そく装置を利用して実現した保安装置の例である。自動閉そく装置は41、列車30の在線状況に応じて、信号機42の現示を自動的に制御する装置である。
【0058】
自動閉そく装置は、閉塞区間ごとに設けられるものであるが、本実施形態に係る保安装置は、特殊信号発光機10が存在する閉塞区間2Tに設けられた自動閉そく装置41を利用する。もっとも、本発明の目的は列車30を所定の停止位置P、またはその手前に止めることであるから、利用する自動閉そく装置41は、列車30の進行方向Dで見て、特殊信号発光機10の手前に存在する何れの閉塞区間のものであってもかまわない。
【0059】
自動閉そく装置41は、閉塞区間2Tの軌道回路332から在線検知信号Spを受信し、列車30の有無などに基づいてリレー回路により信号機42の現示を制御する。
【0060】
図13は、自動閉そく装置41の構成図である。自動閉そく装置41は、在線検知リレー(TR)411と、故障検知リレー(S1R)412と、リレー回路部413とを含んでいる。軌道回路332から在線検知信号Spが入力されたとき、在線検知リレー(TR)411が動作し、リレー回路部413は、在線検知リレー(TR)411の接点411aを介して条件r1が与えられ、これに基づいて信号機42の現示を制御する。
【0061】
この動作は、従来の自動閉そく装置の基本機能に従ったものであるが、本実施形態では、この動作に故障検知リレー(S1R)412の動作が組み込まれている。すなわち、故障検知信号S1が入力されたとき、故障検知リレー(S1R)412が動作し、リレー回路部413は、故障検知リレー(S1R)412の接点412aを介して論理条件r2が入力され、他の条件r1に関わらず、信号機42を停止現示となるように制御する。信号機42は、進行方向Dで見て、特殊信号発光機10が存在する閉塞区間2Tの入口近傍に設けられているため、接近中の列車30を特殊信号発光機10の手前の位置で停止させることができる。
【0062】
このように、本実施形態においては、保安装置の停止信号出力部として自動閉そく装置41を利用して、停止信号として信号機42を停止現示にすることによって、列車30を停止させ、灯器101の故障に起因する踏切事故を防止することができる。なお、本実施形態では自動閉そく装置41を例に挙げているが、信号機を制御する連動装置を利用することによっても同様の構成を実現することができる。
【0063】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
【符号の説明】
【0064】
1 故障検出部
10 特殊信号発光機
101 灯器
110,210,313 停止信号出力部
30 列車
13,23,32 車上装置
42 信号機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
故障検出部と、停止信号出力部とを含む保安装置であって、
前記故障検出部は、特殊信号発光機の灯器の故障を検出し、
前記停止信号出力部は、前記故障が検出されたとき、列車を停止させるための停止信号を出力する、
保安装置。
【請求項2】
請求項1に記載された保安装置であって、
前記列車に設置された車上装置をさらに含み、
前記停止信号出力部は、前記車上装置に前記停止信号を送信し、
前記車上装置は、前記停止信号を受信したとき、前記列車の停止制御を行う、
保安装置。
【請求項3】
請求項2に記載された保安装置であって、
前記停止信号出力部は、ATC地上装置、またはATS地上装置に備えられている、
保安装置。
【請求項4】
請求項1に記載された保安装置であって、
前記停止信号出力部は、前記列車の進行方向で見て、前記特殊信号発光機より手前に植設された信号機と、前記信号機の現示を制御する制御部とをさらに含み、
前記制御部は、前記故障が検出されたとき、前記信号機を停止現示とする、
保安装置。
【請求項5】
請求項4に記載された保安装置であって、
前記制御部は、自動閉塞装置、または連動装置である、
保安装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate