説明

保持治具及び小型電子部品保持装置

【課題】ゴム弾性部材における温度を調節することにより粘着力を調整することのできる保持治具を提供すること、及び、複数種類の保持部材を必要とすることなく、一種の保持部材の温度管理をすることによりその保持部材が有するゴム弾性部材の粘着力を調整して小型部品を保持し、小型電子部品を離脱させることのできる小型電子部品保持装置を提供すること。
【解決手段】粘着力と温度との関係が以下の式により示される領域に存在する粘着特性を有するゴム弾性部材を有することを特徴とする保持治具及びこれを利用した小型電子部品保持装置。
Y=aX+b
ただし、前記式において、aは−1〜−0.7、bは40〜65、Yは粘着力(単位:g/mm)、Xは10℃以上35℃以下の範囲の温度(単位:℃)を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は保持治具及び小型電子部品保持装置に関し、更に詳しくは、ゴム弾性部材の温度を可変することにより相違する粘着力の発揮される保持治具、及び前記保持治具を用いることにより、粘着力の異なる複数種類のゴム弾性部材を使用することなく、簡単にチップコンデンサ等の小型電子部品を保持することのできる小型電子部品保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チップコンデンサ等の小型電子部品を保持する保持治具として、特許文献1に開示された「小型電子部品の保持治具」がある。
【0003】
この特許文献1に記載された保持治具は、「少なくとも表面部が粘着性を有するゴム弾性材で形成され、その粘着力により小型部品をその弾性材表面において密着保持可能であることを特徴とする(特許文献1の請求項1参照)」。
【0004】
この保持治具においては、軟質のシリコーンゴムは粘着力を有することからこの性質を利用してチップコンデンサ等の小型電子部品が密着保持されるようになっている。
【0005】
ところでチップコンデンサ等の小型電子部品が長軸を有する角柱形又は円柱形をしている場合に、その長軸方向における両端部に電極を形成するときには、ゴム弾性材の粘着力によりゴム弾性材の表面に小型電子部品を密着保持するだけでは不十分である。つまり、ゴム弾性材の表面に粘着保持する小型電子部品の下端面に電極を形成した後に、その小型電子部品を前記ゴム弾性材から離脱し、次いで電極を形成してなる端面を再びゴム弾性材の表面に密着保持させる必要がある。
【0006】
この必要に応える発明として、特許文献2に記載された電子部品チップ用ホルダがある。
【0007】
この特許文献2に記載された電子部品チップ用ホルダは、「互いに対向する第1及び第2の端面を有する電子部品チップを保持するための電子部品チップ用ホルダにおいて、前記電子部品チップ用ホルダは、第1部材と第2部材とを含み、前記第1部材は、前記電子部品チップを保持するための第1の粘着面を備え、前記第2部材は、前記電子部品チップの前記第2の端面に粘着して前記電子部品チップを保持するための、前記第1の粘着面が与える粘着力よりも強い粘着力を与える第2の粘着面を備えることを特徴とする」(特許文献2の請求項1参照)。
【0008】
このように、この特許文献2に開示された電子部品チップ用ホルダは、電子部品チップを粘着により保持する第1の粘着面を有する第1部材と、前記第1の粘着面が電子部品チップに与える粘着力よりも大きな粘着力を有する第2の粘着面を有する第2部材との二種類の部材を必要とする。
【0009】
しかも、電子部品チップを粘着により保持する第1の粘着面及び第2の粘着面における粘着力は、所定の電子部品チップを保持する場合には適正な粘着力であるとしても、その電子部品チップの種類が変わって他の種類の電子部品チップを保持させる場合には、その粘着力が必ずしも適正であるとは限らない。即ち、第1の粘着面及び第2の粘着面における粘着力を各種の電子部品チップごとに適正にするために、電子部品チップごとに粘着力の適正なゴム弾性部材を選択し、交換しなければならない。
【0010】
【特許文献1】特公平7−93247号公報
【特許文献2】特許第2682250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明の課題は、ゴム弾性部材における温度を調節することにより粘着力を調整することのできる保持治具を提供すること、及び、粘着力の異なる第1の粘着面を有する第1部材及び第2の粘着面を有する第2部材といったように複数種類の保持部材を必要とすることなく、一種の保持部材を有して温度管理をすることによりその保持部材が有するゴム弾性部材の粘着力を調整して小型電子部品を保持し、小型電子部品を離脱させることのできる小型電子部品保持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、粘着力と温度との関係が以下の式を満たす粘着特性を有するゴム弾性部材を有することを特徴とする保持治具であり、
Y=aX+b
ただし、前記式において、aは−1〜−0.7、bは40〜65、Yは粘着力(単位:g/mm)、Xは10℃以上35℃以下の範囲の温度(単位:℃)を示す。
請求項2は、前記請求項1に記載の保持治具と、前記ゴム弾性部材の表面温度を調整する温度調整手段とを有することを特徴とする小型電子部品保持装置であり、
請求項3は、前記温度調整手段が、前記ゴム弾性部材の表面を加熱する加熱手段と、前記ゴム弾性部材の表面を冷却する冷却手段とを備えてなる前記請求項2に記載の小型電子部品保持装置であり、
請求項4は、前記温度調整手段が、前記ゴム弾性部材の表面温度を測定する温度測定手段と、前記温度測定手段により測定された温度に応じて前記加熱手段及び前記冷却手段を制御する制御手段とを備えて成る前記請求項3に記載の小型電子部品保持装置である。
【発明の効果】
【0013】
この発明において、温度調整手段によりそのゴム弾性部材の表面温度を上昇させるとそのゴム弾性部材の粘着力が低下し、温度調整手段によりそのゴム弾性部材の表面温度を下降させるとそのゴム弾性部材の粘着力が上昇する。この発明におけるゴム弾性部材におけるこのような粘着特性を利用することにより、この発明に係る小型電子部品保持装置においては、ゴム弾性部材の表面に小型電子部品を粘着保持し、またゴム弾性部材の表面に粘着保持する小型電子部品をゴム弾性部材の表面から離脱させることができる。したがって、この発明によると、粘着力の相違する二種以上のゴム弾性部材を使用することなく、少なくとも一種のゴム弾性部材を使用し、このゴム弾性部材の温度管理をすることにより小型電子部品を粘着保持し、及び離脱させることのできる保持治具及びこれを利用した小型電子部品保持装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、この発明の一実施例である小型電子部品保持装置を示す説明図である。
【0015】
図1に示されるように、この小型電子部品保持装置1は、小型電子部品を粘着保持することのできる装置である。小型電子部品としては、例えばチップコンデンサ、チップ抵抗器、インダクタ、FPC、ウエハー等の完成品又は半完成品を挙げることができる。
【0016】
この小型電子部品保持装置1は、保持治具2と温度調整手段3とを備える。この保持治具2は、治具本体4と治具本体4に装着された粘着保持部5とを備える。
【0017】
前記粘着保持部5は、多数の小型電子部品を粘着により保持することができるように設計され、例えばゴム弾性部材で例えば方形に形成されて成る盤状体を挙げることができる。この盤状をなす方形の粘着保持部5の一例としての寸法は、110mm×110mm×1.8mmを挙げることができる。
【0018】
この粘着保持部5に用いられるゴム弾性部材は、温度とその温度における粘着力とにつき、図2に示されるように、以下の式を満たす粘着力を有するという特性を備える。
Y=aX+b
(ただし、前記式において、aは−1〜−0.7、bは40〜65、Yは粘着力(単位:g/mm)、Xは10℃以上35℃以下の範囲の温度(単位:℃)を示す。)
10℃以上35℃以上において上記式を満たす粘着力は、図2に示されるように、Y=−0.7X+65で示される領域以下であり、かつY=−X+40で示される領域以上である領域である。この領域外であると小型電子部品を粘着保持することができなくなり、又は、小型電子部品を粘着保持する力が大き過ぎてゴム弾性部材に粘着保持された小型電子部品を迅速に分離し、離脱させることができなくなる。
【0019】
ここで、粘着力は、以下のようにして求める。以下の粘着力の測定方法は、出願人により案出されたので、信越ポリマー法と称する。
【0020】
まず、ゴム弾性部材を水平に固定する吸着固定装置(例えば、商品名:電磁チャック、KET−1530B、カネテック(株)製、真空吸引チャックプレート等)と、測定部先端に、直径10mmの円柱をなしたステンレス鋼(SUS304)製の接触子を取り付けたデジタルフォースゲージ(商品名:ZP−50N、(株)イマダ製)とを備えた荷重測定装置を用意する。
【0021】
この試験台上にゴム弾性部材を固定し、測定環境を20℃、湿度50%に設定する。次いで、20mm/minの速度でゴム弾性部材の被測定部位に接触するまで前記荷重測定装置に取り付けられた前記接触子を下降させ、次いで、この接触子を被測定部位に所定の荷重で被測定部に対して垂直に3秒間押圧する。ここで、前記所定の荷重を、25g/mmに設定する。次いで、180mm/minの速度で前記接触子を被測定部位から引き離し、このときに前記デジタルフォースゲージにより測定される引き離し荷重を読み取る。この操作を、被測定部位の複数箇所で行い、得られる複数の引き離し荷重を算術平均し、得られる平均値を被測定部の粘着力とする。
【0022】
なお、この測定方法は、手動で行ってもよいが、例えば、テストスタンド(例えば、商品名:VERTICAl MODEL MOTORIZED STAND シリーズ、(株)イマダ製)等の機器を用いて、自動で行ってもよい。
【0023】
前記式で示される領域内にある粘着力を有するゴム弾性部材としては、各種の公知のゴム弾性部材から適宜に選択されることができ、例えば前記温度範囲における耐熱性を有する粘着性シリコーンゴムを採用することができる。
【0024】
前記粘着性シリコーンゴムとしては、シリコーン生ゴムからなる(a)成分と、架橋成分からなる(b)成分と、粘着成分からなる(c)成分と、白金化合物からなる(d)成分と、シリカからなる(e)成分とを含有する粘着性組成物の硬化物を挙げることができる。
【0025】
前記シリコーン生ゴムからなる(a)成分としては、例えば、付加反応により架橋可能なアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンを用いることができ、特に、下記(1)式で示されるポリオルガノシロキサンを好適に用いることができる。
(3−a)SiO−(RXSiO)−(RSiO)−SiR(3−b) (1)式
(ただし、(1)式中、Rは脂肪族不飽和結合を有さない1価の炭化水素基であり、それぞれ同一であっても、異なっていてもよく、Xはアルケニル含有有機基であり、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。また、aは0〜3の整数、bは0〜3の整数、mは0以上の整数、nは100以上の整数であり、a、b、及びmは同時に0とはならない。)
ここで、Rとしては、炭素数1〜10の前記炭化水素基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基などを例示でき、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0026】
また、Xで示されるアルケニル基含有有機基としては、炭素数2〜10のアルケニル基含有有機基が好ましく、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、アクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基、シクロヘキセニルエチル基、ビニルオキシプロピル基などを例示できる。
【0027】
この(a)成分は、オイル状、粘土状の性状を有していてもよく、その粘度は25℃において50mPa・s以上であるのが好ましく、特に100mPa・s以上であるのが好ましい。
【0028】
また、この(a)成分は、一種単独で用いてもよいが、二種以上混合して用いてもよい。
【0029】
前記架橋成分(b)は、(a)成分と架橋反応可能な成分であり、例えば、1分子中にSi原子に結合したH原子を少なくとも2個以上、好ましくは3個以上有するSiH結合含有ポリオルガノシロキサン(以下、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと称することもある。)を用いることができる。
【0030】
このポリオルガノシロキサンとしては、直鎖状、分枝状、環状のポリオルガノシロキサンの中から適宜に選択して使用することができ、例えば、下記(2)式又は(3)式で示されるポリオルガノシロキサンを好適例として挙げることができる。
HcR(3−c)SiO−(HRSiO)−(RSiO)−SiR(3−d) (2)式
【0031】
【化1】

【0032】
(上記、(2)式及び(3)式において、Rは前記と同様の炭化水素基であり、同一であっても、異なっていてもよい。また、c、dは0〜3の整数、x、y、sは0以上の整数、rは1以上の整数であり、c、d、xは同時に0とはならず、更に、x+y≧0以上である。また、r+s≧3以上、好ましくは8≧r+s≧3である。)
これらのオルガノハイドロジェンポリシロキサンの中でも、オイル状の性状を有し、粘度が25℃において1〜5000mPa・sであるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
【0033】
この(b)成分は、その一種を単独で用いることもでき、また、二以上を混合して用いることができる。
【0034】
このような(b)成分の配合割合は、適宜に選択可能であるが、前記(a)成分がアルケニル基を含有すると共に、(b)成分がSiH結合を含有する場合、(a)成分中のアルケニル基に対する(b)成分中のSiH結合のモル比が0.5〜20であるのが好ましく、特に1〜15の範囲であるのが好ましい。このモル比が0.5未満では、後述する硬化後の架橋密度が低くなり、粘着保持部の形状を保持しにくくなることがある。一方、モル比が20を超えると、得られる粘着保持部の粘着力が低下することがある。
【0035】
次に、この発明における粘着成分である(c)成分は、粘着力を向上するために配合される成分であり、例えば、ポリオルガノシロキサンを用いることができ、特に、RSiO1/2単位及びSiO単位及び/又はRSiO2/3単位(但し、Rは脂肪族不飽和結合を有しない1価の炭化水素基である。)を含有するものを好適に用いることができる。
【0036】
ここで、Rとしては、炭素数1〜10のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基などを例示でき、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0037】
この(c)成分は、一般的に粘着性をより高度に確保するために、上記(a)成分及び(b)成分とともに架橋反応を生じない、又は、生じ難い構造を有するものが好ましい。
【0038】
このような(c)成分としてポリオルガノシロキサンを用いる場合は、(RSiO1/2単位及び/又はRSiO2/3単位)/SiO2単位のモル比が0.6〜1.7となるものが好ましい。このモル比が0.6未満では、粘着保持部の粘着性が高くなり過ぎたり、(a)成分と相溶し難くなって、分離して粘着性を発現しなくなることがある。一方、モル比が1.7を超えると粘着力が低下することがある。
【0039】
なお、このポリオルガノシロキサンは、Si原子に結合するOH基を含有していてもよく、その場合、OH基含有量が0〜4.0モル%とするのが好ましい。
【0040】
Si原子に結合するOH基を含有するものを用いる場合、前記(a)成分として、下記(4)式に示されるポリオルガノシロキサンを含有するときには、(a)成分と(b)成分とが一部縮合反応物を形成していてもよい。
(OH)RYSiO−(RXSiO)−(RSiO)−SiR(OH) (4)式
(ただし、(4)式中、Rは脂肪族不飽和結合を有さない1価の炭化水素基であり、それぞれ同一であっても、異なっていてもよく、YはR又はアルケニル基含有有機基である。また、pは1以上の整数、qは100以上の整数である。)
このような(a)成分と(c)成分との縮合反応物を形成するには、トルエン等の溶剤に溶解した(a)成分及び(c)成分の混合物を、アルカリ性触媒の存在下で、室温乃至還流下で反応させればよい。
【0041】
なお、このような(c)成分は一種単独で用いても、二種以上混合して用いてもよい。
【0042】
そして、このような(c)成分は、(a)成分/(c)成分の重量比として20/80〜80/20の範囲で用いるのが好ましく、特に、30/70〜70/30とするのが好適である。この範囲を超えて(c)成分が少ないと粘着性が不足し易くなり、一方、多いと粘着保持部が硬くなるとともに弾性力が強く、粘着保持部が変形し難くなり、小型電子部品等の被支持物を粘着させにくくなり易い。
【0043】
次に、この発明における(d)成分は、主として前記(a)成分と(b)成分との架橋反応を促進する触媒となる白金化合物であり、通常、ハイドロサイレーションの触媒として使用されるものである。
【0044】
この(d)成分としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物などが挙げられる。
【0045】
この(d)成分の配合割合は、前記(a)成分と(b)成分との合計量に対し、白金分として1〜5,000ppmとするのが好ましく、特に5〜2,000ppmとすることが好適である。配合割合が1ppm未満では硬化性が低下して架橋密度が低くなり、保持力が低下することがあり、一方、5,000ppmを超えると処理浴の使用可能時間が短くなる場合があるからである。
【0046】
次に、この発明における(e)成分は、上記各成分とともに添加されるシリカであり、粘着保持部の機械的強度を補強するとともに、粘着保持部を構成する成分、特に、粘着性を付与する(c)成分を粘着保持部に含有させて、脱離し難くする成分である。
【0047】
特に、このシリカとしては、その比表面積が100m/g以上400m/g以下であるのが好適である。比表面積が100m/g以上であれば削りかすを抑制する効果がより顕著に得られるからである。なお、比表面積が400m/gを超えるものは、製造に手間を要し、高価であるため実用的でない。
【0048】
このような(e)成分のシリカとしては、ヒュームドシリカ、焼成シリカ等の乾式法により合成されたシリカであっても、沈降シリカ、シリカゲル等の湿式法により合成されたシリカであっても、前記比表面積が得られるものであればよい。ここでは、比表面積を得易いなどの理由で、ヒュームドシリカ、沈降シリカが好適である。
【0049】
なお、このシリカは一種単独で用いても、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
また、必要に応じて、シリカの表面を、例えば、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等の表面処理剤で処理したものを用いてもよい。
【0051】
このようなシリカの配合割合は、上記(a)成分と(c)成分との合計量100質量部に対して、1〜30質量部とするのが好ましい。より好ましくは5〜20質量部である。配合割合が小さいと、粘着層の強度が低下して、十分な効果が得られ難くなり、また、使用時にのり残りが発生しやすくなり、一方、配合割合が大きいと、粘着力が低下することがあるからである。
【0052】
更に、この発明では、上記(a)成分から(e)成分の他に、適宜、任意成分を添加することが可能である。
【0053】
例えば、上記成分を混合時の架橋反応を抑制するための反応制御剤を添加することができる。この反応制御剤としては、例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニルシクロヘキサノール、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ブチン、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ペンチン、3,5−ジメチル−3−トリメチルシロキシ−1−ヘキシン、1−エチニル−1−トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2−ジメチル−3−ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサンなどが挙げられる。
【0054】
この反応制御剤を添加する場合、その配合割合は(a)成分と(c)成分との合計量100質量部に対して0〜5.0質量部の範囲とすることができ、特に0.05〜2.0質量部とするのが好ましい。この反応制御剤の配合割合が5.0質量部を超えると粘着性組成物の硬化時に硬化し難くなることがあるためである。
【0055】
また、反応制御剤の他にも、この発明では、適宜、任意成分を添加することが可能であり、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルジフェニルシロキサン等の非反応性のポリオルガノシロキサン、塗工の際の粘度を下げるための溶剤として、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ヘキサン、オクタン、イソパラフィンなどの脂肪族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤、染料、顔料などを使用することができる。
【0056】
前記治具本体4としては、前記粘着保持部5を装着することができ、後述する温度調整手段3を保持乃至保有することができる治具を挙げることができる。
【0057】
前記治具本体4としては、前記粘着保持部5を保持することができる限り種々の設計変更に基づく各種の形態を挙げることができる。
【0058】
前記治具本体4としては、ステンレス、及びアルミニウム等の金属製プレート、アルミニウム箔及び銅箔等の金属箔、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリ塩化ビニル等の樹脂フィルム、樹脂板、並びに和紙、合成紙、及びポリエチレンラミネート紙等の紙、並びに布、ガラス繊維及びガラス板等のセラミックス、並びにガラスエポキシ樹脂板等の複合材料等を挙げることができる。更にこの治具本体4として、シート状物を複数積層してなる積層体を挙げることもできる。前記治具本体4としては、金属、樹脂、又はセラミックスからなる硬質部材で形成されるものが好適である。
【0059】
この治具本体4は、粘着保持部5であるゴム弾性部材を形成する面に、前記ゴム弾性部材との密着性を向上させるために、プライマー処理、コロナ処理、エッチング処理、プラズマ処理等を施しておくことが好ましい。
【0060】
この治具本体4には、この治具本体4を水平移動させ、上下移動させ、及び治具本体4が有する水平中心軸を中心にして軸回りに回転運動させることのできる治具本体変位手段(図示せず。)が併設されるのが、好ましい。
【0061】
この治具本体変位手段が併設されていると、(1)例えば小型電子部品を懸垂保持する粘着保持部5を有する治具本体4を例えば導電ペースト浴に向けて下降させ、また導電ペースト浴中の導電ペーストに浸漬された下端部を有する小型電子部品を懸垂保持する粘着保持部5を有する治具本体4を導電ペースト浴から上昇させることができ、(2)下端部に導電ペーストを塗着して成る小型電子部品を懸垂保持する粘着保持部5を有する治具本体4を、導電ペースト浴の上方の位置から導電ペースト浴の上方以外の適宜の位置に移送することができ、(3)また、治具本体4が有する中心軸を中心にしてこの治具本体4を回転させることにより、下端部に導電ペーストを塗着して成る小型電子部品を粘着保持部5により懸垂保持する状態から、上端部に導電ペーストを塗着して成る小型電子部品を粘着保持部5により立設保持する状態に変えることができるようになる。
【0062】
この治具本体変位手段の機械的構成としては、前記上下移動、水平移動、及び回転動作させることができる限り種々の構成を採用することができる。
【0063】
前記温度調整手段3は、粘着保持部5の温度、例えば粘着保持部5における小型電子部品を粘着保持する部位の温度を前記Xで規定する温度範囲内で変化させることのできる手段であればよく、例えば粘着保持部5、特に粘着保持部5における小型電子部品を粘着保持する部位を加熱する加熱手段6と、加熱された温度を所望の温度に冷却する冷却手段7とを有して形成することができる。
【0064】
前記加熱手段6としては、粘着保持部5に熱風を送出することができるように仕組まれた、熱風送出ノズル、又は熱風送出ファンと送り込まれてくる気流を加熱するヒータと、ヒータに向かって気流を送り込む気体送出装置とかなる熱風送出手段、粘着保持部5の小型電子部品を懸垂保持する表面の近傍に配置された、通電により加熱するヒータ、粘着保持部5の内部に、又は粘着保持部5を保持する治具本体4の内部に装着されたヒータ等を採用することができる。
【0065】
前記冷却手段7としては、粘着保持部5に冷風を送出することができるように仕組まれた、冷風送出ノズル、又は冷風送出ファンと送り込まれてくる気流を冷却する冷却器と、冷却器に向かって気流を送り込む気体送出装置とからなる冷風送出手段、粘着保持部5の小型電子部品を懸垂保持する表面の近傍に配置された、通電により冷却する、ピエゾ効果を利用した冷却素子、粘着保持部5の内部に、又は粘着保持部5を保持する治具本体4の内部に装着された前記冷却素子等を採用することができる。
【0066】
前記加熱手段6及び冷却手段7を制御することにより粘着保持部5における粘着力を自動制御することができるように、温度調整手段3は、粘着保持部5の温度を測定する温度測定手段8と前記温度測定手段8により測定された粘着保持部5の温度を示す温度検出信号を入力し、その温度検出信号に基づいて前記加熱手段6及び/又は冷却手段7に制御信号を出力する制御手段9とを備えることが、好ましい。
【0067】
温度測定手段8として熱電対、測温抵抗体、及びサーミスタ等を挙げることができる。制御手段9としては通常のパソコン等を採用することができる。
【0068】
次にこの発明に係る小型電子部品保持装置1を用いて小型電子部品の一つであるチップコンデンサに電極を形成する方法について説明し、併せてこの小型電子部品保持装置1の作用について説明する。
【0069】
チップコンデンサは、例えば四角柱体をなすコンデンサ本体と、その両端部それぞれに電極が形成されて成る。
【0070】
この発明の一例である小型電子部品保持装置1を用いてコンデンサ本体に電極を以下のようにして形成する。
【0071】
先ず、図3に示されるように、ゴム弾性部材よりなる粘着保持部5を上にした保持治具2の上に立設配置板10を重ねる。この立設配置板10には、上部開口部に環状のテーパ面12が形成されてなる貫通孔11である複数の配設孔が形成されている。この立設配置板10の上面に複数の例えばチップコンデンサ本体13を乱雑状態に頒布する。この立設配置板10に振動を加えると、チップコンデンサ本体13が前記テーパ面12に案内されるようにして前記配設孔に収まる。この立設配置板10の厚みは、チップコンデンサ本体13の軸線方向長さよりも小さく設計されているので、前記配設孔に収まったチップコンデンサ本体13は、その下端面が粘着保持部5に接触し、上端面が前記立設配置板10の上端面から突出した状態になっている。
【0072】
次いで、図4に示されるように、平坦なプレス板14で、複数のチップコンデンサ本体13全ての突出頭部を、押圧する。そうすると、配設孔に収容されているチップコンデンサ本体13の下端面が粘着保持部5に僅かにめり込むとともに粘着保持部5の粘着力によりチップコンデンサ本体13の下端部が粘着保持部5に粘着する。その後、立設配置板10を除去し、保持治具2を回転させて粘着保持部5を下側に向けると、粘着保持部5の下側面に複数のチップコンデンサ本体13が懸垂保持された状態になる。
【0073】
次いで、複数のチップコンデンサ本体13を粘着保持部5に懸垂保持された状態のままこの保持治具2を導電ペースト浴(図示せず。)の上方に平行移動し、その後に導電ペースト浴に向かってこの保持治具2を下降させる。保持治具2を下降させて導電ペースト浴に、複数のチップコンデンサ本体13の下端部を、浸漬させる。浸漬後に、保持治具2を上昇させる。そうすると、図5に示されるように、粘着保持部5に懸垂保持された各チップコンデンサ本体13の下端部に導電ペーストによる電極15が形成される。
【0074】
次いで、前記したようにチップコンデンサ本体13を粘着保持部5に懸垂保持している保持治具2と同じ構造を有する2番目の保持治具2を用意する。この2番目の保持治具2におけるゴム弾性部材は1番目の保持治具2におけるゴム弾性部材と同じである。
【0075】
2番目の保持治具2をその粘着保持部5を上にした状態で配置し、この2番目の保持治具2における粘着保持部5の上方に、下端部に電極15を塗設した複数のチップコンデンサ本体13を粘着保持部5に懸垂保持する1番目の保持治具2を位置させ、その1番目の保持治具2を2番目の保持治具2に向かって下降させる。
【0076】
図6に示されるように、1番目の保持治具2を下降させて2番目の保持治具2における粘着保持部5に、1番目の保持治具2における粘着保持部5に懸垂保持された複数のチップコンデンサ本体13の、電極15の形成された下端部を、粘着させる。
【0077】
次いで、1番目の保持治具2における加熱手段6により1番目の保持治具2における粘着保持部5を形成するゴム弾性部材を加熱するとともに、2番目の保持治具2における冷却手段7による1番目の保持治具2における粘着保持部5を形成するゴム弾性部材を冷却する。そうすると、1番目の保持治具2におけるゴム弾性部材の粘着力が、2番目の保持治具2におけるゴム弾性部材の粘着力よりも、相対的に小さくなる。
【0078】
そこで、1番目の保持治具2を上昇させると、2番目の保持治具2におけるゴム弾性部材の粘着力によりチップコンデンサ本体13が電極15を介してゴム弾性部材に強固に粘着されているので、1番目の保持治具2におけるゴム弾性部材からチップコンデンサ本体13が離脱する。
【0079】
図7に示されるように、2番目の保持治具2における粘着保持部5であるゴム弾性部材に電極15を介してチップコンデンサ本体13をそれが立設した状態で粘着保持している2番目の保持治具2を、回転させてチップコンデンサ本体13が懸垂保持された状態にする。
【0080】
複数のチップコンデンサ本体13を粘着保持部5に懸垂保持された状態のままこの2番目の保持治具2を導電ペースト浴の上方に平行移動し、その後に導電ペースト浴に向かってこの2番目の保持治具2を下降させる。2番目の保持治具2を下降させて導電ペースト浴に、複数のチップコンデンサ本体13の下端部を、浸漬させる。浸漬後に、2番目の保持治具2を上昇させる。そうすると、図8に示されるように、2番目の保持治具2における粘着保持部5に懸垂保持された各チップコンデンサ本体13の下端部に導電ペーストによる電極15が形成される。
【0081】
なお、2番目の保持治具2によりチップコンデンサ本体13を粘着保持する場合に、冷却手段7及び加熱手段6により粘着保持部5におけるゴム弾性部材の粘着性を、粘着保持部5の下面に懸垂状態で粘着保持するチップコンデンサ本体13が落下しないように、適宜に調節しても良い。
【0082】
2番目の保持治具2の粘着保持部5には、チップコンデンサ本体13の両端部に電極15が形成されてなるチップコンデンサ16が、懸垂された状態で粘着保持されている。この2番目の保持治具2における加熱手段6により粘着保持部5におけるゴム弾性部材を加熱する。そうするとゴム弾性部材の粘着力が低下する。そこで、粘着保持部5であるゴム弾性部材の下側面にストリッパ(図示せず)を摺接すると、粘着保持部5に懸垂保持されていたチップコンデンサ16が簡単に離脱し、落下する。
【0083】
以上のように、同一構成の保持治具2を少なくとも2基使用し、各保持治具2における粘着保持部5におけるゴム弾性部材の温度を調節することにより、保持治具2に保持されている小型電子部品を他の保持治具2に保持させ替えることができ、また、保持治具2に保持されている小型電子部品を粘着保持部5から容易に離脱することができる。
【実施例】
【0084】
(実施例1)
2基の同一構造の保持治具を用意した。この保持治具は、シリコーンゴムから成る、厚み2mmの平板状に形成されたゴム弾性部材からなる粘着保持部を、保持部本体である基板に、貼着して成る。
【0085】
このゴム弾性部材を35℃に加熱した状態でその粘着力を前記信越ポリマー法に従って測定したところ、その粘着力は25g/mmであった。
【0086】
次いで35℃に加熱されたゴム弾性部材を10℃に冷却し、その温度でのそのゴム弾性部材の粘着力を前記と同様にして測定したところ、その粘着力は45g/mmであった。
【0087】
保持治具におけるゴム弾性部材の表面にチップコンデンサを粘着保持させ、そのゴム弾性部材を上側に向けた状態で配置された第1の保持治具に、第1の保持治具と同じ構造を有する第2の保持治具を、第1の保持治具におけるゴム弾性部材と第2の保持治具におけるゴム弾性部材とが接触するように、重ね合わせ、その後に、第1の保持治具におけるゴム弾性部材を加熱するとともに、第2の保持治具におけるゴム弾性部材をその温度が上昇しないように冷却することにより第1の保持治具におけるゴム弾性部材の粘着力を第2の保持治具におけるゴム弾性部材の粘着力よりも低下させ、その後に、第2の保持治具を第1の保持治具から離れさせると、第2の保持治具におけるゴム弾性部材の表面に、第1の保持治具におけるゴム弾性部材に粘着保持されていたチップコンデンサが、移行し、粘着保持された。
【0088】
したがって、常温で粘着力の相違する二種類のゴム弾性部材を用意し、二種のゴム弾性部材それぞれを備えた二種の保持治具を用意しなくても、一種類のゴム弾性部材を備えた同じ構成を有する保持治具を2基用意し、それら保持治具におけるゴム弾性部材の粘着力をそのゴム弾性部材の温度の可変により調節することにより、一方の保持治具に保持された小型電子部品を他方の保持治具へと移し変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1はこの発明の一実施例である小型電子部品保持装置を示す概略説明である。
【図2】図2はこの発明におけるゴム弾性部材における温度と粘着力との関係を示すグラフである。
【図3】図3はこの発明の一実施例である小型電子部品保持装置における粘着保持部にチップコンデンサを立設状態で粘着させる手順を説明するための概略説明図である。
【図4】図4はこの発明の一実施例である小型電子部品保持装置における粘着保持部にチップコンデンサを立設状態で粘着させるためにプレス板で押圧する状態を示す概略説明図である。
【図5】図5はこの発明の一実施例である小型電子部品保持装置における保持治具によりチップコンデンサを懸垂保持する状態を示す概略説明図である。
【図6】図6はこの発明の一実施例である第1の保持治具に懸垂保持されたチップコンデンサ本体を、第2の保持治具における粘着保持部のゴム弾性部材の表面に、チップコンデンサ本体に形成された電極を接触させるように粘着させている状態を示す概略説明図である。
【図7】図7はこの発明の一実施例である第2の保持治具にチップコンデンサ本体を、電極を下に向けて懸垂保持している状態を示す概略説明図である。
【図8】図8はこの発明の一実施例である第2の保持治具に、両端部に電極を塗設して成るチップコンデンサを懸垂保持する状態を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0090】
1 小型電子部品保持装置
2 保持治具
3 温度調整手段
4 治具本体
5 粘着保持部
6 加熱手段
7 冷却手段
8 温度測定手段
9 制御手段
10 立設配置板
11 貫通孔
12 テーパ面
13 チップコンデンサ本体
14 プレス板
15 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着力と温度との関係が以下の式を満たす粘着特性を有するゴム弾性部材を有することを特徴とする保持治具。
Y=aX+b
ただし、前記式において、aは−1〜−0.7、bは40〜65、Yは粘着力(単位:g/mm)、Xは10℃以上35℃以下の範囲の温度(単位:℃)を示す。
【請求項2】
前記請求項1に記載の保持治具と、前記ゴム弾性部材の表面温度を調整する温度調整手段とを有することを特徴とする小型電子部品保持装置。
【請求項3】
前記温度調整手段が、前記ゴム弾性部材の表面を加熱する加熱手段と、前記ゴム弾性部材の表面を冷却する冷却手段とを備えてなる前記請求項2に記載の小型電子部品保持装置。
【請求項4】
前記温度調整手段が、前記ゴム弾性部材の表面温度を測定する温度測定手段と、前記温度測定手段により測定された温度に応じて前記加熱手段及び前記冷却手段を制御する制御手段とを備えて成る前記請求項3に記載の小型電子部品保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−103757(P2007−103757A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−293275(P2005−293275)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】