説明

保持具

【課題】 手動工具類、筆記用具類等の棒状の物品に対して、軸部の断面形状に係わらず装着が可能で、引き紐が軸部の回りに回転自在となる保持具を提供すること。
【解決手段】 棒状の物品の軸部が貫通して固定される第一の筒状部2と、引き紐5が接続される第二の筒状部3が、軸受を介して接続され、第一の筒状部が回転自在に保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動工具類、筆記用具類等の棒状の物品に装着される保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機械組み立て、建設工事等において、様々な手動工具類が使用されている。卓上で使用される機器の例として、パーソナルコンピュータの製造においては、作業机あるいは流れ作業のコンベアラインでドライバー、スパナ、ペンチ、ニッパー、六角レンチ等の棒状の手動工具類が使用されている。
【0003】
工業機械、例えば、自動車の車体を成型するプレス機械や金属素材を扱う圧延機械、また、建物や化学プラントの鉄骨材のように、大型機械の組み立て、建設工事においても同様に手動工具類が使用されている。
【0004】
それらの機械、建設物を構成する部材は大きく、数メートルといった寸法の部材が使用されることも珍しいことではなく、それらの部材の組み立ては、ほとんどが高所で行われている。
【0005】
高所での組み立て作業において、作業者は、腰にベルト等で固定できる工具ホルダーに手動工具類を上から差し込んで保持させていた。
【0006】
ところが、作業者が、手動工具類を工具ホルダーから取り出す場合、あるいは工具ホルダーに上から差し込む場合に誤って手から手動工具類を滑らせて落下させてしまうおそれがあった。
【0007】
高所作業中に、誤って手動工具類を落下させた場合には、手動工具類が他の作業者に衝突する危険性があり、作業の安全面からも重要な課題となっていた。
【0008】
手動工具類の落下防止対策の簡易的な方法として、手動工具類に引き紐を接続して作業者の腰ベルト等に固定する手段が考えられる。
【0009】
ところが、軸部を回転させて使用する形態の手動工具の場合は、手動工具に引き紐を接続すると、使用中に引き紐が手動工具類に巻きつくことがあり、巻き付いた引き紐を解く作業が必要になり、作業効率が悪くなるという問題があった。
【0010】
そこで、ドライバー等の丸棒の軸部を有する手動工具に対して、引き紐を軸部に回転自在に保持させ、軸部に巻きつくことを防止した引き紐係止具が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−322075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載された手動工具の引き紐係止具は、引き紐を手動工具の軸部の回りに回転自在な構造とするために、引き紐係止具と手動工具の軸部の間にすき間が設けられ、係止具の抜け止めとして、樹脂または金属のリングが軸部に圧入または接着されている。
【0013】
この構造では、手動工具の回転と共に係止具、およびリングの間で常にすべり摩擦が生じるため金属粉や樹脂粉が発生し、繰り返し使用していくと、円滑なすべりが得られずに手動工具と引き紐係止具の間の動きが悪くなり、使用中に紐が軸部に巻き付いてしまい作業効率が悪くなるという問題が発生する。
【0014】
また、特許文献1の引き紐係止具は、軸部が丸棒以外の形状や、太さが均一な形状の手動工具類に取り付けることが難しい複雑な構造であった。
【0015】
軸部が丸棒ではなく、太さが均一な形状の手動工具類の例として六角棒レンチの場合には、保管用のホルダに引き紐が接続できるものは存在していたが、六角棒レンチの軸部の回りに回転自在に引き紐を接続できる保持具は無かった。
【0016】
六角棒レンチに引き紐を縛りつけようとすると、太さが均一な棒状であるため固定が困難であり、固定できたとしても、引き紐が使用中に軸部に巻き付いてしまい作業効率が悪くなるという問題があった。
【0017】
本発明の目的は、手動工具類、筆記用具類等の棒状の物品に対して、軸部の断面形状に係わらず装着が可能で、引き紐が軸部の回りに回転自在となる保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記問題を解決するために手動工具に装着する保持具の構造を検討してなされたものである。本発明によれば、棒状の物品の軸部が貫通し固定される第一の筒状部と、引き紐が接続される第二の筒状部が、軸受を介して接続され、第一の筒状部が回転自在に保持されていることを特徴とする保持具が得られる。
【0019】
本発明によれば、前記第一の筒状部は、前記物品の軸部の形状に関わらず貫通し固定できることを特徴とする上記の保持具が得られる。
【0020】
本発明によれば、前記第一の筒状部は、前記物品に取り外し可能に取り付けることを特徴とする上記の保持具が得られる。
【発明の効果】
【0021】
本発明による保持具を手動工具に装着すると、第二の筒状部に接続された引き紐を作業者の腰ベルト等に固定して、作業を行った場合にも第一の筒状部が回転自在に保持されているので引き紐が手動工具に巻き付くことがなく、巻き付いた引き紐を解く作業がなくなり、作業効率が向上する。
【0022】
作業者が手動工具類を腰ベルト等に固定して、高所作業を行うことができるので、手動工具類を落下させることが無く、安全性を高めることができる。
【0023】
本発明による保持具は、軸部が丸棒形状の手動工具に限らず、第一の筒状部の形状をあわせれば、どのような断面形状の棒状の物品でも装着が可能であり、また取り外しも容易である。
【0024】
したがって、本発明の保持具によれば、手動工具類、筆記用具類等の棒状の物品の軸部の断面形状に係わらず装着が可能で、かつ、引き紐を軸線回りに回転自在に保持することが可能となり、高所作業における安全性も高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の保持具を六角棒レンチに装着した形態の説明図。
【図2】本発明の保持具を六角棒レンチに装着した形態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明による保持具の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明の保持具を六角棒レンチに装着した形態の説明図である。保持具1は、六角棒レンチ6を貫通して固定されている。
【0028】
六角棒レンチは、一般的な六角断面の金属棒を90度に曲げたもの、あるいは、先端にボールポイント加工が施されボルトに角度をつけて挿し込んで回すことが可能なボールポイントタイプのどちらでも構わない。
【0029】
棒状の物品の例として、六角棒レンチを図示したが、本発明の保持具は、手動工具類に限らず筆記用具類等の物品で棒状であれば、第一の筒状部2の貫通穴を合わせれば軸部の断面形状に関わらず装着が可能である。
【0030】
保持具1は、第一の筒状部2と、第二の筒状部3から構成されている。第一の筒状部2が、六角棒レンチ6に固定され、第二の筒状部に引き紐5が接続されている。
【0031】
引き紐5は、紐部25の両端に金具15、35が接続された形態をなしている。金具15は、第二の筒状部3に取り付け、金具35は、作業者の腰ベルト等に固定するためのものである。
【0032】
紐部25は、綿ロープ、ワイヤーロープ等の材質であることが望ましく、伸縮自在となるように、ばね形状となっていてもよい。
【0033】
金具15、35は、第二の筒状部3や作業者の腰ベルト等に接続でき、かつ、紐のねじれを防止することができるため図示したようにフック状の通し穴を有する構造が望ましい。
【0034】
引き紐5は、金具15、35を用いずに紐部25だけでもよく、両端を第二の筒状部3や作業者の腰ベルト等に固定できる形状であればよい。
【0035】
次に、図2は、本発明の保持具を六角棒レンチに装着した形態の断面図である。保持具1の内部構造について説明する。
【0036】
保持具1は、第一の筒状部2と、第二の筒状部3と、軸受4から構成されている。軸受4は、金属製の玉24と、内輪14と、外輪34から構成された玉軸受である。
【0037】
軸受4と、第一の筒状部2と、第二の筒状部3の接続は、軸受4の内輪14を、第一の筒状部2に挿入して固定し、軸受4の外輪34を、第二の筒状部3に挿入して固定している。
【0038】
第一の筒状部2の材質は、アルミニウム等の金属材料が望ましい。第一の筒状部2の内径部分は、六角棒レンチ6が貫通する内径寸法を有している。
【0039】
第一の筒状部2の外径部分は、軸受4の内輪14が挿入される内輪接続部32と、内輪接続部32よりも外形寸法の大きな外周部12を有している。
【0040】
内輪接続部32の外径寸法は、軸受4の内輪14の内径寸法に対してすき間ばめとなる公差に加工されていることが望ましい。
【0041】
内輪接続部32には、外周部12から軸受4の幅の距離に外周に沿って溝を有している。この溝には、軸受4を第一の筒状部2から抜けないようにストッパーとして固定するための第一の止め輪42が嵌合される。
【0042】
軸受4の内輪14を、内輪接続部32に挿入し、内輪接続部32と外周部12との寸法差によって生じる壁に突き当て、内輪接続部32に設けた溝に第一の止め輪42を嵌合することによって、第一の筒状部2に固定することができる。
【0043】
外周部12には、六角棒レンチ6が挿入される貫通穴に垂直にねじ穴が設けられている。止めねじ22でねじ止めすることにより、第一の筒状部2を六角棒レンチ6に固定することができる。ここで、外周部12には、ねじ穴を複数箇所設けて、ねじ止めすることにより強固に固定できる。
【0044】
第一の筒状部2は、ねじ止めで固定する方法が取り外しも容易であるが、棒状の物品に固定できる方法であれば、他の固定方法であってもよい。
【0045】
第二の筒状部3についても、アルミニウム等の金属材料が望ましい。第二の筒状部3の内径部分は、第一の筒状部2に装着された軸受4の外輪34が挿入される外輪接続部33と、外輪接続部33よりも内径寸法の小さな内周部13を有している。
【0046】
外輪接続部33の内径寸法は、軸受4の外輪34の外径寸法に対してすき間ばめとなる公差に加工されていることが望ましい。
【0047】
外輪接続部33には、内周部13から軸受4の幅の距離に内周に沿って溝を有している。この溝には、軸受4を第二の筒状部3から抜けないようにストッパーとして固定するための第二の止め輪43が嵌合される。
【0048】
軸受4の外輪34を、外輪接続部33に挿入し、外輪接続部33と内周部13との寸法差によって生じる壁に突き当て、外輪接続部33に設けた溝に第二の止め輪43を嵌合することによって、第二の筒状部3に固定することができる。
【0049】
内周部13には、第二の筒状部3の外周から引き紐を接続するための貫通穴23を有している。
【0050】
ここで、第二の筒状部3に引き紐を接続するために貫通穴23を設けたが、貫通穴ではなく、引き紐が接続できれば、他の方法でも構わない。
【0051】
さて、上述したように、第一の筒状部2に軸受4を固定し、さらに第二の筒状部3を固定し、第二の筒状部3に設けた貫通穴23に引き紐を接続してなる保持具1の第一の筒状部2の貫通穴に、棒状の物品の例として六角棒レンチ6を通して、ねじ穴に止めねじ22にてねじ止めを行い固定する。
【0052】
この保持具1を装着した六角棒レンチ6の引き紐を引っ張った状態を保持して作業者の腰ベルト等に固定してボルト締めを実施した場合でも、軸受が介在しているので、第一の筒状部2のみが回転し、ボルト締めが可能となり、六角棒レンチ6に引き紐が巻き付くことはない。
【0053】
このように、本発明の保持具を使用することにより、引き紐が手動工具類に巻き付かないため、使用毎に紐の巻き付きを解く作業が不要となり、作業効率を改善でき、高所作業における安全性を高めることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 保持具
2 第一の筒状部
3 第二の筒状部
4 軸受
5 引き紐
6 六角棒レンチ
12 外周部
13 内周部
14 内輪
15、35 金具
22 止めねじ
23 貫通穴
24 玉
25 紐部
32 内輪接続部
33 外輪接続部
34 外輪
42 第一の止め輪
43 第二の止め輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の物品の軸部が貫通し固定される第一の筒状部と、引き紐が接続される第二の筒状部が、軸受を介して接続され、第一の筒状部が回転自在に保持されていることを特徴とする保持具。
【請求項2】
前記第一の筒状部は、前記物品の軸部の形状に関わらず貫通し固定できることを特徴とする請求項1に記載の保持具。
【請求項3】
前記第一の筒状部は、前記物品に取り外し可能に取り付けることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の保持具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−103277(P2013−103277A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246232(P2011−246232)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】