説明

保持治具及び小型電子部品保持装置

【課題】ゴム弾性部材の厚さを可変することにより調整された粘着力を有する保持治具、及び、複数種類の保持治具におけるゴム弾性部材それぞれの厚さを可変することにより、保持治具それぞれが小型電子部品を保持すると共に、保持治具から他の保持治具に小型電子部品を保持させ替えることのできる小型電子部品保持装置を提供すること。
【解決手段】粘着力と厚さとの関係が式Y=aX+bを満たす粘着特性を有するゴム弾性部材を有する保持治具、及び、この第1の保持治具と、そのゴム弾性部材の厚さよりも薄い第2のゴム弾性部材を有する第2の保持治具とを備え、前記第1の保持治具と前記第2の保持治具とは、それぞれのゴム弾性部材が相対向するように配置可能とされる小型電子部品保持装置。ただし、前記式において、aは−20〜−5、bは50〜85、Yは粘着力(単位:g/mm)、Xは0.3〜2.0の厚さ(単位:mm)を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は保持治具及び小型電子部品保持装置に関し、さらに詳しくは、ゴム弾性部材の厚さを可変することにより調整された粘着力を有する保持治具、及び、複数種類の前記保持治具を用いることにより、簡単に、チップコンデンサ等の小型電子部品を保持し、かつ、保持治具から他の保持治具に小型電子部品を移し替えることのできる小型電子部品保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チップコンデンサ等の小型電子部品を保持する保持治具として、特許文献1に開示された「小型電子部品の保持治具」がある。この特許文献1に記載された保持治具は、「少なくとも表面部が粘着性を有するゴム弾性材で形成され、その粘着力により小型部品をその弾性材表面において密着保持可能であることを特徴とする(特許文献1の請求項1参照)」。この保持治具においては、軟質のシリコーンゴムは粘着力を有することからこの性質を利用してチップコンデンサ等の小型電子部品が密着保持されるようになっている。
【0003】
ところでチップコンデンサ等の小型電子部品が長軸を有する角柱形又は円柱形をしている場合に、その長軸方向における両端部に電極を形成するときには、ゴム弾性材の粘着力によりゴム弾性材の表面に小型電子部品を密着保持するだけでは不十分である。つまり、ゴム弾性材の表面に粘着保持する小型電子部品の下端面に電極を形成した後に、その小型電子部品を前記ゴム弾性材から離脱し、次いで電極を形成してなる端面を再びゴム弾性材の表面に密着保持させる必要がある。
【0004】
この必要に応える発明として、特許文献2に記載された電子部品チップ用ホルダがある。この特許文献2に記載された電子部品チップ用ホルダは、「互いに対向する第1及び第2の端面を有する電子部品チップを保持するための電子部品チップ用ホルダにおいて、前記電子部品チップ用ホルダは、第1部材と第2部材とを含み、前記第1部材は、前記電子部品チップを保持するための第1の粘着面を備え、前記第2部材は、前記電子部品チップの前記第2の端面に粘着して前記電子部品チップを保持するための、前記第1の粘着面が与える粘着力よりも強い粘着力を与える第2の粘着面を備えることを特徴とする」(特許文献2の請求項1参照)。
【0005】
【特許文献1】特公平7−93247号公報
【特許文献2】特許第2682250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の課題は、ゴム弾性部材の厚さを可変することにより調整された粘着力を有する保持治具を提供すること、及び、複数種類の保持治具におけるゴム弾性部材それぞれの厚さを可変することにより、保持治具が有するゴム弾性部材それぞれの粘着力を調整して、保持治具それぞれが小型電子部品を保持すると共に、保持治具から他の保持治具に小型電子部品を移し替えることのできる小型電子部品保持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、粘着力と厚さとの関係が以下の式を満たす粘着特性を有するゴム弾性部材を有することを特徴とする保持治具であり、
Y=aX+b
ただし、前記式において、aは−20〜−5、bは50〜85、Yは粘着力(単位:g/mm)、Xは0.3〜2.0の厚さ(単位:mm)を示す。
請求項2は、請求項1に記載の第1の保持治具と、前記第1の保持治具における第1のゴム弾性部材の厚さよりも薄い第2のゴム弾性部材を有する請求項1に記載の第2の保持治具とを備え、前記第1の保持治具と前記第2の保持治具とは、前記第1のゴム弾性部材と前記第2のゴム弾性部材とが相対向するように配置可能とされることを特徴とする小型電子部品保持装置であり、
請求項3は、前記第1のゴム弾性部材と前記第2のゴム弾性部材とは、同一の粘着性材料で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の小型電子部品保持装置である。
【発明の効果】
【0008】
この発明において、ゴム弾性部材は、その厚さが厚くなるとゴム弾性部材の粘着力が低下し、その厚さが薄くなるとゴム弾性部材の粘着力が上昇するという粘着特性を有している。したがって、この発明によると、ゴム弾性部材の厚さを可変することにより調整された粘着力を有する保持治具を提供することができる。
【0009】
また、この発明によると、この発明におけるゴム弾性部材が有するこのような粘着特性を利用し、複数種類の保持治具におけるゴム弾性部材それぞれの厚さを可変することにより、保持治具が有するゴム弾性部材それぞれの粘着力を調整して、保持治具それぞれが小型電子部品を確実に保持できると共に、保持治具から他の保持治具に小型電子部品を容易に移し替えることのできる小型電子部品保持装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、この発明の一実施例である保持治具1を示す概略斜視図である。この保持治具1は、小型電子部品を粘着保持することができる。小型電子部品としては、例えばチップコンデンサ、チップ抵抗器、インダクタ、FPC、ウエハー等の完成品又は半完成品を挙げることができる。図1に示されるように、この保持治具1は、治具本体2と、治具本体2に装着されたゴム弾性部材3とを備える。
【0011】
前記ゴム弾性部材3は、多数の小型電子部品を粘着により保持することができるように設計され、例えば方形に形成されて成る盤状体を挙げることができる。この盤状をなす方形のゴム弾性部材3の一例としての寸法は、110mm×110mm×1.8mmを挙げることができる。
【0012】
このゴム弾性部材3は、厚さとその厚さにおける粘着力とにつき、図2に示されるように、以下の式を満たす粘着力を有するという特性を備える。
式 Y=aX+b
(ただし、前記式において、aは−20〜−5、bは50〜85、Yは粘着力(単位:g/mm)、Xは0.3〜2.0の厚さ(単位:mm)を示す。)
【0013】
前記式を満たす粘着力は、図2に示されるように、Xが0.3以上2.0以下の領域であって、Y=−5X+85で示される領域以下であり、かつY=−20X+50で示される領域以上である領域である。この領域外であると小型電子部品を粘着保持することができなくなり、又は、小型電子部品を粘着保持する力が大き過ぎてゴム弾性部材に粘着保持された小型電子部品を迅速に分離し、離脱させることができなくなる場合がある。
【0014】
ここで、ゴム弾性部材の厚さは、次のようにして求める。まず、ゴム弾性部材を水平に固定する吸着固定装置(例えば、商品名:電磁チャック、KET−1530B、カネテック(株)製)又は真空吸引チャックプレート等と、レーザ測定器、例えば、レーザ変位計(商品名:LK−G35、キーエンス社製)とを備えた厚さ測定装置を用意する。
【0015】
この測定装置における吸着固定装置又は真空吸引チャックプレート(試験台ともいう)上にゴム弾性部材を固定し、測定環境を21±1℃、湿度50±5%に設定する。次いで、試験台表面から基準距離に到達するまで被測定部位の上方にレーザ測定器を下降させ、このレーザ測定器からゴム弾性部材に向かってレーザを照射し、ゴム弾性部材の表面で反射した反射光を検出し、三角測量を応用した測定原理によって、ゴム弾性部材の厚さを測定する。この操作を、被測定部位の複数箇所で行い、得られる複数の厚さを算術平均し、得られる平均値をゴム弾性部材の厚さとする。
【0016】
また、ゴム弾性部材の粘着力は、以下のようにして求める。以下の粘着力の測定方法は、出願人により案出されたので、信越ポリマー法と称する。
【0017】
まず、ゴム弾性部材を水平に固定する吸着固定装置(例えば、商品名:電磁チャック、KET−1530B、カネテック(株)製)又は真空吸引チャックプレート等と、測定部先端に、直径10mmの円柱をなしたステンレス鋼(SUS304)製の接触子を取り付けたデジタルフォースゲージ(商品名:ZP−50N、(株)イマダ製)とを備えた荷重測定装置を用意する。
【0018】
この荷重測定装置における吸着固定装置又は真空吸引チャックプレート上にゴム弾性部材を固定し、測定環境を21±1℃、湿度50±5%に設定する。次いで、20mm/minの速度でゴム弾性部材の被測定部位に接触するまで前記荷重測定装置に取り付けられた前記接触子を下降させ、次いで、この接触子を被測定部位に所定の荷重で被測定部に対して垂直に3秒間押圧する。ここで、前記所定の荷重を、25g/mmに設定する。次いで、180mm/minの速度で前記接触子を被測定部位から引き離し、このときに前記デジタルフォースゲージにより測定される引き離し荷重を読み取る。この操作を、被測定部位の複数箇所で行い、得られる複数の引き離し荷重を算術平均し、得られる平均値をゴム弾性部材の粘着力とする。
【0019】
なお、この測定方法は、手動で行ってもよいが、例えば、テストスタンド(例えば、商品名:VERTICAl MODEL MOTORIZED STAND シリーズ、(株)イマダ製)等の機器を用いて、自動で行ってもよい。
【0020】
前記式で示される領域内にある粘着力を有するゴム弾性部材3としては、各種の公知の粘着性材料例えば粘着性ゴム等から適宜に選択されることができる。粘着性ゴムとしては、例えば、耐熱性を有する粘着性シリコーンゴムを採用することができる。
【0021】
前記粘着性シリコーンゴムとしては、シリコーン生ゴム(a)と、架橋成分(b)と、粘着成分(c)と、触媒(d)と、シリカ系充填材(e)とを含有する粘着性組成物の硬化物を挙げることができる。
【0022】
前記シリコーン生ゴム(a)としては、例えば、付加反応により架橋可能なアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンを用いることができ、特に、下記(1)式で示されるポリオルガノシロキサンを好適に用いることができる。
(3−a)SiO−(RXSiO)−(RSiO)−SiR(3−b) (1)式
ただし、(1)式中、Rは脂肪族不飽和結合を有さない1価の炭化水素基であり、それぞれ同一であっても、異なっていてもよく、Xはアルケニル含有有機基であり、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。また、aは0〜3の整数、bは0〜3の整数、mは0以上の整数、nは100以上の整数であり、a、b及びmは同時に0とはならない。
【0023】
ここで、Rとしては、炭素数1〜10の前記炭化水素基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の直鎖又は分岐アルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基等を例示でき、特にメチル基、フェニル基が好ましい。また、Xで示されるアルケニル基含有有機基としては、炭素数2〜10のアルケニル基含有有機基が好ましく、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、アクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基、シクロヘキセニルエチル基、ビニルオキシプロピル基等を例示できる。
【0024】
この(a)成分は、オイル状、粘土状の性状を有していてもよく、その粘度は25℃において50mPa・s以上であるのが好ましく、特に100mPa・s以上であるのが好ましい。
【0025】
この(a)成分は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
前記架橋成分(b)は、(a)成分と架橋反応可能な成分であり、例えば、1分子中にSi原子に結合したH原子を少なくとも2個以上、好ましくは3個以上有するSiH結合含有ポリオルガノシロキサン(以下、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと称することもある。)を用いることができる。
【0027】
このポリオルガノシロキサンとしては、直鎖状、分枝状、環状のポリオルガノシロキサンの中から適宜に選択して使用することができ、例えば、下記(2)式又は(3)式で示されるポリオルガノシロキサンを好適例として挙げることができる。
HcR(3−c)SiO−(HRSiO)−(RSiO)−SiR(3−d) (2)式
【0028】
【化1】

【0029】
前記(2)式及び(3)式において、Rは前記と同様の1価の炭化水素基であり、同一であっても、異なっていてもよい。また、c、dは0〜3の整数、x、y、sは0以上の整数、rは1以上の整数であり、c、d、xは同時に0とはならず、さらに、x+y≧0である。また、r+s≧3、好ましくは8≧r+s≧3である。
【0030】
これらのオルガノハイドロジェンポリシロキサンの中でも、オイル状の性状を有し、粘度が25℃において1〜5000mPa・sであるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
【0031】
この(b)成分は、その一種を単独で用いることもでき、また、二種以上を混合して用いることもできる。
【0032】
(b)成分の配合割合は、適宜に選択可能であるが、前記(a)成分がアルケニル基を含有すると共に、前記(b)成分がSiH結合を含有する場合、(a)成分中のアルケニル基に対する(b)成分中のSiH結合のモル比が0.5〜20であるのが好ましく、特に1〜15の範囲であるのが好ましい。このモル比が0.5未満では、後述する硬化後の架橋密度が低くなり、ゴム弾性部材の形状を保持しにくくなることがある。一方、前記モル比が20を超えると、得られるゴム弾性部材の粘着力が低下することがある。
【0033】
前記粘着成分(c)は、粘着力を向上するために配合される粘着力向上剤であり、例えば、ポリオルガノシロキサンを用いることができ、特に、RSiO1/2単位及びSiO単位及び/又はRSiO2/3単位(ただし、Rは脂肪族不飽和結合を有しない1価の炭化水素基である。)を含有するものを好適に用いることができる。ここで、Rとしては、炭素数1〜10のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の直鎖又は分岐アルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基等を例示でき、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0034】
この(c)成分は、一般的に粘着性をより高度に確保するために、前記(a)成分及び(b)成分とともに架橋反応を生じない、又は、生じ難い構造を有するものが好ましい。
【0035】
このような(c)成分としてポリオルガノシロキサンを用いる場合は、(RSiO1/2単位及び/又はRSiO2/3単位)/SiO2単位のモル比が0.6〜1.7となるものが好ましい。このモル比が0.6未満では、ゴム弾性部材の粘着性が高くなり過ぎ、又は(a)成分と相溶し難くなって、分離して粘着性を発現しなくなることがある。一方、前記モル比が1.7を超えるとゴム弾性部材の粘着力が低下することがある。
【0036】
なお、このポリオルガノシロキサンは、Si原子に結合するOH基を含有していてもよく、その場合、OH基含有量が0〜4.0モル%とするのが好ましい。
【0037】
Si原子に結合するOH基を含有するものを用いる場合、前記(a)成分として、下記(4)式に示されるポリオルガノシロキサンを含有するときには、(a)成分と(b)成分とが一部縮合反応物を形成していてもよい。
【0038】
(OH)RYSiO−(RXSiO)−(RSiO)−SiR(OH) (4)式
ただし、(4)式中、Rは脂肪族不飽和結合を有さない1価の炭化水素基であり、それぞれ同一であっても、異なっていてもよく、YはR又はアルケニル基含有有機基である。Xはアルケニル含有有機基である。また、pは1以上の整数、qは100以上の整数である。1価の炭化水素基及びアルケニル基含有有機基は前記したのと同様である。
【0039】
このような(a)成分と(c)成分との縮合反応物を形成するには、トルエン等の溶剤に溶解した(a)成分及び(c)成分の混合物を、アルカリ性触媒の存在下で、室温乃至還流下で反応させればよい。
【0040】
このような(c)成分は一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
この(c)成分は、(a)成分/(c)成分の質量比として20/80〜80/20の範囲で用いるのが好ましく、特に、30/70〜70/30とするのが好適である。この範囲を超えて(c)成分が少ないと粘着性が不足し易くなり、一方、多いとゴム弾性部材が硬くなるとともに弾性力が強く、ゴム弾性部材が変形し難くなり、何れにおいても、小型電子部品を粘着保持しにくくなることがある。
【0042】
前記触媒(d)は、主として、前記(a)成分と前記(b)成分との架橋反応を促進する触媒であり、通常、ハイドロサイレーションの触媒として使用されるものであればよく、例えば、白金化合物等が挙げられる。白金化合物としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物等が挙げられる。
【0043】
この(d)成分の配合割合は、前記(a)成分と前記(b)成分との合計質量に対し、白金成分として1〜5,000ppmとするのが好ましく、特に5〜2,000ppmとすることが好適である。配合割合が1ppm未満では硬化性が低下して架橋密度が低くなってゴム弾性部材の粘着力が低下することがあり、一方、5,000ppmを超えると処理浴の使用可能時間が短くなる場合がある。
【0044】
前記シリカ系充填材(e)は、ゴム弾性部材の機械的強度を補強するとともに、ゴム弾性部材を構成する成分、特に、粘着性を付与する前記(c)成分をゴム弾性部材に分散させて、小型電子部品の確実な粘着保持に寄与する成分である。
【0045】
特に、このシリカ系充填材としては、その比表面積が100m/g以上400m/g以下であるのが好適である。比表面積が100m/g以上であれば、ゴム弾性部材の引っ張り強度等の機械的強度を向上させることができるとともに粘着性を付与する成分が脱離し難くなり、微細な削りカスやのり残りが生じ難くなる。なお、比表面積が400m/gを超えるものは、製造に手間を要し、高価であるため実用的でない。ここで、比表面積はBET吸着法により測定される比表面積である。
【0046】
シリカ系充填材としては、ヒュームドシリカ、焼成シリカ等の乾式法により合成されたシリカであっても、沈降シリカ、シリカゲル等の湿式法により合成されたシリカであってもよい。これらの中でも、比表面積を前記範囲内に調整しやすい点で、ヒュームドシリカ、沈降シリカが好適である。
【0047】
シリカ系充填材は一種単独で用いても、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
また、必要に応じて、シリカ系充填材の表面を、例えば、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等の表面処理剤で処理したものを用いてもよい。
【0049】
シリカ系充填材(e)の配合割合は、前記(a)成分と前記(c)成分との合計100質量部に対して、1〜30質量部とするのが好ましく、5〜20質量部とするのがより好ましい。配合割合が1質量部未満であると、ゴム弾性部材の強度が低下して、十分な効果が得られ難くなり、また、使用時にのり残りが発生しやすくなることがある。一方、配合割合が30質量部を超えると、ゴム弾性部材の粘着力が低下することがある。
【0050】
さらに、この発明では、前記(a)成分から前記(e)成分の他に、適宜、任意成分を添加することが可能である。
【0051】
例えば、前記成分を混合する時の架橋反応を抑制するための反応制御剤を添加することができる。この反応制御剤としては、例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニルシクロヘキサノール、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ブチン、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ペンチン、3,5−ジメチル−3−トリメチルシロキシ−1−ヘキシン、1−エチニル−1−トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2−ジメチル−3−ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン等が挙げられる。
【0052】
この反応制御剤を添加する場合、その配合割合は、前記(a)成分と前記(c)成分との合計100質量部に対して、0〜5.0質量部とすることができ、特に0.05〜2.0質量部とするのが好ましい。この反応制御剤の配合割合が5.0質量部を超えると粘着性組成物の硬化時に硬化し難くなることがある。
【0053】
また、この反応制御剤の他にも、この発明では、適宜、任意成分を添加することが可能であり、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルジフェニルシロキサン等の非反応性のポリオルガノシロキサン、塗工の際の粘度を下げるための溶剤として、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ヘキサン、オクタン、イソパラフィン等の脂肪族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤、染料、顔料等を使用することができる。
【0054】
前記治具本体2としては、前記ゴム弾性部材3を装着することができる治具を挙げることができる。前記治具本体2としては、前記ゴム弾性部材3を保持することができる限り種々の設計変更に基づく各種の形態を挙げることができる。例えば、図1に示されるように、治具本体2は方形に形成されて成る盤状体とされている。この盤状をなす方形の治具本体2の一例としての寸法は、120mm×120mm×0.8mmを挙げることができる。
【0055】
前記治具本体2としては、ステンレス鋼、及びアルミニウム等の金属製プレート、アルミニウム箔及び銅箔等の金属箔、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリ塩化ビニル等の樹脂フィルム、樹脂板、並びに和紙、合成紙、及びポリエチレンラミネート紙等の紙、並びに布、ガラス繊維及びガラス板等のセラミックス、並びにガラスエポキシ樹脂板等の複合材料等を挙げることができる。さらにこの治具本体2として、シート状物を複数積層してなる積層体を挙げることもできる。前記治具本体2としては、金属、樹脂、又はセラミックスからなる硬質部材で形成されるものが好適である。
【0056】
この治具本体2は、前記ゴム弾性部材3を形成する面に、前記ゴム弾性部材3との密着性を向上させるために、プライマー処理、コロナ処理、エッチング処理、プラズマ処理等を施しておくことが好ましい。
【0057】
前記保持治具1は、前記治具本体2にゴム弾性部材3が装着されてなり、前記ゴム弾性部材3は、前記治具本体2上に前記粘着性材料によって形成されてもよく、また、前記治具本体2上に例えば公知のゴム等で形成されたゴム層上に、前記粘着性材料によって形成された粘着性シート部材を貼り付けて形成されてもよい。
【0058】
このような保持治具1は、前記したように、厚さが厚くなると粘着力が低下し、厚さが薄くなると粘着力が上昇するという粘着特性を有するゴム弾性部材3を備えている。したがって、この保持治具1は、ゴム弾性部材3の厚さを可変することにより調整された粘着力を有する。
【0059】
この発明に係る小型電子部品保持装置は、少なくとも2種類の前記保持治具を備えている。例えば、小型電子部品保持装置は、第1の保持治具と、第1の保持治具の第1のゴム弾性部材の厚さよりも薄い第2のゴム弾性部材を有する第2の保持治具とを少なくとも備えている。言い換えると、小型電子部品保持装置は、少なくとも2種類の保持治具からなる1組の保持治具セットを備え、この保持治具セットは、第1の保持治具と、その第1のゴム弾性部材の厚さよりも薄い第2のゴム弾性部材を有する第2の保持治具とを有している。
【0060】
前記第1の保持治具における第1のゴム弾性部材と、前記第2の保持治具における第2のゴム弾性部材とは、前記した粘着力と厚さとの関係を満たす粘着特性を有しており、かつ、前記第1のゴム弾性部材の厚さよりも第2のゴム弾性部材の厚さが薄く設定されている。前記第1のゴム弾性部材の厚さと、第2のゴム弾性部材の厚さとの差は、前記小型電子部品を前記第1の保持治具から前記第2の保持治具に移し替えることのできる限り特に限定されず、例えば、その一例を挙げると、前記粘着力の差が15〜31g/mmとなるように前記厚さの差を設定するのが好ましく、18〜25g/mmとなるように前記厚さの差を設定するのがより好ましい。
【0061】
なお、このゴム弾性部材は、前記小型電子部品を粘着保持することのできる限り、その厚さは特に限定されず、例えば、その一例を挙げると、前記ゴム弾性部材の粘着力が6.3g/mm以上となるように前記厚さを設定するのが好ましく、10g/mm以上となるように前記厚さを設定するのがより好ましい。
【0062】
この発明においては、第1のゴム弾性部材と第2のゴム弾性部材は、異なる粘着性材料で形成されていてもよいが、同一の粘着性材料で形成されているのが特によい。このように複数種類の保持治具におけるゴム弾性部材が同一の粘着性材料で形成されていると、粘着保持する小型電子部品に応じて、粘着力の異なる複数種類の材料を選択し、それに応じて、複数種類の保持治具それぞれを製造する必要はなく、単にゴム弾性部材の厚さを可変させるだけで、所望の粘着力を有する複数種類の保持治具を容易に製造することができる。ここで、「同一の粘着性材料」とは、同じ必須成分が含まれている材料、好ましくは同一の配合割合で同一の必須成分が含まれている材料をいい、必須成分に加えて、同一の任意成分までもが含まれている材料又は同一の配合割合で同一の任意成分が含まれている材料をいうものではない。
【0063】
小型電子部品保持装置は、前記第1の保持治具と前記第2の保持治具とが、前記第1のゴム弾性部材と前記第2のゴム弾性部材とが相対向するように配置可能とされている。これにより、前記第1の保持治具に粘着保持された小型電子部品を前記第2の保持治具に粘着保持された状態に移し替えることができる。このような複数のゴム弾性部材の配置は、機械的構成からなる変位手段により実現されてもよく、手動により実現されてもよい。
【0064】
図3は、この発明の一実施例である小型電子部品保持装置10を示す説明図である。この小型電子部品保持装置10は、前記小型電子部品を粘着保持すると共に、第1の保持治具1Aから第2の保持治具1Bに前記小型電子部品を移し替えることのできる装置である。
【0065】
この小型電子部品保持装置10は、第1の保持治具1Aと、第2の保持治具1Bとを備えている。これらの保持治具1A、1Bはそれぞれ、治具本体2A、2Bと治具本体2A、2Bに装着されたゴム弾性部材3A、3Bとを備えている。このゴム弾性部材3A、3Bは、前記粘着性組成物の硬化物で形成され、前記した粘着力と厚さとの関係を満たす粘着特性を有しており、かつ、第1のゴム弾性部材3Aの厚さよりも第2のゴム弾性部材3Bの厚さが薄く設定されている。
【0066】
図3に示されるように、第1の保持治具1Aは、前記治具本体2Aにおける前記ゴム弾性部材3Aが形成されていない表面側が、保持治具変位手段12から下方に延在する支持アーム13の先端に設けられた支持部材14に固定され、保持治具変位手段12に支持されている。
【0067】
この保持治具変位手段12は、軌条11に取り付けられ、この軌条11に沿って水平方向に運動可能に構成されると共に、前記支持アーム13を上下方向に運動可能に構成されている。したがって、この保持治具変位手段12に支持された前記保持治具1Aは、保持治具変位手段12によって、水平方向及び上下方向に自在に移動可能とされている。すなわち、小型電子部品を懸垂保持するゴム弾性部材3Aを有する保持治具1Aは、例えば導電ペースト浴の上方に、又はその位置から導電ペースト浴の上方以外の適宜の位置例えば前記第2の保持治具1Bの上方の位置に移送されることができると共に、前記保持治具1Aは、前記第2の保持治具1Bに向けて下降させられ、また前記第2の保持治具1Bのゴム弾性部材3Bに小型電子部品を保持させ替えた後、前記保持治具1Aを前記第2の保持治具1Bから上昇させられることができる。
【0068】
さらに、この保持治具変位手段12は、軌条11を中心軸にして軸回りに回転運動可能に構成されている。保持治具変位手段12がこのように回転運動可能であると、第1の保持治具1Aの状態を、小型電子部品をゴム弾性部材3Aにより懸垂保持する状態、及び、小型電子部品をゴム弾性部材3Aにより立設保持する状態に所望のように変えることができるようになる。
【0069】
また、図3に示されるように、第2の保持治具1Bは、前記治具本体2Bにおける前記ゴム弾性部材3Bが形成されていない表面側が、保持治具変位手段16から上方に延在する支持アーム17の先端に設けられた支持部材18に固定され、保持治具変位手段16に支持されている。
【0070】
この保持治具変位手段16は、前記軌条11とほぼ直交する軌条15に取り付けられ、この軌条15に沿って水平方向に運動可能に構成されると共に、前記支持アーム17を上下方向に運動可能に構成されている。したがって、この保持治具変位手段16に支持された前記保持治具1Bは、保持治具変位手段16によって、水平方向及び上下方向に自在に移動可能とされている。すなわち、保持治具1Bは、適宜の位置例えば、前記第1の保持治具1Aの下方の位置に移送されることができると共に、前記保持治具1Bは、前記第1の保持治具1Aに向けて上昇させられ、また前記第1の保持治具1Aのゴム弾性部材3Aに粘着保持された小型電子部品を保持させ替えた後、前記保持治具1Bは前記第1の保持治具1Aから下降させられることができる。
【0071】
さらに、この保持治具変位手段16は、軌条15を中心軸にして軸回りに回転運動可能に構成されている。保持治具変位手段16がこのように回転運動可能であると、第2の保持治具1Bの状態を、小型電子部品をゴム弾性部材3Bにより立設保持する状態、及び、小型電子部品をゴム弾性部材3Bにより懸垂保持する状態に所望のように変えることができるようになる。
【0072】
前記保持治具変位手段12及び前記保持治具変位手段16における運動機構は、特に限定されず、例えば、駆動力を発生する駆動手段、例えばモータと、このモータの出力を前記軌条11又は15、及び、前記支持アーム13又は17に伝達する伝達手段、例えば歯車、ワイヤ等とを備えた運動機構が挙げられる。この運動機構は、通常のパソコン等によって、制御しても、手動で制御してもよい。
【0073】
図3に示されるように、この小型電子部品保持装置10は、前記軌条11と前記軌条15が交差する位置近傍で、前記第1の保持治具1Aと前記第2の保持治具1Bとが、前記第1のゴム弾性部材3Aと前記第2のゴム弾性部材3Bとが相対向するように配置可能と成っている。これにより、前記第1の保持治具1Aに粘着保持された小型電子部品を前記第2の保持治具1Bに移し替えることができる。
【0074】
次に、この発明に係る小型電子部品保持装置10を用いて小型電子部品の一つであるチップコンデンサ本体に電極を形成する方法について説明し、併せてこの小型電子部品保持装置10の作用について説明する。
【0075】
チップコンデンサは、例えば四角柱体をなすコンデンサ本体の両端部それぞれに電極が形成されて成る。
【0076】
この発明の一例である小型電子部品保持装置10を用いてコンデンサ本体に電極を以下のようにして形成する。
【0077】
先ず、図3に示された保持治具変位手段12を軌条11を中心軸にして軸回りに回転運動させ、図4に示されるように、ゴム弾性部材3Aを上にした保持治具1Aの上に立設配置板20を重ねる。この立設配置板20には、上部開口部に環状のテーパ面21が形成されてなる貫通孔22である複数の配設孔が形成されている。この立設配置板20の上面に複数の例えばチップコンデンサ本体6を乱雑状態に頒布する。この立設配置板20に振動を加えると、チップコンデンサ本体6が前記テーパ面21に案内されるようにして前記配設孔に収まる。この立設配置板20の厚みは、チップコンデンサ本体6の軸線方向長さよりも小さく設計されているので、前記配設孔に収まったチップコンデンサ本体6は、その下端面がゴム弾性部材3Aに接触し、上端面が前記立設配置板20の上端面から突出した状態になっている。
【0078】
次いで、図5に示されるように、平坦なプレス板23で、複数のチップコンデンサ本体6全ての突出頭部を、押圧する。そうすると、配設孔に収容されているチップコンデンサ本体6の下端面がゴム弾性部材3Aに僅かにめり込むとともにゴム弾性部材3Aの粘着力によりチップコンデンサ本体6の下端部がゴム弾性部材3Aに粘着する。その後、立設配置板20を除去する。次いで、保持治具変位手段12(図示せず。)を軌条11を中心軸にして軸回りに回転運動させ、図3に示されるように、保持治具1Aを回転させてゴム弾性部材3Aを下側に向けると、ゴム弾性部材3Aの下側面に複数のチップコンデンサ本体6が懸垂保持された状態になる。
【0079】
次いで、保持治具変位手段12を軌条11に沿って水平方向に運動させて、複数のチップコンデンサ本体6をゴム弾性部材3Aに懸垂保持された状態のままこの保持治具1Aを導電ペースト浴(図示せず。)の上方に水平移動させる。その後、保持治具変位手段12により支持アーム13(図示せず。)を下方向に運動させて、導電ペースト浴に向かってこの保持治具1Aを下降させる。保持治具1Aを下降させて導電ペースト浴に、複数のチップコンデンサ本体6の下端部を、浸漬させる。浸漬後に、保持治具変位手段12により支持アーム13を上方向に運動させて、保持治具1Aを上昇させる。そうすると、図6に示されるように、ゴム弾性部材3Aに懸垂保持された各チップコンデンサ本体6の下端部に導電ペーストによる電極7が形成される。
【0080】
次いで、保持治具変位手段12を軌条11に沿って水平方向に運動させて、第2の保持治具1Bにおけるゴム弾性部材3Bの上方に、下端部に電極7を塗設した複数のチップコンデンサ本体6をゴム弾性部材3Aに懸垂保持する第1の保持治具1Aを水平移動させる。次いで、保持治具変位手段12により支持アーム13を下方向に運動させて、第2の保持治具1B向かってこの保持治具1Aを下降させる。なお、この第2の保持治具1Bはそのゴム弾性部材3Aを上にした状態で配置されている。
【0081】
図7に示されるように、保持治具変位手段12(図示せず。)により支持アーム13(図示せず。)を下方向に運動させて、第1の保持治具1Aを下降させ、第2の保持治具1Bにおけるゴム弾性部材3Bに、第1の保持治具1Aにおけるゴム弾性部材3Aに懸垂保持された複数のチップコンデンサ本体6の、電極7の形成された下端部を、粘着させる。このとき、前記したように、ゴム弾性部材3Bは、ゴム弾性部材3Aよりも薄く形成されているから、ゴム弾性部材3Aよりも相対的に強い粘着力を有している。そこで、保持治具変位手段12により支持アーム13を上方向に運動させて、第1の保持治具1Aを上昇させると、第2の保持治具1Bにおけるゴム弾性部材3Bの粘着力によりチップコンデンサ本体6が電極7を介してゴム弾性部材3Bに強固に粘着されているので、第1の保持治具1Aにおけるゴム弾性部材3Aからチップコンデンサ本体6が離脱する。このようにして、第1の保持治具1Aから第2の保持治具1Bにチップコンデンサ本体6を容易に移し替えることができる。
【0082】
次いで、保持治具変位手段16を軌条15を中心軸にして軸回りに回転運動させ、図8に示されるように、第2の保持治具1Bにおけるゴム弾性部材3Bに電極7を介してチップコンデンサ本体6をそれが立設した状態で粘着保持している第2の保持治具1Bが、回転されてチップコンデンサ本体6が懸垂保持された状態にされる。
【0083】
次いで、保持治具変位手段16を軌条15に沿って水平方向に運動させて、複数のチップコンデンサ本体6をゴム弾性部材3Bに懸垂保持された状態のままこの第2の保持治具1Bを導電ペースト浴(図示せず。)の上方に水平移動させる。その後、保持治具変位手段16(図示せず。)により支持アーム17(図示せず。)を下方向に運動させて、導電ペースト浴に向かってこの第2の保持治具1Bを下降させる。第2の保持治具1Bを下降させて導電ペースト浴に、複数のチップコンデンサ本体6の下端部を、浸漬させる。浸漬後に、保持治具変位手段16により支持アーム17を上方向に運動させて、第2の保持治具1Bを上昇させる。そうすると、図9に示されるように、第2の保持治具1Bにおけるゴム弾性部材3Bに懸垂保持された各チップコンデンサ本体6の下端部に導電ペーストによる電極7が形成される。
【0084】
第2の保持治具1Bのゴム弾性部材3Bには、チップコンデンサ本体6の両端部に電極7が形成されてなるチップコンデンサ8が、懸垂された状態で粘着保持されている。この第2の保持治具1Bに粘着保持されたチップコンデンサ8は、例えば、ゴム弾性部材3Bの下側面にストリッパ(図示せず。)を摺接することにより、ゴム弾性部材3Bに懸垂保持されていたチップコンデンサ8が離脱し、落下する。
【0085】
以上のように、この発明におけるゴム弾性部材が有するこのような粘着特性を利用し、2種類の保持治具1A、1Bにおけるゴム弾性部材3A、3Bの厚さを可変することにより、保持治具1A、1Bが有するゴム弾性部材3A、3Bの粘着力を調整して、保持治具1A、1Bが小型電子部品を確実に保持できると共に、第1の保持治具1Aから第2の保持治具1Bに小型電子部品を容易に移し替えることができる。
【0086】
なお、この小型電子部品保持装置10においては、第1の保持治具1Aと第2の保持治具1Bとを備えているが、さらに保持治具等を有する3種類以上の保持治具を備えていてもよい。
【0087】
また、小型電子部品保持装置10においては、第1のゴム弾性部材3Aと第2のゴム弾性部材3Bとが同一の粘着性組成物によって形成されているが、第1のゴム弾性部材3Aと第2のゴム弾性部材3Bとが異なる粘着性組成物によって形成されていてもよい。
【0088】
さらに、小型電子部品保持装置10においては、軌条11と軌条15とがほぼ直角に交差するように配設されているが、軌条11と軌条15とは略平行に配設されていてもよい。
【0089】
また、小型電子部品保持装置10においては、保持治具変位手段12、16は軌条11、15を中心軸にして軸回りに回転運動に構成されているが、保持治具変位手段12、16は前記回転運動をしないように構成されていてもよい。この場合には、ゴム弾性部材3Aにチップコンデンサ本体を粘着保持させた第1の保持治具1Aを前記保持治具変位手段12に支持させればよく、ゴム弾性部材3Bにチップコンデンサを粘着保持した第2の保持治具1Bを前記保持治具変位手段16から取り外して、チップコンデンサをゴム弾性部材3Bから取り外せばよい。
【実施例】
【0090】
複数種類の同一構造の保持治具を用意した。これらの保持治具は、シリコーンゴム(商品名「X−34−632A/B」、信越化学工業株式会社製)から成る平板状に成形したゴム弾性部材を、治具本体である基板に、貼着して成る。これらの保持治具におけるゴム弾性部材の厚さを前記測定方法に従って、また、その粘着力を前記信越ポリマー法に従って測定した。その結果を表1に示す。この測定結果における粘着力と厚さとの関係は、Y=−18X+80であり、前記粘着力と厚さとの関係が前記式Y=aX+b(a及びbは前記と同様である。)を満たしていた。
【0091】
【表1】

【0092】
厚さ2.0mmを有するゴム弾性部材3Aの表面にチップコンデンサを粘着保持させ、そのゴム弾性部材3Aを上側に向けた状態で配置された第1の保持治具1Aに、厚さ0.3mmを有するゴム弾性部材3Bを備えた第2の保持治具1Bを、第1の保持治具1Aにおけるゴム弾性部材3Aに粘着保持されたチップコンデンサと、第2の保持治具1Bにおけるゴム弾性部材3Bとが接触するように、重ね合わせ、その後、第1の保持治具1Aを第2の保持治具1Bから離れさせたところ、第2の保持治具1Bにおけるゴム弾性部材3Bの表面に、第1の保持治具1Aにおけるゴム弾性部材3Aに粘着保持されていたチップコンデンサが、移行し、粘着保持された。
【0093】
したがって、2種類の保持治具1A、1Bにおけるゴム弾性部材3A、3Bの厚さを可変することにより、保持治具1A、1Bが小型電子部品を確実に保持できると共に、保持治具1Aから保持治具1Bに小型電子部品を容易に移し替えることができた。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、この発明の一実施例である保持治具を示す概略斜視図である。
【図2】図2は、この発明におけるゴム弾性部材における厚さと粘着力との関係を示すグラフである。
【図3】図3は、この発明の一実施例である小型電子部品保持装置を示す概略説明図である。
【図4】図4は、この発明の一実施例である小型電子部品保持装置における第1のゴム弾性部材にチップコンデンサ本体を立設状態で粘着させる手順を説明するための概略説明図である。
【図5】図5は、この発明の一実施例である小型電子部品保持装置における第1のゴム弾性部材にチップコンデンサ本体を立設状態で粘着させるためにプレス板で押圧する状態を示す概略説明図である。
【図6】図6は、この発明の一実施例である小型電子部品保持装置における第1の保持治具によりチップコンデンサ本体を懸垂保持する状態を示す概略説明図である。
【図7】図7は、この発明の一実施例である第1の保持治具に懸垂保持されたチップコンデンサ本体を、第2の保持治具における第2のゴム弾性部材の表面に、チップコンデンサ本体に形成された電極を接触させるように粘着させている状態を示す概略説明図である。
【図8】図8は、この発明の一実施例である第2の保持治具にチップコンデンサ本体を、電極を上に向けて懸垂保持している状態を示す概略説明図である。
【図9】図9は、この発明の一実施例である第2の保持治具に、両端部に電極を塗設して成るチップコンデンサを懸垂保持する状態を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0095】
1、1A、1B 保持治具
2、2A、2B 治具本体
3、3A、3B ゴム弾性部材
6 チップコンデンサ本体
7 電極
8 チップコンデンサ
10 小型電子部品保持装置
11、15 軌条
12、16 保持治具変位手段
13、17 支持アーム
14、18 支持部材
20 立設配置板
21 テーパ面
22 貫通孔
23 プレス板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着力と厚さとの関係が以下の式を満たす粘着特性を有するゴム弾性部材を有することを特徴とする保持治具。
Y=aX+b
ただし、前記式において、aは−20〜−5、bは50〜85、Yは粘着力(単位:g/mm)、Xは0.3〜2.0の厚さ(単位:mm)を示す。
【請求項2】
請求項1に記載の第1の保持治具と、
前記第1の保持治具における第1のゴム弾性部材の厚さよりも薄い第2のゴム弾性部材を有する請求項1に記載の第2の保持治具とを備え、
前記第1の保持治具と前記第2の保持治具とは、前記第1のゴム弾性部材と前記第2のゴム弾性部材とが相対向するように配置可能とされていることを特徴とする小型電子部品保持装置。
【請求項3】
前記第1のゴム弾性部材と前記第2のゴム弾性部材とは、同一の粘着性材料で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の小型電子部品保持装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−165397(P2007−165397A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356618(P2005−356618)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】