説明

保形バッグならびにこれを用いた補装具および身体採型具

【課題】バッグや粒子等の素材を用途に合わせて適宜選択でき、使用者への身体的および経済的負担を軽減することが可能で、汎用性が高い保形バッグならびにこれを用いた補装具および身体採型具を提供する。
【解決手段】気密性および弾性を有するバッグの内部に保形用粒子が充填されてなり、前記内部を陰圧に保持することにより、前記バッグの形状が保持されるようにしたことを特徴とする、保形バッグならびにこれを用いた補装具および身体採型具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保形バッグならびにこれを用いた補装具および身体採型具に関する。
【背景技術】
【0002】
補装具は、身体障害者等の日常生活や社会生活の質の向上を図るために、損傷や損失した身体機能を補う用具である。また、障害者リハビリテーションの柱の一つである代償能力を獲得するための重要な手段となるものである。補装具としては、例えば、義手や義足等の義肢、義眼や眼鏡等の視覚障害者用補装具、補聴器等の聴覚障害者用補装具等が挙げられる。
【0003】
このうち義肢は、一般的に切断端や切除端等を収納するソケット、支持部、足先部(または手先部)、これらを連結させるアダプター(継手)等から構成されている。ただし、下肢切断端は、筋肉の収縮や歩行時の加重によって変形し、ソケット内で動いて痛みを伴うことがある。そこで、義足においては、切断端等をソケット内に固定するために、一般的には、フェルトやスポンジ等を用いたソフトインサート(クッション)や、シリコーンやポリマーゲル等を用いたライナーを、切断端等とソケットとの間に介在させている。
【0004】
通常、切断端等の形状および周径が完全に安定するには時間を要するので、本義肢、特にソケットは、切断端等の形状等が完全に安定した後に、義肢装具士によって製作される。ただし、切断端等の形状等が不安定であっても、患者が早期に社会復帰を果たすためには歩行訓練等のリハビリを行う必要があるので、切断端等の形状等が安定するまでの間は訓練用仮義肢を用いている。
【0005】
しかしながら、切断端等の形状等に合うようにソケットを製作するためには、適切な整合性が得られるまで何度も作り直す必要があるところ、訓練用仮義肢は短期間で不適合になるので、製作工程の煩雑化を招いていた。さらに、義肢装具士や患者の肉体的・精神的負担を増大させていた。
【0006】
そこで、本願発明者は、切断端等とソケットとの間に介在させるライナーとして使用でき、ソケットを製作し直さなくても切断端等に適合するように、ソケット内部形状を容易に調整するのに用いることが可能な採型用陰圧粒子バッグを先に提案した(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−265507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本願発明者が先に提案した採型用陰圧粒子バッグは、このバッグとソケットとが一体的に構成され、両者は分離不可能であるので、切断端等の採型、または、訓練用仮義肢への適用に限定されていた。
【0008】
また、このバッグは、内膜と外膜とが分離されたバッグ内に粒子が充填されるように構成されているので、切断端等へ装着させる、あるいは切断端等から外す場合には、切断端等を下に向けた状態で行う必要があり、患者にかかる身体的負担が大きいという問題があった。また、上記のように構成されているため、適度な重量を持った粒子でないと充填できず、使用する粒子が限定されていた。
【0009】
さらに、このバッグは、身体への密着性を高めるためのエアバッグが、バッグの外膜の内側に配設して構成されており、重量があるので日常生活では使いにくいという問題点があった。また、上記のように構成されているため、構成の複雑化を招き、それに伴う経済的負担を増加させていた。
【0010】
したがって、本発明の目的は、バッグや粒子等の素材を用途に合わせて適宜選択でき、使用者への身体的および経済的負担を軽減することが可能で、汎用性が高い保形バッグならびにこれを用いた補装具および身体採型具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者は、斯かる従来技術の問題点に鑑み、保形バッグならびにこれを用いた補装具および身体採型具の構成や使用する素材について鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成した。
【0012】
(1)すなわち、本発明は、気密性および弾性を有するバッグの内部に保形用粒子が充填されてなり、前記内部を陰圧に保持することにより、前記バッグの形状が保持されるようにしたことを特徴とする、保形バッグである。
【0013】
(2)本発明は、また、前記保形用粒子は、軟質性粒子である、(1)に記載の保形バッグである。
【0014】
(3)本発明は、また、前記軟質性粒子は、発泡ポリスチレン粒子、発泡ポリエチレン粒子、発泡ウレタン粒子、発泡ゴムもしくは大鋸屑の単体またはこれらの組み合わせである、(2)に記載の保形バッグである。
【0015】
(4)本発明は、また、前記軟質性粒子は、かさ密度が0.5g/cc以下、粒径が0.3〜3.0mm、およびアスペクト比が1.0〜3.0である、(2)または(3)に記載の保形バッグである。
【0016】
(5)本発明は、また、前記保形用粒子は、硬質性粒子である、(1)に記載の保形バッグである。
【0017】
(6)本発明は、また、前記硬質性粒子は、セラミック粒子、アクリルビーズ、ガラスビーズ、シリカ粒子、ポリプロピレン粒子、ポリエチレン粒子もしくはポリスチレン粒子の単体またはこれらの組み合わせである、(5)に記載の保形バッグである。
【0018】
(7)本発明は、また、前記硬質性粒子は、かさ密度が1.5g/cc以下、粒径が0.3〜1.5mm、およびアスペクト比が1.0〜1.5である、(5)または(6)に記載の保形バッグである。
【0019】
(8)本発明は、また、前記陰圧は、−100〜−5kPaである、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の保形バッグである。
【0020】
(9)また、本発明は、前記バッグの一部に前記内部を脱気するための脱気口を備える、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の保形バッグである。
【0021】
(10)本発明は、また、前記脱気口は、逆流防止機構を備える、(9)に記載の保形バッグである。
【0022】
(11)本発明は、また、前記脱気口は、内部圧力調整機構を備える、(9)または(10)に記載の保形バッグである。
【0023】
(12)本発明は、また、前記バッグの素材は、サーモプラスチックエラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム、エチレンプロピレンゴム、塩化ビニルゴム、クロロプレーンゴムもしくはポリウレタンゴムの単体またはこれらの組合せからなる、(1)〜(11)のいずれか1項に記載の保形バッグである。
【0024】
(13)本発明は、また、前記バッグの形状は、略棒状、略円柱状、略直方体状、略楕円体状、略球状、略板状、略円盤状、略円環状または略円筒状である、(1)〜(12)のいずれか1項に記載の保形バッグである。
【0025】
(14)本発明は、また、前記バッグの形状は、略円環状または略円筒状であり、所定部分の厚みが他の部分の厚みよりも大きく形成されていることを特徴とする、(13)に記載の保形バッグである。
【0026】
(15)また、本発明は、前記バッグの内部に通気性および伸縮性を有するインナーバッグを備え、前記保形用粒子は、前記インナーバッグの内部に充填されていることを特徴とする、(1)に記載の保形バッグである。
【0027】
(16)本発明は、また、前記バッグは、最内層に設けられた第1のバッグと、最外層に設けられた第2のバッグとからなり、前記インナーバッグは、前記第1のバッグと第2のバッグとから形成される中間層に備えられていることを特徴とする、(15)に記載の保形バッグである。
【0028】
(17)また、本発明は、前記第1のバッグと前記インナーバッグと前記第2のバッグとがそれぞれ独立して構成され、前記第1のバッグ、前記インナーバッグおよび前記第2のバッグを、順次身体に装着するようにしたことを特徴とする、(16)に記載の保形バッグである。
【0029】
(18)また、本発明は、前記第2のバッグの一部に前記中間層を脱気するための脱気口を備える、(16)または(17)に記載の保形バッグである。
【0030】
(19)また、本発明は、前記バッグを身体に固定するための固定手段をさらに有する、(1)〜(18)のいずれか1項に記載の保形バッグである。
【0031】
(20)また、本発明は、(1)〜(19)のいずれか1項に記載の保形バッグを用いた補装具である。
【0032】
(21)また、本発明は、ギプス、圧迫包帯、コルセットもしくは頚椎カラーの代替品、頭部保護帽、関節固定具、放射線治療用姿勢固定具、レントゲン装置、コンピュータ断層撮影装置もしくは磁気共鳴映像装置の撮影用姿勢固定具、義肢用ライナー、スポーツ用サポーターまたは防具である、(20)に記載の補装具である。
【0033】
(22)本発明は、また、前記防具は、ヘルメット、ショルダーガード、エルボーパッド、ニーパッド、シンガード、ボクシンググローブ、オープンフィンガーグローブまたはレガースである、(21)に記載の補装具である。
【0034】
(23)また、本発明は、(1)〜(19)のいずれか1項に記載の保形バッグを用いた身体採型具である。
【0035】
(24)さらに、本発明は、義肢用ソケット、特殊メイク製作用である、(23)に記載の身体採型具である。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、ソケットと一体的に構成されておらず、保形バッグ単体で使用することができるので、採型だけでなく、他の用途にも適用することができる。また、切断端等を下に向けた状態でなくとも、体位(立位、座位および臥位)によらずに保形バッグを切断端等に滑り込ませて装着させることができ、また、これを外すことも容易である。さらに、保形バッグの一部に備わった脱気口に逆流防止機構または内部圧力調整機構を備えることができるので、陰圧を緩めることにより、保形バッグ全体の形状を徒手でも調整することができる。
【0037】
また、本発明によれば、充填される保形用粒子として、軟質性粒子および硬質性粒子のいずれかを選択して用いることができるので、様々な用途に適用することができ、また、同様の用途であっても、使用者の特性(年齢、性別、疾病の有無、病状等)に最適な保形バッグを提供することができる。
【0038】
さらに、本発明によれば、保形バッグの構成が簡易であるので、エアバッグ等の付随部品等による経済的負担も軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0040】
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる保形バッグ10の構成を模式的に示した図であり、(a)は保形バッグ10の斜視図、(b)はそのA−A′断面図である。図1(a)、(b)に示すように、保形バッグ10は略棒状の形状であり、その内部には保形用粒子11が充填され、その一部には内部を脱気するための脱気口12が設けられている。また、脱気口12は、保形バッグ10の内部に空気が流入しないようにするための逆流防止弁13を備えている。
【0041】
ただし、本発明の保形バッグ10の形状は、図1(a)に示す略棒状に限らず、例えば、図2(a)に示す略円柱状、図2(b)に示す略直方体状、図2(c)に示す略楕円体状、あるいは図2(d)に示す略球状等であってもよく、用途に応じて使い分けることができる。
【0042】
また、本発明で利用可能な素材としては、その形状を保持するために内部を陰圧に保持するので、少なくとも空気の流出入を制限し得る気密性と、充填された保形用粒子11を内部に保持して装着部位に適合する形状を保持し得る強度と、保形バッグ10の内部が陰圧に保持されてもシワ等が生じない程度の弾性とを有していることが望ましい。このような特性を有する素材としては、例えばサーモプラスチックエラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム、エチレンプロピレンゴム、塩化ビニルゴム、クロロプレーンゴム、ポリウレタンゴム等の単体またはこれらの組み合わせが挙げられ、これらの中では、特にサーモプラスチックエラストマー、ラテックスゴム等が好適に利用される。
【0043】
本発明で利用可能な保形用粒子11には、大別すると、軟質性粒子と硬質性粒子とがある。ここで、『軟質性粒子』とは、塑性変形しやすく柔らかい粒子であり、保形バッグ10の内部に、後述する所定の陰圧を印加しても粉砕されない程度の強度を有しているものである。
【0044】
本発明で利用可能な軟質性粒子としては、例えば、発泡ポリスチレン粒子、発泡ポリエチレン粒子、発泡ウレタン粒子,発泡ゴム等の発泡プラスチック粒子、大鋸屑等の単体またはこれらの組み合わせが挙げられ、これらの中では、特に、発泡ポリスチレンが等好適に利用される。
【0045】
これらの粒子は、まず、かさ密度(見かけ密度)が0.5g/cc以下、特に0.1g/cc以下であることが好ましい。なぜならば、かさ密度が0.5g/ccを超えると、粒子自体の伸縮性が高くなり、身体を圧迫しすぎてしまうので好ましくないからである。また、粒径が0.3〜3.0mm、特に0.3〜1.5mmであることが好ましい。すなわち、粒径が3.0mmを超えると、粒子自体の伸縮性が高くなり、身体を圧迫しすぎてしまうので好ましくなく、また、粒径が0.3mm未満になると、後述するインナーバッグ(第4の実施形態参照)の繊維目から粒子が飛散するので好ましくない。さらに、アスペクト比が1.0〜5.0、特に1.0〜3.0であることが好ましい。なぜならば、アスペクト比が上記範囲を外れると、保形バッグ10を装着した際に、粒子分布を任意に調整することが困難になるので好ましくないからである。
【0046】
また、保形バッグ10を装着する際、身体部位を収納する容積を確保するため、軟質性粒子の充填量は、見かけ体積で保形バッグ10の容積の8〜9割程度であることが好ましい。また、充填される軟質性粒子は、保形バッグ10の内部で偏析しなければ、2種類以上であってもよい。複数種の粒子を充填する際には、剛性特性が一定に保持されるように、粒子同士のかさ密度、粒径およびアスペクト比が同等のものを選択することが好ましい。
【0047】
一方、『硬質性粒子』とは、塑性変形しにくく硬い粒子であり、保形バッグ10の内部に、後述する所定の陰圧を印加しても、粉砕されない程度の強度を有しているものである。
【0048】
本発明で利用可能な硬質性粒子としては、例えば、セラミック粒子、アクリルビーズ、ガラスビーズ、シリカ粒子、ポリプロピレン粒子、ポリスチレン粒子、ポリエチレン粒子等の単体またはこれらの組み合わせが挙げられ、これらの中では、特に、セラミック粒子、ポリスチレン粒子等が好適に利用される。
【0049】
これらの粒子は、まず、かさ密度が1.5g/cc以下、特に0.8g/cc以下であることが好ましい。かさ密度が1.5g/ccを超えると、装着時の保形バッグ10が重くなり過ぎるので好ましくないからである。また、粒径が0.3〜1.5mm、特に0.3〜1.0mmであることが好ましい。すなわち、粒径が1.5mmを超えると、保型バッグ10の表面粗さが大きくなるので好ましくなく、粒径が0.3mm未満になると、後述するインナーバッグの繊維目から粒子が飛散するので好ましくない。さらに、アスペクト比が1.0〜2.0、特に1.0〜1.5であることが好ましい。アスペクト比が上記範囲を外れると、軟質性粒子と同様に、粒子分布を任意に調整することが困難になるからである。
【0050】
また、保形バッグ10に適用部位を収納する容積を確保するため、硬質性粒子の充填量は、見かけ体積で保形バッグ10の容積の6〜8割程度であることが好ましい。また、充填される硬質性粒子は、軟質性粒子と同様に、2種類以上であってもよい。複数種の粒子を充填する際には、軟質性粒子と同様に、粒子同士のかさ密度等が同等のものを選択することが好ましい。
【0051】
本発明の逆流防止弁13の構造および素材は、保形バッグ10の内部を陰圧に保持し、その形状を保持することができるものであれば特に限定されず、既知の構造および素材を利用することができる。また、逆流防止弁13は、脱気口12を開閉して内部圧力を調整することができる機構、例えば、開閉バルブや開閉コック等を備えてもよい。ただし、開閉バルブ等を備えなくてもよく、用途に応じて適宜選択することができる。
【0052】
本発明の保形バッグ10は、その内部を陰圧に保持することにより、その形状が保持されるという特徴を有する。したがって、軟質性粒子または硬質性粒子を充填した保形バッグ10に印加する陰圧は、ゲージ圧で−100〜−5kPa、特に−100〜−80kPaであることが好ましい。すなわち、印加陰圧が上記下限値を下回ると、粒子の過度な変形によって保形バッグ10と装着部位との適合性に問題が生じたり、粒子の粉砕によって保形バッグ10が機能しなくなったりする可能性があり、好ましくない。また、印加陰圧が上記上限値を上回ると、保形バッグ10と装着部位との密着度に問題が生じ、保形バッグ10が機能しなくなる可能性があるので好ましくない。
【0053】
次に、本発明の第1の実施形態にかかる保形バッグ10の用途および使用方法について説明する。
【0054】
本発明の第1の実施形態にかかる保形バッグ10は、補装具や身体採型具等として利用することができる。ここで、本発明でいう『補装具』とは、失われた身体部位や、損なわれた機能を代償または補償し、身体に装着または着用して、日常生活、職場、学校等で使用するものの総称であり、『義肢』と『装具』とが含まれる。『義肢』とは、腕(上肢)や脚(下肢)を失った患者が装着し、失われた外観や動きを取り戻すための器具機械であり、『装具』とは、腕、脚、あるいは胴体(体幹)の働きや動きに障害のある患者または健常者が装着し、患部または身体の保護、回復の補助、変形の防止、運動の補助等を目的として使用するものである。
【0055】
本発明の保形バッグ10が適用可能な補装具としては、例えば、ギプス、圧迫包帯、コルセットもしくは頚椎カラーの代替品、頭部保護帽、関節固定具、放射線治療用姿勢固定具、レントゲン装置、コンピュータ断層撮影装置もしくは磁気共鳴映像装置の撮影用姿勢固定具、義肢用ライナー、スポーツ用サポーター、防具が挙げられる。また、防具としては、例えば、ヘルメット、ショルダーガード(肩当て)、エルボーパッド(肘当て)、ニーパッド(膝当て)、シンガード(サッカー等で用いる臑当て)、ボクシンググローブ、オープンフィンガーグローブ、レガース(格闘技等で用いる膝から臑にかけて保護する防具)等が挙げられる。
【0056】
一方、本発明でいう『身体採型具』とは、義肢や装具を作るために必要な部位の型をとる際に用いる道具である。従来は、この身体採型具として、ギプス(患部が動かないように固定・保護し安静を保つ為に用いられる包帯材料または包帯法の略称)を用い、採型を行っていた。身体採型具としてギプスを用いた従来の採型方法を以下に示す。
【0057】
(i)装具を作ろうとする部位のサイズを測ってマーキングを行い、ギプスを切り取る際のラインとして、数箇所に紐を沿わせておく。
【0058】
(ii)石膏を含ませたギプス包帯を水または微温湯に浸けて絞り、ほぐしてから巻き付ける。
【0059】
(iii)できるだけ均一のテンションで巻き付ける。
【0060】
(iv)石膏が固まるまで待つ。
【0061】
(v)石膏が固まった後に紐を引っ張り、カッターナイフでギプスを切り取る。
【0062】
(vi)とれた型を元に、義肢装具士が義肢や装具を製作する。
【0063】
しかし、ギプスを用いた採型においては、石膏が固まるまでに時間を要し、また、ギプスの再利用は不可能であった。これに対し、本発明の保形バッグ10を身体採型具のギプスの代替品として用いることにより、内部を陰圧に保持することで、瞬時に固めることができ、内部を陽圧に保持することで、固化前の状態に戻すことができるので、何度でも再利用が可能になったものである。また、操作が簡易であるので、採型を短時間で行うことができるようになったり、身体部位のどこにでも密着させることができるので、従来では採型を行うことが難しかった部位、例えば肩や顔等の型取りを行うことが可能になったものである。
【0064】
すなわち、本発明の保形バッグ10の適用可能な身体採型具としては、例えば、義肢用ソケット、特殊メイク(映画等の撮影のために用いられる特殊メイクを行う際の顔等の型取り)等の製作用採型具等が挙げられる。
【0065】
図3は、保形バッグ10の使用方法を模式的に示した図であり、(a)は保形バッグ10を上肢40に装着途中の状態を示す図であり、(b)は保形バッグ10を上肢40に装着後の状態を示す図である。
【0066】
まず、図3(a)に示すように、使用者の上肢40を、硬質性粒子を充填した保形バッグ10に滑り込ませ、図3(b)に示すように、固定させたい部位全体を覆うようにして保形バッグ10を装着する。次いで、真空チューブ等の接続部品(図示せず。)を介して、真空ポンプ等の真空排気装置(図示せず。)と、保形バッグ10に備えられた逆流防止弁13とを接続する。その後、保形バッグ10の内部に陰圧を印加し、保形バッグ10を固化しながら上肢40に密着固定させる。
【0067】
このようにして上肢40に固定された保形バッグ10は、骨折や靭帯損傷等の治療において、上肢40が動かないよう外から固定および保護し、安静を保つことができるので、例えば、補装具の一種であるギプスの代替品として利用することができる。ただし、上肢40の状態によっては、軟質性粒子を充填した保形バッグ10を用いてもよいし、頭部、体幹部、下肢等に適用してもよい。
【0068】
上述したとおり、硬質性粒子を充填した保形バッグ10は、陰圧を印加しても粒子が変形しないので、固定部位を圧迫することがない。したがって、固定部位を圧迫せずに固定、保護および矯正したい場合に適している。また、軟質性粒子を充填した保形バッグ10は、陰圧を印加すると粒子が収縮して変形し、保形バッグ10も収縮するので、硬質性粒子を充填した保形バッグ10と比較して、固定部位を最大約10kPaで圧迫することができる。したがって、固定部位を圧迫しながら固定、保護および矯正したい場合に適している。ただし、固定部位の状態等を考慮して、圧迫度合いを適宜調節することができる。
【0069】
図4は、保形バッグ10の他の使用方法を模式的に示した図であり、(a)は保形バッグ10を下肢41に装着途中の状態を示す図であり、(b)は保形バッグ10を下肢41に装着後の状態を示す図である。
【0070】
まず、図4(a)に示すように、使用者の下肢41を、硬質性粒子を充填した保形バッグ10に滑り込ませ、図4(b)に示すように、固定させたい部位全体を覆うようにして保形バッグ10を装着する。次いで、上述した方法と同様にして陰圧を印加し、保形バッグ10を固化しながら下肢41に密着固定させる。
【0071】
このようにして下肢41に固定された保形バッグ10は、捻挫、脱臼、骨折、軟骨損傷、靱帯損傷、肉離れ、腱断裂、脳震盪、脳挫傷、皮膚の創傷等による出血や滲出液の放出等の治療において、下肢41が動かないよう外から圧迫および固定し、過剰な出血や滲出液の放出等を防ぐことができるので、例えば、補装具の一種である圧迫包帯の代替品として利用することができる。ただし、下肢41の状態によっては、軟質性粒子を充填した保形バッグ10を用いてもよいし、下肢41に限らず、頭部、体幹部、上肢等に適用してもよい。
【0072】
図5は、保形バッグ10の他の使用方法を模式的に示した図であり、(a)は保形バッグ10を頸部42に装着途中の状態を示す図であり、(b)は保形バッグ10を頸部42に装着後の状態を示す図である。
【0073】
まず、図5(a)に示すように、硬質性粒子を充填した保形バッグ10を使用者の頸部42に巻きつけ、図5(b)に示すように、固定させたい部位全体を覆うようにして保形バッグ10を装着する。次いで、上述した方法と同様にして陰圧を印加し、保形バッグ10を固化しながら頸部42に密着固定させる。
【0074】
このように、頸部42に固定させた保形バッグ10は、頸椎椎間板ヘルニア、むち打ち症、頸椎椎間板症等の治療において、頸部42が動かないよう外から固定および保護し、頭部の支持、頸椎の運動制限、頸椎の良肢位の維持および矯正等を行うことができるので、例えば、補装具の一種である頸椎カラーの代替品として利用することができる。ただし、頸部42の状態によっては、軟質性粒子を充填した保形バッグ10を用いてもよいし、頸部42以外の部位、例えば体幹部等に適用してもよい。なお、体幹部に固定された保形バッグ10は、腰痛または脊椎の骨折(圧迫骨折)、椎間板ヘルニアの治療、あるいは脊椎側彎症や脊椎骨折等の手術後の治療において、補装具の一種であるダーメンコルセット(コルセットともいう。)等の体幹装具や硬性装具の代替品として利用することができる。
【0075】
図6は、保形バッグ10の他の使用方法を模式的に示した図であり、(a)は保形バッグ10を頭部43に装着途中の状態を示す図であり、(b)は保形バッグ10を頭部43に装着後の状態を示す図である。
【0076】
まず、図6(a)に示すように、硬質性粒子を充填した保形バッグ10を使用者の頭部43に被せ、図6(b)に示すように、固定させたい部位全体を覆うようにして保形バッグ10を装着する。次いで、上述した方法と同様にして陰圧を印加し、保形バッグ10を固化しながら頭部43に密着固定させる。
【0077】
このように、頭部43に固定させた保形バッグ10は、平衡機能障害、下肢または体幹機能障害等による転倒時の頭部保護を行うことができるので、例えば、補装具の一種である頭部保護帽として利用することができる。ただし、使用者の状態によっては、軟質性粒子を充填した保形バッグ10を用いてもよいし、頭部43に限らず、顔部や頸部等に保護範囲を広げて同時に適用してもよい。
【0078】
図7は、図3と同様の保形バッグ10の他の使用方法を模式的に示した図であり、頭部43に装着させた使用者を撮影台50上に寝かせた状態を示した図である。
【0079】
まず、図6(a)に示すように、軟質性粒子を充填した保形バッグ10を使用者の頭部43に被せ、図6(b)に示すように、固定させたい部位全体を覆うようにして保形バッグ10を装着する。次いで、図7に示すように、保形バッグ10を装着させた使用者を撮影台50上に寝かせ、上述した方法と同様にして陰圧を印加し、保形バッグ10を固化しながら頭部43に密着固定させる。
【0080】
このように、頭部43に固定させた保形バッグ10は、頭部43が動かないよう外から固定することができるので、例えば、放射線治療時もしくはレントゲン装置、コンピュータ断層撮影装置または磁気共鳴映像装置の撮影時において、補装具の一種である姿勢固定具として利用することができる。ただし、使用者の状態等によっては、硬質性粒子を充填した保形バッグ10を用いてもよいし、頭部43に限らず、体幹部、上肢、下肢等に適用してもよい。
【0081】
図8は、保形バッグ10の他の使用方法を模式的に示した図である。すなわち、これは、保形バッグ10を義肢用ライナーとして、義足用ソケット51,52および義手用ソケット53の内部に設置した状態を模式的に示した図であり、(a)は義肢用ライナー51,52を下腿切断端44,45に装着後の状態を示した図であり、(b)は義肢用ライナー53を上腿切断端46に装着後の状態を示した図である。
【0082】
まず、患者の下腿切断端44,45および上腿切断端46を、軟質性粒子を充填した保形バッグ10にそれぞれ滑り込ませ、断端全体を覆うようにして保形バッグ10をそれぞれ装着する。次いで、上述した方法と同様にして陰圧を印加し、保形バッグ10を固化しながら下腿切断端44,45および上腿切断端46にそれぞれ密着固定させる。その後、図8(a)〜(c)に示すように、保形バッグ10を固定した下腿切断端44,45および上腿切断端46を、義足用ソケット51,52および義手用ソケット53の内部にそれぞれ挿入する。ただし、保形バッグ10の密着が不十分だと感じる場合は、陰圧を緩めて、あるいは徒手で保形バッグ10を押して、それぞれ内部の圧力調整を行い、再度保形バッグ10を固定した下腿切断端44,45および上腿切断端46を、義足用ソケット51,52および義手用ソケット53の内部にそれぞれ挿入する。
【0083】
このように、下腿切断端44,45および上腿切断端46に固定させた保形バッグ10は、補装具の一種である義肢用ライナーとして利用することができる。ただし、下腿切断端44,45および上腿切断端46の状態によっては、硬質性粒子を充填した保形バッグ10を用いてもよいし、下腿切断端44,45および上腿切断端46に限らず、肩甲胸郭間切断端等に適用してもよい。
【0084】
一方、義肢は従来から次の手順で製作されている。
【0085】
(i)患者の切断端等を石膏付きギプス包帯で採型し、陰性モデル(雌型)を製作する。
【0086】
(ii)陰性モデルに石膏を充填して陽性モデル(石膏雄型)を製作し、陽性モデルを修正した後、陽性モデルからチェック用のソケット(樹脂製雌型)を製作する。
【0087】
(iii)訓練用ソケットを義肢用部品である義肢用アダプターと連結して訓練用仮義肢を製作し、患者に訓練用仮義肢を装着させ、試用する。
【0088】
(iv)熱処理、パテ塗り、切削等の各工程で訓練用仮義肢を修正し、試用で判った欠陥を解消する。
【0089】
(v)試用して欠陥がなければ、訓練用仮義肢から陽性モデル(雄型)を再度製作し、本義肢を製作する。
【0090】
しかし、切断端等の形状および周径は、切断直後から変化するため、訓練用仮義肢は短期間で不適合になり、本義肢を製作できるようになるまで、何回か作り直すことが一般的であり、製作工程が煩雑だった。これに対し、訓練用仮義肢および本義肢製作工程において、本発明の保形バッグ10を身体採型具のギプスの代替品として用いることにより、上述したように、再利用および短時間での採型が可能となったので、切断端等の形状等が時間の経過とともに変化し続けたとしても、訓練用仮義肢等の製作時間を短縮することが可能になったものである。
【0091】
すなわち、本発明の保形バッグ10は、訓練用仮義肢や本義肢等に利用される義肢用ライナー等の作製用身体採型具に適用することができるものである。
【0092】
図9は、保形バッグ10の他の使用方法を模式的に示した図である。すなわち、図3は、保形バッグ10を用いて下腿切断端44の採型を行い、訓練用ソケットの陰性モデル54を製作する際の手順を模式的に示した図であり、(a)は保形バッグ10を下腿切断端44に装着途中の状態を示す図であり、(b)は保形バッグ10を下腿切断端44に装着後の状態を示す図であり、(c)は保形バッグ10を用いて製作した訓練用ソケットの陰性モデル54を示す模式図である。
【0093】
まず、図9(a)に示すように、患者の下腿切断端44を、硬質性粒子を充填した保形バッグ10に滑り込ませ、図9(b)に示すように、採型したい部位全体を覆うようにして保形バッグ10を装着する。次いで、上述した方法と同様にして陰圧を印加し、保形バッグ10を固化しながら下腿切断端44に密着固定させる。その後、固定した保形バッグ10を、形が崩れないように注意しながら、下腿切断端44から引き抜く。
【0094】
このようにして下腿切断端44から引き抜かれた保形バッグ10は、図9(c)に示すように、訓練用ソケットの陰性モデル54等の身体採型具として、訓練用ソケットや本義足用ソケットを製作する際に用いることができる。また、下腿切断端44に限らず、肩甲胸郭間切断、肩関節離断、上腕切断、肘関節離断、上腕切断、前腕切断、手関節離断、手根中手切断、指切断、片側骨盤切除、股関節離断、大腿切断、股関節離断、膝関節離断、サイム切断、ピロゴフ切断、ボイド切断、ショパール切断、リスフラン切断、中足骨切断、足指切断等の義肢製作に適用してもよい。
【0095】
なお、本発明の保形バッグ10を作製用身体採型具に適用した場合には、保形バッグ10に軟質性粒子を充填することは好ましくない。軟質性粒子は、上述したとおり、陰圧を印加すると粒子が収縮して変形し、切断端を保形バッグ10から脱離すると切断端を圧迫して釣り合っていた力のバランスが崩れて保形バッグ10が収縮するため、切断端の形状を厳密に再現しなければならない採型用途には不向きだからである。
【0096】
以下、本発明の保形バッグの他の実施形態について説明するが、本発明の第1の実施形態で説明したものについてはその説明を省略し、第1の実施形態との相違点のみを説明する。
【0097】
図10は、本発明の第2の実施形態にかかる固定具付保形バッグ60の構成を模式的に示した斜視図である。図10に示すように、固定具付保形バッグ60は、保形バッグ20と固定具55とを備えている。保形バッグ20は、図11(a)に示すように略板状の形状であり、上述した第1の実施形態にかかる保形バッグ10と同様に、その内部には保形用粒子(図示せず。)が充填され、保形バッグ20の一部には脱気口22が設けられ、また、脱気口22には逆流防止弁13を備えられている。さらに、保形バッグ10とは異なり、固定具付保形バッグ60は、固定具55の内部壁面の一部に設けられている。
【0098】
本発明の保形バッグ20の形状は、図11(a)に示す略板棒状に限らず、例えば、図11(b)に示す略円盤状等であってもよく、用途に応じて使い分けることができる。
【0099】
また、本発明の保形バッグ20の素材、本発明で利用可能な保形用粒子、逆流防止弁23の構造および素材、ならびに保形バッグ20に印加する陰圧については、本発明の第1の実施形態にかかる保形バッグ10と同様のものを用いることができる。
【0100】
本発明の固定具55の構造および素材は、伸縮性および通気性を有していれば特に限定されず、用途に応じて適宜選択することができる。すなわち、伸縮性を有していれば、関節等の動きがある部位にも固定具付保形バッグ60を装着させることができ、通気性を有していれば、汗等の水分を蒸発させることができる。このような特性を有する素材としては、ナイロン、アクリル、ポリウレタン、コットン、レーヨン等の単体またはこれらの組み合わせ等が挙げられる。なお、用途に応じて、保湿性等の他の特性を付与させてもよい。
【0101】
次に、本発明の第2の実施形態にかかる固定具付保形バッグ60の用途および使用方法について説明する。本発明の第2の実施形態にかかる固定具付保形バッグ60は、上述した補装具等として利用することができる。
【0102】
図12は、図10示す固定具付保形バッグ60を固化し、上肢40の肘部に密着固定させた後の状態を模式的に示した図である。
【0103】
まず、図12に示すように、軟質性粒子を充填した保形バッグ20を上肢40の肘部全体を覆うように装着し、固定具55を用いて固定する。次いで、上述した方法と同様にして陰圧を印加し、保形バッグ20を固化しながら上肢40の肘部に密着固定させる。
【0104】
このように、上肢40の肘部に固定させた固定具付保形バッグ60は、ローラースケート等の運動、もしくは平衡機能障害、下肢または体幹機能障害等による転倒時の衝撃を和らげ、肘部を保護することができるので、例えば、スポーツ用サポーターの一種である肘関節部保護用サポーターや、防具の一種であるエルボーパッドとして利用することができる。ただし、状況によっては、硬質性粒子を充填した保形バッグ20を用いてもよいし、上肢40の肘部に限らず、図13,14に示すように、下肢41の膝部や脛部に適用してもよいし、頭部、肩峰、手等に適用してもよい。なお、下肢41の膝部や脛部に固定された固定具付保形バッグ60は、スポーツ用サポーターの一種である膝関節部保護用サポーターや、防具の一種であるニーパッド、さらに、ヘルメット、肩関節部保護用サポーターまたはショルダーガード、ボクシンググローブ、オープンフィンガーグローブ等として利用することもできる。また、使用者の体格や適用部位に応じて、固定具55の寸法を適宜設計してもよい。
【0105】
図15は、本発明の第3の実施形態にかかる保形バッグ30の構成を模式的に示した図であり、(a)は保形バッグ30の斜視図、(b)はそのB−B′断面図である。図14(a)、(b)に示すように、保形バッグ30は、その形状が略円筒状である以外は、本発明の第1の実施形態にかかる保形バッグ10と同様の構成である。
【0106】
本発明の保形バッグ30の形状は、図15(a)に示す略円筒状に限らず、例えば、図16(a)に示す中空部が偏心した略円筒状、図16(b)に示す略円環状、図16(c)に示す中空部が偏心した略円環状等であってもよく、保形バッグ10と同様に、用途に応じて使い分けることができる。
【0107】
また、本発明で利用可能な保形用粒子31および保形バッグ30の素材、逆流防止弁33の構造および素材、ならびに保形バッグ30に印加する陰圧については、保形バッグ10と同様のものを用いることができる。ただし、保形用粒子31は、保形バッグ30の内部に均等に分散されていなくてもよく、用途に応じて内部の一部に偏在させてもよい。
【0108】
次に、本発明の第3の実施形態にかかる保形バッグ30の用途および使用方法について説明する。本発明の第3の実施形態にかかる保形バッグ30は、補装具等として利用することができる。
【0109】
図17は、保形バッグ30の使用方法を模式的に示した図であり、(a)は保形バッグ30を上肢40に装着後の状態を示す図であり、(b)は保形バッグ30を下肢41に装着後の状態を示す図である。
【0110】
まず、使用者の上肢40または下肢41を、硬質性粒子を充填した保形バッグ30にそれぞれ滑り込ませ、図17(a)、(b)に示すように、固定させたい部位全体を覆うようにして保形バッグ30をそれぞれ装着する。次いで、上述した方法と同様にして陰圧を印加し、保形バッグ30を固化しながら上肢40または下肢41にそれぞれ密着固定させる。
【0111】
このようにして、上肢40または下肢41にそれぞれ固定された保形バッグ30は、本発明の第1の実施形態の保形バッグ10と同様に、例えば、補装具の一種であるギプスや圧迫包帯の代替品として、それぞれ利用することができる。ただし、上肢40または下肢41の状態によっては、軟質性粒子を充填した保形バッグ30を用いてもよいし、上肢40または下肢41に限らず、頭部や体幹部、手首、足首等に適用してもよい。また、上記の保形バッグ10等と同様に、保形バッグ30を、頭部保護帽や関節固定具の代替品として利用してもよい。
【0112】
図18は、保形バッグ30の他の使用方法を模式的に示した図であり、保形バッグ30を頸部42に装着後の状態を示す図である。また、図19は、保形バッグ30のさらに他の使用方法を模式的に示した図であり、(a)は保形バッグ30を体幹47に装着後の状態を示す図であり、(b)は保形バッグ30を体幹48に装着後の状態を示す図である。
【0113】
まず、硬質性粒子を充填した保形バッグ30を、使用者の頭部43から被って頸部42または体幹47,48までそれぞれ引き下げ、図18または図19(a)、(b)に示すように、固定させたい部位全体を覆うようにして保形バッグ30をそれぞれ装着する。次いで、上述した方法と同様にして陰圧を印加し、保形バッグ30を固化しながら頸部42または体幹47,48にそれぞれ密着固定させる。
【0114】
このように、頸部42または体幹47,48にそれぞれ固定させた保形バッグ30は、本発明の第1の実施形態の保形バッグ10と同様に、例えば、補装具の一種である頸椎カラー、ダーメンコルセットや硬性装具の代替品として、それぞれ利用することができる。ただし、頸部42または体幹47,48の状態によっては、軟質性粒子を充填した保形バッグ30を用いてもよい。
【0115】
図20は、保形バッグ30を体幹47に装着させた使用者を、撮影台56上に寝かせた状態を模式的に示した状態図である。
【0116】
まず、図19(a)と同様にして、軟質性粒子を充填した保形バッグ30を、使用者の頭部43に被せて体幹47まで引き下げ、固定させたい部位全体を覆うようにして保形バッグ30を装着する。次いで、図20に示すように、保形バッグ30を装着させた患者を撮影台56上に寝かせ、上述した方法と同様にして陰圧を印加し、保形バッグ30を固化しながら体幹47に密着固定させる。
【0117】
このように、体幹47に固定させた保形バッグ30は、本発明の第1の実施形態の保形バッグ10と同様に、補装具の一種である姿勢固定具として利用することができる。ただし、使用者の状態等によっては、硬質性粒子を充填した保形バッグ30を用いてもよいし、体幹47に限らず、頭部、上肢、下肢等に適用してもよい。
【0118】
図21は、本発明の第4の実施形態にかかる保形バッグ100の断面図である。図21に示すように、保形バッグ100は、その内部に通気性および伸縮性を有するインナーバッグ140を備え、保形用粒子110はインナーバッグ140の内部に充填されている以外は、本発明の第1の実施形態にかかる保形バッグ10と同様の構成である。また、本発明で利用可能な保形バッグ100および保形用粒子110の形状および素材、逆流防止弁115の構造および素材、ならびに保形バッグ100に印加する陰圧については、本発明の第1の実施形態にかかる保形バッグ10と同様のものを用いることができる。
【0119】
本発明で利用可能なインナーバッグ140の素材としては、保形バッグ100の形状を保持するために、その内部を陰圧に保持するので、少なくとも、保形バッグ100の内部を陰圧に保持すると同時に、インナーバッグ140の内部も陰圧に保持されるようにするための通気性と、充填された保形用粒子112をインナーバッグ140の内部に保持して装着部位に適合する形状を保持し得る強度と、保形バッグ100自体や保形用粒子112の変形を妨げない伸縮性とを有していることが望ましい。このような性質を有する素材としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン等の化学繊維等の単体またはこれらを組み合わせた素材が挙げられ、これらの中では、特にポリウレタン等が好適に利用される。なお、インナーバッグ140は、袋状にして内部に保形用粒子112を充填して利用されてもよい。このような構成にすることで、内部を陰圧に保持される際に、保形バッグ100自体や保形用粒子112が吸引されるのを防止することができる。
【0120】
本発明の第4の実施形態にかかる保形バッグ100は、補装具、身体採型具等として利用することができ、例えば、上述した保形バッグ10と同様の方法で、各種補装具や身体採型具として用いることができる。
【0121】
図22は、本発明の第5の実施形態にかかる保形バッグ300の断面図である。図22に示すように、保形バッグ100は、その内部に保形バッグ100と同様のインナーバッグ340を備え、保形用粒子310はインナーバッグ340の内部に充填され、さらにその形状が、中空部が偏心した略円筒状である以外は、本発明の第3の実施形態にかかる保形バッグ30と同様の構成である。また、本発明で利用可能な保形バッグ300、保形用粒子312、およびインナーバッグ340の素材、逆流防止弁の構造および素材、ならびに保形バッグ300に印加する陰圧については、本発明の第3の実施形態にかかる保形バッグ30と同様のものを用いることができる。
【0122】
本発明に適用可能な保形バッグ300の形状は、所定部分の厚みが他の部分の厚みよりも大きく形成されていれば特に限定されず、例えば、図16(c)に示す中空部が偏心した略円環状であってもよく、用途に応じて使い分けることができる。
【0123】
本発明の第5の実施形態にかかる保形バッグ300は、部分固定が可能な補装具等として利用することができ、例えば、上述した保形バッグ10と同様の方法で、各種補装具として用いることができる。
【0124】
図23は、本発明の第6の実施形態にかかる保形バッグ101の斜視図である。ただし、この保形バッグ100は、身体に固定するための固定具151a,151bをさらに有している以外は、本発明の第1の実施形態にかかる保形バッグ10と同様の構成である。また、本発明で利用可能な保形バッグ101および保形用粒子の形状および素材、逆流防止弁131の構造および素材、ならびに保形バッグ101に印加する陰圧については、本発明の第1の実施形態にかかる保形バッグ10と同様のものを用いることができる。なお、本発明の第4の実施形態にかかる保形バッグ100と同様に、保形バッグ101は、その内部にインナーバッグを有して構成されてもよい。
【0125】
本発明に適用可能な固定具151a,151bの構造および素材は、保形バッグ101を身体に固定することができるものであれば特に限定されず、構造としては、既知のものを用いることができ、素材としては、上述した固定具55と同様の素材を用いることができる。また、固定具151a,151bの形状は、例えば、紐状、布状、面ファスナー状、マジックベルト、尾錠(バックル)ベルト等を利用することができる。
【0126】
本発明の第6の実施形態にかかる保形バッグ101は、補装具等として利用することができ、例えば、上述した保形バッグ10と同様の方法で、各種補装具として用いることができる。
【0127】
図24は、保形バッグ101の使用方法を模式的に示した図であり、保形バッグ101を下肢41に装着後の状態を示す図である。
【0128】
まず、硬質性粒子を充填した保形バッグ101を、使用者の下肢41に穿かせ、固定させたい部位全体を覆うようにして保形バッグ101を装着する。次いで、上述した方法と同様にして陰圧を印加し、保形バッグ101を固化しながら下肢41に密着固定させ、図24に示すように、固定具307a,307bを用いて下肢41に完全に固定させる。
【0129】
このように、下肢41に固定させた保形バッグ101は、本発明の第1の実施形態の保形バッグ10と同様に、例えば、スポーツ用サポーターまたは防具として、利用することができる。ただし、下肢41の状態によっては、軟質性粒子を充填した保形バッグ30を用いてもよいし、下肢41に限らず、頭部、上肢、体幹等に適用してもよい。
【0130】
図25は、本発明の第7の実施形態にかかる分離した保形バッグ(以下、「分離型保形バッグ」という。)を構成する各要素をそれぞれ模式的に示した図であり、(a)はインナーバッグ102の斜視図、(b)は分離型保形バッグの内側部分である第1のバッグ112の斜視図、および(c)は分離型保形バッグの外側部分である第2のバッグ122の斜視図である。本発明の分離型バッグは、これらの構成要素を組み合わせて使用されるものであり、保形バッグが第1のバッグ112と第2のバッグ122とに分離して構成され、さらに第2のバッグ122に脱気口132および逆流防止弁142を備えている点で、上述した第4の実施形態にかかる保形バッグ100と相違するものである。
【0131】
インナーバッグ102の形状および素材、この内部に充填する保形用粒子の形状、素材および充填量については、本発明の第4の実施形態にかかる保形バッグ100と同様のものを用いることができる。
【0132】
第1のバッグ112の形状は、固定する部位(下肢、上肢等)を被覆することができれば特に限定されず、例えば、図25(b)に示すように一方の端部が開口した略棒状であってもよく、あるいは、予め固定部位の形状や用途に合わせて靴下状、足袋状、手袋状、略円筒状、袋状等に加工されてもよい。ただし、第1のバッグ112の内部に固定部位を収納できる程度の容積を有している必要がある。また、この素材は、本発明の第4の実施形態にかかる保形バッグ100と同様のものを用いることができる。
【0133】
第2のバッグ122は、本発明の第1の実施形態にかかる保形バッグ10と同様に、脱気口132が設けられ、この脱気口132は逆流防止弁142を備えている。第2のバッグ122の形状は、固定部位とこの固定部位に装着した第1のバッグ112およびインナーバッグ102とを被覆することができれば特に限定されず、例えば第1のバッグ112で述べた形状であってもよい。ただし、第2のバッグ122の内部に固定部位とこの固定部位に装着した第1のバッグ112およびインナーバッグ102とを収納できる程度の容積を有している必要がある。また、この素材は、さらに、逆流防止弁142の構造および素材ならびに第2のバッグ122を介してインナーバッグ102に印加する陰圧については、本発明の第4の実施形態にかかる保形バッグ100と同様のものを用いることができる。なお、逆流防止弁142は、第2のバッグ122と一体的に構成されていても、あるいは、両者が分離可能に構成されていてもよく、用途に応じて適宜選択することができる。
【0134】
次に、本発明の第7の実施形態にかかる分離型保形バッグの用途および使用方法について説明する。本発明の第7の実施形態にかかる分離型保形バッグは、上述した補装具等として利用することができる。
【0135】
図26は、分離型保形バッグの使用方法を模式的に示した図であり、(a)は第1のバッグ112を下肢41に装着後の状態を示す図であり、(b)はインナーバッグ102を第1のバッグ112を装着させた下肢41に装着後の状態を示す図であり、(c)は第2のバッグ122を第1のバッグ112およびインナーバッグ102を装着させた下肢41に装着後の状態を示す図である。
【0136】
まず、図26(a)〜(c)に示すように、使用者の下肢41に第1のバッグ112、インナーバッグ102および第2のバッグ122を順次滑り込ませ、固定させたい部位全体を覆うようにしてこれらをそれぞれ装着する。次いで、上述した方法と同様にして陰圧を印加し、インナーバッグ102を固化しながら下肢41に、第1のバッグ112、インナーバッグ102および第2のバッグ122を密着固定させる。
【0137】
このようにして下肢41に固定されたインナーバッグ102は、本発明の第1の実施形態の保形バッグ10と同様に、例えばギプスや圧迫包帯等の代替品等として利用することができる。ただし、下肢41の状態や用途によって、インナーバッグ102に充填される保形用粒子として、軟質性粒子や硬質性粒子を使い分けてもよいし、保形用粒子を偏在させて特定の部位だけを固定するように設計されてもよい。また、下肢41に限らず、頭部、上肢、体幹等に適用してもよい。
【0138】
本発明の分離型保形バッグは、上述したように、第1のバッグ112と第2のバッグ122とが分離可能に構成されており、例えば、複数のインナーバッグ102を組み合わせて、成人の健常下肢や大型動物の肢体等の長さがある部位を完全に被覆し、固定することができる。すなわち、既存のインナーバッグ102を複数組み合わせれば、その形状や大きさに依存することなく、ギプス等の代替品等としての目的を達成できるものである。
【0139】
なお、本発明の保形バッグおよび各構成要素の形状、大きさおよび素材もしくは使用条件は、用途、使用者の体格、適用部位の状態等によって適宜選択するものであり、上記に限定されるものではない。
【実施例】
【0140】
[実施例1]バッグ素材の違いによる曲げ特性評価試験
【0141】
1mm厚の合成ゴム、2mm厚の低伸縮性エチレンビニルアセテートコポリマー(EVA)および片面に合成ゴム、他面にEVAを使用したハイブリッド素材の異なる3種類のバッグ素材を用い、バッグを製作した。次いで、製作したバッグを長さ120mm、幅30mmおよび厚さ20mmにそれぞれ成型し、これらの中に粒径0.3〜0.6mmのセラミック粒子を充填して試験片A1、A2およびA3とした。その後、これらの試験片に、−650mmHgの陰圧をそれぞれ印加して剛性を高め、JISのプラスチック曲げ試験に準拠して3点曲げ試験を行った。各試験片に曲げ荷重(縦軸)を加えた時の曲げ変位(横軸)を、図27に示した。
【0142】
図27のとおり、異なる3種類の試験片の剛性を比較すると、A2が一番高い特性を示し、A1が一番低い特性を示すことがわかった。
【0143】
[実施例2]印加陰圧の違いによる曲げ特性評価試験
【0144】
実施例1の試験片A2を3片用い、試験片B1、B2およびB3とした。その後、これらの試験片に、−200mmHg、−350mmHgおよび−650mmHgの陰圧をそれぞれ印加して剛性を高め、実施例1と同様に3点曲げ試験を行った。また、その結果を、実施例1と同様に図28に示した。
【0145】
図28のとおり、印加する陰圧が大きいほど、高い剛性を示すことがわかった。
【0146】
[実施例3]粒径の違いによる曲げ特性評価試験
【0147】
実施例1のハイブリッド素材のバッグの中に、それぞれ粒径0.3〜0.6mmおよび0.6〜1.2mmのセラミック粒子を充填して試験片C1およびC2とした。その後、これらの試験片を用い、実施例1と同様に3点曲げ試験を行った。また、その結果を、実施例1と同様に図29に示した。
【0148】
図29のとおり、粒径が小さいほど、高い剛性を示すことがわかった。
【0149】
[実施例4]従来の義肢材料と本発明の保形バッグ材料との曲げ特性比較試験
【0150】
実施例1の試験片A3を、本発明の保形バッグ材料で製作されたものとして試験片D1とした。また、5mm厚のポリプロピレン(PP)および5mm厚のエチレンポリプロピレンコポリマー(EP)の異なる2種類の義肢材料を、実施例1の試験片の長さおよび幅になるように加工し、それぞれ試験片D2およびD3とした。なお、D1の厚さ20mmに対し、D2およびD3の厚さ5mmの設定は、試験片D1の剛性を厚みによって補うためである。その後、これらの試験片を用い、実施例1と同様に3点曲げ試験を行った。また、その結果を、実施例1と同様に図30に示した。
【0151】
図30のとおり、本発明の保形バッグ材料は、従来の義肢材料と比較して、同等の剛性を示すことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0152】
以上のとおり、本発明の保形バッグは、ソケットと一体的に構成されておらず、保形バッグ単体で使用することができ、また、充填される保形用粒子として、軟質性粒子および硬質性粒子のいずれかを選択して用いることができるので、様々な用途に適用することができ、あるいは、同様の用途であっても、使用者の特性に最適な保形バッグを提供することができる。また、切断端等を下に向けた状態でなくとも、体位によらずに保形バッグを切断端等に滑り込ませて装着させることができ、また、これを外すことも容易である。また、保形バッグの一部に設けられた脱気口に逆流防止機構等を備えることができるので、陰圧を緩めることにより、保形バッグ全体の形状を徒手でも調整することができる。さらに、保形バッグの構成が簡易であるので、エアバッグ等の付随部品等による経済的負担も軽減することができる。
【0153】
したがって、本発明の保形バッグは、ギプス、圧迫包帯、コルセットもしくは頚椎カラーの代替品、頭部保護帽、関節固定具、放射線治療用姿勢固定具、レントゲン装置、コンピュータ断層撮影装置もしくは磁気共鳴映像装置の撮影用姿勢固定具、義肢用ライナー、スポーツ用サポーター、ヘルメット、ショルダーガード、エルボーパッド、ニーパッド、シンガード、ボクシンググローブ、オープンフィンガーグローブ、レガース等の防具等の補装具、または、義肢用ソケット、特殊メイク等の製作用身体採型具等に適用することができるので、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる保形バッグ10の構成を模式的に示した図であり、(a)は保形バッグ10の斜視図、(b)はそのA−A′断面図である。
【図2】保形バッグ10の形状を模式的に示した斜視図であり、(a)は略円柱状、(b)は略直方体状、(c)は略楕円体状、(d)は略球状である。
【図3】保形バッグ10の使用方法を模式的に示した図であり、(a)は保形バッグ10を上肢40に装着途中の状態を示す図であり、(b)は保形バッグ10を上肢40に装着後の状態を示す図である。
【図4】保形バッグ10の他の使用方法を模式的に示した図であり、(a)は保形バッグ10を下肢41に装着途中の状態を示す図であり、(b)は保形バッグ10を下肢41に装着後の状態を示す図である。
【図5】保形バッグ10の他の使用方法を模式的に示した図であり、(a)は保形バッグ10を頸部42に装着途中の状態を示す図であり、(b)は保形バッグ10を頸部42に装着後の状態を示す図である。
【図6】保形バッグ10の他の使用方法を模式的に示した図であり、(a)は保形バッグ10を頭部43に装着途中の状態を示す図であり、(b)は保形バッグ10を頭部43に装着後の状態を示す図である。
【図7】保形バッグ10の他の使用方法を模式的に示した図であり、頭部43に装着させた使用者を撮影台50上に寝かせた状態を示した図である。
【図8】保形バッグ10を義肢用ライナーとして、義足用ソケット51,52および義手用ソケット53の内部に設置した状態を模式的に示した図であり、(a)は義肢用ライナー51,52を下腿切断端44,45に装着後の状態を示した図であり、(b)は義肢用ライナー53を上腿切断端46に装着後の状態を示した図である。
【図9】保形バッグ10を用いて下腿切断端44の採型を行い、訓練用ソケットの陰性モデル54を製作する際の手順を模式的に示した図であり、(a)は保形バッグ10を下腿切断端44に装着途中の状態を示す図であり、(b)は保形バッグ10を下腿切断端44に装着後の状態を示す図であり、(c)は保形バッグ10を用いて製作した訓練用ソケットの陰性モデル54を示す模式図である。
【図10】固定具付保形バッグ60の構成を模式的に示した斜視図である。
【図11】保形バッグ20の形状を模式的に示した斜視図であり、(a)は略板状、(b)は略円盤状である。
【図12】固定具付保形バッグ60を固化し、上肢40の肘部に密着固定させた後の状態を模式的に示した図である。
【図13】固定具付保形バッグ60を固化し、下肢41の膝部に密着固定させた後の状態を模式的に示した図である。
【図14】固定具付保形バッグ60を固化し、下肢41の脛部に密着固定させた後の状態を模式的に示した図である。
【図15】保形バッグ30の構成を模式的に示した図であり、(a)は保形バッグ30の斜視図、(b)はそのB−B′断面図である。
【図16】保形バッグ30の形状を模式的に示した斜視図であり、(a)は偏心した中空部が略円筒状、(b)は略円環状、(c)は中空部が偏心した略円環状である。
【図17】保形バッグ30の使用方法を模式的に示した図であり、(a)は保形バッグ30を上肢40に装着後の状態を示す図であり、(b)は保形バッグ30を下肢41に装着後の状態を示す図である。
【図18】保形バッグ30の他の使用方法を模式的に示した図であり、保形バッグ30を頸部42に装着後の状態を示す図である。
【図19】保形バッグ30の他の使用方法を模式的に示した図であり、(a)は保形バッグ30を体幹47に装着後の状態を示す図であり、(b)は保形バッグ30を体幹48に装着後の状態を示す図である。
【図20】保形バッグ30を体幹47に装着させた使用者を、撮影台56上に寝かせた状態を模式的に示した状態図である。
【図21】保形バッグ100の断面図である。
【図22】保形バッグ300の断面図である。
【図23】保形バッグ101の斜視図である。
【図24】保形バッグ101の使用方法を模式的に示した図であり、保形バッグ101を下肢41に装着後の状態を示す図である。
【図25】本発明の第7の実施形態にかかる分離型保形バッグを構成する各要素をそれぞれ模式的に示した図であり、(a)はインナーバッグ102の斜視図、(b)は分離型保形バッグの内側部分である第1のバッグ112の斜視図、および(c)は分離型保形バッグの外側部分である第2のバッグ122の斜視図である。
【図26】分離型保形バッグの使用方法を模式的に示した図であり、(a)は第1のバッグ112を下肢41に装着後の状態を示す図であり、(b)はインナーバッグ102を第1のバッグ112を装着させた下肢41に装着後の状態を示す図であり、(c)は第2のバッグ122を第1のバッグ112およびインナーバッグ102を装着させた下肢41に装着後の状態を示す図である。
【図27】バッグ素材の違いによる曲げ特性評価試験の結果を示した図である。
【図28】印加陰圧の違いによる曲げ特性評価試験の結果を示した図である。
【図29】粒径の違いによる曲げ特性評価試験の結果を示した図である。
【図30】従来の義肢材料と本発明の保形バッグ材料との曲げ特性比較試験の結果を示した図である。
【符号の説明】
【0155】
10,20,30,100,101,300 保形バッグ
11,31,110,310 保形用粒子
12,22,32,121,132 脱気口
13,23,33,131,142 逆流防止弁
40 上肢
41 下肢
42 頸部
43 頭部
44,45 下腿切断端
46 上腿切断端
47,48 体幹
50,56 撮影台
51,52 義足用ソケット
53 義手用ソケット
54 陰性モデル
55,151a,151b 固定具
60 固定具付保形バッグ
112 第1のバッグ
122 第2のバッグ
140,102,340 インナーバッグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密性および弾性を有するバッグの内部に保形用粒子が充填されてなり、前記内部を陰圧に保持することにより、前記バッグの形状が保持されるようにしたことを特徴とする、保形バッグ。
【請求項2】
前記保形用粒子は、軟質性粒子である、請求項1に記載の保形バッグ。
【請求項3】
前記軟質性粒子は、発泡ポリスチレン粒子、発泡ポリエチレン粒子、発泡ウレタン粒子、発泡ゴムもしくは大鋸屑の単体またはこれらの組み合わせである、請求項2に記載の保形バッグ。
【請求項4】
前記軟質性粒子は、かさ密度が0.5g/cc以下、粒径が0.3〜3.0mm、およびアスペクト比が1.0〜3.0である、請求項2または3に記載の保形バッグ。
【請求項5】
前記保形用粒子は、硬質性粒子である、請求項1に記載の保形バッグ。
【請求項6】
前記硬質性粒子は、セラミック粒子、アクリルビーズ、ガラスビーズ、シリカ粒子、ポリプロピレン粒子、ポリエチレン粒子もしくはポリスチレン粒子の単体またはこれらの組み合わせである、請求項5に記載の保形バッグ。
【請求項7】
前記硬質性粒子は、かさ密度が1.5g/cc以下、粒径が0.3〜1.5mm、およびアスペクト比が1.0〜1.5である、請求項5または6に記載の保形バッグ。
【請求項8】
前記陰圧は、−100〜−5kPaである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の保形バッグ。
【請求項9】
前記バッグの一部に前記内部を脱気するための脱気口を備える、請求項1〜8のいずれか1項に記載の保形バッグ。
【請求項10】
前記脱気口は、逆流防止機構を備える、請求項9に記載の保形バッグ。
【請求項11】
前記脱気口は、内部圧力調整機構を備える、請求項9または10に記載の保形バッグ。
【請求項12】
前記バッグの素材は、サーモプラスチックエラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム、エチレンプロピレンゴム、塩化ビニルゴム、クロロプレーンゴムもしくはポリウレタンゴムの単体またはこれらの組合せからなる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の保形バッグ。
【請求項13】
前記バッグの形状は、略棒状、略円柱状、略直方体状、略楕円体状、略球状、略板状、略円盤状、略円環状または略円筒状である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の保形バッグ。
【請求項14】
前記バッグの形状は、略円環状または略円筒状であり、所定部分の厚みが他の部分の厚みよりも大きく形成されていることを特徴とする、請求項13に記載の保形バッグ。
【請求項15】
前記バッグの内部に通気性および伸縮性を有するインナーバッグを備え、前記保形用粒子は、前記インナーバッグの内部に充填されていることを特徴とする、請求項1に記載の保形バッグ。
【請求項16】
前記バッグは、最内層に設けられた第1のバッグと、最外層に設けられた第2のバッグとからなり、前記インナーバッグは、前記第1のバッグと第2のバッグとから形成される中間層に備えられていることを特徴とする、請求項15に記載の保形バッグ。
【請求項17】
前記第1のバッグと前記インナーバッグと前記第2のバッグとがそれぞれ独立して構成され、前記第1のバッグ、前記インナーバッグおよび前記第2のバッグを、順次身体に装着するようにしたことを特徴とする、請求項16に記載の保形バッグ。
【請求項18】
前記第2のバッグの一部に前記中間層を脱気するための脱気口を備える、請求項16または17に記載の保形バッグ。
【請求項19】
前記バッグを身体に固定するための固定手段をさらに有する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の保形バッグ。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の保形バッグを用いた補装具。
【請求項21】
ギプス、圧迫包帯、コルセットもしくは頚椎カラーの代替品、頭部保護帽、関節固定具、放射線治療用姿勢固定具、レントゲン装置、コンピュータ断層撮影装置もしくは磁気共鳴映像装置の撮影用姿勢固定具、義肢用ライナー、スポーツ用サポーターまたは防具である、請求項20に記載の補装具。
【請求項22】
前記防具は、ヘルメット、ショルダーガード、エルボーパッド、ニーパッド、シンガード、ボクシンググローブ、オープンフィンガーグローブまたはレガースである、請求項21に記載の補装具。
【請求項23】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の保形バッグを用いた身体採型具。
【請求項24】
義肢用ソケット、特殊メイク製作用である、請求項23に記載の身体採型具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2009−112380(P2009−112380A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286048(P2007−286048)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)
【Fターム(参考)】