説明

保持治具及び保持治具の製造方法

【課題】品質の均一な電子部品を高い生産性で製造することのできる保持治具、及び、品質の均一な電子部品を高い生産性で製造することのできる保持治具の製造方法を提供すること。
【解決手段】複数の保持孔11が貫通形成されて成る平板状の弾性部材10と、弾性部材10に埋設された平板状の芯材20とを備え、保持孔11の配列方向に平行で、かつ、最外列に配列された保持孔11に接する外側の接線で囲繞された領域12内に強度補強部13を有する保持治具1、及び、押出手段と成形ピンとを有する金型に、複数の貫通孔と貫通孔が形成された領域内に強度補強部形成部とを有して成る芯材を挿入し、金型と芯材とで形成された間隙に弾性材料を注入して弾性材料を成形し、前記押出手段により強度補強部を押出し、保持治具を金型から離型することを特徴とする保持治具の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持治具及び保持治具の製造方法に関し、さらに詳しくは、品質の均一な電子部品を高い生産性で製造することのできる保持治具及びこの保持治具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ、デジタルビデオカメラ関連機器、デジタルスチルカメラ関連機器、コンパクトディスク関連機器、ミニディスク関連機器、デジタルバーサタイルディスク(DVD)関連機器、移動体通信関連機器等のポータブル機器等に使用される電子部品、例えば、インダクタ等は、プリント回路基板等に実装され、発振回路の構成要素等として、ポータブル機器等に実装される。例えば、インダクタは、一般に、電子部品用部材に、無電解めっき法等によって内部電極が形成され、コイルが螺巻され、さらに所望により外部電極等が形成されて、ポータブル機器等に実装される。
【0003】
このような電子部品は、通常小型であるから、生産性と製造された製品の均質性とを両立させるため、電子部品用部材を保持する保持治具を用いて、製造され、搬送され、又は、保存等される。このような保持治具として、例えば、複数の保持孔が貫通形成されて成る平板状の弾性部材と、前記弾性部材に埋設された平板状の芯材とを備えた保持治具が知られている。より具体的には、特許文献1に、「(a)多数の並列状貫通通路を有するプレート体を備えること。(b)前記通路は弾性壁を有して電気用小型パーツが該通路内に位置可能となっており、かつ該通路の寸法は対応するパーツの寸法よりも小さく、パーツが前記通路内位置で弾性的に把持されること。以上(a)および(b)の構成から成るを特徴とする多数の電気用小型パーツ端部のコーティング用装置」が記載されている。このような保持治具及びコーティング用装置は、通常、数百個〜数万個程度の電子部品用部材又は電気用小型パーツを保持するように、貫通孔又は並列状貫通通路が形成される。
【0004】
これらの保持治具等は、通常、弾性部材に形成される保持孔の位置に対応した位置に複数の成形ピンが形成された金型に、電子部品用部材又は電子部品の断面寸法よりも大きい径を有する複数の貫通孔が配列されて成る芯材を、芯材の貫通孔内に前記成形ピンが位置するように、挿入し、次いで、この金型と芯材とで形成される間隙に弾性材料、例えば、ゴム等を注入して、成形する製造方法によって、製造される(例えば、特許文献2参照。)。この製造方法においては、例えば、図12に示されるように、保持治具41の縁部43を把持して、金型40から保持治具41を離型する際に、複数の成形ピン34が弾性部材10から抜き取られるときに生じる抜取り力によって、芯材42の中央部近傍に位置する成形ピン34は芯材42の縁部近傍に位置する成形ピン34よりも抜き取りにくく、その結果、芯材42が変形又は破損することがある。そこで、芯材の変形又は破損を防止するため、芯材の厚さを厚くし、及び/又は、芯材に形成される貫通孔の径を小さくして、芯材の強度を保持する必要がある。ところが、芯材の厚さを厚くすると、保持治具の質量が増大して、保持治具の取扱性が低下し、一方、貫通孔の径を小さくすると、保持治具に電子部品用部材を挿入保持する際の作業性が低下すると共に、必要以上の挿入力及び抜取り力が作用して、弾性部材が破損しやすくなる。それ故、従来の保持治具は、強い強度を有する金属等の材料で厚めの芯材を形成することによって、芯材の強度、前記作業性及び弾性部材の破損防止特性を、確保していた。
【0005】
ところが、近年、電子部品の需要が増大していること等から、電子部品の製造における生産性を向上させることが望まれている。このような要望を実現する方法として、例えば、保持治具を大型化すること、及び/又は、保持治具に形成される保持孔の数を増加させることによって、保持治具1枚で製造可能な電子部品数を増大させる方法が挙げられる。
【0006】
しかし、保持治具1枚で製造可能な電子部品数を増大させると、大型化及び/又は貫通孔数増加によって、弾性部材を平滑に保持する芯材の強度が低下する。このような強度が低下した芯材を用いて、前記製造方法により保持治具を製造すると、図12に示されるように、保持治具41の縁部43を把持して、金型40から保持治具41を離型する際に、複数の成形ピン34が弾性部材10から抜き取られるときに生じる抜取り力が強大になり、低強度の芯材42が変形又は破損し、保持治具41の平滑性が損なわれることがある。そして、保持治具の平滑性が損なわれると、所定数の電子部材用部品のほぼすべてを保持治具に一括して挿入保持することができず、所定数の電子部品を高い生産性で製造することできなくなり、一方、所定数の電子部材用部品のほぼすべてを保持治具に一括して挿入保持することができたとしても、品質の均一な電子部品を製造することができなくなるという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特公昭62−20685号公報
【特許文献2】特開2003−200436号公報の段落番号0003欄等
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、このような従来の問題点を解消し、品質の均一な電子部品を高い生産性で製造することのできる保持治具を提供すること、及び、品質の均一な電子部品を高い生産性で製造することのできる保持治具の製造方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、複数の保持孔が貫通形成されて成る平板状の弾性部材と、前記弾性部材に埋設された平板状の芯材とを備え、前記保持孔の配列方向に平行で、かつ、最外列に配列された保持孔に接する外側の接線で囲繞された領域内に強度補強部を有する保持治具であり、
請求項2は、前記強度補強部は、前記領域の仮想表面積に対して0.04〜15%の面積を有する請求項1に記載の保持治具であり、
請求項3は、前記弾性部材は、シリコーンゴムで形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の保持治具であり、
請求項4は、複数の貫通孔が貫通形成されると共に、前記貫通孔が貫通形成された領域内に強度補強部を有して成る平板状の芯材を、押出手段と複数の成形ピンとを有する金型に、前記貫通孔内に前記成形ピンが位置するように、挿入し、
前記金型と前記芯材とで形成された間隙に弾性材料を注入して、弾性材料を成形し、
前記押出手段により前記強度補強部を押出し、保持治具を金型から離型する
ことを特徴とする保持治具の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る保持治具は、その保持孔が貫通形成された領域内に強度補強部を有するから、例えば、芯材を大型化し、又は貫通孔の数を増加させ、生産性の向上を図ることによって、芯材の強度が低下し、又は成形ピンの弾性部材からの抜取り力が強固になっても、また、例えば、芯材の厚さを薄くし、又は貫通孔の径を大きくすることによって芯材の強度が低下しても、芯材が変形又は破損することを防止しつつ、保持治具を金型から容易に離型することができる。
【0011】
また、この発明に係る保持治具の製造方法は、金型に設けられた押出手段によって強度補強部を押出すから、芯材の強度が低下しても、また、成形ピンの弾性部材からの抜取り力が強固になっても、芯材が変形又は破損することを防止しつつ、保持治具を金型から容易に離型することができる。
【0012】
したがって、この発明によれば、品質の均一な電子部品を高い生産性で製造することのできる保持治具を提供すること、及び、品質の均一な電子部品を高い生産性で製造することのできる保持治具の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の一実施例である保持治具を、図面を参照して、説明する。この保持治具1は、電子部品の製造方法、例えば、電子部品用部材をめっきする工程等の製造工程に加えて、電子部品用部材又は電子部品(この発明において、電子部品用部材には電子部品を含み、以下、電子部品用部材等と称することがある。)を保持して、搬送する工程又は保存等に使用される。この保持治具1は、電子部品用部材をめっきする工程に特に有利に使用される。
【0014】
ここで、電子部品としては、例えば、インダクタ、コンデンサ、抵抗器等が挙げられ、電子部品の材料である電子部品用部材としては、例えば、インダクタの場合には、フェライト等で形成された、角柱状及び円柱状等の筒部からなる筒状体等が挙げられる。これらの電子部品用部材等の大きさは、実装されるポータブル機器等に応じて、所望の大きさに調整される。
【0015】
保持治具1は、図1〜図3に示されるように、複数の保持孔11が貫通形成されて成る平板状の弾性部材10と、前記弾性部材10に埋設された平板状の芯材20とを備え、前記保持孔11の配列方向に平行で、かつ、最外列に配列された保持孔11に接する外側の接線L(図2において、L、L、L及びL)で囲繞された保持孔集合領域(以下、単に領域と称することがある。)12内に強度補強部13を有している。
【0016】
まず、保持治具1を構成する前記芯材20及び弾性部材10について、説明する。前記芯材20は、後述する弾性部材10に埋設され、弾性部材10を平板上に維持する。芯材20は、図4及び図5に示されるように、複数の貫通孔21が形成された矩形の平板部22と、平板部22の周囲に、平板部22の上面方向及び下面方向に突出した鍔状部23、換言すると、フランジ部と、前記貫通孔21が貫通形成された貫通孔集合領域24内に強度補強部形成部25とを備えている。
【0017】
前記鍔状部23は、平板部22を囲繞するように形成され、平板部22の上面方向及び下面方向における高さが同じに調整されている。換言すると、長方形の枠状を成す鍔状部23の厚さ方向の略中央部が平板部22で連結されている。この鍔状部23は、後述する強度補強部13と共に平板部22を補強し、また、保持治具1としたときの取扱性を確保する。
【0018】
前記平板部22は、図4及び図5に示されるように、貫通形成された貫通孔21を複数、例えば、約2000個以上、好ましくは、少なくとも約3000個以上、より好ましくは、少なくとも約3500個以上有する。芯材20に複数の貫通孔21が形成されると、保持治具1を用いた電子部品の製造方法における電子部品の生産性が向上する。この貫通孔21は、通常、後述する保持孔11が配列されたパターンと同一のパターンで穿孔され、芯材20においては、保持孔11と同様に、貫通孔21が縦横に所定の間隔をおいて碁盤目状に配列されている。貫通孔21の配列間隔は、保持治具1に挿入保持する電子部品用部材等の大きさ等によって、任意に調整することができるが、好ましくは、保持孔11と同じ間隔に調整される。
【0019】
貫通孔21を水平面で切断したときの断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形、多角形等の形状を任意に選択することができるが、電子部品用部材等を挿入保持させるときの作業性等に優れる点で、保持孔11の断面形状と同一形状に形成されるのが特によい。芯材20においては、図4に示されるように、貫通孔21の断面形状は略円形とされている。
【0020】
貫通孔21の内径は、電子部品用部材等及び保持孔11の大きさ、形成される貫通孔21の数等に応じて、任意に調整することができ、好ましくは、保持孔11の内径よりも大きく、かつ、保持孔11に電子部品用部材等を容易に挿入し、抜き取ることができる程度の内径に調整される。例えば、貫通孔21の内径は、電子部品用部材等における保持孔11に挿入される筒部の直径又は側面幅に対して2〜9倍程度に調整される。この貫通孔21は、図5に示されるように、貫通孔21の垂直断面において、略均一の内径を有している。なお、貫通孔21の内径は、貫通孔21が円形断面である場合だけではなく、多角形断面である場合の円相当径をも含む。
【0021】
前記平板部22は、前記貫通孔21の配列方向に平行で、かつ、最外列に配列された貫通孔21に接する外側の接線L(図4において、L、L、L及びL)で囲繞されてなる貫通孔集合領域(以下、単に領域と称することがある。)24を有する。この領域24は、平板部22の全体に形成されてもよく、また、図4及び図5に示されるように、平板部22の内部に形成されてもよい。
【0022】
この領域24は、図4及び図5に示されるように、その内部に、保持治具1としたときに、強度補強部13を形成する強度補強部形成部25が形成されている。この強度補強部形成部25は、図4に示されるように、芯材20における短辺方向の略中央部であって、かつ、芯材20における長辺方向の長さを略3等分する位置に、芯材20の短辺方向及び長辺方向に対称となるように、2個形成されている。この強度補強部形成部25は、図5に示されるように、貫通孔21が形成されていない貫通孔未形成領域26から、平板部22の上面方向及び下面方向に突出した凸状体、より具体的には、四角柱体をなし、その高さ(厚さ)は前記鍔状部23と同じ高さ(厚さ)に調整されている。平板部22が強度補強部形成部25を有する場合には、1枚の保持治具に挿入保持可能な電子部品用部材の数を増大させること等によって、芯材20の強度が低下しても、芯材20及び保持治具1が変形又は破損することを防止することができ、その結果、保持治具1としたときの高い生産性と平滑性とを実現することができる。また、前記芯材20を薄く形成しても、芯材20が変形及び破損することを防止することができ、かつ、保持治具1に電子部品用部材等を挿入保持する際にも保持治具1が変形又は破損することを防止することができ、その結果、保持治具1の作業性が向上する。
【0023】
この強度補強部形成部25は、その総面積が、前記平板部22の面積に対して、0.04〜15%であるのが好ましい。強度補強部形成部25がこの範囲の面積を有すると、芯材20及び保持治具1が変形又は破損することを効果的に防止して、保持治具1としたときの高い平滑性を維持することができると共に、貫通孔21の数を大幅に減らすことなく、保持治具1としたときの電子部品の高い生産性を損なうことがないから、品質の均一な電子部品を高い生産性で製造することができる。品質がきわめて均一な電子部品をより一層高い生産性で製造することができる点で、強度補強部形成部25は、前記平板部22の面積に対して、0.05〜10%であるのがより好ましく、0.1〜7%であるのが特に好ましい。
【0024】
図4及び図5に示されるように、貫通孔集合領域24が平板部22の内部に形成されている場合には、強度補強部形成部25は、その総面積が、前記領域24の仮想表面積に対して、0.04〜15%であるのが好ましい。強度補強部形成部25がこの範囲の面積を有すると、同様に、品質の均一な電子部品を高い生産性で製造することができる。品質がきわめて均一な電子部品をより一層高い生産性で製造することができる点で、強度補強部形成部25は、前記領域24の仮想表面積に対して、0.05〜10%であるのがより好ましく、0.1〜7%であるのが特に好ましい。
【0025】
ここで、領域24の仮想表面積は、前記接線L〜Lで囲繞されてなる前記領域24に貫通孔21が形成されていないと仮定したときの、領域24の表面積である。また、前記強度補強部形成部25の面積は、通常、貫通孔21が形成されていない貫通孔未形成領域26の表面積、すなわち、芯材20においては、強度補強部形成部25における凸状体頂面の表面積とされるが、場合により、貫通孔未形成領域26から最近列に配列された貫通孔21に接する接線(図4において、図示しない。)によって囲繞される領域の表面積とすることができる。
【0026】
芯材20は、電子部品用部材等の生産性、電子部品用部材等の長さ及び保持治具1の強度等を考慮して、鍔状部23、平板部22及び貫通孔未形成領域26の大きさ及び厚さが調整される。
【0027】
芯材20は、弾性部材10を平滑な形状に維持することのできる材料で形成されていればよく、このような材料として、金属及び樹脂等が挙げられる。具体的には、金属として、ステンレス鋼、炭素鋼、アルミニウム合金、ニッケル合金等が挙げられ、樹脂として、例えば、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリ塩化ビニル等が挙げられる。芯材20は、加工性、操作性の観点から、ステンレス鋼、アルミニウム合金及びポリフェニレンスルフィド樹脂等で形成されるのがよく、強度と軽さとを高い水準で両立することができる点で、アルミニウム合金であるのが特によい。
【0028】
前記弾性部材10は、図1〜図3に示されるように、複数の保持孔11が貫通形成された平板状を成している。より具体的には、弾性部材10は、図3に示されるように、前記芯材20、具体的には、芯材20の平板部22を埋設し、換言すると、芯材20の平板部22の両面を被覆すると共に、芯材20の貫通孔21に貫入し、芯材20の鍔状部23及び強度補強部形成部25と面一になるように、形成されている。すなわち、弾性部材10は、前記芯材20の両面に配設されると共に、芯材20の貫通孔21に貫入することによって、両面に配設された弾性部材10が一体に成っている。このように弾性部材10が形成されると、弾性部材10と芯材20との密着性に優れる上、電子部品用部材等の挿入及び抜取りが容易になるという利点がある。
【0029】
弾性部材10は、図1〜図3に示されるように、前記芯材20の平板部22、すなわち、芯材20の鍔状部23によって囲繞され、かつ、強度補強部形成部25を除いた部分に配設されている。この弾性部材10は、その短辺方向の略中央、かつ、その長辺方向の長さを略3等分する位置に、前記強度補強部形成部25に対応する矩形の開口14を2個有している。
【0030】
弾性部材10は、図1〜図3に示されるように、電子部品用部材等を挿入保持、好ましくは貫入保持する複数の保持孔11を有し、保持孔11に挿入、好ましくは貫入された電子部品用部材等を、保持する。弾性部材10は、図1及び図2に示されるように、保持孔11を複数、例えば、約2000個以上、好ましくは、少なくとも約3000個以上、より好ましくは、少なくとも約3500個以上有する。弾性部材10に複数の保持孔11が形成されると、多数の電子部品用部材等を、弾性部材10の保持孔11に容易に挿入し、保持孔11から容易に抜き取ることができ、電子部品の生産性が向上する。
【0031】
前記保持孔11は、図1〜図3に示されるように、縦横に所定の間隔をおいて碁盤目状に配列されている。保持孔11の配列間隔は、保持治具1に挿入保持する電子部品用部材等の大きさ等によって、任意に調整することができるが、好ましくは、高い生産効率を実現することのできる程度の間隔に調整される。例えば、保持孔11の配列間隔は、前記電子部品用部材等における保持孔11に挿入保持される部分の直径又は幅に対して3〜10倍程度に調整される。
【0032】
保持孔11を水平面で切断したときの断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形、多角形等の形状を任意に選択することができるが、保持力が強く、マスク効果も優れる点で、電子部品用部材等における保持孔11に挿入保持される部分の断面形状と同一形状に形成されるのがよい。弾性部材1においては、図1及び図2に示されるように、保持孔11の断面形状は略円形とされている。
【0033】
保持孔11の内径は、電子部品用部材等の大きさ、形成される保持孔11の数等に応じて、任意に調整することができる。例えば、保持孔11の内径は、電子部品用部材等における保持孔11に挿入保持される部分の直径又は幅に対して0.5〜1.3倍程度に調整される。保持孔11は、図3に示されるように、保持孔11の垂直断面(軸線断面)において、略同一の内径を有しているが、略中心部から端開口部に向けて内径が漸次小さくなるように形成されてもよい。なお、保持孔11の内径は、保持孔11が円形断面である場合だけではなく、多角形断面である場合の円相当径をも含む。
【0034】
弾性部材10は、電子部品用部材等の生産性、電子部品用部材等の長さ及び芯材20の厚さ等を考慮して、通常、前記鍔状部23及び強度補強部形成部25と面一になるように、その大きさ及び厚さが調整される。
【0035】
弾性部材10は、電子部品用部材等を挿入及び/又は抜き取る際に弾性変形し、かつ、破損しないように、所定の伸び、引張強さ及び硬度を有しているのが好ましい。例えば、JIS K6249に規定の切断時伸び(引張速度500mm/min)は、200〜1000%であるのが好ましく、400〜900%であるのが特に好ましく、JIS K6249に規定の引張強さ(引張速度500mm/min)は、5〜15MPaであるのが好ましく、7〜14MPaであるのが特に好ましく、JIS K6253に規定の硬度(JIS A)は、20〜80であるのが好ましく、40〜60であるのが特に好ましい。
【0036】
弾性部材10の表面は、保持治具1が電子部品の製造方法、例えば、電子部品用部材のめっき工程に使用されるから、製品の均質性を実現し、また、弾性部材10の表面がめっき等されないように、平滑であるのが好ましく、鏡面とされているのがより好ましい。弾性部材10の表面を鏡面にするには、内面が鏡面とされた金型を用いて弾性部材10を成形する方法、成形後の表面を常法に従って研磨処理又は研削処理する方法等を選択すればよい。
【0037】
弾性部材10は、弾性変形し、電子部品用部材等を挿入保持することのできる材料で形成されていればよく、このような材料として、ゴム及びエラストマー等が挙げられる。具体的には、シリコーンゴムが挙げられる。シリコーンゴムの中でも、高重合度の線状ポリジメチルシロキサン若しくはその共重合体を架橋してゴム弾性を付与したシリコーンゴム、又は、耐酸性のシリコーンゴムが好ましい。高重合度の線状ポリジメチルシロキサンを架橋したシリコーンゴムとしては、例えば、商品名「KE−1950−50」(信越化学工業株式会社製)等を入手することができる。
【0038】
前記芯材20とその平板部22に配設された前記弾性部材10とを備えた保持治具1は、図1〜図3に示されるように、前記保持孔11の配列方向に平行で、かつ、最外列に配列された保持孔11に接する外側の接線L(図2において、L、L、L及びL)で囲繞された保持孔集合領域(以下、単に領域と称することがある。)12内であって、この領域12における短辺方向の略中央、かつ、領域12における長辺方向の長さを略3等分する位置に、領域12における短辺方向及び長辺方向に対称となるように、2個の強度補強部13を有している。保持治具1が保持孔集合領域12内に強度補強部13を有していると、1枚の保持治具に挿入保持可能な電子部品用部材の数を増大させること等によって、後述する芯材20の強度が低下しても、保持治具1の強度が補強されるから、保持治具1が変形又は破損することを防止することができ、その結果、保持治具1は、高い生産性と高い平滑性とを維持することができる。また、前記芯材20を薄く形成しても、芯材20及び保持治具1が変形及び破損することを防止することができ、かつ、保持治具1に電子部品用部材等を挿入保持する際にも保持治具1が変形又は破損することを防止することができ、その結果、保持治具1の作業性が向上する。
【0039】
保持治具1における強度補強部13は、図3に明確に示されるように、前記平板部22の貫通孔未形成領域26に一体に形成され、弾性部材10に埋設されていない。すなわち、芯材20の強度補強部形成部25が強度補強部13を構成している。それ故、保持治具1は、図3に示されるように、平板部22に配設された弾性部材10と、弾性部材10に埋設されていない強度補強部13と、平板部22の周囲に設けられた鍔状部23とが面一になっている。
【0040】
強度補強部13は、その総面積が、弾性部材10と強度補強部13との合計面積、すなわち、弾性部材10が配設された平板部22の面積に対して、0.04〜15%であるのが好ましい。強度補強部13がこの範囲の面積を有すると、保持治具1が変形又は破損することを効果的に防止して、保持治具1の高い平滑性を維持することができると共に、後述する弾性部材10に形成される保持孔21の数を大幅に減らすことなく、電子部品の高い生産性を損なうことがないから、品質のより一層均一な電子部品を高い生産性で製造することができる。品質がきわめて均一な電子部品をより一層高い生産性で製造することができる点で、強度補強部13は、弾性部材10と強度補強部13との合計面積に対して、0.05〜10%であるのがより好ましく、0.1〜7%であるのが特に好ましい。
【0041】
図1〜図3に示されるように、保持孔集合領域12が弾性部材10の縁部と一致していない場合には、強度補強部13は、その総面積が、前記領域12の仮想表面積に対して、0.04〜15%であるのが好ましい。強度補強部13がこの範囲の面積を有すると、同様に、品質のより一層均一な電子部品を高い生産性で製造することができる。品質がきわめて均一な電子部品をより一層高い生産性で製造することができる点で、強度補強部13は、前記領域12の仮想表面積に対して、0.05〜10%であるのがより好ましく、0.1〜7%であるのが特に好ましい。
【0042】
ここで、領域12の仮想表面積は、前記接線L〜Lで囲繞されてなる領域12(図2に明確に示されるように、前記強度補強部13を含む。)に保持孔11が形成されていないと仮定したときの、領域12の表面積である。また、前記強度補強部13の面積は、通常、保持孔11が形成されていない領域の表面積、保持治具1においては、強度補強部13の表面積とされるが、場合により、芯材20における貫通孔未形成領域26から最近列に配列された貫通孔21に接する接線(図4において、図示しない。)によって囲繞される領域の表面積とすることができる。
【0043】
保持治具1は、図3に示されるように、保持孔11が貫通孔21を貫通するように、好ましくは貫通孔21の中心軸と保持孔11の中心軸が一致して保持孔11が貫通孔21を貫通するように、弾性部材10が芯材20を被覆し、芯材20が弾性部材10に埋設される。このように芯材20が弾性部材10に埋設されると、弾性部材10の破損を防止することができると共に、電子部品用部材等を、保持治具1の保持孔11に容易に挿入し、保持孔11から容易に取り外すことができる。
【0044】
保持治具1は、電子部品用部材等の生産性及び電子部品用部材等の長さ等を考慮して、その大きさ及び厚さが調整される。弾性部材10の厚さは、例えば、電子部品用部材等の保持孔11に挿入保持される部分の長さに対して1.0〜30倍であるのが好ましい。より具体的に、保持治具1の寸法の一例を挙げると、例えば、その大きさは、縦260〜300mm、横160〜200mmであり、厚さは7.0〜10.0mmである。
【0045】
保持治具1又は芯材20は、保持治具1の平滑性を維持することのできる強度を有していればよく、例えば、下記測定方法により測定されたたわみ量が5mm以下であるのが好ましい。保持治具1又は芯材20がこの範囲のたわみ量を有していると、保持治具1を製造する際に、保持治具1又は芯材20が変形又は破損することを防止しつつ、保持治具を金型から容易に離型することができる。保持治具1又は芯材20のたわみ量は、より好ましくは4mm以下であり、特に好ましくは3mm以下である。
【0046】
前記たわみ量は、以下のようにして測定される。保持治具1又は芯材20の強度を測定するにあたって、鍔状部23と同一形状及び同寸法の枠体(試験体載置部材)、及び、直径25mm、高さ15mmの円筒形をなしたステンレス鋼(SUS304)製の接触子を用意する。この試験体載置部材上に芯材20を載置して固定する。次いで、芯材20の略中央部に接触子を置き、テンシロン試験機(株式会社オリエンテック製、商品名「RTM−100」)に装着したロードセル(株式会社オリエンテック製、商品名「TLB−500L−FB1」)を降下させて、ロードセルが接触子に接触後、さらに芯材20に対して垂直方向に接触子に1kNの荷重をかけたときの、ロードセルの移動量をテンシロン試験機より読み取る。この操作を、複数の芯材20を用いて行い、得られる複数の荷重を算術平均し、得られる平均値を芯材20のたわみ量とする。
【0047】
この発明の別の一実施例である保持治具2は、図6に示されるように、複数の保持孔11が貫通形成されて成る平板状を成す2つの弾性部材10と、前記弾性部材10に埋設された平板状の芯材20とを備え、前記保持孔11の配列方向に平行で、かつ、最外列に配列された保持孔11に接する外側の接線L(図6において、L11、L12、L13及びL14)で囲繞された保持孔集合領域内12に強度補強部13を有している。
【0048】
ここで、前記保持孔11の最外列は、各弾性部材10における最外列を意味するのでなく、図6に示されるように、保持治具1が複数の弾性部材10を備えている場合には、複数の弾性部材10がそれぞれ対向した側に位置する保持孔11の最外列を含まず、複数の弾性部材10が1つの弾性部材10を形成すると仮定したときの、保持孔11の最外列をいう。すなわち、保持治具2においては、2つの弾性部材10がそれぞれ対向した側に位置する保持孔11の最外列11e及び11fを含まず、2つの弾性部材10が長方形の1つの弾性部材を形成したと仮定したときの、保持孔11の最外列11a、11b、11c及び11dをいう。すなわち、保持治具2において、保持孔集合領域12は、各弾性部材10において、接線L11、L12、L13及びL15で囲繞された領域、及び、接線L11、L12、L14及びL16で囲繞された領域の合計領域ではなく、保持孔11の最外列11a、11b、11c及び11dにそれぞれ接する外側の接線L11、L12、L13及びL14で囲繞された領域である。
【0049】
保持治具2は、芯材20の短辺方向に、芯材20における長方向の一方の鍔状部23略中央部から他方の鍔状部23略中央部に渡って延在する強度補強部13が弾性部材10をその長辺方向に等しく分割している以外は、前記保持治具1と同様である。
【0050】
この発明のまた別の一実施例である保持治具3は、図7に示されるように、複数の保持孔11が貫通形成されて成る平板状を成す4つの弾性部材10と、前記弾性部材10に埋設された平板状の芯材20とを備え、前記保持孔11の配列方向に平行で、かつ、最外列に配列された保持孔11に接する外側の接線L(図7において、図示しない。)で囲繞された保持孔集合領域内12に強度補強部13を有している。
【0051】
ここで、前記保持孔11の最外列は、保持治具2における保持孔11の最外列と同様であり、保持治具3においては、4つの弾性部材10がそれぞれ対向した側に位置する保持孔11の最外列を含まず、4つの弾性部材10が長方形の1つの弾性部材を形成したと仮定したときの、保持孔11の最外列をいう。
【0052】
保持治具3は、対向する2つ角部の間を対角線状に延在する2つ強度補強部13が弾性部材10を4つに分割している以外は、前記保持治具1と同様である。
【0053】
この発明のさらに別の一実施例である保持治具4は、図8に示されるように、複数の保持孔11が貫通形成されて成る平板状の弾性部材10と、前記弾性部材10に埋設された平板状の芯材20とを備え、前記保持孔11の配列方向に平行で、かつ、最外列に配列された保持孔11に接する外側の接線L(図8において、図示しない。)で囲繞された保持孔集合領域内12に強度補強部13を有している。
【0054】
保持治具4は、その略中心部に1つの強度補強部13が、芯材20の強度補強部形成部25とその両面に配設された弾性部材10とで形成されている以外は、前記保持治具1と同様である。つまり、保持治具4は、貫通孔(図8において、図示しない。)が貫通形成された貫通孔集合領域(図8において、図示しない。)及びこの貫通孔集合領域内の略中心部に位置し、貫通孔が貫通形成されていない貫通孔未形成領域、すなわち、強度補強部形成部25を有する平板部と、この平板部の周囲に形成された鍔状部23とを備えた芯材20を、この芯材20における平板部の両面全体が弾性部材10で被覆され、平板部全体が弾性部材10に埋設されて成る。
【0055】
以上説明したように、複数の保持孔11が貫通形成されて成る平板状の弾性部材10と、前記弾性部材10に埋設された平板状の芯材20とを備え、前記保持孔11の配列方向に平行で、かつ、最外列に配列された保持孔11に接する外側の接線で囲繞された領域12内に強度補強部13を有する保持治具1〜4は、品質の均一な電子部品を高い生産性で製造することができる。
【0056】
この発明における保持治具は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、保持治具1〜4において、図1〜図8に示されるように、強度補強部13は、弾性部材10及び鍔状部23と面一になっているが、この発明においては、強度補強部は、弾性部材及び鍔状部と面一になっていなくてもよく、例えば、弾性部材及び鍔状部よりも突出していても、陥没していてもよい。
【0057】
また、保持治具1及び4において、図1〜図3及び図8に示されるように、強度補強部13は、矩形に形成されているが、この発明において、強度補強部は、その形状は特に限定されず、円形、楕円形、多角形、流線形等の形状に形成されてもよく、その個数も特に限定されず、任意の数に調整される。
【0058】
保持治具2及び3において、図6及び図7に示されるように、強度補強部13は、対向する鍔状部23又は角部を連結するように延在しているが、この発明において、強度補強部は、対向する鍔状部又は角部を連結するように延在している必要はなく、断片的に延在していてもよい。また、保持治具2において、図6に示されるように、強度強度補強部13は、対向する鍔状部23を連結するように1本延在しているが、この発明において、強度補強部は、2本以上延在していてもよく、また、複数の強度補強部が、例えば、格子状等に交差していてもよい。さらに、保持治具3において、図7に示されるように、強度補強部13は、対向する角部を連結するように2本延在しているが、この発明において、強度補強部は対向する角部を連結するように1本のみが延在していてもよい。
【0059】
保持治具1及び4において、図1〜図3及び図8に示されるように、強度補強部13は、弾性部材10内に島状に形成され、保持治具2及び3において、図6及び図7に示されるように、強度補強部13は、対向する鍔状部23又は角部を連結するように形成されているが、この発明において、強度補強部は、これらを任意に組み合わせてもよく、例えば、保持治具2において、各弾性部材の略中心部に、保持治具における矩形の芯材が形成されていてもよい。この発明においては、品質の均一な電子部品を高い生産性で製造することができる点で、強度補強部は、弾性部材内に島状に形成されるのが好ましい。
【0060】
保持治具1〜4において、図1〜図8に示されるように、芯材20は、平板部22の周囲に鍔状部23が形成されているが、この発明においては、鍔状部は、平板部の周囲に形成されている必要はなく、形成されてなくてもよく、又は平板部の少なくとも1辺に形成されてもよい。
【0061】
また、保持治具1〜4において、図1〜図5に示されるように、芯材20は、弾性部材10の保持孔21と同様の貫通孔21が同様の配列で同数貫通形成されているが、この発明においては、貫通孔は、保持孔と異なる形状で配列されてもよく、また、貫通孔は、保持孔に1対1で対応して同数貫通形成される必要はなく、例えば、複数の保持孔をその内部に貫通されるように、保持孔よりも大きく形成されてもよく、又は、格子状又はメッシュ状等に形成されてもよい。
【0062】
保持治具1〜4において、保持治具1〜4及び芯材20は、図1〜図8に示されるように、ほぼ長方形を成しているが、この発明において、保持治具及び芯材は、長方形を成す必要はなく、例えば、正方形、多角形等を成していてもよい。
【0063】
保持治具1〜4において、芯材20の貫通孔21及び弾性部材10の保持孔11はいずれも碁盤目状に配列されているが、この発明において、貫通孔及び保持孔の配列は、碁盤目状に配列される必要はなく、例えば、正六角形が最密に配置されるハニカム配列、45度回転して縦横に配列されるスクエア配列、一点から放射状とされる放射形状の配列、放射曲線形状の配列、同心円形状の配列、一点から渦巻き状とされる渦巻き形状の配列等に従って、配列されてもよい。
【0064】
保持治具1〜4は、前記した通常の製造方法により製造されるが、芯材20が変形又は破損することを防止しつつ、保持治具を金型から容易に離型することができる点で、複数の貫通孔21が貫通形成されると共に、前記貫通孔21が貫通形成された貫通孔集合領域24内に強度補強部形成部25を有して成る平板状の芯材20を、押出手段33と複数の成形ピン34とを有する金型30に、前記貫通孔21内に前記成形ピン34が位置するように、挿入し、前記金型30と前記芯材20とで形成された間隙35に弾性材料を注入して、弾性材料を成形し、前記押出手段33により前記強度補強部13を押出し、保持治具1を金型30から離型する製造方法により、製造されるのが、好ましい。以下、この製造方法を保持治具1を例にして説明する。
【0065】
この製造方法においては、まず、鍔状部23の厚さと同じ又はそれよりも厚い前記金属又は樹脂等製の板状体から、平板部22とその周囲に鍔状部23とを有し、所望の大きさを有する形状に切り出された後、平板部22に、複数の貫通孔21を研削、切削、やすり仕上げ等によって、所定のパターンに穿設し、さらに、強度補強部形成部25、具体的には、貫通孔21を穿設しない貫通孔未形成領域26を形成し、芯材20が作製される。又は、貫通孔21及び強度補強部形成部25が形成された平板部22と鍔状部23とを別個に作製し、溶接又は接着等の接合手段によって、平板部22と鍔状部23とを所望の位置に接合して、芯材20が作製される。このようにして作製された芯材20は、弾性部材10との密着を高めるために、芯材20の表面に接着剤又はプライマー等が塗布されてもよい。
【0066】
次いで、例えば、図9に示されるように、このようにして作製された芯材20を、押出手段33と複数の成形ピン34とを有する一対の金型30に、前記貫通孔21内に前記成形ピン34が位置するように、挿入する。この金型30は、図9に示されるように、前記芯材20における強度補強部形成部25の位置に対応する位置に押出手段33、例えば、押出棒、ピストン等と、保持治具1としたときに形成される保持孔の位置に対応する位置に複数の成形ピン34とを備えた、芯材20を保持する下側金型32と、この下側金型32と共に芯材20を挟持又は収納する上側金型31とを備えている。押出手段33は、その上面が下側金型32の内表面と面一になる状態をとり、下側金型32の内表面から突出するように、構成されている。この押出手段33は、下側金型32に設けられているが、上側金型31に設けられていてもよい。また、上側金型31及び下側金型32の内表面はそれぞれ鏡面加工されていてもよい。そして、この金型30に芯材20を挟持又は収納すると、図9に示されるように、芯材20における強度補強部形成部25の下部に押出手段33が位置し、また、芯材20の各貫通孔21内に各成形ピン34が位置して、上側金型31、下側金型32及び芯材20によって、弾性部材10が形成される部分に間隙35が形成される。
【0067】
次いで、金型30と芯材20とで形成された間隙35に弾性材料を注入して、弾性材料を成形する。弾性材料の成形方法は、特に限定されず、例えば、圧縮成形、射出成形、トランスファー成形等の成形方法を採用することができる。成形温度及び成形時間等は、使用する弾性材料が硬化成形する温度及び時間であればよく、弾性材料に応じて、任意に調整される。
【0068】
このようにして弾性部材10を成形後、金型30ごと放冷し、図10に示されるように、上側金型31を取り外す。次いで、図11に示されるように、芯材20の鍔状部23を把持(図11において、鍔状部23の把持手段、例えば、クランプ、ロボットアーム等は図示しない。)して保持治具1を下側金型32から引き離すと共に、下側金型32の押出手段33によって保持治具1の強度補強部13を押圧し、保持治具1を下側金型32から離型する。このとき、前記把持手段によって保持治具1を引き離す速度と、押出手段33によって強度補強部13を押圧する速度とは、ほぼ同じであるのが、芯材20、すなわち、保持治具1が変形又は破損することを防止しつつ、保持治具1を金型から容易に離型することができる点で、より好ましい。このように、押出手段33によって強度補強部13を押出すことによって、保持治具1を下側金型32から容易に離型することができる。
【0069】
このようにして製造された保持治具1における弾性部材10には、保持孔11の開口部近傍等に成形バリが生じていることがあるので、成形バリを取り除くため、研削等の表面処理が行われてもよい。例えば、表面処理として、平面研削、フライス研削、ラッピング等が挙げられる。また、保持治具1における弾性部材10の表面を鏡面加工することもできる。
【0070】
なお、この製造方法においては、弾性部材10の成形後に、弾性部材10の硬化を確実にするため、二次加熱又は熱処理等を行ってもよい。
【実施例】
【0071】
(実施例1)
厚さ8.9mmのアルミ合金(A7075)を、縦280mm、横178mmの長方形を成す板に切り出した。切り出された板の周辺部を幅約11mmの鍔状部とし、鍔状部で囲繞される領域を、厚さが5.9mmとなるように、研削して、縦約257mm、横約159mmの平板部(面積408.6cm)を形成した。また、この平板部に、直径2.85mmの貫通孔を縦83列及び横51列からなる貫通孔集合領域(貫通孔数4071個、縦約253mm、横約155mm、面積約392cm)を形成すると共に、平板部における横方向の略中央部であって、かつ、平板部における縦方向の長さを略3等分する位置に、平板部の短辺方向及び長辺方向に対称となるように、縦横22mm(面積4.8cm)の強度補強部形成部を2個形成し、図4及び図5に示された芯材を作製した。
【0072】
作製した芯材における強度補強部形成部の位置に対応する位置に設けられた押出棒と、保持治具としたときに形成される保持孔の位置に対応する位置に設けられた4071本の成形ピン(直径2mm)とを備えた下側金型と、作製した芯材を挟持する上側金型とを備えた、図9に示される一対の金型を準備した。なお、上側金型及び下側金型の内表面はそれぞれ鏡面加工されている。
【0073】
次いで、作製した芯材を、準備した一対の金型に、貫通孔内に成形ピンが位置するように、挿入し、金型と芯材とで形成された間隙に、金型に設けられた注入口からシリコーンゴム(信越化学工業株式会社製、商品名「KE−1950−50」)を注入した。
【0074】
次いで、金型を、120℃で、10分間加熱し、芯材とシリコーンゴムとを一体成形し、芯材の貫通孔にシリコーンゴムが貫入するように、芯材がシリコーンゴムに埋設された保持治具1を製造した。この保持治具1における弾性部材の保持孔集合領域は、縦約251mm、横約154mm(面積約386.5cm)であった。すなわち、保持治具1において、強度補強部は保持孔集合領域の面積に対して2.4%であり、強度補強部形成部は貫通孔集合領域の面積に対して2.5%であった。
【0075】
このようにして成形された弾性部材の切断時伸び、引張強さ及びJIS A硬度として、前記弾性部材を形成する前記シリコーンゴムを同様に成形してJIS K6249及びJIS K6253に記載のゴム試験片をそれぞれ作製し、JIS K6249(引張速度500mm/min)及びJIS K6253に記載の測定方法に準拠して、ゴム試験片の切断時伸び、引張強さ及びJIS A硬度をそれぞれ測定した。その結果、切断時伸び、引張強さ及びJIS A硬度はそれぞれ、600%、8.8MPa及び49であった。また、このようにして製造された保持治具1は、前記測定方法に準拠して、たわみ量を測定したところ1.0mmであった。さらに、保持治具1は、前記製造過程において、下側金型から取り外す際に、保持治具が変形することなく、下側金型から容易に取り外すことができた。また、この保持治具1に、4071個のフェライトを同時に挿入保持させ、次いで、同時に取り外す工程を1サイクルとして、連続50サイクル繰り返し行ったところ、保持治具1は変形することなく、すべてのフェライトを確実に保持治具1に挿入保持することができ、また、保持治具1から取り外すことができた。
【0076】
(実施例2)
厚さ9mmのアルミ合金(A7075)を、縦360mm、横280mmの長方形を成す板に切り出した。切り出された板の周辺部を幅15mmの鍔状部とし、かつ、縦方向の2つの鍔状部の中央部を連結する、幅10mmの強度補強部形成部(長さ約257mm、面積25.7cm)とし、鍔状部及び強度補強部形成部で囲繞される領域を、厚さが6mmとなるように、研削して、縦160mm、横260mmの2つの平板部(各面積416cm)を形成した。また、この各平板部に、直径2.3mmの貫通孔を縦96列及び横118列からなる貫通孔集合部(貫通孔数11328個)を形成し、2つの貫通孔集合部からなる貫通孔集合領域(縦約327mm、横約257mm、面積約840cm)を形成し、芯材を作製した。
【0077】
次いで、実施例1と同様にして、作製した芯材に適合する金型を準備し、芯材とシリコーンゴムとを一体成形して、保持治具2を製造した。この保持治具2における弾性部材の保持孔集合領域は、縦約326mm、横約256mm(面積約834.6cm)であった。すなわち、保持治具2において、強度補強部は保持孔集合領域の面積に対して3.1%であり、強度補強部形成部は貫通孔集合領域の面積に対して3.5%であった。
【0078】
このようにして成形された弾性部材の切断時伸び、引張強さ及びJIS A硬度として、実施例1と同様にして別途ゴム試験片を作製して、ゴム試験片の切断時伸び、引張強さ及びJIS A硬度をそれぞれ測定した。その結果、切断時伸び、引張強さ及びJIS A硬度はそれぞれ、600%、8.8MPa及び49であった。また、このようにして製造された保持治具2は、前記測定方法に準拠して、たわみ量を測定したところ1.2mmであった。さらに、保持治具2は、前記製造過程において、下側金型から取り外す際に、保持治具が変形することなく、下側金型から容易に取り外すことができた。また、この保持治具2に、11328個のフェライトを同時に挿入保持させ、次いで、同時に取り外す工程を1サイクルとして、連続50サイクル繰り返し行ったところ、保持治具2は変形することなく、すべてのフェライトを確実に保持治具2に挿入保持することができ、また、保持治具1から取り外すことができた。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、この発明の一実施例である保持治具の一例を示す概略斜視図である。
【図2】図2は、この発明の一実施例である保持治具の一例を示す概略上面図である。
【図3】図3は、図2のA−A線で切断した保持治具における断面の一部を示す概略断面図である。
【図4】図4は、この発明の一実施例である保持治具における芯材の一例を示す概略上面図である。
【図5】図5は、図4のB−B線で切断した芯材における断面の一部を示す概略断面図である。
【図6】図6は、この発明の別の一実施例である保持治具の一例を示す概略上面図である。
【図7】図7は、この発明のまた別の一実施例である保持治具の一例を示す概略上面図である。
【図8】図8は、この発明のさらに別の一実施例である保持治具の一例を示す概略上面図である。
【図9】図9は、金型に芯材を挿入した状態を、垂直面によって切断された断面の一部で示す概略断面図である。
【図10】図10は、弾性部材を成形後、上側金型を取り外した状態を、垂直面によって切断された断面の一部で示す概略断面図である。
【図11】図11は、この発明の製造方法において、この発明の保持治具を下側金型から取り外す途中の状態を、垂直面によって切断された断面の一部で示す概略断面図である。
【図12】図12は、従来の保持治具を下側金型から取り外す途中の状態を、垂直面によって切断された断面の一部で示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1、2、3、4、41 保持治具
10 弾性部材
11 保持孔
12 保持孔集合領域
13 強度補強部
14 開口
20、42 芯材
21 貫通孔
22 平板部
23 鍔状部
24 貫通孔集合領域
25 強度補強部形成部
26 貫通孔未形成領域
30 金型
31 上側金型
32 下側金型
33 押出手段
34 成形ピン
35 間隙
40 金型
43 縁部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の保持孔が貫通形成されて成る平板状の弾性部材と、前記弾性部材に埋設された平板状の芯材とを備え、前記保持孔の配列方向に平行で、かつ、最外列に配列された保持孔に接する外側の接線で囲繞された領域内に強度補強部を有する保持治具。
【請求項2】
前記強度補強部は、前記領域の仮想表面積に対して0.04〜15%の面積を有する請求項1に記載の保持治具。
【請求項3】
前記弾性部材は、シリコーンゴムで形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の保持治具。
【請求項4】
複数の貫通孔が貫通形成されると共に、前記貫通孔が貫通形成された領域内に強度補強部形成部を有して成る平板状の芯材を、押出手段と複数の成形ピンとを有する金型に、前記貫通孔内に前記成形ピンが位置するように、挿入し、
前記金型と前記芯材とで形成された間隙に弾性材料を注入して、弾性材料を成形し、
前記押出手段により前記強度補強部を押出し、保持治具を金型から離型する
ことを特徴とする保持治具の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−16761(P2008−16761A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−189054(P2006−189054)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】