説明

保持治具、小型電子部品の取扱装置並びにこれらを用いた取扱方法及び製造方法

【課題】小型電子部品を所望のように粘着保持できるにもかかわらず、粘着保持された小型電子部品のほとんどすべてを容易に脱離させることのできる保持治具及び小型電子部品の取扱装置、並びに、粘着保持した小型電子部品のほとんどすべてを容易に脱離できる作業性の高い小型電子部品の取扱方法及び製造方法を提供すること。
【解決手段】治具本体2Bと、治具本体2Bの表面に配置され、粘着保持する小型電子部品7の軸線に対する垂直断面の最短の辺よりも小さな厚さを有する弾性粘着部材3Bとを備えた保持治具1A、及び、この保持治具1Aと小電子型部品7を脱離させる脱離具5とを備えた取扱装置、並びに、保持治具1Bの弾性粘着部材3B上に粘着保持された小型電子部品7を、脱離具5を弾性粘着部材3Bの表面に沿って相対的に移動して脱離する工程を有する小型電子部品の取扱方法及び小型電子部品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、保持治具、小型電子部品の取扱装置並びにこれらを用いた取扱方法及び製造方法に関し、さらに詳しくは、小型電子部品を所望のように粘着保持できるにもかかわらず粘着保持された小型電子部品のほとんどすべてを容易に脱離させることのできる保持治具及び小型電子部品の取扱装置、並びに、粘着保持した小型電子部品のほとんどすべてを容易に脱離できる作業性の高い小型電子部品の取扱方法及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、チップコンデンサ等の小型電子部品等を製造する際等に、この小型電子部品又は小型電子部品を製造可能な小型電子部品用部材等をその表面に粘着保持可能な弾性粘着部材を備えた保持治具が用いられている。例えば、特許文献1に記載の保持治具は「少なくとも表面部が粘着性を有するゴム弾性材で形成され、その粘着力により小型部品をその弾性材表面において密着保持可能であることを特徴とする」(特許文献1の請求項1参照)。このような保持治具を用いて小型電子部品等を製造等するには、小型電子部品は被粘着物として弾性粘着部材に粘着保持された状態で各種の製造工程等に供される。そして、弾性粘着部材に粘着保持された状態で製造等された小型電子部品等は保持治具の弾性粘着部材から取り外される。
【0003】
保持治具の弾性粘着部材から小型電子部品等を取り外す方法として、例えば、スクレイパー等の小型電子部品掻き取り部材を弾性粘着部材表面上に摺動させて、粘着保持された小型電子部品等を取り外す方法がある。このような小型電子部品掻き取り部材を用いて小型電子部品を取り外す方法においては、小型電子部品掻き取り部材で弾性粘着部材の表面を移動させられた小型電子部品が弾性粘着部材の端面に再粘着して、結果的に、小型電子部品を保持治具の弾性粘着部材から取り外せないという問題がある(特許文献2の0005欄及び図6等)。
【0004】
そこで、特許文献2に、このような問題を解決する保持治具(特許文献2の0007欄、0009欄及び0042欄等)として「支持平板と、前記支持平板の主面に設けられ、電子部品を粘着させた状態で保持する粘着材層と、前記粘着材層の周縁部に設けられた非粘着部分又は粘着材層よりも粘着力の小さい低粘着部分と、を備えたことを特徴とする電子部品の保持治具」が提案されている(請求項1等)。
【0005】
ところで、小型電子部品は、年々小型化されているので、その寸法が小さくなるほど、前記したようなゴム弾性材の端面に再粘着するという問題が生じやすく、この端面に一旦再粘着した小型電子部品を取り外すのは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平07−93247号公報
【特許文献2】特開2004−193366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、小型電子部品を所望のように粘着保持できるにもかかわらず、粘着保持された小型電子部品のほとんどすべてを容易に脱離させることのできる保持治具及び小型電子部品の取扱装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、この発明は、粘着保持した小型電子部品のほとんどすべてを容易に脱離できる作業性の高い小型電子部品の取扱方法及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
弾性粘着部材を備えた保持治具においては、従来、弾性粘着部材は、粘着保持する小型電子部品の損傷を防止すると共に所望の粘着力を発揮するには、ある程度の厚さが必要であると考えられていた。実際に、特許文献2においては「粘着材層15は例えば厚さ2.4mmのシリコン系ゴム材料からなり」、「電子部品20としては、長さ0.6mm、幅0.3mm、厚さ0.3mmの積層コンデンサを想定している」ように、また特許文献2の図6に明確に示されるように電子部品の寸法に対して粘着剤層15の厚さが極めて大きく設定されている。
【0010】
特に、両端部に電極を有する小型電子部品を製造する場合には、2枚の保持治具を使用して、一方の保持治具から他方の保持治具に小型電子部品を移し替えるときに小型電子部品を2つの弾性粘着部材で挟むように押圧する必要があるので、小型電子部品の損傷及び確実な移し替えを考慮すると弾性粘着部材は肉厚にする必要があると考えられていた。
【0011】
また、弾性粘着部材の厚さを小さくすると、部品の移し変えに必要な粘着力を確保するために弾性粘着部材に過剰な押込量と押込圧力が加わって表面の破損が起こりやすくなるという問題が生じ得ることも考えられていた。
【0012】
このような状況の下、この発明の発明者は、弾性粘着部材の厚さを粘着保持する小型電子部品の軸線に対する垂直断面の最短の辺よりも小さくすると、予想に反して少量の押込量で小型であるがゆえにより一層軽量化もされている小型電子部品を粘着保持するのに十分で小型電子部品の移し替えにも必要な粘着力を弾性粘着部材が発揮すると共に、小型電子部品を容易に弾性粘着性部材から脱離できることを、見出した。
【0013】
したがって、前記課題を解決するための第1の手段として、
請求項1は、治具本体と、前記治具本体の表面に配置され、小型電子部品を粘着保持する弾性粘着部材とを備えた保持治具であって、前記弾性粘着部材は前記小型電子部品の軸線に対する垂直断面の最短の辺よりも小さな厚さを有している保持治具であり、
請求項2は、前記弾性粘着部材は、少なくとも1つの端面全体が露出している請求項1に記載の保持治具であり、
請求項3は、前記厚さは0.05mm以上0.5mm未満である請求項1に記載の保持治具であり、
請求項4は、前記小型電子部品が0.5mm以下の前記最短の辺を有する超小型電子部品である請求項1に記載の超小型電子部品用保持治具であり、
請求項5は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の保持治具と、前記弾性粘着部材の表面に沿って相対的に移動して粘着保持された小型電子型部品を脱離させる脱離具とを備えて成る小型電子部品の取扱装置であり、
請求項6は、前記保持治具は、第1保持治具と第2保持治具とを有し、前記第2保持治具の第2弾性部材は前記第1保持治具の第1弾性部材の粘着力よりも大きな粘着力を有している請求項5に記載の小型電子部品の取扱装置であり、
請求項7は、前記小型電子部品が0.5mm以下の前記最短の辺を有する超小型電子部品である請求項5又は6に記載の超小型電子部品用取扱装置である。
【0014】
また、前記課題を解決するための第2の手段として、
請求項8は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の保持治具の前記弾性粘着部材上に粘着保持された小型電子部品を脱離具を前記弾性粘着部材の表面に沿って相対的に移動して前記弾性粘着部材から脱離する工程を有する小型電子部品の取扱方法であり、
請求項9は、前記小型電子部品が0.5mm以下の前記最短の辺を有する超小型電子部品である請求項8に記載の小型電子部品の取扱方法であり、
請求項10は、請求項8に記載の脱離する工程を有する小型電子部品の製造方法であり、
請求項11は、前記小型電子部品が0.5mm以下の前記最短の辺を有する超小型電子部品である請求項10に記載の超小型電子部品の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係る保持治具は、弾性粘着部材が小型電子部品の軸線に対する垂直断面の最短の辺(以下、最短辺と称することがある。)よりも小さな厚さを有しているから、小型電子部品を粘着保持するのに十分な粘着力を発揮するうえ、小型電子部品を弾性粘着部材から取り外すときにたとえ小型電子部品が弾性粘着部材の端面に再粘着しても容易に取り外すことができる。また、この発明に係る小型電子部品の取扱装置はこの発明に係る保持治具を備えている。したがって、この発明によれば、小型電子部品を所望のように粘着保持できるにもかかわらず、粘着保持された小型電子部品のほとんどすべてを容易に脱離させることのできる保持治具及び小型電子部品の取扱装置を提供できる。
【0016】
また、この発明に係る小型電子部品の取扱方法及びこの発明に係る小型電子部品の製造方法はいずれもこの発明に係る保持治具の弾性粘着部材上に粘着保持された小型電子部品を脱離具で脱離する工程を有しているから、粘着保持された小型電子部品のほとんどすべてを容易に脱離させることができる。したがって、この発明によれば、粘着保持した小型電子部品のほとんどすべてを容易に脱離できる作業性の高い小型電子部品の取扱方法及び製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、この発明に係る保持治具の一例を示す概略図であり、図1(a)はこの発明に係る保持治具の一例を示す概略平面図であり、図1(b)はこの発明に係る保持治具の一例を示す概略正面図である。
【図2】図2は、この発明に係る小型電子部品の取扱装置の一例を示す概略正面図である。
【図3】図3は、この発明に係る小型電子部品の取扱装置の別の一例を示す概略正面図である。
【図4】図4は、この発明に係る小型電子部品の取扱装置のまた別の一例を示す概略正面図である。
【図5】図5は、この発明に係る小型電子部品の取扱装置を用いた小型電子部品の取扱方法及び小型電子部品の製造方法において小型電子部品を第1保持治具から第2保持治具に移し替える工程を説明する概略説明図である。
【図6】図6は、この発明に係る小型電子部品の取扱装置を用いた小型電子部品の取扱方法及び小型電子部品の製造方法において小型電子部品を弾性粘着部材から取り外す工程を説明する概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明に係る保持治具及び小型電子部品の取扱装置に粘着保持される小型電子部品、並びに、この発明に係る小型電子部品の取扱方法及び製造方法で取扱われる又は製造される小型電子部品は、これらに粘着保持され、取扱われ、又は製造される小型電子部品を製造可能な小型電子部品用部材が挙げられる。また、小型電子部品の取扱及び製造には小型電子部品の搬送工程等も含まれるから、小型電子部品は、小型電子部品そのものも含まれる。したがって、この発明において、小型電子部品と小型電子部品用部材とは明確に区別される必要はない。これら小型電子部品の中でも、この発明において好適な小型電子部品として、例えば、コンデンサチップ(チップコンデンサとも称されることがある。)、インダクタチップ、抵抗体チップ、FPC、ウエハー等の小型電子部品、又は、これらの未完成品等、若しくは、これら小型電子部品を製造可能な例えば、角柱体若しくは円柱体、一端部に鍔を有する角柱体若しくは円柱体、両端部に鍔を有する角柱体若しくは円柱体等の小型電子部品用部材等が挙げられる。
【0019】
この発明における小型電子部品は、そのサイズが特に限定されることはないが、十分な粘着力で粘着保持されるにもかかわらず弾性粘着性部材から容易に脱離できる点で、より一層の小型化されているのが好ましく、具体的には、小型電子部品の軸線に対する垂直断面の最短辺が0.5mm以下の超小型電子部品であるのが好ましく、0.3mm以下の超小型電子部品であるのが特に好ましい。ところで、小型電子部品の形状によってはその軸線は複数存在するので小型電子部品の軸線に対する垂直断面は複数存在することになるが、この発明においては、小型電子部品がいかなる姿勢で弾性粘着部材の端面に再粘着されたとしても弾性粘着性部材から容易に脱離できる点で、すべての垂直断面の輪郭を形成する複数の辺のうち最も短い辺が前記寸法になっているのが好ましい。例えば、このような小型電子部品及び超小型電子部品として、四角柱体である場合には、縦及び横が0.3mmすなわち前記最短辺が0.3mmの正方形を底面及び頂面とする日本工業規格に規定される「0603」等が好適に挙げられる。
【0020】
この発明に係る保持治具は、弾性粘着部材が小型電子部品の前記最短辺よりも厚さが小さな薄層の弾性粘着部材を有しているから、小型であるがゆえにより一層軽量化もされている小型電子部品又は超小型電子部品を粘着保持し、また移し替えるのに必要な粘着力を弾性粘着部材が発揮すると共に、弾性粘着部材の表面に粘着保持されている小型電子部品又は超小型電子部品はもちろん弾性粘着部材に再粘着した小型電子部品又は超小型電子部品であっても弾性粘着性部材から容易に脱離できる。したがって、この発明に係る保持治具は、小型電子部品、具体的には前記最短辺が0.5mm以下、好ましくは0.3mm以下の超小型電子部品を粘着保持して取扱う用途及び製造する用途に特に適した構造を有しており、超小型電子部品用保持治具と称することもできる。また、この発明に係る取扱装置もこの発明に係る保持治具と同様に小型電子部品、具体的には前記最短辺が0.5mm以下、好ましくは0.3mm以下の超小型電子部品を粘着保持して取扱う用途及び製造する用途に特に適した構造を有しており、超小型電子部品用取扱装置と称することもできる。
【0021】
この発明に係る保持治具について説明する。この発明に係る保持治具は、治具本体と、治具本体の表面に配置され、小型電子部品を粘着保持する弾性粘着部材とを備えており、この弾性粘着部材は小型電子部品の軸線に対する垂直断面の最短辺よりも小さな厚さを有している。このような構成を有するこの発明に係る保持治具は、後述するように、小型電子部品を粘着保持できるにもかかわらず、小型電子部品を弾性粘着部材から取り外すときに小型電子部品がたとえ弾性粘着部材の端面等に再粘着しても容易に取り外すことができる。この発明に係る保持治具は、例えば、小型電子部品を一旦粘着保持し、その後取り外す必要がある、複数の小型電子部品を製造、搬送、収納若しくは検査等する用途又は散在した小型電子部品の回収等する回収用途に、好適に使用される。
【0022】
この発明に係る保持治具の一例を、図面を参照して、説明する。この保持治具1は、図1(a)及び図1(b)に示されるように、治具本体2と、治具本体2の表面に配置され、小型電子部品を粘着保持する弾性粘着部材3とを備えた、シート状又は平版様の保持治具である。
【0023】
治具本体2は、後述する弾性粘着部材3を支持する。この治具本体2は、平滑な表面を有していればよく、弾性粘着部材3を支持することができる限り種々の設計変更に基づく各種の形態にすることができる。例えば、この治具本体2は、図1(a)及び図1(b)に示されるように、後述する弾性粘着部材3よりも大きな寸法を有する盤状薄葉体に形成されている。この治具本体2は弾性粘着部材3とほぼ同じ寸法の方形を成す盤状薄葉体に形成されていてもよい。
【0024】
治具本体2は、弾性粘着部材3を支持可能な材料で形成されていればよく、例えば、ステンレス鋼及びアルミニウム等の金属製プレート、アルミニウム箔及び銅箔等の金属箔、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリ塩化ビニル等の樹脂フィルム又は樹脂板等を挙げることができる。さらに、治具本体2はシート状物を複数積層して成る積層体とすることもできる。
【0025】
弾性粘着部材3は、小型電子部品の一平面に接して多数の小型電子部品を粘着により保持することができるように設計され、例えば、図1(a)及び図1(b)に示されるように、治具本体2の表面に治具本体2よりも一回り小さな方形を成す盤状体に成形されている。この弾性粘着部材3は、例えば、後述する粘着力を有する粘着性材料又はこの粘着性材料の硬化物で形成されており、その表面全体が小型電子部品を粘着保持可能な粘着性表面になっている。
【0026】
この粘着性表面は、小型電子部品の表面に接触して小型電子部品を粘着保持するから小型電子部品を粘着保持することのできる粘着力を有している。具体的には、弾性粘着部材3は、通常、1〜60g/mmの粘着力を有しているのがよく、7〜60g/mmの粘着力を有しているのがよい。弾性粘着部材3の粘着力は下記「信越ポリマー法」によって測定された値である。この方法においては、弾性粘着部材3を水平に固定する吸着固定装置(例えば、商品名:電磁チャック、KET−1530B、カネテック(株)製)又は真空吸引チャックプレート等と、測定部先端に、直径10mmの円柱を成したステンレス鋼(SUS304)製の接触子を取り付けたデジタルフォースゲージ(商品名:ZP−50N、(株)イマダ製)とを備えた荷重測定装置を用意し、この荷重測定装置における吸着固定装置又は真空吸引チャックプレート上に弾性粘着部材3を固定し、測定環境を21±1℃、湿度50±5%に設定する。次いで、20mm/minの速度で弾性粘着部材3の被測定部位に接触するまで前記荷重測定装置に取り付けられた前記接触子を下降させ、次いで、この接触子を被測定部位に所定の荷重で被測定部に対して垂直に3秒間押圧する。ここで、前記所定の荷重を25g/mmに設定する。次いで、180mm/minの速度で前記接触子を被測定部位から引き離し、このときに前記デジタルフォースゲージにより測定される引き離し荷重を読み取る。この操作を、被測定部位の複数箇所で行い、得られる複数の引き離し荷重を算術平均し、得られる算術平均値を弾性粘着部材3の粘着力とする。
【0027】
弾性粘着部材3は、その粘着性表面の硬度(JIS K6253[デュロメータE])が5〜60程度であるのが好ましい。前記粘着性表面が前記硬度の範囲内にあると、小型電子部品を粘着保持させるときに前記粘着性表面に載置された小型電子部品を粘着性表面に押圧しても小型電子部品を損傷及び破損等させることを防止できる。
【0028】
弾性部材10は、その粘着性表面、すなわち、非粘着性シート50が載置される表面が平滑であるのが好ましく、具体的には、例えば、前記粘着性表面の十点平均粗さRz(JIS B 0601−1994)が5μm以下であるのが好ましい。十点平均粗さRzは、カットオフ0.8mm、測定長さ2.4mm等の条件で測定する。粘着性表面の十点平均粗さRzは、例えば、弾性部材10を形成する際に用いる金型における製品部形成面のブラスト処理等により調整することができる。
【0029】
弾性粘着部材3は、粘着保持する予定の小型電子部品の軸線に対する垂直断面の最短辺よりも小さな厚さを有している。弾性粘着部材3がこのような厚さを有していると、例えば図6に破線で示されるように、小型電子部品がいかなる姿勢で弾性粘着部材3の端面に再粘着したとしても、小型電子部品の一部が必ず弾性粘着部材3の粘着性表面から突出して弾性粘着部材3の厚さよりも高い位置に存在することになるから、後述する脱離具で容易に端面への粘着保持を解除でき、弾性粘着部材3から容易に取り外すことができる。このように弾性粘着部材3の厚さは粘着保持予定の小型電子部品の寸法に応じて決定され、例えば、0.05mm以上0.5mm未満であるのが好ましい。より具体的には、例えば前記「0603」規格の小型電子部品を粘着保持する場合には、弾性粘着部材3の厚さは0.05mm以上0.30mm以下であるのが好ましく、0.05mm以上0.25mm以下であるのが特に好ましい。厚さが0.05mm未満にあると弾性粘着部材3の機械的強度が低下し、弾性粘着部材3の耐久性が十分でなくなることがある。このような厚さを有する弾性粘着部材3は薄肉弾性粘着部材3とも称することができ、小型電子部品の中でも最短辺が0.5mm以下、好ましくは0.3mm以下の超小型電子部品を粘着保持して取扱う用途及び製造する用途に特に適している。したがって、この保持治具1は超小型電子部品用保持治具とも称される。
【0030】
保持治具1は、このように弾性粘着部材3の端面に再粘着した小型電子部品であってもこの端面から容易に取り外すことができるから、弾性粘着部材3の端面は粘着性表面と同様に粘着性を有していてもよく、粘着力を有していなくてもよく、この弾性粘着部材3の4つの端面はすべて前記範囲の粘着力を有している。また、同様の理由で、粘着力を有する端面は露出していてもいなくてもよく、この弾性粘着部材3の4つの端面はすべて露出しており、換言すると、例えば特許文献2のように、小型電子部品を脱離させるために、治具本体2の表面であって弾性粘着部材3の4つの端縁に隣接する位置に非粘着部材及び弾性粘着部材3の粘着性表面よりも粘着力の弱い弱粘着部材が配置されていない。さらにいうと、保持治具1は、平面視すると、治具本体2の表面と弾性粘着部材3の粘着性表面とで構成されている。
【0031】
弾性粘着部材3は、接着剤層若しくはプライマー層によって、弾性粘着部材3の粘着力によって、又は、固定具等によって、治具本体2の表面に固定されていればよく、保持治具1において、弾性粘着部材3は接着剤層若しくはプライマー層を介して治具本体2の表面に固定されている。
【0032】
弾性粘着部材3は、前記粘着力を発揮することのできる粘着性材料又はこの粘着性材料の硬化物で形成されていればよく、粘着材料として、例えば、フッ素系樹脂又はフッ素系ゴム、フッ素系樹脂又はフッ素系ゴムを含有するフッ素系組成物、シリコーン樹脂又はシリコーンゴム、シリコーン樹脂又はシリコーンゴムを含有するシリコーン組成物、ウレタン系エラストマー、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合エラストマー等の各種エラストマー等が挙げられる。この中でも、シリコーンゴム、及び/又は、シリコーンゴムを含有する付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物及び過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物が好ましい。前記付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物としては、例えば、特開2008−091659号公報に記載の、シリコーン生ゴム(a)と架橋成分(b)と粘着力向上剤(c)と触媒(d)とシリカ系充填材(e)とを含有する粘着性組成物を挙げることができる。前記過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物としては、例えば、特開2008−091659号公報に記載の、シリコーン生ゴム(a)と粘着力向上剤(c)とシリカ系充填材(e)と有機過酸化物(f)とを含有する粘着性組成物を挙げることができる。
【0033】
この保持治具1は、前記厚さを有する弾性粘着部材3を備えているから、粘着性表面で小型電子部品を所望の姿勢、例えば図5及び図6に示される起立姿勢で粘着保持できるうえ、後述する脱離具で粘着保持された小型電子部品のほとんどすべてを容易に脱離すなわち取り外すことができる。
【0034】
この発明に係る保持治具は、前記材料を公知の方法等で所定形状に治具本体を作製し、作製した治具本体に別途成形した弾性粘着部材を積層し、所望により接着等して製造することもでき、作製した治具本体上に弾性粘着部材を一体成形又は塗布硬化して製造することもできる。弾性粘着部材は治具本体と共に粘着性材料を金型内に注入する一体成形法、例えばトランスファー成形等によって成形することができ、また弾性粘着部材は治具本体2の表面に例えばスクリーン印刷、流延法、ディップ法等によって粘着性材料を塗布した後に硬化して成形することができる。なお、この発明において、弾性粘着性部材の端縁及び端面を例えば非粘着材料の塗布、紫外線照射又は粗面化等の非粘着化処理又は弱粘着化処理をする必要はなく、また弾性粘着部材の他に治具本体の表面に非粘着部材及び弱粘着部材を形成する必要はない。
【0035】
このような構成を有するこの発明に係る保持治具は、後述するように、互いに相反する特性である小型電子部品の粘着性と離脱性とを高い水準で両立できる。また、この発明に係る保持治具は、弾性粘着部材の厚さが前記した特定の厚さであるから、例えば粘着性材料の硬化収縮が小さく、成形後の表面精度が高くなるうえ材料コストを低減でき、製造も容易である。
【0036】
この発明に係る取扱装置について説明する。この発明に係る取扱装置は、この発明に係る保持治具と、この保持治具における弾性部材の表面に沿って相対的に移動して粘着保持された小型電子部品を脱離させる脱離具とを備えている。この発明に係る取扱装置は、この発明に係る保持治具とこの発明に係る取扱装置を備えているから、この保持治具に粘着保持した小型電子部品を取り外すときに小型電子部品がたとえ弾性粘着部材の端面等に再粘着しても容易に取り外すことができる。この発明に係る取扱装置は、例えば、小型電子部品を一旦粘着保持し、その後取り外す必要がある、複数の小型電子部品を製造、搬送、収納若しくは検査、又は、散在した小型電子部品を回収等する等の小型電子部品を取り扱う用途に、好適に使用される。この発明に係る取扱装置における保持治具は前記した通りであり、例えば、保持治具1等が挙げられる。
【0037】
この発明に係る取扱装置における脱離具は、保持治具における弾性部材の表面に沿って保持治具に対して相対的に移動して、この保持治具に粘着保持された小型電子部品を脱離させることができる形態を有していればよく、例えば、保持治具に粘着保持された小型電子部品に衝突してこの小型電子部品を押圧することができる被衝突部を有する脱離具が好適に挙げられる。このような脱離具として、例えば、その先端が前記被衝突部として機能する転倒配置された三角柱状又は平板状のブレードであってもよく、自身が前記被衝突部として機能するワイヤー等であってもよい。また、脱離具として、このようなブレードの他に、例えば、この発明に係る保持治具の両端縁近傍それぞれを載置して摺動させる一対の摺動部と、この摺動部よりも下方で前記摺動部に挟まれるようにこれら摺動部の間に形成され、この発明に係る保持治具に粘着保持された小型電子部品が衝突する被衝突面とを有する、特開2010−186982号公報に記載された脱離具30(図7参照。)が挙げられる。この発明に係る取扱装置における脱離具は、この発明に係る保持治具における弾性部材の粘着性表面に接触状態、押圧状態又は非接触状態で相対的に移動し、好ましくは非接触状態で相対的に移動する。
【0038】
この発明に係る取扱装置の一例である取扱装置4Aは、図2に示されるように、この発明に係る保持治具の一例である保持治具1と脱離具5とを備えている。この取扱装置4Aは、例えば、小型電子部品を一旦粘着保持し、その後取り外す必要がある、複数の小型電子部品を製造、搬送、収納若しくは検査、又は、散在した小型電子部品を回収等する等の小型電子部品を取り扱う用途に、好適に使用される。保持治具1は前記した通りであり、脱離具5は転倒配置された三角柱状を成し、その先端が前記被衝突部として機能するブレードである。この脱離具5は、その延在方向の長さ、すなわち、三角柱の高さが、保持治具1の弾性粘着部材3に一列に粘着保持された複数の小型電子部品を一挙に脱離させることができる点で、弾性粘着部材3の長さよりも長くなっているのがよい。なお、脱離具5の先端は小型電子部品に衝突する被衝突部として機能するから、小型電子部品への傷付き防止等を目的として弾性材料で形成又は被覆されてもよい。
【0039】
この発明に係る取扱装置の別の一例である取扱装置4Bは、図3に示されるように、この発明に係る保持治具を2枚備えていること以外は取扱装置4Aと基本的に同様である。すなわち、この取扱装置4Bは、この発明に係る保持治具の一例である第1保持治具1Aと、この発明に係る保持治具の一例である第2保持治具2Aと、脱離具5とを備えている。この取扱装置4Bは、前記小型電子部品を取り扱う用途の中でも、例えば、小型電子部品用部材の両端部に順次所定の処理を施して小型電子部品を製造等するために、一方の保持治具に粘着保持した小型電子部品用部材を他方の保持治具に移し替えた後、移し替えた小型電子部品を取り外す小型電子部品の製造用途に好適に使用される。脱離具5は取扱装置4Aの脱離具5と同様である。
【0040】
第1保持治具1Aは、保持治具1と基本的に同様であり、治具本体2Aと、治具本体2Aの表面に配置され、小型電子部品の軸線に対する垂直断面の最短辺よりも小さな厚さを有する弾性粘着部材3Aとを備えている。また、第2保持治具1Bは、保持治具1と基本的に同様であり、治具本体2Bと、治具本体2Bの表面に配置され、小型電子部品の軸線に対する垂直断面の最短辺よりも小さな厚さを有する弾性粘着部材3Bとを備えている。第1保持治具1A及び第2保持治具1Bからなる1組の保持治具において、第2保持治具1Bの第2弾性粘着部材3Bは第1保持治具1Aの第1弾性粘着部材3Aの粘着力よりも大きな粘着力を有している。第1保持治具1A及び第2保持治具1Bは粘着力が異なること以外は基本的に同様に構成されている。したがって、この取扱装置4Bにおいて第1弾性粘着部材3Aと第2弾性粘着部材3Bとは前記最短辺よりも小さな厚さであって同一の厚さを有している。
【0041】
第1弾性粘着部材3A及び第2弾性粘着部材3Bの粘着力(前記「信越ポリマー法」による)は、いずれも、通常、1〜60g/mmであるのがよく、7〜60g/mmであるのがよい。そして、第2弾性粘着部材3Bは第1弾性粘着部材3Aの粘着力よりも大きな粘着力を有している。第1弾性粘着部材3A及び第2弾性粘着部材3Bがこのような粘着力の関係を有していると、第1弾性粘着部材3Aに粘着保持されている小型電子部品を第2弾性粘着部材3Bに移し替えることができる。第1弾性粘着部材3Aから第2弾性粘着部材3Bに小型電子部品を脱落することなくスムーズに移し替えることができる点で、第1弾性粘着部材3Aと第2弾性粘着部材3Bとの粘着力の差は15〜43g/mmであるのが好ましく、18〜35g/mmであるより一層好ましく、20〜30g/mmであるのが特に好ましい。第1弾性粘着部材3A及び3Bの粘着力は、前記粘着性シリコーン組成物における粘着力向上剤の含有量、粘着性組成物に添加される非粘着性組成物又は弱粘着性組成物の添加量等によって調整することができる。
【0042】
この発明に係る取扱装置のまた別の一例である取扱装置4Cは、図4に示されるように、この発明に係る保持治具の一例である第1保持治具1A及び1Bが支持部材14及び18それぞれに支持されていること以外は取扱装置4Bと基本的に同様である。したがって、小型電子部品の両端部に順次所定の処理を施して小型電子部品を製造等する前記製造用途に好適に使用される。第1保持治具1A、第2保持治具2A及び脱離具5は取扱装置4Bのそれらと基本的に同様であり、第1保持治具1A及び1Bが支持される支持部材14及び18等の基本的な構成及び作用機構は特開2010−186982号公報に記載された「被粘着物保持装置10」と基本的に同様である。
【0043】
取扱装置4Cは、図4に示されるように、第1保持治具1Aと第2保持治具1Bとが、第1弾性粘着部材3Aと第2弾性粘着部材3Bとが相対向するように配置可能に、支持部材14及び18に支持固定されている。具体的には、支持部材14及び18それぞれが取り付けられた軌条11及び5が交差する位置近傍で第1弾性粘着部材3Aと第2弾性粘着部材3Bとが相対向するようになっている。したがって、第1保持治具1Aに粘着保持された小型電子部品を第2保持治具1Bに移し替えることができる。このような第1弾性粘着部材3Aと第2弾性粘着部材3Bとの配置は取扱装置4Cにおいては機械的構成からなる変位手段により実現される。
【0044】
第1保持治具1Aは、図4に示されるように、第2治具本体2Aにおける第1弾性粘着部材3Aが形成されていない表面側が保持治具変位手段12から下方に延在する支持アーム13の先端に設けられた支持部材14に固定され、保持治具変位手段12に支持されている。この保持治具変位手段12は、軌条11に取り付けられ、この軌条11に沿って水平方向に、かつ軌条11を中心軸にして軸回りに回転運動可能に構成され、さらに支持アーム13を上下方向に運動可能に構成されている。
【0045】
第2保持治具1Bは、図4に示されるように、第2治具本体2Bにおける第2弾性粘着部材3Bが形成されていない表面側が保持治具変位手段16から上方に延在する支持アーム17の先端に設けられた支持部材18に固定され、保持治具変位手段16に支持されている。この保持治具変位手段16も、保持治具変位手段12と同様に、軌条15に沿って水平方向に、かつ軌条15を中心軸にして軸回りに回転運動可能に構成され、さらに支持アーム17を上下方向に運動可能に構成されている。
【0046】
保持治具変位手段12及び保持治具変位手段16における運動機構は、特に限定されず、例えば、駆動力を発生する駆動手段、例えば、モータと、このモータの出力を軌条11又は15、及び、支持アーム13又は17に伝達する伝達手段、例えば、歯車、ワイヤー等とを備えた運動機構が挙げられる。
【0047】
次に、この発明に係る保持治具及びこの発明に係る小型電子部品の取扱装置を用いた、この発明に係る小型電子部品の取扱方法及びこの発明に係る小型電子部品の製造方法を説明する。この発明に係る小型電子部品の取扱方法及びこの発明に係る小型電子部品の製造方法は、この発明に係る保持治具の弾性粘着部材上に粘着保持された小型電子部品を、脱離具を弾性粘着部材の表面に沿って相対的に移動して、弾性粘着部材から脱離する工程を有し、好ましくは小型電子部品をこの発明に係る保持治具の弾性粘着部材3の粘着性表面に押圧して粘着保持させる保持工程を有している。この発明に係る小型電子部品の取扱方法及びこの発明に係る小型電子部品の製造方法は共にこの発明に係る保持治具に粘着保持された小型電子部品を脱離する工程を有しているから、粘着保持された小型電子部品のほとんどすべてを容易に脱離させることができる。したがって、この発明に係る小型電子部品の取扱方法及びこの発明に係る小型電子部品の製造方法は、小型電子部品、具体的には前記最短辺が0.5mm以下、好ましくは0.30mm以下の超小型電子部品を粘着保持して取扱う用途及び製造する用途に特に適しており、超小型電子部品の取扱方法及び超小型電子部品の製造方法と称することもできる。
【0048】
この発明に係る小型電子部品の製造方法の一例である一製造方法を、この発明に係る小型電子部品の取扱方法を含めて具体的に説明する。この一製造方法では、小型電子部品として、チップコンデンサ本体7aの起立状態における軸線方向の両端部それぞれに電極(図5及び図6において図示しない。)が形成されたチップコンデンサ7を製造する。このチップコンデンサ本体7a及びチップコンデンサ7は、図5及び図6に示されるように、縦及び横が0.3mmすなわち前記最短辺が0.3mmの正方形を底面及び頂面とする四角柱体を成しており、チップコンデンサ本体7aは前記「0603」規格のチップコンデンサを製造可能なチップコンデンサ用部材である。
【0049】
一製造方法においては、2つの保持治具を有する取扱装置4B又は4Cを準備する。一製造方法においては、準備した取扱装置4B又は4Cの第1保持治具1Aにチップコンデンサ本体7aを粘着保持させる。例えば、第1保持治具1Aの第1弾性粘着部材3Aの粘着性表面上に複数のチップコンデンサ本体7aを起立状態で所定のパターンに配列し、これらチップコンデンサ本体7aを粘着性表面に押圧して粘着保持させる。このようにしてチップコンデンサ本体7aを粘着保持させる方法として、例えば特開2008−091659号公報に記載された方法等が挙げられる。
【0050】
一製造方法においては、このようにしてチップコンデンサ本体7aを粘着保持した後に、例えば保持治具変位手段12を回転運動させて第1弾性粘着部材3Aに多数のチップコンデンサ本体7aが懸垂保持された状態に第1保持治具1Aを配置する。その後、例えば支持アーム13を下方向に運動させてチップコンデンサ本体7aの下端部を導電ペースト浴に浸漬させて、チップコンデンサ本体7aの下端部に導電ペーストを塗布する。このようにして塗布した導電ペーストを乾燥させて電極を形成する。
【0051】
一製造方法においては、次いで、例えば保持治具変位手段12を水平方向に運動させて、例えば図3及び図4に示されるように、第2保持治具1Bの上方に第1保持治具1Aを配置する。その後、例えば、支持アーム13を下方向に運動させて第1保持治具1Aを第2保持治具1Bに向かって降下させ、図5に示されるように、第1保持治具1Aの第1弾性粘着部材3Aに粘着保持されたチップコンデンサ本体7aの下端部を第2保持治具2Aの第2弾性粘着部材3Bに圧接させる。そうすると、第1弾性粘着部材3Aに粘着保持された複数のチップコンデンサ本体7aは第1弾性粘着部材3A及び第2弾性粘着部材3Bに沈み込んで第1弾性粘着部材3Aよりも大きな粘着力を有する第2弾性粘着部材3Bに電極を介して粘着保持され、第2保持治具1Bにほとんど残存することなく移し替えられ、すなわち転写される。
【0052】
一製造方法においては、次いで、例えば保持治具変位手段16を回転運動させて第2弾性粘着部材3Bに多数のチップコンデンサ本体7aが懸垂保持された状態に第2保持治具1Bを配置して、第1保持治具1Aの場合と同様にして、チップコンデンサ本体7aの下端部に導電ペーストを塗布、乾燥して、電極を形成する。そうすると、第2保持治具1Bの第2弾性粘着部材3Bには、図6に示されるように、チップコンデンサ本体7aそれぞれの両端部にほぼ均等な大きさの電極(図5及び図6に図示しない。)が形成されて成るチップコンデンサ7が懸垂状態又は起立状態で粘着保持されている。
【0053】
一製造方法においては、次いで、この一取扱方法において、図6に示されるように、チップコンデンサ7が懸垂保持された状態に第2保持治具1Bを配置して、脱離具5を第2保持治具1Bの粘着性表面に沿って第2弾性粘着部材3Bの一端縁に向かって相対的に移動させる。具体的には、脱離具5を第2保持治具1Bの粘着性表面近傍に非接触となるように配置し、この脱離具5を粘着性表面に沿って相対的に前進移動すなわちチップコンデンサ7側に移動させる。このとき、脱離具5は、第2弾性粘着部材3Bの粘着性表面との離間距離と第2弾性粘着部材3Bの厚さとの合計量がチップコンデンサ7の前記最短辺よりも小さくなるように、配置される。そして、前記のように脱離具5が移動されると、脱離具5は、その先端がチップコンデンサ7の側面に当接して、チップコンデンサ7を前記方向すなわち側方に押圧して粘着性表面から脱落させる。このようにして第2保持治具1Bに粘着保持されている大部分のチップコンデンサ7を取り外すことができる。このとき、チップコンデンサ7の一部は、図6に破線で示されるように第2弾性粘着部材3B上を例えば移動して端面に再粘着することがあるが、第2弾性粘着部材3Bは前記厚さを有しているから、第2弾性粘着部材3Bの端面に再粘着したチップコンデンサ7はその再粘着姿勢にかかわらず、図6に破線で示されるように、チップコンデンサ7の一部が必ず第2弾性粘着部材3Bの粘着性表面から突出して弾性粘着部材3の厚さよりも高い位置に存在する。したがって、図6に破線で示されるように第2弾性粘着部材3Bの端縁まで移動してくる脱離具5で容易に端面から引き離されて第2弾性粘着部材3Bから脱離する。このようにして、第2保持治具1Bに粘着保持されたチップコンデンサ7のほとんどすべてを脱離させることができる。
【0054】
一製造方法においては、このようにして、多数のチップコンデンサ本体7aを一挙に起立状態で第1保持治具1Aに所望のように粘着保持することができると共に、チップコンデンサ本体7aを第1保持治具1Aから第2保持治具1Bに起立状態を保持したまま移し替えることができ、さらに、第2保持治具1Bに移し替えられたチップコンデンサ本体7aのほとんどすべてを容易に脱離させることができる。
【0055】
この発明に係る保持治具及び取扱装置は、前記例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、取扱装置4A〜4Cにおいて、第1弾性粘着部材3Aと第2弾性粘着部材3Bとは同一の厚さを有しているが、この発明において、第1弾性部材と第2弾性部材とは異なる厚さを有していてもよい。この場合、第1弾性粘着部材3Aの方が第2弾性粘着部材3Bよりも厚くてもよいし薄くてもよく、第2弾性粘着部材3Bが薄い場合には第1弾性粘着部材3Aの0.5倍よりも厚くすることができる。
【0056】
保持治具1、1A及び1Bはいずれも矩形のシート状又は平版様を成しているが、この発明において、保持治具は、用途等に応じて、無端ベルト状、肉厚の板状体、シート体、長尺体等の形態に適宜に形成されることができる。
【0057】
治具本体2、2A及び2B並びに弾性粘着部材3、3A及び3Bはいずれも矩形のシート状若しくは平版様又は盤状薄葉体に形成されているが、この発明において、治具本体及び弾性部材は、小型電子部品の製造に適した形状であればよく、小型電子部品の形状、製造工程及び作業性等に応じて、任意の形状とされる。例えば、保持治具、治具本体及び弾性部材は、正方形、長方形、五角形、六角形等の多角形、円形、楕円形、不定形、又は、これらを組み合わせた形状等の板状体が挙げられる。また、治具本体における弾性粘着部材が形成されない一方の面側は、平面形状であっても、半円筒体等の立体形状であってもよい。
【0058】
取扱装置4A〜4Cは、保持治具1、1A及び1B並びに脱離具5を備えて成るが、この発明において、取扱装置は、これら以外の部材又は要素、例えば、第3保持治具、小型電子部品の収納部材、脱離具の駆動手段、また、特開2008−091659号公報に記載された立設配置板例えば前記立設配置板、及び、立設配置板の配設孔に挿入された小型電子部品を第1保持治具に向けて押圧するプレス板等を備えていてもよい。
【0059】
取扱装置4Cは軌条11と軌条15とがほぼ直角に交差するように配設されているが、この発明において、2本の軌条は略平行に配設されていてもよい。
【0060】
この発明に係る小型電子部品の取扱方法及び小型電子部品の製造方法は、前記例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、前記一製造方法においては、図6に示されるようにチップコンデンサ7が懸垂保持された状態に第2保持治具1Bを配置して脱離する工程を実施しているが、この発明においては、第2弾性粘着部材の厚さが小型電子部品であるチップコンデンサ本体の軸線に対する垂直断面の最短辺よりも小さくなっているから、小型電子部品が起立保持された状態に第2保持治具を配置して脱離する工程を実施しても、一製造方法と同様に、小型電子部品のほとんどすべてを脱離させることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 保持治具(超小型電子部品用保持治具)
1A 第1保持治具
1B 第2保持治具
2 治具本体
2A 第1治具本体
2B 第2治具本体
3 弾性粘着部材
3A 第1弾性粘着部材
3B 第2弾性粘着部材
4A、4B、4C 取扱装置
5 脱離具
7 チップコンデンサ
7a チップコンデンサ本体
11、15 軌条
12、16 保持治具変位手段
13、17 支持アーム
14、18 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治具本体と、前記治具本体の表面に配置され、小型電子部品を粘着保持する弾性粘着部材とを備えた保持治具であって、
前記弾性粘着部材は、前記小型電子部品の軸線に対する垂直断面の最短の辺よりも小さな厚さを有している保持治具。
【請求項2】
前記弾性粘着部材は、少なくとも1つの端面全体が露出している請求項1に記載の保持治具。
【請求項3】
前記厚さは、0.05mm以上0.5mm未満である請求項1に記載の保持治具。
【請求項4】
前記小型電子部品が0.5mm以下の前記最短の辺を有する超小型電子部品である請求項1に記載の超小型電子部品用保持治具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の保持治具と、
前記弾性粘着部材の表面に沿って相対的に移動して粘着保持された小電子型部品を脱離させる脱離具とを備えて成る小型電子部品の取扱装置。
【請求項6】
前記保持治具は、第1保持治具と第2保持治具とを有し、前記第2保持治具の第2弾性部材は前記第1保持治具の第1弾性部材の粘着力よりも大きな粘着力を有している請求項5に記載の小型電子部品の取扱装置。
【請求項7】
前記小型電子部品が0.5mm以下の前記最短の辺を有する超小型電子部品である請求項5又は6に記載の超小型電子部品用取扱装置。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の保持治具の前記弾性粘着部材上に粘着保持された小型電子部品を、脱離具を前記弾性粘着部材の表面に沿って相対的に移動して、前記弾性粘着部材から脱離する工程を有する小型電子部品の取扱方法。
【請求項9】
前記小型電子部品が0.5mm以下の前記最短の辺を有する超小型電子部品である請求項8に記載の小型電子部品の取扱方法。
【請求項10】
請求項8に記載の脱離する工程を有する小型電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記小型電子部品が0.5mm以下の前記最短の辺を有する超小型電子部品である請求項10に記載の超小型電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−42064(P2013−42064A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179445(P2011−179445)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】